(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141255
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液滴吐出装置および液滴吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230928BHJP
B41J 2/06 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047475
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】506159976
【氏名又は名称】株式会社SIJテクノロジ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村田 和広
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA22
2C056EB08
2C056EC07
2C056EC23
2C056EC35
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA15
2C056FB05
2C056HA07
2C056HA20
2C056HA22
2C057AG01
2C057BD05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マルチノズルヘッドを交換せずに吐出パターン変更することができる液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態の液滴吐出装置は、対象物を保持するための対象物保持部と、第1液滴を吐出するための少なくとも一つの第1液滴吐出ノズルと、第1液滴吐出ノズルにおける第1先端部の第1内径よりも小さい第2内径を有する第2先端部を有し、第1液滴吐出ノズルから吐出された第1液滴を用いて第2液滴を吐出するための複数の第2液滴吐出ノズルと、対象物保持部に保持された対象物と第2液滴吐出ノズルとの相対的な位置関係および第1液滴吐出ノズルと第2液滴吐出ノズルとの相対的な位置関係を制御する駆動部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持するための対象物保持部と、
第1液滴を吐出するための少なくとも一つの第1液滴吐出ノズルと、
前記第1液滴吐出ノズルにおける第1先端部の第1内径よりも小さい第2内径を有する第2先端部を有し、前記第1液滴吐出ノズルから吐出された第1液滴を用いて第2液滴を吐出するための複数の第2液滴吐出ノズルと、
前記対象物保持部に保持された対象物と前記第2液滴吐出ノズルとの相対的な位置関係および前記第1液滴吐出ノズルと前記第2液滴吐出ノズルとの相対的な位置関係を制御する駆動部と、を含む、
液滴吐出装置。
【請求項2】
前記複数の第2液滴吐出ノズルの各々は、前記第2内径よりも大きい第3内径の貫通孔を有するプレート部と接続される、
請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの第1液滴吐出ノズルは、複数の第1液滴吐出ノズルを含み、
隣接する第2液滴吐出ノズル間の距離は隣接する第1液滴吐出ノズル間の距離よりも小さい、
請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記第1液滴吐出ノズルは、ピエゾ型ノズルであり、
前記第2液滴吐出ノズルは、静電吐出型ノズルである、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記複数の第2液滴吐出ノズルは、第1方向および前記第1方向と交差する第2方向に設けられる、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記第2液滴吐出ノズルの開口状態を検査する検査部をさらに含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記第2液滴吐出ノズルは、所定の条件を満たすときにクリーニングされる、
請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
第1液滴吐出ノズルが第1液滴を吐出することによって、当該第1液滴を、前記第1液滴吐出ノズルにおける第1先端部の第1内径よりも小さい第2内径を有する第2先端部を備える複数の第2液滴吐出ノズルの少なくとも一つに提供することと、
前記第1液滴を提供された前記第2液滴吐出ノズルが当該第1液滴を用いて第2液滴を対象物に吐出することと、を含む
液滴吐出方法。
【請求項9】
前記第1液滴吐出ノズルは、ピエゾ型ノズルであり、
前記第2液滴吐出ノズルは、静電吐出型ノズルである、
請求項8に記載の液滴吐出方法。
【請求項10】
前記第2液滴吐出ノズルは、所定の条件を満たすときにクリーニングされる、
請求項9に記載の液滴吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置および液滴吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷技術の工業用プロセスへの応用が行われている。例えば、液晶ディスプレー用のカラーフィルター製造工程などはその一例である。インクジェット印刷技術として、従来は機械的圧力や振動により液滴を吐出する、いわゆるピエゾ型ヘッドが多く使用されてきていたが、より微細な液滴を吐出できる静電吐出型インクジェットヘッドが注目されている。特許文献1には、静電吐出型インクジェット記録装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、微細な液滴を吐出できる静電吐出型インクジェットヘッドの特性を生かしたまま、生産性を向上させる観点から、一斉吐出型のマルチノズルヘッドの開発が進められている。一斉吐出型のマルチノズルヘッドの場合、任意にノズルの配置を設計できる。しかしながら、こうしたマルチノズルヘッドの場合、予め決められたノズル配置のパターンのみが形成されるという課題を残している。予め決められたパターンとは異なる吐出パターンを形成するには、別途新たなノズル配置のマルチノズルヘッドを用意する必要がある。この場合、マルチノズルヘッドの交換に伴う段取り替えの時間などが余計にかかるなどの課題が生じる。一方、従来から存在する固定のピッチを有するピエゾ型のマルチノズルヘッドの場合、(1)そもそもの吐出量を小さくすることが困難であるという課題のほかに、(2)ノズルピッチとは異なる位置へのインク吐出には、一斉吐出ではなくラスタスキャンが必要であるという課題がある。このため、パターンの形成時間にはスキャン速度の限界が存在した。
【0005】
そこで、本発明は、マルチノズルヘッドを交換せずに吐出パターン変更することができる液滴吐出装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、対象物を保持するための対象物保持部と、第1液滴を吐出するための少なくとも一つの第1液滴吐出ノズルと、前記第1液滴吐出ノズルにおける第1先端部の第1内径よりも小さい第2内径を有する第2先端部を有し、前記第1液滴吐出ノズルから吐出された第1液滴を用いて第2液滴を吐出するための複数の第2液滴吐出ノズルと、前記対象物保持部に保持された対象物と前記第2液滴吐出ノズルとの相対的な位置関係および前記第1液滴吐出ノズルと前記第2液滴吐出ノズルとの相対的な位置関係を制御する駆動部と、を含む、液滴吐出装置が提供される。
【0007】
上記液滴吐出装置において、前記複数の第2液滴吐出ノズルの各々は、前記第2内径よりも大きい第3内径の貫通孔を有するプレート部と接続されてもよい。
【0008】
上記液滴吐出装置において、前記少なくとも一つの第1液滴吐出ノズルは、複数の第1液滴吐出ノズルを含み、隣接する第2液滴吐出ノズル間の距離は隣接する第1液滴吐出ノズル間の距離よりも小さくてもよい。
【0009】
上記液滴吐出装置において、前記第1液滴吐出ノズルは、ピエゾ型ノズルであり、前記第2液滴吐出ノズルは、静電吐出型ノズルであってもよい。
【0010】
上記液滴吐出装置において、前記複数の第2液滴吐出ノズルは、第1方向および前記第1方向と交差する第2方向に設けられてもよい。
【0011】
上記液滴吐出装置において、前記第2液滴吐出ノズルの開口状態を検査する検査部をさらに含んでもよい。
【0012】
上記液滴吐出装置において、前記第2液滴吐出ノズルは、所定の条件を満たすときにクリーニングされてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、第1液滴吐出ノズルが第1液滴を吐出することによって当該第1液滴を、前記第1液滴吐出ノズルにおける第1先端部の第1内径よりも小さい第2内径を有する第2先端部を備える複数の第2液滴吐出ノズルの少なくとも一つに提供することと、前記第1液滴を提供された前記第2液滴吐出ノズルが当該第1液滴を用いて前記第2液滴を対象物に吐出することと、を含む液滴吐出方法が提供される。
【0014】
上記液滴吐出方法において、前記第1液滴吐出ノズルは、ピエゾ型ノズルであり、前記第2液滴吐出ノズルは、静電吐出型ノズルであってもよい。
【0015】
上記液滴吐出方法において、前記第2液滴吐出ノズルは、所定の条件を満たすときにクリーニングされてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態を用いることにより、マルチノズルヘッドを交換せずに吐出パターン変更することができる液滴吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るマルチノズルヘッドの平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る液滴吐出ノズルの斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る液滴吐出ノズルの平面図および断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法を示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法を示す模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るマルチノズルヘッドの平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の模式図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本出願で開示される発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B、または-1,-2等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0020】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0021】
<第1実施形態>
(1-1.液滴吐出装置100の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置100の概略図である。
【0022】
液滴吐出装置100は、制御部110、記憶部115、電源部120、駆動部130、インクタンク135、第1液滴吐出部140、第2液滴吐出部150および対象物保持部160を含む。
【0023】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programable Gate Array)、またはその他の演算処理回路を含む。制御部110は、あらかじめ設定された液滴吐出用プログラムを用いて、第1液滴吐出部140の吐出処理を制御する。
【0024】
記憶部115は、液滴吐出用プログラム、および液滴吐出用プログラムで用いられる各種情報を記憶するデータベースとしての機能を有する。記憶部115には、メモリ、SSD、または記憶可能な素子が用いられる。
【0025】
電源部120は、制御部110、記憶部115、駆動部130、インクタンク135、第1液滴吐出部140、第2液滴吐出部150および対象物保持部160と接続される。電源部120は、制御部110から入力される信号をもとに、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150に電圧を印加する。この例では、電源部120は、第1液滴吐出部140および第2液滴吐出部150に対してパルス状の電圧を印加する。なお、パルス電圧に限定されず、一定の電圧が常時印加されてもよい。第1液滴吐出部140に対して電源部120から印加された電圧により後述する第1液滴吐出ノズル141の先端部141aから第1液滴147が対象物200の方向(第3方向D3)に吐出される。同様に、第2液滴吐出部150に対して電源部120から印加された電圧により第2液滴吐出部150のうち後述するマルチノズルヘッド151に設けられた第2液滴吐出ノズル153(先端部153a))から第2液滴157として対象物200の方向(第3方向D3)に吐出される。
【0026】
駆動部130は、モータ、ベルト、ギアなどの駆動部材により構成される。駆動部130は、制御部110からの指示に基づき、対象物保持部160に対して第1液滴吐出部140(第1液滴吐出ノズル141)および第2液滴吐出部150(より具体的には、マルチノズルヘッド151)を相対的に(この例では、第2方向D2)に移動させる。これにより、駆動部130は、装置使用時(液滴吐出時)における対象物200とマルチノズルヘッド151(第2液滴吐出ノズル153)との相対的な位置関係、および第1液滴吐出ノズル141とマルチノズルヘッド151(第2液滴吐出ノズル153)との相対的な位置関係を制御する。
【0027】
駆動部130は、第1液滴吐出部140(第1液滴吐出ノズル141)および第2液滴吐出部150(マルチノズルヘッド151)を適宜固定して対象物200を移動させてもよい。また、駆動部130は、ゴニオステージと組み合わせて用いられ、第1液滴吐出ノズル141とマルチノズルヘッド151(第2液滴吐出ノズル153)を微調整してもよい。
【0028】
対象物保持部160は、対象物200を保持する機能を有する。対象物保持部160は、この例ではステージが用いられる。対象物保持部160が対象物200を保持する機構は特に制限されず、一般的な保持機構が用いられる。この例では、対象物200は、対象物保持部160に真空吸着している。なお、本発明はこれに限定されず、対象物保持部160は固定具を用いて対象物200を保持してもよい。
【0029】
対象物200は、液滴吐出部から吐出される液滴が吐出される部材をいう。この例では、対象物200にはガラス板が用いられる。なお、対象物200はガラス板に限定されない。例えば、金属板であってもよいし、有機樹脂部材でもよい。また、対象物200上には、金属配線または有機樹脂部材が形成されてもよい。また、対象物200には、液滴吐出用の対向電極が設けられてもよい。このとき、対象物200には、GND電位が印加されてもよい。
【0030】
(1-2.第1液滴吐出部140の構成)
第1液滴吐出部140は、駆動部130により液滴吐出時において対象物200(対象物保持部160)および第2液滴吐出部150の上方に配置される。第1液滴吐出部140は、液滴(第1液滴147)を吐出するための第1液滴吐出ノズル141および圧電素子145を含む。この例では、第1液滴吐出ノズル141には、ピエゾ型インクジェットノズルが用いられる。圧電素子145は、第1液滴吐出ノズル141の上部に設けられるが、圧電素子145の配置は適宜変更されてもよい。圧電素子145は、電源部120と電気的に接続される。圧電素子145は、電源部120から印加された電圧によりインクタンク135から供給された液体を押圧することにより、第1液滴吐出ノズル141の先端部141a(第1先端部ともいう)から第1液滴147を吐出する。
【0031】
第1液滴吐出部140の第1液滴吐出ノズル141は、対象物200の表面(対象物保持部160の上面)に対して垂直に設けられる。
【0032】
(1-3.第2液滴吐出部150の構成)
第2液滴吐出部150は、駆動部130により液滴吐出時において対象物200(対象物保持部160)上に配置される。第1液滴吐出部140は、液滴吐出時において第2液滴吐出部150の上方に配置される。したがって、第2液滴吐出部150は、液滴吐出時において第1液滴吐出部140と、対象物200(対象物保持部160)との間に配置される。第2液滴吐出部150は、第1液滴吐出部140と一部において接続または固定されてもよい。第2液滴吐出部150は、マルチノズルヘッド151を含む。
【0033】
マルチノズルヘッド151は、マウントおよびアタッチメント(図示せず)に固定されて用いられる。マルチノズルヘッド151には、液滴(第2液滴157)を吐出するための複数の第2液滴吐出ノズル153が設けられる。第2液滴吐出ノズル153には、静電吐出型のインクジェットノズルが用いられる。マルチノズルヘッド151の詳細については、以下に詳述する。
【0034】
(1-4.マルチノズルヘッド151の構成)
図2は、マルチノズルヘッド151の平面図である。
図3は、第2液滴吐出ノズル153の斜視図である。
図4(A)は、第2液滴吐出ノズル153の上面図である。
図4(B)は、第2液滴吐出ノズル153におけるA1-A2間の断面図である。
【0035】
図2に示すように、マルチノズルヘッド151は、プレート部152および第2液滴吐出ノズル153を含む。
【0036】
プレート部152は、板状に設けられる。この例では、プレート部152は第1方向D1に延びる。プレート部152には、ニッケル・銅・ステンレスなどの金属材料が用いられるが、電位が印加できる場合用いられる材料であれば適宜変更されてもよい。プレート部152の厚さは、適宜設定される。この例では、プレート部152の厚さは10μm以上100μm以下である。
【0037】
図3~
図4に示すように、第2液滴吐出ノズル153は、上部においてプレート部152の一面(下面)に接続されて設けられる。マルチノズルヘッド151は、複数の第2液滴吐出ノズル153を含む。第2液滴吐出ノズル153は、第1方向D1に並んで配置される。本実施形態では、第2液滴吐出ノズル153-1、153-2、・・・、153-(N-1)、153-Nがプレート部152に設けられる。Nは、3以上の自然数である。なお、第2液滴吐出ノズル153-1、153-2、・・・、153-(N-1)、153-Nを分けて説明する必要がない場合には、第2液滴吐出ノズル153として説明する。第2液滴吐出ノズル153には、ニッケル・銅などの金属材料が用いられるが、電位が印加できる場合用いられる材料であれば適宜変更されてもよい。第2液滴吐出ノズル153は、先細る形状を有する。この例では、隣接する第2液滴吐出ノズル153間の距離(第2液滴吐出ノズル153-1と第2液滴吐出ノズル153-2との間の距離)D1は、200μmである。
【0038】
プレート部152は、第2液滴吐出ノズル153と対応する部分(重畳する部分)に第2液滴吐出ノズル153の吐出口(第2液滴吐出ノズル153の先端部153aの開孔部153ao)の内径r153a(第2内径ともいう)よりも大きい内径r152o(第3内径ともいう)を有する貫通孔152oを有する。プレート部152の貫通孔の内径は、1μm以上100μm以下であってもよい。第2液滴吐出ノズル153の先端部153aの内径は、数百nm以上50μm以下、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは5μm以上20μm以下であってもよい。本実施形態において、第2液滴吐出ノズル153に電圧を印加してもよいし、プレート部152に電圧を印加してもよいし、第2液滴吐出ノズル153に貯蔵されたインクに電圧を印加してもよい。プレート部152、第2液滴吐出ノズル153に電圧を印加する場合、電極が設けられてもよい。電極には、タングステン、ニッケル、モリブデン、チタン、金、銀、銅、白金などが設けられてもよい。このとき、プレート部152の全体に均一に電圧が印加されるように、複数の電極が設けられてもよい。また、本実施形態では、第2液滴吐出ノズル153、プレート部152またはインクに対して電圧を印加する例を示したが、マルチノズルヘッド151を保持する治具(例えば、マウントまたはアタッチメント)に電圧が印加されてもよい。
【0039】
第2液滴吐出ノズル153の吐出口(先端部153a)の内径r153a(第2内径)は、第1液滴吐出ノズル141の吐出口(先端部141a)の内径(第1内径ともいう)よりも小さい。そのため、第2液滴吐出ノズル153の単位時間当たりの吐出量は、第1液滴吐出ノズル141の単位時間当たりの吐出量より少ない。
【0040】
また、本実施形態では、第2液滴吐出部150は、インクタンク135につなげられていない。液滴吐出時において、第1液滴吐出部140(第1液滴吐出ノズル141)は、制御部110および駆動部130により第2液滴吐出部150(マルチノズルヘッド151)の上方を移動する。つまり、本実施形態の場合、第1液滴吐出ノズル141と複数の第2液滴吐出ノズルを含むマルチノズルヘッド151との相対的な位置関係に吐出される位置を制御することができる。
【0041】
(1-5.液滴吐出方法)
次に、本実施形態における液滴吐出方法について説明する。
図5~
図8は、液滴吐出方法を示す模式図である。
【0042】
まず、第1液滴吐出部140は、制御部110および駆動部130によって第1方向D1の所定の位置まで移動する。このとき、第1液滴吐出部140(第1液滴吐出ノズル141)は、第2液滴吐出部150におけるマルチノズルヘッド151上の所定の位置に配置される。次に、
図5に示すように、第1液滴吐出ノズル141は、電源部120から印加された電圧により、マルチノズルヘッド151の上方において所定の位置に対してインクタンク135に保持された液体を第1液滴147として第3方向D3(具体的には下方)に吐出する。
【0043】
吐出された第1液滴147は、所定の第2液滴吐出ノズル153に提供され、一時的に貯蔵される。
図6に示すように、第1液滴吐出部140は、上述の処理を繰り返して行う。これにより、複数の第2液滴吐出ノズル153のうちいくつかの第2液滴吐出ノズル153に第1液滴147が提供される(貯蔵される)。このとき、本実施形態では、第2液滴吐出ノズル153は、上側においてプレート部152と接続されている。プレート部152は、第2液滴吐出ノズル153よりも内径の大きい貫通孔を有する。これにより、第2液滴吐出ノズル153は第1液滴を貯蔵しやすい構造を有しているといえる。
【0044】
次に、電源部120は、制御部110からの制御に基づいて第2液滴吐出部150(マルチノズルヘッド151)に対してパルス状の電圧(この例では、対象物(GND電位)を基準として1000V)を印加する。これにより、
図7に示すように、第2液滴吐出ノズル153は、第2液滴吐出ノズル153に提供された第1液滴147(第1液滴147の一部)を用いて第2液滴157を同時に吐出する。これにより、
図8に示すように、対象物200には、第2液滴157による吐出パターンが形成される。
【0045】
本実施形態の場合、第2液滴吐出部150は、複数の静電吐出型の液滴吐出ノズルを含むマルチノズルヘッドを有していても、第2液滴吐出部150は、インクタンクには直接的につながっていない。このため、すべての第2液滴吐出ノズルから一斉に液滴が吐出されることが制限される。第1液滴吐出部140のみがインクタンク135につながっている。本実施形態の場合、吐出パターンを形成する場合、液滴を吐出したい位置は第1液滴吐出部140が移動することによって制御され、液滴のサイズは第2液滴吐出部150によって制御される。
【0046】
したがって、本実施形態を用いることにより、マルチノズルヘッドを交換せずに吐出パターン変更することができる。また、本実施形態の場合、対象物に対して静電吐出ノズルから吐出される径の小さい液滴を用いてパターンを形成することができる。つまり、本実施形態を用いることにより、所望の吐出パターンを高精細に形成することができる。
【0047】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる第2液滴吐出部(マルチノズルヘッド)について説明する。具体的には、第2液滴吐出ノズルが2次元的に設けられている例について説明する。なお、説明の関係上、適宜部材を省略して説明する。
【0048】
(2-1.マルチノズルヘッド151Aの構成)
図9は、第2液滴吐出部150Aにおけるマルチノズルヘッド151Aの平面図である。
図9に示すように、マルチノズルヘッド151Aは、プレート部152および第2液滴吐出ノズル153Aを含む。
【0049】
複数の第2液滴吐出ノズル153Aは、プレート部152の一面に設けられる。第2液滴吐出ノズル153Aは、第1方向D1および第1方向D1と交差する(この例では直交する)第2方向D2に等間隔に並んで配置される。この例では、マルチノズルヘッド151Aは、3行×13列=39個の液滴吐出ノズルを含む。なお、第2液滴吐出ノズル153が配置される数は、適宜変更される。例えば、4行×100列=400個であってもよいし、1,000行×1,000列=1,000,000個であってもよい。
【0050】
本実施形態の場合、第2液滴吐出部150Aは、2次元的に配置された複数の静電吐出型の液滴吐出ノズルを含むマルチノズルヘッドを有していても、第2液滴吐出部150Aは、インクタンク135に直接的につながっていない。このため、すべての第2液滴吐出ノズル153から一斉に液滴が吐出されることが制限される。このとき、インクタンク135につながっているのは、第1液滴吐出部140のみである。本実施形態の場合、吐出パターンを形成する場合、液滴を吐出したい位置は第1液滴吐出部140が移動することによって制御され、液滴のサイズが第2液滴吐出部150Aによって制御される。
【0051】
したがって、本実施形態を用いることにより、マルチノズルヘッドを交換せずに吐出パターンを変更することができる。また、静電吐出型の液滴吐出ノズルを用いて液滴を吐出することにより高精細に所望の吐出パターンを形成することができる。
【0052】
本実施形態において、第2液滴吐出ノズル153Aは、第1方向D1および第2方向D2に等間隔に並んで配置されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2方向においてずれて(ジグザグに)配置されてもよいし、隣接する第2液滴吐出ノズル153Aの間隔が異なってもよい。
【0053】
<第3実施形態>
本実施形態では、第1,2実施形態とは異なる液滴吐出装置について説明する。具体的には、複数の第1液滴吐出ノズルが設けられている例について説明する。なお、説明の関係上、適宜部材を省略して説明する。
【0054】
図10は、液滴吐出装置100Bの模式図である。
図10に示すように、液滴吐出装置100Bは、制御部110、記憶部115、電源部120、駆動部130、第1液滴吐出部140B、第2液滴吐出部150Bおよび対象物保持部160を含む。
【0055】
第1液滴吐出部140Bは、複数の第1液滴吐出ノズル141Bを含む。この例では、2つの第1液滴吐出ノズル141Bが、第1方向D1に並んで配置される。なお、それぞれの第1液滴吐出ノズル141Bは、独立に移動し、吐出するように制御されてもよい。また、第1液滴吐出ノズル141Bの数は、適宜変更されてもよい。
【0056】
本実施形態において、隣接する第1液滴吐出ノズル141B(より具体的には、第1液滴吐出ノズル141Bの先端部141Ba)間の距離D1は、隣接する第2液滴吐出ノズル153B(より具体的には第2液滴吐出ノズル153Bの先端部153Ba)間の距離D2より大きくなる。
【0057】
第2液滴吐出部150Bの第2液滴吐出ノズル153Bは、第2液滴吐出ノズル153Aと同様に、第1方向D1および第2方向D2に配置されてもよい。
【0058】
なお、本実施形態において、2つの第1液滴吐出ノズル141Bが第1方向D1に並んで配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。3個以上の第1液滴吐出ノズル141Bが設けられてもよい、また、隣接する第1液滴吐出ノズル141Bは、第1方向D1と交差する方向に並べられてもよい。
【0059】
図11は、第1液滴吐出部140Bおよび第2液滴吐出部150Bを用いて形成されたパターンの平面図である。
図11に示すように、対象物200上に第2液滴157により形成されたパターン190が設けられている。本実施形態の場合、第1液滴吐出部140Bおよび第2液滴吐出部150Bが組み合わせて用いられる。このとき、マルチノズルヘッド151B上の所望の位置に第1液滴吐出部140Bの第1液滴吐出ノズル141Bが2次元的に移動する。それぞれの第1液滴吐出ノズル141Bから一度に液滴を吐出することにより、マルチノズルヘッドを交換せずに複雑な所望のパターンを短時間で形成することができる。
【0060】
また、本実施形態において、第1液滴吐出部140Bは、基板を搬送するタイミングや、基板をアライメントするタイミングにおいて、第2液滴吐出部150B上に液滴を吐出(描画ともいう)してもよい。
【0061】
従来の場合では、基板の搬送およびアライメント動作が終了した後に液滴吐出(描画)工程が開始される。一方で、本実施形態の場合、第1液滴の吐出工程に対してこれらの工程時間(基板の搬送およびアライメント)を充当することができる。そのため、基板のアライメント直後に、第2液滴吐出部150Bより一斉に吐出ができる。結果として、非常に高速な描画が可能となる。
【0062】
したがって、本実施形態を用いることにより、静電吐出型のマルチノズルヘッドを用いて所望の吐出パターンを高精細に形成することができ、かつ無駄な時間を排除した高速な描画が可能となるとともに、より複雑な吐出パターンを形成することができる。
【0063】
<第4実施形態>
本実施形態では、第1~3実施形態とは異なる液滴吐出装置について説明する。具体的には、検査部を有する液滴吐出装置について説明する。なお、説明の関係上、適宜部材を省略して説明する。
【0064】
図12は、液滴吐出装置100Cの模式図である。
図12に示すように、液滴吐出装置100Cは、制御部110、記憶部115、電源部120、駆動部130、第1液滴吐出部140、第2液滴吐出部150および対象物保持部160に加えて、検査部170を含む。
【0065】
検査部170は、液滴を吐出する前に第2液滴吐出ノズル153の先端部153aを検査してもよい。検査部170には、CMOSイメージセンサが用いられてもよい。第1液滴吐出部140から吐出された液滴の一部は、第2液滴吐出部150の第2液滴吐出ノズル153の中に残存する場合がある。検査部170は、第2液滴157を第2液滴吐出部150を検査した時に、第2液滴吐出ノズル153の先端部153aが所定の条件を満たすとき、第2液滴吐出ノズル153は、クリーニング処理されてもよい。この場合の所定の条件とは、先端部153aの閉塞率が30%以上であってもよい。第2液滴吐出ノズル153をクリーニングするときに、有機溶媒が用いられてもよい。
【0066】
本実施形態を用いることにより、第2液滴吐出部から第2液滴157を安定して吐出することができる。
【0067】
(変形例)
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、各実施形態の組み合わせ若しくは設計変更を行ったもの、又は、処理の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0068】
本発明の第1実施形態では、吐出された第1液滴147は、所定の第2液滴吐出ノズル153に提供され、一時的に貯蔵される例を示したが、本発明はこれに限定されない。マルチノズルヘッド151に印加される電圧タイミングを制御することにより、第2液滴吐出ノズル153に提供されたのち、貯蔵されずに第2液滴157が吐出されてもよい。具体的には、第1液滴吐出ノズル141および第2液滴吐出ノズル153に対して同時に電圧を印加してもよい。
【0069】
本発明の第1実施形態では、第1液滴吐出部140は、対象物200(対象物保持部160)および第2液滴吐出部150上に配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。第1液滴吐出部140は、第2液滴吐出部150(マルチノズルヘッド151)を介さずに対象物200に第1液滴147を吐出してもよい。これにより、対象物200に高精細なパターンとともに、液滴サイズの大きいパターンを形成することができる。
【0070】
なお、本発明の第1実施形態では、複数の第2液滴吐出ノズル153が同時に吐出する例を示したが、本発明はこれに限定されない。複数回に分けて順次吐出してもよい。
【0071】
また、本発明の第1実施形態では、いくつかの第2液滴吐出ノズル153に吐出してから、第2液滴157を吐出する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、1つの第1液滴147を第2液滴吐出ノズル153に吐出および貯蔵したのちに、第2液滴157を吐出してもよい。第1液滴及び第2液滴を吐出するタイミングは適宜制御されてもよい。
【0072】
また、本発明の第1実施形態の場合、第1液滴吐出ノズル141およびマルチノズルヘッド151(第2液滴吐出ノズル153)が、対象物の上方に配置されて、液滴を吐出する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1液滴147を吐出する際には、第1液滴吐出ノズル141およびマルチノズルヘッド151(第2液滴吐出ノズル153)は、対象物200の上方に配置されていなくてもよい。また、第2液滴157を吐出するときに、第1液滴吐出ノズル141は、マルチノズルヘッド151(第2液滴吐出ノズル153)および対象物200上に配置されなくてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100・・・液滴吐出装置,110・・・制御部,115・・・記憶部,120・・・電源部,130・・・駆動部,135・・・インクタンク,140・・・第1液滴吐出部,141・・・第1液滴吐出ノズル,141a・・・先端部,145・・・圧電素子,147・・・第1液滴,150・・・第2液滴吐出部,151・・・マルチノズルヘッド,151o・・・貫通孔,152・・・プレート部,153・・・第2液滴吐出ノズル,153a・・・先端部,153ao・・・開孔部,157・・・第2液滴,160・・・対象物保持部,170・・・検査部,190・・・パターン,200・・・対象物