(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141271
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】可搬型放射線測定器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20230928BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20230928BHJP
G01T 1/164 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01T1/167
G01T7/00 A
G01T1/164
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047501
(22)【出願日】2022-03-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・ウェブサイトのアドレス https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/other_meetings/20210325_01.html https://www.nsr.go.jp/data/000346903.pdf 掲載日 令和3年3月25日 ・研究集会名 第2回緊急時の甲状腺被ばく線量モニタリングに関する検討チーム 開催場所 オンライン開催 開催日 令和3年3月25日 ・展示会名 令和3年度第1回甲状腺簡易測定研修 開催場所 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構千葉地区研修棟 展示日 令和3年8月11日 ・展示会名 令和3年度第2回甲状腺簡易測定研修 開催場所 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構千葉地区研修棟 展示日 令和3年10月13日から令和4年1月7日 ・展示会名 令和3年度第3回甲状腺簡易測定研修 開催場所 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構千葉地区研修棟 展示日 令和4年1月7日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、原子力規制庁、放射線安全規制研究戦略的推進事業費「原子力事故時における近隣住民の確実な初期内部被ばく線量の把握に向けた包括的個人被ばくモニタリングの確立」事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】栗原 治
(72)【発明者】
【氏名】金 ウンジュ
(72)【発明者】
【氏名】高島 良生
(72)【発明者】
【氏名】矢島 千秋
(72)【発明者】
【氏名】小川 真澄
(72)【発明者】
【氏名】谷 幸太郎
【テーマコード(参考)】
2G188
4C188
【Fターム(参考)】
2G188AA13
2G188BB04
2G188CC20
2G188DD10
2G188DD14
2G188DD24
2G188DD35
4C188EE01
4C188EE15
4C188FF04
(57)【要約】
【課題】可搬型放射線測定器の小型化及び軽量化を図って、可搬型放射線測定器の取扱性を高めること。
【解決手段】中空状のプローブ(14)の先端面(14a)が凹状に湾曲するように形成され、プローブ(14)の後端面(14b)に中空棒状の持ち手部(16)が直結される。プローブ(14)内における先端面(14a)側に検出素子(20)が設けられる。持ち手部(16)は、検出素子(20)と回路基板(22)を接続する配線ケーブル(24)を収容するように構成されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面が被検者の頸部の前面に接触可能であってかつ凹状に湾曲するように形成された中空状のプローブと、
前記プローブの後端面に直結され、内部が前記プローブの内部に連通した中空棒状の持ち手部と、
前記プローブ内における前記先端面側に設けられ、被検者の甲状腺から放出された放射線を検出する検出素子と、
前記検出素子から出力された電気信号を処理する回路基板と、を備え
前記持ち手部は、前記検出素子と前記回路基板を接続する配線ケーブルを収容するように構成されていることを特徴とする可搬型放射線測定器。
【請求項2】
前記プローブの厚み寸法は、標準的な乳児の頸部の高さ寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項3】
前記プローブの厚み寸法は、前記標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0、8倍以上に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項4】
前記標準的な乳児の頸部の高さ寸法は、標準的な乳児の人体形状をコンピュータ上に再現した乳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法であることを特徴とする請求項2又は3に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項5】
前記プローブの厚み寸法は、前記プローブの前記先端面の曲率半径の0.5倍以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項6】
前記プローブの厚み寸法は、前記プローブの前記先端面の曲率半径の0.4倍以上に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項7】
前記プローブの前記後端面は、前記先端面に沿って凹状に湾曲するように形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項8】
前記プローブの前記後端面における幅方向の両側に、それぞれ、前記先端面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有した湾曲部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項9】
前記持ち手部の厚み方向に沿った断面外形は、楕円形状、長円形状、又は円形状であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項10】
前記持ち手部の厚み寸法は、前記プローブの厚み寸法と同じに設定されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項11】
前記プローブ及び前記持ち手部は、それぞれ、合成樹脂からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項12】
更に、前記持ち手部の基端部に直結され、内部が前記持ち手部の内部に連通し、前記回路基板を収容する中空状の収容部を備え、
前記収容部の幅寸法は、前記持ち手部の幅寸法よりも大きくかつ前記プローブの幅寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項13】
前記持ち手部の一部を支点としたとき、前記収容部は、前記プローブに働く重量に対応する重量を有することを特徴とする請求項12に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項14】
平面視したときに、可搬型放射線測定器の重心位置は、前記持ち手部上に位置していることを特徴とする請求項13に記載の可搬型放射線測定器。
【請求項15】
前記プローブ、前記持ち手部、及び前記収容部は、それぞれ、合成樹脂からなることを特徴とする請求項12から13のいずれか1項に記載の可搬型放射線測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の甲状腺から放出される放射線を測定する可搬型放射線測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力・放射線事故によって環境中に放出された放射性物質を摂取すると、人体に内部被ばくがもたされる。放射性物質である放射性ヨウ素の摂取による人体の内部被ばくを評価するために、放射性ヨウ素が蓄積され易い甲状腺から放出される放射線を測定することが有効である。そのため、被検者の甲状腺から放出される放射線を測定する可搬型放射線測定器が開発されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。先行技術に係る放射線測定器の構成について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
先行技術に係る放射線測定器は、金属からなる角パイプ状の測定器本体を備えており、測定器本体は、その上面側に、持ち手部を有している。測定器本体の先端部には、金属からなるアーム部材が設けられており、アーム部材は、測定器本体に対して回動調節可能に構成されている。アーム部材の先端部には、中空状のプローブが設けられており、プローブの後端側の部分は、金属からなる。プローブの先端面は、被検者の頸部の前面に接触可能であって、凹状に湾曲するように形成されている。
【0004】
プローブ内における先端面側には、被検者の甲状腺から放出される放射線を検出する複数の検出素子が設けられている。測定器本体内には、複数の検出素子から出力された電気信号を処理する回路基板が設けられている。複数の検出素子と回路基板を接続する複数の配線ケーブルは、アーム部材とプローブとの間において外部に露出した状態で配置されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】多重を用いた新しい携帯型甲状腺モニターの開発 原子力事故後の幼児用GAGG検出器 検索日:2022/03/08 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1350448721001918
【非特許文献2】Development of a new hand-held type thyroid monitor using multipl GAGG detectors for young children following a nuclear accident 検索日:2022/03/08 https://www.nsr.go.jp/data/000334921.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プローブが測定器本体の先端側にアーム部材を介して設けられているため、可搬型放射線測定器はプローブの長さ方向(幅方向及び厚み方向に直交する方向)に延伸する傾向にある。そのため、可搬型放射線測定器の大型化及び重量増大を招いて、可搬型放射線測定器の取扱性が低下するという問題がある。
【0007】
特に、複数の配線ケーブルがアーム部材とプローブとの間において外部に露出しているため、被検者の甲状腺からの放射線を測定する際に、配線ケーブルが被検者周辺の物体と干渉しないようする必要があり、可搬型放射線測定器の取扱性が更に低下するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の一態様は、可搬型放射線測定器の小型化及び軽量化を図って、可搬型放射線測定器の取扱性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る可搬型放射線測定器は、先端面が被検者の頸部の前面に接触可能であってかつ凹状に湾曲するように形成された中空状のプローブと、前記プローブの後端面に直結され、内部が前記プローブの内部に連通した中空棒状の持ち手部と、前記プローブ内における前記先端面側に設けられ、被検者の甲状腺から放出された放射線を検出する検出素子と、前記検出素子から出力された電気信号を処理する回路基板と、を備え、前記持ち手部は、前記検出素子と前記回路基板を接続する配線ケーブルを収容するように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、可搬型放射線測定器の小型化及び軽量化を図って、可搬型放射線測定器の取扱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る可搬型放射線測定器の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る可搬型放射線測定器の平面図である。
【
図3】本実施形態に係る可搬型放射線測定器の底面図である。
【
図4】本実施形態に係る可搬型放射線測定器の右側面図である。
【
図5】本実施形態に係る可搬型放射線測定器の左側面図である。
【
図6】本実施形態に係る可搬型放射線測定器の正面図である。
【
図7】本実施形態に係る可搬型放射線測定器の背面図である。
【
図8】本実施形態に係る可搬型放射線測定器の内部の様子を示す模式図であり、蓋部材を取外した状態を示している。
【
図9】
図2におけるIX-IX線に沿った断面図である。
【
図10】乳児及び1歳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法及び曲率半径を示す模式的な図である。
【
図11】5歳児及び10歳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法及び曲率半径を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本願の明細書及び特許請求の範囲において、「幅方向」とは、可搬型放射線測定器、測定器本体、又はプローブの幅方向のことである。「厚み方向」とは、可搬型放射線測定器、測定器本体、又はプローブの厚み方向のことである。「長さ方向」とは、可搬型放射線測定器、測定器本体、又はプローブの長さ方向のことであり、幅方向及び厚み方向に直交する方向のことである。図面中、「WD」は幅方向、「TD」は厚み方向、「LD」は長さ方向、「LDa」は先端側又は先端方向、「LDb」は後端側又は後端方向をそれぞれ指している。
【0013】
図1から
図11を参照して、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の斜視図である。
図2は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の平面図である。
図3は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の底面図である。
図4は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の右側面図である。
図5は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の左側面図である。
図6は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の正面図である。
図7は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の背面図である。
図8は、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10の内部の様子を示す模式図であり、蓋部材12aを取外した状態を示している。
図9は、
図2におけるIX-IX線に沿った断面図である。
図10のXAは、乳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法及び曲率半径を示す模式的な図である。
図10のXBは、1歳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法及び曲率半径を示す模式的な図である。
図11のXIAは、5歳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法及び曲率半径を示す模式的な図である。
図11のXIBは、10歳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法及び曲率半径を示す模式的な図である。
【0014】
(可搬型放射線測定器10の概要、測定器本体12)
図1に示すように、本実施形態に係る可搬型放射線測定器10は、被検者の甲状腺から放出される放射線を測定する測定器である。可搬型放射線測定器10の測定対象は、放射線のうちの例えばγ線である。可搬型放射線測定器10は、中空状の測定器本体12を備えており、測定器本体12は、取外し可能な蓋部材12aを有している。測定器本体12の長さ方向の寸法は、測定器本体12の幅方向の最大寸法よりも大きく設定されており、測定器本体12の長さ方向が測定器本体12の長手方向になっている。なお、測定器本体12の長さ方向の寸法が測定器本体12の幅方向の最大寸法よりも短く設定されてもよい。
【0015】
(プローブ14、先端面14a)
図1から
図6に示すように、測定器本体12は、中空状のプローブ14を備えており、プローブ14は、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン等の合成樹脂からなる。プローブ14の先端面14aは、被検者の頸部SCの前面に接触可能である。プローブ14の先端面14aは、後端面14b側に向かって凹状に湾曲するように形成されている。具体的には、プローブ14の先端面14aは、1つの曲率半径を有した湾曲形状の一例である円弧形状に形成されている。なお、プローブ14の先端面14aを円弧形状に形成する代わりに、複数の曲率半径を有した湾曲形状に形成してもよい。
【0016】
(後端面14b、湾曲部14e)
図1から
図5、
図7に示すように、プローブ14の後端面14bは、先端面14aに沿って凹状に湾曲するように形成されている。具体的には、プローブ14の後端面14bは、1つの曲率半径を有した湾曲形状の一例である円弧形状に形成されており、プローブ14の後端面14bの曲率中心は、プローブ14の先端面14aの曲率中心に一致している。プローブ14の後端面14bの曲率半径は、プローブ14の先端面14aの曲率半径よりも大きくなっている。プローブ14の後端面14bにおける幅方向の両側には、それぞれ、プローブ14の先端面14aの曲率半径よりも小さい曲率半径を有した湾曲部14eが形成されている。なお、プローブ14の後端面14bを円弧形状に形成する代わりに、複数の曲率半径を有した湾曲形状に形成してもよい。プローブ14の後端面14bの曲率中心は、プローブ14の先端面14aの曲率中心に対してずれてもよい。
【0017】
(持ち手部16)
図1から
図5、
図8、
図9に示すように、測定器本体12は、プローブ14の後端面14bにおける幅方向の中央部に直結された中空棒状の持ち手部16を備えている。持ち手部16の内部は、プローブ14の内部に連通している。持ち手部16は、プローブ14と同様に、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン等の合成樹脂からなる。持ち手部16の厚み方向に沿った断面外形は、楕円形状である。なお、持ち手部16の厚み方向に沿った断面形状を楕円形状に形成する代わりに、長円形状又は円形状に形成してもよい。
【0018】
(収容部18)
図1から
図8に示すように、測定器本体12は、持ち手部16の基端部に直結された中空状の収容部18を備えており、収容部18の内部は、持ち手部16の内部に連通している。収容部18は、プローブ14及び持ち手部16と同様に、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン等の合成樹脂からなる。
【0019】
(シールド膜12c)
図8に示すように、測定器本体12の内面(プローブ14の内面、持ち手部16の内面、及び収容部18の内面)には、外部から電磁波を遮蔽するシールド膜12cが形成されている。シールド膜12cは、例えば導電性塗料からなる。
【0020】
(検出素子20)
図8に示すように、プローブ14内における先端面14a側には、被検者の甲状腺から放出された放射線を検出する複数の検出素子20が設けられている。各検出素子20は、放射線の光量に応じた電気信号を出力する。各検出素子20は、GAGG(ガドリニウム・アルミニウム・ガリウム・ガーネット)シンチレータ、CsI(ヨウ化セシウム)シンチレータ、NaI(ヨウ化ナトリウム)シンチレータ、BGO(Bismuth Germanium Oxide)シンチレータ、GSO(Gadolinium Silicon Oxide)シンチレータ、SrI(ヨウ化ストロンチウム)シンチレータ、LaBr3(臭化ランタン)シンチレータ、CeBr3(臭化セリウム)シンチレータ、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)シンチレータ、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)シンチレータ等のシンチレータを有している。各検出素子20は、その検出面を除いて、シールド膜12cによって外部からの電磁波に対して遮蔽されている。
【0021】
(回路基板22、配線ケーブル24)
図8及び
図9に示すように、収容部18内には、複数の検出素子20から出力された電気信号を処理するリジットタイプの回路基板22が設けられている。換言すれば、中空状の収容部18は、リジットタイプの回路基板22を収容する。また、可搬型放射線測定器10は、複数の検出素子20と回路基板22とを接続する複数の配線ケーブル24を備えている。複数の配線ケーブル24は、プローブ14内から持ち手部16内に亘って配置されている。換言すれば、持ち手部16は、複数の配線ケーブル24を収容するように構成されている。
【0022】
可搬型放射線測定器10は、パーソナルコンピュータ又はタブレット端末等からなる解析装置(不図示)にUSBケーブル等の外部ケーブル(不図示)を介して接続可能である。解析装置は、回路基板22から出力される波高データを取り込んで、専用のソフトウェアで解析し、その解析結果を表示する。回路基板22への電力供給は、外部ケーブルを介して解析装置によって行われる。又は、回路基板22への電力供給は、外付けバッテリー(不図示)によって行われる。
【0023】
なお、回路基板22はリジットタイプに限るものでなく、フレキシブルタイプであってもよい。回路基板22がフレキシブルタイプである場合には、回路基板22を持ち手部16又はプローブ14に収容してもよい。
【0024】
(プローブ14の厚み寸法)
図1、
図4、及び
図5に示すように、プローブ14の厚み寸法は、標準的な乳児の頸部の高さ寸法よりも小さく設定されている。これは、プローブ14の厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法以上になると、プローブ14の先端面14aを乳児の頸部の前面に接触させ難くなるからである。また、プローブ14の厚み寸法は、標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0.8倍以上に設定されている。これは、プローブの厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0.8倍未満であると、各検出素子20の検出面が小さくなって、可搬型放射線測定器10の測定精度が低下することが懸念されるからである。
【0025】
本実施形態においては、
図10のXAに示すように、標準的な乳児の頸部の高さ寸法は、標準的な乳児の人体形状をコンピュータ上に再現した乳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法である。
図10のXAに示すように、乳児(0歳児)の標準人体数学ファントムの頸部の高さは、23.3mmであり、乳児の標準人体数学ファントムの頸部の曲率半径は、28.0mmである。
図10のXBに参考として示すように、1歳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さは、34.8mmであり、1歳児の標準人体数学ファントムの頸部の曲率半径は、36.0mmである。
図11のXIAに参考として示すように、5歳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さは、48.7mmであり、5歳児の標準人体数学ファントムの頸部の曲率半径は、38.0mmである。
図11のXIBに参考として示すように、10歳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さは、66.6mmであり、10歳児の標準人体数学ファントムの頸部の曲率半径は、44.0mmである。
【0026】
なお、標準的な乳児の頸部の高さ寸法は、乳児の標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法に限るものでなく、公共又は民間の調査機関が調査した高さ寸法を用いてもよい。
【0027】
プローブ14の厚み寸法は、プローブ14の先端面14aの曲率半径の0.5倍以下に設定されている。これは、プローブ14の厚み寸法がプローブ14の先端面14aの曲率半径の0.5倍を超えると、プローブ14の厚み寸法が大きくなって、プローブ14の先端面14aを乳児の頸部の前面に接触させ難くなるからである。また、プローブ14の厚み寸法は、プローブ14の先端面14aの曲率半径の0.4倍以上に設定されている。これは、プローブ14の先端面14aの曲率半径の0.4倍未満であると、各検出素子20の検出面が小さくなって、可搬型放射線測定器10の測定精度が低下することが懸念されるからである。なお、プローブ14の先端面14aが複数の曲率半径を有している場合には、プローブ14の先端面14aの曲率半径とは、複数の曲率半径の平均値のことである。
【0028】
(持ち手部16の厚み寸法、収容部18の幅寸法)
図4及び
図5に示すように、持ち手部16の厚み寸法は、プローブ14の厚み寸法と同じに設定されている。また、
図2及び
図3に示すように、収容部18の幅寸法は、持ち手部16の幅寸法よりも大きくかつプローブ14の幅寸法よりも小さく設定されている。
【0029】
(可搬型放射線測定器10の重量バランスに関する構成)
図1から
図3に示すように、持ち手部16の一部を支点としたとき、収容部18は、プローブ14に働く重量に対応する重量を有している。換言すれば、持ち手部16の一部を支点としたとき、収容部18に働く重量は、プローブ14に働く重量と対応している。また、平面視したときに、可搬型放射線測定器10の重心位置は、持ち手部16上に位置している。なお、平面視したときに、可搬型放射線測定器10の重心位置が持ち手部16から外れた位置に位置してもよい。
【0030】
(作用効果)
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。
【0031】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、持ち手部16がプローブ14の後端面の幅方向の中央部に直結されている。そのため、可搬型放射線測定器10が長さ方向に延伸することを抑えることができる。これにより、本実施形態によれば、可搬型放射線測定器10の小型化及び軽量化を図って、可搬型放射線測定器10の取扱性を高めることができる。特に、プローブ14、持ち手部16、及び収容部18がそれぞれ合成樹脂からなるため、プローブ14等が金属からなる場合に比べて、可搬型放射線測定器10の軽量化を促進することができる。
【0032】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、持ち手部16が複数の配線ケーブル24を収容するように構成されている。そのため、複数の配線ケーブル24が外部に露出しなくなると共に、被検者の甲状腺からの放射線を測定する際に、複数の配線ケーブル24が被検者周辺の物体と干渉することがない。これにより、本実施形態によれば、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。
【0033】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、プローブ14の厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法よりも小さく設定されている。また、プローブ14の厚み寸法がプローブ14の先端面14aの曲率半径の0.5倍以下に設定されている。そのため、乳児を含む5歳以下の乳幼児の頸部SCの前面にプローブ14の先端面14aを容易に接触させることができる。これにより、本実施形態によれば、5歳以下の乳幼児の甲状腺から放出される放射線を容易に測定することができる。特に、前述のように、複数の配線ケーブル24が外部に露出することなく、可搬型放射線測定器10の小型化を図ることができるため、乳幼児の甲状腺から放出される放射線を測定する際に、乳幼児に与える圧迫感を十分に低減することができる。
【0034】
可搬型放射線測定器10の構成においては、前述のように、プローブ14の厚み寸法が標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0、8倍以上に設定されている。プローブ14の厚み寸法がプローブ14の先端面14aの曲率半径の0.4倍以上に設定されている。そのため、本実施形態によれば、可搬型放射線測定器10の測定精度を十分に確保することができる。
【0035】
可搬型放射線測定器10の構成において、前述のように、持ち手部16の厚み寸法がプローブ14の厚み寸法と同じに設定されている。そのため、プローブ14の先端面14aを被検者の頸部SCの前面に接触させる際に、持ち手部16が被検者の頸部SC周辺に当たることがない。これにより、本実施形態によれば、被検者に不快感を与えないで、被検者の甲状腺からの放射線を測定することができる。
【0036】
可搬型放射線測定器10の構成においては、プローブ14の後端面14bが先端面14aに沿って凹状に湾曲するように形成されているため、測定者が持ち手部を例えば第1指間腔で保持した状態で指先をプローブ14の後端面14b側に掛け易くなる。また、プローブ14の後端面14bにおける幅方向の両側にそれぞれ湾曲部14eが形成されているため、測定者がプローブ14の湾曲部14e側に掛け易くなる。更に、収容部18の幅寸法が持ち手部16の幅寸法よりも大きくかつプローブ14の幅寸法よりも小さく設定されているため、プローブ14に働く重力と収容部18に働く重力によって、可搬型放射線測定器10の重量バランスをある程度とることができる。これにより、本実施形態によれば、測定者が可搬型放射線測定器10を片方の手で持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。特に、持ち手部16の厚み方向に沿った断面外形が楕円形状、長円形状、又は円形状であるため、測定者が持ち手部16を片方の手でより持ち易くなり、可搬型放射線測定器10の取扱性をより高めることができる。
【0037】
可搬型放射線測定器10の構成において、前述のように、持ち手部16の一部を支点としたとき、収容部18がプローブ14に働く重量に対応する重量を有している。平面視したときに、可搬型放射線測定器10の重心位置が持ち手部16上に位置している。そのため、片方の手で可搬型放射線測定器10を持ち易くなり、可搬型放射線測定器10のハンドリング性能を向上させることができる。これにより、本実施形態によれば、測定者が被検者である5歳未満の乳幼児を片方の腕と片方の手で抱きかかえた状態で、もう片方の手で可搬型放射線測定器10を把持して、乳幼児の甲状腺からの放射線を安定して測定することができる。
【0038】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る可搬型放射線測定器は、先端面が被検者の頸部の前面に接触可能であってかつ凹状に湾曲するように形成された中空状のプローブと、前記プローブの後端面に直結され、内部が前記プローブの内部に連通した中空棒状の持ち手部と、前記プローブ内における前記先端面側に設けられ、被検者の甲状腺から放出された放射線を検出する検出素子と、前記検出素子から出力された電気信号を処理する回路基板と、を備え、前記持ち手部は、前記検出素子と前記回路基板を接続する配線ケーブルを収容するように構成されている。
【0039】
前記の構成によれば、前記持ち手部が前記プローブの後端面に直結されているため、前記可搬型放射線測定器が前記プローブの長さ方向に延伸することを抑えることができる。これにより、前記可搬型放射線測定器の小型化及び軽量化を図って、前記可搬型放射線測定器の取扱性を高めることができる。
【0040】
前記持ち手部が前記配線ケーブルを収容するように構成されているため、被検者の甲状腺からの放射線を測定する際に、前記配線ケーブルが被検者周辺の物体と干渉することがない。これにより、前記可搬型放射線測定器の取扱性をより高めることができる。
【0041】
本発明の態様2に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1において、前記プローブの厚み寸法は、標準的な乳児の頸部の高さ寸法よりも小さく設定されてもよい。
【0042】
前記構成によれば、乳児を含む5歳以下の乳幼児の頸部の前面に前記プローブの前記先端面を容易に接触させることができ、5歳以下の乳幼児の甲状腺から放出される放射線を容易に測定することができる。
【0043】
本発明の態様3に係る可搬型放射線測定器は、前記態様2において、前記プローブの厚み寸法は、前記標準的な乳児の頸部の高さ寸法の0、8倍以上に設定されてもよい。
【0044】
前記の構成によれば、前記可搬型放射線測定器の測定精度を十分に確保することができる。
【0045】
本発明の態様4に係る可搬型放射線測定器は、前記態様2又は3において、前記標準的な乳児の頸部の高さ寸法は、標準的な乳児の人体形状をコンピュータ上に再現した標準人体数学ファントムの頸部の高さ寸法であってもよい。
【0046】
本発明の態様5に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1において、前記プローブの厚み寸法は、前記プローブの前記先端面の曲率半径の0.5倍以下に設定されてもよい。
【0047】
前記構成によれば、乳児を含む5歳以下の乳幼児の頸部の前面に前記プローブの前記先端面を容易に接触させることができ、5歳以下の乳幼児の甲状腺から放出される放射線を容易に測定することができる。
【0048】
本発明の態様6に係る可搬型放射線測定器は、前記態様5において、前記プローブの厚み寸法は、前記プローブの前記先端面の曲率半径の0.4倍以上に設定されてもよい。
【0049】
前記の構成によれば、前記可搬型放射線測定器の測定精度を十分に確保することができる。
【0050】
本発明の態様7に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1から6のいずれかにおいて、前記プローブの前記後端面は、前記先端面に沿って凹状に湾曲するように形成されてもよい。
【0051】
前記の構成によれば、測定者が前記持ち手部を例えば指で挟んだ状態で指先を前記プローブの前記後端面側に掛け易くなる。これにより、測定者が前記可搬型放射線測定器を片方の手で持ち易くなり、前記可搬型放射線測定器の取扱性をより高めることができる。
【0052】
本発明の態様8に係る可搬型放射線測定器は、前記態様7において、前記プローブの前記後端面における幅方向の両側に、それぞれ、前記先端面の曲率半径よりも小さい曲率半径の湾曲部が形成されてもよい。
【0053】
前記の構成によれば、測定者が前記プローブの前記湾曲部側に掛け易くなる。これにより、測定者が前記可搬型放射線測定器を片方の手で持ち易くなり、前記可搬型放射線測定器の取扱性をより高めることができる。
【0054】
本発明の態様9に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1から8のいずれかにおいて、前記持ち手部の厚み方向に沿った断面外形は、楕円形状、長円形状、又は円形状であってもよい。
【0055】
前記の構成によれば、測定者が前記持ち手部を片方の手で持ち易くなり、前記可搬型放射線測定器の取扱性をより高めることができる。
【0056】
本発明の態様10に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1から9のいずれかにおいて、前記持ち手部の厚み寸法は、前記プローブの厚み寸法と同じに設定されてもよい。
【0057】
前記の構成によれば、前記プローブの前記先端面を被検者の頸部の前面に接触させる際に、前記持ち手部が被検者の頸部周辺に当たることがない。これにより、被検者に不快感を与えないで、被検者の甲状腺からの放射線を測定することができる。
【0058】
本発明の態様11に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1から10のいずれかにおいて、前記プローブ及び前記持ち手部は、それぞれ、合成樹脂からなってもよい。
【0059】
前記の構成によれば、前記プローブ等が金属からなる場合に比べて、前記可搬型放射線測定器の軽量化を促進することができる。
【0060】
本発明の態様12に係る可搬型放射線測定器は、前記態様1から10のいずれかにおいて、前記持ち手部の基端部に直結され、内部が前記持ち手部の内部に連通し、前記回路基板を収容する中空状の収容部を備え、前記収容部の幅寸法は、前記持ち手部の幅寸法よりも大きくかつ前記プローブの幅寸法よりも小さく設定されてもよい。
【0061】
前記の構成によれば、前記プローブに働く重力と前記収容部に働く重力によって前記可搬型放射線測定器の重量バランスをある程度とることができる。これにより、測定者が前記可搬型放射線測定器を片方の手で持ち易くなり、前記可搬型放射線測定器の取扱性をより高めることができる。
【0062】
本発明の態様13に係る可搬型放射線測定器は、前記態様12において、前記持ち手部の一部を支点としたとき、前記収容部は、前記プローブに働く重量に対応する重量を有してもよい。
【0063】
前記の構成によれば、片方の手で前記可搬型放射線測定器を持ち易くなり、前記可搬型放射線測定器のハンドリング性能を向上させることができる。これにより、測定者が被検者である5歳未満の乳幼児を片方の腕と片方の手で抱きかかえた状態で、もう片方の手で可搬型放射線測定器を把持して、乳幼児の甲状腺からの放射線を安定して測定することができる。
【0064】
本発明の態様14に係る可搬型放射線測定器は、前記態様13において、平面視したときに、可搬型放射線測定器の重心位置は、前記持ち手部上に位置してもよい。
【0065】
前記の構成によれば、片方の手で前記可搬型放射線測定器を持ち易くなり、前記可搬型放射線測定器のハンドリング性能を向上させることができる。これにより、測定者が被検者である5歳未満の乳幼児を片方の腕と片方の手で抱きかかえた状態で、もう片方の手で可搬型放射線測定器を把持して、乳幼児の甲状腺からの放射線を安定して測定することができる。
【0066】
本発明の態様15に係る可搬型放射線測定器は、前記態様12から14のいずれかにおいて、前記プローブ、前記持ち手部、及び前記収容部は、それぞれ、合成樹脂からなってもよい。
【0067】
前記の構成によれば、前記プローブ等が金属からなる場合に比べて、前記可搬型放射線測定器の軽量化を促進することができる。
【0068】
〔付記事項〕
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 可搬型放射線測定器
12 測定器本体
12a 蓋部材
12c シールド膜
14 プローブ
14a 先端面
14b 後端面
14e 湾曲部
16 持ち手部
18 収容部
20 検出素子
22 回路基板
24 配線ケーブル