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特開2023-141197電動車両用バッテリーケース構造およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141197
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電動車両用バッテリーケース構造およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20230928BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20230928BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230928BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20230928BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20230928BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230928BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 Z
H01M10/613
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M50/249
H01M50/271 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047398
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA33
3D203AA34
3D203BB06
3D203BB12
3D203CB09
3D203DB05
3D235BB05
3D235BB19
3D235BB22
3D235BB25
3D235CC12
3D235CC14
3D235DD35
3D235FF06
3D235FF07
3D235FF09
3D235FF12
3D235HH51
5H031KK08
5H040AA01
5H040AA03
5H040AA14
5H040AA32
5H040AS06
5H040AS07
5H040AY03
5H040JJ03
5H040LL01
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】製造コストの低減、シール性の確保、高い変形強度および高い積載効率など、電動車両用バッテリーケース構造に要求される様々な性能を同時に満足する
【解決手段】バッテリーケース100が、一対の第1フレーム部材111,112および一対の第2フレーム部材113,114を有するフレーム110と、ハット形状のトレイ120と、トレイ120とフレーム110とを接合する接合部130とを備える。トレイ120の一対のフランジ部124,125は、一対の第1フレーム部材111,112上にそれぞれ載置される。トレイ120の底壁部121および一対の側壁部122,123は、フレーム110の内側に配置される。接合部130は、トレイ120の一対の開口126,127において底壁部121および一対の側壁部122,123と第2フレーム部材113,114との境界部に沿って延設されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同方向に延びる一対の第1フレーム部材と、前記第1フレーム部材と交差する方向に延び前記一対の第1フレーム部材を連結する一対の第2フレーム部材とを有し、矩形枠状に形成されたフレームと、
底壁部と、前記底壁部に立設されて第1方向に対向する一対の側壁部と、前記一対の側壁部の端部から前記第1方向において互いに反対側に突出する一対のフランジ部と、前記第1方向と交差する第2方向の両端部に設けられた一対の開口とを有するトレイと、
前記トレイと前記フレームとを接合する接合部と、を備え、
前記一対のフランジ部が、前記一対の第1フレーム部材上にそれぞれ載置され、前記底壁部および前記一対の側壁部が、前記フレームの内側に配置され、
前記接合部が、前記一対の開口において前記底壁部および前記一対の側壁部と前記第2フレーム部材との境界部に沿って延設されている、
電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項2】
前記第2フレーム部材が、前記第1フレーム部材よりも短い、
請求項1に記載の電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項3】
前記トレイの内部空間を閉塞するトップカバーを更に備え、
前記フランジ部の上面と前記第2フレーム部材の上面とが、略面一の閉ループ状の上端面を形成し、前記トップカバーが前記上端面に取り付けられる、
請求項1または請求項2に記載の電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項4】
前記フレームが、前記一対の第2フレーム部材の内面それぞれから突出する一対の突出部を有し、
前記底壁部が一対の突出部に重ねられ、前記接合部が前記一対の突出部に設けられる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項5】
前記突出部が、前記第2フレーム部材の延在方向に見たときに、閉ループ形状の断面を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項6】
前記突出部の下面側に取り付けられるアンダーカバーを更に備える、
請求項5に記載の電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項7】
前記底壁部と前記アンダーカバーとで囲まれた空間内に配設された冷却機構を更に備える、
請求項6に記載の電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項8】
前記底壁部と前記アンダーカバーとで囲まれた空間内に配設された補強材を更に備える、
請求項6または請求項7に記載の電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項9】
前記一対の第1フレーム部材が、車体のリアサイドメンバである、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項10】
前記フレームおよび前記トレイが、アルミニウム系金属製である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の電動車両用バッテリーケース構造。
【請求項11】
互いに同方向に延びる一対の第1フレーム部材を準備する工程と、
底壁部と、前記底壁部に立設されて第1方向に対向する一対の側壁部と、前記一対の側壁部の端部から前記第1方向において互いに反対側に突出する一対のフランジ部と、前記第1方向と交差する第2方向の両端部に設けられた一対の開口とを有するトレイを準備する工程と、
前記第1フレーム部材と交差する方向に延びる一対の第2フレーム部材で前記一対の第1フレーム部材を連結し、矩形枠状のフレームを形成する工程と、
前記一対のフランジ部を前記一対の第1フレーム部材上に載置する工程と、
前記底壁部および前記一対の側壁部が前記フレームの内側に配置されている状態で、前記一対の開口において前記底壁部および前記一対の側壁部と前記第2フレーム部材との境界部に沿って前記トレイと前記フレームとを接合する工程と、を備える、
電動車両用バッテリーケース構造の製造方法。
【請求項12】
前記一対のフランジを前記一対の第1フレーム部材上に載置する工程が、前記一対の第1フレーム部材を前記一対の第2フレーム部材で連結する工程よりも後に実行される、
請求項11に記載の電動車両用バッテリーケース構造の製造方法。
【請求項13】
前記一対のフランジを前記一対の第1フレーム部材上に載置する工程が、前記一対の第1フレーム部材を前記一対の第2フレーム部材で連結する工程よりも前に実行される、
請求項11に記載の電動車両用バッテリーケース構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用バッテリーケース構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両は、走行駆動源に電力を供給するバッテリーを格納したバッテリーケースを搭載している。バッテリーケースは、航続距離を確保するための高い積載効率、衝突時にバッテリーを保護するための高い変形強度、バッテリーの水濡れを防ぐための高いシール性、および動力性能を向上させるための軽量化のように、様々な性能を求められる。
【0003】
一般に、バッテリーケースの構造は、いわゆる「深絞り成形タイプ」と、いわゆる「溶接タイプ」とに大別され得る。これら2つのタイプでは、利点と欠点とが相反する。
【0004】
深絞り成形タイプでは、板材の深絞り加工によって製作されたバスタブ状のトレイが用いられる。底板および周壁が一体化されるため、高いシール性が得られる。しかし、深絞り加工の特質上、角部の湾曲および周壁の傾斜が必要となるため、積載効率が低い。また、高強度の素材は、一般に伸びが低いものが多く、深絞り加工に不向きとされる。要求される変形強度を確保するためには、トレイ外周部にさらに補強が必要となり、積載効率が悪い。
【0005】
溶接タイプでは、板状のトレイが、矩形枠状のフレームに溶接され、バッテリーケースの底板を形成する。各構成部品の成形が容易であるため、高強度の素材を選択することが許容される。よって、大きな補強を要さず高い変形強度が得られ、軽量化を実現しやすい。角部の湾曲や周壁の傾斜が解消されるように部品の成形および組立を行うことも容易であり、高い積載効率が得られる。しかし、溶接部のシール性を保証するための対策が必要となる。溶接作業そのものがコストを上昇させる要因となることに加え、シール剤を塗布するシーリング作業も付帯するため、製造コストが高い。
【0006】
2つのタイプを複合したような構造も提案されている。例えば、特許文献1では、ハット形状の2枚の板材を組み合わせることにより、バスタブ状のトレイが製作される。角部に形成されるクリアランスを塞ぐため、角部には更に別の部品が接合される。特許文献2では、トレイを浅い絞り加工品で構成し、フレームの内周面に全周溶接する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-133044号公報
【特許文献2】特開2021-154840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の複合型によると、溶接タイプと同様の利点が得られる可能性がある。しかし、特許文献1では、溶接線の短縮が図られてはいるものの、部品点数が多く、構造および形状が複雑である。そのため、密閉空間の形成が困難である。特許文献2では、部品点数の削減が図られてはいるものの、溶接線が長い。そのため、製造コストの低減が困難である。このように、溶接タイプの欠点が必ずしも解消されておらず、改善の余地がある。
【0009】
本発明は、製造コストの低減およびシール性の確保をはじめ、高い変形強度や積載効率など、電動車両用バッテリーケース構造に求められる様々な性能を同時に満たすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、互いに同方向に延びる一対の第1フレーム部材と、前記第1フレーム部材と交差する方向に延び前記一対の第1フレーム部材を連結する一対の第2フレーム部材とを有し、矩形枠状に形成されたフレームと、底壁部と、前記底壁部に立設されて第1方向に対向する一対の側壁部と、前記一対の側壁部の端部から前記第1方向において互いに反対側に突出する一対のフランジ部と、前記第1方向と交差する第2方向の両端部に設けられた一対の開口とを有するトレイと、前記トレイと前記フレームとを接合する接合部と、を備え、前記一対のフランジ部が、前記一対の第1フレーム部材上にそれぞれ載置され、前記底壁部および前記一対の側壁部が、前記フレームの内側に配置され、前記接合部が、前記一対の開口において前記底壁部および前記一対の側壁部と前記第2フレーム部材との境界部に沿って延設されている、電動車両用バッテリーケース構造を提供する。
【0011】
この構成によれば、水等の外部からの異物をトレイ内に進入させ得る経路が、一対の側壁部および底壁部と第2フレーム部材との境界部に形成され得る。この境界部に沿って接合部が延設されているので、シール性を確保することができる。フレームの内側では、底壁部および一対の側壁部が、第1フレーム部材と平行に延びる一対の角部を形成する。異物がこの角部を介してトレイ内に進入するおそれはなく、第1フレーム部材と平行な方向に接合部を延設する必要はない。そのため、フレームの内周面の全周に接合部を設ける場合と対比して、製造コストの上昇を抑制できる。さらに、トレイは、全体としてハット形状に形成されるため、ほぼ曲げ加工のみで成形可能であり、深絞り成形を伴うバスタブ形状と対比して、トレイを容易に成形することができる。そのため、トレイに高強度の素材を選択することが許容され、大きな補強を要さずに高い変形強度が得られる。また、曲げ加工のみで成形できるため、角部の湾曲を最小限にすることや側壁部の傾斜を解消するようにして部品の成形および組立を行うことも容易であり、高い積載効率が得られる。
【0012】
前記第2フレーム部材が、前記第1フレーム部材よりも短くてもよい。
【0013】
この構成によれば、第2フレーム部材が第1フレーム部材よりも長い場合と対比して、接合部の全長が短くなる。そのため、製造コストの上昇を一層抑制できる。
【0014】
前記電動車両用バッテリーケース構造が、前記トレイの内部空間を閉塞するトップカバーを更に備え、前記フランジ部の上面と前記第2フレーム部材の上面とが、略面一の閉ループ状の上端面を形成し、前記トップカバーが前記上端面に取り付けられてもよい。
【0015】
この構成によれば、フランジ部が第2フレーム部材とともに略面一の上端面を形成し、トップカバーがこの上端面に取り付けられるため、トップカバーと上端面との間で密封構造を構成しやすい。製造コストの上昇を抑えてシール性を確保することができる。
【0016】
前記フレームが、前記一対の第2フレーム部材の内面それぞれから突出する一対の突出部を有し、前記底壁部が一対の突出部に重ねられ、前記接合部が前記一対の突出部に設けられてもよい。
【0017】
この構成によれば、底壁部を突出部に重ね合わせた状態で、底壁部と第2フレーム部材との境界部に沿って接合部が延設される。底壁部を突出部の内面と突き合わせる必要がないため、接合部を容易に設けることができるとともに、底壁部に高い寸法精度が要求されない。そのため、製造コストの上昇を一層抑制できる。
【0018】
前記突出部が、前記第2フレーム部材の延在方向に見たときに、閉ループ形状の断面を有してもよい。
【0019】
この構成によれば、突出部が、上下方向に一定の寸法を有した閉ループ形状の断面を有する。バッテリーの重量を突出部で支持することができる。
【0020】
前記電動車両用バッテリーケース構造が、前記突出部の下面側に取り付けられるアンダーカバーを更に備えてもよい。
【0021】
この構成によれば、フレームの下面およびトレイの底壁部の下面の凹凸が、アンダーカバーで覆われるので、車両の空力性能を向上させることができる。
【0022】
前記電動車両用バッテリーケース構造が、前記底壁部と前記アンダーカバーとで囲まれた空間内に配設された冷却機構を更に備えてもよい。
【0023】
この構成によれば、底壁部とアンダーカバーとで囲まれた空間を有効活用して、冷却性能に優れたバッテリーケース構造を提供できる。アンダーカバーで冷却機構を保護することができる。
【0024】
前記電動車両用バッテリーケース構造が、前記底壁部と前記アンダーカバーとで囲まれた空間内に配設された補強材を更に備えてもよい。
【0025】
この構成によれば、底壁部とアンダーカバーとで囲まれた空間を有効活用して、高い衝突強度を有するバッテリーケース構造を提供できる。
【0026】
前記一対の第1フレーム部材が、車体のリアサイドメンバであってもよい。
【0027】
この構成によれば、車体のフレーム部材がバッテリーケース構造の構成を兼用するので、バッテリーケース構造が簡素化される。
【0028】
前記フレームおよび前記トレイが、アルミニウム系金属製であってもよい。
【0029】
この構成によれば、バッテリーケース構造を軽量化することと、高い強度を確保することとを実現できる。また、フレームとトレイとを溶接により容易に接合することができる。
【0030】
本発明の第2の態様は、互いに同方向に延びる一対の第1フレーム部材を準備する工程と、底壁部と、前記底壁部に立設されて第1方向に対向する一対の側壁部と、前記一対の側壁部の端部から前記第1方向において互いに反対側に突出する一対のフランジ部と、前記第1方向と交差する第2方向の両端部に設けられた一対の開口とを有するトレイを準備する工程と、前記第1フレーム部材と交差する方向に延びる一対の第2フレーム部材で前記一対の第1フレーム部材を連結し、矩形枠状のフレームを形成する工程と、前記一対のフランジ部を前記一対の第1フレーム部材上に載置する工程と、前記底壁部および前記一対の側壁部が前記フレームの内側に配置されている状態で、前記一対の開口において前記底壁部および前記一対の側壁部と前記第2フレーム部材との境界部に沿って前記トレイと前記フレームとを接合する工程と、を備える、電動車両用バッテリーケース構造の製造方法を提供する。
【0031】
この方法によれば、上記構造と同様にして、製造コストの上昇を抑制することができ、シール性を確保することができる。また、軽量で高い変形強度を得ることができ、高い積載効率を得ることができる。
【0032】
前記一対のフランジを前記一対の第1フレーム部材上に載置する工程が、前記一対の第1フレーム部材を前記一対の第2フレーム部材で連結する工程よりも後に実行されてもよい。
【0033】
前記一対のフランジを前記一対の第1フレーム部材上に載置する工程が、前記一対の第1フレーム部材を前記一対の第2フレーム部材で連結する工程よりも前に実行されてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、電動車両用バッテリーケース構造に求められる様々な性能を同時に満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動車両用のバッテリーケースを搭載した電気自動車の側面図。
図2】電気自動車の車体の平面図。
図3】バッテリーケースの概略断面図。
図4】バッテリーケースの分解斜視図である。
図5】バッテリーケースの上部構造を除いた組立体の分解斜視図。
図6】フレームの分解斜視図。
図7】接合部が設けられる前の状態を示すケーシング本体の部分斜視図。
図8】接合部が設けられた後の状態を示すケーシング本体の部分斜視図。
図9】ケーシング本体の断面図。
図10】バッテリーケースの上部構造を除いた組立体の平面図。
図11】バッテリーケースの断面図。
図12】バッテリーケースの断面図。
図13】本発明の第2実施形態に係る電動車両用のバッテリーケースのフレームの分解斜視図。
図14】ケーシング本体の分解斜視図。
図15】接合部が設けられた後の状態を示すケーシング本体の部分斜視図。
図16】バッテリーケースの断面図。
図17】本発明の第3実施形態に係る電動車両用のバッテリーケースの断面図。
図18】バッテリーケースの断面図。
図19】本発明の第4実施形態に係る電動車両用のバッテリーケースの上部構造を除いた組立体の平面図。
図20】バッテリーケースの断面図。
図21】バッテリーケースの断面図。
図22】本発明の第5実施形態に係る電動車両用のバッテリーケースのケーシング本体の分解斜視図。
図23】バッテリーケースの製造方法の説明図。
図24】ケーシング本体の部分斜視図。
図25】ケーシング本体の部分斜視図。
図26A】上記実施形態の第1変形例に係る車体の平面図。
図26B】上記実施形態の第2変形例に係る車体の平面図。
図27A】本発明の第6実施形態に係る電動車両用のバッテリーケースを搭載した電気自動車の車体の平面図。
図27B】第6実施形態の変形例に係る車体の平面図。
図28】バッテリーケースの分解斜視図。
図29】バッテリーケースの分解斜視図。
図30】バッテリーケースの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明における方向は、特段断らなければ、電動車両1に搭載された状態での車両の方向を基準とする。図中のX方向は車長方向(前後方向)と対応し、Y方向は車幅方向(左右方向)と対応し、Z方向は車高方向(上下方向)と対応する。
【0037】
(第1実施形態)
[電動車両]
図1を参照して、電動車両1は、バッテリー30を格納したバッテリーケース100を搭載している。電動車両1は、バッテリー30から供給される電力によって不図示のモータを駆動させることによって走行する。例えば、電動車両1は、電気自動車またはプラグインハイブリッド車等であり得る。車両の種類は、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、またはその他のモビリティ等であり得る。以下では、電動車両1として、乗用車タイプの電気自動車の場合を例に挙げて説明する。
【0038】
図2を参照して、電動車両1の車体フレーム200は、前輪2と後輪3との間に且つ電動車両1の下部に配置される一対のサイドシル201(ロッカー部材)および一対のクロスメンバ202,203を有する。一対のサイドシル201は、電動車両1の車幅方向両端で、車長方向Xに延びる。前のクロスメンバ202は、一対のサイドシル201の前端部同士を車幅方向Yに連結する。後のクロスメンバ203は、一対のサイドシル201の後端部同士を車幅方向Yに連結する。
【0039】
図2および図3を参照して、バッテリーケース100は、一対のサイドシル201と一対のクロスメンバ202,203とで囲まれた平面視矩形状の空間に配置される。この空間は、車室Rの床面を構成するフロアパネル300で覆われる。バッテリーケース100は、フロアパネル300の下方に配置され、車体フレーム200に支持される。サイドシル201は、複数枚の金属板を貼り合わせることによって形成されており、電動車両1の側方からの衝撃に対して車室Rおよびバッテリーケース100を保護する。
【0040】
[バッテリーケースの構成要素]
図4および図5を参照して、バッテリーケース100は、矩形枠状のフレーム110と、ハット形状のトレイ120とを備える。バッテリーケース100には、フレーム110とトレイ120とを接合する接合部130が設けられる。フレーム110およびトレイ120は、互いに接合されることによってケース本体91を構成する。
ケース本体91の下部には下部構造92が設けられ、ケース本体91の内部には内部構造93が設けられる。ケース本体91、下部構造92および内部構造93により、ケース組立体90が構成される。ケース組立体90の上部に上部構造96が設けられ、これによりバッテリーケース100が構成される。
バッテリーケース100は、下部構造92として、アンダーカバー140、冷却構造150および補強材160を更に備える。バッテリーケース100は、内部構造93として、クロスメンバ170およびブラケット175を更に備える。バッテリーケース100は、上部構造96として、トップカバー180およびガスケット190を更に備える。
【0041】
[フレーム]
図4図6を参照して、フレーム110は、バッテリーケース100の骨格を形成する。フレーム110は、一対の第1フレーム部材111,112および一対の第2フレーム部材113,114を有する。
【0042】
一対の第1フレーム部材111,112は、互いに同方向に直線状に延びる。一対の第2フレーム部材113,114は、一対の第1フレーム部材111,112と交差する方向、典型的には直交する方向に直線状に延びる。電動車両1への搭載状態では、一対の第1フレーム部材111,112が車長方向に延び、一対の第2フレーム部材113,114が車幅方向に延びる。
【0043】
前側の第2フレーム部材113は、一対の第1フレーム部材111,112の前端部同士を車幅方向に連結する。後側の第1フレーム部材114は、一対の第1フレーム部材111,112の後端部同士を車幅方向に連結する。これにより、矩形枠状のフレーム110が形成される。連結の方法は、特に限定されず、溶接でもよいし、機械的係合でもよい。以下では、溶接が採用されるものとする。
【0044】
なお、「フレーム110の内側」とは、少なくとも、これら4つのフレーム部材111~114の内周面で囲まれた空間領域である。更に、4つのフレーム部材111~114の外周面により画定される平面視矩形状の外形輪郭に対し、内側の領域を含む概念であってもよい。
【0045】
第2フレーム部材113,114は、第1フレーム部材111,112よりも短い。本実施形態では、車長方向は、フレーム110の長手方向と対応し、車幅方向は、フレーム1100の短手方向と対応する。
【0046】
第1フレーム部材111,112は、車長方向に垂直な断面においてL字状に形成される。第1フレーム部材111,112は、この垂直断面内で上下方向に延びる周壁部111a,112aと、周壁部111a,112aの下端部からフレーム110の外側へ突出する脚部111b,112bとを有する。第2フレーム部材113,114は、車幅方向に垂直な断面において、L字状に形成される。第2フレーム部材113,114は、この垂直断面内で上下方向に延びる周壁部113,114aと、周壁部113a,114aの下端部からフレーム110の内側へ突出する突出部113b,114bとを有する。
【0047】
第1フレーム部材111,112および第2フレーム部材113,114は、アルミニウム系金属の押出成形により製作される。第1フレーム部材113,114および第2フレーム部材113,114は、中空状である。周壁部111a,112a,113a,l14aの内部は、水平な仕切壁111c,113c,114cにより上下方向に仕切られている。周壁部111a,112aの下端部と脚部111b,112bの内部は、鉛直の仕切壁111d,111a,112d,112eにより車幅方向に仕切られている。仕切壁111e,112e,113e,114eは、周壁部111a,112a,113a,114aの一部も兼ねる。
【0048】
本実施形態では、突出部113b,114bが、第2フレーム部材113,114の延在方向(例えば、車幅方向)に見たときに、閉ループ形状の断面を有する。つまり、突出部113,114は、閉ループ形状で囲まれた中空を形成するために十分に大きい高さを有する。閉ループ形状は、一例として矩形であり、突出部113b,114bは、上下方向に離れた上面および下面を有する。このような断面構造は、押出成形により容易に製作可能である。
【0049】
[トレイ]
図4および図5を参照して、トレイ120は、底壁部121、一対の側壁部122,123および一対のフランジ部124,125を有する。一対の側壁部122,123は、底壁部121に立設され、互いに第1方向DR1に対向し、第1方向DR1と直交する第2方向DR2に延びている。一対のフランジ部124,125は、一対の側壁部122,123の上端部から第1方向DR1において反対側に突出する。
【0050】
このように、トレイ120は、全体としてハット形状に形成されている。換言すれば、トレイ120は、底壁部121に立設されて第2方向DR2に対向するような一対の側壁部を有していない。代わりに、トレイ120は、底壁部111の端縁および一対の側壁部122,123の端縁の連続により画定された一対の開口126,127を有している。
【0051】
なお、本実施形態では、第1方向DR1が、第2フレーム部材113,114の延在方向(すなわち、車幅方向あるいはフレーム110の短手方向)である。第2方向DR2が、第1フレーム部材111,112の延在方向(すなわち、車長方向あるいはフレーム110の長手方向)である。
【0052】
底壁部121は、平面視で矩形状に形成される。一対の短辺が、水平な第1方向DR1に互いに平行に延び、一対の長辺が、第1方向DR1と直交する水平な第2方向DR2に互いに平行に延びる。一対の側壁部122,123は、底壁部121の短辺に立設されており、第1方向DR1に見たときに長方形状に形成される。一対の短辺が、上下方向に互いに平行に延び、一対の長辺が、第2方向DR2に互いに平行に延びる。一対のフランジ部124,125は、平面視で第2方向DR2に長尺の長方形状である。
【0053】
トレイ120は、板金の曲げ加工によって成形される。本実施形態では、トレイ120は、フレーム110に溶接によって接合される。そのため、トレイ120の素材は、フレーム110と同種金属であることが好ましい。例えば、トレイ120は、フレーム110と同様に、アルミニウム系金属で製作される。
【0054】
[ケース本体]
以下、バッテリーケース100の製造方法の手順に沿って、バッテリーケース100の構造をより詳細について説明する。
【0055】
ケース本体91の組立では、まず、図6に示すように、一対の第1フレーム部材111,112が準備される。次に、一対の第1フレーム部材111,112が一対の第2フレーム部材113,114で連結され、矩形枠状のフレーム110が形成される。次に、トレイ120の第1方向DR1が車幅方向に向けられ、第2方向DR2が車長方向に向けられた姿勢で、トレイ120の底壁部121および一対の側壁部122,123が、フレーム110の内側に上から挿入される。これにより、底壁部121および一対の側壁部122,123がフレーム110の内側に配置され、一対のフランジ部124,125が、一対の第1フレーム部材110上に載置される。次に、トレイ120がフレーム110に接合される。これにより、ケース本体91が構成される。バッテリー30は、トレイ120の内部、すなわちケース本体91の内部に収容される。
【0056】
図5を参照して、一対の側壁部122,123の外面同士の間隔は、第1フレーム部材111,112の周壁部111a,112aの内面同士の間隔よりも僅かに短い。底壁部121および一対の側壁部122,123の車長方向における寸法は、第2フレーム部材113,114の周壁部113a,114aの内面同士の間隔よりも僅かに短い。よって、トレイ120の挿入を容易に行える。
【0057】
第1フレーム部材111,112の外底面は、第2フレーム部材113,114の外底面と上下方向においてほぼ同じ位置にある。他方、第1フレーム部材111,112の外上面は、フランジ部124,125の板厚分だけ、第2フレーム部材113,114の外上面よりも下方に位置している。よって、図4に示されるように、フランジ部124,125が第1フレーム部材111,112に載置されると、フランジ部124,125の上面と第2フレーム部材113,114の上面とが、ケーシング本体91の上端面91aを形成する。上端面91aは、略面一の閉ループ状を呈する。
【0058】
図5および図6を参照して、4つのフレーム部材111~114は、第2フレーム部材113,114が一対の第1フレーム部材111,112の間に車幅方向に挟まれる状態で連結されている。第2フレーム部材113の外周面(外前面)は、第1フレーム部材111,112の前端と車長方向においてほぼ同じ位置にある。後側の第2フレーム部材114の外周面(後外面)は、第1フレーム部材111,112の後端と車長方向においてほぼ同じ位置にある。
【0059】
そのため、第1フレーム部材111,112の上面は、第2フレーム部材113,114の内周面を基準として、車長方向両側へ突出する。その突出量は、第2フレーム部材113,114の周壁部113a,114aの車長方向における寸法と概ね等しい。これに合わせて、フランジ部124,125も、側壁部122,123の両端縁を基準として、その長手方向両側へ突出している。よって、第1フレーム部材111,112が第2フレーム部材113,114を挟み込む構造において、第1フレーム部材111,112の上面の全体がフランジ部124,125で覆われ、平滑な上端面91a(図4を参照)が得られる。
【0060】
図7および図8を参照して、フランジ部124,125の下面から底壁部121の外下面までの距離は、第1フレーム部材111,112の上面から第2フレーム部材113,114の突出部113b,114bまでの距離とほぼ等しい。別の言い方では、フランジ部124,125の上面から底壁部121の外下面までの距離は、第2フレーム部材113,114の周壁部113a,114aの上面から突出部113b,114bの上面までの距離とほぼ等しい。そのため、一対のフランジ部124,125が第1フレーム部材111,112に載置されるときに、底壁部121が突出部113b,114b上に載置される。
【0061】
このようにして、トレイ120がフレーム110に挿入および載置された状態で、バッテリーケース100に接合部130が設けられる。本実施形態では、フレーム110およびトレイ120が、互いに同種の金属で製作されている。そのため、接合手法として公知の一般的の溶接(例えば、隅肉溶接)を採用することにより、接合部130において十分な接合強度を得ることができる。この場合、接合部130は、溶接線あるいは溶接ビードである。
【0062】
図4および図8を参照して、接合部130は、一対の開口126,127において、底壁部121および一対の側壁部122,123と第2フレーム部材113,114との境界部に沿って延設されている。すなわち、接合部130は、第2方向DR2(車長方向)に対を成す。本実施形態では、底壁部121および一対の側壁部122,123が、4つの周壁部111a,112a,113a,114aの内側に配置される。そのため、接合部130が、トレイ120の内部に設けられる。
【0063】
図4を参照して、一対の接合部130の各々は、概略U字状である。各接合部130は、底壁部121と第2フレーム部材113,114の下部との境界部に沿って車幅方向に延びる水平部131と、一対の側壁部122,123と第2フレーム部材113,114の車幅方向両端部それぞれとの境界部に沿って上下方向に延びる一対の鉛直部132とを含む。水平部131の両端は、一対の鉛直部132それぞれの下端と連続する。更に、各接合部130は、一対のフランジ部124,125と第2フレーム部材113,114の周壁部113a,114aの車幅方向両端部それぞれとの境界部に沿って車長方向に延びる一対の上面部133を含む。
【0064】
図8を参照して、本実施形態では、底壁部121が突出部113b,114b上に載置される。そのため、底壁部121と第2フレーム部材113,114の下部との境界部は、底壁部121および周壁部113a,114aの内面のみならず、底壁部121および突出部113b,114bの上面によっても形成される。そのため、底壁部121と第2フレーム部材113,114との接合に、突合せ溶接ではなく隅肉溶接を採用可能である。したがって、底壁部121の車長方向の寸法が第2フレーム部材113,114の内面同士の間隔に対して精緻に一致していなくても、底壁部121と第2フレーム部材113,114との接合信頼性が高くなる。
【0065】
接合部130は、バッテリーケース100の外部からバッテリーケース100の内部への異物(特に、水)の進入経路を塞ぐ役割も果たしている。仮に異物が、底壁部121の下面と突出部113b,114bの上面との間のクリアランスに下から進入しても、水平部131は、異物がそこからトレイ120内に進入することを防止する。仮に異物が、側壁部122,123と第1フレーム部材111,112との間のクリアランスに下から進入したり、第1フレーム部材111,112と第2フレーム部材113,114との間のクリアランスに横から進入したりしても、鉛直部132は、異物がそこからトレイ120内に進入することを防止する。仮に異物が、第1フレーム部材111,112と第2フレーム部材113,114との間のクリアランスに横から進入したとしても、上面部133は、異物がそこから第2フレーム部材113,114またはフランジ部124,125の上面側を介してトレイ120内に進入することを防止する。
【0066】
バッテリーケース100には、車長方向に延びる一対の接合部130が設けられる一方、車幅方向に延びる接合部は設けられていない。この点につき、本実施形態に係るトレイ120では、底壁部121が一対の側壁部122,123と継ぎ目なく連続している。そのため、底壁部121の車幅方向端部付近からトレイ120内へと異物を進入させ得る経路は、底壁部121および側壁部122,123の一体化により、元より閉塞されている。底壁部121を第1フレーム部材111,112の内周面に下側から溶接することも考えられるが、接合強度の観点からもシール性の観点からも、このような接合の省略が許容される。
【0067】
その結果として、平板状のトレイや浅い絞り加工品であるトレイがフレームの内面に全周溶接される場合と対比し、溶接長を短縮することができる。この点につき、1組の鉛直部132および上面部133の長さの和(すなわち、第2フレーム部材113,114の周壁部113a,113bの上面から突出部113b,114bの上面までの高さと、第2フレーム部材113,114の周壁部113a,114aの車幅方向における寸法との和)は、第2フレーム部材113,114の内面同士の間隔の半分よりも短い。このような寸法関係に基づき、全周溶接に対する溶接長の短縮効果が得られる。したがって、バッテリーケース100において、シール性を確保でき、かつ、製造コストの上昇を抑制できる。
【0068】
接合部130は、第1フレーム部材111,112との境界部ではなく第2フレーム部材113,114との境界部に沿って設けられる。第2フレーム部材113,114は、第1フレーム部材111,112よりも短い。逆の場合と対比して、接合部130の長さを短くすることができ、製造コストを一層低減できる。
【0069】
フレーム110は、押出成形品である複数のフレーム部材111~114により構成され、トレイ120は、単体の板金の曲げ加工により成形される。そのため、フレーム部材111~114もトレイ120も、角部をほぼ直角に成形することが容易である。したがって、トレイ120内においてバッテリー30を配置不可能なデッドスペースが小さくなる。すなわち、高い積載効率が得られる。バッテリー30が直方体状の外形を有する場合には、特にその効果が大きくなる。
【0070】
図5および図6を参照して、このようにしてケース本体91が構成されると、下部構造92、内部構造93および上部構造96がケーシング本体91に取り付けられ、バッテリー30がトレイ120内に収容される。下部構造92と内部構造93の取付順序は、特に限定されない。上部構造96は、下部構造92および内部構造93がケース本体91に取り付けられ、バッテリー30がトレイ120内に収容された後に、ケース本体91に取り付けられる。これにより、バッテリー30が密閉された空間内に収容された状態で、バッテリーケース100が完成する。
【0071】
[下部構造]
図11および図12を参照して、ケース本体91の下部では、トレイ120の底壁部121の下面が中央に位置づけられ、フレーム110の下端部が底壁部121の周囲を取り囲むとともにトレイ120に対して下方に突出する。このような凹凸を有するケース本体91の下部に、アンダーカバー140が取り付けられる。アンダーカバー140は、突出部113b,114bの下面側を含めてフレーム110の下端部を下側から覆い、ボルト等の結合具を用いてフレーム110の下端部に結合される(図3を参照)。
【0072】
前述したとおり、突出部113b,114bは閉ループ形状の断面を有し、底壁部121が突出部113b,114b上に載置されている。そのため、アンダーカバー140が突出部113b,114bの下面側に取り付けられると、フレーム110の内側かつトレイ120の下方に、底壁部121の下面とアンダーカバー140の上面とで囲まれた空間が形成される。この空間の周囲は、第1フレーム部材111,112の周壁部111a,112aの内面下端部と、突出部113b,114bの側面とで閉鎖されている。
【0073】
アンダーカバー140の下面は、空力を考慮した形状(例えば、平坦面など)に形成されている。これにより、アンダーカバー140が適用されずケーシング本体91の下部に凹凸が残る場合と対比して、電動車両1の動力性能を向上させることができる。
【0074】
冷却機構150および1以上の補強材160は、この空間内に設けられる。冷却機構150は、例えば、水冷式である。冷却機構150は、冷媒を通過させるための通路を形成する通路形成部材151や、通路形成部材151に取り付けられて配管が接続されるねじ込み接手(不図示)などによって構成される。通路形成部材151は、例えば、平板形状であり、その表面に溝151aが形成されている(図5も参照)。通路形成部材151は、底壁部121の底面に貼り合わされる。これにより、溝151aが底壁部121で閉鎖され、冷媒を通過させる通路が構成される。
【0075】
補強材160は、アンダーカバー140の上面に取り付けられる。補強材160は、例えば、車幅方向に直線状に延びる断面ハット形の長尺金属部材である。本実施形態では、複数本の補強材160が、車長方向に間隔をおいて並べられており、互いに平行に延びている(図5も参照)。
【0076】
[内部構造]
次に、内部構造93に関し、図10図12を参照して、トレイ120の内部には、複数本のクロスメンバ170が設けられる。クロスメンバ170は、車幅方向に直線状に延びる長尺金属部材であり、その両端部がブラケット175を介してトレイ120の一対の側壁部122,123の内面に接合される。この接合の手法も特に限定されないが、シール性の確保および部品点数の削減の観点から溶接が好ましい。溶接を容易に行えるようにするため、クロスメンバ170およびブラケット175の素材もトレイ120の素材と同種金属であることが好ましい。
【0077】
クロスメンバ170および補強材160により、バッテリーケース100の車幅方向における変形強度が向上する。また、冷却機構150によりバッテリー3の温度上昇を抑制できる。冷媒がトレイ120に直接的に接するため、高い冷却性能を発揮できる。
【0078】
[上部構造]
図4を参照して、ケーシング本体91に下部構造92および内部構造93が取り付けられた状態で、バッテリー30が、トレイ120内に上方から挿入されて収容される。その後、バッテリー30が収容された空間を上から閉鎖するために上部構造96がケース組立体90に取り付けられる。
【0079】
ガスケット190は、平面視で閉ループ形状であり、フランジ部124,125および第2フレーム部材113,114で構成されるケース本体91の上端面91a上に載置される。トップカバー180は、ガスケット190を介して上端面91a上に取り付けられる。この取付においては、上からボルト等の連結具が用いられ、連結具の締付トルクに基づいてガスケット190が上下方向に潰され、トップカバー180とケース組立体90との間でシール性が確保される(図3を参照)。
【0080】
図9を参照して、本実施形態では、部品点数が極力削減されている。そのため、トップカバー180が取り付けられる相手であるケース本体91の上部が簡素に構成されている。特に、本実施形態では、第1フレーム部材111,112の上面が予め第2フレーム部材113,114に対して下方に位置づけられ、フランジ部123,124が第1フレーム部材111,112に載置された状態において、上端面91aが全体にわたって略面一となり、平滑性が確保されている。そのため、ガスケット190を均一に上下方向に潰すことができ、それにより上端面91aの全周にわたって高いシール性を保証することができる。
【0081】
(第2実施形態)
次に、図13図16を参照して、上記の実施形態との相違を中心に、第2実施形態について説明する。本実施形態においても、矩形枠状のフレーム110が予め形成されてから、トレイ120がフレーム110に組付けられる。4つのフレーム部材111~114は、第1フレーム部材111,112が一対の第2フレーム部材113,114の間に車幅方向に挟まれた状態で連結される。このため、第1フレーム部材111,112の周壁部111a,112aの上面の車長方向における寸法は、第2フレーム部材113,114の内面同士の間隔と略等しい。
【0082】
これに合わせて、トレイ120のフランジ部124,125は、車長方向において、側壁部122,123と同じ寸法を有する。トレイ120がフレーム110の内側に上から挿入されると、一対のフランジ部124,125が一対の第1フレーム部材111,112の上面に載置される。第1フレーム部材111,112の上面の全体が、フランジ部124,125で覆われ、フランジ部124,125の上面と第2フレーム部材113,114の上面とが、略面一の閉ループ状の上端面91aを形成する。そのため、上部構造において高いシール性を確保することができる。
【0083】
なお、接合部130の上面部133は、第1フレーム部材111,112と第2フレーム部材113,114との位置関係の変更に合わせ、一対のフランジ部124,125と第2フレーム部材113,114の周壁部113a,114aとの境界部に沿って車幅方向に延びるよう変更されている。上面部134は、上記実施形態と同様、トレイ120内への進入経路を塞ぐ役割を果たす。
【0084】
第2フレーム部材113,114の突出部113b,114bは、閉ループ形状の断面を有しておらず、平板状である。この場合においても、接合部130の水平部131の形成には、隅肉溶接を採用可能である。突出部113b,114bが平板状であるため、底壁部121の下面とフレーム100の下面との間に高低差がほとんど生じない。この場合、下部構造92が省略されてもよい。
【0085】
(第3実施形態)
次に、図17および図18を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第3実施形態について説明する。本実施形態のケーシング本体91は、第2実施形態と同様である。本実施形態では、内部構造93が省略されている。これにより、積載効率が向上する。代わりに、第1および第2実施形態において内部構造93を構成していたクロスメンバ170が、下部構造92を構成している。すなわち、複数本のクロスメンバ170が、ケーシング本体91の下面(トレイ120の底壁部121の下面)に取り付けられている。クロスメンバ170は、車長方向に直線状に延び、車幅方向に間隔をおいて並べられている。上記実施形態では、クロスメンバ170が縦長の姿勢で配置されていたが、本実施形態では横長の姿勢で配置されている。これにより、バッテリーケース100全体を低背に構成することができる。
【0086】
クロスメンバ170は、第1フレーム部材111,112の突出部111b,112bの下面にまで延びている。クロスメンバの長尺化により、バッテリーケース100の変形強度が向上する。
【0087】
(第4実施形態)
次に、図19図21を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第4実施形態について説明する。上記各実施形態では、フランジ部124,125が載置される第1フレーム部材111,112が、第2フレーム部材113,114よりも長い。これに対し、本実施形態では、フランジ部124,125が載置される第1フレーム部材111,112が、第2フレーム部材123,124よりも短い。第1フレーム部材111,112は車幅方向に延び、第2フレーム部材113,114は車長方向に延びている。このように長短の関係が逆であっても、全周溶接と対比した場合に、製造コストを低減することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、第2フレーム部材113,114が、フレーム110の内側に突出して底壁部121が載置される突出部113b,114bを備えるとともに、フレーム110の外側に突出する脚部113d,114dを備えている。代わりに、第1フレーム部材111,112から脚部が省略されている。このように、フランジ部が載置される部材の変更により、フレーム部材の構成も適宜変更される。
(第5実施形態)
次に、図22図25を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第5実施形態について説明する。上記各実施形態では、先にフレーム110を構成して、その後にトレイ120がフレーム110に組み付けられている。これに対し、本実施形態では、トレイ120を第1フレーム部材111,112上に載置した後に、トレイおよび第1フレーム部材111,112の組立体に第2フレーム部材113,114が組み付けられる。
【0089】
この場合、図22に示すように、トレイ120のフランジ部124,125は、底壁部121および一対の側壁部122,123と車長方向に同じ寸法を有する。まず、一対のフランジ部124,125が、第1フレーム部材111,112上に載置される。一対のフランジ部124,125で第1フレーム部材111,112の上面の全体が覆われるようにして、一対の第1フレーム部材111,112がトレイ120に対して車長方向に位置決めされる。第1フレーム部材111,112の周壁部111a,112aがトレイの120の側壁部122,123の外面に接するようにして、一対の第1フレーム部材111,112がトレイ120に対して車幅方向に位置決めされる。
【0090】
このように、トレイ120は、第1フレーム部材111,112に対して三次元的に位置決めされる。位置決め後、トレイ120は、溶接のような特段の接合手段を用いて第1フレーム部材111,112に接合される。
【0091】
この後、図23に示すように、第2フレーム部材113,114が、トレイ120の内部に上から挿入される。第2フレーム部材113,114の車幅方向の寸法は、一対の側壁部123,124の内面同士の間隔とほぼ等しい。第2フレーム部材113,114が挿入されると、第2フレーム部材113,114の両端面が一対の側壁部123,124の内面に接する。第2フレーム部材113,114の周壁部113a,114aの外周面は、第1フレーム部材111,112の端面およびトレイ120の端縁と車幅方向においてほぼ同じ位置に位置づけられる。これにより、トレイ120の内部空間を広く確保することができる。
【0092】
図24を参照して、接合部130は、上記実施形態と同様にして、一対の開口126,127において、底壁部121および一対の側壁部122,123と第2フレーム部材113,114との境界部に沿って延設される。本実施形態の構造においては、この境界部が、トレイ120の内側と、フレーム110の外面側との2か所に形成される。図示例では、接合部130は内側に形成された境界部に沿って設けられているが、接合部130は、外側に形成された境界部に沿って設けられていてもよい。
【0093】
この構造では、第2フレーム部材113,114が、トレイ120を介して第1フレーム部材111,112と接合され、第1フレーム部材111,112と直接的に接合されない。そこで、図25に示すように、フレーム110の4つの角部には平面視L字形状のブラケット115が設けられる。ブラケット115は、互いに直交する第1壁115aおよび第2壁115bを有する。第1壁115aは第1フレーム部材111,112の周壁部111a,112aの外面に当接し、第2壁115bは第2フレーム部材113,114の周壁部113a,114aの外面に当接する。第1壁115aは第1フレーム部材111,112にボルト等の結合具で結合され、第2壁115bは第2フレーム部材113,114にボルト等の結合具で結合される。第2フレーム部材113,114がブラケット115を介して第1フレーム部材111,112と結合されるため、フレーム110の形成に先立ちトレイ120が組み付けられる場合において、フレーム100の変形強度が向上する。
【0094】
(第1~第5実施形態の変形例)
ここまで、バッテリーケース100が、図2に示される車体フレーム200を備える電動車両1に搭載される場合を例示したが、バッテリーケース100は、その他の車体フレーム200を備える電動車両にも好適に適用される。
【0095】
図26Aを参照して、第1変形例では、車両のタイプがトラックである。車体フレーム200は、車幅方向中央部を車長方向に延びるラダーフレーム210を有する。この場合には、車両の中央部は車体フレームを構成する部材が配置されるものの、ラダーフレーム210の車幅方向両側かつ前後輪2,3間には、車両下部に空間が形成されている。2つのバッテリーケース100がこの空間を利用して搭載されていてもよい。
【0096】
図26Bを参照して、第2変形例では、車両のタイプは図2と同様に乗用車タイプであるが、車体フレーム200が、一対のサイドシル201および一対のクロスメンバ202,203のほかに、車幅方向中央部において一対のクロスメンバ202,203同士を連結するセンターフレーム204を更に備える。それにより、サイドシルおよびクロスメンバで囲まれた空間領域が、センターフレーム204によって車幅方向に二分されている。この場合、2つのバッテリーケース100が、二分された空間領域それぞれに配置されてもよい。
【0097】
(第6実施形態)
次に、図27A、27B、28~30を参照して、上記の実施形態との相違を中心に、第6実施形態について説明する。上記各実施形態では、ケーシング本体91の構成部材が車体から独立している。これに対し、本実施形態では、車体フレーム200を構成する部材が、ケーシング本体91(特に、フレーム110)の構成部品を兼ねている。
【0098】
図27Aおよび図27Bを参照して、図2または図26Bに例示されたような乗用車タイプの電動車両1の車体フレーム200は、後のクロスメンバ203から後方へ延びる車幅方向に一対のリアサイドメンバ221,222を備える。リアサイドメンバ221,222は、トランクルームを画定する。バッテリーケース100はトランクルームの下方に搭載されてもよく、その場合、リアサイドメンバ221,222は、バッテリーケース100のケーシング本体91の構成部材として好適に活用可能である。
【0099】
バッテリーケース100は、後輪3と車長方向においてほぼ同じ位置に配置され、また、左右の後輪3の間に挟まれている。このため、側方からの衝突荷重がバッテリーケース100に入力されにくく、その衝突荷重に対する変形強度を高くする必要がなくなる。このため、軽量化が図られる。後方からの衝突荷重がバッテリーケース100に入力されるおそれがあるが、リアサイドメンバ221,222はこのような衝突荷重に対抗するために高剛性に構成されている。更に、リアサイドメンバ221,222の前部には、不図示のリアサスペンションタワーが連結され、路面からの荷重を受けるためにも高剛性に構成されている。このようなリアサイドメンバ221,222がフレーム110の構成部材を兼ねるため、バッテリーケース100は後方および路面からの荷重に対しても高い変形強度を有する。
【0100】
図28図30に示すように、本実施形態に係る製造方法は、第5実施形態と同様である。すなわち、まず、一対のフランジ部124,125が、第1フレーム部材111,112としての役割を果たすリアサイドメンバ221,222上に載置される。次に、第2フレーム部材113,114が、トレイ120の内部に上から挿入される。次に、接合部130が、底壁部121および一対の側壁部122,123と第2フレーム部材113,114との境界部に沿って延設される。図示例では、接合部130は、フレーム110の内側に形成された境界部に沿って設けられているが、外側に形成された境界部に沿って設けられてもよい。
【0101】
次に、トップカバー180がケーシング本体91の上端面91aに重ねられる。トップカバー180の内上面には、車長方向に延びるリブ185が設けられている。これにより、バッテリーケース100の後方からの衝突荷重に対する変形強度が向上する。なお、ガスケット190の図示を省略しているが、本実施形態においてもシール性確保のためにガスケットがケーシング本体91とトップカバー180との間に介在してもよい。また、本実施形態においても、第2フレーム部材113,114とリアサイドメンバ221,222との接合信頼性を高めるために、ブラケット115(図25を参照)が設けられてもよい。
【0102】
これまで、本発明の実施形態について説明したが、上記構成は、本発明の範囲内で適宜変更、削除および/または追加可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 電動車両
100 バッテリーケース
110 フレーム
111,112 第1フレーム部材
113,114 第2フレーム部材
113b,114b 突出部
120 トレイ
121 底壁部
122,123 側壁部
124,125 フランジ部
126,127 開口
130 接合部
140 アンダーカバー
150 冷却構造
160 補強材
170 クロスメンバ
180 トップカバー
200 車体フレーム
221,222 リアサイドメンバ
図1
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図26A
図26B
図27A
図27B
図28
図29
図30