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  • -電圧装置及び冷却水循環装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141332
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電圧装置及び冷却水循環装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 7/26 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H01J7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047590
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 康博
(72)【発明者】
【氏名】杉田 達信
(72)【発明者】
【氏名】奥田 慎平
(72)【発明者】
【氏名】水谷 睦
(57)【要約】
【課題】容器内に冷却器を設けつつも、容器に充填された絶縁ガスが外部に漏洩するのを抑制することができる、電圧装置及び冷却水循環装置を提供する。
【解決手段】電圧装置は、絶縁ガスが充填された容器2と、容器2内に配置され電気の供給を受けて発熱する機器3と、容器2に収容され冷却水との熱交換によって冷却対象を冷却する冷却器4と、冷却器4に接続された循環流路71であって、冷却水が循環するように環状に形成されると共に、容器2の外の部分に冷却水を冷却する冷却部72が設けられた循環流路71と、循環流路71における容器2の外の部分に設けられ、大気に開放された膨張タンク73と、膨張タンク73から出る気体に接するように設けられ、絶縁ガスを検出するガスセンサ74と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスが充填された容器と、
前記容器内に配置され、電気の供給を受けて発熱する機器と、
前記容器に収容され、冷却水との熱交換によって冷却対象を冷却する冷却器と、
前記冷却器に接続された循環流路であって、前記冷却水が循環するように環状に形成されると共に、前記容器の外の部分に冷却水を冷却する冷却部が設けられた循環流路と、
前記循環流路における前記容器の外の部分に設けられ、大気に開放された膨張タンクと、
前記膨張タンクから出る気体に接するように設けられ、前記絶縁ガスを検出するガスセンサと、を備える、
電圧装置。
【請求項2】
前記膨張タンクの内部に通じかつ大気に開放する排気路と、
前記排気路に設けられ、前記排気路を開閉可能な排気弁と、
前記ガスセンサが前記絶縁ガスを検出すると、前記排気弁を閉じるように制御する排気弁制御部と、を更に備える、
請求項1に記載の電圧装置。
【請求項3】
前記ガスセンサは、前記排気路における前記膨張タンクと前記排気弁との間に設けられている、
請求項2に記載の電圧装置。
【請求項4】
前記循環流路において前記冷却器の両側に設けられた一対の開閉弁と、
前記ガスセンサが前記絶縁ガスを検出すると、前記一対の開閉弁の両方を閉じるように制御する開閉弁制御部と、を更に備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電圧装置。
【請求項5】
前記冷却器は、前記冷却対象として前記容器内の空間を冷却する冷却フィンを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電圧装置。
【請求項6】
絶縁ガスが充填された容器と、
前記容器内に配置され、電気の供給を受けて発熱する機器と、
前記容器に収容され、冷却水との熱交換によって冷却対象を冷却する冷却器と、
を備えた電圧装置に用いられる冷却水循環装置であって、
前記冷却器に接続された循環流路であって、前記冷却水が循環するように環状に形成されると共に、前記容器の外の部分に冷却水を冷却する冷却部が設けられた循環流路と、
前記循環流路における前記容器の外の部分に設けられ、大気に開放された膨張タンクと、
前記膨張タンクから出る気体に接するように設けられ、前記絶縁ガスを検出するガスセンサと、を備える、
冷却水循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧装置及び冷却水循環装置に関し、より詳しくは、絶縁ガスが充填された容器を有する電圧装置及びこれに用いられる冷却水循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の直流高電圧発生装置が開示されている。特許文献1に記載の直流高電圧発生装置は、冷却ガスが充填されたタンクと、タンク内に配置された高電圧を発生させるための直流高電圧発生回路ユニットと、を備えている。
【0003】
この直流高電圧発生装置には、タンク内の温度を低下させるための冷却機構が設けられている。冷却機構は、タンクの外部に設けられた冷却器を備えている。タンク内のガスは、配管を通してタンクの外部の冷却器に流入し、冷却器によって冷却される。そして、冷却されたガスは、再び、タンク内に導入される。これによって、直流高電圧発生装置では、タンク内を適正な温度に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-84260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1に記載の直流高電圧発生装置は、タンクの外部に冷却器が設けられているが、設置スペースを確保する必要がある等の問題から、本発明者らは、タンクの内部に冷却器を配置し、冷却器に対し、冷却塔やチラー等の冷却装置から冷却水を供給することを検討した。
【0006】
しかし、例えば、経年劣化等により冷却器に孔が開くと、タンク内の絶縁ガスが冷却水に溶け込むことが考えられる。この場合、絶縁ガスが溶けた冷却水が冷却装置に戻るため、絶縁ガスが外部に漏洩する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、容器内に冷却器を設けつつも、容器に充填された絶縁ガスが外部に漏洩するのを抑制することができる、電圧装置及び冷却水循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様の電圧装置は、絶縁ガスが充填された容器と、前記容器内に配置され、電気の供給を受けて発熱する機器と、前記容器に収容され、冷却水との熱交換によって冷却対象を冷却する冷却器と、前記冷却器に接続された循環流路であって、前記冷却水が循環するように環状に形成されると共に、前記容器の外の部分に冷却水を冷却する冷却部が設けられた循環流路と、前記循環流路における前記容器の外の部分に設けられ、大気に開放された膨張タンクと、前記膨張タンクから出る気体に接するように設けられ、前記絶縁ガスを検出するガスセンサと、を備える。
【0009】
本発明に係る一態様の冷却水循環装置は、絶縁ガスが充填された容器と、前記容器内に配置され、電気の供給を受けて発熱する機器と、前記容器に収容され、冷却水との熱交換によって冷却対象を冷却する冷却器と、を備えた電圧装置に用いられる冷却水循環装置である。冷却水循環装置は、前記冷却器に接続された循環流路であって、前記冷却水が循環するように環状に形成されると共に、前記容器の外の部分に冷却水を冷却する冷却部が設けられた循環流路と、前記循環流路における前記容器の外の部分に設けられ、大気に開放された膨張タンクと、前記膨張タンクから出る気体に接するように設けられ、前記絶縁ガスを検出するガスセンサと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る上記態様の電圧装置及び冷却水循環装置は、容器内に冷却器を設けつつも、容器に充填された絶縁ガスが外部に漏洩するのを抑制することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電圧装置の概略模式図である。
図2図2は、実施形態に係る電圧装置の概略模式図である。
図3図3は、実施形態に係る電圧装置の容器の断面図である。
図4図4は、実施形態に係る冷却水循環装置の膨張タンク周辺の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本実施形態に係る電圧装置及び冷却水循環装置7について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、例えば、位置関係、各部品のサイズ等が正確ではない。
【0013】
電圧装置は、電圧が印加されて作動する装置である。電圧装置では、図1に示すように、絶縁ガス(電気絶縁ガス)が充填された容器2内に機器3が収容されている。電圧装置としては、例えば、電子線照射装置、ガス遮断器、ガス絶縁開閉装置(GIS)、計器用変成器(変圧器、交流器)、高電圧発生装置等が挙げられる。本実施形態では、電圧装置の一例として、電子線照射装置10を挙げて説明する。
【0014】
図2には本実施形態に係る電子線照射装置10の模式図を示す。電子線照射装置10は、電子線を発生し、被照射物91に対して電子線を照射する装置である。本実施形態に係る電子線照射装置10は、走査型の電子線照射装置である。電子線照射装置10は、図1に示すように、照射装置本体1と、冷却水循環装置7と、を備える。
【0015】
照射装置本体1は、電子線照射装置10の主体を構成する。照射装置本体1は、図1に示すように、絶縁ガスが充填された容器2と、電気の供給を受けて発熱する機器3と、冷却器4と、を備える。冷却器4は、冷却水循環装置7から供給された冷却水によって、容器2内を冷却する。
【0016】
冷却水循環装置7は、冷却器4に接続されており、冷却水を循環させることで、冷却器4による冷却を行う。冷却水循環装置7は、図1に示すように、環状の循環流路71と、冷却部72と、膨張タンク73と、膨張タンク73から出る気体に接するように配置されたセンサ74と、を備える。冷却水循環装置7によれば、冷却器4に対して、環状の循環流路71が接続されているため、万が一、冷却水に絶縁ガスが溶け込んでも、外部に漏洩することが防止される。その上、センサ74によって、絶縁ガスを検出できるため、冷却器4の劣化や損傷等により、孔が空いていることを知ることができる。
【0017】
ここで、電子線照射装置10の「被照射物91」は、電子線が照射される対象物を意味する。被照射物91としては、特に制限はなく、例えば、食品、食品包装容器、飲料容器、医療機器、検査器具、半導体、タイヤ、電線被覆、発泡シート、熱収縮チューブ、フィルム、ハイドロゲル、炭化ケイ素繊維、繊維強化プラスチック、電池用セパレータ、吸着材、機能性衣類、屋外パネル、床材、化粧板、転写フィルム等が挙げられる。被照射物91に対して電子線を照射することによって、被照射物91に、例えば、架橋、改質、硬化、グラフト重合、殺菌、滅菌等の処理を施すことができる。
【0018】
以下、電圧装置の一例としての電子線照射装置10について、より詳細に説明する。
【0019】
(照射装置本体1)
照射装置本体1は、上述したように、容器2、機器3、冷却器4のほか、図2に示すように、走査管51、真空ポンプ52、走査コイル53及び複数の電源61,62を備える。容器2内には、機器3、冷却器4及び複数の電源61,62が収容されている。
【0020】
(機器3)
機器3は、電源から電気の供給を受けて発熱する。本実施形態に係る機器3は、電子を加速させて電子流を形成する加速装置31である。加速装置31は、フィラメント32と、加速管33と、複数の加速電極34と、を備える。
【0021】
フィラメント32は、電源(第1の電源61)から電気の供給を受けることで発熱し、発熱した結果、電子を放出する。フィラメント32の素材としては、例えば、タングステンが挙げられる。フィラメント32は、加速管33内において、加速電極34よりも上側に配置されている。
【0022】
加速管33は、筒状に形成されている。加速管33の内部には、フィラメント32と、加速電極34が配置される。加速管33の上端は閉塞しており、下端は開放している。加速管33の下端には、走査管51が通じている。複数の加速電極34は、加速管33の中心軸に沿って、一定の間隔をおいて並んでいる。加速電極34は、電源(第2の電源62)からの電気の供給によって、磁界を生じさせる。加速電極34によって生じる磁界は、フィラメント32から放出された電子を、収束させつつ加速管33の開放端(下端)に向けて加速させる。これによって、加速装置31は、加速管33の中心軸に沿う電子流である電子線を生成することができる。
【0023】
加速装置31は、電源からの供給を受けることで発熱するが、このとき、容器2内の空間の温度を上昇させる。このため、容器2内の空間は、後述の冷却器4によって冷却される。
【0024】
(走査管51)
走査管51は、加速管33の下端に接続されており、下方に進むに従って拡がるように形成されている。走査管51の下端には、電子線を放射する開口窓が設けられている。開口窓には、窓箔が取り付けられている。窓箔は、金属箔で構成されている。金属箔としては、例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ベリリウム等が挙げられる。窓箔は、耐熱性を有し、かつ電子線が透過し得る比重をもつ材料で構成されている。これによって、走査管51の内部及び加速管33の内部は、密閉空間を構成する。したがって、走査管51の内部及び加速管33の内部は、真空ポンプ52によって真空に近い状態に保たれる。
【0025】
走査管51の上端部の外周には、走査コイル53が設けられている。走査コイル53は、電気の供給を受けることで、加速装置31によって生成された電子線の走査を行うことができる。
【0026】
(容器2)
容器2は、中空の容器2であり、内部に絶縁ガスが充填されている。容器2内の圧力は、大気圧以上の圧力であればよく、例えば、0.1MPa以上であり、より好ましくは、0.5MPa以上である。容器2内の圧力の上限値としては、特に制限はないが、一例を挙げると、2MPa以下である。本実施形態に係る容器2は、円筒体の軸方向の両端面が閉じられた圧力タンクであるが、形状は円筒形に限らず、例えば、断面が、四角形、五角形等の多角形状であってもよい。また、容器2は、球状に形成されてもよい。
【0027】
絶縁ガスは、電気絶縁性を有するガスである。本実施形態に係る絶縁ガスは、不活性ガスである。不活性ガスとしては、例えば、SFガス(六フッ化硫黄ガス)、CFI(ヨウ化トリフルオロメタン)とN(窒素)との混合ガス、COアルゴンガス、ヘリウムガス等、あるいはこれらの混合ガスが挙げられる。本実施形態に係る絶縁ガスは、SFガス(六フッ化硫黄ガス)を含むガスである。
【0028】
容器2の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、アルミニウム合金、ステンレス、真ちゅう、スチール、合成樹脂、ガラス等であってもよい。
【0029】
(冷却器4)
冷却器4は、冷却水との熱交換によって冷却対象を冷却する。冷却器4は、図3に示すように、容器2内に配置されている。本実施形態に係る冷却器4は、冷却対象として、容器2内の絶縁ガス(すなわち、容器2内の空間)を冷却する。ただし、本発明では、冷却器4は、発熱する機器3に接触して冷却してもよい。また、冷却器4に接する気流を作るように、容器2内にファンが設けられてもよい。
【0030】
冷却器4は、冷却器4の入り口側の接続口と出口側の接続口とをつなぐパイプの周囲に冷却フィンを設けることで構成されている。冷却器4は、冷却フィンを有することで、パイプを流れる冷却水と、容器2内の絶縁ガスとの熱交換を効果的に行うことができる。
【0031】
冷却水は、冷却器4において熱交換を行うことができる冷却媒体である。冷却水としては、特に制限はなく、例えば、純水、超純水、水道水、チラー水、井戸水等が挙げられる。本実施形態では、冷却水として、水道水が用いられる。
【0032】
(冷却水循環装置7)
冷却水循環装置7は、図1に示すように、冷却水を循環させ、冷却器4に対して冷却水を供給する装置である。冷却水循環装置7は、上述したように、循環流路71と、冷却部72と、膨張タンク73と、センサ74とを備える。また、冷却水循環装置7は、一対の開閉弁76と、排気弁78と、制御装置8と、を更に備える。
【0033】
(循環流路71、冷却部72)
循環流路71は、冷却水が循環する経路を構成する。循環流路71は、図1に示すように、冷却器4に接続されており、環状に形成されている。このため、循環流路71を流れる冷却水は、冷却器4の出口側の接続口を出ると、一回りして再び、入り口側の接続口から冷却器4に入り、これを繰り返す。
【0034】
ここでいう「環状」とは、冷却器4を含む循環流路71が無端状につながっていることを意味し、形状には特に制限はない。すなわち、「環状」には、例えば、楕円形状、三角形状、四角形状、五角形状等や幾何学的な形状でないものも含む。
【0035】
循環流路71は、一部が容器2の内部に位置し、他の一部が容器2の外に位置する。循環流路71の外の部分には、冷却部72が設けられている。冷却部72は、循環流路71を通る冷却水を冷却する。冷却部72は、熱交換器79に含まれている。熱交換器79は、冷却装置から供給された冷却水が通る一次側熱交換部9と、一次側熱交換部9と熱交換を行う二次側熱交換部とを有する。冷却部72は、二次側熱交換部で構成されている。冷却部72は、一次側熱交換部9と熱交換をすることで、循環流路71を通る冷却水を冷却することができる。
【0036】
冷却装置は、水冷式であってもよいし、空冷式であってもよい。冷却装置としては、特に制限はなく、例えば、クーリングタワー、チラー、空冷ラジエータ等が挙げられる。
【0037】
ここで、循環流路71(冷却器4を含む)のうちの容器2内に位置する部分に孔が開くと、容器2内に充填されている絶縁ガスが、孔を通って冷却水に溶け込む。このとき、容器2内の圧力が高くなるほど、冷却水に対して、絶縁ガスが溶け込みやすくなる。しかし、本実施形態では、循環流路71が閉じている(閉ループである)ため、冷却水に絶縁ガスが溶け込んでも、絶縁ガスが外部に漏洩することが抑制される。
【0038】
循環流路71にはポンプ75が設けられている。冷却水は、ポンプ75によって、循環流路71に沿って移動する。本実施形態に係る冷却水は、ポンプ75によって、冷却器4、一方の開閉弁76、膨張タンク73、冷却部72、他方の開閉弁76の順に流れる。ただし、本発明では、冷却水の流れる方向は、特に制限はない。ポンプ75は、冷却水の流れる方向において、膨張タンク73と、一対の開閉弁76のうちの下流側の開閉弁76と、の間に配置されており、より詳しくは、膨張タンク73と冷却部72との間に配置されている。
【0039】
(膨張タンク73)
膨張タンク73は、冷却水の膨張を吸収するためのタンクである。膨張タンク73は、大気開放型の膨張タンク73である。すなわち、本実施形態に係る膨張タンク73は、図4に示すように、大気に開放している。膨張タンク73は、冷却水の液面よりも上方に開口を有する。膨張タンク73の開口には、排気路77が接続されており、膨張タンク73の内部は排気路77を介して大気に開放している。
【0040】
冷却水に絶縁ガスが溶けている場合に、冷却水が膨張タンク73に溜まると、冷却水から絶縁ガスが放出される。膨張タンク73は大気に開放しているため、絶縁ガスは、排気路77を通って外部に出ようとする。そこで、本実施形態では、排気路77に排気弁78を設け、排気弁78を必要に応じて閉じることで、絶縁ガスが外部に漏洩することを防ぐことができる。
【0041】
(ガスセンサ74)
ガスセンサ74は、絶縁ガスに感度を有するセンサである。ガスセンサ74としては、例えば、半導体式ガスセンサ、接触燃焼式ガスセンサ、定電位電解式ガスセンサ、ガルバニ電池式ガスセンサ、ジルコニア式ガスセンサ、熱線形半導体式ガスセンサ、赤外線吸収式ガスセンサ、紫外線吸収式ガスセンサ等が挙げられる。ガスセンサ74の種類は、絶縁ガスに応じて、適宜選択される。
【0042】
ガスセンサ74は、膨張タンク73から出る気体に接するように設けられる。本実施形態に係るガスセンサ74は、図4に示すように、排気路77から分岐した分岐路に設けられている。ただし、本発明では、ガスセンサ74は、排気路77内に設けられてもよい。また、排気路77が設けられない場合、ガスセンサ74は、膨張タンク73の開口に設けられてもよいし、膨張タンク73内に設けられてもよい。ガスセンサ74は、検出により生じた電気信号(センサ信号)を制御装置8に出力する。
【0043】
排気路77において、ガスセンサ74よりも上流側には、水分除去フィルタが設けられることが好ましい。これによって、ガスセンサ74を、膨張タンク73からの水分から保護することができる。
【0044】
(排気弁78)
排気弁78は、排気路77に設けられており、排気路77を開閉可能に構成されている。排気弁78としては、例えば、電磁弁、電動弁等が挙げられる。排気弁78は、制御装置8の制御部によって制御される。制御装置8において、排気弁78を制御する制御部を、「排気弁制御部81」という場合がある。排気弁制御部81は、ガスセンサ74によって絶縁ガスを検出すると、排気弁78を閉じるように制御する。したがって、仮に冷却水に絶縁ガスが溶けても、ガスセンサ74によって検出されるため、排気弁78を自動で閉じることができる。
【0045】
ガスセンサ74は、排気路77における膨張タンク73と排気弁78との間に設けられている。このため、排気路77を通る絶縁ガスは、排気弁78を通るよりも先にガスセンサ74によって検出される。この結果、ガスセンサ74による検出に応じて、排気弁78を動作させることで、絶縁ガスが排気路77から大気に出ることを抑制することができる。
【0046】
(開閉弁76)
開閉弁76は、図1に示すように、循環流路71において、冷却器4の両側に設けられている。開閉弁76は、循環流路71を開閉可能に構成されている。開閉弁76としては、例えば、電磁弁、電動弁等が挙げられる。開閉弁76は、制御装置8の制御部によって制御される。制御装置8において、開閉弁76を制御する制御部を「開閉弁制御部82」という場合がある。開閉弁制御部82は、ガスセンサ74によって絶縁ガスを検出すると、一対の開閉弁76の両方を閉じるように制御する。したがって、冷却水に絶縁ガスが溶けていることが検知されると、循環流路71の流れを直ちに止めることができ、絶縁ガスが溶けた冷却水が、新たに膨張タンク73に入るのを抑制することができる。なお、絶縁ガスが溶けた冷却水が新たに膨張タンク73に入り続けると、膨張タンク73内に貯まる冷却水における絶縁ガスの濃度が高くなってゆき、ガス処理のコストが高くなる。しかし、本実施形態では、上述したように、絶縁ガスが溶けた冷却水が、新たに膨張タンク73に入るのを抑制することができるため、膨張タンク73内の冷却水における絶縁ガスの濃度が高くなるのを抑制でき、ガス処理コストを軽減することができる。
【0047】
(制御装置8)
制御装置8は、一対の開閉弁76及び排気弁78の開閉動作を制御する。制御装置8は、開閉弁制御部82と、排気弁制御部81とを備える。開閉弁制御部82及び排気弁制御部81は、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。メモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、開閉弁制御部82及び排気弁制御部81としての機能が実現される。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、メモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。プロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1又は複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。
【0048】
<効果>
以上説明したように、第1の態様に係る電圧装置は、絶縁ガスが充填された容器2と、容器2内に配置された機器3と、容器2に収容された冷却器4と、冷却器4に接続された環状の循環流路71と、循環流路71に設けられた膨張タンク73と、膨張タンク73から出る気体に接するように設けられた絶縁ガスを検出するガスセンサ74と、を備える。
【0049】
この態様によれば、環状の流路に冷却水を流すことができるため、万が一、容器2内の絶縁ガスが冷却水に溶けても、絶縁ガスが外部に漏洩するのを抑制することができる。また、絶縁ガスが溶け込んだ要因である冷却器4の劣化や損傷等が生じていることを、ガスセンサ74の検出をもって知ることができる。
【0050】
第2の態様に係る電圧装置では、第1の態様において、膨張タンク73の内部に通じかつ大気に開放する排気路77と、排気路77に設けられ、排気路77を開閉可能な排気弁78と、ガスセンサ74が絶縁ガスを検出すると、排気弁78を閉じるように制御する排気弁制御部81と、を更に備える。
【0051】
この態様によれば、絶縁ガスが冷却水に溶けている場合、排気弁78を閉じることで、膨張タンク73から絶縁ガスが漏洩することを抑制することができる。
【0052】
第3の態様に係る電圧装置では、第2の態様において、ガスセンサ74は、排気路77における膨張タンク73と排気弁78との間に設けられている。
【0053】
この態様によれば、排気路77を通る絶縁ガスは、排気弁78を通るよりも先にガスセンサ74によって検出される。この結果、ガスセンサ74による検出に応じて、排気弁78を動作させることで、絶縁ガスが排気路77から大気に出ることを抑制することができる。
【0054】
第4の態様に係る電圧装置では、第1から第3のいずれか1つの態様において、循環流路71において冷却器4の両側に設けられた一対の開閉弁76と、ガスセンサ74が絶縁ガスを検出すると、一対の開閉弁76の両方を閉じるように制御する開閉弁制御部82と、を更に備える。
【0055】
この態様によれば、冷却水に絶縁ガスが溶けていることが検知されると、循環流路71の流れを直ちに止めることができ、絶縁ガスが溶けた冷却水が、新たに膨張タンク73に入るのを抑制することができる。この結果、膨張タンク73内の冷却水における絶縁ガスの濃度が高くなるのを抑制できるため、ガス処理コストを軽減することができる。
【0056】
第5の態様に係る電圧装置では、第1から第4のいずれか1つの態様において、冷却器4は、冷却対象として容器2内の空間を冷却する冷却フィンを含む。
【0057】
この態様によれば、容器2内の空間を効果的に冷却することができる。
【0058】
第6の態様に係る冷却水循環装置7は、絶縁ガスが充填された容器2と、容器2内に配置された機器3と、容器2に収容された冷却器4と、を備えた電圧装置に用いられる。冷却水循環装置7は、冷却器4に接続された環状の循環流路71と、循環流路71における容器2の外の部分に設けられた膨張タンク73と、膨張タンク73から出る気体に接するように設けられた絶縁ガスを検出するガスセンサ74と、を備える。
【0059】
この態様によれば、環状の流路に冷却水を流すことができるため、万が一、容器2内の絶縁ガスが冷却水に溶けても、絶縁ガスが外部に漏洩するのを抑制することができる。また、絶縁ガスが溶けていることを、ガスセンサ74の検出をもって知ることができる。また、このような冷却水循環装置7を、既設の電圧装置に対して取り付けることもできる。
【0060】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0061】
上記実施形態では、走査型の電子線照射装置10であったが、本発明では、非走査型(エリア型)の電子線照射装置であってもよい。
【0062】
上記実施形態に係る電圧装置は、新設で電圧装置を設置してもよいし、既設の電圧装置に対して、冷却水循環装置7を新たに設置してもよい。
【0063】
上記実施形態に係る機器3は、加速装置31であったが、電気の供給を受けて発熱する機器であれば、特に制限はない。ガス遮断器についても、遮断の際に生じるアーク放電によって発熱するため、本明細書でいう「機器3」に含まれる。
【0064】
上記実施形態では、ガスセンサ74によって絶縁ガスが検知されると、一対の開閉弁76及び排気弁78が閉じるように制御されたが、本発明では、絶縁ガスが溶け込んでいることを報知してもよい。報知の方法としては、特に制限はなく、例えば、ブザー音、警告灯の点滅、モニターへの警告文の表示、振動による報知等が挙げられる。
【0065】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0066】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【符号の説明】
【0067】
2 容器
3 機器
4 冷却器
7 冷却水循環装置
71 循環流路
72 冷却部
73 膨張タンク
74 ガスセンサ
76 開閉弁
77 排気路
78 排気弁
81 排気弁制御部
82 開閉弁制御部
図1
図2
図3
図4