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特開2023-141305衛星通信システム、移動局、管制局、衛星通信システムの制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141305
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】衛星通信システム、移動局、管制局、衛星通信システムの制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/155 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H04B7/155
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047545
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 亮
【テーマコード(参考)】
5K072
【Fターム(参考)】
5K072AA27
5K072AA30
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB25
5K072BB27
5K072BB28
5K072DD01
5K072DD11
5K072DD16
5K072DD17
5K072GG02
5K072GG06
5K072GG12
5K072GG13
5K072HH01
5K072HH02
(57)【要約】
【課題】全国中継用の制作打合回線の使用状況をそれぞれの車載局において容易に把握する。
【解決手段】実施形態の衛星通信システムは、全国中継の管制を行う管制局と、管制局と衛星通信回線を介して通信可能な一又は複数の移動局と、を備えた衛星通信システムであって、管制局は、移動局に対して、全国中継用マイナスワン回線を介して全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を送信する使用状態送信部を備え、移動局は、全国中継用マイナスワン回線を介して全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を取得する情報取得部と、情報取得部が取得した移動局を特定する情報を提示する提示部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全国中継の管制を行う管制局と、前記管制局と衛星通信回線を介して通信可能な一又は複数の移動局と、を備えた衛星通信システムであって、
前記管制局は、前記移動局に対して、全国中継用マイナスワン回線を介して全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を送信する使用状態送信部を備え、
前記移動局は、全国中継用マイナスワン回線を介して前記全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した移動局を特定する前記情報を提示する提示部と、
を備える衛星通信システム。
【請求項2】
前記使用状態送信部は、前記移動局を特定する前記情報を、前記移動局に対して音声データを送信するためのフレームデータの非音声データの部分に重畳させて送信する、
請求項1記載の衛星通信システム。
【請求項3】
前記移動局は、前記情報取得部により当該移動局以外の移動局を特定する前記情報が取得された場合に前記全国中継用制作打合回線の使用を禁止する禁止部を備えた、
請求項1または請求項2記載の衛星通信システム。
【請求項4】
全国中継の管制を行う管制局と衛星通信回線を介して通信可能な移動局であって、
全国中継用制作打合回線の使用に伴う回線切替に先立って、全国中継用マイナスワン回線を介して前記全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した移動局を特定する情報を提示する提示部と、
を備えた移動局。
【請求項5】
一又は複数の移動局と衛星通信回線を介して通信可能であり、全国中継の管制を行う管制局であって、
全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定し、前記全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報全国中継用マイナスワン回線を介して前記全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を送信する使用状態送信部を備える、
管制局。
【請求項6】
全国中継の管制を行う管制局と、前記管制局と衛星通信回線を介して通信可能な一又は複数の移動局と、を備えた衛星通信システムで実行される衛星通信システムの制御方法であって、
前記管制局が、前記移動局に対して、全国中継用マイナスワン回線を介して全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を送信するステップと、
前記移動局が、全国中継用マイナスワン回線を介して前記全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を取得するステップと、情報取得部と、
前記移動局において、前記情報取得部が取得した移動局を特定する情報を提示するステップと、
を、備える衛生通信システムの制御方法。
【請求項7】
全国中継の管制を行う管制局と衛星通信回線を介して通信可能な移動局をコンピュータにより制御するためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
全国中継用制作打合回線の使用に伴う回線切替に先立って、全国中継用マイナスワン回線を介して前記全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を取得する手段と、
取得した前記移動局を特定する情報を提示する手段と、
して機能させるプログラム。
【請求項8】
一又は複数の移動局と衛星通信回線を介して通信可能であり、全国中継の管制を行う管制局をコンピュータにより制御するためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
全国中継用制作打合回線を使用している前記移動局を特定する手段と、
前記全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報全国中継用マイナスワン回線を介して前記全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を送信する手段と、
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、衛星通信システム、移動局、管制局、衛星通信システムの制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星通信システムとして、放送局のSNG(Satellite News Gathering)システムが知られている。
このSNGシステムは、車載局(子局:中継車)が報道現場から管制局(親局:放送局演奏所)に対して、静止通信衛星を介したオーダワイヤ(Order Wire)回線を用いて連絡を相互に取りながら、中継映像をテレビ回線で送るシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-278359号公報
【特許文献2】特開平06-224830号公報
【特許文献3】特開2018-050105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のSNGシステムでは、管制局との間で全国中継を実施する際には、制作打合回線を使用して、相互に連絡を行う必要があるが、複数の車載局で制作打合回線を同時に使用することはできないにもかかわらず、各車載局において制作打合回線の使用状況を容易に把握することもできなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、全国中継用の制作打合回線の使用状況をそれぞれの車載局において容易に把握することが可能な衛星通信システム、移動局、管制局、衛星通信システムの制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の衛星通信システムは、全国中継の管制を行う管制局と、管制局と衛星通信回線を介して通信可能な一又は複数の移動局と、を備えた衛星通信システムであって、管制局は、移動局に対して、全国中継用マイナスワン回線を介して全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を送信する使用状態送信部を備え、移動局は、全国中継用マイナスワン回線を介して全国中継用制作打合回線を使用している移動局を特定する情報を取得する情報取得部と、情報取得部が取得した移動局を特定する情報を提示する提示部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、テレビ中継を行う衛星通信システムの一例を説明する概要構成ブロック図である。
図2図2は、管制局及び車載局の概要構成ブロック図である。
図3図3は実施形態のテレビ回線確立処理の処理タイミングチャートである。
図4図4は、複数箇所全国中継処理の処理タイミングチャートである。
図5図5は、マイナスワン回線で送信される音声データを含むフレームデータの一例の説明図である。
図6図6は、発局ID情報の表示状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
次に図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。
図1は、テレビ中継を行う衛星通信システムの一例を説明する概要構成ブロック図である。
衛星通信システム10は、通信衛星11と、全国中継の管制を行う管制局12と、ローカル中継を行う複数の基地局13と、管制局12あるいは基地局13とオーダワイヤ回線14及び通信衛星11を介して双方向通信可能なそれぞれが移動局として機能する複数の車載局15と、を備えている。
【0009】
図2は、管制局及び車載局の概要構成ブロック図である。
管制局12は、管制局12全体を制御するシステムコントローラ21と、コントローラ21の制御下でオーダワイヤ回線14を介した通信の制御を行うオーダワイヤモデム22と、オーダワイヤモデム22が出力した送信信号を増幅して図示しないアンテナを介して通信衛星11に送信するとともに、図示しないアンテナを介して通信衛星11の送信信号を受信して、増幅してオーダワイヤモデム22に出力する送受信増幅装置23と、を備えている。
【0010】
制御部22Cオーダワイヤモデム22は、オーダワイヤ回線14を構成している出合回線14Aを介した双方向通信を制御する出合回線制御部22Aと、オーダワイヤ回線14を構成している技術打合回線14Bを介した双方向通信を制御する技術打合回線制御部22Bと、オーダワイヤ回線14を構成している制作打合回線14Cを介した双方向通信を制御する制作打合回線制御部22Cと、オーダワイヤ回線14を構成しているマイナスワン回線14DTを介した通信を制御するマイナスワン回線制御部22Dと、を備えている。
【0011】
上記構成において、システムコントローラ21は、制作打合回線14Cで使用している車載局の発局ID情報をマイナスワン回線14DTを介して送信するためにマイナスワン回線14DTで送信するデータに発局ID情報を重畳したオーダワイヤ変調信号を変調させるCPU処理部21Aを備えている。
そして、システムコントローラ21のCPU処理部21Aは、制作打合回線制御部22Cが使用されている場合には、制作打合回線を使用している車載局15を特定可能な発局ID情報を抽出してマイナスワン回線制御部22Dに発局ID情報を通知し、マイナスワン回線制御部22Dにマイナスワン回線14DTを介して発局ID情報に対応する発局IDデータTIDを送信させる。
【0012】
一方、車載局15は、車載局全体を制御するシステムコントローラ31と、コントローラ31の制御下でオーダワイヤ回線14を介した通信の制御を行うオーダワイヤモデム32と、オーダワイヤモデム32が出力した送信信号を増幅して図示しないアンテナを介して通信衛星11に送信するとともに、図示しないアンテナを介して通信衛星11の送信信号を受信して、増幅してオーダワイヤモデム32に出力する送受信増幅装置33と、を備えている。
【0013】
上記構成において、オーダワイヤモデム32は、オーダワイヤ回線14を構成している出合回線14Aを介した双方向通信を制御する出合回線制御部32Aと、オーダワイヤ回線14を構成している技術打合回線14Bを介した双方向通信を制御する技術打合回線制御部32Bと、オーダワイヤ回線14を構成している制作打合回線14Cを介した双方向通信を制御する制作打合回線制御部32Cと、オーダワイヤ回線14を構成しているマイナスワン回線14DTを介した通信を制御するマイナスワン回線制御部32Dと、を備えている。
【0014】
さらにシステムコントローラ31は、制作打合回線14Cで使用している車載局の発局ID情報に対応する発局IDデータTIDをマイナスワン回線14DRを介して受信するためにオーダワイヤ変調信号を復調するCPU処理部31Aと、取得した発局ID情報に基づいて制作打合回線の回線使用状況を判定する処理を行い、制作打合回線制御部32Cによる制作打合回線の使用についての制御を行う回線使用状況判定処理部31Bと、を備えている。
【0015】
上記構成において、回線使用状況判定処理部31Bは、CPU処理部31Aにより復調された受信データに含まれる発局ID情報に基づいて制作打合回線が他の車載局により使用されているか否かを判断し、制作打合回線が他の車載局により使用されている場合には、その旨をシステムコントローラ31の図示しない表示装置で表示し、かつ、禁止部として機能し、制作打合回線制御部32Cに制作打合回線の使用不許可信号を出力して、制作打合回線の使用を禁止する。
【0016】
また、回線使用状況判定処理部31Bは、いずれの他の車載局15にも制作打合回線が使用されていない場合には、その旨をシステムコントローラ31の図示しない表示装置で表示し、かつ、制作打合回線制御部32Cに制作打合回線の使用許可信号を出力する。
【0017】
以下、これらの問題点を解決可能な実施形態の動作について説明する。
まず1台の車載局15が管制局12にとの間で中継可能な状態を確立する場合の処理を説明する。
【0018】
図3は実施形態のテレビ回線確立処理の処理タイミングチャートである。
全国中継を行う場合には、車載局15において、図示しないアンテナを展開し、通信衛星11を捕捉する(ステップS11)。
【0019】
車載局15のオペレータは、通信衛星11の補捉完了後、当該放送局が用いる占有トランスポンダの周波数帯を用いて、管制局12に対して連絡を取る(ステップS12)。
具体的には、オーダワイヤ回線14のうち、出合回線14Aを用いて、管制局オペレータに対して、現場到着と中継映像のテレビ波送信の準備が整ったことを連絡する。
これにより、管制局12は、出合回線14Aを介して、車載局15に対し、当該トランスポンダに割り当てられている中心周波数でテレビ波を連続波(CW)により低レベル(通信確認用レベル)で送信することを指示する(ステップS13)。
【0020】
これにより車載局15は、テレビ波の連続波を低レベルで送信し(ステップS14)、管制局12では、受信波が主偏波側で所望の周波数範囲、レベル範囲で受信され、裏偏波側へのエネルギー漏れ量についても、通信衛星が定める運用基準の許容値を満足するか否かを判断する(ステップS15)。
【0021】
続いて管制局12は、出合回線14Aを介して車載局15に対し、連続波による低レベル送信が規定を満足したことを回答し、停波する指示を出す(ステップS16)。
これにより車載局15は、この停波指示を受け、停波作業を行う(ステップS17)。
【0022】
次に管制局12は、出合回線14Aを介して、車載局15に対し、中継映像をテレビ回線として送出するための伝送モード、周波数を指示する(ステップS18)。
車載局15のオペレータは、指示された伝送モード及び周波数に基づいてテレビ回線の設定作業を行う。
【0023】
車載局15は、伝送モード及び周波数の設定完了後、技術打合回線14Bに切り替えて、管制局12に対し、テレビ回線の設定が整ったことを伝え、技術打合回線14Bによる送信許可を求める(ステップS19)。
【0024】
管制局12は、技術打合回線14Bを介して、当該車載局15に対して、テレビ波(テレビ回線)の送信を許可するとともに、車載局15に対して送信確認用の低レベル送信電力で送信することを指示する(ステップS20)。
【0025】
この結果、車載局15は、低レベル送信電力でテレビ回線の信号を送信する(ステップS21)。
一方、管制局12は、受信確認を行い、誤った周波数でテレビ波が送信されていないことを確認したのち、テレビ波を定格レベルで送信することを車載局15に対し指示する(ステップS22)。
【0026】
車載局15は、ステップS15の指示を受けてテレビ波の送信電力を定格レベルまで上げる(ステップS23)。
これに伴い、管制局12は、テレビ波(テレビ回線)が正常に受信できていることを確認する(ステップS24)。
【0027】
車載局15のオペレータは、テレビ回線が整ったことを確認すると、制作打合回線14Cに切り替えて、当該管制局12の番組収録担当者からの指示を受ける。また、生中継に備えて、管制局12(あるいは基地局13)においてオンエア中の番組音声を管制局(あるいは基地局13)から車載局15に戻すマイナスワン回線14DR(受信専用回線)もテレビ回線に加えて、2回線目のオーダワイヤ回線14として同時確立させることとなる。
【0028】
この場合において、上述した処理は、複数箇所からの中継を行う場合には、それぞれに対応する車載局15についてそれぞれ同様の処理がなされることとなる。
【0029】
次に複数の車載局15を利用して、全国中継を複数箇所から行う場合の処理について説明する。
図4は、複数箇所全国中継処理の処理タイミングチャートである。
まず、管制局12は、マイナスワン回線制御部22Dを制御して、全国中継用のマイナスワン回線14DT(送信専用回線)を用いて、全国中継用の制作打合回線14Cで使用している)車載局15の発局ID情報を、変調信号を作るオーダワイヤモデムで重畳して、送信を行う(ステップS31)。
【0030】
この場合において、発局ID情報は、車載局15が管制局12から送信されている全国中継用の制作打合回線14Cの信号を受信した際に、全国中継用のマイナスワン回線14DRを受信してCPU処理部21Aにより復調される。
また、各車載局15及び各基地局13で使用している全国中継用のマイナスワン回線14DRは、受信専用であるため、全国中継用のマイナスワン回線14DRを受信可能な全国中継予定の全ての車載局15及び基地局13において受信が可能である。
【0031】
図5は、マイナスワン回線で送信される音声データを含むフレームデータの一例の説明図である。
フレームデータFDは、フレームデータFDの同期をとるための同期ワードデータSWと、制御データ及び発局IDデータを含む非音声データと、管制局12側から音声を送信するための音声データADと、フレームデータFDの誤り訂正を行うための誤り訂正データECと、を備えている。
【0032】
この場合において、重畳する車載局15の発局ID情報は、デジタルオーダワイヤ変調の規格上、音声データADとして定義されていないデータ領域である非音声データNADに重畳させることで、音声データAD、ひいては、伝送される音声信号に影響を与えないようにされている。
【0033】
図4に戻り、車載局15のオーダワイヤモデム32では、全国中継用のマイナスワン回線14DRを受信する(ステップS32)。車載局15のオーダワイヤモデム32では、管制局12からの全国中継用のマイナスワン回線14DRに重畳された車載局15の発局ID情報(=当該時点で全国中継用の制作打合回線14Cで送受信を行っている車載局15を特定可能)を、復調する。
【0034】
そして、ローカル番組から全国中継番組へ運用を切り替えようとしている車載局15は、運用を切り替えようとする場合には、制作打合回線14Cとマイナスワン回線14DRの双方をローカル中継用回線(通常回線)から全国中継用回線に切り替えることとなるが、車載局15は、マイナスワン回線制御部32Dを介して、制作打合回線14Cの切り替えに先立って、まずマイナスワン回線14DRをローカル中継用回線(通常回線)から全国中継用回線に切り替える。
【0035】
ここで、マイナスワン回線14DRは、受信専用であるので、全国中継を行っている他の車載局15、基地局13あるいは全国中継を行おうとしている他の車載局15、基地局13に影響を与えることはない。すなわち、管制局12のマイナスワン回線14DTは、管制局12から車載局15及び基地局13に対しての送信のみで、車載局15あるいは基地局13が管制局12から車載局15に対して送信はしない。このため、複数台の車載局15、更には複数の基地局13が同時に全国中継用のマイナスワン回線14DRに切り替えても、同時送信の状態にはならずに同時受信の状態になるだけであり、通信データのコリジョンが原理的に発生せず、テレビ回線の運用の障害にはならない。
【0036】
以下、特定の車載局15の動作を説明するが、基地局13についても同様である。
全国中継用のマイナスワン回線14DRに切り替えた車載局15は、オーダワイヤモデム32のマイナスワン回線制御部32Dで復調した発局ID情報TIDを、車載局15において全機器の状態監視と制御を実行する中央管理処理装置であるシステムコントローラ31の図示しない表示装置の画面上に表示する(ステップS33)。
【0037】
図6は、発局ID情報の表示状態の説明図である。
図6(A)は、複数の車載局15のうち、いずれか一の車載局15が制作打合回線14Cを利用している場合の表示例である。
【0038】
図6(A)に示すように、制作打合回線14Cを使用している車載局15(=A局)が存在している場合には、当該制作打合回線14Cを使用している車載局15を特定可能な情報として、システムコントローラ31の画面DPに発局ID情報TIDあるいは発局ID情報TIDに対応する車載局15を特定可能な名称(図6(A)の場合「A局」)が表示される。
【0039】
したがって、全国中継用のマイナスワン回線14DRが接続されている各車載局15のオペレータは、当該時点で制作打合回線14Cを使用している車載局15を容易に把握することができる。
【0040】
図6(B)は、複数の車載局15のうち、いずれの車載局15も制作打合回線14Cを利用していない場合の表示例である。
一方、先行運用する1台目の車載局15がいない場合、もしくは1台目の車載局15が運用を終えた後は、管制局12のオーダワイヤモデム22のマイナスワン回線制御部22Dが重畳する発局ID情報TIDとしては、回線未使用状態を示すヌル(Null)情報を入れる。
【0041】
この結果、図6(B)に示すように、複数の車載局15のうち、いずれの車載局15も制作打合回線14Cを利用していない場合には、いずれの車載局15に対応する発局ID情報TIDあるいは発局ID情報TIDに対応する車載局15を特定可能な名称が表示されることはない。
【0042】
したがって、車載局15のオペレータは画面を見るだけで、全国中継用の制作打合回線14Cの使用状況が分かる。
すなわち、図6(A)に示した様に、全国中継用マイナスワン回線の重畳された全国中継用制作打合回線を使用している車載局15に対応する発局ID情報TIDあるいは発局ID情報TIDに対応する車載局15を特定可能な名称を画面上で確認し、発局ID情報TIDあるいは発局ID情報TIDに対応する車載局15を特定可能な名称が表示されていれば、全国中継用の制作打合回線14Cは使用中であり、切り替えてはならないことが分かる。
【0043】
図4に戻り、システムコントローラ31は、制作打合せ回線が使用中であるか否かを判断することとなるが(ステップS34)、自車載局15の発局ID情報以外の発局ID情報が入力された状態では、制作打合回線は使用中であるので(ステップS34;Yes)、システムコントローラ31は、待機状態となる。
このとき、システムコントローラ31の回線使用状況判定処理部31Bは禁止部として機能し、オーダワイヤモデム32の制作打合せ回線制御部32Cに対し、全国中継用の制作打合せ回線の使用を禁止する旨を通知するので、オーダワイヤモデムにおいても制作打合回線制御部32Cが制作打合回線14Cを介した送信を行うことはない。
【0044】
一方、全国中継用マイナスワン回線の重畳された全国中継用制作打合回線を使用している車載局15がおらず、発局ID情報TIDあるいは発局ID情報TIDに対応する車載局15を特定可能な名称が表示されていなければ(図6(B)参照)、全国中継用の制作打合回線14Cは非使用中であり、全国中継用の制作打合回線14Cに切り替えが可能なことが分かる。
これにより、車載局15のオペレータは、全国中継用の制作打合回線を未使用と判断し、制作打合回線を全国中継用制作打合回線の周波数に切り替える操作を行うこととなる。
これと並行して、システムコントローラ31は、制作打合せ回線が使用中であるか否かを判断することとなるが(ステップS34)、いずれの発局ID情報も入力されていない状態では、制作打合回線は非使用中であるので(ステップS34;No)、システムコントローラ31は、車載局15のオペレータの操作により全国中継用制作打合回線への切り替え指示操作がなされたか否かを判断する(ステップS35)。
ステップS35の判断において、切り替え指示操作がなされていない場合には(ステップS35;No)、システムコントローラ31は、再び処理をステップS32に移行して実効的に待機状態となる。
【0045】
また、ステップS35の判断において、切り替え指示がなされた場合には(ステップS35;Yes)、システムコントローラ31は、オーダワイヤモデム32の制作打合せ回線制御部32Cに対して全国中継用制作打合回線に切り替えるように制御を行う(ステップS36)。
この結果、オーダワイヤモデム32の制作打合せ回線制御部32Cは、回線を全国中継用制作打合回線に切り替える。
この結果、車載局15のオペレータ及び管制局12のオペレータは、全国中継用制作打合回線を介した打合せが行えるようになる(ステップS37A、S37B)。
【0046】
この結果、車載局15は、全国中継用のテレビ信号を定格レベルで送信する運用を開始する(ステップS38)。
【0047】
本実施形態によれば、全国中継を行っている、あるいは、行おうとしている車載局15が複数ある場合でも、いずれかの車載局15が管制局12との間で制作打合回線14Cを利用しているか、あるいは、いずれも使用していないことを全ての車載局15において当該車載局15のオペレータが容易に把握することができ、不用意な制作打合回線14Cへの接続による通信遮断などを防止することができる。
また、従来と異なり、全国中継用の制作打合回線を少なくとも一回線用意するだけで良いので、無駄に電波資源を占有することがなく、有限なトランスポンダ占有帯域の電波資源の有効活用が行える。
【0048】
[比較例]
次に、本実施形態に係る衛星通信システムの効果について、比較例に係る衛星通信システムと対比して説明する。
例えば、全国中継向け番組における中継は、異なる車載局を繋いで時間的に連続中継することもあるため、1台目の車載局がオーダワイヤ回線の制作打合回線を用いた後に、すぐに2台目の車載局がオーダワイヤ回線の制作打合回線を用いる必要が生じる。
同様に、全国中継向け番組で用いるマイナスワン回線(全国中継用マイナスワン回線)は、通常のマイナスワン回線と異なる周波数に用意されている。
【0049】
このとき、全国中継向け番組における制作打合回線が一つしかない場合には、2台目の車載局は、1台目の車載局の使用が終わらない限り、オーダワイヤ回線の制作打合回線を使用することができないが、1台目の車載局の使用が終わっているかは、2台目の車載局が実際に全国中継向け番組用の制作打合回線に切り替えてみないと分からないが、他の車載局が制作打合回線を使用している状況で、制作打合せ回線を使用してしまうと、通信データのコリジョン(衝突)が発生して、いずれの車載局も通信を行えない状況に至る虞があった。
【0050】
このための対策としては、比較例に係る衛星通信システムにおいては、例えば以下の二通りの手法が提案されている。
(1)全国中継用の制作打合回線を2回線以上用意しておく。
(2)全国中継用の制作打合回線の使用状況を車載局側で把握できる仕組みを提供する。
【0051】
しかしながら、(1)の手法では、本来は同時使用を予定していない複数の制作打合せ回線をそれぞれ通信可能に維持するため、周波数帯域の利用効率が悪化し、有限なトランスポンダ占有帯域の電波資源の有効活用が行えないという課題があった。
また、(2)の手法では、全国中継用の制作打合回線の使用者は、管制局とその相手先となる車載局であり、ローカル中継用の制作打合回線の使用者は、当該番組の基地局と車載局であるため、全国中継用の制作打合回線は当該基地局では使用していないことになり、基地局からは全国中継用の制作打合回線の使用状況を把握することはできなかった。
【0052】
これらの比較例に係る衛星通信システムの問題点に関し、本実施形態に係る衛星通信システムによれば、制作打合回線が一つあれば、管制局、移動局及び基地局を含めてコリジョンを発生させることなく、制作打合回線の共用が行えるので、必要以上に電波資源を使うことがなく、電波資源の有効活用が行える。
また、中継に参加可能な状態にある装置であれば、管制局、移動局及び基地局を含め実際に中継を行っていないいずれの装置であっても制作打合回線の使用状況を把握することができるので、システム運用が容易となる。
また、従来と異なり、車載局が基地局を介して全国中継を行う場合でも、基地局においても全国中継用の制作打合回線の使用状況を把握することができるようになる。
【0053】
本実施形態の管制局、車載局、基地局のシステムコントローラは、CPUなどの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶装置と、HDD、CDドライブ装置などの外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、キーボードやマウスなどの入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0054】
本実施形態のシステムコントローラで実行される~プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでUSBメモリ、SSD等の半導体記憶措置、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0055】
また、本実施形態のシステムコントローラで実行されるプログラムを、インター全国中継用等の全国中継用ワークに接続されたコンピュータ上に格納し、全国中継用ワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のシステムコントローラ実行されるプログラムをインター全国中継用等の全国中継用ワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0056】
また、本実施形態の管制局、車載局、基地局のシステムコントローラのプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 衛星通信システム
11 通信衛星
12 管制局(親局)
13 基地局(親局)
14 オーダワイヤ回線
14A 出合回線
14B 技術打合回線
14C 制作打合回線
14DR マイナスワン回線
14DT マイナスワン回線
15 車載局(子局)
21 コントローラ
21 システムコントローラ
22 オーダワイヤモデム
22A 出合回線制御部
22B 技術打合回線制御部
22C 制作打合回線制御部
22D マイナスワン回線制御部
23 送受信増幅装置
31 システムコントローラ
32 オーダワイヤモデム
32D マイナスワン回線制御部
AD 音声データ
CW 低レベル
DP 画面
EC 訂正データ
FD フレームデータ
NAD 非音声データ
SW 同期ワードデータ
TID 発局ID情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6