(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141202
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】乾燥体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
F26B 3/347 20060101AFI20230928BHJP
F26B 23/08 20060101ALI20230928BHJP
H05B 6/54 20060101ALI20230928BHJP
H05B 6/60 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F26B3/347
F26B23/08 C
H05B6/54
H05B6/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047403
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 涼
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏章
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 義将
【テーマコード(参考)】
3K090
3L113
【Fターム(参考)】
3K090AA02
3K090AB13
3K090BA06
3K090CA21
3K090NA01
3L113AA03
3L113AB06
3L113AC13
3L113AC36
3L113AC44
3L113AC67
3L113BA04
3L113BA12
3L113BA15
3L113CA02
3L113CA03
3L113CA04
3L113CB08
3L113DA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加熱部内の環境による被乾燥体の加熱効率の低下を抑制することが可能な乾燥体の製造方法を提供する。
【解決手段】対向する上部電極及び下部電極を有する加熱部と、上部電極及び下部電極に高周波電力を印加する高周波発生部と、加熱部と高周波発生部との間に設けられる同調回路部とを備える誘電加熱装置を用い、上部電極及び下部電極の間に複数の被乾燥体を配置し、高周波電力を印加して乾燥させる乾燥体の製造方法である。この製造方法は、被乾燥体の乾燥時のインピーダンスを予め測定する工程と、測定された被乾燥体の乾燥時のインピーダンス及び加熱部内環境パラメータに基づいて、加熱部のインピーダンスを算出する工程と、算出された加熱部のインピーダンスに対し、加熱部及び同調回路部のインピーダンスの合計が、高周波発生部のインピーダンスと等しくなるように加熱部及び/又は同調回路部のインピーダンスを制御する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する上部電極及び下部電極を有する加熱部と、前記上部電極及び前記下部電極に高周波電力を印加する高周波発生部と、前記加熱部と前記高周波発生部との間に設けられる同調回路部とを備える誘電加熱装置を用い、前記上部電極及び前記下部電極の間に複数の被乾燥体を配置し、高周波電力を印加して乾燥させる乾燥体の製造方法であって、
前記被乾燥体の乾燥時のインピーダンスを予め測定する工程と、
測定された前記被乾燥体の乾燥時のインピーダンス及び加熱部内環境パラメータに基づいて、前記加熱部のインピーダンスを算出する工程と、
算出された前記加熱部の前記インピーダンスに対し、前記加熱部及び前記同調回路部のインピーダンスの合計が、前記高周波発生部のインピーダンスと等しくなるように前記加熱部及び/又は前記同調回路部のインピーダンスを制御する工程と
を含む製造方法。
【請求項2】
前記加熱部内環境パラメータが、前記加熱部に配置される前記被乾燥体の個数、含水率、温度、静電容量及び形状、並びに前記上部電極及び下部電極の寸法及び電極間距離である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記加熱部のインピーダンスを算出する工程は、測定された前記被乾燥体の乾燥時のインピーダンスから、前記加熱部における複数の前記被乾燥体の含水率、温度及び静電容量を算出することを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記加熱部のインピーダンスの制御が、前記上部電極と前記下部電極との間の距離を変化させることによって行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記同調回路部のインピーダンスの制御が、コイル及びコンデンサから選択される1つ以上を制御することによって行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記上部電極と前記下部電極との間の電圧Ve[kV]が、下記式で表される値以下に制御される、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【数1】
式中、C
Lは前記被乾燥体の静電容量[F]、C
gは前記上部電極と前記被乾燥体との間の空間の静電容量[F]、Pは前記被乾燥体に印加される電力[kW]、ωは角速度[rad/秒]、tanδは前記被乾燥体の誘電正接を表す。
【請求項7】
複数の前記被乾燥体が、コンベアによって前記上部電極及び前記下部電極の間に搬送される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記被乾燥体がセラミックス成形体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記セラミックス成形体は、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム成形体である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
対向する上部電極及び下部電極を有する加熱部と、
前記上部電極及び前記下部電極に高周波電力を印加する高周波発生部と、
前記加熱部と前記高周波発生部との間に設けられる同調回路部と、
予め測定された被乾燥体の乾燥時のインピーダンス及び加熱部内環境パラメータに基づいて、前記加熱部のインピーダンスを算出する演算手段と、
を備え、
前記演算手段で算出された前記加熱部の前記インピーダンスに対し、前記加熱部及び前記同調回路部のインピーダンスの合計が、前記高周波発生部のインピーダンスと等しくなるように前記加熱部及び/又は前記同調回路部のインピーダンスを制御する乾燥体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電力を印加して被乾燥体(対象物)を誘電加熱することにより乾燥させる誘電加熱装置が知られている。誘電加熱装置は、高周波発生部(高周波発振器)と、高周波発生部から出力される高周波電力が供給される対向電極板を備えた加熱部とを一般に備えている。
誘電加熱装置を用いて被乾燥体を乾燥させる場合、被乾燥体の乾燥が進むにつれて加熱部側のインピーダンスが変化する。そのため、高周波発生部側のインピーダンスと加熱部側のインピーダンスとが整合せず、被乾燥体の加熱効率が低下してしまう。
【0003】
そこで、特許文献1には、高周波発生部(高周波発振器)と、対向電極板を備えた加熱部と、高周波発生部と加熱部との間に接続された整合回路部と、整合回路部の整合条件を調整する駆動部とを備えた誘電加熱装置が提案されている。整合回路部は、第1コンデンサと、第2コンデンサと、インダクタンス部材とを備えており、各コンデンサを構成する電極間の距離を変更したり、インダクタンス部材にバリアブルインダクタンスを用いたりすることにより、高周波発生部側のインピーダンスと加熱部側のインピーダンスとを整合させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高周波発生部側のインピーダンスと加熱部側のインピーダンスとが整合していたとしても、加熱部内の環境(例えば、加熱部内に配置される被乾燥体の大きさ、数、特性など)によっては被乾燥体の加熱効率が低下してしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、加熱部内の環境による被乾燥体の加熱効率の低下を抑制することが可能な乾燥体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、加熱部と、高周波発生部と、同調回路部とを備える誘電加熱装置を用いた誘電加熱について鋭意研究を行った結果、被乾燥体の加熱効率に影響する加熱部内の環境を考慮した上で加熱部のインピーダンスを算出し、このインピーダンスに対して、加熱部及び同調回路部のインピーダンスの合計が、高周波発生部のインピーダンスと等しくなるように加熱部及び/又は同調回路部のインピーダンスを制御することにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、対向する上部電極及び下部電極を有する加熱部と、前記上部電極及び前記下部電極に高周波電力を印加する高周波発生部と、前記加熱部と前記高周波発生部との間に設けられる同調回路部とを備える誘電加熱装置を用い、前記上部電極及び前記下部電極の間に複数の被乾燥体を配置し、高周波電力を印加して乾燥させる乾燥体の製造方法であって、
前記被乾燥体の乾燥時のインピーダンスを予め測定する工程と、
測定された前記被乾燥体の乾燥時のインピーダンス及び加熱部内環境パラメータに基づいて、前記加熱部のインピーダンスを算出する工程と、
算出された前記加熱部の前記インピーダンスに対し、前記加熱部及び前記同調回路部のインピーダンスの合計が、前記高周波発生部のインピーダンスと等しくなるように前記加熱部及び/又は前記同調回路部のインピーダンスを制御する工程と
を含む製造方法である。
【0009】
また、本発明は、対向する上部電極及び下部電極を有する加熱部と、
前記上部電極及び前記下部電極に高周波電力を印加する高周波発生部と、
前記加熱部と前記高周波発生部との間に設けられる同調回路部と、
予め測定された被乾燥体の乾燥時のインピーダンス及び加熱部内環境パラメータに基づいて、前記加熱部のインピーダンスを算出する演算手段と、
を備え、
前記演算手段で算出された前記加熱部の前記インピーダンスに対し、前記加熱部及び前記同調回路部のインピーダンスの合計が、前記高周波発生部のインピーダンスと等しくなるように前記加熱部及び/又は前記同調回路部のインピーダンスを制御する乾燥体の製造装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加熱部内の環境による被乾燥体の加熱効率の低下を抑制することが可能な乾燥体の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る乾燥体の製造方法に用いられる誘電加熱装置のブロック図である。
【
図2】誘電加熱装置における加熱部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0013】
本発明の実施形態に係る乾燥体の製造方法は、対向する上部電極及び下部電極を有する加熱部と、上部電極及び下部電極に高周波電力を印加する高周波発生部と、加熱部と高周波発生部との間に設けられる同調回路部とを備える誘電加熱装置を用い、上部電極及び下部電極の間に複数の被乾燥体を配置し、高周波電力を印加して乾燥させることにより行われる。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る乾燥体の製造方法に用いられる誘電加熱装置(乾燥体の製造装置)のブロック図である。
図2は、誘電加熱装置における加熱部の概略図である。
図1に示されるように、誘電加熱装置100は、加熱部10と、高周波発生部20と、同調回路部30と、制御部40とを備える。
【0015】
図2に示されるように、加熱部10は、対向する上部電極11及び下部電極12を有する。また、加熱部10は、対向する上部電極11及び下部電極12を収容する加熱炉13を有する。上部電極11と下部電極12との間には複数の被乾燥体50が配置され、上部電極11と下部電極12との間に高周波発生部20からの高周波電力を印加することにより、複数の被乾燥体50を乾燥させることができる。
対向する上部電極11及び下部電極12の電極間は、距離が変更可能なように構成することができる。電極間の距離を変更する手段としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の手段を用いればよい。例えば、上部電極11及び下部電極12の一方又は両方を昇降させるモータなどを用いることにより、電極間の距離を変更することができる。上部電極11及び下部電極12の電極間の距離を変化させることにより、加熱部10のインピーダンスを制御することができる。
【0016】
加熱部10は、上部電極11と下部電極12の間に複数の被乾燥体50を搬送可能なコンベア14を設けることができる。このようにコンベア14を設けることにより、複数の被乾燥体50が、コンベア14によって上部電極11と下部電極12との間に連続的に搬送される。この場合、被乾燥体50は、乾燥受台15上に配置することが好ましい。なお、
図2では、被乾燥体50を連続的に乾燥させる加熱部10の形態を一例として示したが、加熱部10はバッチ式の形態であってもよい。
【0017】
高周波発生部20は、高周波電力を生成し、加熱部10(上部電極11及び下部電極12)に高周波電力を印加する部分である。高周波発生部20としては、高周波発振器を用いることができる。出力する高周波電力の条件などは、被乾燥体50の種類などに応じて適宜設定すればよい。高周波電力の周波数は、例えば、10MHz~100MHzである。
【0018】
同調回路部30は、加熱部10と高周波発生部20との間に設けられる。同調回路部30としては、特に限定されないが、コイル(インダクタ)及びコンデンサを有することができる。コイル及びコンデンサは、いずれか一方又は両方がインダクタンス又はキャパシタンスを変更可能なように構成されている。インダクタンスを変更可能なコイルは可変コイル(可変インダクタ)、キャパシタンスを変更可能なコンデンサは可変コンデンサと一般に称される。例えば、可変コンデンサは、例えば、コンデンサを構成する電極間の距離を変更することにより、キャパシタンスを変更可能である。電極間の距離の変更は、上記と同様にモータなどの公知の手段を用いて行うことができる。また、可変コイルは、例えば、ネジ構造のコアの位置を変化させることにより、インダクタンスを変更可能である。コイル及びコンデンサから選択される1つ以上を制御することにより、同調回路部30のインピーダンスを制御することができる。
【0019】
制御部40は、加熱部10、高周波発生部20及び同調回路部30と電気的に接続される。制御部40は、コンピュータを有しており、加熱部10、高周波発生部20及び同調回路部30に対して各種指示を行うことができる。例えば、制御部40は、加熱部10に対して、上部電極11及び下部電極12の電極間の距離を変更するように指示可能である。また、制御部40は、高周波発生部20に対して、高周波電力の出力などの条件を指示可能である。さらに、制御部40は、同調回路部30に対して、コイル及びコンデンサのインダクタンス又はキャパシタンスを変更するように指示可能である。
また、制御部40は、下記で説明する加熱部10のインピーダンス算出工程を実行するために演算処理を行うことができる。演算処理は、演算手段としてのコンピュータによって行うことができる。
【0020】
本発明の実施形態に係る乾燥体の製造方法は、被乾燥体50のインピーダンス測定工程と、加熱部10のインピーダンス算出工程と、インピーダンス制御工程とを含む。
【0021】
<被乾燥体50のインピーダンス測定工程>
インピーダンス測定工程は、被乾燥体50の乾燥時のインピーダンスを予め測定する工程である。被乾燥体50の乾燥時のインピーダンスは、誘電加熱装置100とは別の装置(インピーダンス測定器)によって予め測定される。なお、誘電加熱装置100の付属装置としてインピーダンス測定器を備えている場合には、当該インピーダンス測定器によって被乾燥体50の乾燥時のインピーダンスを予め測定してもよい。
インピーダンス測定器としては、特に限定されず、市販のものを用いることができる。
【0022】
<加熱部10のインピーダンス算出工程>
加熱部10のインピーダンス算出工程は、測定された被乾燥体50の乾燥時のインピーダンス及び加熱部内環境パラメータに基づいて、加熱部10のインピーダンスを算出する工程である。
加熱部10における被乾燥体50の加熱効率は、加熱部10内の環境によって変化する。そのため、被乾燥体50の加熱効率に影響する加熱部内環境パラメータを考慮した上で、加熱部10のインピーダンスを算出する。
加熱部内環境パラメータとしては、特に限定されないが、加熱部10に配置される被乾燥体50の個数、含水率、温度、静電容量及び形状、並びに上部電極11及び下部電極12の寸法及び電極間距離などが挙げられる。
【0023】
ここで、
図2に示される加熱部10のインピーダンスを算出する場合を例に挙げて説明する。
図2において、加熱部10に配置される被乾燥体50は、個数が4個、上面の面積S
Lが1m
2、高さH
Lが100mmである。また、上部電極11及び下部電極12の対向する面の面積Sは5m
2であり、上部電極11と下部電極12との間の電極間距離Hは200mmである。
まず、予め測定された被乾燥体50の乾燥時のインピーダンスから、加熱部10における複数の被乾燥体50の含水率、温度及び静電容量を算出する。具体的には、これまでに蓄積されたデータに基づき、加熱部10における位置L1~L4の被乾燥体50の含水率、温度及び静電容量を算出する。これまでに蓄積されたデータとは、加熱部10における各位置の被乾燥体50のインピーダンスと、位置L1~L4の被乾燥体50の含水率、温度及び静電容量の関係に関する既知の情報である。
例えば、位置L1~L4の被乾燥体50のインピーダンスは、予め測定された被乾燥体50の乾燥時のインピーダンスから、加熱時間に基づいて算出される。次に、算出された位置L1~L4の被乾燥体50のインピーダンスに基づいて位置L1~L4の被乾燥体50の含水率、温度及び静電容量が算出される。その結果を表1に示す。
【0024】
【0025】
次に、以下の式に基づいて、加熱部10のインピーダンスZCを算出する。なお、以下では、位置L1において、被乾燥体50のインピーダンスをSL1、静電容量をCL1と表す。同様に、位置L2~4において、被乾燥体50のインピーダンスをSL2~SL4、静電容量をCL2~CL4と表す。
【0026】
【0027】
上記の式中、jは虚数単位、ωは角速度[rad/秒]、εは誘電率、Hは上部電極11と下部電極12との間の電極間距離[m]、HLは被乾燥体50の高さ[m]、Sは上部電極11及び下部電極12の対向する面の面積[m2]、SLnは位置L1~L4の被乾燥体50のインピーダンス[Ω]、CLnは位置L1~L4の被乾燥体50の静電容量[F]、SLは、被乾燥体50の上面の面積[m2]である。
【0028】
加熱部10のインピーダンス算出工程は、制御部40における加熱部10のインピーダンスを算出する演算手段(例えば、コンピュータ)を用いて行われる。
【0029】
<インピーダンス制御工程>
インピーダンス制御工程は、算出された加熱部10のインピーダンスに対し、加熱部10及び同調回路部30のインピーダンスの合計が、高周波発生部20のインピーダンスと等しくなるように加熱部10及び/又は同調回路部30のインピーダンスを制御する工程である。この工程におけるインピーダンスの制御は、加熱部10のインピーダンス又は同調回路部30のインピーダンスのどちらか一方を制御してもよいし、加熱部10のインピーダンス及び同調回路部30のインピーダンスの両方を制御してもよい。
上記の加熱部10のインピーダンス算出工程では、被乾燥体50の加熱効率に影響する加熱部内環境パラメータを考慮した上で加熱部10のインピーダンスを算出しているため、この算出されたインピーダンスを基準として、加熱部10及び同調回路部30のインピーダンスの合計が、高周波発生部20のインピーダンスと等しくなるように制御することにより、加熱部10内の環境による被乾燥体50の加熱効率の低下を抑制することができる。
【0030】
加熱部10のインピーダンスの制御は、上部電極11と下部電極12との間の距離(電極間距離)を変化させることによって行うことができる。電極間距離を変化させる方法は、上記した通りである。
また、同調回路部30のインピーダンスの制御は、コイル及びコンデンサから選択される1つ以上を制御することによって行うことができる。コイル及びコンデンサを用いたインピーダンスの制御方法は、上記した通りである。
【0031】
インピーダンス制御工程は、制御部40からの指示に基づいて行われる。具体的には、制御部40において、演算手段(例えば、コンピュータ)で算出された加熱部10のインピーダンスに対し、加熱部10及び同調回路部30のインピーダンスの合計が、高周波発生部20のインピーダンスと等しくなるように、加熱部10及び/又は同調回路部30のインピーダンスを制御する指示が行われる。
【0032】
加熱部10において、上部電極11と下部電極12との間の電圧Ve[kV]は、下記式で表される値以下に制御されることが好ましい。
【0033】
【0034】
式中、CLは被乾燥体50の静電容量[F]、Cgは上部電極11と被乾燥体50との間の空間の静電容量[F]、Pは被乾燥体50に印加される電力[kW]、ωは角速度[rad/秒]、tanδは被乾燥体50の誘電正接を表す。
上部電極11と下部電極12との間の電圧Veを上記式で表される値以下に制御することにより、誘電加熱装置100の絶縁破壊を抑制することができる。
【0035】
被乾燥体50としては、特に限定されないが、例えば、セラミックス成形体であることができる。セラミックス成形体は、例えば、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム成形体であることが好ましい。
【0036】
ハニカム成形体のセル形状(セルが延びる方向に直交する断面におけるセル形状)としては、特に限定されない。セル形状の例としては、三角形、四角形、六角形、八角形、円形又はこれらの組合せを挙げることができる。
ハニカム成形体の形状としては、特に限定されず、円柱状、楕円柱状、端面が正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形などの多角柱状などを挙げることができる。
【0037】
セラミックス成形体は、セラミックス原料及び水を含む原料組成物を混練して得られた坏土を成形することによって得ることができる。
セラミックス原料としては、特に限定されず、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウムなどを用いることができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42~56質量%、アルミナが30~45質量%、マグネシアが12~16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0038】
原料組成物は、セラミックス原料及び水以外に、分散媒、結合材(例えば、有機バインダ、無機バインダなど)、造孔材、界面活性剤などを含むことができる。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするセラミックス成形体の構造、材質などに合わせた組成比とすることが好ましい。
【0039】
原料組成物を混練して坏土を形成する方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機などを用いることができる。また、セラミックス成形体の形成方法としては、例えば、押出成形、射出成形などの公知の成形方法を用いることができる。具体的には、セラミックス成形体としてハニカム成形体を作製する場合、所望のセル形状、隔壁(セル壁)の厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形すればよい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金を用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 加熱部
11 上部電極
12 下部電極
13 加熱炉
14 コンベア
15 乾燥受台
20 高周波発生部
30 同調回路部
40 制御部
50 被乾燥体