(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141320
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20230928BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230928BHJP
G03G 5/05 20060101ALI20230928BHJP
G03G 5/10 20060101ALI20230928BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B05C5/02
B05D1/26 Z
G03G5/05
G03G5/10
G03G5/10 B
B05D7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047570
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 義之
【テーマコード(参考)】
2H068
4D075
4F041
【Fターム(参考)】
2H068AA52
2H068AA54
2H068AA59
2H068EA16
4D075AC02
4D075AC78
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC94
4D075CA48
4D075DA03
4D075DA15
4D075DA20
4D075DB01
4D075DB07
4D075DC19
4D075EA10
4D075EB38
4F041AA04
4F041AB01
4F041CA02
4F041CA13
4F041CA16
4F041CA23
4F041CA28
(57)【要約】
【課題】円筒体の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制されると共に、円筒体の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される塗布装置を得る。
【解決手段】塗布装置10は、上部開口部25と下部開口部28とを備え、塗布液Lが保持されると共に、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させることにより、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する塗布液保持部12と、塗布液保持部12に塗布液Lを供給する循環部16と、塗布液保持部16に対して円筒体100を上下方向に相対移動させる移動装置80と、を有する。循環部16と移動装置80とは、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vが10mm/s以上200mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口部と下部開口部とを備え、塗布液が保持されると共に、前記上部開口部と前記下部開口部に円筒体を貫通させ、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させることにより、前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する塗布液保持部と、
前記塗布液保持部に前記塗布液を供給する供給部と、
前記塗布液保持部に対して前記円筒体を上下方向に相対移動させる移動部と、
を備え、
前記供給部と前記移動部とは、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させるときに、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vが10mm/s以上200mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている塗布装置。
【請求項2】
前記供給部と前記移動部とは、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させるときに、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vが80mm/s以上130mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記供給部と前記移動部とは、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させるときに、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vが100mm/s以上110mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記移動部は、前記塗布液保持部に対して前記円筒体を上下方向下方側に相対移動させてから前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させる構成であり、
前記供給部と前記移動部とは、前記円筒体を上下方向下方側に相対移動させるときに、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vが10mm/s以上200mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記移動部は、前記塗布液保持部の上下方向の位置を変えずに前記円筒体を上下方向に移動させる請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布液保持部の内部には、前記円筒体が貫通され、前記円筒体との相対移動に伴って前記塗布液保持部で保持されている前記塗布液が上方から流入して下方から流出する環状体であって、前記塗布液保持部に対して前記相対移動の方向と交差する設置面に沿って相対変位可能に設置されている前記環状体を有する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の塗布装置を用いて塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記円筒体の下部を前記塗布液保持部における前記上部開口部と前記下部開口部に貫通させ、前記塗布液保持部に前記供給部から前記塗布液を供給する供給工程と、
前記円筒体を前記塗布液保持部に対して上下方向下方側に相対移動させ、前記円筒体の上部を前記塗布液保持部と対向する位置に配置する第1移動工程と、
前記円筒体を前記塗布液保持部に対して上下方向上方側に相対移動させ、かつ前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vを10mm/s以上200mm/s以下に設定し、前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する第2移動工程と、
を有する塗布方法。
【請求項8】
前記第1移動工程では、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vを10mm/s以上200mm/s以下に設定する請求項7に記載の塗布方法。
【請求項9】
前記円筒体は、円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に無端ベルト状部材を巻き付けたものである請求項7又は請求項8に記載の塗布方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の塗布方法を用いて感光体を製造する感光体の製造方法であって、
前記円筒体は、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものであり、
前記塗布液は、感光材料である感光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、塗液供給機構と円形開口部を有する塗液保持部材とを有し、開口部に円筒体を挿入し、円筒体を塗液保持部材に対して相対的に鉛直下方に移動させることにより、円筒体の外周面に塗液を塗布する塗布装置において、塗液保持部材が円筒体の半径方向に移動可能に保持され、かつ、円形開口部が塗液かきとり部よりなる塗布装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が10mm/sより小さい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が200mm/sより大きい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される塗布装置、塗布方法、及び感光体の製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に係る塗布装置は、上部開口部と下部開口部とを備え、塗布液が保持されると共に、前記上部開口部と前記下部開口部に円筒体を貫通させ、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させることにより、前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する塗布液保持部と、前記塗布液保持部に前記塗布液を供給する供給部と、前記塗布液保持部に対して前記円筒体を上下方向に相対移動させる移動部と、を備え、前記供給部と前記移動部とは、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させるときに、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vが10mm/s以上200mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。
【0006】
第2態様に係る塗布装置は、第1態様に記載の塗布装置において、前記供給部と前記移動部とは、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させるときに、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vが80mm/s以上130mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。
【0007】
第3態様に係る塗布装置は、第2態様に記載の塗布装置において、前記供給部と前記移動部とは、前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させるときに、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vが100mm/s以上110mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。
【0008】
第4態様に係る塗布装置は、第1態様から第3態様までのいずれか1つの態様に記載の塗布装置において、前記移動部は、前記塗布液保持部に対して前記円筒体を上下方向下方側に相対移動させてから前記円筒体を上下方向上方側に相対移動させる構成であり、前記供給部と前記移動部とは、前記円筒体を上下方向下方側に相対移動させるときに、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vが10mm/s以上200mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。
【0009】
第5態様に係る塗布装置は、第1態様から第4態様までのいずれか1つの態様に記載の塗布装置において、前記移動部は、前記塗布液保持部の上下方向の位置を変えずに前記円筒体を上下方向に移動させる。
【0010】
第6態様に係る塗布装置は、第1態様から第5態様までのいずれか1つの態様に記載の塗布装置において、前記塗布液保持部の内部には、前記円筒体が貫通され、前記円筒体との相対移動に伴って前記塗布液保持部で保持されている前記塗布液が上方から流入して下方から流出する環状体であって、前記塗布液保持部に対して前記相対移動の方向と交差する設置面に沿って相対変位可能に設置されている前記環状体を有する。
【0011】
第7態様に係る塗布方法は、第1態様から第6態様までのいずれか1つの態様に記載の塗布装置を用いて塗布液を塗布する塗布方法であって、前記円筒体の下部を前記塗布液保持部における前記上部開口部と前記下部開口部に貫通させ、前記塗布液保持部に前記供給部から前記塗布液を供給する供給工程と、前記円筒体を前記塗布液保持部に対して上下方向下方側に相対移動させ、前記円筒体の上部を前記塗布液保持部と対向する位置に配置する第1移動工程と、前記円筒体を前記塗布液保持部に対して上下方向上方側に相対移動させ、かつ前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vを10mm/s以上200mm/s以下に設定し、前記円筒体の外周面に前記塗布液を塗布する第2移動工程と、を有する。
【0012】
第8態様に係る塗布方法は、第7態様に記載の塗布方法において、前記第1移動工程では、前記円筒体の外周面を伝って前記塗布液が流下する前記塗布液の相対速度Vを10mm/s以上200mm/s以下に設定する。
【0013】
第9態様に係る塗布方法は、第7態様又は第8態様に記載の塗布方法において、前記円筒体は、円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に無端ベルト状部材を巻き付けたものである。
【0014】
第10態様に係る感光体の製造方法は、第7態様から第9態様までのいずれか1つの態様に記載の塗布方法を用いて感光体を製造する感光体の製造方法であって、前記円筒体は、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものであり、前記塗布液は、感光材料である。
【発明の効果】
【0015】
第1態様に係る塗布装置によれば、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が10mm/sより小さい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が200mm/sより大きい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される。
【0016】
第2態様に係る塗布装置によれば、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が80mm/sより小さい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が130mm/sより大きい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される。
【0017】
第3態様に係る塗布装置によれば、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が100mm/sより小さい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が110mm/sより大きい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される。
【0018】
第4態様に係る塗布装置によれば、円筒体を上下方向下方側に相対移動させるときに、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が10mm/sより小さい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が200mm/sより大きい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される。
【0019】
第5態様に係る塗布装置によれば、円筒体の上下方向の位置を変えずに塗布液保持部を上下方向に移動させる構成と比較して、塗布装置の構造が簡単になる。
【0020】
第6態様に係る塗布装置によれば、環状体が設置面に固定されている場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の膜厚ムラが抑制される。
【0021】
第7態様に係る塗布方法によれば、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が10mm/sより小さい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が200mm/sより大きい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される。
【0022】
第8態様に係る塗布方法によれば、第1移動工程において、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が10mm/sより小さい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が200mm/sより大きい場合と比較して、円筒体の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される。
【0023】
第9態様に係る塗布方法によれば、円筒状部材又は無端ベルト状部材の外周面に塗布液を塗布する際に、円筒状部材又は無端ベルト状部材の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒状部材又は無端ベルト状部材の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される。
【0024】
第10態様に係る感光体の製造方法によれば、感光体の外周面に塗布液を塗布する際に、感光体の外周面の塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、感光体の外周面の塗布膜の塗布ムラの発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係る塗布装置の全体構成の概略を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る塗布装置に用いられる塗布液保持部の一部を拡大した状態で示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る塗布装置に用いられる塗布液保持部から円筒体に塗布液が塗布されるときの塗布液の流れを示す断面図である。
【
図4】(A)は、第1実施形態に係る塗布装置に用いられる環状体を示す斜視図であり、(B)は、環状体の一部を切断した状態で示す斜視図である。
【
図5】(A)は、第1実施形態に係る塗布装置の塗布液保持部に円筒体を挿入する前の状態を示す構成図であり、(B)は、塗布装置の塗布液保持部に円筒体を挿入して下降させた状態を示す構成図であり、(C)は、塗布液保持部に対して円筒体を上下方向上側に移動させる途中の状態を示す構成図である。
【
図6】(A)は、円筒体の外周面に塗布液による塗膜が形成された円筒体の一部を示す側面図であり、(B)は、(A)中の5B-5B線に沿った断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る塗布装置に用いられる環状体付近の構成を示す断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る塗布装置に用いられる環状体の一部を切断した状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の技術を実施するための形態について説明する。以下の説明では、図面において適宜示される矢印UPで示す方向を装置上下方向上方側とする。
【0027】
〔第1実施形態〕
<塗布装置の全体構成>
図1には、第1実施形態に係る塗布装置10の一例が断面図にて示されている。
【0028】
図1に示されるように、塗布装置10は、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する装置である。塗布装置10は、塗布液Lが保持される塗布液保持部12と、塗布液保持部12の内部に配置された環状体32と、を備えている。また、塗布装置10は、塗布液保持部12側から流下した塗布液Lを収容する容器14と、容器14の内部の塗布液Lを塗布液保持部12に循環させる循環部16と、を備えている。循環部16は、塗布液保持部12に塗布液Lを供給する供給部の一例である。また、塗布装置10は、塗布液保持部12を支持する筒状の筐体20を備えている。さらに、塗布装置10は、塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向に相対移動させる移動装置80を備えている。移動装置80は、移動部の一例である。
【0029】
(円筒体)
円筒体100は、例えば、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものである。円筒体100を構成する円筒状部材又は無端ベルト状部材は、例えば、電子写真用の感光体基体などである。また、例えば、円筒体100として、電子写真用の感光体基体を用いる場合、塗布液Lは、感光材料を含有している液体などが用いられる。本実施形態では、塗布装置10により、円筒体100を構成する円筒状部材又は無端ベルト状部材に塗布液Lが塗布される。塗布液Lとして、感光材料を含有している液体を用いることで、電子写真用の感光体を製造することができる。
【0030】
(筐体)
図1に示されるように、筐体20は、円筒状の部材で構成されており、筐体20の軸方向が上下方向となるように配置されている。一例として、例えば、筐体20は、上下方向に沿って配置された円筒部20Aを備えている。
【0031】
円筒部20Aの上端部には、半径方向内側に延びた上壁部21Bを備えており、上壁部21Bには、円形の開口21Cが形成されている。開口21Cの内径は、円筒体100の外径よりも大きい。上壁部21Bの開口21Cには、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。
【0032】
(塗布液保持部)
図1及び
図2に示されるように、塗布液保持部12は、循環部16から供給される塗布液Lを保持する機能を有する。塗布液保持部12は、ケース24を備えている。ケース24は、円筒部24Aと、円筒部24Aの上端部から半径方向内側に屈曲された上壁部24Bと、円筒部24Aの下部側に設けられたブロック部24Cと、を備えている。
【0033】
円筒部24Aにおける半径方向の一方側(
図1中の右側)の下部には、塗布液Lが流入される流入口24Eが設けられている。
【0034】
上壁部24Bには、円形状の上部開口部25が設けられている(
図2参照)。上部開口部25の内径は、円筒体100の外径よりも大きい。上壁部24Bの上部開口部25には、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。
【0035】
ブロック部24Cは、円筒部24Aの下端部と繋がる底壁部26Aと、底壁部26Aの半径方向内側端部から上方側に延びた筒状の内側壁部26Bと、を備えている(
図1参照)。内側壁部26Bの上部側には、半径方向内側に向かって上り勾配となるように配置された傾斜部27が形成されている。内側壁部26Bの傾斜部27の上端部には、円形状の下部開口部28が設けられている。下部開口部28の内径は、円筒体100の外径よりも大きい。また、下部開口部28の内径は、上部開口部25の内径の内径よりも小さい。ブロック部24Cの下部開口部28には、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。
【0036】
塗布液保持部12は、図示しない支持部により筐体20の内部の上下方向上部側に支持されている。
【0037】
ケース24は、円筒部24Aと上壁部24Bとブロック部24Cとを備えることで、ブロック部24Cの上方側が半径方向内側に開口している。ブロック部24Cの上部には、環状体32が相対変可能に配置される設置面30が設けられている。設置面30は、環状体32を相対変位可能に支持する機能を有している。設置面30は、平面状とされており、水平方向に沿って配置されている。
【0038】
ケース24の内部には、円筒部24Aとブロック部24Cとの間、及び円筒部24Aと環状体32との間に、塗布液Lが流れる流路34が設けられている。流路34における塗布液Lの流れ方向上流側の端部は、流入口24E(
図1参照)に繋がっている。
【0039】
塗布液保持部12における上部開口部25と下部開口部28には、円筒体100が貫通され、円筒体100は、移動装置80により塗布液保持部12に対して上下方向に相対移動する(
図5参照)。設置面30は、円筒体100の相対移動の方向と交差する方向に配置されている。
【0040】
(移動装置)
移動装置80は、塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向に相対移動させる機能を有する。第1実施形態では、移動装置80は、塗布液保持部12の上下方向の位置を変えずに、円筒体100を上下方向に移動させる。移動装置80は、例えば、ラック&ピニオン、アクチュエータ、又は油圧シリンダーなどで構成されている。一例として、移動装置80は、油圧シリンダーで構成されており、本体部82と、本体部82から下方側に延びると共に進退可能なロッド84と、を備えている。ロッド84の先端には、円筒体100を内周面側から把持する把持部86が設けられている。把持部86は、半径方向に拡径又は縮径する複数の把持面(図示省略)を備えており、複数の把持面が半径方向に拡径することで、円筒体100を内周面側から把持する。
【0041】
移動装置80では、本体部82に対してロッド84が進退することで、円筒体100が塗布液保持部12に対して上下方向に移動する。移動装置80による円筒体100の上下方向の移動動作については、後に説明する。
【0042】
(環状体)
図1及び
図2に示されるように、環状体32は、ケース24内の半径方向内側の開口された部分に設けられている。環状体32は、ケース24内におけるブロック部24Cの上部の設置面30の上方側に配置されている。環状体32は、ブロック部24Cの上部の設置面30に沿って相対変位可能に設置されている。
【0043】
環状体32の内径は、円筒体100の外径よりも大きい。環状体32の内部には、円筒体100が軸方向に貫通される構成とされている。すなわち、環状体32の内部には、塗布液保持部12における上部開口部25と下部開口部28とを貫通する円筒体100が貫通される。一例として、環状体32の内径は、下部開口部28の内径よりも小さい。環状体32の内周面32A側は、円筒体100が貫通する領域に露出している(
図2参照)。
【0044】
一例として、環状体32は、ブロック部24Cの上部の設置面30に塗布液Lが介在された状態で配置されている。環状体32は、設置面30に塗布液Lが介在された状態で設置面30に対して可動(本実施形態では摺動)可能とされている。本実施形態では、環状体32を直接駆動する駆動部は設けられておらず、環状体32が自律的に設置面30に対して相対的に摺動するようになっている。
【0045】
図2及び
図3に示されるように、塗布液保持部12における上壁部24Bの上部開口部25と環状体32との間には、周方向に沿ってスリット状の吐出部36が設けられている。吐出部36から塗布液Lが吐出される(
図3参照)。すなわち、吐出部36は、塗布液保持部12における円筒体100が貫通する領域と対向しており、円筒体100側に向かって塗布液Lが吐出される。
図3に示されるように、吐出部36から吐出された塗布液Lは、矢印Cに示すように上部開口部25から上壁部24Bの上面側に流れてオーバーフローすると共に、矢印Dに示すように環状体32と円筒体100の外周面100Aとの間を下方側に流れる。すなわち、環状体32は、円筒体100との相対移動に伴って塗布液保持部12で保持されている塗布液Lが上方から流入して下方から流出する構成とされている。
【0046】
図3及び
図4に示されるように、環状体32の内周面32Aには、上部側に配置されると共に上部開口部25側から下り勾配となる傾斜面33Aと、傾斜面33Aの下端部から上下方向に沿って真直ぐに配置されたストレート部33Bとが設けられている(
図2参照)。
【0047】
塗布装置10では、円筒体100を塗布液保持部12に対して上下方向上方側に相対移動させることで、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布されるようになっている(
図5(B)及び
図5(C)参照)。塗布液保持部12では、円筒体100の外周面100Aと環状体32の内周面32Aとの間に塗布液Lが流れることで、塗布液Lが流れる圧力により、環状体32が設置面30に対して相対変位する。このとき、円筒体100の外周面100Aと環状体32の内周面32Aとの隙間が周方向に沿って均一になるように、環状体32は、設置面30に対して相対変位するようになっている。
【0048】
図5には、塗布装置10の塗布液保持部12により円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する方法の一例が示されている。
図5では、円筒体100の移動位置及び塗布液Lの塗布状態を分かりやすくするため、移動装置80は図示を省略している。
【0049】
図5(A)に示されるように、移動装置80(
図1参照)により、塗布液保持部12の上方側から円筒体100を軸方向に沿って挿入する。円筒体100の下端部が塗布液保持部12に挿入された状態で、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給することで、塗布液保持部12の環状体32と円筒体100の外周面100Aとの間に塗布液Lを充填させる(供給工程)。そして、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給しながら、移動装置80(
図1参照)により、円筒体100を上下方向下方側(矢印A方向)に移動させる(第1移動工程)。このとき、塗布液Lが塗布液保持部12の上方からオーバーフローするように吐出部36から塗布液Lを吐出させると共に、塗布液Lが下部開口部28から下方に流出するようにしてもよい。
【0050】
図5(B)に示されるように、移動装置80(
図1参照)により円筒体100をさらに矢印A方向に下降させると共に、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給する。そして、円筒体100が最下部に到達することで、円筒体100の軸方向の上端部が塗布液保持部12と対向する位置に配置される。
【0051】
その後、
図5(C)に示されるように、円筒体100を塗布液保持部12に対して上下下方向上方側(矢印B方向)に移動させる(第2移動工程)。このとき、塗布液Lが塗布液保持部12の上方からオーバーフローするように吐出部36から塗布液Lを吐出させる。これにより、塗布液Lが下部開口部28から下方に流出し、上部開口部25より上方に位置する円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布されることで、円筒体100の外周面100Aに塗膜102が形成される(
図6(B)参照)。塗膜102は、塗布膜の一例である。なお、
図5は、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する方法の一例であり、塗布方法は変更可能である。
【0052】
図6(A)に示されるように、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布される過程では、円筒体100の外周面100Aに塗布された塗布液Lが円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する。
【0053】
また、
図1に示されるように、塗布装置10では、筐体20の内部における塗布液保持部12の下方側には、壁部50が設けられている。壁部50には、円筒体100が貫通する開口部50Aが設けられている。また、壁部50の斜め方向の下端部には、筐体20の内壁面と隣接する位置に配置された孔部50Bが設けられている。これにより、壁部50の孔部50Bから筐体20の内壁面を伝って塗布液Lが流下し、塗布液Lは容器14に回収される。
【0054】
(容器)
図1に示されるように、容器14は、筐体20の上下方向下部に設けられている。一例として、容器14は、筐体20の円筒部20Aの下端部に繋がっている。
【0055】
容器14は、円筒部20Aと繋がる円筒部14Aと、円筒部14Aの下部に配置されると共に底面が谷型に窪んだ凹部14Bと、を備えている。本実施形態では、凹部14Bの底面は、下側に向かって内径が徐々に縮小された逆円錐状に窪んだ形状とされている。
【0056】
凹部14Bは、円筒部14A側から半径方向の中心部に向かって下り勾配となるように傾斜した底面を備えており、凹部14Bの中心部が最下部とされている。容器14の凹部14Bには、塗布液保持部12側から流下した塗布液Lが溜まるようになっている。一例として、塗布液Lの液面L1は、凹部14Bの上部側に位置している。
【0057】
(循環部)
図1に示されるように、循環部16は、容器14の内部の塗布液Lを塗布液保持部12に供給する供給管60と、供給管60の途中に設けられたポンプ62と、を備えている。ポンプ62は、供給管60の塗布液Lを容器14側から塗布液保持部12側に移送する。
【0058】
供給管60における塗布液Lの流れ方向の上流側端部60Aは、容器14の下部に接続されている。本実施形態では、供給管60の上流側端部60Aは、凹部14Bの最下部である中心部に接続されている。また、供給管60における塗布液Lの流れ方向の下流側端部60Bは、筐体20を貫通し、塗布液保持部12の流入口24Eに接続されている。これにより、供給管60を流れる塗布液Lは、流入口24Eから流路34に供給される。なお、塗布液Lの流れ方向の上流側又は下流側は、「塗布液Lの流れ方向」を省略して、単に「上流側」又は「下流側」という場合がある。
【0059】
また、供給管60の途中には、塗布液Lの流れ方向におけるポンプ62の下流側に、塗布液Lの粘度を測定する粘度測定部66が設けられている。さらに、供給管60の途中には、塗布液Lの流れ方向における粘度測定部66の上流側に、塗布液Lに含まれる異物を除去するフィルタ68が設けられている。
【0060】
塗布装置10では、循環部16のポンプ62を駆動することで、容器14内の塗布液Lが供給管60を通って塗布液保持部12に供給される。塗布液保持部12では、塗布液Lが円筒体100の外周面100Aに塗布され、円筒体100の外周面100Aを伝って流下した塗布液Lは、容器14内に回収される。そして、容器14内の塗布液Lは、供給管60を通って塗布液保持部12に供給される。このため、循環部16により、容器14内の塗布液Lが塗布液保持部12に循環されるようになっている。
【0061】
(円筒体の外周面を流下する塗布液の相対速度)
循環部16と移動装置80とは、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに(すなわち第2移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vが10mm/s以上200mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。さらに、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに(すなわち第2移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vは、80mm/s以上130mm/s以下がより好ましく、100mm/s以上110mm/s以下がさらに好ましい。一例として、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに(すなわち第2移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vは、100mm/sに設定されている。
【0062】
例えば、移動装置80により円筒体100を上下方向上方側に移動速度が同等の場合、循環部16により塗布液保持部12に供給する塗布液Lの供給量が多くなると、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vが大きくなる。また、例えば、循環部16により塗布液保持部12に供給する塗布液Lの供給量が同等の場合、移動装置80により円筒体100を上下方向上方側に移動速度が小さくなると、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vが大きくなる。
【0063】
一例として、循環部16により塗布液保持部12に供給する塗布液Lの供給量は、0.3L/min以上0.5L/min以下に設定されている。また、一例として、移動装置80により円筒体100を上下方向上方側に移動させる移動速度は、2.0mm/s以上6.0mm/s以下に設定されている。
【0064】
また、第1実施形態では、
図5(A)~(C)に示されるように、移動装置80は、塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向下方側に相対移動させてから円筒体100を上下方向上方側に相対移動させる。
【0065】
循環部16と移動装置80とは、円筒体100を上下方向下方側に相対移動させるときに(すなわち第1移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vが10mm/s以上200mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されていることが好ましい。さらに、円筒体100を上下方向下方側に相対移動させるときに(すなわち第1移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vは、80mm/s以上130mm/s以下がより好ましく、100mm/s以上110mm/s以下がさらに好ましい。一例として、円筒体100を上下方向下方側に相対移動させるときに(すなわち第1移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vは、100mm/sに設定されている。
【0066】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0067】
塗布装置10では、上部開口部25と下部開口部28とを備えると共に塗布液Lが保持される塗布液保持部12が設けられている。塗布液保持部12では、上部開口部25と下部開口部28に円筒体100を貫通させ、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させることにより、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する。
【0068】
より具体的には、
図5(A)に示されるように、塗布液保持部12の上方側から円筒体100を矢印A方向に挿入する。円筒体100の下端部が塗布液保持部12に挿入された状態で、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給することで、塗布液保持部12の環状体32と円筒体100の外周面100Aとの間に塗布液Lを充填させる(供給工程)。そして、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給しながら、移動装置80(
図1参照)により、円筒体100を上下方向下方側(矢印A方向)に移動させる(第1移動工程)。このとき、塗布液Lが塗布液保持部12の上方からオーバーフローするように吐出部36から塗布液Lを吐出させると共に、塗布液Lが下部開口部28から下方に流出するようにしてもよい。
【0069】
図5(B)に示されるように、塗布液保持部12に循環部16(
図1参照)により塗布液Lを供給しながら、移動装置80(
図1参照)により、円筒体100を上下方向下方側(矢印A方向)に移動させることで、円筒体100を最下部に到達させる。
【0070】
その後、
図5(C)に示されるように、移動装置80(
図1参照)により、円筒体100を塗布液保持部12に対して上方向上方側(矢印B方向)に移動させる(第2移動工程)。このとき、塗布液Lが上方からオーバーフローするように吐出部36から塗布液Lを吐出させる。これにより、塗布液Lが下部開口部28から下方に流出し、上部開口部25より上方に位置する円筒体100の外周面100Aに塗布液Lが塗布される。これにより、円筒体100の外周面100Aに塗膜102が形成される(
図6(B)参照)。
【0071】
また、塗布装置10では、塗布液保持部12の内部に環状体32が配置されており、環状体32には、塗布液保持部12における上部開口部25と下部開口部28とを貫通する円筒体100が貫通される。そして、塗布液保持部12に対する円筒体100の相対移動に伴って、塗布液保持部12で保持されている塗布液Lが環状体32と円筒体100との間を上方から流入して下方から流出する。その際、塗布液保持部12に対して円筒体100の相対移動の方向と交差する設置面30に沿って環状体32が相対変位することで、円筒体100の外周面100Aと環状体32の内周面32Aとの間隔が周方向に沿って均一となる。
【0072】
塗布装置10には、塗布液保持部12側から流下した塗布液Lを収容する容器14が設けられている。これにより、円筒体100の外周面100Aを伝って下方に流下する塗布液Lが流れ落ちることで、塗布液Lが容器14に回収される(
図3参照)。
【0073】
さらに、塗布装置10では、容器14の内部の塗布液Lを塗布液保持部12に循環させる循環部16が設けられている。循環部16では、ポンプ62を駆動することで、容器14内の塗布液Lが供給管60を通って塗布液保持部12に供給される。
【0074】
例えば、円筒体100の外周面100Aに異物E(
図3参照)が付着していると、円筒体100の外周面100Aに異物Eが付着したまま、塗布液Lによってコーティングされることが懸念される。
【0075】
これに対し、第1実施形態の塗布装置10では、循環部16と移動装置80とは、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに(すなわち第2移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vが10mm/s以上200mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。
【0076】
これにより、
図3に示されるように、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下することによって、円筒体100の外周面100Aに付着している異物Eが流される。
【0077】
このため、塗布装置10では、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が10mm/sより小さい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が200mm/sより大きい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の塗布ムラの発生が抑制される。
【0078】
また、塗布装置10では、循環部16と移動装置80とは、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに(すなわち第2移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vが80mm/s以上130mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。
【0079】
このため、塗布装置10では、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が80mm/sより小さい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が130mm/sより大きい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の塗布ムラの発生が抑制される。
【0080】
また、塗布装置10では、循環部16と移動装置80とは、円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに(すなわち第2移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vが100mm/s以上110mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。
【0081】
このため、塗布装置10では、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が100mm/sより小さい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が110mm/sより大きい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の塗布ムラの発生が抑制される。
【0082】
また、塗布装置10では、移動装置80は、塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向下方側に相対移動させてから円筒体100を上下方向上方側に相対移動させる。さらに、循環部16と移動装置80とは、円筒体100を上下方向下方側に相対移動させるときに(すなわち第1移動工程で)、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vが100mm/s以上110mm/s以下となるように供給量及び移動速度が設定されている。
【0083】
このため、塗布装置10では、円筒体100を上下方向下方側に相対移動させるときに、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が10mm/sより小さい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が200mm/sより大きい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の塗布ムラの発生が抑制される。
【0084】
また、塗布装置10では、移動装置80は、塗布液保持部12の上下方向の位置を変えずに円筒体100を上下方向に移動させる。
【0085】
このため、塗布装置10では、円筒体の上下方向の位置を変えずに塗布液保持部を上下方向に移動させる構成と比較して、塗布装置10の構造が簡単になる。
【0086】
また、塗布装置10では、塗布液保持部12の内部には、円筒体100が貫通され、円筒体100との相対移動に伴って塗布液保持部12で保持されている塗布液Lが上方から流入して下方から流出する環状体32が配置されている。環状体32は、塗布液保持部12に対して円筒体100の相対移動の方向と交差する設置面30に沿って相対変位可能に設置されている。これにより、塗布液Lが環状体32と円筒体100との間を上方から流入して下方から流出する際に、塗布液Lの圧力によって環状体32が設置面30に沿って相対変位することで、円筒体100の外周面100Aと環状体32の内周面32Aとの間隔が周方向に沿って均一となる。
【0087】
このため、塗布装置10では、環状体が設置面に固定されている場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の膜厚ムラが抑制される。
【0088】
また、塗布装置10を用いて塗布液を塗布する塗布方法では、円筒体100の下部を塗布液保持部12における上部開口部25と下部開口部28に貫通させ、塗布液保持部12に循環部16から塗布液Lを供給する供給工程を有する。また、塗布方法では、円筒体100を塗布液保持部12に対して上下方向下方側に相対移動させ、円筒体100の上部を塗布液保持部12と対向する位置に配置する第1移動工程を有する。さらに、塗布方法では、円筒体100を塗布液保持部12に対して上下方向上方側に相対移動させ、かつ円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vを10mm/s以上200mm/s以下に設定し、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布する第2移動工程を有する。
【0089】
このため、塗布方法では、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が10mm/sより小さい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が200mm/sより大きい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の塗布ムラの発生が抑制される。
【0090】
また、塗布方法では、第1移動工程において、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vを10mm/s以上200mm/s以下に設定する。
【0091】
このため、塗布方法では、第1移動工程において、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が10mm/sより小さい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗布膜の異物欠陥の発生が抑制され、円筒体の外周面を伝って塗布液が流下する塗布液の相対速度が200mm/sより大きい場合と比較して、円筒体100の外周面100Aの塗膜102の塗布ムラの発生が抑制される。
【0092】
また、塗布装置10を用いて塗布液を塗布する塗布方法では、円筒体100は、円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に無端ベルト状部材を巻き付けたものである。
【0093】
このため、塗布方法では、円筒状部材又は無端ベルト状部材の外周面に塗布液を塗布する際に、円筒状部材又は無端ベルト状部材の外周面100Aの塗膜102の異物欠陥の発生が抑制され、円筒状部材又は無端ベルト状部材の外周面100Aの塗膜102の塗布ムラの発生が抑制される。
【0094】
また、上記の塗布方法を用いて感光体を製造する感光体の製造方法では、円筒体100は、金属製の円筒状部材、又は円筒状の芯材の周囲に金属製の無端ベルト状部材を巻き付けたものであり、塗布液Lは、感光材料を含有している。
【0095】
このため、塗布方法では、感光体の外周面に塗布液を塗布する際に、感光体の外周面の塗膜102の異物欠陥の発生が抑制され、感光体の外周面の塗膜102の塗布ムラの発生が抑制される。
【0096】
〔第2実施形態〕
次に、
図7及び
図8を用いて、第2実施形態の塗布装置120について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0097】
図7に示されるように、塗布装置120は、第1実施形態の塗布装置10の環状体32に代えて、環状体122を備えている。環状体122の内周面122Aの内径は、円筒体100の外径よりも大きく、円筒体100が環状体122の内部を貫通可能とされている。
【0098】
図7及び
図8に示されるように、環状体122の内周面122Aには、鉛直方向に対する角度が異なる複数段(本実施形態では2段)の傾斜面が形成されている。第2実施形態では、環状体122の内周面122Aには、環状体122の上部側に配置される第1傾斜面123Aと、第1傾斜面123Aの下部側に配置される第2傾斜面123Bとが設けられている。第2傾斜面123Bの上端部は、第1傾斜面123Aの下端部に繋がっている。また、環状体122の内周面122Aには、第2傾斜面123Bの下端部から上下方向に沿って配置されたストレート部123Cが設けられている。
【0099】
一例として、第1傾斜面123Aの鉛直方向に対する角度は、第2傾斜面123Bの鉛直方向に対する角度よりも大きい。塗布装置120の他の構成は、第1実施形態の塗布装置10の構成と同様である。
【0100】
上記の塗布装置120では、第1実施形態の塗布装置10と同様の構成により、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0101】
〔補足説明〕
上記第1~第2実施形態において、環状体の形状は、変更可能であり、環状体の内周面側に傾斜面がない構成でもよい。また、塗布液保持部12の各部材の構成は、円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布できる構成であれば、変更可能である。
【0102】
上記第1~第2実施形態において、循環部16は、塗布液保持部12と容器14との間で塗布液Lを循環させる構成であるが、本開示はこの構成に限定されるものではない。例えば、塗布液Lを循環させずに塗布液保持部12に供給する構成でもよい。
【0103】
上記第1~第2実施形態において、移動装置80は、塗布液保持部12を移動させずに円筒体100を上下方向に移動させる構成であるが、本開示はこの構成に限定されるものではない。例えば、塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向に相対移動させる構成であれば、移動部の構成及び相対移動させる動作は変更可能である。
【0104】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【実施例0105】
以下、本開示の塗布装置及び塗布方法を実施例により更に具体的に説明するが、本開示の塗布装置及び塗布方法はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
実施例1~3では、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vを変更して円筒体100の外周面100Aに塗布液Lを塗布し、円筒体100の外周面100Aでの異物除去及び塗膜の膜厚ムラを評価した。
【0107】
[実施例1]
< 塗布液の作成>
(金属酸化物微粒子Aの調製)
酸化亜鉛:(平均粒子径70μm:テイカ社製試作品)100重量部をトルエン450重量部及びメタノール50重量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM 603:信越化学社製)0.25重量部を添加し、サンドグラインダーミルにて1時間分散した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、150 ℃で2時間焼き付けを行ったのち室温まで冷却し、解砕して表面処理酸化亜鉛を得た。
【0108】
(塗布液の作製)
金属酸化物微粒子A33重量部、ブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)6重量部及びメチルエチルケトン25重量部を30分間混合した後、ブチラール樹脂(BM-1、積水化学社製)5重量部、シリコーンボール( トスパール145、東芝シリコーン社製)3重量部及びレベリング剤(シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0 .01重量部を上記の混合液に添加し、サンドミルにて2時間の分散処理を行い、塗布液Lを得た。
【0109】
上記塗布液Lの粘度は、粘度計として「RE500H 」型粘度計(東機記産業株式会社製)を用いて、標準コーン(1 °3 4 ′)、25 ℃ 、ずり速度100s-1の条件で、100mPa・sであった。
【0110】
(塗布)
円筒体100としてφ84×340mm のアルミパイプを用い、
図1~
図4に示す塗布装置及び上記の塗布液Lを用いて塗布を行った。塗布液保持部12には毎分0.4L、上部開口部25より下方の円筒体100へは毎分0.4Lの塗布液Lを常時循環供給した。そして、塗布液Lを常時循環供給しながら、円筒体100の内面上部を把持部86で把持し、鉛直上方より毎分500mmの一定速度で塗布液保持部に設けられた上部開口部25を貫通させた。円筒体100が最下点に到達するまでには、塗布液Lは塗布液保持部12を満たしてオーバーフロー状態となった。
【0111】
次いで円筒体100を毎分250mmの一定速度で引き上げて円筒体100の外周面100Aに塗膜102(塗布膜)を形成した。円筒体100が上部開口部25を上下する間、上部開口部25より下方の円筒体100の外周面100Aは上部開口部25に設けられたスリット状の吐出部36より吐出された塗布液Lによって全周が覆われて、重力によって円筒体100の外周面100Aより流れ落ちていった。塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vを10mm/sに設定した。円筒体100に塗布液Lを塗布したサンプル(円筒体100の外周面100Aに塗膜102が形成されたもの)は、170℃ 、40分熱風乾燥した。
【0112】
塗膜の膜厚測定は渦電流膜厚計を使用し、塗布開始位置から軸方向に20mm間隔で300mm、周方向は90°間隔で測定し、平均膜厚と膜厚の最大値と最小値の差(レンジ(Max-min))から膜厚ムラを評価した。
実施例1では、100本塗布を実施し、100本の平均膜厚と膜厚の最大値と最小値の差から、膜厚の最大値と最小値の差が1μm以下の場合は塗膜ムラが良好(◎)とし、膜厚の最大値と最小値の差が1μmを超え3μm以下の場合は(〇)とし、膜厚の最大値と最小値の差が3μmを超える場合は、塗膜ムラが発生(×)として評価した。また、塗膜の異物除去の状態については、塗膜に付着した異物がほとんどない場合を良好(◎)とし、塗膜に付着した異物はあったが許容できる場合を(〇)とし、塗膜に許容できない大きさ又は数の異物の付着が認められた場合を不可(×)として評価した。これらの結果を表1に示した。
【0113】
[実施例2]
塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vを100mm/sに設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0114】
[実施例3]
塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vを200mm/sに設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0115】
[比較例1]
塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vを8mm/sに設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0116】
[比較例2]
塗布液保持部12に対して円筒体100を上下方向上方側に相対移動させるときに、円筒体100の外周面100Aを伝って塗布液Lが流下する塗布液Lの相対速度Vを210mm/sに設定し、実施例1と同様に塗布液Lの塗布を行った。
【0117】
円筒体100の外周面100Aでの異物除去及び塗膜ムラ(すなわち、塗膜の膜厚ムラ)を評価した結果を表1に示す。
【表1】
【0118】
表1に示されるように、実施例1~実施例3では、塗膜102の膜厚ムラの発生がほとんどなく、異物除去も好ましいことが確認できた。特に実施例2では、塗膜102の塗布ムラが良好で異物除去も良好であった。
【0119】
これに対し、円筒体の外周面を伝って塗布液Lが流下する塗布液の相対速度Vが比較的小さい比較例1では、円筒体100の外周面100Aの塗膜に異物付着が確認された。また、円筒体の外周面を伝って塗布液Lが流下する塗布液の相対速度Vが比較的大きい比較例2では、円筒体100の外周面100Aの塗膜の膜厚ムラが大きいことが確認された。