(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141310
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ドライバ回路及び電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20230928BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230928BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230928BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/155 H
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047558
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 祐司
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AA10
5H730AA14
5H730AS05
5H730AS13
5H730BB13
5H730DD03
5H730DD04
5H730FD21
5H730FF01
5H730FF05
5H730FG01
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740MM02
5H770AA01
5H770AA05
5H770AA15
5H770DA44
5H770GA01
5H770GA06
5H770HA03X
5H770HA19X
(57)【要約】
【課題】一つの実施形態は、スイッチング素子を適切に駆動できるドライバ回路及び電力変換システムを提供することを目的とする。
【解決手段】一つの実施形態によれば、駆動回路と監視回路と制御回路とを有するドライバ回路が提供される。駆動回路は、第1の電流源を含む。駆動回路は、第1の電流源をスイッチング素子の制御端子に接続して、スイッチング素子を駆動する。監視回路は、スイッチング素子の両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視する。制御回路は、監視された時間に応じてスイッチング素子の両端電圧のスルーレートが目標値に近づくように第1の電流源の電流値を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電流源を含み、前記第1の電流源をスイッチング素子の制御端子に接続して前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、
前記スイッチング素子の両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視する監視回路と、
前記監視された時間に応じて前記スイッチング素子の両端電圧のスルーレートが目標値に近づくように前記第1の電流源の電流値を制御する制御回路と、
を備えたドライバ回路。
【請求項2】
前記監視回路は、前記両端電圧が第1の閾値を下回ってから第2の閾値を下回るまでの時間を監視し、
前記制御回路は、前記両端電圧のスルーレートが第1の目標値に近づくように前記第1の電流源の電流値を制御する
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項3】
前記監視回路は、前記両端電圧が前記第2の閾値を上回ってから前記第1の閾値を上回るまでの時間を監視し、
前記制御回路は、前記両端電圧のスルーレートが第2の目標値に近づくように前記第1の電流源の電流値を制御する
請求項2に記載のドライバ回路。
【請求項4】
前記監視回路は、第1の期間に、前記両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視し、
前記制御回路は、前記第1の期間に、前記第1の電流源の電流値を第1の電流値に制御し、前記第1の期間より後の第2の期間に、前記第1の電流源の電流値を前記第1の電流値より大きい第3の電流値に制御する
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項5】
前記監視回路は、第1の期間に、前記両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視し、
前記制御回路は、前記第1の期間に、前記第1の電流源の電流値を第1の電流値に制御し、前記第1の期間より前の第3の期間に、前記第1の電流源の電流値を前記第1の電流値より大きい第4の電流値に制御する
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項6】
前記監視回路は、第1の期間に、前記両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視し、
前記制御回路は、前記第1の期間に、前記第1の電流源の電流値を第1の電流値に制御し、前記第1の期間より前の第3の期間に、前記第1の電流源の電流値を前記第1の電流値より大きい第4の電流値に制御し、前記第1の期間より後の第2の期間に、前記第1の電流源の電流値を前記第1の電流値より大きい第3の電流値に制御する
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項7】
前記監視回路は、第1の期間に、前記両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視し、前記第1の期間に監視された時間に応じて前記スイッチング素子の両端電圧のスルーレートが第1の目標値に近づくように前記第1の電流源の電流値を制御するとともにスルーレートの目標値を第2の目標値に定め、前記第1の期間より後の第4の期間に、前記両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視し、前記第4の期間に監視された時間に応じて前記スイッチング素子の両端電圧のスルーレートが前記第2の目標値に近づくように前記第1の電流源の電流値を制御する
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項8】
前記監視回路は、
前記スイッチング素子の一端の電圧と他端の電圧との差分電圧を求める差分回路と、
前記差分電圧を第1の閾値と比較する第1の比較回路と、
前記差分電圧を前記第1の閾値より低い第2の閾値と比較する第2の比較回路と、
前記第1の比較回路の比較結果と前記第2の比較回路の比較結果とに応じて、前記スイッチング素子の両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を測定する測定回路と、
を有する
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項9】
スイッチング素子を含むスイッチング回路と、
前記スイッチング素子を駆動する請求項1から8のいずれか1項に記載のドライバ回路と、
を備えた電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ドライバ回路及び電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング回路及びドライバ回路を有する電力変換システムでは、ドライバ回路で生成するゲート信号でスイッチング回路におけるスイッチング素子が駆動される。このとき、ドライバ回路がスイッチング素子を適切に駆動することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5961042号公報
【特許文献2】特開2009-65485号公報
【特許文献3】特許第3175683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、スイッチング素子を適切に駆動できるドライバ回路及び電力変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、駆動回路と監視回路と制御回路とを有するドライバ回路が提供される。駆動回路は、第1の電流源を含む。駆動回路は、第1の電流源をスイッチング素子の制御端子に接続して、スイッチング素子を駆動する。監視回路は、スイッチング素子の両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視する。制御回路は、監視された時間に応じてスイッチング素子の両端電圧のスルーレートが目標値に近づくように第1の電流源の電流値を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態にかかるドライバ回路を含む電力変換システムの構成を示す回路図。
【
図2】実施形態における差分回路及び2つの比較回路の構成を示す回路図。
【
図3】実施形態における測定回路の構成を示す回路図。
【
図4】実施形態にかかるドライバ回路の動作を示す波形図。
【
図5】実施形態におけるスイッチング素子の両端電圧の立ち上がり時のドライバ回路の動作を示す波形図。
【
図6】実施形態におけるスイッチング素子の両端電圧の立ち下がり時のドライバ回路の動作を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるドライバ回路を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(実施形態)
実施形態にかかるドライバ回路は、スイッチング素子を含むスイッチング回路とともに電力変換システムに適用され、スイッチング素子を駆動するが、スイッチング素子を適切に駆動するための工夫が施される。ドライバ回路10を含む電力変換システム1は、
図1に示すように構成され得る。
図1は、ドライバ回路10を含む電力変換システム1の構成を示す回路図である。
【0009】
電力変換システム1は、電源PS及び負荷LDの間に接続される。電力変換システム1は、電源PSからの電力を用いて所定の電力が生成し、生成された所定の電力を負荷LDに出力する。電力変換システム1がモータドライバであってもよく、電源PSが直流電源であってもよく、負荷LDがモータであってもよい。あるいは、電力変換システム1がDCDCコンバータであってもよく、電源PSが直流電源であってもよく、負荷LDが半導体集積回路であってもよい。
【0010】
電力変換システム1は、ドライバ回路10及びスイッチング回路20を有する。スイッチング回路20は、ハイサイドのスイッチング素子SWHとローサイドのスイッチング素子SWHLとを含む。ドライバ回路10は、スイッチング素子SWHを駆動するためのハイサイドのドライバ回路14-1と、スイッチング素子SWLを駆動するためのローサイドのドライバ回路14-2とを含む。
【0011】
ドライバ回路10において、各ドライバ回路14は、駆動回路11、監視回路12及び制御回路13を有する。駆動回路11は、電流源111,114を含み、電流源111,114をスイッチング素子SWの制御端子に接続してスイッチング素子SWを駆動する。監視回路12は、スイッチング素子SWの両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視する。制御回路13は、監視された時間に応じてスイッチング素子SWの両端電圧のスルーレートが目標値に近づくように電流源111,114の電流値を制御する。これにより、スイッチング素子SWの両端電圧の遷移時のスルーレートを、EMIノイズが許容範囲内に収まり且つ電力損失が要求レベル以下に抑制されるような適正範囲に制御でき、スイッチング素子を適切に駆動できる。
【0012】
スイッチング回路20は、電源PSと負荷LDとの間に接続され、ドライバ回路10と負荷LDとの間に接続される。ドライバ回路10は、スイッチング回路20を駆動する。スイッチング回路20は、駆動されることで、所定の電力を生成して負荷LDへ供給する。
【0013】
スイッチング回路20は、ハイサイドのスイッチング素子SWHとローサイドのスイッチング素子SWLとを有する。それに応じて、ドライバ回路10は、ハイサイドのドライバ回路14-1とローサイドのドライバ回路14-2とを含む。
【0014】
ハイサイドのスイッチング素子SWHは、ノードN1と電源PSとの間に接続され、ローサイドのスイッチング素子SWLは、ノードN1と基準電位(例えば、グランド電位)との間に接続される。スイッチング回路20は、スイッチング素子SWHとスイッチング素子SWLとが相補的に駆動されることで、負荷LDに所定の電力を供給する。
【0015】
ハイサイドのスイッチング素子SWHは、ノードN1と電源PSとの間に接続される。スイッチング素子SWHは、例えば、NMOSトランジスタであり、ソースがノードN1に接続され、ドレインが電源PSに接続される。スイッチング素子SWHは、ソース、ドレイン、ゲートが、それぞれ、ドライバ回路10におけるハイサイドのドライバ回路14-1に接続される。
【0016】
ローサイドのスイッチング素子SWLは、ノードN1と基準電位(例えば、グランド電位)との間に接続される。スイッチング素子SWLは、例えば、NMOSトランジスタであり、ソースが基準電位(例えば、グランド電位)に接続され、ドレインがノードN1に接続される。スイッチング素子SWLは、ソース、ドレイン、ゲートが、それぞれ、ドライバ回路10におけるローサイドのドライバ回路14-2に接続される。
【0017】
なお、各スイッチング素子SWH,SWLは、NMOSトランジスタである代わりにPMOSトランジスタであってもよい。例えば、端子VgHとPMOSトランジスタのゲートとの間にインバータを挿入して端子VgHからの信号の論理を反転させれば同様の動作を実現可能である。あるいは、各スイッチング素子SWH,SWLは、NMOSトランジスタである代わりにIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)であってもよい。この場合、ドレインをコレクタ、ソースをエミッタと読み替えることで上記の説明を流用できる。
【0018】
スイッチング素子SWHは、ソースがドライバ回路10のノードVsHを介してドライバ回路14-1の監視回路12に接続され、ドレインがドライバ回路10のノードVdHを介してドライバ回路14-1の監視回路12に接続され、ゲートがドライバ回路10のノードVgHを介してドライバ回路14-1の駆動回路11に接続される。
【0019】
スイッチング素子SWLは、ソースがドライバ回路10のノードVsHを介してドライバ回路14-2の監視回路12に接続され、ドレインがドライバ回路10のノードVdHを介してドライバ回路14-2の監視回路12に接続され、ゲートがドライバ回路10のノードVgHを介してドライバ回路14-2の駆動回路11に接続される。
【0020】
駆動回路11は、電流源111、スイッチ112、スイッチ113、電流源114を有する。
【0021】
電流源111は、一端が電源端子VDDを介して外部の電源Eに接続され、他端がスイッチ112の一端に接続され、制御端子が制御回路13に接続されている。電源Eは、直流電圧Eを供給する。
【0022】
スイッチ112は、一端が電流源111に接続され、他端がノード115及び端子VgHを介してスイッチング素子SWのゲートに接続されている。
【0023】
スイッチ113は、一端が電流源114に接続され、他端がノード115及び端子VgHを介してスイッチング素子SWのゲートに接続されている。
【0024】
電流源114は、一端がスイッチ113の一端に接続され、他端が基準電位(例えば、グランド電位)に接続され、制御端子が制御回路13に接続されている。電流源114の他端は、基準端子GNDを介して外部の基準電位(例えば、グランド電位)に接続されてもよい。
【0025】
ハイサイドのドライバ回路14-1の駆動回路11において、スイッチ112がオン状態に維持されスイッチ113がオフ状態に維持されることで、電流源111が電流をスイッチング素子SWHのゲートに流し出し、スイッチング素子SWHのゲートに電荷を充電させる。駆動回路11では、スイッチ112がオフ状態に維持されスイッチ113がオン状態に維持されることで、電流源114で電流をスイッチング素子SWHのゲートから吸い込み、スイッチング素子SWHのゲートから電荷を放電させる。すなわち、駆動回路11は、電流源111又は電流源114をスイッチング素子SWHのゲートに接続してスイッチング素子SWHを駆動する。
【0026】
ローサイドのドライバ回路14-2の駆動回路11において、スイッチ112がオン状態に維持されスイッチ113がオフ状態に維持されることで、電流源111が電流をスイッチング素子SWLのゲートに流し出し、スイッチング素子SWLのゲートに電荷を充電させる。駆動回路11では、スイッチ112がオフ状態に維持されスイッチ113がオン状態に維持されることで、電流源114で電流をスイッチング素子SWLのゲートから吸い込み、スイッチング素子SWLのゲートから電荷を放電させる。すなわち、駆動回路11は、電流源111又は電流源114をスイッチング素子SWLのゲートに接続してスイッチング素子SWLを駆動する。
【0027】
監視回路12は、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsの変化開始から変化終了までの時間を監視する。監視回路12は、差分回路121、比較回路122、比較回路123、測定回路124を有する。
【0028】
差分回路121は、スイッチング回路20と比較回路122、比較回路123との間に接続される。差分回路121は、スイッチング素子SWのソース電圧とドレイン電圧とをそれぞれ受け、ソース電圧とドレイン電圧との差分を取ることでスイッチング素子SWの両端電圧Vdsを求める。差分回路121は、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsを比較回路122、比較回路123へそれぞれ供給する。
【0029】
差分回路121は、
図2に示すように構成され得る。
図2は、差分回路121及び2つの比較回路122,123の構成を示す回路図である。差分回路121は、差動増幅器121a,121b及び抵抗素子R1~R10を有する。
【0030】
差動増幅器121aは、反転入力端子が抵抗素子R3、端子VdH(又はVdL)経由でスイッチング素子SWのドレインに接続されるとともに抵抗素子R2を介して基準電位に接続される。非反転入力端子が、抵抗素子R4、端子VsH(又はVsL)経由でスイッチング素子SWのソースに接続されるとともに、抵抗素子R5を介してバイアス電圧VBに接続され、抵抗素子R6を介して基準電位に接続される。出力端子が、比較回路122に接続されるとともに、抵抗素子R1を介して反転入力端子に接続される。これにより、差動増幅器121aは、スイッチング素子SWのドレイン電圧とソース電圧との差分を取って両端電圧Vdsとして比較回路122へ出力する。
【0031】
差動増幅器121bは、反転入力端子が抵抗素子R8、端子VsH(又はVsL)経由でスイッチング素子SWのソースに接続されるとともに、抵抗素子R8,R4,R5を介してバイアス電圧VBに接続され、抵抗素子R8,R4,R6を介して基準電位に接続される。非反転入力端子が、抵抗素子R9、端子VdH(又はVdL)経由でスイッチング素子SWのドレインに接続されるとともに抵抗素子R10を介して基準電位に接続される。出力端子が、比較回路123に接続されるとともに、抵抗素子R7を介して反転入力端子に接続される。これにより、差動増幅器121bは、スイッチング素子SWのドレイン電圧とソース電圧との差分を取って両端電圧Vdsとして比較回路123へ出力する。
【0032】
なお、抵抗素子R1~R10は、抵抗値が互に均等でもよい。
【0033】
図1に示す比較回路122は、差分回路121と測定回路124との間に接続される。比較回路122は、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsを差分回路121から受ける。比較回路122には、閾値Vth1が予め設定されている。閾値Vth1は、スイッチング素子SWの両端電圧VdsのHレベルに対応する。比較回路122は、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsを閾値Vth1と比較する。これにより、比較回路122は、スイッチング素子SWの両端電圧VdsのHレベルからLレベルへの遷移開始タイミング又はLレベルからHレベルへの遷移終了タイミングで比較結果を反転させる。
【0034】
比較回路122は、
図2に示すように構成され得る。比較回路122は、コンパレータ122a及びラッチ回路122bを有する。コンパレータ122aは、非反転入力端子が差分回路121に接続され、反転入力端子が閾値Vth1に接続される。コンパレータ122aは、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsを差分回路121から受ける。コンパレータ122aは、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsが閾値Vth1より高ければHレベルを出力し、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsが閾値Vth1より低ければLレベルを出力する。
【0035】
図1に示す比較回路123は、差分回路121と測定回路124との間に接続される。比較回路123は、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsを差分回路121から受ける。比較回路123には、閾値Vth2が予め設定されている。閾値Vth2は、閾値Vth1より低い。閾値Vth2は、スイッチング素子SWの両端電圧VdsのLレベルに対応する。比較回路123は、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsを閾値Vth2と比較する。これにより、比較回路123は、スイッチング素子SWの両端電圧VdsのLレベルからHレベルへの遷移開始タイミング又はHレベルからLレベルへの遷移終了タイミングで比較結果を反転させる。
【0036】
比較回路123は、
図2に示すように構成され得る。比較回路123は、コンパレータ123a及びラッチ回路123bを有する。コンパレータ123aは、反転入力端子が差分回路121に接続され、非反転入力端子が閾値Vth2に接続される。コンパレータ123aは、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsを差分回路121から受ける。コンパレータ123aは、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsが閾値Vth2より高ければLレベルを出力し、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsが閾値Vth2より低ければHレベルを出力する。
【0037】
図1に示す測定回路124は、比較回路122の比較結果と比較回路123の比較結果とに応じて、スイッチング素子SWの両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を測定する。スイッチング素子SWの両端電圧VdsがHレベルからLレベルへ遷移すべき場合、測定回路124は、比較回路122の比較結果が反転するタイミングから比較回路123の比較結果が反転するタイミングまでの時間Tfallを測定する。スイッチング素子SWの両端電圧VdsがLレベルからHレベルへ遷移すべき場合、測定回路124は、比較回路123の比較結果が反転するタイミングから比較回路122の比較結果が反転するタイミングまでの時間Triseを測定する。測定回路124は、測定結果を制御回路13へ供給する。
【0038】
測定回路124は、
図3に示すように構成され得る。
図3は、測定回路124の構成を示す回路図である。測定回路124は、スイッチ124e~124h、インバータ124i,124j、フリップフロップ124a、フリップフロップ124b、フリップフロップ124c、カウンタ124dを有する。
【0039】
スイッチ124eは、一端が比較回路122に接続され、他端がインバータ124iに接続される。インバータ124iは、入力ノードがスイッチ124e,124gに接続され、出力ノードがフリップフロップ124aのクロック端子CKに接続される。スイッチ124fは、一端が比較回路122に接続され、他端がインバータ124jに接続される。スイッチ124gは、一端が比較回路123に接続され、他端がインバータ124iに接続される。スイッチ124hは、一端が比較回路123に接続され、他端がインバータ124jに接続される。インバータ124jは、入力ノードがスイッチ124f,124hに接続され、出力ノードがフリップフロップ124aのリセット端子Rに接続される。
【0040】
フリップフロップ124aは、スイッチ124e~124hとフリップフロップ124bとの間に配される。フリップフロップ124aは、データ入力端子Dが電源電位VCCに接続され、出力端子Qがフリップフロップ124bに接続される。
【0041】
スイッチング素子SWの両端電圧VdsがHレベルからLレベルへ遷移すべき場合、スイッチ124e,124hがオン状態に維持され、スイッチ124f,124gがオフ状態に維持される。これにより、比較回路122の比較結果がインバータ124i経由でフリップフロップ124aのクロック端子CKに供給され、比較回路123の比較結果がインバータ124j経由でリセット端子Rに供給される。
【0042】
例えば、フリップフロップ124aは、比較回路122の比較結果がHレベルからLレベルへ変化するタイミングでその出力がLレベルからHレベルに遷移する。その後、フリップフロップ124aは、その出力をHレベルに維持しているが、比較回路123の比較結果がLレベルからHレベルへ変化するタイミングでリセットされその出力がHレベルからLレベルに遷移する。
【0043】
スイッチング素子SWの両端電圧VdsがLレベルからHレベルへ遷移すべき場合、スイッチ124e,124hがオフ状態に維持され、スイッチ124f,124gがオン状態に維持される。これにより、比較回路123の比較結果がフリップフロップ124aのクロック端子CKに供給され、比較回路122の比較結果がリセット端子Rに供給される。
【0044】
例えば、フリップフロップ124aは、比較回路123の比較結果がHレベルからLレベルへ変化するタイミングでその出力がLレベルからHレベルに遷移する。その後、フリップフロップ124aは、その出力をHレベルに維持しているが、比較回路122の比較結果がLレベルからHレベルへ変化するタイミングでリセットされその出力がHレベルからLレベルに遷移する。
【0045】
フリップフロップ124bは、フリップフロップ124aとフリップフロップ124cとの間に配される。フリップフロップ124bは、データ入力端子Dがフリップフロップ124aの出力端子Qに接続され、クロックCK端子CKでクロック信号CKを受け、出力端子Qがフリップフロップ124cに接続される。
【0046】
フリップフロップ124cは、フリップフロップ124bとカウンタ124dとの間に配される。フリップフロップ124cは、データ入力端子Dがフリップフロップ124bの出力端子Qに接続され、クロック端子CKでクロック信号CKを受け、出力端子Qがカウンタ124dに接続される。
【0047】
カウンタ124dは、フリップフロップ124cと制御回路13との間に配される。カウンタ124dは、イネーブル端子ENがフリップフロップ124cの出力端子Qに接続され、クロック端子CKでクロック信号CKを受け、リセット端子Rでリセット信号RSTを受け、出力端子Qが制御回路13に接続される。
【0048】
カウンタ124dは、イネーブル端子ENで受けるイネーブル信号がHレベルに維持される期間においてクロック端子CKで受けるクロック信号のパルス数(クロック数)をカウントしカウント値を監視された時間として出力端子Qから出力する。
【0049】
制御回路13は、監視された時間を監視回路12から受ける。制御回路13は、監視回路12で監視された時間に応じてスイッチング素子SWの両端電圧のスルーレートが目標値に近づくように電流源111,114の電流値を制御する。
【0050】
例えば、スイッチング素子SWの両端電圧VdsがHレベルからLレベルへ遷移すべき場合、カウンタ124dのカウント値をCV1、クロック信号CKの周期をTckとすると、制御回路13は、次の数式1により両端電圧Vdsの立ち下がり時間Tfallを求めることができる。
Tfall=CV1×Tck・・・数式1
【0051】
このとき、比較回路122の閾値をVth1、比較回路123の閾値をVth2とすれば、制御回路13は、次の数式2により、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsの立ち下がりのスルーレートSRfallを求めることができる。
SRfall=(Vth1-Vth2)/Tfall
=(Vth1-Vth2)/(CV1×Tck)・・・数式2
【0052】
制御回路13は、スルーレートSRfallが目標値SRtより大きければ、偏差(SRfall-SRt)に応じて電流源111の電流値を減らし、スルーレートSRfallが目標値SRtより小さければ、偏差(SRfall-SRt)に応じて電流源111の電流値を増やす。電流源111の現在の電流値をI21とし、補正量をΔI21とすると、制御回路13は、次の数式3で表されるように、電流源111の電流I111の値を制御できる。
I111=I21+ΔI21
=I21+k1×(SRfall-SRt)・・・数式3
【0053】
数式3において、k1は偏差に対する補正量ΔIの比例係数であり、例えば負の値である。制御回路13は、電流源111の電流I111を数式3で表される値に制御するための制御信号を生成して電流源111の制御ノードへ供給する。これにより、スルーレートSRfallが目標値SRtに近づくように電流源111の電流値が制御され得る。
【0054】
あるいは、スイッチング素子SWの両端電圧VdsがLレベルからHレベルへ遷移すべき場合、カウンタ124dのカウント値をCV2、クロック信号CKの周期をTckとすると、制御回路13は、次の数式4により両端電圧Vdsの立ち上がり時間Triseを求めることができる。
Trise=CV2×Tck・・・数式4
【0055】
このとき、比較回路122の閾値をVth1、比較回路123の閾値をVth2とすれば、制御回路13は、次の数式5により、スイッチング素子SWの両端電圧Vdsの立ち上がりのスルーレートSRriseを求めることができる。
SRrise=(Vth1-Vth2)/Trise
=(Vth1-Vth2)/(CV2×Tck)・・・数式5
【0056】
制御回路13は、スルーレートSRriseが目標値SRtより大きければ、偏差(SRrise-SRt)に応じて電流源114の電流値を減らし、スルーレートSRriseが目標値SRtより小さければ、偏差(SRrise-SRt)に応じて電流源114の電流値を増やす。電流源114の現在の電流値をI22とし、補正量をΔI22とすると、制御回路13は、次の数式6で表されるように、電流源114の電流I114の値を制御できる。
I114=I22+ΔI22
=I22+k2×(SRrise-SRt)・・・数式6
【0057】
数式6において、k2は偏差に対する補正量の比例係数であり、例えば負の値である。制御回路13は、電流源114の電流I114を数式6で表される値に制御するための制御信号を生成して電流源114の制御ノードへ供給する。これにより、スルーレートSRriseが目標値SRtに近づくように電流源114の電流値が制御され得る。
【0058】
次に、ドライバ回路10を含む電力変換システム1の動作について
図4~
図6を用いて説明する。
図4は、ドライバ回路10を含む電力変換システム1の動作を示す波形図である。
図5は、
図4の一点鎖線で囲ったA部分を時間方向に拡大した図である。
図6は、
図4の二点鎖線で囲ったB部分を時間方向に拡大した図である。
【0059】
ドライバ回路10は、スイッチング回路20を周期的にスイッチング動作させる。ドライバ回路10は、
図4に示す(High side ON)の動作と(Low side ON)の動作とを交互に繰り返し行う。(High side ON)の動作では、ドライバ回路10は、ローサイドのスイッチング素子SWLをオフさせ、ハイサイドのスイッチング素子SWHをオンさせて駆動する。(Low side ON)の動作では、ドライバ回路10は、ハイサイドのスイッチング素子SWHをオフさせ、ローサイドのスイッチング素子SWLをオンさせて駆動する。以下では、ハイサイドのスイッチング素子SWHの駆動を中心に説明する。
【0060】
図4に示すタイミングt1において、信号PWM_UがLレベルからHレベルへ遷移する。これに応じて、(High side ON)の動作が開始される。このとき、信号High_side_U,Low_side_Uは、いずれもLレベルに維持される。これに応じて、ハイサイドのスイッチング素子SWH、ローサイドのスイッチング素子SWLがいずれもオフ状態に維持されている。
【0061】
タイミングt2において、信号High_side_UがLレベルからHレベルへ遷移する。これに応じて、ハイサイドのドライバ回路14-1における監視回路12及び制御回路13が活性化される。このとき、タイミングt2の直前の期間がデッドタイムとして確保される。
【0062】
タイミングt3において、ハイサイドのドライバ回路14-1におけるスイッチ112がオンし、スイッチ113がオフする。制御回路13が目標値をI11として電流源111を制御する。これにより、
図5に示すように、電流源111の電流I
114がゼロからI11まで増加し、I11に維持される。これに応じて、スイッチング素子SWHのゲートに流れ込む電流Ig_High_side_UがゼロからI11まで増加し、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsが徐々に増加する。その後、電流Ig_High_side_UがI11に維持されるが、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsが増加し続ける。なお、電流Ig_High_side_Uは、ゲートヘ流れ込む方向を正とし、ゲートから流れ出す方向を負とする。I11は、ゲートヘ流れ込む方向の電流であり、正の電流である。
【0063】
タイミングt4において、制御回路13は、目標値をI11からI21に変更し、I21を目標値として電流源111を制御する。I21の振幅絶対値は、I11の振幅絶対値より小さい。I21は、前回の波形立ち下がり時の電流量I21’に前回求められた補正量ΔI21’が加算された値である。これに応じて、スイッチング素子SWHのゲートに流れ込む電流Ig_High_side_UがI11からI21に減少し、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsがより緩やかに増加する。これに応じて、スイッチング素子SWHがオンし始め、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsが減少し始める。その後、電流Ig_High_side_UがI12に維持されるが、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsが緩やかに増加し続け、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsが減少し続ける。
【0064】
このとき、監視回路12は、両端電圧Vdsの変化開始を監視している。差分回路121は、スイッチング素子SWHの一端の電圧と他端の電圧との差分電圧を求める。比較回路122は、差分電圧と閾値Vth1とを比較し、比較結果Vds_comp1としてHレベルを出力している。比較回路123は、差分電圧と閾値Vth2とを比較し、比較結果Vds_comp2としてLレベルを出力している。
【0065】
タイミングt5において、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsが閾値Vth1を下回り、比較回路122の比較結果Vds_comp1が反転する。これに応じて、監視回路12は、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsの変化開始を検知し、時間Tfallの監視を開始する。すなわち、測定回路124は、比較回路123の比較結果Vds_comp2がLレベルに維持された状態で比較回路122の比較結果Vds_comp1がHレベルからLレベルに遷移したことに応じて、カウンタ124d(
図3参照)のイネーブル信号をHレベルにする。これにより、測定回路124は、カウンタ124dによる時間Tfallのカウント動作を開始する。
【0066】
タイミングt6において、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsが閾値Vth2を下回り、比較回路123の比較結果Vds_comp2が反転する。これに応じて、監視回路12は、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsの変化終了を検知し、時間Tfallの監視を終了する。すなわち、測定回路124は、比較回路122の比較結果Vds_comp1がLレベルに維持された状態で比較回路123の比較結果Vds_comp2がLレベルからHレベルに遷移したことに応じて、カウンタ124d(
図3参照)のイネーブル信号をLレベルにする。これにより、測定回路124は、カウンタ124dによる時間Tfallのカウント動作を終了し、カウント値を制御回路13へ出力する。
【0067】
制御回路13は、カウント値に応じて時間Tfallを求め、時間Tfallに応じてスルーレートSRfallを計算し、スルーレートSRfallの目標値SRtから偏差を求め、偏差に応じて補正量ΔI21を求める。この補正量ΔI21は、次回の波形立ち下がり時の制御に反映される。
【0068】
タイミングt7において、制御回路13は、目標値をI21からI31に変更し、I31を目標値として電流源111を制御する。I31の振幅絶対値は、I21の振幅絶対値より大きい。これに応じて、スイッチング素子SWHのゲートに流れ込む電流Ig_High_side_UがI21からI31に増加し、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsがより急峻に増加する。これに応じて、スイッチング素子SWHがオン状態に維持され、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsがゼロに維持される。その後、電流Ig_High_side_UがI31に維持されるが、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsが増加し続け、所定値に維持される。このとき、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsはゼロに維持されている。
【0069】
タイミングt8において、制御回路13は、目標値をI31からゼロに変更し、スイッチ112をオフさせる。
【0070】
図5に示すように、制御回路13は、タイミングt3~t4の期間TP11に電流源111の電流値がI11になるように制御し、タイミングt4~t7の期間TP21に電流源111の電流値がより小さく且つスルーレート制御の補正量が反映されたI21になるように制御し、タイミングt7~t8の期間TP31に電流源111の電流値がより大きいI31になるように制御する。これにより、期間TP21におけるスルーレート制御を適切化しつつ期間TP11,TP31における駆動能力の確保を図ることができる。
【0071】
図4に示すタイミングt9において、信号PWM_UがHレベルからLレベルへ遷移する。これに応じて、(Low side ON)の動作が開始される。
【0072】
タイミングt10において、ハイサイドのドライバ回路14-1におけるスイッチ112がオフ状態に維持されたままスイッチ113がオンする。制御回路13が目標値をI12として電流源114を制御する。これにより、
図6に示すように、電流源114の電流I
114がゼロからI12まで減少し、I12に維持される。I12は、ゲートから流れ出す方向の電流であり、負の電流である。これに応じて、スイッチング素子SWHのゲートから流れ出す電流Ig_High_side_Uがゼロから112の絶対値まで減少し、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsが徐々に減少する。その後、電流Ig_High_side_UがI12に維持されるが、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsが減少し続ける。
【0073】
タイミングt11において、制御回路13は、目標値をI12からI22に変更し、I22を目標値として電流源114を制御する。I22の振幅絶対値は、I12の振幅絶対値より小さい。I22は、前回の波形立ち下がり時の電流量I22’に前回求められた補正量ΔI22’が加算された値である。これに応じて、スイッチング素子SWHのゲートから流れ出す電流Ig_High_side_UがI12の絶対値からI22の絶対値まで減少し、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsがより緩やかに減少する。これに応じて、スイッチング素子SWHがオフし始め、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsが増加し始める。その後、電流Ig_High_side_UがI22に維持されるが、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsが緩やかに減少し続け、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsが増加し続ける。
【0074】
このとき、監視回路12は、両端電圧Vdsの変化開始を監視している。差分回路121は、スイッチング素子SWHの一端の電圧と他端の電圧との差分電圧を求める。比較回路122は、差分電圧と閾値Vth1とを比較し、比較結果Vds_comp1としてLレベルを出力している。比較回路123は、差分電圧と閾値Vth2とを比較し、比較結果Vds_comp2としてHレベルを出力している。
【0075】
タイミングt12において、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsが閾値Vth2を上回り、比較回路123の比較結果Vds_comp2が反転する。これに応じて、監視回路12は、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsの変化開始を検知し、時間Triseの監視を開始する。すなわち、測定回路124は、比較回路122の比較結果Vds_comp1がLレベルに維持された状態で比較回路123の比較結果Vds_comp2がHレベルからLレベルに遷移したことに応じて、カウンタ124d(
図3参照)のイネーブル信号をHレベルにする。これにより、測定回路124は、カウンタ124dによる時間Triseのカウント動作を開始する。
【0076】
タイミングt13において、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsが閾値Vth1を上回り、比較回路122の比較結果Vds_comp1が反転する。これに応じて、監視回路12は、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsの変化終了を検知し、時間Triseの監視を終了する。すなわち、測定回路124は、比較回路123の比較結果Vds_comp2がLレベルに維持された状態で比較回路122の比較結果Vds_comp1がLレベルからHレベルに遷移したことに応じて、カウンタ124d(
図3参照)のイネーブル信号をLレベルにする。これにより、測定回路124は、カウンタ124dによる時間Triseのカウント動作を終了し、カウント値を制御回路13へ出力する。
【0077】
制御回路13は、カウント値に応じて時間Triseを求め、時間Triseに応じてスルーレートSRriseを計算し、スルーレートSRriseの目標値SRtから偏差を求め、偏差に応じて補正量ΔI22を求める。この補正量ΔI22は、次回の波形立ち上がり時の制御に反映される。
【0078】
タイミングt14において、制御回路13は、目標値をI22からI32に変更し、I32を目標値として電流源114を制御する。I32の振幅絶対値は、I22の振幅絶対値より大きい。これに応じて、スイッチング素子SWHのゲートから流れ出す電流Ig_High_side_UがI22の絶対値からI32の絶対値に増加し、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsがより急峻に減少しゼロになる。これに応じて、スイッチング素子SWHがオフ状態に維持され、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsが電源レベルに維持される。その後、電流Ig_High_side_UがI32に維持されるが、スイッチング素子SWHのゲート・ソース間電圧Vgsがゼロに維持される。このとき、スイッチング素子SWHの両端電圧Vdsは電源レベルに維持されている。
【0079】
タイミングt15において、制御回路13は、目標値をI32からゼロに変更し、スイッチ113をオフさせる。
【0080】
図6に示すように、制御回路13は、タイミングt10~t11の期間TP12に電流源114の電流値がI12になるように制御し、タイミングt11~t14の期間TP22に電流源114の電流値の絶対値がより小さく且つスルーレート制御の補正量が反映されたI22になるように制御し、タイミングt14~t15の期間TP32に電流源114の電流値がより絶対値の大きいI32になるように制御する。これにより、期間TP22におけるスルーレート制御を適切化しつつ期間TP12,TP32における駆動能力の確保を図ることができる。
【0081】
タイミングt16において、スイッチング素子SWHのオフ動作が完了しスイッチング素子SWHがオフ状態に維持されていることに応じて、信号Low_side_UがLベルからHレベルに遷移する。これに応じて、ローサイドのドライバ回路14-2における監視回路12及び制御回路13が活性化される。このとき、タイミングt16の直前の期間(例えば、t14~t16の期間)がデッドタイムとして確保される。
【0082】
以上のように、実施形態では、ドライバ回路10において、スイッチング素子SWの両端電圧の変化開始から変化終了までの時間を監視し、監視された時間に応じてスイッチング素子SWの両端電圧のスルーレートが目標値に近づくように電流源111,114の電流値を制御する。これにより、スイッチング素子の選定/ばらつき、また電流/電圧/温度依存性で容量値等特性が変化した場合でも、スイッチング素子SWの両端電圧の遷移時のスルーレートを適正範囲に制御でき、スイッチング素子を適切に駆動できる。したがって、EMIノイズを許容範囲内に収めることができ、電力損失を要求レベル以下に抑制できる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 電力変換システム、10 ドライバ回路、11 駆動回路、12 監視回路、13 制御回路、14,14-1,14-2 ドライバ回路、20 スイッチング回路。