(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141212
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230928BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047417
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 臣吾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彩加
(72)【発明者】
【氏名】野口 祥太
(72)【発明者】
【氏名】明石 彩
(72)【発明者】
【氏名】桑村 健介
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA21A
4F100AA21H
4F100AK01D
4F100AK04B
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK25D
4F100AK51D
4F100AK51G
4F100AL07B
4F100AT00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA07C
4F100CA13A
4F100HB31
4F100JK12
4F100JL10A
4F100JN01B
4F100JN01C
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る化粧シート1は、着色基材層2と、接着層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6とをこの順に備え、着色基材層2及び透明樹脂層5は、それぞれ、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、表面保護層6は、バイオマス由来の材料を含む樹脂組成物で形成された樹脂層である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色熱可塑性樹脂層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とをこの順に備え、
前記着色熱可塑性樹脂層及び前記透明熱可塑性樹脂層は、それぞれ、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、
前記表面保護層は、バイオマス由来の材料を含む樹脂組成物で形成された樹脂層であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記着色熱可塑性樹脂層は、前記着色熱可塑性樹脂層全体の質量に対し、前記バイオマス由来のポリプロピレンを5質量%以上99質量%以下の範囲内で含み、
前記透明熱可塑性樹脂層は、前記透明熱可塑性樹脂層全体の質量に対し、前記バイオマス由来のポリプロピレンを5質量%以上99質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記着色熱可塑性樹脂層は、厚さが30μm以上150μm以下の範囲内であり、且つ比重が0.90以上1.20以下の範囲内であり、
前記透明熱可塑性樹脂層は、厚さが10μm以上150μm以下の範囲内であり、且つ比重が0.90以上0.96以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記表面保護層は、前記バイオマス由来の材料として、バイオマス由来のウレタン(メタ)アクリレートを含んでいることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記バイオマス由来のウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールと、イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物であり、
前記ポリオールと、前記イソシアネート化合物と、前記ドロキシ(メタ)アクリレートとの少なくともいずれかがバイオマス由来の成分を含んでいることを特徴とする請求項4に記載の化粧シート。
【請求項6】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル製の化粧シートに代わる化粧シートとして、例えば、特許文献1に開示されているように、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、環境問題の背景から、化粧シートの材料を、従来の材料である石油由来の材料から、植物由来の材料へ代える要求がある。しかしながら、化粧シートに用いることが可能な植物由来の材料として、バイオマスポリエチレン等のバイオマスポリオレフィンを用いると、化粧シートとして用いるためには、表面硬度が低下するという課題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を鑑み、植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、着色熱可塑性樹脂層と、接着層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とをこの順に備え、前記着色熱可塑性樹脂層及び前記透明熱可塑性樹脂層は、それぞれ、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、前記表面保護層は、バイオマス由来の材料を含む樹脂組成物で形成された樹脂層であることを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリプロピレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態における化粧シート及び化粧材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
以下、
図1を参照して、化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、
図1に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
基材9は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を用いて板状に形成されており、一方の面(
図1では、上側の面)に、化粧シート1が積層されている。すなわち、化粧材10は、基材9と、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える。
【0011】
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、
図1に示すように、着色基材層(着色熱可塑性樹脂層)2と、絵柄層3と、接着層4と、透明樹脂層(透明熱可塑性樹脂層)5と、表面保護層6と、凹凸部7と、プライマー層8とを備える。
【0012】
<着色基材層>
着色基材層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であって、バイオマス由来(植物由来)のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された着色樹脂層である。
以下、着色基材層2の組成について詳しく説明する。
【0013】
(バイオマス由来のポリプロピレン)
本実施形態において、バイオマス由来のポリプロピレンは、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合してなるものである。バイオマス由来のプロピレンは、特に限定されず、従来公知の方法により製造されたプロピレンを用いることができる。原料であるモノマーとしてバイオマス由来のプロピレンを用いているため、重合されてなるポリプロピレンはバイオマス由来となる。
なお、ポリプロピレンの原料モノマーは、バイオマス由来のプロピレンを100質量%含むものでなくてもよい。
バイオマス由来のポリプロピレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のプロピレンをさらに含んでもよい。
バイオマス由来の原料であるプロピレンを用いることで、理論上100%バイオマス由来の成分により製造することが可能となる。
【0014】
上記のポリプロピレン中のバイオマス由来のプロピレン濃度(以下、「バイオマス度」ということがある)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリプロピレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本実施形態においては、ポリプロピレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
【0015】
本実施形態においては、理論上、ポリプロピレンの原料として、全てバイオマス由来のプロピレンを用いれば、バイオマス由来のプロピレン濃度は100%であり、バイオマス由来のポリプロピレンのバイオマス度は100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリプロピレン中のバイオマス由来のプロピレン濃度は0%であり、化石燃料由来のポリプロピレンのバイオマス度は0となる。
本実施形態において、バイオマス由来のポリプロピレンやそのポリプロピレンを含んで構成された化粧シートは、バイオマス度が100である必要はない。
【0016】
本実施形態において、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節するのがよい。重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。以下、プロピレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
【0017】
プロピレン重合体の重合方法は、目的とするポリプロピレンの種類や分岐の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
また、バイオマス由来のポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンを単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0018】
(バイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物)
本実施形態において、樹脂組成物は、上記のポリプロピレンを主成分として含むものである。樹脂組成物は、バイオマス由来のプロピレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5~99質量%、より好ましくは25~75質量%含んでなるものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のプロピレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0019】
上記の樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリプロピレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のプロピレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
上記の樹脂組成物は、化石燃料由来のプロピレンと、化石燃料由来のプロピレンをさらに含んでもよい。つまり、本実施形態においては、樹脂組成物は、バイオマス由来のポリプロピレンと、化石燃料由来のポリプロピレンとの混合物であってもよい。混合方法は、特に限定されず、従来公知の方法で混合することができる。例えば、ドライブレンドでもよいし、メルトブレンドでもよい。
【0020】
本実施形態によれば、樹脂組成物は、好ましくは5~99質量%、より好ましくは25~75質量%のバイオマス由来のポリプロピレンと、好ましくは1~95質量%、より好ましくは25~75質量%の化石燃料由来のポリプロピレンとを含むものである。このような混合物の樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のプロピレンの濃度が、上記範囲内であればよい。
【0021】
上記の樹脂組成物の製造工程において製造された樹脂組成物には、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリプロピレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、および着色顔料等を添加することができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1~20質量%、好ましくは1~10質量%の範囲で添加される。
【0022】
以上のように、着色基材層2は、バイオマス由来のプロピレンを着色基材層2全体に対して5質量%以上、好ましくは5~99質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものである。着色基材層2中のバイオマス由来のプロピレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0023】
着色基材層2は、0.90~1.20g/cm3、好ましくは0.98~1.10g/cm3の密度を有するものである。着色基材層2の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。着色基材層2の密度が0.90g/cm3以上であれば、着色基材層2の剛性を高めることができる。また、着色基材層2の密度が1.20g/cm3以下であれば、着色基材層2の透明性や機械的強度を高めることができる。
【0024】
着色基材層2は、バイオマス由来のポリプロピレンとして、バイオマス由来のホモポリプロピレン、バイオマス由来のランダムポリプロピレン、バイオマス由来のブロックポリプロピレンを含むものいずれであってもよい。
着色基材層2全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
着色基材層2の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、カレンダー成形で形成することが好ましい。
【0025】
また、着色基材層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色基材層2の厚さは、30μm以上150μm以下の範囲内であることが好ましく、51μm以上120μm以下であることがより好ましく、55μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。これは、バイオマス由来のポリプロピレンからなる着色基材層2の厚さが30μm以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色基材層2の厚さが150μm以下である場合、着色基材層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0026】
なお、本実施形態では、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリプロピレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリプロピレンに代えて、バイオマス由来のポリエチレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、本実施形態においては、着色基材層2を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
【0027】
<絵柄層>
絵柄層3は、着色基材層2の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色基材層2の着色で代用することが可能である場合には、省略も可能である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
【0028】
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、又はそれらの混合物等を用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いること可能である。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色基材層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
【0029】
絵柄層3の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。これは、絵柄層3の厚さが1μm以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10μm以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
【0030】
<接着層>
接着層4は、絵柄層3の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に透明樹脂層5との接着性からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0031】
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着層4の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、上述したバイオマス由来(植物由来)のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層である。より詳しくは、透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層である。つまり、透明樹脂層5において、着色基材層2で用いたバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物を用いてもよい。また、化石燃料由来のポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0032】
透明樹脂層5は、上述したバイオマス由来のプロピレンを透明樹脂層5全体に対して5質量%以上、好ましくは5~99質量%、より好ましくは25~75質量%、最も好ましくは40~75%含んでなるものであってもよい。透明樹脂層5中のバイオマス由来のプロピレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0033】
透明樹脂層5の密度は、0.90~0.96g/cm3、好ましくは0.90~0.93g/cm3、より好ましくは0.90~0.91g/cm3の密度を有するものである。透明樹脂層5の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。透明樹脂層5の密度が0.90g/cm3以上であれば、透明樹脂層5の剛性を高めることができる。また、透明樹脂層5の密度が0.96g/cm3以下であれば、透明樹脂層5の透明性や機械的強度を高めることができる。
【0034】
透明樹脂層5は、10~150μm、好ましくは55~100μm、より好ましくは60~80μmの厚さを有するものである。
透明樹脂層5は、透明樹脂層5全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であってもよい。
透明樹脂層5の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、押出成形で形成することが好ましく、押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われることがより好ましい。
【0035】
本実施形態においては、透明樹脂層5と着色基材層2が、密度、厚さ、およびバイオマス度(バイオマス由来のプロピレン濃度)について、以下の特定の関係を満たすものであることが好ましい。
本実施形態においては、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2が、d2>d1を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには賦形性が要求され、着色基材層2として機能するためには生産性が要求されるからである。
【0036】
なお、透明樹脂層5の密度d1と着色基材層2の密度d2との比(d2/d1)が、1.1以上1.5以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上1.3以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.2以下の範囲内であればさらに好ましい。透明樹脂層と着色基材層の密度の比がこの範囲であることによって、バイオマス由来のポリプロピレンを用いた場合であっても化粧シートとして必要な押出適正、曲げ加工適正を有することができる。
【0037】
本実施形態においては、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2が、t1≧t2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが要求され、着色基材層2として機能するためには、透明樹脂層5ほどの厚みは必要ないからである。
なお、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2との比(t1/t2)が、1.1以上3以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上2以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.5以下の範囲内であればさらに好ましい。
【0038】
本実施形態においては、透明樹脂層5におけるバイオマス由来のプロピレン濃度C1と着色基材層2におけるバイオマス由来のプロピレン濃度C2が、C1>C2を満たすことが好ましい。透明樹脂層5として機能するためには厚みが大きくプロピレン使用量が多いことから、透明樹脂層5のバイオマス度を上げることで化石燃料の使用量をより削減できるからである。
【0039】
透明樹脂層5を形成するバイオマス由来のポリプロピレンには、核剤が添加されていてもよい。
核剤は、ポリプロピレンの質量を基準として、500ppm以上2000ppm以下の範囲内で、ポリプロピレンに添加されていれば好ましく、1500ppm以上2000ppm以下の範囲内で、ポリプロピレンに添加されていればさらに好ましい。
【0040】
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
【0041】
なお、本実施形態では、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、バイオマス由来のポリプロピレンについて説明したが、本発明はこれに限定させるものではない。例えば、上述したバイオマス由来のポリプロピレンに代えて、バイオマス由来のポリエチレンやバイオマス由来のポリブチレン等を用いてもよい。つまり、本実施形態においては、透明樹脂層5を構成するバイオマス由来の樹脂として、広くバイオマス由来のポリオレフィンを用いることができる。
【0042】
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。
【0043】
表面保護層6は、バイオマス由来の材料を含む樹脂組成物で形成された樹脂層であって、例えば、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートで形成されている。また表面保護層6において、上述のウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくとも1成分は、バイオマス由来成分を含む。つまり、表面保護層6は、バイオマス由来成分を含んでいる。ポリオール、イソシアネート化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレートの少なくともいずれかは、バイオマス由来成分を含んでもよく、含んでいなくてもよい。以下の説明において、バイオマス由来成分を含むウレタン(メタ)アクリレートのことを、バイオウレタン(メタ)アクリレートとも称する。
【0044】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール及びイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られるものである。バイオウレタン(メタ)アクリレートにおいては、ポリオールとして植物由来のポリオールを使用するか、イソシアネートとして植物由来のイソシアネートを使用するか、或いはポリオール及びイソシアネートの何れも植物由来のものを使用することができる。
ポリオールとしては、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であるポリエーテルポリオール、又は、多官能アルコールとカーボネートとの反応物であるポリカーボネートポリオールを用いることができる。以下、各ポリオールについて説明する。
【0045】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物
【0046】
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、及びサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
【0047】
バイオマス由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
バイオマス由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
【0048】
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることができる。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0049】
バイオマス由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、バイオマス由来のコハク酸又はバイオマス由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0050】
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることができる。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、及びダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等が挙げられる。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0051】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能イソシアネートの少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物
バイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0052】
バイオマス由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることができる。バイオマス由来の多官能イソシアネートは、例えば、バイオマス由来のジイソシアネートである。バイオマス由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0053】
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法が挙げられる。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本発明において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートが挙げられる。
【0054】
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0055】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、ポリカーボネートポリオールとしては、バイオマス由来成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来のカーボネートとの反応物を用いることができる。または、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、バイオマス由来成分を含むカーボネートとの反応物を用いることができる。カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0056】
<イソシアネート化合物>
次に、イソシアネート化合物について説明する。バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物としては、ポリエーテルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能イソシアネートを用いることができる。
【0057】
<ヒドロキシ(メタ)アクリレート>
次に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートについて説明する。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を一つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を二つ以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、表面保護層6は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、表面保護層6は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートで形成されてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートにニトロセルロースを添加して形成されてもよい。
【0058】
<ニトロセルロース>
ニトロセルロースは、セルロース骨格の水酸基の一部を硝酸エステル化したニトロ基置換体のセルロース系樹脂である。ニトロセルロース樹脂のセルロース骨格は、バイオマス材料である。ニトロセルロースとしては、一般的なニトロセルロースが支障なく利用できるが、とりわけ、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1.3~2.7個のニトロ基で置換されたものを利用することが好ましい。
ニトロセルロースには、分子量に応じてLタイプとHタイプがある。有機溶剤に対する溶解性の面からは、Lタイプのものを利用することが好ましい。
【0059】
表面保護層6は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下のバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。表面保護層6の乾燥後の重量は、好ましくは0.1g/m2以上15g/m2以下、より好ましくは3g/m2以上10g/m2以下、さらに好ましくは6g/m2以上9g/m2以下である。表面保護層6は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上10μm以下、さらに好ましくは6μm以上9μm以下の厚さを有する。
「バイオマス度」について、例えばバイオウレタン(メタ)アクリレートの場合には、上述のとおり、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値として求められる。
【0060】
また「バイオマス度」について、例えばニトロセルロースの場合には、出発物質であるセルロース骨格を構成するグルコース単位1個(式量=172)当たりに含まれる水酸基の数が3個であるから、この水酸基の1~3個が硝酸エステル化し(水素がニトロ基(非バイオマス材料、式量=46)に置換され)得る。そうすると、もとのセルロース骨格がバイオマス材料100重量%からなるとして、グルコース単位1個あたりの置換されたニトロ基の数が平均してn個の場合、ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合(重量%)は、(172-n)×100/(172-n+46n)で計算できる。
ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合は、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1個のニトロ基で置換された場合は、約78.8重量%、2個のニトロ基で置換された場合は約64.9重量%、3個のニトロ基に置換された場合は約55.0重量%になる(上記の式での計算値)。
【0061】
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。
また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
【0062】
<凹凸部>
凹凸部7は、透明樹脂層5と表面保護層6の複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
【0063】
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色基材層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色基材層2の他方の面(
図1では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合してもよい。
プライマー層8の厚さは、例えば、1μm以上10μm以下の範囲内である。
【0064】
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0065】
(本実施形態の効果)
本実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色基材層2及び透明樹脂層5は、それぞれ、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物で形成された樹脂層であり、表面保護層6は、バイオマス由来の材料を含む樹脂組成物で形成された樹脂層である。
このため、例えば、ポリエチレン等を用いて形成した構成に比べて強度を高めることが可能となり、高い耐傷性等を有する着色基材層2及び透明樹脂層5を形成することが可能となる。
【0066】
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリプロピレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート1を提供することが可能となる。
また、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリプロピレンを用いた構成であっても、例えば、ポリエチレン等を用いて形成した構成と同等である高い透明度を有する透明樹脂層5を形成することが可能となる。
【0067】
(2)着色基材層2は、着色基材層2全体の質量に対し、バイオマス由来のポリプロピレンを5質量%以上99質量%以下の範囲内で含み、透明樹脂層5は、透明樹脂層5全体の質量に対し、バイオマス由来のポリプロピレンを5質量%以上99質量%以下の範囲内で含んでいる。
その結果、さらに高い環境適正を有する透明樹脂層5及び着色基材層2を形成することが可能となる。
【0068】
(3)着色基材層2は、厚さが30μm以上150μm以下の範囲内であり、且つ比重が0.90以上1.20以下の範囲内であり、透明樹脂層5は、厚さが10μm以上150μm以下の範囲内であり、且つ比重が0.90以上0.96以下の範囲内である。
その結果、さらに高い硬度を有する透明樹脂層5及び着色基材層2を形成することが可能となる。
【0069】
(4)表面保護層6は、バイオマス由来の材料として、バイオマス由来のウレタン(メタ)アクリレートを含んでいる。
その結果、さらに高い環境適正を有する表面保護層6を形成することが可能となる。
【0070】
(5)表面保護層6を構成するバイオマス由来のウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールと、イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応物であり、前記ポリオールと、前記イソシアネート化合物と、前記ドロキシ(メタ)アクリレートとの少なくともいずれかがバイオマス由来の成分を含んでいる。
その結果、さらに高い環境適正を有する表面保護層6を形成することが可能となる。
また、本実施形態の化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0071】
(6)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、植物由来の材料であるバイオマス由来のポリプロピレンを用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧材10を提供することが可能となる。
【0072】
<変形例>
(1)実施形態では、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に加え、基材9の他方の面(
図1では、下側の面)に積層された化粧シート1を備える構成としてもよい。
【0073】
[実施例]
本実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から9の化粧材と、比較例1から4の化粧材について説明する。
【0074】
(実施例1)
基材の一方の面にコロナ放電処理を施した後、基材の一方の面に、ウレタン系印刷インキで印刷された絵柄層と、ウレタン系接着剤層と、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂層(透明接着層)と、透明樹脂層と、バイオマス由来の材料としてバイオウレタン(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を主成分とする表面保護層とをこの順に積層した。また、基材の他方の面にコロナ放電処理を施した後、ポリエステルウレタン樹脂からなるプライマー層(厚さ:1~2μm)を形成した。こうして、実施例1の化粧シート(総厚:135μm)を得た。
【0075】
実施例1では、基材として、バイオマス由来のポリプロピレンと、無機顔料(酸化チタン)とを含む樹脂組成物で形成された着色基材層(厚さ:70μm)を用いた。この樹脂組成物をカレンダー成形することで着色基材層を得た。こうして形成された着色基材層の密度(比重)は0.99g/cm3であり、坪量は69.3g/m2である。また、着色基材層におけるバイオマス由来のポリプロピレンの含有量を、着色基材層全体の質量に対し75質量%とした。つまり、着色基材層におけるバイオマス度は75であった。
【0076】
透明樹脂層には、バイオマス由来のポリプロピレンと、紫外線吸収剤とを含む樹脂組成物で形成された透明樹脂層(厚さ:70μm)を用いた。この樹脂組成物をルーダーラミネートすることで透明樹脂層を得た。こうして形成された透明樹脂層の密度(比重)は0.91g/cm3であり、坪量は63.0g/m2である。また、透明樹脂層におけるバイオマス由来のポリプロピレンの含有量を、透明樹脂層全体の質量に対し90質量%とした。つまり、透明樹脂層におけるバイオマス度は90%であった。
表面保護層におけるバイオウレタン(メタ)アクリレートの含有量を、表面保護層全体の質量に対し5質量%とした。また、バイオウレタン(メタ)アクリレートを構成する
ポリオールと、イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートは、全てバイオマス由来の成分を含むものである。
【0077】
(実施例2)
着色基材層におけるバイオマス由来のポリプロピレンの含有量を、着色基材層全体の質量に対し5質量%に変更し、透明樹脂層におけるバイオマス由来のポリプロピレンの含有量を、透明樹脂層全体の質量に対し5質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の化粧シートを得た。
(実施例3)
着色基材層におけるバイオマス由来のポリプロピレンの含有量を、着色基材層全体の質量に対し99質量%に変更し、透明樹脂層におけるバイオマス由来のポリプロピレンの含有量を、透明樹脂層全体の質量に対し99質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の化粧シートを得た。
【0078】
(実施例4)
着色基材層の厚さを30μmとし、且つその比重を0.90とし、透明樹脂層の厚さを10μmとし、且つその比重を0.90とした以外は実施例1と同様にして、実施例4の化粧シートを得た。
(実施例5)
着色基材層の厚さを150μmとし、且つその比重を1.20とし、透明樹脂層の厚さを150μmとし、且つその比重を0.96とした以外は実施例1と同様にして、実施例5の化粧シートを得た。
【0079】
(実施例6)
表面保護層に含まれるバイオウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物、及びヒドロキシ(メタ)アクリレートのうち、ポリオールのみをバイオマス由来の成分を含むものとした以外は実施例1と同様にして、実施例6の化粧シートを得た。
(実施例7)
表面保護層に含まれるバイオウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物、及びヒドロキシ(メタ)アクリレートのうち、イソシアネート化合物のみをバイオマス由来の成分を含むものとした以外は実施例1と同様にして、実施例7の化粧シートを得た。
【0080】
(実施例8)
表面保護層に含まれるバイオウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物、及びヒドロキシ(メタ)アクリレートのうち、ヒドロキシ(メタ)アクリレートのみをバイオマス由来の成分を含むものとした以外は実施例1と同様にして、実施例8の化粧シートを得た。
【0081】
(比較例1)
透明樹脂層の形成に用いたバイオマス由来のポリプロピレンを、石油由来のポリプロピレンとし、着色基材層の形成に用いたバイオマス由来のポリプロピレンを、石油由来のポリプロピレン(リケンテクノス株式会社製)とした以外は実施例1と同様にして、比較例1の化粧シートを得た。
(比較例2)
表面保護層の形成に用いたバイオウレタン(メタ)アクリレートを、バイオマス由来の成分を含まないウレタン(メタ)アクリレート、即ち石油由来のウレタン(メタ)アクリレートとした以外は比較例1と同様にして、比較例2の化粧シートを得た。
【0082】
(性能評価、評価結果)
実施例1から8の化粧シートと、比較例1から2の化粧シートに対し、それぞれ、「意匠性」、「表面強度」、「押出適正」、「曲げ加工適性」、「石油依存性」を評価した。評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0083】
<意匠性>
各実施例・比較例の化粧シートに備わる絵柄層の絵柄がはっきりよれない状態であるもの(予定した絵柄がはっきりと視認できるもの)を「〇」と評価し、絵柄層に一部欠けが確認されたものを「×」と評価した。また、絵柄ははっきりと視認できるが改善が必要であるものを「△」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。
【0084】
<表面硬度>
JIS K5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)に準じた試験を行った。
各実施例・比較例の化粧シートに対して鉛筆に荷重を付加した状態でスライドさせ、表面保護層に凹み(傷)が形成されるか観察をした。
化粧シートとしての耐傷性を十分有しているものを「〇」と評価し、特に結果が良かったものを「◎」と評価し、耐傷性が劣るものを「×」と評価した。また、十分な耐傷性を有しているが改善が必要であるものを「△」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。また、表に記載した「〇(6B)」とは、6Bであれば表面保護層に凹み(傷)が形成されないことを意味する。
【0085】
<生産性:押出適正>
生産ラインにおいて、押出成形する際に支障がなかったもの(問題なく成形できるもの)を「〇」と評価し、押出成形する際に支障があったもの(不良が出る可能性があるもの)を「×」と評価した。また、十分な押出成形性を有しているが改善が必要であるものを「△」と評価した。
なお、本実施例では、「○」を合格とした。
【0086】
<後加工性:曲げ加工適性>
MDFに貼り合わせた化粧シート(即ち化粧材)を用いてVカット加工適正(曲げ加工適性)に問題がないものを「〇」と評価し、特に結果が良いものを「◎」と評価し、Vカット加工適正に問題があったものを「×」と評価した。また、十分な曲げ加工適性を有しているが改善が必要であるものを「△」と評価した。
なお、本実施例では、「◎」、「○」を合格とした。
【0087】
<石油依存性>
化粧シートを作成する際の化石燃料への依存性を評価した。
【0088】
【0089】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から8の化粧シートは、全ての評価項目に対して、優れた性能を示した。一方、比較例1から2の化粧シートは、少なくとも一部の評価項目において不十分な性能を示した。
【符号の説明】
【0090】
1…化粧シート、2…着色基材層、3…絵柄層、4…接着層、5…透明樹脂層、6…表面保護層、7…凹凸部、8…プライマー層、9…基材、10…化粧材