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特開2023-141249樹脂組成物の製造方法、及び成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141249
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法、及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20230928BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20230928BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20230928BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20230928BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L53/00
C08L23/12
C08L23/20
C08J3/20 Z CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047469
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕晴
(72)【発明者】
【氏名】吉満 隼人
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA08
4F070AA12
4F070AA15
4F070AB01
4F070AB08
4F070AC37
4F070AC75
4F070AE02
4F070AE03
4F070FA17
4F070FB07
4F070FC03
4J002BB123
4J002BB174
4J002BP011
4J002BP032
4J002FD024
4J002GB00
4J002GG01
4J002GJ02
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】柔軟性に優れ、圧縮永久歪みが低い樹脂組成物が得られる樹脂組成物の製造方法、及びそれを用いた成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)成分:スチレン系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体を100重量部、(B)成分:前記A成分以外のスチレン系熱可塑性エラストマーを100~250重量部、(C)成分:ポリプロピレンを1~50重量部、及び(D)成分:ポリブテンオイル30~200重量部を混練する工程を含み、前記混練は、160~200℃で行う、樹脂組成物の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:スチレン系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体を100重量部、
(B)成分:前記A成分以外のスチレン系熱可塑性エラストマーを100~250重量部、
(C)成分:ポリプロピレンを1~50重量部、及び
(D)成分:ポリブテンオイルを30~200重量部混練する工程を含み、
前記混練は、160~200℃で行う、樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
(A)成分の重量平均分子量が50,000~200,000である、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
(A)成分において、スチレン系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックの比率が、重量比で10:90~50:50である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
(B)成分が水添スチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記混練は、1~40分間行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記混練は、トルク10~20N・mの条件下で行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記混練は、温度170~200℃、及びトルク15~20N・mの条件下で、3~35分間行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法で樹脂組成物を製造する工程、及び
前記樹脂組成物を成形する工程を含む、樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂成形体は、医療用チューブ、食品用チューブ、インクチューブ、薬栓、キャップシール、燃料電池用ガスケット、及び二次電池用ガスケットからなる群から選ばれる一つ以上である、樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物の製造方法、及びそれを用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性を有する高分子材料として架橋ゴム等が汎用されていたが、架橋ゴム類は、加工性が劣り、リサイクル成形が一般的に困難であることから、近年、通常の熱可塑性樹脂と同じように熱プレス成形、射出成形、及び押出し成形等の汎用の溶融成形技術を利用して成形体を簡単に製造することのできる熱可塑性エラストマーが開発されている。このような熱可塑性エラストマーには、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、スチレン系等があるが、柔軟性やゴム弾性に優れるものとして、スチレン系熱可塑性エラストマーが利用されている。例えば、特許文献1には、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体の水素添加物やスチレン-イソブチレンースチレン共重合体を用いた熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-145399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1等に記載の従来のスチレン系熱可塑性エラストマーを用いた樹脂組成物の圧縮永久歪みは更なる改善が求められている。
【0005】
本発明は、従来の課題を解決するため、柔軟性に優れ、圧縮永久歪みが低い樹脂組成物が得られる樹脂組成物の製造方法、及びそれを用いた成形体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)成分:スチレン系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体を100重量部、(B)成分:前記A成分以外のスチレン系熱可塑性エラストマーを100~250重量部、(C)成分:ポリプロピレンを1~50重量部、及び(D)成分:ポリブテンオイルを30~200重量部混練する工程を含み、前記混練は、160~200℃で行う、樹脂組成物の製造方法に関する。
【0007】
本発明は、前記樹脂組成物の製造方法で樹脂組成物を製造する工程、及び前記樹脂組成物を成形する工程を含む、樹脂成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、柔軟性に優れ、圧縮永久歪みが低い樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明の製造方法で得られた樹脂組成物を用いることで、成形性よく、柔軟性に優れ、圧縮永久歪みが低い成形体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。通常、熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物の圧縮永久歪みは、樹脂組成物を構成する成分やその配合量等によって影響されるが、本発明の発明者は、樹脂組成物を製造する時の溶融混練温度が樹脂組成物の圧縮永久歪み等の特性に対する影響が大きいことを見出した。具体的には、特許文献1では、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体の水素添加物やスチレン-イソブチレン-スチレン共重合体等の各成分をシリンダー温度180~240℃の条件下で溶融混錬して熱可塑性エラストマー組成物を製造しているが、溶融混錬時の温度が高いと、圧縮永久歪みが大きくなる問題があった。そこで、本発明は、所定の配合量の(A)成分:スチレン系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、(B)成分:前記A成分以外のスチレン系熱可塑性エラストマー、(C)成分:ポリプロピレン及び(D)成分:ポリブテンオイルを、160~200℃で溶融混練することで、スチレン系熱可塑性エラストマーの柔軟性に優れる性質を保持しつつ、圧縮永久歪みが低い樹脂組成物を提供することができる。
【0010】
本明細書において、数値範囲が「~」で示されている場合、該数値範囲は両端値(上限及び下限)を含む。例えば、「X~Y」という数値範囲は、X及びYという両端値を含む範囲となる。また、本明細書において、数値範囲が複数記載されている場合、異なる数値範囲の上限及び下限を適宜組み合わせた数値範囲を含むものとする。
【0011】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の1以上の樹脂組成物の製造方法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を160~200℃で混練する工程を含む。
【0012】
[(A)成分]
(A)成分は、スチレン系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体である。
【0013】
スチレン系重合体ブロックは、スチレン系モノマーを50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、さらにより好ましくは90重量%以上を含み、スチレン系モノマー100重量%からなることが特に好ましい。スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン、ジビニルベンゼン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、及びビニルピリジン等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。コストと物性及び生産性のバランスからスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及びインデンからなる群から選ばれる一種以上が好ましい。スチレン系重合体ブロックにおいて、スチレン系モノマー以外の他のモノマーとしては、スチレン系モノマーと重合可能なものであればよく、特に限定されないが、例えば、スチレン系モノマー以外の芳香族ビニル化合物、オレフィン化合物、ビニルエーテル化合物、β-ピネン等が挙げられる。スチレン系モノマー以外の他のモノマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0014】
イソブチレン系重合体ブロックは、イソブチレンを50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、さらにより好ましくは90重量%以上を含み、イソブチレン100重量%からなることが特に好ましい。イソブチレン系重合体ブロックにおいて、イソブチレン以外のモノマーとしては、イソブチレンと重合可能なものであればよく、特に限定されないが、例えば、イソブチレン以外のオレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、ジエン化合物、ビニルエーテル化合物、β-ピネン等が挙げられる。イソブチレン以外のモノマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0015】
(A)成分において、物性と加工性のバランスの観点から、スチレン系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックの重量比(スチレン系重合体ブロック:イソブチレン系重合体ブロック)は、重量比で10:90~50:50であることが好ましく、15:85~45:55であることがより好ましく、20:80~40:60であることがさらに好ましい。本明細書において、(A)成分におけるスチレン系重合体ブロック又はイソブチレン系重合体ブロックの含有量は、核磁気共鳴分光法で測定することができる。
【0016】
(A)成分の重量平均分子量は、50,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは60,000~180,000であり、さらに好ましくは70,000~160,000である。(A)成分の重量平均分子量が50,000以上であると、圧縮永久歪みを低減することができる。(A)成分の重量平均分子量が200,000以下であると、成形性が良好になる。本明細書において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができ、GPC測定は、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、重量平均分子量及び数平均分子量はポリスチレン換算で求めることができる。
【0017】
(A)成分は、ジブロック体でもよく、トリブロック体でもよいが、耐熱性及び引張特性の観点から、2個のスチレン系重合体ブロックと1個のイソブチレン系重合体ブロックからなるトリブロック体であることが好ましく、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体であることがより好ましい。
【0018】
本発明の1以上の実施形態の樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、15~45重量%でもよく、20~40重量%でもよく、25~35重量%でもよい。
【0019】
(A)成分のスチレン系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックからなるブロック共重合体の製造方法については特に制限はないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物の存在下に、イソブチレンを主成分とするモノマー及びスチレン系モノマーを主成分とするモノマーを重合させることにより得られる。
【0020】
【化1】
一般式(1)中、複数のR1は同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1~6の1価の炭化水素基を示し、R2は1価若しくは多価の芳香族炭化水素基又は1価若しくは多価の脂肪族炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアシロキシ基(アシルオキシ基)を示し、pは1~6の整数を表し、Xが複数存在する時、それらは同一であっても異なってもよい。
【0021】
上記一般式(1)で表される化合物は重合開始剤となるもので、ルイス酸等の存在下でカルボカチオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。
【0022】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン[C65C(CH32Cl]、1,4-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン[1,4-Cl(CH32CC64C(CH32Cl]、1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン[1,3-Cl(CH32CC64C(CH32Cl]、1,3,5-トリス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン[1,3,5-(ClC(CH32363]、1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)-5-(tert-ブチル)ベンゼン[1,3-(C(CH32Cl)2-5-(C(CH33)C63]等が挙げられる。中でも、1,4-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン及び1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)-5-(tert-ブチル)ベンゼンからなる群から選ばれる一つ以上が好ましく、1,4-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼン及び1,3-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼンからなる群から選ばれる一つ以上のビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼンがより好ましい。なお、ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α-クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2-クロロ-2-プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも称され、1,4-ビス(1-クロル-1-メチルエチル)ベンゼンはp-ジクミルクロライドとも称される。
【0023】
上記重合反応においては、一般にルイス酸触媒を共存させる。このようなルイス酸触媒としてはカチオン重合に使用できるものであれば特に限定されず、例えば、TiCl4、TiBr4、BCl3、BF3、BF3・OEt2、SnCl4、AlCl3、AlBr3等の金属ハロゲン化物;又はTiCl3(OiPr)、TiCl2(OiPr)2、TiCl(OiPr)3等の金属上にハロゲン原子とアルコキシ基の両方を有する金属化合物;Et2AlCl、EtAlCl2、Me2AlCl、MeAlCl2、Et1.5AlCl1.5、Me1.5AlCl1.5等の有機金属ハロゲン化物等が挙げられる。中でも、触媒活性や入手性を考えた場合、TiCl4、BCl3、SnCl4、TiCl3(OiPr)、TiCl2(OiPr)2、TiCl(OiPr)3、EtAlCl2、Et1.5AlCl1.5からなる群から選ばれる一つ以上のルイス酸が好ましい。
【0024】
ルイス酸触媒の使用量は、特に限定されない。使用するモノマーの重合特性及び重合濃度、並びに発熱挙動等を鑑みて任意に設定することができる。好ましくは、重合開始剤に対して、モル数で0.1~200倍の範囲で用いられ、より好ましくは0.2~100倍の範囲で用いられる。
【0025】
重合反応においては、電子供与体を共存させることが好ましい。電子供与体を含むことで、分子量分布が狭くかつ構造が制御された重合体を得やすくなる傾向がある。
【0026】
電子供与体としては、例えば、ピリジン系化合物、アミン系化合物、アミド系化合物、スルホキシド系化合物、エステル系化合物、金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等が挙げられる。より具体的には、種々の化合物の電子供与体としての強さを表すパラメーターとして定義されるドナー数が15~60であるものを好ましく使用できる。
【0027】
ピリジン系化合物としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、2-tert-ブチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2-メチルピリジン、及びピリジン等が挙げられる。
【0028】
アミン系化合物としては、例えば、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、及びN,N-ジメチルアニリン等が挙げられる。
【0029】
アミド系化合物としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、及びヘキサメチルリン酸トリアミド等が挙げられる。
【0030】
スルホキシド系化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0031】
エステル系化合物としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0032】
金属化合物としては、Ti(OiPr)4等が挙げられる。
【0033】
中でも、副反応の抑制効果や入手性の観点から2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、Ti(OiPr)4からなる群から選ばれる一つ以上の電子供与体が好ましい。
【0034】
電子供与体の使用量は、特に限定されない。使用するモノマーの重合特性及び重合濃度、並びに発熱挙動等を鑑みて任意に設定することができる。好ましくは、重合開始剤に対して、モル数で0.01~100倍の範囲で用いられ、より好ましくは0.1~50倍の範囲で用いられる。
【0035】
重合反応は必要に応じて有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、カチオン重合で一般的に使用される有機溶媒であれば特に限定されず、ハロゲン化炭化水素;脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素等の非ハロゲン化炭化水素;又はこれらの混合物等を用いることができる。
【0036】
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロエタン、ジクロロエタン、1-クロロプロパン、1-クロロ-2-メチルプロパン、1-クロロブタン(塩化ブチルとも称される)、1-クロロ-2-メチルブタン、1-クロロ-3-メチルブタン、1-クロロ-2,2-ジメチルブタン、1-クロロ-3,3-ジメチルブタン、1-クロロ-2,3-ジメチルブタン、1-クロロペンタン、1-クロロ-2-メチルペンタン、1-クロロ-3-メチルペンタン、1-クロロ-4-メチルペンタン、1-クロロヘキサン、1-クロロ-2-メチルヘキサン、1-クロロ-3-メチルヘキサン、1-クロロ-4-メチルヘキサン、1-クロロ-5-メチルヘキサン、1-クロロヘプタン、1-クロロオクタン、2-クロロプロパン、2-クロロブタン、2-クロロペンタン、2-クロロヘキサン、2-クロロヘプタン、2-クロロオクタン、クロロベンゼン等が使用できる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0037】
脂肪族炭化水素としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、2-メチルプロパン、2-メチルブタン、2,3,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、パラフィン油等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0038】
芳香族系炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0039】
中でも、溶解性及び経済性の点から炭素数3~5のハロゲン化炭化水素と脂肪族炭化水素との混合有機溶媒を用いることが好ましく、1-クロロプロパン、1-クロロブタン、及び1-クロロペンタンからなる群から選択される1種以上のハロゲン化炭化水素と、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びエチルシクロヘキサンからなる群から選択される1種以上の非ハロゲン化炭化水素との組み合わせが溶解性、経済性、反応性、及び後処理工程での蒸留のしやすさの点から特に好ましい。
【0040】
有機溶媒は、重合体の溶液の粘度及び除熱の容易さを考慮して、得られる重合体の濃度が1~50重量%となるように設定するのが好ましく、1~30重量%となるように設定することがより好ましい。
【0041】
一般に、カチオン重合は水分の混入によって重合が阻害されることが知られている。そのため、使用する前に有機溶媒中の水分は除いておくことが望ましい。水分の脱水方法としては、一般的な脱水剤である塩化カルシウム又はモレキュラーシーブス等の添加及び接触により水分を除去する方法を用いることが可能である。
【0042】
重合温度は、特に制限はないが、例えば、-100~50℃の温度で重合を行うことが好ましく、エネルギーコストと重合反応の安定性の観点から、-85~0℃がより好ましい。
【0043】
重合時間は特に限定されないが、例えば、生産性の観点で、1分~48時間が好ましく、10分~36時間がより好ましく、30分~24時間がさらに好ましい。
【0044】
重合体の製造方法において、重合工程は、上述したとおり、カルボカチオンを生長種とするカチオン重合法で行う。本明細書において、特に指摘がない条件等については、公知乃至慣用の方法を適用してカチオン重合を進行させることができる。
【0045】
重合体の製造方法は、重合工程に加えて他の工程を含んでもよい。他の工程としては、例えば、重合工程で得られた重合体溶液(ドープ)から有機溶媒や水等を除去する工程等が挙げられる。ドープから有機溶媒や水を除去する方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法を選択して実施できる。除去した有機溶媒は、適宜精製してもよい。
重合に使用される有機溶媒をより高度に精製する方法としては、蒸留による方法が挙げられる。蒸留であれば、沸点に差異のある不純物はほぼ除去することが可能である。蒸留はバッチ蒸留でもよいし連続蒸留でもよい。例えば、バッチ蒸留の場合には、蒸留初期の塔頂留出液を抜き出すことにより低沸点不純物を除去し、かつ蒸留後の塔底残存液を抜き出すことにより高沸点不純物を除去することができる。連続蒸留の場合には、除去対象不純物の種類によって、1本又は複数本の蒸留塔により不純物が除去可能である。
【0046】
[(B)成分]
(B)成分は、(A)成分以外のスチレン系熱可塑性エラストマーである。(A)成分100重量部に対し、(B)成分は100~250重量部用いる。(B)成分が100重量部以上であることで、圧縮永久歪みが低くなる。(B)成分が250重量部以下であることで、成形性が良好になる。(A)成分100重量部に対し、(B)成分は100~250重量部であることが好ましく、より好ましくは110~225重量部であり、さらに好ましくは120~200重量部である。
【0047】
(B)成分としては、例えば、スチレン系重合体ブロックを含むブロック共重合体を用いることができ、具体的には、スチレン系重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックを含む重合体ブロックを用いることができる。スチレン系重合体ブロックは、(A)成分の場合と同様のものであってよい。
【0048】
オレフィン系重合体ブロックは、イソブチレン以外のオレフィン系モノマーを50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、さらにより好ましくは90重量%以上含み、イソブチレン以外のオレフィン系モノマー100重量%からなることが特に好ましい。イソブチレン以外のオレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のモノオレフィン系モノマー;ブタジエン、イソプレン等のジオレフィン(共役ジエン)系モノマー等が挙げられる。イソブチレン以外のオレフィン系モノマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。オレフィン系重合体ブロックにおいて、オレフィン系モノマー以外のモノマーとしては、オレフィン系モノマーと重合可能なものであればよく、特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル化合物、ジエン化合物、ビニルエーテル化合物、β-ピネン等が挙げられる。オレフィン以外のモノマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0049】
(B)成分は、水蒸気等のガスバリア性の観点から、水添スチレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。水添スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系重合体ブロック及び共役ジエン系重合体ブロック(例えば、ブタジエン系重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン重合体ブロック等)からなる重合体ブロックにおいて、共役ジエン系重合体ブロックにおける炭素―炭素二重結合の一部又は全部を水素添加したものが挙げられる。共役ジエン系重合体ブロックにおける水素添加率は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、さらにより好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、分子鎖中及び/又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基の一種又は二種以上を有していてもよい。
【0050】
(B)成分において、物性と加工性のバランスの観点から、スチレン系重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックの重量比(スチレン系重合体ブロック:オレフィン系重合体ブロック)は、重量比で10:90~50:50であることが好ましく、15:85~45:55であることがより好ましく、20:80~40:60であることがさらに好ましい。本明細書において、(B)成分におけるスチレン系重合体ブロック又はオレフィン系重合体ブロックの含有量は、核磁気共鳴分光法で測定することができる。
【0051】
(B)成分の重量平均分子量は、150,000~600,000であることが好ましく、より好ましくは200,000~550,000であり、さらに好ましくは250,000~500,000である。(B)成分の重量平均分子量が150,000以上であると、圧縮永久歪みを低減することができる。(B)成分の重量平均分子量が600,000以下であると、成形性が良好になる。
【0052】
(B)成分としては、具体的には、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、水添スチレン(ブタジエン/イソプレン)スチレン共重合体等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。
【0053】
本発明の1以上の実施形態の樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、20~70重量%でもよく、25~60重量%でもよく、30~50重量%でもよい。
【0054】
[(C)成分]
(C)成分は、ポリプロピレンである。ポリプロピレンは、樹脂組成物の成形性の向上及び圧縮永久歪みの低減に有効である。(A)成分100重量部に対し、ポリプロピレンを1~50重量部用いる。ポリプロピレンが1重量部以上であることで、樹脂組成物の成形性が良好になる。また、ポリプロピレンが50重量部以下であることで、樹脂組成物の圧縮永久歪みが低減する。(A)成分100重量部に対し、(C)成分は3~40重量部であることが好ましく、より好ましくは8~35重量部であり、さらに好ましくは10~25重量部である。
【0055】
ポリプロピレンは、プロピレン100モル%からなる単独重合体でもよく、プロピレンの含有量が50モル%以上のプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体でもよい。α-オレフィンは、炭素数が2、4~20であってもよく、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1等が例示され、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組合わせて用いてもよい。共重合体は、ランダムポリプロピレンでもよく、ブロックポリプロピレンでもよい。樹脂組成物の引張り特性及び成形性の点で、ランダムポリプロピレンが好ましい。
【0056】
本発明の1以上の実施形態の樹脂組成物において、(C)成分の含有量は、0.1~20重量%でもよく、1~15重量%でもよく、2~10重量%でもよい。
【0057】
[(D)成分]
(D)成分は、ポリブテンオイルである。ポリブテンオイルは、軟化剤として機能するものであり、樹脂組成物の柔軟性を向上するのに有効であり、ガスバリア性等のバリア性が高くなる。(A)成分100重量部に対し、ポリブテンオイルを30~200重量部用いる。ポリブテンオイルが30重量部以上であることで、樹脂組成物の硬度が低下し、柔軟性が高くなる。また、ポリブテンオイルが200重量部以下であることで、機械的強度や成形性、ガスバリア性が良好になる。(A)成分100重量部に対し、(C)成分は40~180重量部であることが好ましく、より好ましくは50~170重量部であり、さらに好ましくは60~150重量部である。
【0058】
ポリブテンオイルは、特に限定されず、イソブチレンを主成分とした室温(20±5℃)でオイル状の高分子量体を適宜用いることができる。
【0059】
ポリブテンオイルの数平均分子量は、特に限定されないが、300~20,000が好ましく、500~10,000が特に好ましい。ポリブテンオイルの数平均分子量が300以上であると、樹脂組成物の耐熱性が向上する。ポリブテンオイルの数平均分子量が20,000以下であると、樹脂組成物の成形性が向上する。
【0060】
ポリブテンオイルの40℃における動粘度は、特に限定されないが、例えば、3,000~20,000mm2/sであることが好ましく、4,000~18,000mm2/sであることがより好ましく、5,000~16,000mm2/sであることがさらに好ましい。本明細書において、ポリブテンオイルの40℃における動粘度は、JIS Z 8803:2011に準拠して測定することができる。
【0061】
本発明の1以上の実施形態の樹脂組成物において、(D)成分の含有量は、5~55重量%でもよく、10~45重量%でもよく、15~35重量%でもよい。
【0062】
[他の成分]
本発明の1以上の実施形態において、樹脂組成物は、各用途に合わせた要求特性に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、補強剤(充填剤とも称される)、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、界面活性剤、難燃剤、カップリング剤、有機フィラー、無機フィラー、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、着色剤、無機抗菌剤、有機抗菌剤、滑剤、及びシリコンオイル等の他の成分を含んでもよい。
【0063】
補強剤としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、エチレン-ブテン共重合ゴム(EBM)、アモルファスポリα-オレフィン(APAO)、エチレン-オクテン共重合体等の柔軟なオレフィン系ポリマー等が挙げられる。
【0064】
軟化剤として、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等が挙げられる。酸化防止剤として、例えば、ヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系の酸化防止剤等が挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質ないし炭酸カルシウム、その他のカルシウム系充填材、ハードクレー、ソフトクレー、カオリンクレー、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、無定形シリカ、ウォラスナイト、合成ゼオライト、天然ゼオライト、ケイソウ土、ケイ砂、軽石粉、スレート粉、アルミナ、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リトポン、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、水酸化マグネシウム及びこれら充填材をシラン処理したもの等が挙げられる。ブロッキング防止剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト等が好適であり、これらは天然、合成の何れでもよくまた架橋アクリル真球粒子等の真球架橋粒子も好適である。帯電防止剤としては、炭素数12~18のアルキル基を有するN,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-アルキルアミン化合物やグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。さらに、前記滑剤としては、脂肪酸アミドが好ましく、具体的にはエルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等が挙げられる。
【0065】
(樹脂組成物の製造方法)
樹脂組成物の製造方法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を、或いは、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び他の成分を、加熱混練する工程を含む。混練は、温度が160~200℃の条件下の加熱混練である。混練時の温度が160℃未満であると、(A)成分、(B)成分及び(C)成分が溶融せず、各成分を均一に混合することが困難であり、得られた樹脂組成物の硬度、引張特性、圧縮永久歪み等の物性が低下する。加熱混練時の温度が200℃を超えると、得られた樹脂組成物の物性が劣る、特に圧縮永久歪みが大きくなる。加熱混練時の温度は、好ましくは170~200℃であり、より好ましくは170~195℃であり、さらに好ましくは170~190℃である。
【0066】
前記混練には、バッチ式混練装置や連続式の混練装置等を用いることができる。バッチ式混練装置としては、例えば、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等が挙げられる。連続式の混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。
【0067】
前記混練において、温度は160~200℃であることが好ましく、より好ましくは170~200℃である。バッチ式混練装置、例えば、ラボプラストミルを用いる場合、混練温度は160~200℃、混練時間は1~40分間、かつトルクは10~20N・mであることが好ましく、より好ましくは混練温度は170~200℃、混練時間は3~35分間、かつトルクは15~20N・mである。
【0068】
前記混練は、全ての成分を混練装置に投入し、均一になるまで加熱混練してもよいが、各成分を均一に分散しやすい観点から、(D)成分以外の成分、具体的には固体成分を予め混練(予備混練)した後に、そこへ液状成分である(D)成分を添加し均一になるまで加熱混練することが好ましい。この場合、予備混練を含む混練工程は、160~200℃の温度条件下で行う。
【0069】
予備混練を含む場合、(D)成分以外の成分を160~200℃の温度下で、1~5分間予備混練した後、(D)成分を添加し、160~200℃の温度下で、1~40分間混練することができる。より具体的には、例えば、ラボプラストミルを用いる場合、予備混練の温度は160~200℃、時間は1~5分間、かつトルクは1~10N・mであることが好ましく、予備混練の温度は170~200℃、時間は1~3分間、かつトルクは2~7N・mであることがより好ましく、(D)成分を添加した後の混練温度は160~200℃、混練時間は1~40分間、かつトルクは10~20N・mであることが好ましく、より好ましくは混練温度は170~200℃、混練時間は3~35分間、かつトルクは15~20N・mである。
【0070】
前記樹脂組成物は、用途に応じて、ペレット、粉体、シート等の形状とすることができる。例えば、押出機によって溶融混練してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状等のペレットに切断することができる。
【0071】
前記樹脂組成物は、変形耐久性の観点から、JIS K 6262:2013に準じて、70℃、22時間、圧縮率25%の条件下で測定した圧縮永久歪みは55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物の圧縮永久歪みは、低い程よいが、例えば、20%以上でもよい。
【0072】
前記樹脂組成物の硬度は、柔軟性の観点から、10~95であることが好ましく、より好ましくは20~90であり、さらに好ましくは30~90であり、特に好ましくは40~90である。本明細書において、樹脂組成物の硬度は、JIS K 6253:2012に準拠し、スプリング式のタイプAデュロメーターで測定することができる。
【0073】
前記樹脂組成物の引張破断強度は、成形性の観点から、6~30MPaであることが好ましく、より好ましくは8~25MPaであり、さらに好ましくは10~20MPaであり、特に好ましくは12~18MPaである。本明細書において、樹脂組成物の引張破断強度は、JIS K 6251:2017に準拠して測定することができる。
【0074】
前記樹脂組成物の引張破断伸びは、成形性の観点から、500~750%であることが好ましく、より好ましくは530~720%であり、さらに好ましくは560~690%であり、特に好ましくは590~660%である。本明細書において、樹脂組成物の引張破断伸びは、JIS K 6251:2017に準拠して測定することができる。
【0075】
(成形体の製造方法)
前記樹脂組成物を、常法に従って、適宜成形することにより、成形体を作製することができる。一般に採用される成形方法及び成形装置を用いて成形でき、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形等によって溶融成形できる。成形装置は、成形材料を溶融できる任意の成形機を用いることができる。例えば、ニーダー、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、ブロー成形機、ミキシングロール等が挙げられる。
【0076】
成形時の温度は、成形体外観性の観点から、好ましくは150~250℃、より好ましくは170~230℃である。成形時の圧力は、例えば、1~10MPaでもよく、3~7MPaでもよい。
【0077】
前記樹脂組成物は、一般的なスチレン系熱可塑性エラストマーが用いられる成形体、例えば、チューブ状成形体、封止用成形体、シート状成形体等の各種成形体に用いることができるが、成形性、圧縮永久歪み、バリア特性に優れることから、チューブ状成形体や封止用成形体に好適に用いることができる。チューブ状成形体としては、例えば、医療用チューブ、及び工業用チューブ等が挙げられる。医療用チューブとしては、例えば、カテーテル、輸液用チューブ、腹膜透析用チューブ、輸血用チューブ、及び血液回路チューブ(人工心肺や血液透析等に用いる)等が挙げられる。工業用チューブとしては、気体、液体、及び半固体からなる群から選ばれる一つ以上を移送するのに用いる各種チューブが挙げられ、具体的には、食品用チューブ、及びインクチューブ等を含む。封止用成形体としては、例えば、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体等が挙げられ、具体的には、薬栓、キャップシール、燃料電池用ガスケット、二次電池用ガスケット、太陽電池用封止材、及び食品用ライナー材等を含む。
【実施例0078】
以下、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明はなんら限定されるものではない。
【0079】
実施例及び比較例で用いた測定・評価方法は以下のとおりである。
【0080】
(重量平均分子量及び数平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。具体的には、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、重量平均分子量及び数平均分子量をポリスチレン換算で求めた。
(引張破断強度)
JIS K 6251:2017に準拠して測定した。試験片として2.0mm厚にプレスした評価用シートをダンベルで3号型に打ち抜いたものを使用した。測定時の引張速度は500mm/分とした。
(引張破断伸び)
JIS K 6251:2017に準拠して測定した。試験片として2.0mm厚にプレスした評価用シートをダンベルで3号型に打ち抜いたものを使用した。測定時の引張速度は500mm/分とした。
(硬度)
JIS K 6253:2012に準拠し、スプリング式のタイプAデュロメーターで硬度を測定した。硬度は15秒後を採用した。試験片として2.0mm厚のシートを使用した。
(圧縮永久歪み)
JIS K 6262:2013に準拠して測定した。試験片として12.0mm厚のシートを使用した。70℃×22時間、25%圧縮率の条件にて測定した。
【0081】
実施例及び比較例で用いた化合物は、以下のとおりである。
(A)成分:下記の製造例1で得られたスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン含有量31重量%、重量平均分子量129,300、分子量分布1.26、以下、SIBSとも記す
(B)成分:スチレン-ブタジエンースチレンブロック共重合体の水添物、クレイトンポリマージャパン株式会社製「クレイトンG1633」、以下、SEBSとも記す
(C)成分:ランダムポリプロピレン、株式会社プライムポリマー製「プライムポリプロF227D」、以下、PPとも記す
(D)成分:ポリブテンオイル、数平均分子量980、40℃における動粘度9,500mm2/s、ENEOS株式会社製「日石ポリブテンHV-100」、以下、PBとも記す
酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、株式会社ADEKA製「AO-50」、以下、「AO-50」とも記す
【0082】
(製造例1)
<スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体の合成>
重合容器として1Lのセパラブルフラスコを用い、重合容器内を窒素置換した後、重合容器内に、塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒500mLを注射器を用いて加えた。次に、重合容器を-70℃のドライアイス/エキネン中に浸して冷却した後、イソブチレン126mL(1.33mol)を加えた。次に、2-メチルピリジン0.130mL(1.33mmol)を加えた。次に、15重量%のp-ジクミルクロライドの塩化ブチル溶液1.73g(p-ジクミルクロライド:1.12mmol)、及び塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒8.0mLを加えた。次に、上記重合容器中の溶液が-70℃まで冷却されていることを確認した後、塩化チタン(IV)1.53mL(13.9mmol)を加えることで重合反応を開始させた。
反応中は随時重合溶液を抜き取り、イソブチレンの消費率をガスクロマトグラフィーにより測定した。塩化チタン(IV)を投入してから60分後には、イソブチレンの99.9モル%が消費されていることを確認した。塩化チタン(IV)を投入してから77分後にスチレン39.9mL(0.347mol)を投入した。スチレンを投入してから58分後に、投入したスチレンの92モル%が消費されたことをガスクロマトグラフィーにより確認した。次に、重合溶液全体を、50℃に加熱している純水320mL、塩化ブチルとn-ヘキサンを体積比9:1で混合した混合有機溶媒150gの混合物に注いだ。反応混合物の内温が50℃に到達後、60分間激しく攪拌することで重合を停止させた。有機相と水相を分離させて、分離した水相を払い出した。
次に、有機相に純水277mLを加えて、50℃で30分間激しく攪拌することで有機相を洗浄した。有機相と水相を分離させて、分離した水相を払い出した。同様の水洗操作を更に1回繰り返した。その後、加熱下に水及び有機溶媒等の揮発分を有機相から留去し、乾燥させることにより、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)を得た。
得られたSIBSの重量平均分子量は129,300、分子量分布は1.26、スチレン系重合体ブロックの含有量は31重量%であった。
【0083】
(実施例1)
<樹脂組成物の作製>
SIBSを12.0g、SEBSを16.0g、PPを2.0g量り取り、180℃、50rpmに設定したラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製、型番「4C150」)を用いて1分間溶融混練(予備混練)し、さらにPBを10.0gを加えて5分間引き続き溶融混練した後、樹脂組成物を取り出した。予備混練中、ラボプラストミルの表示トルクは2.9N・mであった。
PBを加えてから溶融混練を続けた時間を、以下では混練時間とした。混練時間中、ラボプラストミルの表示温度は180~187℃、表示トルクは16.6~17.1N・mであった。
<成形体1の作製>
上記で得られた樹脂組成物を、180℃に予熱したプレス機(株式会社神藤金属工業所製、型番「NSF-50」)にて、圧力5MPaの条件下で、加熱加圧成形し、厚みが2.0mmのシートを得た。
<成形体2の作製>
上記で得られた樹脂組成物を、180℃に予熱したプレス機(株式会社神藤金属工業所製、型番「NSF-50」)にて、圧力5MPaの条件下で、加熱加圧成形し、厚みが12.0mmのシートを得た。
【0084】
(実施例2)
混練時間を15分としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂組成物、成形体1、及び成形体2を得た。混練時間中、ラボプラストミルの表示温度は173~186℃、表示トルクは17.6~18.6N・mであった。
【0085】
(実施例3)
SIBSを12.0g、SEBSを16.0g、PPを2.0g、AO-50を0.06g量り取り、180℃、50rpmに設定したラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて1分間溶融混練(予備混練)し、さらにPBを10.0g加えて30分間引き続き混練した後、樹脂組成物を取り出した。予備混練中、ラボプラストミルの表示トルクは3.1N・mであった。混練時間中、ラボプラストミルの表示温度は186~187℃、表示トルクは18.3~18.8N・mであった。
得られた樹脂組成物を用い、実施例1の場合と同様の方法で成形体1及び成形体2を作製した。
【0086】
(比較例1)
AO-50の配合量を0.24g、ラボプラストミルの設定温度を210℃としたこと以外は実施例3と同様にして樹脂組成物、成形体1、及び成形体2を得た。混練時間中、ラボプラストミルの表示温度は211~214℃、表示トルクは8.9~15.5N・mであった。
【0087】
(比較例2)
ラボプラストミルの設定温度を210℃、混練時間を5分としたこと以外は実施例3と同様にして樹脂組成物、成形体1、及び成形体2を得た。混練時間中、ラボプラストミルの表示温度は212~213℃、表示トルクは10.3~14.1N・mであった。
【0088】
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の破断強度、破断伸び、硬度及び圧縮永久歪みを上述したとおりに測定し、その結果を下記表1に示した。下記表1には、各成分の配合割合及び混練条件も併せて示した。
【0089】
【表1】
【0090】
以上の結果より、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を200℃以下の温度で溶融混練する実施例1~3で得られた樹脂組成物は、200℃を超える温度で溶融混練する比較例1及び2で得られた樹脂組成物より引張特性や圧縮永久歪みに優れていることがわかる。