(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141188
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】合わせガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20230928BHJP
B60J 1/02 20060101ALI20230928BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C03C27/12 N
B60J1/02 M
B60J1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047384
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】森 直也
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 健介
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋貴
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA13
4G061AA18
4G061AA33
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA07
4G061DA10
4G061DA14
4G061DA23
4G061DA29
(57)【要約】
【課題】 高い生産性を維持しながら、光学機能層を持つ合わせガラスを製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明にかかる合わせガラスを製造する方法は、合わせガラスの製造方法であって、中間膜上に光学機能層を形成し、前記中間膜を一対のガラス板で挟み、前記中間膜を挟んだ一対の前記ガラス板を熱処理で一体化することを特徴とする。前記光学機能層は、前記中間膜上に原料を塗布するか、前記中間膜上に転写されることで形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせガラスの製造方法であって、
中間膜上に光学機能層を形成し、
前記中間膜を一対のガラス板で挟み、
前記中間膜を挟んだ一対の前記ガラス板を熱処理で一体化することを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層は前記中間膜上に原料を塗布して形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層は前記中間膜の一部の上に形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層が形成される部分は島状領域であることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の合わせガラスの製造方法であって、前記島状領域は面内に複数形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項6】
請求項3記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層が形成される部分は帯状領域であることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層は半波長板及び四分の一波長板を含む位相差層、偏光層、P偏光反射層、光散乱層、光反射層、光吸収層またはこれらの組み合わせからなることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層は樹脂層からなることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層は、前記一対のガラス板の中で内側に配置されるガラス板の内面に接している、若しくは前記中間膜と他の中間膜に挟まれていることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層は、前記中間膜が平坦な領域に形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記中間膜は一面が平坦な面であり且つ他面がエンボス面であり、前記光学機能層は前記中間膜の平坦な表面上に形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記中間膜の両面がエンボス面であり、前記エンボス面の一部には平坦化膜が形成され、前記光学機能層は前記平坦化膜上に形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記中間膜の両面がエンボス面であり、前記エンボス面の一部のエンボスを消し、エンボスを消した箇所に前記光学機能層を形成することを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層は前記中間膜の表面及び裏面にそれぞれ形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の合わせガラスの製造方法であって、前記表面側の前記光学機能層は前記中間膜を挟んで前記裏面側の前記光学機能層と対称な位置に形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層は前記中間膜上に形成され、前記中間膜と他の中間膜に挟まれることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の合わせガラスの製造方法であって、前記中間膜は一面が平坦な面でありかつ他面がエンボス面であり、前記光学機能層は前記中間膜の平坦面上に形成され、前記他の中間膜は両面がエンボス面であることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項18】
請求項16または17記載の合わせガラスの製造方法であって、前記中間膜上に前記光学機能層を形成した後、前記他の中間膜を重ねて加熱して一体化することを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記中間膜上に液晶材料を含む原料を直接塗布し、塗布後に液晶材料を配向させ、配向後に光照射、加熱、若しくはこれらの組み合わせにより前記光学機能層を形成することを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の合わせガラスの製造方法であって、前記中間膜上に形成された前記光学機能層上に接着層を形成し、前記接着層の形成後に前記中間膜を一対のガラス板で挟むことを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項21】
請求項2記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層はスクリーン印刷により塗布され、前記原料は前記スクリーン印刷が可能な粘度に設定されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項22】
請求項2記載の合わせガラスの製造方法であって、前記中間膜は枚葉状であり、前記光学機能層はノズルコーター、インクジェットコーター、スプレーコーター、若しくはディスペンサーを用いた塗布により形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項23】
請求項2記載の合わせガラスの製造方法であって、前記中間膜はウエブ状あるいは巻取式のロールであり、前記光学機能層は、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ノズルコーター、インクジェットコーター、若しくはスプレーコーターで塗布されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項24】
請求項22又は23記載の合わせガラスの製造方法であって、前記液晶材料を含む原料は塗布可能な粘度に設定されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項25】
請求項1記載の合わせガラスの製造方法であって、
前記中間膜は枚葉状もしくはウエブ状あるいは巻取式のロールであり、前記光学機能層は、スパッタリング、CVDで形成されることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項26】
請求項1記載の合わせガラスの製造方法であって、
前記中間膜上に前記光学機能層を形成する工程が、転写基材上に原料を塗布して光学機能層を形成し、前記光学機能層を前記中間膜上に転写する工程であることを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項27】
請求項26記載の合わせガラスの製造方法であって、前記光学機能層と前記中間膜が直接接触することを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドアップディスプレイ(HUD)の表示に適した光学機能層を設けている合わせガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機能層を有した合わせガラスに偏光光を入射させることで、2重像を抑制する偏光型のHUDが開発されつつある。このようなHUDの表示に好適な自動車などの車両用の合わせガラスとして、ガラス板に部分的にフィルムを接着層で貼り付けたHUD用合わせガラスが開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開 WO2020/017502A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ガラス板にフィルムを接着層で貼り付ける方法を、合わせガラス生産ラインに適用する場合、その工程をガラス洗浄工程と中間膜積層工程の間に組み入れることが想定され、生産ラインで1つの合わせガラスを作製するための時間がそれだけ増加する。一つの生産ラインで、光学機能層を持つ合わせガラスと、光学機能層を持たない合わせガラスの両方を生産する場合、最も製造に時間のかかる製品に合わせて生産ラインを稼働させる必要があるため、ガラス板にフィルムを貼り付ける方法を採用すると合わせガラスの生産ラインの生産性が大きく悪化するという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、高い生産性を維持しながら、光学機能層を持つ合わせガラスを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の合わせガラスを製造する方法の好適な実施形態の一例としては、合わせガラスの製造方法であって、中間膜上に光学機能層を形成し、前記中間膜を一対のガラス板で挟み、前記中間膜を挟んだ一対の前記ガラス板を熱処理で一体化することを特徴とする。中間膜上に光学機能層を形成することで、光学機能層を形成する工程は、ガラス板の上でなくとも良いことになり、合わせガラスの生産ラインとは別の生産ラインで光学機能層を形成することができ、合わせガラス全体の生産性を高く維持できることになる。
【0007】
また、本発明の合わせガラスの実施形態の一例としては、前記光学機能層を前記中間膜の全部に形成することもでき、前記中間膜の一部の上に形成することもできる。前記光学機能層が形成される部分は、単数若しくは複数の島状領域とすることができ、或いは帯状領域とすることもできる。前記光学機能層は半波長板及び四分の一波長板を含む位相差板、偏光層、P偏光反射層、光散乱層、光反射層、光吸収層またはこれらの組み合わせからなる構成とすることもでき、前記光学機能層は樹脂層からなる構成としても良い。また、前記光学機能層を形成する原料は液晶材料を含むものとしても良い。
【0008】
さらに、本発明の合わせガラスの実施形態の一例としては、前記光学機能層はその下部の前記中間膜が平坦な領域に形成されても良く、或いは前記中間膜は一面が平坦な面であり且つ他面がエンボス面であり、前記光学機能層は前記中間膜の平坦な表面上に形成されるものであっても良く、更には前記中間膜は両面がエンボス面であり、前記エンボス面の一部には平坦化膜が形成され、前記光学機能層はその平坦化膜上に形成されるものであっても良い。また、前記中間膜は両面がエンボス面であり、エンボス面の一部のエンボスを消し、エンボスを消した箇所に前記光学機能層を形成することもできる。
【0009】
また本発明の合わせガラスの実施形態の一例として、前記光学機能層は、前記中間膜の表面若しくは裏面のどちらかに形成することができ、さらには前記中間膜の表面及び裏面にそれぞれ形成することもできる。前記光学機能層が中間膜の両面に形成される場合には、前記中間膜を挟んで裏面側の前記光学機能層と対称な位置に表面側の光学機能層を形成するようにも構成できる。また、光学機能層を2つの中間膜で挟むように構成することもできる。光学機能層を2つの中間膜で挟むように構成する場合、光学機能層は中間膜の平坦な面上に形成され、当該中間膜の裏面はエンボス面であり、もう1つの中間膜は両面がエンボス面とすることもできる。光学機能層を2つの中間膜で挟んだ後、加熱して一体化することもできる。また、前記光学機能層は、前記一対のガラス板の中で内側に配置されるガラス板の内面に接して、若しくは前記中間膜と他の中間膜に挟まれて配設される構成としても良い。
【0010】
光学機能層を形成する方法の例示としては、中間膜上に液晶材料を含む原料を直接塗布し、塗布後に光照射、加熱、若しくはこれらの組み合わせにより光学機能層を形成することができる。また、中間膜上に形成された光学機能層を形成し、その光学機能層上に接着層を形成し、該接着層の形成後に中間膜を一対のガラス板で挟むようにすることもできる。光学機能層の形成方法としては、原料を塗布して形成することができる。また、光学機能層の形成に各種のコーティング方法や印刷方法を利用することができ、例えはスクリーン印刷、スキャンコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ブレードコーティング、エアーナイフコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、カレンダーコーティング、メニスカスコーティング、スロットダイコーティングから選ばれた手段で光学機能層を形成できる。前記中間膜は枚葉状とすることもでき、ウエブ状とすることもでき、適宜コーティング若しくはプリンティング手法が選択される。
【0011】
また、本発明の合わせガラスを製造する方法の好適な実施形態の他の一例としては、転写法を組み込んだ製造方法であって、転写基材上に液晶材料を含む原料を塗布して光学機能層を形成し、前記光学機能層を中間膜上に転写し、前記中間膜を一対のガラス板で挟み、前記中間膜を挟んだ一対の前記ガラス板を熱処理で一体化することを特徴とする。この、転写法を用いた場合において、前記光学機能層と前記中間膜が直接接触する構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の合わせガラスの製造方法により製造される合わせガラスの一例の模式的な平面図である。
【
図2】本発明の合わせガラスの製造方法の一例におけるいくつかの工程を説明する模式図である。
【
図3】本発明の合わせガラスの製造方法の1つの実施形態を示す工程断面図であり、中間膜の全面に光学機能層が形成される例を示す。
【
図4】本発明の合わせガラスの製造方法の他の1つの実施形態を示す工程断面図であり、中間膜の一部に光学機能層が形成される例を示す。
【
図5】本発明の合わせガラスの製造方法のまた他の1つの実施形態を示す工程断面図であり、中間膜の一部に光学機能層が形成され、硬化処理される例を示す。
【
図6】本発明の合わせガラスの製造方法のさらに他の1つの実施形態を示す工程断面図であり、中間膜の一部に光学機能層が転写により形成される例を示す。
【
図7】本発明の合わせガラスの製造方法の一例における中間膜に対する光学機能層の形成パターンの一例の模式工程断面図であり、中間膜の片面に光学機能層が形成される例である。
【
図8】本発明の合わせガラスの製造方法の一例における中間膜に対する光学機能層の形成パターンの一例の模式工程断面図であり、中間膜の両面に光学機能層が形成される例である。
【
図9】本発明の合わせガラスの製造方法の一例における中間膜に対する光学機能層の形成パターンの一例の模式工程断面図であり、2つの中間膜の間に光学機能層が形成される例である。
【
図10】本発明の合わせガラスの製造方法の一例における中間膜に対する光学機能層の形成パターンの一例の模式工程断面図であり、中間膜の平坦な面の上に光学機能層が形成される例である。
【
図11】本発明の合わせガラスの製造方法の一例における中間膜に対する光学機能層の形成パターンの一例の模式工程断面図であり、裏面がエンボス面の中間膜上の光学機能層が形成される例である。
【
図12】本発明の合わせガラスの製造方法の一例における中間膜に対する光学機能層の形成パターンの一例の模式工程断面図であり、中間膜上の光学機能層の上に接着剤層が形成される例である。
【
図13】本発明の合わせガラスの製造方法の一例における中間膜に対する光学機能層の形成パターンの一例の模式工程断面図であり、中間膜のエンボス面上に平坦化膜を介して光学機能層が形成される例である。
【
図14】本発明の合わせガラスの製造方法の或る一例における各工程の流れを示す図である。
【
図15】本発明の合わせガラスの製造方法のまた他の一例における各工程の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態の合わせガラスの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態で、製造の対象となるのは、合わせガラスであり、一対の透明ガラス板の間に中間膜を挟む構造を有しており、特に本実施形態にかかる合わせガラスにおいては、二重像を抑制するなどの効果を得るために光学機能層が部分的に中間膜上に形成される。
【0015】
透明ガラス板は、通常の車両用に用いられているガラス板であれば、特に制限されるものではなく、一般的に、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラスを挙げることができる。一対のガラス板は、同じ種類のガラスであっても良く、異なる種類のガラス板であっても良い。後述するように、合わせられるガラス板には、それぞれ着色部がガラスの周縁部分などに形成される。着色部は、本発明にかかる合わせガラスを車両に取り付けたとき光学機能層よりも車外側に位置するように設けられる。着色部は、光学機能層に隣接していてもよく、光学機能層から離間していてもよい。着色部は、本発明の合わせガラスの正面から見たときに、全体が光学機能層と重なっていてもよく、一部が光学機能層と重なっていてもよい。着色部としては、黒セラミックス層あるいは着色樹脂層が好ましい。黒セラミックス層としては、例えば、耐熱性黒色顔料、低融点ガラス粉末、樹脂及び溶剤を含む黒セラミックスペーストを印刷等によって透明ガラスの周縁部に塗布し、焼き付けて形成された層が挙げられる。着色部の厚さは、黒セラミックス層の場合、1μm~50μmであることが好ましく、5μm~30μmであることがより好ましく、10μm~20μmであることが更に好ましい。着色樹脂層の場合、5μm~800μmが好ましく、10μm~400μmがより好ましい。
【0016】
中間膜は、ガラスに衝撃を受けた場合のガラス破片の飛散防止の観点から配される樹脂フィルムであり、中間膜の樹脂材としては、例えば、ポリビニルアセタール、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」とも記す。)、シクロオレフィン、アイオノマー、エチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン、硫黄含有ポリウレタン、ポリビニルアルコール、塩化ビニル樹脂、PET等の熱可塑性樹脂が挙げられ、ポリビニルアセタール、EVA、シクロオレフィン、アイオノマーが好ましい。中間膜の樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化したものである。ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラール(以下、「PVB」とも記す。)が好ましい。ポリビニルアセタールのアセタール化度は、例えば40~85モル%が好ましく、60~75モル%がより好ましい。ポリビニルアセタールの水酸基量は、15~35モル%が好ましい。
【0017】
本実施形態に用いられる中間膜は、単数の樹脂フィルムでも良く、複数の樹脂フィルムを貼り合わせた複層の樹脂フィルムであっても良い。例えば2枚の樹脂フィルムを重ねる場合には、2枚の樹脂フィルムの間に次に説明する光学機能層を形成することもできる。複数の樹脂フィルムを重ねる場合には、各樹脂フィルムを同じ材料で構成することもでき、各層で異なる樹脂材料で構成することもできる。また、光学機能層を形成する際に中間膜は枚葉式で供給されても良く、ウエブ状あるいは巻取式のロールで供給されても良い。
【0018】
本実施形態に用いられる中間膜は、ラミネート時に気泡などの発生を抑制する観点から、凹凸を形成したエンボス面を設けることがあり、中間膜の両面にエンボス面を設けることもでき、中間膜の片面だけにエンボス面を形成し、そのエンボス面の反対側は平坦な面のままとし、その平坦な面に光学機能層を形成するようにすることもできる。また、中間膜のエンボス面に光学機能層を形成する場合では、光学機能層の形成前に光学機能層が形成される領域のエンボス面を平坦化するような平坦化膜としての樹脂層を形成させ、その平坦化膜が存在する領域に光学機能層を形成することもできる。また、光学機能層が形成される領域のエンボスを消すために、コテなどで局所的に加熱する手法を用いることもできる。
【0019】
本実施形態に用いられる中間膜は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、接着力調整剤、耐湿剤、青色顔料、青色染料、緑色顔料、緑色染料、蛍光増色剤、赤外線吸収剤等の添加剤を含有しても良い。
【0020】
本実施形態の合わせガラスの製造方法において、光学機能層は、半波長板及び四分の一波長版を含む位相差層、偏光層、P偏光反射層、光散乱層、光反射層、光吸収層またはこれらの組み合わせからなる構成などが挙げられる。光吸収層としては黒インク層、可視光カット層、UV(紫外線)カット層、IR(赤外線)カット層などが挙げられる。これらの光学機能層は、原料を塗布して形成することや、スパッタリング法やCVD(化学的気相成長)法で形成することができる。例えば、位相差層を形成する際には、液晶材料を含む原料の塗布後に、液晶材料の配向処理を行い、さらに硬化して液晶材料の配向を固定することにより光学機能層を形成することができる。配向処理としては、偏光光を照射する光配向処理、ローラーなどで物理的に圧力を加えるラビング処理などが挙げられる。硬化方法としては、熱や光による硬化が挙げられる。液晶材料としては、特定の方向に配向する際に、液晶性を示す化合物であれば特に限定されない。このような液晶材料としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルイミドなどの主鎖型液晶ポリマーや、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリマロート、ポリエーテルなどの側鎖型液晶ポリマーや、重合性液晶などが挙げられる。液晶材料を含む原料に、紫外線硬化樹脂などの光硬化樹脂を含む場合では、紫外線照射などの方法で樹脂を硬化させることもできる。
【0021】
本実施形態の合わせガラスの製造方法において、光学機能層の塗布方法は特に限定されず、スクリーン印刷、スキャンコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ブレードコーティング、エアーナイフコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、カレンダーコーティング、メニスカスコーティング、スロットダイコーティングなどの方法を使用することができる。
【0022】
特に、光学機能層をスクリーン印刷により塗布する場合には、原料はスクリーン印刷が可能な粘度、例えば50Pa・s以上400Pa・s以下に設定されることが好ましい。そのため、スクリーン印刷に使用される原料には、粘度を高めるため、バインダーを含むことが好ましい。バインダーとしては、熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体など)、熱硬化性樹脂(熱硬化性アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等)、これらの混合物等などが挙げられる。アクリル系樹脂が好ましい。バインダーの原料全体に対する割合は、好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~50質量%、更に好ましくは15~40質量%としてもよい。
【0023】
この光学機能層の形状としては、光学機能層が形成されている領域が、光学機能層が形成されていない領域に囲まれている島状領域として形成することもでき、光学機能層が形成されている領域が中間膜の一端部から他端部まで(例えば左端から右端まで、または上端から下端まで)連続した帯状領域として形成することもできる。中間膜が例えば枚葉状とされる場合には、ノズルコーター、インクジェットコーター、スプレーコーター、若しくはディスペンサーを用いた塗布より形成することができる。また、中間膜が例えばウエブ状又はロール状とされる場合では、光学機能層は、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ノズルコーター、インクジェットコーター、若しくはスプレーコーターで塗布されることができる。この場合、塗布される原料の粘度としては、例えば1Pa・s以下の液剤が使用されることが望ましい。また、塗布方法も1回のみならず、プライマーと光学機能層のように複数回塗布する液剤を変えるような方法を採用することもできる。
【0024】
図1は合わせガラスの製造方法により製造される合わせガラスの一例を示す。
図1に示す合わせガラス10は、自動車用のフロントガラスとして自動車の運転席前に取り付けられる部品であり、一対のガラス板20が中間膜を挟んで構成されている。ガラス板20の周縁部には着色部18が黒セラミックを用いて形成され、運転席側の底部に近い側には、概ね矩形状のHUD表示部16pが設けられており、このHUD表示部16pには、中間膜に固定されて配設された光学機能層が存在する。
【0025】
このような合わせガラス10は、製造する場合には、所定の生産ライン上を加工処理しながら部品を搬送して組み立てている。
図2はこのような生産ラインの一例の模式図であり、ガラス板を位置10Aから位置10Eまで移動する間に必要な処理が行われる。2枚のガラス板は洗浄された後の位置10Aに供給される。自動車のフロントガラス用には、通常は2枚のガラス板は曲面形状を持つ。そこから生産ライン上を搬送されたガラス板は、位置10Bを経て位置10Cに到達し、そこで2枚のガラス板の間に中間膜34Aが挟み込まれる。ガラス板が位置10Dから位置10Eまで移動する間に、挟み込まれた中間膜34Aがガラス板からはみ出た箇所は自動耳切処理により切り取られ、中間膜は所定のガラス板のサイズに切り取られる。中間膜の耳切り処理をした後、2枚のガラス板とその間に挟まれた中間膜の積層体は、位置10Eから次工程に移動し、最終的にはオートクレーブ処理により加熱されて一体の合わせガラスとなる。
【0026】
このようにガラス板は生産ライン上を移動しながら組み立てられて行くが、特にこのガラス板が流れるライン上では、光学機能層自体の製作工程が組み入れられることはなく、光学機能層に対する配向工程や熱処理工程はオフラインで進めることができ、従って生産ライン上で光学機能層をガラス上に直接作製する場合と比較してガラス板の生産ラインのスループットを低下させることはない。言い換えれば、既存設備を特に増強することなく、オフラインで時間をかけて中間膜上に精密な光学機能層を形成することができる。
図2では模式的に、中間膜とその上に形成される光学機能層を示しており、中間膜34Aの位置で光学機能層を形成した状態でガラス板に挟み込まれる。中間膜30Aは、所定の印刷機若しくはコーターにより原料を塗布して全面若しくは一部だけに光学機能層が形成され、所定の配向処理と熱処理などで硬化させて固定させることで中間膜32Aとして取り出され、それが先の中間膜34Aとして生産ラインに供給される。
図2では、中間膜32Aから中間膜34Aの移動は、同じ製造室内の搬送のようにも描かれているが、実は中間膜の方の生産ラインは時間的に或いは空間的にガラス板の生産ラインと切り離すことができることを意味しており、このような別ラインによるメリットは先に説明した通りである。
【0027】
以下
図3乃至
図6を参照しながら、本実施形態の製造方法の各例について説明する。
図3は中間膜44の上に原料を塗布して光学機能層46を全面に形成する例であり、(a)は中間膜44上に光学機能層46を全面に形成した状態を示す。中間膜44は、例えば、ポリビニルブチラールなどの樹脂フィルムである。光学機能層46は中間膜44上で原料を塗布後に例えばランプ照射と加熱処理で配向処理され且つ硬化される。中間膜44上に固定された光学機能層46は一対のガラス板40,42の間に搬送される(
図3(b))。この時一対のガラス板40,42は曲面形状を持つものとすることができる。一対のガラス板40,42の間に、光学機能層46を有する中間膜44を配した後、脱気しながら一対のガラス板40,42と中間膜44を密着させ、次いでオートクレーブ処理を行って一体化した合わせガラスを製造する(
図3(c))。
【0028】
図4は中間膜44上の一部に光学機能層46を形成する例である。
図3の工程と比べて光学機能層46のサイズが異なる製造方法の例である。
図4(a)に示すように、中間膜44上の一部分に光学機能層46が形成される。これは光学機能層46の原料を全面に塗布して、一部を硬化させ、硬化していない部分を洗浄等により除去する方法や、中間膜44上に部分的に原料を塗布し、部分的に形成された原料を配向処理し硬化処理することで中間膜44上の一部分に光学機能層46を固定する方法である。この様に中間膜44上の一部に光学機能層46を形成して、光学機能層46を固定した中間膜44は一対のガラス板40,42の間に搬送される(
図4(b))。一対のガラス板40,42の間に、光学機能層46を有する中間膜44を配した後、脱気しながら一対のガラス板40,42と中間膜44を密着させ、次いでオートクレーブ処理を行って一体化した合わせガラスを製造する(
図4(c))。
【0029】
図5は中間膜44に光学機能層46を形成する工程を示す。中間膜44は例えばポリビニルブチラールなどの樹脂膜であり。平坦な面が上向きとして準備される(
図5(a))。この中間膜44上に、所要の液晶材料を含んだ原料を例えばスクリーン印刷法などにより塗布し、未硬化の状態の光学機能層46を中間膜44上の一部に形成する(
図5(b))。次に、未硬化の状態の光学機能層46にランプ50を用いた照射などを行い、光学機能層46に配向を付与し、さらに硬化させる(
図5(c))。以降、光学機能層46を固定した中間膜44は一対のガラス板40,42の間に搬送され、脱気しながら一対のガラス板40,42と中間膜44を密着させ、次いでオートクレーブ処理を行って一体化した合わせガラスを完成させる。
【0030】
図6は転写により中間膜44に光学機能層46を形成する工程を示す。平坦な面を有する剥離基材48上に、部分的に所要の液晶材料を含んだ原料を例えばスクリーン印刷法などにより塗布し、未硬化の状態の光学機能層46を剥離基材48上の一部に形成する(
図6(a))。剥離基材48は、離形可能な基材であれば、いかなる基材でも良く、樹脂シート、紙シート、ガラスシートなど種々のシート材を使用することができ、剥離剤をコーティングして剥離基材48を構成することもできる。この剥離基材48上の未硬化の状態の光学機能層46に対して、ランプ50を用いた照射などを行い、光学機能層46に配向を付与し、さらに硬化させる(
図6(b))。次に、剥離基材48の表裏を反転させて中間膜44の表面に、光学機能層46を密着させ、中間膜44に光学機能層46を転写することで、中間膜44に光学機能層46を形成する(
図6(c))。以降、上述の工程と同様に、光学機能層46を固定した中間膜44は一対のガラス板の間に搬送され、脱気しながら一対のガラス板と中間膜44を密着させ、次いでオートクレーブ処理を行って一体化した合わせガラスを完成させる。オートクレーブ処理における加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、120~160℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、10分~60分であることが好ましく、20分~40分であることがより好ましい。オートクレーブ処理において0.9~1.5MPa程度の加圧処理を行ってもよい。
【0031】
なお、転写を行う場合には、転写後に光学機能層と中間膜が直接接触する構成とすることもできる。
【0032】
上述の
図3乃至
図6に示す本実施形態の合わせガラスの製造方法においては、それぞれ中間膜44の上に光学機能層46が形成された後で、一対のガラス板に挟まれるため、ガラス板の生産ラインとは別に光学機能層46を配設できる。従って生産ライン上で光学機能層などの光学機能層をガラス上に直接作製する場合と比較してガラス板の生産ラインのスループットを低下させることはない。
【0033】
次に
図7乃至
図13を参照しながら、製造方法の工程における中間膜と光学機能層の組み合わせについてそれぞれ断面図に基づき説明する。
【0034】
図7は中間膜44上に部分的に光学機能層46を形成する例であり、原料を種々のコーティング方法や印刷方法により中間膜上に塗布して、光学機能層を形成する。塗布は1回に限定されず、複数回で塗布を完了する方法であっても良く、さらには各種のコーティング方法や印刷方法を組み合わせるようにすることもできる。
【0035】
図8は中間膜44の両面に光学機能層46h、46tが形成される例である。中間膜44の一面に光学機能層46hが形成され、他面に光学機能層46tが形成される。光学機能層46hは中間膜44を挟んで反対側の光学機能層46tと対称な位置に形成することもできる。2つの光学機能層46h、46tをこのような対称的な位置に配置することで、中間膜44を透過する光に対して、光学機能層の機能をより確実に与えることができる。また、2つの光学機能層46h、46tそれぞれの膜厚を薄くすることができるため、塗布や、配向、硬化などの処理時間を短くできる利点もある。
【0036】
図9は一対の中間膜44t、44bで光学機能層46を挟む例である。光学機能層46は上述のように液晶材料を含んだ原料を種々のコーティング方法や印刷方法により中間膜44b上に塗布して形成される。この光学機能層46の形成後、さらに中間膜44tを被せることで上側の中間膜44tは保護膜として機能し、一対のガラス板に挟持される際にも異物の混入などを未然に防止することができ、作業者の取り扱いも容易となる。また、中間膜tと中間膜bを重ねた後に、80~130℃程度に加熱して一体化する、プレラミネーション工程を行ってもよい。
【0037】
図10は中間膜44の裏面にエンボス面52が形成される例である。本例では、中間膜44の表面は平坦な面であり、中間膜44の裏面はエンボス面52とされる。エンボス面52は、ラミネート工程の前にガラス板との密着工程があり、密着工程でガラス板の周囲から脱気処理を進めた際に、効率良くガラスと中間膜44の間の気体を逃がすことができるものである。
図10の例では、中間膜44の裏面はエンボス面52であることから、ラミネートに際して効率良くガラスと中間膜44の間の気体を逃がすことができる。
【0038】
図11は
図10の工程から、中間膜44b上にもう一枚の中間膜44tを配置する例である。
図11(a)では、中間膜44bの底面にエンボス面52が形成され、反対側の表面は平坦な面で光学機能層46が形成される。次の工程では、もう1つの中間膜44tが先の中間膜44bに重なるように形成される。この光学機能層46を挟み込むように配設される中間膜44tは、表面及び裏面の両方がエンボス面52であり、よって
図11の(b)に示すように、中間膜44tの表面、中間膜44bの裏面、中間膜44tと44bの間の面の全てにエンボス面52が配されることになり、ラミネートに際して効率良くガラスと中間膜44の間の気体を逃がすことができる。また、中間膜tと中間膜bを重ねた後に、80~130℃程度に加熱して一体化する、プレラミネーション工程を行ってもよい。
【0039】
図12は光学機能層46上に接着剤層54を形成した例である。中間膜44の上に光学機能層46を形成した後は、光学機能層46を形成した中間膜44を一対のガラス板で挟むように配置させる。この際に、光学機能層46上に接着剤層54を形成すれば、比較的に容易にオートクレーブなどの一体化作業を進めることができる。接着剤層54は、例えばポリビニルブチラール用の接着剤やそれにシランカップリング剤を加えた接着剤などを使用することができる。
【0040】
図13は中間膜44の両面がエンボス面52を有する場合の例である。この場合は、
図13(a)に示すように中間膜44のエンボス面52の上に所要の樹脂材を用いて平坦化膜56を形成する。この平坦化膜56としては、液晶材料を含んだ原料を塗布して、偏光処理をさせずに硬化させるようにすることもでき、他の硬化剤などを利用して平坦化膜を形成しても良い。このようなエンボス面52の影響を遮断する平坦化膜56を形成した後、光学機能層46を形成する。この場合の光学機能層46の形成は、塗布される原料に含まれる液晶を配向処理し、そのうえで硬化処理することで行うことができる。
【0041】
次に、
図14、
図15を参照して、本発明の合わせガラスの製造方法の或る一例における各工程の流れを示す。合わせガラスの製造では、所謂大側のガラスと所謂小側のガラスを重ねて合わせガラスを構成する流れになっており、
図14の流れでは、それぞれのガラスが曲げられた後で、中間膜と重ねて積層される。他方
図15の流れでは、合わせガラスのガラスは同時に同じ工程で曲げられ、曲げられた後で中間膜が配設される。
【0042】
図14の合わせガラスの製造方法の一例は、プレス法による製法である。大側のガラス板にまず黒セラミック(
図14、
図15中では黒セラと記載する)のスクリーン印刷が施され(S10)、次いで乾燥後に同じ大側のガラス板に配線や熱線として機能する銀ペースト(いわゆる銀プリント。
図14、
図15中では銀プリと記載する)のスクリーン印刷が行われる(S12)。これらの印刷が終了して乾燥させた後、黒セラミック及び銀プリントの焼成が行われ、同時に必要な高熱により製造する自動車のデザインに合わせてプレス法により大側のガラスを曲げる(S14)。小側のガラスでは同様な黒セラミックのスクリーン印刷が施され(S16)、乾燥後に小側のガラスを大側のガラスに合うようにプレス法により曲げる(S18)。このようなガラス板の生産ラインとは別に、本実施形態の合わせガラスの製造方法では、上述のように中間膜に光学機能層が形成され(S20)、光学機能層が配設された状態の中間膜を印刷及び焼成処理と曲げ加工が完了した2枚のガラス板の間に積層する(S22)。積層後、中間膜の耳切り取り処理や脱気を伴う密着工程を経て、オートクレーブ工程では加熱により2枚のガラス板と中間膜が一体化する(S24)。光学機能層を有する中間膜が曲げ加工後でオートクレーブ処理の前に2枚のガラス板の間に挟み込まれることから、ガラスの生産ラインと光学機能層の形成は別のラインとなり、合わせガラスを量産する場合のスループットを高く維持することができる。
【0043】
図15の合わせガラスの製造方法の一例は、自重工法による製法である。黒セラミックのスクリーン印刷(S10)と銀ペーストの印刷(S12)が行われた後、大側ガラスの仮焼成が行われ、黒セラミックの印刷と銀ペーストの印刷の仮焼成がなされる(S15)。自重工法では、曲げ加工時に2枚のガラスを重ねるため、事前に黒セラミックの印刷と銀ペーストの印刷の仮焼成が必要とされる。小側のガラスでは同様な黒セラミックのスクリーン印刷が施され(S16)、乾燥後、大側のガラスと小側のガラスは一緒に曲げ加工により所定の曲率を伴う形状に加工される(S19)。以降は、曲げられたガラス板に挟まれるように、光学機能層が配設された状態の中間膜を曲げ加工が完了した2枚のガラス板の間に積層する(S22)。積層後、中間膜の耳切り取り処理や脱気を伴う密着工程を経て、オートクレーブ工程では加熱により2枚のガラス板と中間膜が一体化する(S24)。本工程においても光学機能層を有する中間膜が曲げ加工後でオートクレーブ処理の前に2枚のガラス板の間に挟み込まれることから、ガラスの生産ラインと光学機能層の形成は別のラインとなり、合わせガラスを量産する場合のスループットを高く維持することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態の合わせガラスの製造方法によれば、中間膜上に液晶材料を含む原料を塗布して形成される位相差層などの光学機能層を有するため、既存の設備の大幅な増強は不要であり、且つ高い生産性を維持できることになる。
【符号の説明】
【0045】
10 合わせガラス
16P HUD表示部
18 着色部
20 ガラス板
44 中間膜
46 光学機能層
50 ランプ
52 エンボス面
54 接着剤層
56 平坦化膜