(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141334
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】光デバイス、基板型光導波路素子及び光通信装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/125 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G02B6/125 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047595
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 建平
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】戸田 帆志彦
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AB05
2H147BA01
2H147BA05
2H147BA11
2H147BB02
2H147BB04
2H147BD01
2H147BE14
2H147BE22
2H147CA18
2H147CB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シングルモード条件を満たしながら、入力導波路に入力する反射光量を低減できる不要光導波路を備えた光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイス1は、入力導波路2と、出力導波路3と、を有する。光デバイス1は、入力導波路2と光結合する入力部4A及び、出力導波路3と光結合する出力部4Bを有し、入力導波路2及び出力導波路3の導波路幅に比較して広い導波路幅を有する干渉領域4を有する。更に、光デバイス1は、干渉領域4内の出力部4Bに備え、出力導波路3と並走する不要光導波路5を有する。不要光導波路5は、リブ部5Aと、リブ部の厚さに比較して薄いスラブ部5Bと、を有し、基本モードの光のみを導波させるシングルモード導波路である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力導波路と、
出力導波路と、
前記入力導波路と光結合する入力部及び、前記出力導波路と光結合する出力部を有し、前記入力導波路及び前記出力導波路の導波路幅に比較して広い導波路幅を有する干渉領域と、
前記干渉領域内の前記出力部に備え、前記出力導波路と並走する不要光導波路と、を有し、
前記不要光導波路は、
リブ部と、
前記リブ部の厚さに比較して薄いスラブ部と、を有し、
基本モードのみを導波するシングルモード導波路であることを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記干渉領域内の前記入力部に備え、前記入力導波路と並走する他の不要光導波路をさらに有し、
前記他の不要光導波路は、
リブ部と、
前記リブ部の厚さに比較して薄いスラブ部と、を有し、
基本モードの光のみを導波させるシングルモード導波路であることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記入力導波路、前記出力導波路及び前記干渉領域は、
第1のリブ部と、前記第1のリブ部の厚さに比較して薄い第1のスラブ部と、を有するリブ型導波路を有し、
前記不要光導波路の前記スラブ部は、
前記第1のスラブ部の厚さに比較して厚くすることを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記不要光導波路内の前記スラブ部は、
前記リブ部の一方の側面に形成された第1のスラブ部と、
前記リブ部の他方の側面に形成され、前記第1のスラブ部の厚さに比較して厚い第2のスラブ部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記不要光導波路は、
前記出力導波路から順次離れる曲げ導波路構造であることを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の光デバイス。
【請求項6】
前記不要光導波路内の前記スラブ部は、
当該スラブ部の一部、若しくは全領域にドーピングされたドーピング領域を有することを特徴とする請求項1~5の何れか一つに記載の光デバイス。
【請求項7】
前記不要光導波路を導波する光を終端するように当該不要光導波路と光結合する光終端部をさらに有することを特徴とする請求項1~6の何れか一つに記載の光デバイス。
【請求項8】
入力導波路と、
出力導波路と、
前記入力導波路と光結合する入力部及び、前記出力導波路と光結合する出力部を有し、前記入力導波路及び前記出力導波路の導波路幅に比較して広い導波路幅を有する干渉領域と、
前記干渉領域内の前記出力部に備え、前記出力導波路と並走する不要光導波路と、を有する基板型光導波路素子であって、
前記不要光導波路は、
リブ部と、
前記リブ部の厚さに比較して薄いスラブ部と、を有し、
基本モードの光のみを導波させるシングルモード導波路であることを特徴とする基板型光導波路素子。
【請求項9】
光源と、
送信信号を用いて光源からの光を光変調して送信光を送信する光送信器と、
前記光源からの光を用いて受信光から受信信号を受信する光受信器と、
前記光送信器及び前記光受信器内で前記光を導波路する基板型光導波路素子と、を有する光通信装置であって、
前記基板型光導波路素子は、
入力導波路と、
出力導波路と、
前記入力導波路と光結合する入力部及び、前記出力導波路と光結合する出力部を有し、前記入力導波路及び前記出力導波路の導波路幅に比較して広い導波路幅を有する干渉領域と、
前記干渉領域内の前記出力部に備え、前記出力導波路と並走する不要光導波路と、を有する基板型光導波路素子であって、
前記不要光導波路は、
リブ部と、
前記リブ部の厚さに比較して薄いスラブ部と、を有し、
基本モードの光のみを導波させるシングルモード導波路であることを特徴とする光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、基板型光導波路素子及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信装置の小型化を実現すべく、基板型光導波路素子を含む光デバイスの開発が盛んである。基板型光導波路素子では、基板と、基板上に形成されたコアと、コアを被覆するクラッドとを有する光導波路を使用して光を導波しながら様々な機能を有する光デバイスがある。
【0003】
光通信装置内の光集積回路を実現するためには、光合波及び光分岐の構造として、多モード干渉(MMI:Multi-Mode Interference)型カプラ等の基板型光導波路素子の光デバイスが提案されている(例えば、非特許文献1)。MMI型カプラに使用される光導波路では、光の閉じ込めが強く、小型デバイスを実現できるチャネル型導波路(矩形型導波路)がよく用いられている。
【0004】
図16は、MMI型カプラ100の構成の一例を示す説明図である。
図16に示すMMI型カプラ100は、例えば、1入力及び4出力の1×4のカプラである。MMI型カプラ100は、1本の入力導波路102と、4本の出力導波路103(103A,103B、103C,103D)と、1本の入力導波路102と4本の出力導波路103との間を光結合する干渉領域104とを有する。出力導波路103は、第1の出力導波路103Aと、第2の出力導波路103Bと、第3の出力導波路103Cと、第4の出力導波路103Dとを有する。干渉領域104は、1本の入力導波路102と光結合する入力部104Aと、4本の出力導波路103と光結合する出力部104Bとを有し、基本モード及び高次モードの光を導波するマルチモード導波路である。MMI型カプラ100の動作原理は入力導波路102から干渉領域104に入射した光が多モード導波路となる干渉領域104の複数の導波モードに展開され、光自己結像効果により、光のパワーを4本の出力導波路103に分配する。
【0005】
図17は、
図16に示すMMI型カプラ100の光自己結像効果の一例を示す説明図である。干渉領域104内で各導波モードに展開された光は、
図17に示す通り、干渉領域104内のある一定の距離を導波したところで自己結像(Self-imaging)効果によりスポット状に集光されることになる。従って、干渉領域104と光結合する各出力導波路103は、干渉領域104の出力部104Bの内、自己結像効果のスポットが4個形成される位置に夫々配置されることになる。
【0006】
干渉領域104は、入力導波路102から入力した光を4本の出力導波路103に分岐する分岐回路として機能することになる。また、干渉領域104は、4本の出力導波路103から光を入力した場合、入力した光を合波し、合波後の光を1本の入力導波路102から出力する合波回路としても機能できる。
【0007】
従来のMMI型カプラ100内の干渉領域104では、出力導波路103に光結合できない光が反射及び放射され、反射及び放射された光の一部が入力導波路102に光結合することになる。その結果、入力導波路102から入力した光が反射された光に影響することで光の共振や干渉が生じ、光デバイスが正常に動作しなくなるおそれがある。そこで、このような課題につき、2×1のMMI型カプラに適用して説明する。
【0008】
図18は、2×1のMMI型カプラ100Aの構成の一例を示す説明図である。
図18に示すMMI型カプラ100Aは、2本の入力導波路102(102A,102B)と、1本の出力導波路103と、2本の入力導波路102と1本の出力導波路103との間を光結合する干渉領域104とを有する。入力導波路102は、第1の入力導波路102Aと、第2の入力導波路102Bとを有する。
【0009】
MMI型カプラ100Aでは、合波回路として使用した場合、原理的に各入力導波路102から入力パワーの1/2の光が出力導波路103に光結合することになる。しかしながら、MMI型カプラ100Aでは、残りの1/2の入力パワーの光が干渉領域104内の出力部104Bの不連続部分114Aや不連続部分114Bで反射や放射されることで、反射された光が干渉領域104内で反射を繰り返す。その結果、パワーの一部が各入力導波路102に入力されてしまう。
【0010】
そこで、このような事態に対処すべく、出力導波路103の両側に不要光導波路を配置し、不要光導波路で反射光を光結合することで、入力導波路102に入力する反射光量を低減できるMMI型カプラが知られている。
図19は、従来のMMI型カプラ100Bの構成の一例を示す説明図である。
【0011】
図19に示すMMI型カプラ100Bは、2本の入力導波路102(102A,102B)と、1本の出力導波路103と、2本の入力導波路102と1本の出力導波路103との間を光結合する干渉領域104と、2本の不要光導波路105とを有する。干渉領域104は、入力導波路102と光結合する入力部104Aと、出力導波路103と光結合する出力部104Bとを有する。出力部104Bは、出力導波路103の両側に配置された2本の不要光導波路105と光結合する。不要光導波路105は、干渉領域104内で発生する反射光を光結合するチャネル型導波路である。
【0012】
MMI型カプラ100Bでは、干渉領域104の出力部104Bにある出力導波路103の両側に、マルチモード導波路又はシングルモード導波路で構成する不要光導波路105を配置した。その結果、不要光導波路105を用いて干渉領域104内で発生した反射光を光結合することで入力導波路102に入力する反射光量を小さくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007-233294号公報
【特許文献2】国際公開第2018/078992号
【特許文献3】特開2006-323135号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J. M. Heaton, R. M. Jenkins, D. R. Wight, J. T. Parker, J. C. H. Birbeck, and K. P. Hilton, “Novel 1-to-N way integrated optical beam splitters using symmetric mode mixing in GaAs/AIGaAs multimode waveguides,” Appl. Phys. Lett., vol. 61, no. 15, pp. 1754-1756, 1992.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来のMMI型カプラ100Bでは、不要光導波路105をチャネル型導波路のマルチモード導波路で構成した場合、不要光導波路105内で高次モードを導波することになる。しかしながら、マルチモード導波路では、高次モードの光の閉じ込めが弱くなるため、不要光導波路105内を導波する高次モードの光が出力導波路103に光結合しやすくなる。その結果、出力導波路103に光結合した高次モードの光は、出力導波路103を導波する光と干渉し、波長領域でリップルが生じ、光デバイスが正常に動作しなくなるおそれがある。
【0016】
また、従来のMMI型カプラ100Bでは、不要光導波路105をチャネル型導波路のシングルモード導波路で構成した場合、不要光導波路105の導波路幅が狭くなるため、干渉領域104内で反射光が生じる出力部104Bの不連続部分の割合が大きくなる。その結果、不要光導波路105は、入力導波路102に入力する反射光量を十分に低減できない。
【0017】
そこで、従来の2×1のMMI型カプラ100Bの不要光導波路105の導波路幅と反射光量との関係を有限差分時間領域法で算出したシミュレーション結果に基づき説明する。
図20は、従来のMMI型カプラ100Bの不要光導波路105の導波路幅と反射光量との関係の一例を示す説明図である。反射光量は、例えば、10*Log10[P(反射)/P(入射)]で算出する。P(入射)は、MMI型カプラ100Bの入力導波路102から入射した光パワー(mW)、P(反射)は同一の入力導波路102で検出した反射光パワー(mW)である。
【0018】
シミュレーション対象の2×1のMMI型カプラ100Bは、コアの材質をSi、クラッドの材料をSiO2、コアの厚さhを0.22μmとするチャネル型光導波路を不要光導波路105として採用したものとする。そして、光波長1550nmの光を入力導波路102から入力し、不要光導波路105の導波路幅wを変えた時の入力導波路102に入力する反射光の反射光量を計算した。
【0019】
図20に示すように、不要光導波路105の導波路幅wが広くなるに連れて、反射光量は小さくなる。つまり、不要光導波路105の導波路幅wが広くなるに連れて、干渉領域104内の出力部104Bの不連続部分が少なくなるため、反射光量が小さくなる。また、不要光導波路105内を高次モードが導波し難くなるシングルモード条件を満たすためには、不要光導波路105の導波路幅wを0.4μm以下にする必要があるが、干渉領域104から入力導波路102に入力する反射光量を十分に低減するのは困難である。従って、MMI型カプラ100Bでは、シングルモード条件を満たしながら、入力導波路102に入力する反射光量を小さくできる不要光導波路105が求められている。
【0020】
一つの側面では、シングルモード条件を満たしながら、入力導波路に入力する反射光量を低減できる不要光導波路を備えた光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一つの態様の光デバイスは、入力導波路と、出力導波路とを有する。光デバイスは、前記入力導波路と光結合する入力部及び、前記出力導波路と光結合する出力部を有し、前記入力導波路及び前記出力導波路の導波路幅に比較して広い導波路幅を有する干渉領域を有する。更に、光デバイスは、前記干渉領域内の前記出力部に備え、前記出力導波路と並走する不要光導波路を有する。前記不要光導波路は、リブ部と、前記リブ部の厚さに比較して薄いスラブ部と、を有し、基本モードの光のみを導波させるシングルモード導波路である。
【発明の効果】
【0022】
一つの側面によれば、シングルモード条件を満たしながら、入力導波路に入力する反射光量を低減できる不要光導波路を備えた光デバイス等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例1のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すA-A線の略断面部分の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、不要光導波路内を導波する光の導波モードの状態の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施例1のMMI型カプラの不要光導波路の導波路幅と反射光量との関係の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施例1のMMI型カプラと従来のMMI型カプラとの反射光量と光波長との関係の一例を示す説明図である。
【
図6A】
図6Aは、実施例1の変形例である4×1のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図6B】
図6Bは、実施例1の変形例である4×2のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図6C】
図6Cは、実施例1の変形例である4×3のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図6D】
図6Dは、実施例1の変形例である3×1のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図6E】
図6Eは、実施例1の変形例である2×2のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図6F】
図6Fは、実施例1の変形例である3×3のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施例2のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図8A】
図8Aは、実施例2の変形例であるMMI型カプラ(1×1の不要光導波路)の構成の一例を示す説明図である。
【
図8B】
図8Bは、実施例2の変形例であるMMI型カプラ(1×1の不要光導波路)の構成の一例を示す説明図である。
【
図8C】
図8Cは、実施例2の変形例であるMMI型カプラ(2×1の不要光導波路)の構成の一例を示す説明図である。
【
図8D】
図8Dは、実施例2の変形例であるMMI型カプラ(2×2の不要光導波路)の構成の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施例3のMMI型カプラの不要光導波路の略断面部分の一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、実施例4のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施例5のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施例6のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、実施例6の変形例のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、実施例6の変形例のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、本実施例のMMI型カプラを内蔵した光通信装置の一例を示す説明図である。
【
図16】
図16は、従来のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図18】
図18は、従来の2×1のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図19】
図19は、従来のMMI型カプラの構成の一例を示す説明図である。
【
図20】
図20は、従来のMMI型カプラの不要光導波路の導波路幅と反射光量との関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本願の開示する光デバイス等の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0025】
図1は、実施例1のMMI型カプラ1の構成の一例を示す説明図である。
図1に示すMMI型カプラ1は、2入力及び1出力の2×1のMMI型カプラ等の基板型光導波路素子である。MMI型カプラ1は、2本の入力導波路2(2A、2B)と、1本の出力導波路3と、2本の入力導波路2と1本の出力導波路3との間を光結合する干渉領域4と、2本の不要光導波路5とを有する。入力導波路2は、第1の入力導波路2Aと、第2の入力導波路2Bとを有する。
【0026】
入力導波路2は、リブ部と、リブ部のコア厚に比較して薄い厚みのスラブ部とを有するリブ型導波路である。出力導波路3も、リブ部と、リブ部のコア厚に比較して薄い厚みのスラブ部とを有するリブ型導波路である。更に、干渉領域4も、リブ部と、リブ部のコア厚に比較して薄い厚みのスラブ部とを有するリブ型導波路である。尚、説明の便宜上、入力導波路2、出力導波路3及び干渉領域4は、リブ型導波路を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、チャネル型導波路やリッジ型導波路でも良く、適宜変更可能である。
【0027】
干渉領域4は、2本の入力導波路2と光結合する入力部4Aと、1本の出力導波路3と光結合する出力部4Bとを有し、2本の入力導波路2から入力した光が1本の出力導波路3から出力する導波路である。干渉領域4は、入力導波路2及び出力導波路3の導波路幅に比較して導波路幅が広い、基本モード及び高次モードの光を導波するマルチモード導波路である。
【0028】
また、干渉領域4内の出力部4Bは、2本の入力導波路2から入力した光が集光するスポット位置に出力導波路3を配置している。更に、干渉領域4内の出力部4Bは、出力導波路3の両側に2本の不要光導波路5を配置している。
【0029】
図2は、
図1に示すA-A線の略断面部分の一例を示す説明図である。
図2に示すA-A線の略断面部位は、干渉領域4内の出力部4Bと光結合する2本の不要光導波路5及び1本の出力導波路3の略断面部分である。各不要光導波路5は、リブ部5Aと、リブ部5Aのコア厚に比較して薄い厚みのスラブ部5Bとを有する非対称リブ型導波路構造である。リブ部5Aの導波路幅Wribは、例えば、0.76μm、スラブ部5Bの導波路幅Wslabは、例えば、5.0μmとする。
【0030】
各不要光導波路5は、そのリブ部5Aを出力導波路3側に配置し、リブ部5Aと出力導波路3との間の間隙を、例えば、0.2μmとし、干渉領域4内の出力部4Bに光結合する。尚、間隙の寸法を小さくすると、干渉領域4から入力導波路2に入力する反射光量を小さくできる。各不要光導波路5は、基本モードの光のみが導波するシングルモード導波路である。不要光導波路5内のスラブ部5Bの厚さは、入力導波路2、出力導波路3及び干渉領域4内のスラブ部の厚さに比較して厚くした。
【0031】
図3は、不要光導波路5内を導波する光の導波モードの状態の一例を示す説明図である。不要光導波路5は、スラブ部5Bを備えることで、リブ部5Aの光への閉じ込めが弱くなるので、リブ部5Aの導波路幅がチャネル型導波路と同じ導波路幅にしたとしても、高次モードの光が導波しにくく、基本モードの光のみが導波することになる。従って、不要光導波路5のリブ部5Aの導波路幅が広くなっても、基本モードの光のみが導波するシングルモード条件を満たすことになる。シングルモード条件を満たすことで、不要光導波路5内を導波する高次モードの光の出力導波路3への影響を抑制できる。その結果、不要光導波路5は、シングルモード条件を満たしながら、干渉領域4から入力導波路2に入力する光の反射光量を十分に低減できる。
【0032】
図4は、実施例1のMMI型カプラ1及び従来のMMI型カプラ100Bの不要光導波路5(105)における導波路幅に応じた反射光量の比較結果の一例を示す説明図である。実施例1のMMI型カプラ1は、不要光導波路5が非対称リブ型導波路であるのに対し、従来のMMI型カプラ100Bは、不要光導波路105がチャネル型導波路である。従来のMMI型カプラ100Bでは、不要光導波路105がチャネル型導波路であるため、不要光導波路105の導波路幅が0.4μm以下でシングルモード条件を満たすものの、入力導波路2に入力する反射光量を十分に低減させることはできない。これに対して、実施例1のMMI型カプラ1の不要光導波路5では、非対称リブ型導波路であるため、不要光導波路5の導波路幅が0.8μm以下までシングルモード条件を満たしながら、入力導波路2に入力する反射光量を十分に低減できる。
【0033】
図5は、実施例1のMMI型カプラ1及び従来のMMI型カプラ100Bの不要光導波路5(105)における光波長に応じた反射光量の比較結果の一例を示す説明図である。尚、使用する光の波長は、Cバンドを含む1525nm~1570nmの範囲とする。実施例1のMMI型カプラ1の反射光量は、従来のMMI型カプラ100Bの反射光量に比較して約13dB改善している。
【0034】
実施例1のMMI型カプラ1は、非対称リブ型導波路構造の不要光導波路5を干渉領域4内の出力部4Bに出力導波路3と並走して配置した。その結果、不要光導波路5は、シングルモード条件を満たしながら、干渉領域4から入力導波路2に入力する反射光量を十分に低減できる。
【0035】
尚、実施例1のMMI型カプラ1は、2×1のMMI型カプラを例示したが、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。実施例1のMMI型カプラ1の変形例としては、
図6A~
図6Fに示す通りである。
図6Aは、実施例1の変形例である4×1のMMI型カプラ1の構成の一例を示す説明図である。
図6Aに示すMMI型カプラ1は、4本の入力導波路2(2A、2B、2C,2D)と、1本の出力導波路3と、4本の入力導波路2と1本の出力導波路3との間を光結合する干渉領域4とを有する。干渉領域4内の出力部4Bは、出力導波路3の両側に不要光導波路5を配置した。
【0036】
図6Bは、実施例1の変形例である4×2のMMI型カプラ1の構成の一例を示す説明図である。
図6Bに示すMMI型カプラ1は、4本の入力導波路2(2A、2B、2C,2D)と、2本の出力導波路3(3A,3B)と、4本の入力導波路2と2本の出力導波路3との間を光結合する干渉領域4とを有する。干渉領域4内の出力部4Bは、2本の出力導波路3の両側に不要光導波路5を配置した。
【0037】
図6Cは、実施例1の変形例である4×3のMMI型カプラ1の構成の一例を示す説明図である。
図6Cに示すMMI型カプラ1は、4本の入力導波路2(2A,2B,2C,2D)と、3本の出力導波路3(3A,3B,3C)と、4本の入力導波路2と3本の出力導波路3との間を光結合する干渉領域4とを有する。干渉領域4内の出力部4Bは、3本の出力導波路3の両側に不要光導波路5を配置した。
【0038】
図6Dは、実施例1の変形例である3×1のMMI型カプラ1の構成の一例を示す説明図である。
図6Dに示すMMI型カプラ1は、3本の入力導波路2(2A、2B、2C)と、1本の出力導波路3と、3本の入力導波路2と1本の出力導波路3との間を光結合する干渉領域4とを有する。干渉領域4内の出力部4Bは、1本の出力導波路3の両側に不要光導波路5を配置した。
【0039】
図6Eは、実施例1の変形例である2×2のMMI型カプラ1の構成の一例を示す説明図である。
図6Eに示すMMI型カプラ1は、2本の入力導波路2(2A、2B)と、2本の出力導波路3(3A,3B)と、2本の入力導波路2と2本の出力導波路3との間を光結合する干渉領域4とを有する。干渉領域4内の出力部4Bは、2本の出力導波路3の両側に不要光導波路5を配置した。
【0040】
図6Fは、実施例1の変形例である3×3のMMI型カプラ1の構成の一例を示す説明図である。
図6Fに示すMMI型カプラ1は、3本の入力導波路2(2A、2B、2C)と、3本の出力導波路3(3A、3B、3C)と、3本の入力導波路2と3本の出力導波路3との間を光結合する干渉領域4とを有する。干渉領域4内の出力部4Bは、3本の出力導波路3の両側に不要光導波路5を配置した。
【0041】
図6A~
図6Fに示すMMI型カプラ1は、非対称リブ型導波路構造の不要光導波路5を干渉領域4内の出力部4Bに出力導波路3と並走して配置した。その結果、不要光導波路5は、シングルモード条件を満たしながら、干渉領域4から入力導波路2に入力する反射光量を十分に低減できる。
【0042】
MMI型カプラ1は、入力導波路2をM本及び出力導波路3をN本にした場合、M×Nに適用可能なMMIカプラである。
【0043】
尚、実施例1のMMI型カプラ1は、干渉領域4内の出力部4Bの内、出力導波路3の両側に不要光導波路5を配置する場合を例示したが、出力導波路3の片側に配置しても良く、適宜変更可能である。また、実施例1のMMI型カプラ1は、入力導波路2から出力導波路3へ光が導波する単一方向のカプラを例示した。しかしながら、入力導波路2と出力導波路3との間を光が双方向に導波する双方向のカプラにも適用可能であって、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。尚、実施例1のMMI型カプラ1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
干渉領域4内の入力部4Aに配置された不要光導波路6は、リブ部6Aと、リブ部6Aのコア厚に比較して薄い厚みのスラブ部6Bとを有する非対称リブ型導波路構造である。不要光導波路6は、基本モードの光のみが導波するシングルモード導波路である。
実施例2のMMI型カプラ1Aは、非対称リブ型導波路構造の不要光導波路5を干渉領域4内の出力部4Bに配置すると共に、非対称リブ型導波路構造の不要光導波路6を干渉領域4内の入力部4Aに配置する。その結果、双方向のMMI型カプラ1Aの場合でも、不要光導波路5及び6は、シングルモード条件を満たしながら、干渉領域4から入力導波路2及び出力導波路3に入力する反射光量を十分に低減できる。
尚、実施例2のMMI型カプラ1Aでは、干渉領域4内の入力部4Aに対して、第1の入力導波路2Aの近傍に1本の不要光導波路6を配置する場合を例示した。しかしながら、第1の入力導波路2Aではなく、第2の入力導波路2Bの近傍に1本の不要光導波路6を配置しても良く、適宜変更可能である。また、第1の入力導波路2Aの外側及び第2の入力導波路2Bの外側の入力部4Aに不要光導波路6を配置しても良く、適宜変更可能である。
尚、MMI型カプラ1(1A)内の不要光導波路5、6は、非対称リブ型導波路で構成する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、その実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。