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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141302
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047541
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 文哉
(72)【発明者】
【氏名】板倉 康仁
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AA14
5H730AS04
5H730BB21
5H730BB86
5H730XX03
5H730XX12
5H730XX23
5H730XX32
5H730ZZ04
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H730ZZ15
(57)【要約】
【課題】部品として購入した絶縁型DC-DCコンバータを用いた電源装置において、絶縁型DC-DCコンバータを分解・改造することなく、絶縁型DC-DCコンバータの二次巻線における電界強度を弱くする(小さくする)技術を提供すること。
【解決手段】電源装置は、内部にトランスを備えた絶縁型DC-DCコンバータと、前記絶縁型DC-DCコンバータの外部で、前記絶縁型DC-DCコンバータの出力端子に電気的に接続された導体と、を備え、前記導体は、前記トランスの二次巻線から見て、前記トランスの一次側から二次側に向かう方向と直交する方向に配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にトランスを備えた絶縁型DC-DCコンバータと、
前記絶縁型DC-DCコンバータの外部で、前記絶縁型DC-DCコンバータの出力端子に電気的に接続された導体と、
を備え、
前記導体は、前記トランスの二次巻線から見て、前記トランスの一次側から二次側に向かう方向と直交する方向に配置される、
電源装置。
【請求項2】
前記絶縁型DC-DCコンバータおよび前記導体は、回路基板上に設けられる、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記導体は、金属スペーサ、板状の導体、または前記トランスの二次巻線の周囲を囲うように配置された導体である、
請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記導体は、前記トランスの二次巻線の周囲を囲うように配置された第1の導体と、前記第1の導体と電気的に接続された第2の導体とにより構成される、
請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記絶縁型DC-DCコンバータは、複数のDC-DCコンバータが直列に接続されたうちの一部であり、二次側の電位の絶対値が所定の電位の絶対値以上となる絶縁型DC-DCコンバータである、
請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハや液晶基板を製造する工程で用いられるプラズマ処理装置では、例えば、パルス状の電圧(パルス電圧)を発生させるパルス電源装置のように、高電圧を発生させる電源装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
上記のような電源装置では、直流電源から供給される直流電圧をスイッチング回路によってパルス電圧化して出力しているが、近年、大出力化が要求されている。例えば、絶対値が10kV以上の高電圧パルスが要求されている。高電圧パルスの電位は+(プラス)の場合もあれば、-(マイナス)の場合もある。
このような電源装置において、スイッチング回路には、複数のスイッチング素子が備わっている。各スイッチング素子を駆動する駆動回路に、絶縁型DC-DCコンバータから直流電圧(例えば電位差が24Vの電圧)が供給されている。絶縁型DC-DCコンバータが用いられる理由は、スイッチング素子でスイッチングする電圧が高電圧なので、内蔵するトランスによって一次側(入力側)と二次側(出力側)とを絶縁させるためである。
なお、高電圧パルスの電圧値が大きい場合、絶縁型DC-DCコンバータは複数段(例えば3段)の直列接続で構成する場合がある。
【0003】
さて、周知のように、トランスの一次巻線と二次巻線との間には浮遊容量が存在する。浮遊容量の存在は、トランスの一次巻線と二次巻線が、それぞれキャパシタの電極として機能することを表している。
そのため、絶縁型DC-DCコンバータに内蔵されているトランスに電圧が印加されると、その印可された電圧の大きさに比例してトランスの一次巻線と二次巻線との間の電荷量が増減することになる。また、電荷量の増減に応じて電界強度が増減するという関係がある。このため、トランスに印加される電圧が高くなると、一次巻線および二次巻線に作用する電界強度が強くなる(大きくなる)。電界強度が強くなると、巻線付近(例えば巻線を覆っているモールド部分等)における誘電損失が増加し、発熱量が多くなる。このため、トランスでは、一次巻線側よりも二次巻線側における誘電損失が多く、発熱量が多くなる。また、電界強度が強くなると、コロナ放電が発生し易くなる。
【0004】
このような関係性がある中で、絶縁型DC-DCコンバータの二次側電位(出力側電位)が高電位(絶対値10kV以上)になると、絶縁型DC-DCコンバータに内蔵されているトランスの二次巻線における電界強度も大きくなり、それに伴って誘電損失も大きくなる。また、コロナ放電が発生し易くなる。
【0005】
この問題への対策として、電界強度を低下させることが考えられる。この観点では、特許文献2のように、トランスにコロナリングを設けることによって電界強度を低下させる技術が提案されているが、トランスに直接コロナリングを設ける必要がある。トランスにコロナリングを設ける技術は、絶縁型DC-DCコンバータを部品として購入し、他の部品と組み合わせて電源装置を製作する場合に適用できる技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-125729号公報
【特許文献2】特開2004-335696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、部品として購入した絶縁型DC-DCコンバータを用いた電源装置において、絶縁型DC-DCコンバータを分解・改造することなく、絶縁型DC-DCコンバータの二次巻線における電界強度を弱くする(小さくする)技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る電源装置は、内部にトランスを備えた絶縁型DC-DCコンバータと、前記絶縁型DC-DCコンバータの外部で、前記絶縁型DC-DCコンバータの出力端子に電気的に接続された導体と、を備え、前記導体は、前記トランスの二次巻線から見て、前記トランスの一次側から二次側に向かう方向と直交する方向に配置される。
【0009】
本実施形態に係る電源装置にあっては、前記絶縁型DC-DCコンバータおよび前記導体は、回路基板上に設けられる。また、本実施形態に係る電源装置にあっては、前記導体は、金属スペーサ、板状の導体、または前記トランスの二次巻線の周囲を囲うように配置された導体である。また、本実施形態に係る電源装置にあっては、前記導体は、前記トランスの二次巻線の周囲を囲うように配置された第1の導体と、前記第1の導体と電気的に接続された第2の導体とにより構成される。また、本実施形態に係る電源装置にあっては、前記絶縁型DC-DCコンバータは、複数のDC-DCコンバータが直列に接続されたうちの一部であり、二次側の電位の絶対値が所定の電位の絶対値以上となる絶縁型DC-DCコンバータである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品として購入した絶縁型DC-DCコンバータを用いた電源装置において、絶縁型DC-DCコンバータを分解・改造することなく、絶縁型DC-DCコンバータの二次巻線における電界強度を弱くする(小さくする)ことができる。しかも、導体は、絶縁型DC-DCコンバータの外部に配置するので、簡単に対策を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、絶縁型DC-DCコンバータの配置例(概略平面図)である。
図2図2は、トランスの一次巻線と二次巻線をキャパシタの電極と見なしたときの等価回路を示す図である。
図3図3は、外部電極用導体の配置位置の一例を示す図である。
図4図4は、外付け電極として機能する外部電極用導体の構成例(図3の矢印方向から見た断面図)である。
図5図5は、図4で示した各構成例の場合の電極の面積を示す図である。
図6図6は、シミュレーション結果を示す図である。
図7図7は、実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電源装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態により本願発明が限定されるものではない。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は、同様であるものとして、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、電源装置における3つの絶縁型DC-DCコンバータ(1段目の絶縁型DC-DCコンバータ11、2段目の絶縁型DC-DCコンバータ12、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13)の配置例(概略平面図)を示す図である。以下、説明を簡便にするために、水平面内おいて互いに直交する2方向をX軸、Y軸とし、鉛直方向をZ軸とする。図1は、電源装置における回路基板15を、鉛直方向に沿って見下ろした様子を示している。本実施形態では、内部にトランス111を備えた3つの絶縁型DC-DCコンバータが、例えば、図1に示すように、回路基板15上の入力端子17と出力端子19との間に直列接続されている。
【0014】
出力端子19の電位は、+(プラス)の場合もあれば、-(マイナス)の場合もあるが、以下では、出力端子19の電位が+(プラス)の場合の一例で説明する。
入力端子17の電位は、パルス電源装置のような電源装置のグランド(0V)に対して、所定の電位差(例えば+24V)の電位である。
出力端子19の電位は、パルス電源装置のような電源装置の出力電位(+12kV)に対して、所定の電位差(例えば+24V)の電位である。
すなわち、入力端子17のグランド(電位0V)から見た電位差は+24Vである。また、出力端子19のグランドから見た電位は+12024Vである。
【0015】
このため、1段目の絶縁型DC-DCコンバータ11では、一次側の電位は最大24V(絶対値)で、二次側の電位は最大4024V(絶対値)である。
また、2段目の絶縁型DC-DCコンバータ12では、一次側の電位は最大4024V(絶対値)で、二次側の電位は最大8024V(絶対値)である。
また、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13では、一次側の電位は最大8024V(絶対値)で、二次側の電位は最大12024V(絶対値)である。
【0016】
なお、トランス111は、図1において、3つの絶縁型DC-DCコンバータ11、12、13各々の内部にあるので、点線で表されている。また、回路基板15におけるパターン配線21は、回路基板15の裏面に形成されているので、点線で表されている。もちろん、回路基板15の表面に、パターン配線21は形成されてもよい。また、複数の絶縁型DC-DCコンバータを電気的に接続する配線は、パターン配線21に限定されない。
【0017】
また、絶縁型DC-DCコンバータには、トランス111以外にも、電圧変換するための構成や端子などを有するが、図1では図示を省略している。
【0018】
また、図1はあくまでも一例であり、複数の絶縁型DC-DCコンバータの配置は、これに限定されない。例えば、複数の絶縁型DC-DCコンバータは、一直線上に配置されてもよい。
【0019】
図2は、図1に関し、トランス111の一次巻線と二次巻線とをキャパシタの電極と見なしたときの等価回路の一例を示す図である。図2では、図1との関係を明瞭にするために、回路基板15における各種構成要素も併せて図示している。
図2における1段目の絶縁型DC-DCコンバータ11と、2段目の絶縁型DC-DCコンバータ12と、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13との近傍に示す4kVの矢印は、それぞれの絶縁型DC-DCコンバータの一次側と二次側との間に4kVの電位差が生じている様子を示している。
【0020】
周知のように、トランス111の一次巻線と二次巻線との間には浮遊容量が存在する。浮遊容量は、トランス111の一次巻線と二次巻線が、それぞれキャパシタの電極として機能することを表している。
そこで、絶縁型DC-DCコンバータに内蔵されているトランス111の一次巻線と二次巻線をキャパシタの電極と見なすと、図1は、図2に示すような等価回路となる。
【0021】
もちろん、この図2は、トランス111の一次巻線と二次巻線が、それぞれキャパシタの電極として機能することに着目し、その観点だけをイメージ化したものであるため、電圧変換するための構成等の図示を省略している。
【0022】
図3は、実施形態に係り、回路基板15に配置される外部電極用の導体(以下、外部電極用導体と呼ぶ)3の配置位置の一例を示す図である。図2で示した3段目(最終段)の絶縁型DC-DCコンバータ13のトランス111の二次巻線から見て、回路基板15上においてトランス111の一次側から二次側に向かう方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に、導体(以下、外部電極用導体3と呼ぶ)が配置される。この外部電極用導体3は、例えば、絶縁型DC-DCコンバータの外部で、当該絶縁型DC-DCコンバータ13の出力端子23に電気的に接続される。
【0023】
すなわち、絶縁型DC-DCコンバータの出力端子19と外部電極用導体3とは電気的に接続されていればよい。たとえば、図1および図2に対して回路基板15追加された外部電極用導体3は、図3に示すように、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13と出力端子19との間のパターン配線21を介して、電気的に接続されていても良い。これらにより、絶縁型DC-DCコンバータの出力端子19と導体(外部電極用導体)3とを接続するためのパターン配線21を回路基板15に作成することで、絶縁型DC-DCコンバータと導体3とを回路基板15上に設けることができ、容易に導体3を回路基板15に取り付けることができる。
【0024】
以下、上記外部電極用導体3について説明する。
【0025】
絶縁型DC-DCコンバータに内蔵されているトランス111に電圧が印加されると、印可された電圧の大きさに比例して、トランス111の一次側と二次側との間の電荷量が増減することになる。また、電荷量の増減に応じて電界強度が増減するという関係があるので、トランス111に印加される電圧が高くなると、一次巻線および二次巻線に作用する電界強度が強くなる(大きくなる)。電界強度が強くなると、巻線付近(例えば巻線を覆っているモールド部分等)における誘電損失が増加し、発熱量が多くなる。そのため、トランス111では、一次巻線側よりも二次巻線側における誘電損失が多く、発熱量が多くなる。また、電界強度が強くなると、コロナ放電が発生し易くなる。
【0026】
そこで、上記のような外部電極用導体3を設けると、トランス111の一次巻線が、キャパシタの一方の電極(以下、一次側電極と呼ぶ)として機能し、外部電極用導体3がトランス111の二次巻線とともに、キャパシタの他方の電極(以下、拡大後二次側電極と呼ぶ)として機能する。これにより、二次巻線における誘電損失を低下させることができる。
なお、本実施形態の外部電極用導体3がない状態では、トランス111の二次巻線がキャパシタの他方の電極(以下、通常二次側電極と呼ぶ)として機能することになる。そのため、外部電極用導体3は、通常二次側電極に対する外付け電極とも言える。
【0027】
ここで、外部電極用導体3は、絶縁型DC-DCコンバータの外部に配置されるため、拡大後二次側電極は、通常二次側電極よりも広い面積を有することになる。そのため、拡大後二次側電極では通常二次側電極よりも電荷が分散するので、拡大後二次側電極の場合の二次巻線における電界強度は、通常二次側電極の場合の二次巻線における電界強度よりも弱くなる(小さくなる)。
したがって、本実施形態の対策を行うことによって、二次巻線における電界強度を弱める(小さくさせる)ことができる。
しかも、外部電極用導体3は、絶縁型DC-DCコンバータの外部に配置するので、部品として購入する絶縁型DC-DCコンバータを分解・改造する必要がないので、簡単に対策を行うことができる。
【0028】
以下、図4および図5を用いて、外部電極用導体3について詳細に説明する。図4は、外付け電極55として機能する外部電極用導体3の複数の構成例を模式的に示す図である。具体的には、図4は、図3におけるX軸の方向(図3に示す矢印の方向)から見た外部電極用導体3の断面の一例を含む複数の外部電極用導体の断面を示している(A-A矢視断面図)。なお、図4においては、外部電極用導体3の断面との比較例として、外部電極用導体が未搭載の場合の断面(a)についても図示している。また、図4では、説明の便宜上、パターン配線21の厚みを回路基板15の厚みに比べて、厚くして図示している。すなわち、実際には、回路基板15の厚みに対するパターン配線21の厚みは、図4に示すよりもっと薄い。
図5は、図4に示す各構成例にこえる電極の面積の一例を示す図である。
【0029】
以下、図4および図5の示す6つの構成例(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)について説明する。なお、図4および図5に示す外部電極用導体3の構成及び配置は一例であって、これらに限定されず、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0030】
図4および図5に示す(a)は、回路基板15上に外部電極用導体3が設置されていない状態(以下、対策なしと呼ぶ)、すなわち、コロナ放電などへの対策が未実施の状態を示している。図4および図5における対策なし(a)に示すように、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13は、例えば、スルーホール191を介してパターン配線21に電気的に接続される。
【0031】
図4および図5に示す(b)は、回路基板15上に矩形上の外部電極用導体31が設置されている状態(以下、疑似コロナリング設置と呼ぶ)を示している。図4の疑似コロナリング31は、トランス111の二次巻線の周囲を囲うように配置された外部電極用導体である。図4の疑似コロナリング(b)における外部電極用導体31は、コロナリングそのものではないので、以下、「疑似コロナリング」と呼ぶ。疑似コロナリング31は、トランス111の二次巻線の周囲を囲うように配置された外部電極用導体であればよい。このため、疑似コロナリング31は、単一の部材だけで構成されなくてもよい。例えば、疑似コロナリング31は、細長い銅板を四角形状に折り曲げて構成されてもよいし、細長い銅板324と金属スペーサ32とで構成されてもよい。また、回路基板15のパターン配線21は、疑似コロナリング31の一部として活用されてもよい。
【0032】
図4および図5における疑似コロナリング設置(b)に示すように、疑似コロナリング31は、例えば、ネジ311を介して3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13の出力端子19側のパターン配線21に電気的に接続される。なお、疑似コロナリング31とパターン配線21との接続は、ネジ311に限定されず、例えばスルーホール及び半田を介して電気的に接続されてもよい。これらのことから、疑似コロナリング31の電位は、出力端子19と同電位となる。
【0033】
図4および図5に示す(c)は、棒状の外部電極用導体(以下、金属スペーサと呼ぶ)32が回路基板15上に設置されている状態(以下、金属スペーサ設置と呼ぶ)を示している。金属スペーサ32の端部には、ネジ321が設けられている。このため、回路基板15にネジ穴が設けられていれば、金属スペーサ32は、容易に回路基板15から取り外しできる。このとき、回路基板15に設けられる金属スペーサ32の数は、ネジ穴の数に応じて容易に調整することも可能である。多様な長さの金属スペーサ32を用意することで、外付け電極55としての面積の調整は容易となる。なお、金属スペーサ32に類似した外部電極用導体(ネジがない等)を、外部電極用導体として用いることも可能である。金属スペーサ32にネジ321が設けられていない場合、ネジ321が設けられていない金属スペーサ32は、半田付け等で回路基板15のスルーホール等を介してパターン配線21に固定されてもよい。これらにより、金属スペーサ32の電位は、出力端子19と同電位となる。
【0034】
図4および図5に示す(d)は、外部電極用導体として、疑似コロナリングと金属スペーサ32とが回路基板15上に設置されている状態(以下、疑似コロナリング+金属スペーサと呼ぶ)を示している。図4および図5に示す疑似コロナリング+金属スペーサ(d)では、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13に近い2つの金属スペーサ323と銅板324とを例えばネジ(311、321)等により電気的に接続することで、疑似コロナリングが形成されている。加えて、銅板324は、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13から最遠の金属スペーサ32にも、例えばネジ等により電気的に接続されている。疑似コロナリング31と金属スペーサ32との組み合わせでは、疑似コロナリング31だけよりも、電極の面積を拡大することができる。なお、上記のように、疑似コロナリング+金属スペーサ(d)に示すように、疑似コロナリングの一部として金属スペーサ323を活用することができる。
【0035】
図4および図5に示す(e)は、外部電極用導体として、疑似コロナリング31と板状の導体33とが回路基板15上に設置されている状態(以下、疑似コロナリング+板状導体と呼ぶ)を示している。本構成例によれば、疑似コロナリング31だけよりも、電極の面積を拡大することができる。本構成例では、疑似コロナリング31と、追加された板状の導体33とは接触していることが好ましい。なお、疑似コロナリング31と、板状の導体33とは非接触であってもよい。
【0036】
図4および図5における疑似コロナリング+板状導体(e)に示すように、板状の導体33は、例えば、ネジ331を介して3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13の出力端子19側のパターン配線21に電気的に接続される。このため、板状の導体33の電位は、出力端子19と同電位となる。
なお、板状の導体33とパターン配線21との接続は、ネジ331に限定されず、例えばスルーホール及び半田を介して電気的に接続されてもよい。これらのことから、板状の導体33の電位は、出力端子19と同電位となる。また、疑似コロナリングと板状の導体33とを半田等によって接続してもよい。このようにすると、ネジ331等を用いないでも、板状の導体33の電位は出力端子19と同電位となる。
【0037】
図4および図5に示す(f)は、外部電極用導体として、板状の導体33が回路基板15上に設置されている状態(以下、板状導体設置と呼ぶ)を示している。本構成例に示すように、金属スペーサ32の代わりに、板状の導体33を用いることも可能である。
【0038】
上記のように、外部電極用導体3は、外付け電極55として機能し、トランス111における通常二次電極53とともに拡大後二次側電極51として機能する。すなわち、外部電極用導体3によって、電極としての面積が拡大する。
【0039】
図5は、電極の拡大の様子を表している。図5は、拡大後二次側電極51として機能する通常二次側電極53と外付け電極55とを図3の矢印方向から図示したものである。すなわち、図5において図示されている部分は、図5の対策なし(a)を除いて、拡大後二次側電極51の面積を表している。
なお、一次側電極と通常二次側電極53とは対向した位置にあり、且つ、一次側電極の面積と通常二次側電極53の面積は同じである。そのため、図5では、一次側電極は通常二次側電極53に隠れて見えていない。また、図5では、出力端子19や金属スペーサ32のネジ321等は省略している。
【0040】
図5から分かるように、外部電極用導体3を設けることにより、トランス111の二次巻線だけ(通常二次側電極53だけ)の場合に比べて、本実施形態の電極面積は拡大している。すなわち、通常二次側電極53だけの場合よりも電荷の分散が行えるので、本実施形態によれば、電界強度を弱める(小さくする)ことができる。
【0041】
例えば、図5のうち対策なし(a)、疑似コロナリング設置(b)金属スペーサ設置(c)、疑似コロナリング+金属スペーサ(d)、疑似コロナリング+板状導体(e)においては、対策なし(a)、疑似コロナリング設置(b)金属スペーサ設置(c)、疑似コロナリング+金属スペーサ(d)、疑似コロナリング+板状導体(e)の順に、疑似的な電極の面積が増えている。
【0042】
以下、本実施形態に関する電界強度のシミュレーション結果について、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に関するシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0043】
図6は、図2に示した等価回路を想定し、4つの導体を一定の間隔を空けてX方向に沿って一列に配置したときの電界強度のシミュレーション結果である。なお、シミュレーションには、2次元シミュレーターが用いられている。シミュレーション結果は、実際のトランス111の構造とは異なるが、対向するキャパシタの電極における電界強度の強弱の度合いを知ることができる。図6に示すシミュレーションでは、入力端子17から出力端子19までの間に3つ(3段)の絶縁型DC-DCコンバータが電気的に直列接続されたことを想定している。
【0044】
図6に示す(A)は、4つの導体の大きさが同一である場合のシミュレーション結果(以下、同一大きさシミュレーション結果と呼ぶ)を示している。
また、図6に示す(B)は、4つの導体のうち一番後段(すなわち出力端子19に最も近い)の導体14の大きさが他の導体の大きさに比べて横長(約2倍)である場合のシミュレーション結果(以下、横長シミュレーション結果と呼ぶ後段)を示している。
【0045】
図6の同一大きさシミュレーション結果(A)および横長シミュレーション結果(B)に示すように、4つの導体には、それぞれ、0kV、4kV、8kV、12kVの電位が印加されている。
また、図6に示す、D1、D2、D3、D4、D5、D6は、X方向に沿った直線状の距離を表しており、それぞれ絶縁型DC-DCコンバータに関して以下に示す位置に相当する。
【0046】
D1:1段目の絶縁型DC-DCコンバータ11における一次側電極に相当する位置
D2:1段目の絶縁型DC-DCコンバータ11における二次側電極に相当する位置
D3:2段目の絶縁型DC-DCコンバータ12における一次側電極に相当する位置
D4:2段目の絶縁型DC-DCコンバータ12における二次側電極に相当する位置
D5:3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13における一次側電極に相当する位置
D6:3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13における二次側電極に相当する位置
【0047】
図6に示すシミュレーション結果を示すグラフ(C)は、図6に示すX方向に沿った軸SPにおける位置に対する、同一大きさシミュレーション結果(A)および横長シミュレーション結果(B)をグラフ化したものである。グラフ(C)における原点は、軸SPにおける基準位置であって、例えば、位置D1から所定の距離だけ-X方向に沿って離れた位置に対応する。
なお、位置に対する電界強度の変化を示すシミュレーション結果のグラフ(C)における電界強度は、図6に示すように、導体の左右方向(図6におけるY方向)の中央から少しずれた位置での電界強度である。
【0048】
図6におけるシミュレーション結果を示すグラフ(C)において、同一大きさシミュレーション結果(A)の場合は、導体に印加される電位が大きくなる程(すなわち、位置が原点から離れるにつれて)、電界強度が強く(大きく)なる。例えば、グラフ(C)において、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13の二次側電極に相当する位置D6における電界強度は、1段目の絶縁型DC-DCコンバータ11の一次側電極に相当する位置D1における電界強度に比べてかなり大きくなる。
一方、図6におけるシミュレーション結果を示すグラフ(C)において、横長シミュレーション結果(B)の場合は、4つ目の導体14が左右に横長なので電荷が分散される。このため、同一大きさシミュレーション結果(A)に比べて、横長シミュレーション結果(B)の電界強度は、特に、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13における二次側電極に相当する位置D6において、弱く(小さく)なっていることが分かる。
【0049】
したがって、電源装置において、外部電極用導体3による外部電極の追加によって、電界強度を下げることができることがシミュレーション結果でも確認できた。
【0050】
以下、本実施形態に関する実験結果について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態に関する実験結果の一例を示す図である。
【0051】
図7は、図4および図5における対策なし(a)、疑似コロナリング設置(b)金属スペーサ設置(c)、疑似コロナリング+金属スペーサ(d)、疑似コロナリング+板状導体(e)においては、対策なし(a)、疑似コロナリング設置(b)金属スペーサ設置(c)、疑似コロナリング+金属スペーサ(d)、疑似コロナリング+板状導体(e)に関する外部電極用導体のパターンにおいて、実物を用いた温度測定の結果を示す図である。
【0052】
図7に示すように、対策なし(a)、疑似コロナリング設置(b)、金属スペーサ設置(c)、疑似コロナリング+金属スペーサ(d)、疑似コロナリング+板状導体(e)においては、対策なし(a):約109度、疑似コロナリング設置(b):約87度、金属スペーサ設置(c):約77度、疑似コロナリング+金属スペーサ(d):約74度、疑似コロナリング+板状導体(e):約72度の順に、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13の温度は、下がっていることが確認できた。すなわち、外付け電極55の面積が増える程、温度の抑制がされていることが確認できた。また、外付け電極55の面積が増える程、電界強度が弱くなっている(小さくなっている)ことが確認できた。
なお、各実験結果における温度は、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13の最も温度の高い箇所の温度の実測である。
【0053】
図6図7に示すように、後段側になる程、二次側(出力側)の電位が高くなるため、電界強度を低下させる必要のある絶縁型DC-DCコンバータに的を絞って、電界強度の低減の対策を行うことで、より効率的に、すなわち不要な対策を行うことなく、コロナ放電を低減させることができる。
【0054】
なお、上記説明では、3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13の電界強度の低下および温度の低下を説明したが、実施形態は、これに限定されない。すなわち、回路基板15に搭載される絶縁型DC-DCコンバータ11が1つ(1段目のみ)であっても、本実施形態に係る技術的特徴は適用可能であって、上記説明と同様な効果を実現することができる。
【0055】
以上のことから本実施形態に係る電源装置は、内部にトランスを備えた絶縁型DC-DCコンバータと、絶縁型DC-DCコンバータの外部で、絶縁型DC-DCコンバータの出力端子に電気的に接続された導体と、を備え、当該導体は、当該トランスの二次巻線から見て、当該トランスの一次側から二次側に向かう方向と直交する方向に配置される。電源装置を上記のように構成すると、トランスの一次巻線が、キャパシタの一方の電極(一次側電極)として機能し、導体がトランスの二次巻線とともに、キャパシタの他方の電極(拡大後二次側電極)として機能する。なお、本実施形態の導体がない状態では、トランスの二次巻線がキャパシタの他方の電極(通常二次側電極)として機能することになる。そのため、導体は、通常二次側電極に対する外付け電極とも言える。ここで、導体は、絶縁型DC-DCコンバータの外部に配置されるため、拡大後二次側電極は、通常二次側電極よりも広い面積を有することになる。そのため、通常二次側電極よりも電荷が分散するので、拡大後二次側電極の場合の二次巻線における電界強度は、通常二次側電極の場合の二次巻線における電界強度よりも弱い(小さい)。したがって、本実施形態の対策を行うことによって、二次巻線における電界強度を弱める(小さくさせる)ことができる。しかも、導体は、絶縁型DC-DCコンバータの外部に配置するので、部品として購入する絶縁型DC-DCコンバータを分解・改造する必要がないので、簡単に対策を行うことができる。
【0056】
また、実施形態に係る電源装置は、上記絶縁型DC-DCコンバータおよび上記導体は、回路基板上に設けられる。両者とも回路基板上に設けるようにすれば、容易に取り付けることができる。例えば、絶縁型DC-DCコンバータの出力端子と導体とを接続するためのパターン配線を回路基板に作成しておけば、容易に導体を取り付けることができる。
【0057】
また、実施形態に係る電源装置は、上記前記導体は、金属スペーサ、板状の導体、または上記トランスの二次巻線の周囲を囲うように配置された導体である。導体が金属スペーサであれば、容易に入手でき、且つ、取り付けも容易である。特に、回路基板上に金属スペーサを設けるようにすれば、取り外しが容易になる。また、金属スペーサの数を容易に調整することができる。すなわち、拡大後二次側電極の面積の調整が容易である。なお、回路基板には、金属スペーサを取り付ける、ネジ穴を予め作成しておく必要がある。導体が板状の導体であれば、外付け電極としての面積を確保し易い。そのため、電荷を分散させ易く、ひいては、電界強度を弱めやすい。トランスの二次巻線の周囲を囲うように配置された導体であれば、一方向だけでなく、トランスの二次巻線の周方向にも電荷を分散させることができる。そのため、電界強度の低下度合いを均一化させることができる。
【0058】
また、実施形態に係る電源装置は、上記導体は、上記トランスの二次巻線の周囲を囲うように配置された第1の導体と、当該第1の導体と電気的に接続された第2の導体とにより構成される。第1の導体による効果だけでなく、第2の導体による効果も合わさるので、より効果的に二次巻線における誘電損失を低下させることができる。
【0059】
また、実施形態に係る電源装置において、上記絶縁型DC-DCコンバータは、複数のDC-DCコンバータが直列に接続されたうちの一部であり、二次側の電位の絶対値が所定の電位の絶対値以上となる絶縁型DC-DCコンバータである。複数の絶縁型DC-DCコンバータを直列に接続する場合、問題となるのは後段側の絶縁型DC-DCコンバータである。何故ならば、後段側になる程、二次側(出力側)の電位が高くなるからである。そのため、電界強度を低下させる必要のある絶縁型DC-DCコンバータに的を絞って対策を行えばよい。具体的には、二次側の電位(絶対値)が所定の電位(絶対値)以上となる絶縁型DC-DCコンバータに的を絞ればよい。これによって、不要な対策を行わなくてすむ。なお、通常は、最後段の絶縁型DC-DCコンバータを対象に対策を行うことになる。
【0060】
以上のことから、本実施形態などに係る電源装置によれば、部品として購入した絶縁型DC-DCコンバータを用いた電源装置において、絶縁型DC-DCコンバータを分解・改造することなく、絶縁型DC-DCコンバータの二次巻線における電界強度を弱くする(小さくする)ことができる。
【0061】
なお、上述の実施形態は、適宜組み合わせ可能であり、また例示であって発明の範囲を限定するものではない。また、上述の実施形態および変形例は、発明の範囲、要旨に含まれ、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
3 外部電極用導体、11 1段目の絶縁型DC-DCコンバータ、 12 2段目の絶縁型DC-DCコンバータ、 13 3段目の絶縁型DC-DCコンバータ、 14 一番後段の外部電極用導体、 15 回路基板、 17 入力端子、 19 出力端子、 21 パターン配線、 31 疑似コロナリング、 32 金属スペーサ、 33 板状の導体、 51 拡大後二次側電極、 53 通常二次側電極、 55 外付け電極、 111 トランス、 191 スルーホール、 311 ネジ、 321 ネジ、 323 3段目の絶縁型DC-DCコンバータ13に近い2つの金属スペーサ、 324 銅板、 331 ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7