(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141229
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】高リン血症治療用医薬用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/6615 20060101AFI20230928BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61K31/6615
A61P7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047443
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(71)【出願人】
【識別番号】518063193
【氏名又は名称】サイエンスファーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】立石 大
(72)【発明者】
【氏名】當眞 嗣雅
(72)【発明者】
【氏名】増永 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】新垣 唯一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美歌子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅巳
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高リン血症の治療に用いられる医薬用組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】一般式(1)
で表される化合物、若しくはその薬理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とし、高リン血症の治療に用いられる、医薬用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、-Z
1-O-C(=O)-R
21、又は、-Z
1-S-C(=O)-R
21であり;前記Z
1は、-CH
2-、-CH
2-CH
2-、又は、-CH
2-C
4H
6-であり;Z
1中の1又は複数の水素原子は、置換基で置換されていてもよく;前記R
21は、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基であり:一分子中に複数あるZ
1及びR
21は、いずれも互いに同種の基であってもよく、異種の基であってもよい;ただし、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、及びR
12の全てが水素原子である化合物を除く]
で表される化合物、若しくはその薬理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とし、高リン血症の治療に用いられることを特徴とする、医薬用組成物。
【請求項2】
前記R21が、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基である、請求項1に記載の医薬用組成物。
【請求項3】
前記R21が、n-プロピル基又はエチル基である、請求項1又は2に記載の医薬用組成物。
【請求項4】
前記R21が、置換基を有している炭素数1~6のアルキル基、又は、置換基を有しているアリール基であり、
前記置換基が、ハロゲン、炭素数1~4のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基、ヒドロキシ基、チオール基、炭素数1~4のアシル基、及びアリル基からなる群から選択される1種以上の基である、請求項1又は2に記載の医薬用組成物。
【請求項5】
前記Z1中の1又は複数の水素原子が、ハロゲン、炭素数1~4のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基、ヒドロキシ基、チオール基、炭素数1~4のアシル基、及びアリル基からなる群から選択される1種以上の基で置換されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬用組成物。
【請求項6】
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12のうちの6個以上が水素原子ではない、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬用組成物。
【請求項7】
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12の全てが水素原子ではない、請求項6に記載の医薬用組成物。
【請求項8】
前記一般式(1)で表される化合物が、体内で加水分解されて、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12の一部又は全てが水素原子になる、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬用組成物。
【請求項9】
血中無機リン値を低下させる作用を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬用組成物。
【請求項10】
石灰化を抑制する作用を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬用組成物。
【請求項11】
経口投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高リン血症の治療に用いられる医薬用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高リン血症とは、血中の無機リン濃度が4.5mg/dL(1.46mmol/L)を上回る状態をいう。高リン血症は、進行した腎機能不全(GFR<30mL/分)、糖尿病性ケトアシドーシス、外傷によらない横紋筋融解症、及び腫瘍崩壊症候群などで最もよく見られる。大半の患者は無症状であるが、高リン血症が進行すると、リン酸とカルシウムが結合して生成するリン酸カルシウムが骨以外の組織に沈着する異所性石灰化や、活性型ビタミンDの産生低下により副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される二次性副甲状腺機能亢進症などを引き起こす。特に、異所性石灰化は、血管で生じると動脈硬化や心筋梗塞の原因となるため、高リン血症は早期の治療が望まれる。
【0003】
現状の高リン血症治療では、リンの摂取制限、リン吸着薬の服用、食塩水による利尿、血液透析などが行われている。リン吸着薬としては、以前は水酸化アルミニウムが使用されていたが、水酸化アルミニウム製剤の長期使用が透析患者におけるアルミニウムの体内蓄積を招き、アルミニウム骨症やアルミニウム脳症というような深刻な副作用が見られた。このため、水酸化アルミニウム製剤は、1992年より透析患者では禁忌となった。その後、炭酸カルシウム剤が高リン血症治療薬として正式に認可された。しかし、炭酸カルシウム剤の服用により高カルシウム血症が高頻度に発症しており、さらに副甲状腺の過剰抑制、無形成骨や軟部組織の石灰化や血管石灰化の問題が指摘されている。このため、炭酸カルシウム製剤の大量使用は避ける方向にあり、炭酸ランタンや塩酸セベラマーなどの非アルミニウム・非カルシウム性リン低下薬との併用が基本となっている。
【0004】
細胞内外での無機リン濃度の恒常性は、リン酸取り込みトランスポーターSLC20A2とリン酸排出トランスポーターXPR1のリンクにより維持されている(
図1)。SLC20A2により細胞内に取り込まれたリン酸は、ATPに変換されるが、ATPは、フィチン酸(myo-イノシトール-1,2,3,4,5,6リン酸、IP6)をリン酸化する酵素であるIP6キナーゼ(IP6K)を活性化する。IP6Kは、細胞内のイノシトール6リン酸(IP6)をイノシトールピロリン酸(IP7)へと変換する。IP7は、XPR1に作用して、細胞内のリン酸を排出する。SLC20A2とXPR1はリンクしており、SLC20A2を過剰発現させると、リン酸の取り込みが増大すると同時に、XPR1を介したリン酸の排出が起こる。このようにして、細胞内外のリン酸濃度のバランスが保たれ、血中無機リンの正常値が維持されている。高リン血症の原因の一つに、SLC20A2とXPR1の機能不全が挙げられる。実際に、異所性石灰化の一種である特発性基底核石灰化症は、大脳基底核等に石灰化を伴う原因不明の疾患であるが、家族性特発性基底核石灰化症の原因遺伝子として、SL20A2遺伝子、XPR1遺伝子を含む数種の遺伝子が報告されている。
【0005】
IP6K阻害剤であるN6-(p-ニトロベンジル)プリン(TNP)によってIP7の生成が抑えられ、血中のリン濃度が減少することが報告されている(非特許文献1)。更に、TNPより強力なIP6K阻害剤であるSCO-006も報告されている(非特許文献2)。これらの知見から、IP6Kは高リン血症治療薬の標的になると期待される。また、IP6は、リン酸カルシウムの蓄積による石灰化を抑制できることが報告されている(非特許文献3及び4)。
【0006】
一方で、IP6は、抗がん作用、免疫力上昇作用、腎結石形成抑制作用、コレステロール低下作用、冠動脈疾患や糖尿病の発症リスク軽減などの多彩な活性を持つことが知られている(非特許文献5)。IP6はこのように多くの有用な効果を奏するが、6個のリン酸基に由来する多くの負電荷を持つために細胞膜を通りづらく、細胞のIP6取り込み量には限界がある。また、IP6は、金属とキレートする性質を持ち、体内のミネラルの吸収を妨げることから、大量摂取による副作用が指摘されている。そこで、IP6の細胞内への取り込み量を改善したプロドラッグ体として、フィチン酸エステル誘導体(特許文献1)が開発されている。当該フィチン酸エステル誘導体は、IP6のリン酸基がエステル化によって保護されており、これにより脂溶性が向上して細胞への取り込み効率が改善されている。細胞内に取り込まれたフィチン酸エステル誘導体は、細胞内の酵素による加水分解反応によって、IP6となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lopez-Sanchez et al, Journal of Biological Chemistry, 2020, vol.295, p.9366-9378.
【非特許文献2】Moritoh et al, Nature Communication, 2021, 12:4847.
【非特許文献3】Schlemmer et al, Molecular Nutrition & Food Research, 2009, vol,53, p.S330-S375.
【非特許文献4】Schantl et al, Nature Communication, 2020, 11:721.
【非特許文献5】Vucenik, Molecules, 2021, 26, 5042.
【非特許文献6】Keshari et al, Journal of Clinical Medicine, 2020, 9, 312; doi:10.3390.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高リン血症の治療に用いられる治療薬の多くは、リン酸との結合能力が高い薬剤を有効成分とするリン吸着薬である。これらのリン吸着薬は消化管からのリンの吸収阻害を目的としているものであり、体内でのリン酸量自体を低減させることはできない。加えて、リン吸着薬の多くは、量が多いため服用しにくいことや、便秘や腹部膨満感など消化器系副作用が多いなどの問題点がある。
【0010】
本発明は、体内でのリン酸量を低減させることが可能な高リン血症治療に適した医薬用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、IP6のリン酸基の少なくとも一部がエステル化によって保護されたフィチン酸エステル誘導体をマウスに経口投与した場合に、血中無機リン値を強力に低下させることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
[1] 本発明の第一の態様に係る医薬用組成物は、下記一般式(1)[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、-Z1-O-C(=O)-R21、又は、-Z1-S-C(=O)-R21であり;前記Z1は、-CH2-、-CH2-CH2-、又は、-CH2-C4H6-であり;Z1中の1又は複数の水素原子は、置換基で置換されていてもよく;前記R21は、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基であり:一分子中に複数あるZ1及びR21は、いずれも互いに同種の基であってもよく、異種の基であってもよい;ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12の全てが水素原子である化合物を除く]
で表される化合物、若しくはその薬理学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とし、高リン血症の治療に用いられることを特徴とする。
【0013】
【0014】
[2] 前記[1]の医薬用組成物は、前記R21が、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。
[3] 前記[1]又は[2]の医薬用組成物は、前記R21が、n-プロピル基又はエチル基であることが好ましい。
[4] 前記[1]又は[2]の医薬用組成物は、前記R21が、置換基を有している炭素数1~6のアルキル基、又は、置換基を有しているアリール基であり、
前記置換基が、ハロゲン、炭素数1~4のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基、ヒドロキシ基、チオール基、炭素数1~4のアシル基、及びアリル基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
[5] 前記[1]~[4]のいずれかの医薬用組成物は、前記Z1中の1又は複数の水素原子が、ハロゲン、炭素数1~4のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基、ヒドロキシ基、チオール基、炭素数1~4のアシル基、及びアリル基からなる群から選択される1種以上の基で置換されていることが好ましい。
[6] 前記[1]~[5]のいずれかの医薬用組成物は、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12のうちの6個以上が水素原子ではないことが好ましい。
[7] 前記[6]の医薬用組成物は、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12の全てが水素原子ではないことが好ましい。
[8] 前記[1]~[7]のいずれかの医薬用組成物は、前記一般式(1)で表される化合物が、体内で加水分解されて、前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12の一部又は全てが水素原子になることが好ましい。
[9] 前記[1]~[8]のいずれかの医薬用組成物は、血中無機リン値を低下させる作用を有することが好ましい。
[10] 前記[1]~[9]のいずれかの医薬用組成物は、石灰化を抑制する作用を有することが好ましい。
[11] 前記[1]~[10]のいずれかの医薬用組成物は、経口投与されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る医薬用組成物は、血中の無機リン濃度自体を直接低下させることができ、さらに、経口投与によっても十分な治療効果が期待できることから、高リン血症の治療用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】細胞内外のリン酸濃度の恒常性維持のメカニズムを模式的に示した図である。
【
図2】実施例1において、Pro-IP6酪酸エステルを6週間投与した高脂肪食餌誘発性肥満モデルマウスの血中無機リン値の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る医薬用組成物は、IP6のリン酸基の少なくとも一部がエステル化又はチオエステル化によって保護されたフィチン酸誘導体を有効成分とし、高リン血症の治療に用いられることを特徴とする。当該フィチン酸誘導体は、IP6の細胞膜透過性を改善したプロドラッグである。なお、本発明及び本願明細書において、「プロドラッグ」とは、生体内投与後に代謝されることによって、生物学的、医薬的、又は治療的に活性な型に転換される化合物を意味する。
【0018】
具体的には、本発明に係る医薬用組成物の有効成分とするフィチン酸エステル誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物である。以降において、一般式(1)で表される化合物を、「Pro-IP6」と呼称する場合がある。
【0019】
【0020】
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、-Z1-O-C(=O)-R21、又は、-Z1-S-C(=O)-R21である。ただし、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12の全てが水素原子である化合物、すなわちIP6は、Pro-IP6からは除かれる。
【0021】
Pro-IP6としては、好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12のうち、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上が水素原子ではない。「水素原子ではない」とは、-Z1-O-C(=O)-R21、又は、-Z1-S-C(=O)-R21であること、すなわち、エステル化又はチオエステル化されていることを意味する。本発明に係る医薬用組成物野有効成分のPro-IP6としては、一般式(1)のうち、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12のうちの6個以上が水素原子ではない化合物が好ましく、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12の全てが水素原子ではない化合物がより好ましい。
【0022】
一般式(1)中、R21は、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基(C1-6アルキル基)、又は、置換基を有していてもよいアリール基である。一分子中に複数あるR21は、互いに同種の基であってもよく、異種の基であってもよい
【0023】
R21が置換基を有していてもよいC1-6アルキル基である場合、当該C1-6アルキル基としては、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
置換基を有しているC1-6アルキル基は、C1-6アルキル基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基(C1-4アルキル基)、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、チオール基、炭素数1~4のアシル基(C1-4アシル基)、アリル基等が挙げられる。また、当該置換基は、フェニル基のような大きな置換基であってもよい。R21としては、C1-6アルキル基が有している置換基は、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、アミノ基、及びニトロ基からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0025】
R21が置換基を有していてもよいアリール基である場合、当該アリールル基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。置換基を有しているアリール基は、アリール基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、チオール基、C1-4アシル基、アリル基等が挙げられる。また、当該置換基は、フェニル基のような大きな置換基であってもよい。R21としては、アリール基が有している置換基は、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、アミノ基、及びニトロ基からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0026】
C1-6アルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基のうち、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
アミノ基は、アンモニア、第一級アミン、又は第二級アミンから水素原子を除いた1価の置換基の総称である。
チオール基は、水素化された硫黄を末端に持つ置換基である。当該チオール基としては、メタンチオール基、エタンチオール基、チオフェノール基を含む。
【0027】
C1-4アルキル基としては、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。C1-4アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0028】
アシル基は、オキソ酸からヒドロキシル基を取り除いた形の置換基である。C1-4アシル基としては、アルキル基部分が、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。C1-4アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基が挙げられる。
【0029】
Pro-IP6としては、一分子中にあるR21の少なくとも一部が、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基(C1-4アルキル基)が好ましく、一分子中にあるR21の全部が置換基を有していてもよいC1-4アルキル基がより好ましい。当該置換基を有していてもよいC1-4アルキル基としては、未置換のC1-4アルキル基が好ましく、未置換の直鎖のC1-4アルキル基がより好ましく、未置換のエチル基又はn-プロピル基がさらに好ましく、未置換のn-プロピル基が特に好ましい。
【0030】
一般式(1)中、Z1は、-CH2-、-CH2-CH2-、又は、-CH2-C4H6-である。本発明に係る医薬用組成物の有効成分としては、Z1が置換基を有していない-CH2-であるPro-IP6が好ましい。細胞内で得られるPro-IP6の加水分解物の構造がIP6により類似しているためである。一分子中に複数あるZ1は、互いに同種の基であってもよく、異種の基であってもよい
【0031】
Z1中の1個又は複数個の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。置換基の数及び種類は特に限定されない。Z1中の複数個の水素原子が置換基で置換されている場合、当該置換基は、同種の置換基であってもよく、異なる置換基で置換されていてもよい。当該置換基としては、特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基、ヒドロキシ基、チオール基、C1-4アシル基、アリル基等が挙げられる。また、当該置換基は、フェニル基のような大きな置換基であってもよい。当該置換基のハロゲン原子、C1-4アルキル基、アミノ基、チオール基、C1-4アシル基としては、R21のC1-6アルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基と同様のものを用いることができる。
【0032】
細胞内に取り込まれたPro-IP6は、細胞内の酵素によって、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12のうちの水素原子ではない基の少なくとも一部が加水分解される。R1等が-Z1-O-C(=O)-R21の場合、加水分解によって当該基は-Z1-OHとなり、カルボン酸であるR21-COOHが放出される。R1等が-Z1-S-C(=O)-R21の場合、加水分解によって当該基は-Z1-SHとなり、カルボン酸であるR21-COOHが放出される。
【0033】
Pro-IP6の加水分解物のうち、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12のうちの水素原子ではない基の全てが加水分解された化合物(完全加水分解Pro-IP6)は、IP6中のリン原子と直接結合していたヒドロキシ基を、-O-Z1-を介して結合させた構造、又は当該構造をさらにチオール基に変換した構造からなり、IP6と近似した構造を有しているIP6アナログである。細胞内に取り込まれたPro-IP6後に加水分解物により生じた完全加水分解Pro-IP6(IP6アナログ)は、IP6と同様にSLC20A2-XPR1リンクに作用する。つまり、細胞内に取り込まれたPro-IP6によって細胞内のIP6アナログ濃度が上昇する結果、IP6自体の濃度が上昇した場合と同様に、SLC20A2-XPR1リンクに作用して細胞内からのリン酸の排出が抑えられ、血中無機リン値が低下する。これは主に、細胞内のIP6/IP7比が増加したことによるXPR1の機能の抑制によるものと推察される。また、細胞内に取り込まれたPro-IP6の一部のエステル又はチオエステルが加水分解された分解物(部分分解Pro-IP6)は、IP6Kに対する阻害作用も有しており、当該作用も血中無機リン量の低減に寄与する。このように、Pro-IP6は、細胞からのリン酸の排出を抑えることによって血中の無機リン値自体を低減させることができるため、Pro-IP6を有効成分とする医薬用組成物は、高リン血症の治療又は予防に有効である。
【0034】
また、R21がn-プロピル基の場合には、Pro-IP6の加水分解により酪酸が放出され、R21がエチル基の場合には、Pro-IP6の加水分解によりプロピオン酸が放出される。酪酸には、リン酸カルシウムによるIL-6/P-ERKシグナルの活性化を抑える作用があり、また、酪酸とプロピオン酸は、リン酸カルシウムを可溶化する作用がある(非特許文献6)。これらのカルボン酸がいずれも高リン血症による石灰化を抑制する作用があることから、本発明に係る医薬用組成物の有効成分であるPro-IP6としては、R21の少なくとも一部がn-プロピル基又はエチル基である化合物が好ましく、R21の全部がn-プロピル基又はエチル基である化合物がより好ましい。なかでも、リン酸カルシウムはIL-6/P-ERKシグナルを活性化し炎症を引き起こすが、酪酸は、IL-6/P-ERKシグナルの活性化抑制による炎症抑制作用も期待できる点から、R21の全部がn-プロピル基である化合物がさらに好ましい。加水分解によって酪酸やプロピオン酸を放出するPro-IP6を有効成分とする医薬用組成物は、無機リン値を下げる作用に加えて、石灰化を抑える作用も有しているため、高リン血症の治療又は予防に極めて有効である。
【0035】
Pro-IP6としては、一般式(1)で表される化合物のうち、一分子中にあるZ1の全部が置換基を有していない-CH2-であり、かつ一分子中にあるR21の少なくとも一部が、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基(C1-4アルキル基)である化合物が好ましく、一分子中にあるZ1の全部が置換基を有していない-CH2-であり、かつ一分子中にあるR21の全部が置換基を有していてもよいC1-4アルキル基である化合物がより好ましく、一分子中にあるZ1の全部が置換基を有していない-CH2-であり、かつ一分子中にあるR21の全部が未置換のC1-4アルキル基である化合物さらに好ましく、一分子中にあるZ1の全部が置換基を有していない-CH2-であり、かつ一分子中にあるR21の全部が直鎖の未置換のC1-4アルキル基である化合物よりさらに好ましく、一分子中にあるZ1の全部が置換基を有していない-CH2-であり、かつ一分子中にあるR21の全部がn-プロピル基又はエチル基である化合物がよりさらに好ましく、一分子中にあるZ1の全部が置換基を有していない-CH2-であり、かつ一分子中にあるR21の全部がn-プロピル基又である化合物が特に好ましい。
【0036】
一般式(1)で表されるPro-IP6の合成方法は特に限定されない。リン酸基をエステル化するための公知の方法を用いることが可能である。例えば、まずカルボン酸からカルボン酸ハロゲンアルキルエステルを合成する。これを、トリエチルアミン等の強塩基性の置換基で活性化されているIP6の塩基性塩に反応させ、IP6のエステル誘導体を得ることができる。
【0037】
本発明に係る医薬用組成物の有効成分としては、Pro-IP6の薬理学的に許容される塩であってもよい。Pro-IP6の薬理学的に許容される塩としては、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12のうちの水素原子である部分に対するナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ塩が挙げられる。
【0038】
本発明に係る医薬用組成物の有効成分としては、Pro-IP6の溶媒和物又はPro-IP6の薬理学的に許容される塩の溶媒和物であってもよい。当該溶媒和物を形成する溶媒としては、水、エタノール等が挙げられる。
【0039】
本発明に係る医薬用組成物は、Pro-IP6のみからなるものであってもよく、その他の成分を含むものであってもよい。本発明に係る医薬用組成物としては、Pro-IP6を薬理学的に許容可能な担体と組み合わせて、製剤上の常套手段により様々な剤型に製剤化することができる。「薬理学的に許容可能な担体」は、製剤の他の成分と適合し、被験者に有害ではない、任意の担体、希釈剤又は賦形剤を意味する。本願明細書の開示に基づき、Pro-IP6を含む医薬組成物を処方することは、本技術分野の範囲内である。例えば、医薬品の分野の標準的技法に従って、Pro-IP6を含む医薬組成物を処方することが可能である。例えば、Alphonso Gennaro,ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(1990)Mack Publishing Co.,Easton,Paを参照。
【0040】
本発明に係る医薬用組成物は、所望により、さらに、安定化剤、酸化防止剤、及び保存料が添加されてもよい。適切な酸化防止剤は、例えば、亜硫酸、アスコルビン酸,クエン酸及びその塩、並びにナトリウムEDTAを含む。適切な保存料は、例えば、塩化ベンザルコニウム、メチル-又はプロピル-パラベン、及びクロルブタノールを含む。
【0041】
本発明に係る医薬用組成物は、所望により、さらに、1又はそれ以上の他の有効成分を含んでもよい。「他の有効成分」は、Pro-IP6と同様に、血中無機リン値の低減や、石灰化の抑制のいずれかの活性を有する成分が好ましい。本発明に係る医薬用組成物は、これら以外の活性を有する成分であってもよい。
【0042】
本発明に係る医薬用組成物の投与経路は特に限定されない。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、トローチ、ドリンク剤等に処方して経口投与してもよい。あるいは、パッチ剤等の経皮投与、腹腔内投与、静脈内点滴若しくは注射等による静脈内投与などの非経口投与を用いてもよい。その他、筋肉内注射等による筋肉内投与、経腸投与、局所投与等による投与も可能である。一態様において、本発明に係る医薬用組成物は、経口投与、経皮投与、腹腔内投与又は静脈内投与される。本発明に係る医薬用組成物の処方(製剤)の具体例を以下に示す。
【0043】
例えば、経口投与用の錠剤、散剤、顆粒剤、トローチ、カプセル剤等は、Pro-IP6を含む医薬組成物に、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤又は滑沢剤等の1つ以上の固形不活性成分を添加して圧縮成型し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のためのコーティングを行うことにより製造することができる。
【0044】
注射剤は、例えば、Pro-IP6を含む医薬組成物を、例えば分散剤、保存剤、等張化剤等と共に水性注射剤として、あるいはオリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油等の植物油、プロピレングリコール等に溶解、懸濁あるいは乳化して油性注射剤として成型することにより製造することができる。
【0045】
外用剤は、例えば、Pro-IP6を含む医薬組成物を固状、半固状又は液状の組成物とすることにより製造される。例えば、上記固状の組成物は、該医薬組成物をそのまま、あるいは賦形剤、増粘剤などを添加、混合して粉状とすることにより製造される。上記液状の組成物は、注射剤の場合とほとんど同様で、油性あるいは水性懸濁剤とすることにより製造される。半固状の組成物は、水性又は油性のゲル剤、あるいは軟膏状のものがよい。また、これらの組成物は、いずれも緩衝剤、防腐剤などを含んでいてもよい。外用剤は、例えば、局所投与用のクリーム、ローション、ゲル、軟膏等が含まれる。
【0046】
座剤は、例えばPro-IP6を含む医薬組成物を油性又は水性の固状、半固状あるいは液状の組成物とすることにより製造される。このような組成物に用いる油性基剤としては、例えば、高級脂肪酸のグリセリド(例えば、カカオ脂、ウイテプゾル類等)、中級脂肪酸(例えば、ミグリオール類等)、あるいは植物油(例えば、ゴマ油、大豆油、綿実油等)等が挙げられる。水性ゲル基剤としては、例えば天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体等が挙げられる。
【0047】
本発明に係る医薬用組成物としては、経口投与される剤型であることが好ましい。経口投与されたPro-IP6の一部は、腸内細菌によって加水分解される。加水分解により得られた完全加水分解Pro-IP6は、血液中に取り込まれ、石灰化を抑制する(非特許文献3)。また、Pro-IP6の加水分解により放出されるカルボン酸が酪酸やプロピオン酸の場合には、これらのカルボン酸がリン酸カルシウムを可溶化することにより、石灰化を抑制できる(非特許文献3)。一方で、腸で加水分解されずに残ったPro-IP6は、細胞内に取り込まれ、部分分解Pro-IP6となり、IP6Kを阻害し、血中無機リン値を低下させる。さらに、Pro-IP6の加水分解により放出されるカルボン酸が酪酸やプロピオン酸の場合には、これらのカルボン酸がIL-6/P-ERKシグナルの活性化を抑え、リン酸カルシウムによる炎症を抑制する。このように、経口投与の場合には、血中無機リン値の低減効果だけではなく、石灰化の抑制効果や石灰化による炎症の抑制効果も得られる。このように、血中無機リン値と石灰化の両方を抑制する薬効成分は、本願発明においてはじめて見いだされた知見である。
【0048】
本発明に係る医薬用組成物の投与量及び投与期間は、投与対象のサイズ、質量、年齢及び性別、治療される疾患の性質及び段階、疾患の攻撃性、投与経路、並びに放射線の特定の毒性を含む個々の患者の特定の状況によって決定される。投与量及び投与期間は、また、既知の試験プロトコルを用いて実験的に、又は生体内若しくは生体外試験データからの外挿法によって決定されうる。本願明細書に記載する濃度範囲は、例示的な目的のみであり、請求される組成物の範囲または実施化を制限するものではない。
【0049】
例えば、Pro-IP6を含む医薬組成物中の投与量は、有効成分であるPro-IP6の量で、好ましくは0.01~2000mg/kg/日、より好ましくは0.05~1000mg/kg/日、さらに好ましくは1.0~200mg/kg/日である。本発明に係る医薬用組成物は、1日1回で投与されてもよく、又は同時に若しくは時間間隔を置いて投与される何回かの低用量に分割されてもよい。
【0050】
本発明に係る医薬用組成物が投与される動物は、特に限定されるものではなく、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。非ヒト動物としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物等が挙げられる。
【実施例0051】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
一般式(1)のうち、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12の全てが-CH2-O-C(=O)-CH2-CH2-CH3である化合物(myo-イノシトール六リン酸ドデカキス(ブチリルオキシメチル)エステル)をマウスに投与し、血中無機リン値に対する影響を調べた。myo-イノシトール六リン酸ドデカキス(ブチリルオキシメチル)エステル(以降、「Pro-IP6酪酸エステル」)ということがある)は、特許文献1に記載されている方法で合成したものを用いた。
【0053】
C57/6Jマウス(4週齢、日本クレア社製)に対して、高脂肪食(製品名「High Fat Diet 32」、日本クレア社製)を8週間食餌することによって、高脂肪食餌誘発性糖尿病モデルマウスを作成した。なお、食餌及び飲料水は自由に与えた。モデルマウス作成後、Pro-IP6酪酸エステルを、1mL容シリンジ及び金属ゾンデを用いて、1日1回強制経口投与した。投与量は、Pro-IP6酪酸エステル(100mg/kg体重、300mg/kg体重)、メトホルミン(300mg/kg体重)とし、投与液量は5mL/kg体重とした。投与量は、直近の体重に基づいて個体別に算出した。Pro-IP6酪酸エステルは、オリーブ油に溶解させた溶液を投与液として用いた。当該投与液は、冷蔵庫(4℃、遮光)に保管して、7日に1度調製した。対照として、オリーブ油のみを投与した。各薬物を6週投与した後、麻酔をかけたマウスの心臓から300μLの血液を採取した。この血液を室温で30分間静置し、氷上でさらに30分間以上静置した。その後、当該血液を遠心分離処理して得られた上清を、-80℃で保存し、試料とした。試料中の血清パラメータの測定は、熊本大学生命資源研究・支援センターのマウスクリニックに依頼して解析した。
【0054】
結果を
図2に示す。図中、「Pro-IP6」は「Pro-IP6酪酸エステル」を投与した群の結果であり、「-」はオリーブ油投与群の結果である。また、図中、アスタリスクは、P<0.05を示す。
【0055】
この結果、血中無機リン値(IP)は、オリーブ油投与群では7.04±0.69mg/dLであり、メトホルミン投与群では7.48±0.37mg/dLであったのに対して、Pro-IP6酪酸エステルを100mg/kg体重投与下群では8.88±0.07mg/dLであり、Pro-IP6酪酸エステルを300mg/kg体重投与下群では4.78±0.35mg/dLであった。これらの結果から、高脂肪食負荷マウスにおいては血液中の無機リン値が高くなるが、Pro-IP6の経口投与により、血中無機リン値を強力に低下させられることがわかった。