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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141218
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20230928BHJP
   B60N 3/06 20060101ALI20230928BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20230928BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230928BHJP
【FI】
B62D25/20 G
B60N3/06
B60N2/06
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047427
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】馬場 広
(72)【発明者】
【氏名】海老塚 義紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 康幸
【テーマコード(参考)】
3B087
3B088
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B088JA01
3B088JB01
3D203AA03
3D203AA31
3D203BB06
3D203CB40
3D203DA52
3D203DA53
3D203DB05
3D235AA02
3D235CC14
3D235DD35
(57)【要約】
【課題】足入れ性が向上した車両を提供する。
【解決手段】車両Vは、フロアFLと、フロアFL上に配置される第1シートS1と、第1シートS1の後方に配置される第2シートS2とを備える車両Vであって、第1シートS1より後方に位置するフロアFL上の領域R1を少なくとも含むようにフロアFLに形成された、第2シートS2の着座者の足を置くための凹部70を備える。凹部70を形成することで、後方の第2シートS2の着座者の足を入れる空間が広がり、足入れ性が向上する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアと、該フロア上に配置される第1シートと、該第1シートの後方に配置される第2シートと、を備える車両であって、
前記フロアにおいて、少なくとも前記第1シートの後方に位置する領域を含んで形成され、前記第2シートの着座者の足を置くことが可能な凹部を備えることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記凹部の断面は三角形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1シートを前記フロアにスライド移動可能に取り付ける一対のスライドレールを備え、
前記凹部は、前記一対のスライドレールの後端より後方の位置に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記第1シートを前記フロアにスライド移動可能に取り付ける一対のスライドレールを備え、
前記凹部は、前記一対のスライドレールの間において、前記一対のスライドレールの後端よりも前方に位置する領域を含むように形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項5】
前記第1シートを前記フロアにスライド移動可能に取り付ける一対のスライドレールを備え、
前記凹部は、前記一対のスライドレールの間において、前記一対のスライドレールの前方から後方まで連続的に延びる領域を含むように形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項6】
前記フロアの下方において前記車両の左右方向に延び、前記フロアを支持する梁部材を備え、
前記凹部は、前記梁部材を避けた位置に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記フロア上において前記車両の左右方向に延び、前記フロアを支持する梁部材を備え、
前記凹部は、前記梁部材を避けた位置に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記フロアは、前記第1シートの下方に位置する領域において開口部が形成されており、
前記フロアは、前記開口部を塞ぐ蓋部を有し、
前記凹部は、前記蓋部を避けた位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項9】
前記フロアの下方に配置されるバッテリと、前記フロアと前記バッテリとの間において前記バッテリ上に配置された部材と、を備え、
前記凹部は、前記バッテリ上に配置された部材を避けた位置に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項10】
前記第1シートの前記一対のスライドレールにはそれぞれの後端においてフットカバーが設けられており、
前記フットカバーは、前記車両の後方に向かうに従って下方に傾斜する傾斜面を有することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の車両。
【請求項11】
前記フットカバーは、前記一対のスライドレールのそれぞれの後端を架け渡して一体的に形成されており、
前記フットカバーの前記傾斜面は、前記フロアに形成される前記凹部まで延びていることを特徴とする請求項10に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に係り、特に、乗員が着座するシートがフロア上に配置された車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV車)では、車両フロアの下方にバッテリが配置されており、より多くのバッテリを搭載するため、床面を高くして空間を確保する場合がある。床面を高くしつつも車両の天井の位置を変えずに、運転者のアイポイントを維持すると、シート高を低くしなければならない。そのため、電気自動車では、シートクッションとフロアとの間の空間がエンジン車より狭くなる場合があった。
【0003】
一方、リアシートの着座する乗員は、例えば、フロントシートの下方に足を入れることで足を伸ばし楽な姿勢を取りたい場合がある。しかしながら、上述の理由で電気自動車ではシートクッションとフロアとの間が狭くなるため、足を伸ばし難く、また、エンジン車と比べてシートクッション下に足を入れ難い。
【0004】
特許文献1に記載の車両用シートでは、シートレール装置の左右に配置されるアッパーレールをシート支持部材により連結して一体化することで、シートクッション下の空間に入れた足を左右方向に伸ばしやすくし、足入れ性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-59420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用シートは、平坦な車両フロア上に配置されるため、シートクッション下の空間において高さ方向は狭いままであり、車両用シートの構造を工夫することにより足を入れる空間を作り出すにも限界があった。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、着座した乗員の足を置く空間がより広くなるように足入れ性が向上した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の車両によれば、フロアと、該フロア上に配置される第1シートと、該第1シートの後方に配置される第2シートと、を備える車両であって、前記フロアにおいて、少なくとも前記第1シートの後方に位置する領域を含んで形成され、前記第2シートの着座者の足を置くことが可能な凹部を備えることにより解決される。
【0008】
第1シートより後方に位置するフロア上の領域を少なくとも含んで凹部を形成することで第2シートの着座者の足を入れる空間が下方に広がり、足入れ性が向上した車両を提供することが可能になる。
【0009】
上記の車両によれば、前記凹部の断面は三角形状に形成されているとよい。
凹部の断面を三角形状に形成することで、フロア下の空間を確保しつつ、着座者の足を置く空間を広げることができ、足入れ性が向上する。
【0010】
また、上記の車両によれば、前記第1シートを前記フロアにスライド移動可能に取り付ける一対のスライドレールを備え、前記凹部は、前記一対のスライドレールの後端より後方の位置に形成されるとよい。
凹部が一対のスライドレールの後端より後方の位置に形成されることで、フロアの形状をシンプルにしつつ、足入れ性を向上させることができる。
【0011】
また、上記の車両によれば、前記第1シートを前記フロアにスライド移動可能に取り付ける一対のスライドレールを備え、前記凹部は、前記一対のスライドレールの間において、前記一対のスライドレールの後端よりも前方に位置する領域を含むように形成されるとよい。
凹部がスライドレールの後端よりも前方に位置する領域を含むことで、シートクッション下にまで足を入れることができ、更に足入れ性を向上させることができる。
【0012】
また、上記の車両によれば、前記第1シートを前記フロアにスライド移動可能に取り付ける一対のスライドレールを備え、前記凹部は、前記一対のスライドレールの間において、前記一対のスライドレールの前方から後方まで連続的に延びる領域を含むように形成されるとよい。
凹部がスライドレールの前方から後方まで連続的に延びる領域を含むことで、シートクッション下において足を伸ばして入れることができ、更に足入れ性を向上させることができる。
【0013】
また、上記の車両によれば、前記フロアの下方において前記車両の左右方向に延び、前記フロアを支持する梁部材を備え、前記凹部は、前記梁部材を避けた位置に形成されるとよい。
凹部が、フロアの下方に設けられる梁部材を避けた位置、すなわちフロアの下方にある梁部材が配置されていない領域に形成することで、梁部材に影響を与えることなく、凹部を形成して足入れ性を向上させることができる。
【0014】
また、上記の車両によれば、前記フロア上において、前記車両の左右方向に延び、前記フロアを支持する梁部材を備え、前記凹部は、前記梁部材を避けた位置に形成されるとよい。
前記凹部が、フロア上に設けられた梁部材を避けた位置、すなわち凹部をフロア上の梁部材が配置されていない領域に形成されることで、梁部材に影響を与えることなく、凹部を形成して足入れ性を向上させることができる。
【0015】
また、上記の車両によれば、前記フロアは、前記第1シートの下方に位置する領域において開口部が形成されており、前記フロアは、前記開口部を塞ぐ蓋部を有し、前記凹部は、前記蓋部を避けた位置に形成されているとよい。
凹部がフロアの開口部を塞ぐ蓋部を避けた位置、すなわち蓋部が配置されていない領域に形成されることで、蓋部に影響を与えることなく、凹部を形成して足入れ性を向上させることができる。
【0016】
また、上記の車両によれば、前記フロアの下方に配置されるバッテリと、前記フロアと前記バッテリとの間において前記バッテリ上に配置された部材と、を備え、前記凹部は、前記バッテリ上に配置された部材を避けた位置に形成されるとよい。
凹部がバッテリ上に配置された部材、例えば衝撃緩衝部等を避けた位置、すなわち衝撃緩衝部等が配置されていない領域に形成されることで、バッテリ上に配置された部材に影響を与えることなく、凹部を形成して足入れ性を向上させることができる。
【0017】
また、上記の車両によれば、前記第1シートの前記一対のスライドレールにはそれぞれの後端部においてフットカバーが設けられており、前記フットカバーは、前記車両の後方に向かうに従って下方に傾斜する傾斜面を有するとよい。
フットカバーが傾斜面を有することで、フットカバーの傾斜面とフロアに形成された凹部とが一体的となり、足が置きやすくなる。
【0018】
また、上記の車両によれば、前記フットカバーは、前記一対のスライドレールのそれぞれの後端を架け渡して一体的に形成されており、前記フットカバーの前記傾斜面は、前記フロアに形成される前記凹部まで延びているとよい。
フットカバーの傾斜面が凹部にまで延びていることにより、第1シートの後方において更に足を置きやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1シートより後方に位置するフロア上の領域を少なくとも含んで凹部を形成することで第2シートの着座者の足を入れる空間が下方に広がり、足入れ性が向上した車両を提供することが可能になる。
また、本発明によれば、凹部の断面を三角形状に形成することで、フロア下の空間を確保しつつ、着座者の足を置く空間を広げることができ、足入れ性が向上する。
また、本発明によれば、凹部が一対のスライドレールの後端より後方の位置に形成されることで、フロアの形状をシンプルにしつつ、足入れ性を向上させることができる。
また、本発明によれば、凹部がスライドレールの後端よりも前方に位置する領域を含むことで、シートクッション下にまで足を入れることができ、更に足入れ性を向上させることができる。
また、本発明によれば、凹部がスライドレールの前方から後方まで連続的に延びる領域を含むことで、シートクッション下において足を伸ばして入れることができ、更に足入れ性を向上させることができる。
また、本発明によれば、凹部が、フロアの下方に設けられる梁部材を避けた位置、すなわちフロアの下方にある梁部材が配置されていない領域に形成されることで、梁部材に影響を与えることなく、凹部を形成して足入れ性を向上させることができる。
また、本発明によれば、前記凹部が、フロア上に設けられた梁部材を避けた位置、すなわち凹部をフロア上の梁部材が配置されていない領域に形成されることで、梁部材に影響を与えることなく、凹部を形成して足入れ性を向上させることができる。
また、本発明によれば、凹部がフロアの開口部を塞ぐ蓋部を避けた位置、すなわち蓋部が配置されていない領域に形成されることで、蓋部に影響を与えることなく、凹部を形成して足入れ性を向上させることができる。
また、本発明によれば、凹部がバッテリ上に配置された部材、例えば衝撃緩衝部等を避けた位置、すなわち衝撃緩衝部等が配置されていない領域に形成されることで、バッテリ上に配置された部材に影響を与えることなく、凹部を形成して足入れ性を向上させることができる。
また、本発明によれば、フットカバーが傾斜面を有することで、フットカバーの傾斜面とフロアに形成された凹部とが一体的となり、足が置きやすくなる。
また、本発明によれば、フットカバーの傾斜面が凹部にまで延びていることにより、第1シートの後方において更に足が置きやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る車両を示す図である。
図2】車両に搭載される車両用シートの外観とフロアとを示す図で、斜め後方から見た斜視図である。
図3】車両用シートのシートフレームを示す図で、斜め前方から見た斜視図である。
図4図2のA-A線に沿った断面図であり、フロアに形成される凹部を示す図である。
図5A】フロアに形成される凹部の別例を示す図である。
図5B図5Aに示す凹部を上方から見た図である。
図6A】フロアに形成される凹部の更に別例を示す図である。
図6B図6Aに示す凹部を上方から見た平面図である。
図7A】フロア上のクロスメンバを避けた位置に形成される凹部を示す図である。
図7B】くぼみ部を有するクロスメンバを背面側から見た図である。
図8】フロアの蓋部を避けた位置に形成される凹部を示す図である。
図9】バッテリ上に配置された衝撃緩衝部材を避けた位置に形成される凹部を示す図である。
図10A】フットカバーに形成される傾斜面を示す拡大図である。
図10B】フットカバーに形成される傾斜面を示す斜視図である。
図11A】フットカバーの傾斜面を凹部まで延ばした例を示す図である。
図11B】フットカバーの傾斜面を凹部まで延ばした例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る車両、特に車両のフロア構造について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0022】
なお、以下では、車両の一例として図1に示す、4つの車輪を有する四輪の電気自動車(EV車)の車両Vを挙げ、その構成例について説明することとする。
但し、適用される車両Vは四輪の電気自動車に限定されず、エンジン車、走行用にモータとエンジンの双方を備えるハイブリッド車、電源としてバッテリと燃料電池を搭載する車等に適用されてもよい。
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両及び車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「左右方向」又は「車幅方向」とは、車両の横幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両の上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両の中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は車両の外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
なお、以下に説明する車両に設けられた車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0023】
<車両Vの基本構成>
図1に示すように、本発明が適用される車両Vは、車室2を画定する車体3と、左右一対の前輪及び後輪の4つの車輪4とを含む車両構造を有する。
車体3は、車両の前後方向に延在する左右一対のサイドメンバ(不図示)と、サイドメンバに掛け渡され車幅方向に延在する複数のクロスメンバ5と、車室2のフロアFLを形成しクロスメンバ5の上側に結合されたフロアパネル6と、を備えている。
【0024】
車体3を構成するクロスメンバ5やフロアパネル6等は、特に断りがない限り、鋼材によって形成されている。また、複数のクロスメンバ5のそれぞれは、上方向に向かって開口する断面ハット状に形成されている。
【0025】
また、図1に示すように、フロアパネル6の下方には、車両の電動モータ等に電力を供給するための複数のバッテリ90と、複数のバッテリ90を下側から支持するバッテリプレート91と、が設けられている。バッテリプレート91の上面には、車幅方向に延在するサブクロスメンバ92が設けられており、サブクロスメンバ92の上面が、クロスメンバ5の下面に結合することで、バッテリプレート91がフロアパネル6の下方に取り付けられる。
【0026】
フロアFL上には、車両Vの前方から後方に向けて順に、車両用シート1として、運転席シート及び助手席シートとなるフロントシートS1、二列目に設けられたミッドシートS2、三列目に設けられたリアシートS3が配置されている。
なお、フロントシートS1が本発明の第1シートである場合、フロントシートS1の後方に配置されるミッドシートS2が本発明の第2シートに該当する。また、ミッドシートS2が本発明の第1シートである場合、リアシートS3が本発明の第2シートとなる。
【0027】
<車両用シート1>
以下、車両用シート1の基本構成について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、車両用シート1を後方から見た斜視図であり、図中車両用シート1の一部については、図示の都合上、クッションパッド11a、バックパッド12a及び表皮材11b、12bを外した構成にて図示している。図3は、車両用シート1の骨格を形成するシートフレーム20を示す斜視図である。
【0028】
車両用シート1は、車室2内のフロアFL上(より詳しくは、フロアパネル6上)に載置され、車両Vの乗員が着座するシートである。車両用シート1は、車両VのフロントシートS1として利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シート1はフロントシートS1の後方に位置する、二列目のミッドシートS2又は三列目のリアシートS3としても利用可能である。
【0029】
本実施形態において、車両用シート1は、シート本体10と、高さ調整機構40と、スライド機構50と、を主な構成として有し、車両Vの車室2内に取り付けられている。
シート本体10は、高さ調整機構40及びスライド機構50を介して、車室のフロアFLから所定の高さに取り付けられている。
【0030】
<シート本体10>
シート本体10は、図2に示すように、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション11、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック12、及び、シートバック12の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト13を主な構成要素とする。
【0031】
シートクッション11は、シートクッションフレーム21(図3参照)に、クッションパッド11a(パッド部材)と表皮材11bを被せることで構成されている。シートバック12は、シートバックフレーム31(図3参照)に、バックパッド12a(パッド部材)、表皮材12bを被せることで構成されている。ヘッドレスト13は、ヘッドレストフレームに、パッドと表皮材を被せることで構成されている。
クッションパッド11a及びバックパッド12aは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、表皮材11b、12bは、例えばクロス、合成皮革又は本革等からなる。
【0032】
シートクッション11とシートバック12とはリクライニング機構60(図3参照)により連結されている。リクライニング機構60により、シートバック12は、シートクッション11に対して回動可能となっており、その傾斜角度が調整可能になっている。シート本体10の両側部には、リクライニング機構60を覆うサイドカバー14が設けられている。
また、シート本体10の下方には、シートクッション11とフロアFLとの間に、下方空間USが形成されている。
【0033】
<シートフレーム20>
図3に示すように、車両用シート1の中には、その骨格としてシートフレーム20が設けられている。シートフレーム20は、シートクッション11の骨格を形成するシートクッションフレーム21と、シートバック12の骨格を形成するシートバックフレーム31と、から構成される。
【0034】
<シートクッションフレーム21>
シートクッションフレーム21は方形枠状に形成され、その左右の側部には一対のクッションサイドフレーム22が設けられている。また、シートクッションフレーム21は一対のクッションサイドフレーム22、22を前側で接続するフロントパイプ24と、後側で接続するリアパイプ25とを有する。車両用シート1の前後にあるフロントパイプ24及びリアパイプ25は丸パイプにより構成されている。また、フロントパイプ24の更に前方にはパンフレーム23が設けられている。
【0035】
クッションサイドフレーム22は、シートクッションフレーム21の左右に1つずつ配置されており、各々のクッションサイドフレーム22は、車両用シート1の前後方向に延びている。
左側のクッションサイドフレームには、その外側の側面に高さ調整機構40の可動部(後述するフロントリンク41及びリアリンク42)を動作させる不図示のフロントアクチュエータ及びリアアクチュエータが取り付けられている。
【0036】
シートクッション11には、着座者の臀部から荷重を受ける板状の受圧部材26が設けられている。受圧部材26は、図3に示すように、板状に形成された樹脂製の部材であり、受圧部材26の上にはクッションパッド11aが載置されている。
受圧部材26は、シートクッションフレーム21においてフロントパイプ24とリアパイプ25を架け渡して設けられている。より詳しく述べると、受圧部材26には、左右端部と中央にワイヤが前後方向に延びた状態でインサートされており、ワイヤの前端と後端とに形成されたフックにより、フロントパイプ24及びリアパイプ25に固定される。
【0037】
<シートバックフレーム31>
シートバックフレーム31は全体として方形枠状に形成されている。シートバックフレーム31は、左右に配置される一対のバックサイドフレーム32、32と、アッパーフレーム33と、ロアフレーム34とを備える。アッパーフレーム33は、一対のバックサイドフレーム32、32の間に配置され、一対のバックサイドフレーム32、32の上端を連結する連結部材である。ロアフレーム34は、一対のバックサイドフレーム32、32の間に配置され、一対のバックサイドフレーム32、32の下端を連結する連結部材である。バックサイドフレーム32、アッパーフレーム33、ロアフレーム34は、板状の部材から形成される。
【0038】
<高さ調整機構40>
高さ調整機構40は、上下方向においてシートクッションフレーム21とスライド機構50を構成するアッパーレール51との間に配置されている。そして、乗員が高さ調整操作(例えば、不図示の昇降ボタンを押す操作)を実行すると、不図示のフロントアクチュエータ及びリアアクチュエータによって高さ調整機構40の可動部が動作する。これによりシートクッション11を含む車両用シート1の高さが調整される。
【0039】
高さ調整機構40は、前方に位置するフロントリンク41と、後方に位置するリアリンク42を有している。フロントリンク41とリアリンク42は、対をなして車両用シート1の高さを調整する。
【0040】
<スライド機構50>
また、車両用シート1の下部には、図2及び図3に示すようにスライド機構50が設置されている。このスライド機構50により、車両用シート1のシート本体10は、前後方向にスライド移動可能な状態でフロアFL(より詳細にはフロアパネル6)に取り付けられる。
【0041】
スライド機構50は、前後方向に沿って車両用シート1のシート本体10をスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライド機構の構造)となっている。スライド機構50は、一対のスライドレール53として、フロアパネル6上に固定されるロアレール52と、ロアレール52に対してスライド移動可能なアッパーレール51と、を有する。フロアパネル6上に固定されたロアレール52に対して、シート本体10と接続するアッパーレール51が摺動可能となっている。
【0042】
<フロアFLの凹部70>
本実施形態の車両Vは、図2及び図4に示すように、フロアFLにおいて、少なくとも車両用シート1の後方に位置する領域R1を含んで形成される足置き用の凹部70を備えている。より詳細に述べると、車両Vは、スライド機構の一対のスライドレール53(より詳しくはロアレール52)の後端より後方の位置に、足を置くことが可能な凹部70を備える。
【0043】
凹部70はフロアパネル6を変形させることにより形成されており、凹部70は、図4Aに示すように断面が三角形状になるように形成されている。
凹部70は、ミッドシートS2に着座する乗員の足FTを置くために、前側傾斜面71と、後側傾斜面72とを有している。特に前側傾斜面71は、乗員が着座したとき、足を乗せやすい角度となるように傾斜されている。
なお、凹部70の断面形状は三角形状に限定されず、四角形状や下方に突出する湾曲形状であってもよい。
【0044】
図4に示すように、フロアFLに車両用シート1の後方の領域R1を含んで凹部70を形成することにより、シンプルな構成ではあるが、後方のミッドシートS2に着座する乗員の足を置く空間を下方に広げ、足入れ性を向上させている。
また、凹部70の断面を三角形状に形成することで、フロアFL下のバッテリ90等を配置する空間を確保しつつ、着座者の足を置く空間を広げることができる。
【0045】
図5A及び図5Bに凹部70の別例である凹部70Aを示す。凹部70Aも、車両用シート1の後方に位置する領域R1を含んで形成される足置き用の凹部として形成されている。凹部70Aは、更にシートクッション11下の下方空間USにも入り込んで形成されている。
すなわち、凹部70Aは、スライド機構50の一対のスライドレール53(より詳しくロアレール52)の間において、一対のスライドレール53の後端53bよりも前方に位置する領域R2を含むように形成されている。
【0046】
凹部70Aは、図4Aに示す凹部70と同様、フロアパネル6を変形させることにより、断面が三角形状になるように形成されている。凹部70Aの断面を三角形状にすることで、フロアFL下のバッテリ等を配置する空間を確保しつつ、着座者の足を置く空間を広げることができる。
フロアFLの形状は複雑になるが、シートクッション11下にも足入れを可能にすることで、後部座席に着座する乗員の足を入れる空間が下方だけでなく前方にも広がり、それにより更に足入れ性を向上させることができる。
なお、凹部70Aの断面形状は、三角形状に限定されず、四角形状や下方に突出する湾曲形状であってもよい。
【0047】
図6A及び図6Bに凹部70の更に別例である凹部70Bを示す。凹部70Bも、車両用シート1の後方に位置する領域R1を含んで形成される足置き用の凹部として形成されている。凹部70Bは、更に、シートクッション11下の下方空間USに入り込んで形成されていて、スライド機構50の一対のスライドレール53の前方から後方まで連続的に延びる領域R3を含むように形成されている。
図6Aに示すように、凹部70Bは断面が四角形状、より詳しくは台形状に形成されている。凹部70Bは、その底面73が、フロアFLの下に配置されるバッテリ90の上面に近接するように形成される。乗員の足FTを入れる空間が下方と前方に広がるため、更に足入れ性を向上させることができる。
なお、凹部70Bの断面形状は四角形状だけでなく、下方に突出する三角形状や湾曲形状であってもよい。
【0048】
以下、フロアFLに形成される凹部70とフロアFLに設けられる他の部材との位置関係について説明する。
上述したように、車両Vには、フロアFLの下方において、上述したように左右方向に延在し、フロアパネル6を支持すクロスメンバ5(梁部材)が設けられている。クロスメンバ5は、車両用シート1のスライドレール53の前側端部及び後側端部の下方に配置されている。更に、クロスメンバ5は、バッテリ90を支持するバッテリプレート91のサブクロスメンバ92と連結している。
【0049】
凹部70は、図4に示すように、フロアFL下のクロスメンバ5を避けた位置に設けられている。言い換えれば、凹部70は、クロスメンバ5が配置されていない領域に形成されえいる。フロアFL下のクロスメンバ5を避けた位置に凹部70を設けることで、クロスメンバ5に影響を与えることなく、容易に凹部70を形成することができる。
【0050】
図7に示す、車両Vのクロスメンバ5は、フロアFLの下方に設けられているが、車両Vの構造によっては、図8Aに示すようにフロア上に、クロスメンバ5Aが設けられる場合もある。クロスメンバ5Aも、梁部材として車両Vの左右方向に延びフロアパネル6を支持している。クロスメンバ5Aは、図8Aに示すように、スライドレール53の前端53aと後端53bとに接続して、車両用シート1を支持している。
なお、クロスメンバ5Aは、フロアパネル6の一部が逆溝形に折り曲げられ、左右に延びる凸条の梁部材として形成されてもよい。
【0051】
凹部70は、図8Aに示すように、フロアFL上のクロスメンバ5Aを避けた位置に設けられている。言い換えれば、凹部70は、クロスメンバ5Aが配置されていない領域に形成されている。すなわち、凹部70は、車両用シート1の後方に位置するクロスメンバ5Aよりも後方の位置に形成されている。フロアFL上のクロスメンバ5Aを避けた位置に凹部70を設けることで、クロスメンバ5Aに影響を与えることなく、容易に凹部70を形成することができる。
【0052】
なお、フロアFL上のクロスメンバ5Aには、図8Bに示すように、クロスメンバ5Aの上部において、車両用シート1の一対のスライドレール53の間に、くぼみ部74が形成されてもよい。くぼみ部74を形成することで、シートクッション11下の下方空間USに、乗員の足を入れることができ、足入れ性を向上させることができる。
【0053】
また、図9に示すように、車両VのフロアFLには、フロアFLの下方に配置されたバッテリ90にアクセスするための開口部75が形成されている場合がある。乗員から直接見えなくするために、開口部75は、車両用シート1の下方に位置する領域R4に設けられることが多い。開口部75が形成された場合、開口部75を塞ぐための蓋部76がフロアFLに配置される。
凹部70は、図9に示すように、フロアFLに配置される蓋部76を避けた位置に形成される。言い換えれば、凹部70は、開口部75や蓋部76が形成されていない領域に、形成されている。凹部70が、開口部75を塞ぐ蓋部76を避けた位置に形成されることで、蓋部76に影響を与えることなく、凹部70を形成して足入れ性を向上させることができる。
【0054】
また、図10に示すように、車両VのフロアFLの下方に配置されたバッテリ90と、フロアパネル6との間に、衝撃緩衝部材77が配置されている場合がある。衝撃緩衝部材77は、フロアFLからの衝撃がバッテリ90に直接伝わらないように抑制するための部材であり、例えばゴムやウレタン系の発泡材等で構成される。
衝撃緩衝部材77の代わりに、樹脂又はゴム等の弾性体で作られた防振材が設けられてもよい。防振材をバッテリ90とフロアパネル6との間に配置することで、バッテリ90の振動を抑えることができると共に、フロアパネル6から室内に伝わるノイズを抑えることができる。
【0055】
凹部70は、図10に示すように、フロアFLとバッテリ90との間に配置された衝撃緩衝部材77等の部材を避けた位置に形成される。
言い換えれば、凹部70は、衝撃緩衝部材77等が配置されていない領域に形成されている。凹部70が、フロアFLとバッテリ90との間に配置された部材を避けた位置に形成されることで、その部材に影響を与えることなく凹部70を形成し、足入れ性を向上させることができる。
【0056】
<足置部78>
スライド機構50の一対のスライドレール53、より詳しくは一対のロアレール52の後部にはフットカバー54が設けられている。フットカバー54を設けることで、スライドレール53に、直接乗員の足FTが触れないようなっている。
車両用シート1の後方にフロアFLに凹部70を形成した場合、このフットカバー54が、図10Aに示すように車両Vの後方に向かうに従って下方に傾斜する傾斜面54aを有してもよい。
フットカバー54に傾斜面54aを設けることで、傾斜面54aがその後方に形成される凹部70と一体的になり、足が置きやすくなる。
なお、図10Bに示すように、左右に配置されたスライドレール53のフットカバー54を連結して、傾斜面78aを有する足置部78が形成されてもよい。言い換えれば、車両用シート1は、足置部78としてスライドレール53の後端を架け渡して一体的に形成されたフットカバー54を備え、フットカバー54(足置部78)は車両Vの後方に向かうに従って下方に傾斜する傾斜面78aを有してもよい。
【0057】
また、図11A及び図11Bに示すように、左右に配置されたフットカバー54を連結して足置部78Aを形成している場合、傾斜面78aはフロアFLに形成された凹部70まで延びるように形成されてもよい。例えば、傾斜面78aに板状の傾斜板79Aを載置し、凹部70の前側傾斜面71と連続するようにしてもよい。傾斜面78aを凹部70まで延ばすことにより足がより一層置きやすくなる。
【0058】
以上、図を用いて本発明の実施形態である車両Vについて説明した。なお、車両Vに搭載される車両用シート1は、高さ調整機構40を有しているが、本発明は高さ調整機構40を有さない車両用シート1を搭載する車両Vにも適用され得る。また、車両Vは前後に三列シートの車両として説明したが、フロントシート及びリアシートから構成される二列シートの車両にも適用され得る。
【符号の説明】
【0059】
V 車両
FL フロア
FT 足
2 車室
3 車体
4 車輪
5、5A クロスメンバ
6 フロアパネル
S1 フロントシート(第1シート)
S2 ミッドシート(第2シート)
S3 リアシート
1 車両用シート
10 シート本体
11 シートクッション
11a クッションパッド(パッド部材)
11b 表皮材
12 シートバック
12a バックパッド(パッド部材)
12b 表皮材
13 ヘッドレスト
14 サイドカバー
20 シートフレーム
21 シートクッションフレーム
22 クッションサイドフレーム
23 パンフレーム
24 フロントパイプ
25 リアパイプ
26 受圧部材
31 シートバックフレーム(バックフレーム)
32 バックサイドフレーム
33 アッパーフレーム
34 ロアフレーム
40 高さ調整機構
41 フロントリンク
42 リアリンク
50 スライド機構
51 アッパーレール
52 ロアレール
53 スライドレール
53a 前端
53b 後端
54 フットカバー
54a 傾斜面
60 リクライニング機構
70、70A、70B 凹部
71 前側傾斜面
72 後側傾斜面
73 底面
74 くぼみ部
75 開口部
76 蓋部
77 衝撃緩衝部材
78、78A 足置部
78a 傾斜面
79A 傾斜板
R1、R2、R3 領域
90 バッテリ
91 バッテリプレート
92 サブクロスメンバ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B