(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141340
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230928BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20230928BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20230928BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230928BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L21/302 104Z
H01L21/306 A
H01L29/78 618B
H01L29/78 626A
H01L29/78 616K
H01L21/28 E
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047602
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 巧也
(72)【発明者】
【氏名】永田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】戸田 将也
(72)【発明者】
【氏名】今村 克平
(72)【発明者】
【氏名】今村 翼
【テーマコード(参考)】
4M104
5F004
5F043
5F110
【Fターム(参考)】
4M104AA03
4M104BB36
4M104CC01
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4M104DD65
4M104DD72
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4M104HH20
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5F110NN02
5F110NN23
5F110QQ03
5F110QQ04
5F110QQ05
(57)【要約】
【課題】Inを含む化合物膜の加工性を高めることを可能にした半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置の製造方法は、基板の上に形成されたインジウムを含む化合物膜24X上に電極層22を形成し、電極層22の上にマスク層を形成し、マスク層を加工した後、化合物膜24Xの少なくとも一部が露出するまで電極層22をエッチングし、マスク層の上面、マスク層及び電極層22の側面、及び化合物膜24Xの上面を覆うようにスペーサ膜26を形成し、マスク層の上面、及び化合物膜24Xの上面のスペーサ膜26をエッチングし、露出した化合物膜24Xを還元性ガスのプラズマを用いて還元処理し、還元処理された化合物膜24Yを、薬液を用いてエッチングする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成されたインジウムを含む化合物膜上に電極層を形成し、
前記電極層の上にマスク層を形成し、
前記マスク層を加工した後、前記化合物膜の少なくとも一部が露出するまで前記電極層をエッチングし、
前記マスク層の上面、前記マスク層及び前記電極層の側面、及び前記化合物膜の上面を覆うようにスペーサ膜を形成し、
前記マスク層の上面、及び前記化合物膜の上面の前記スペーサ膜をエッチングし、
前記露出した化合物膜を還元性ガスのプラズマを用いて還元処理し、
前記還元処理された前記化合物膜を、薬液を用いてエッチングする
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記還元性ガスは、H2、NH3、H2S、及びH2Oからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記化合物膜は、酸化物導電体を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記化合物膜は、インジウムと、第15族元素、第16族元素、及び第17族元素のうちの非金属元素及び半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1つとの化合物を含有する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記化合物は、酸素、リン、ホウ素、炭素、窒素、ケイ素、硫黄、セレン、テルル、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記化合物膜は、酸化インジウムスズ、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物、酸化インジウム、及びインジウム-アルミニウム-亜鉛酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記化合物膜は、結晶化した部分を有する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記薬液は、酸性である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記還元処理により、前記化合物膜は変質する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記薬液を用いたエッチング後の前記化合物膜の下面は、前記化合物膜の上面より大きい、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
基板の上に形成されたインジウムを含む化合物膜上に電極層を形成し、
前記電極層の上にマスク層を形成し、
前記マスク層を加工した後、前記化合物膜の少なくとも一部が露出するまで前記電極層をエッチングし、
前記化合物膜及び前記電極層を還元性ガスのプラズマを用いて還元処理し、
前記マスク層の上面、前記マスク層及び前記電極層の側面、及び前記化合物膜の上面を覆うようにスペーサ膜を形成し、
前記マスク層の上面、及び前記化合物膜の上面のスペーサ膜をエッチングし、
前記還元処理された前記化合物膜を、薬液を用いてエッチングする
半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記還元処理により、前記化合物膜は変質し、前記電極層の側面に窒化物が形成され、
前記窒化物上に前記スペーサ膜を形成する、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記電極層はタングステンを含み、前記還元処理により前記電極層の側面に窒化タングステンが形成される、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インジウム(In)を含む酸化物膜等の化合物膜にドライエッチングやウェットエッチング等を施した際に、加工残渣やチャンバ内への不揮発性生成物の付着等が生じたり、さらに膜の加工自体が困難であるといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-229638号公報
【特許文献2】米国特許第8551810号明細書
【特許文献3】米国特許第10644163号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、Inを含む化合物膜の加工性を高めることを可能にした半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置の製造方法は、基板の上に形成されたインジウムを含む化合物膜上に電極層を形成し、前記電極層の上にマスク層を形成し、前記マスク層を加工した後、前記化合物膜の少なくとも一部が露出するまで前記電極層をエッチングし、前記マスク層の上面、前記マスク層及び前記電極層の側面、及び前記化合物膜の上面を覆うようにスペーサ膜を形成し、前記マスク層の上面、及び前記化合物膜の上面の前記スペーサ膜をエッチングし、前記露出した化合物膜を還元性ガスのプラズマを用いて還元処理し、前記還元処理された前記化合物膜を、薬液を用いてエッチングする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態のインジウムを含む化合物膜の加工工程を示す図である。
【
図2】第2の実施形態の製造方法を適用して作製される半導体装置を示す断面図である。
【
図4】第2の実施形態の半導体装置の製造工程の第1の例を示す断面図である。
【
図5】第2の実施形態の半導体装置の製造工程の第1の例を示す断面図である。
【
図6】
図5に示す半導体装置の変形例を示す断面図である。
【
図7】第2の実施形態の半導体装置の製造工程の第2の例を示す断面図である。
【
図8】第2の実施形態の半導体装置の製造工程の第2の例を示す断面図である。
【
図9】第2の実施形態の半導体装置の変形例の部分断面図である。
【
図10】第2の実施形態の半導体装置の製造工程の第3の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の化合物膜の加工方法及び半導体装置の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1はインジウム(In)を含む化合物膜の加工工程を示している。まず、
図1(A)に示すように、基材1上にInを含む化合物膜2を、例えばPVD(Physical Vaper Deposition)法により形成する。基材1は、Inを含む化合物膜2の使用用途に応じて適宜に選択され、例えば半導体基板、金属基板のような導電性基板、セラミックス基板のような絶縁基板等が用いられる。これらの基板は、そのまま基材1として用いてもよいし、導電層、絶縁層、半導体層等の各種の機能層を有する基板を基材1として用いて、それらの機能層上に化合物膜2を形成してもよい。
【0009】
化合物膜2を構成するInを含む化合物としては、第15族元素、第16族元素、及び第17族元素のうちの非金属元素又は半金属元素、例えば酸素(O)、リン(P)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、ケイ素(Si)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、又はヨウ素(I)と、Inとの化合物が挙げられる。そのような化合物の具体例としては、In酸化物(InO)、Inリン化物(InP)、In窒化物(InN)、Inヒ素化物(InAs)、Inセレン化物(InSe)等が挙げられ、Inを含む化合物はこれらの少なくとも1つを含むことができる。ただし、Inを含む化合物は、In以外の金属元素、例えばスズ(Sn)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)等を含んでいてもよい。
【0010】
In酸化物やInリン化物等のInを含む化合物は、半導体又は導電体として機能するものがある。Inを含む酸化物の例としては、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(In-Ga-Zn Oxide:IGZO)、インジウム-アルミニウム-亜鉛酸化物(In-Al-Zn Oxide:IAZO)、酸化インジウム(InO)等が挙げられる。
【0011】
ITO等のIn酸化物の比率が大きいInを含む酸化物は、ウェットエッチング等に用いられる酸性やアルカリ性の薬液に対する耐性が高く、さらにドライエッチング等に用いられるハロゲン系ガス(HBrやCl2等)や有機系ガス(CH4、CH3OH、CF4、CHF3等)に対して加工残渣や不揮発性物が生じやすいという難点を有している。このため、Inを含む酸化物を、効率よく、かつ加工残渣等を生じさせることなく、エッチングすることは難しい。そこで、実施形態のエッチング方法等の加工方法が適用される。さらに、Inを含む酸化物は結晶化している場合に加工が困難であることから、加工対象であるInを含む酸化物等の化合物が結晶化した部分を含む場合に、実施形態の加工方法が特に有効である。
【0012】
次に、Inを含む化合物膜2を還元性ガスのプラズマで還元処理する。プラズマ処理で使用する還元性ガスとしては、例えば水素原子(H)を含むガスが挙げられる。そのような還元性ガスとしては、H2(水素)、NH3(アンモニア)、H2S(硫化水素)、及びH2O(水蒸気)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むガスが用いられる。これらを含むガスは、いずれも以下に示すようにInを含む化合物膜2の還元処理に適用可能である。これら以外にも、HF(フッ化水素)、HCl(塩酸)、HBr(臭化水素)、HI(ヨウ化水素)、CH4(メタン)、CHF3(トリフロオロメタン)、CH2F2(ジフルオロメタン)、CH3F(フルオロメタン)等の使用が可能である。
【0013】
還元性ガスのプラズマによる処理は、まずInを含む化合物膜2を有する基材1をプラズマ処理装置のチャンバ内に載置する。このようなチャンバ内に還元性ガスを導入し、チャンバ内に配置された電極に高周波電圧を印加することによって、チャンバ内に還元性ガスのプラズマを発生させる。このようして、還元性ガスのプラズマでInを含む化合物膜2を処理する。Inを含む化合物膜2を還元性ガスのプラズマに晒すと、
図1(B)に示すように、酸化物膜等の化合物膜2が還元されて、化合物膜2に含まれるIn、もしくはIn及びそれと共に含まれる金属(Sn等)のナノ粒子(Inを含む金属ナノ粒子)3が生成される。Inを含む化合物膜2を金属ナノ粒子3が堆積された金属膜4に変質させることができる。このようなInを含む金属膜4は、Inを含む酸化物膜等の化合物膜2に比べて加工性に優れるため、Inを含む金属膜4を例えば効率よくエッチング液等の薬液により処理できると共に、加工残渣を抑制することができる。
【0014】
次に、Inを含む金属膜4を薬液により処理する。Inを含む金属膜4の処理に用いる薬液としては、例えば塩酸(HCl)の0.5質量%以上40質量%以下程度の水溶液、弗酸(HF)の0.01質量%以上50質量%以下程度の水溶液、塩酸(HCl)の30質量%以上と硝酸(HNO
3)の70質量%以下との混合液、及びそのような混合液を10体積%以上の任意の比率の水(H
2O)で希釈した混合溶液のような酸液が用いられる。Inを含む金属膜4を酸液で処理することによって、
図1(C)に示すように、Inを含む金属膜4をエッチングして除去することができる。この際、結晶化されたInを含む酸化物等を備える化合物膜2は、粒界に沿ってエッチングされるため、粒子状の残渣が生じやすいのに対して、Inを含む金属膜4は金属ナノ粒子3自体が酸液等によりエッチングされやすいため、加工残渣を生じさせることなくエッチング除去することができる。なお、Inを含む金属膜4の種類等によっては、薬液としてアルカリ溶液等を用いてもよい。
図1(C)に示す処理に用いられる薬液は、処理内容に応じて適宜に選択される。
【0015】
(第2の実施形態)
図2は第2の実施形態の半導体装置の断面図、
図3は
図2のA-A線に沿った断面図である。
図4において、上下方向を第1方向、第1方向と直交する2つの方向を第2方向及び第3方向とする。
【0016】
図2及び
図3に示す半導体装置10は、酸化物半導体をチャネル層とするトランジスタである。トランジスタ10は、ゲート電極がチャネル層を囲むようにして設けられる、いわゆるSurrounding Gate Transistor(SGT)であり、縦型トランジスタである。
【0017】
トランジスタ10は、酸化物半導体からなるチャネル層11、ゲート電極12、ゲート絶縁層13、ソース電極14、ドレイン電極15、第1層間絶縁層16、第2層間絶縁層17、及び第3層間絶縁層18を備える。チャネル層11は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、及びスズ(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素と、亜鉛(Zn)と、酸素(O)を含む。チャネル層11は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む。チャネル層11は、例えば、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び亜鉛(Zn)を含む。ソース電極14は、第1の電極層19、第1のバリア層20、及び第1の酸化物導電体層21を有する。ドレイン電極15は、第2の電極層22、第2のバリア層23、及び第2の酸化物導電体層24を有する。
【0018】
ソース電極14及びドレイン電極15の電極層19、22には、タングステン(W)、W合金、モリブデン(Mo)、Mo合金等が用いられる。バリア層20、23には、窒化チタン(TiN)や窒化タンタル(TaN)等が用いられる。酸化物導電体層21、24はチャネル層11と電極層19、22との間に配置され、さらにバリア層20、23が酸化物導電体層21、24と電極層19、22との間に配置される。酸化物導電体層21、24は、例えば、同一の材料で形成される。第1の酸化物導電体層21及び第2の酸化物導電体層24は、例えば、インジウム(In)、スズ(Sn)、及び酸素(O)を含む酸化物導電体である。第1の酸化物導電体層21及び第2の酸化物導電体層24は、例えば、酸化インジウムスズである。
【0019】
チャネル層11は、ソース電極14とドレイン電極5との間に設けられる。チャネル層11には、トランジスタ10のオン動作時に、電流経路となるチャネルが形成される。チャネル層11は、第1の方向に延びる円柱形状を有する。チャネル層11の第2の方向の幅は、例えば20nm以上50nm以下である。ゲート電極12のゲート長(第1方向の幅)は、例えば20nm以上100nm以下である。ゲート電極12は、チャネル層11を囲むように設けられている。ゲート電極12は、ゲート絶縁層13を介してチャネル層11の周囲に設けられている。
【0020】
ゲート絶縁層13は、チャネル層11とゲート電極12との間に設けられる。ゲート絶縁層13は、チャネル層11を囲むように設けられている。ゲート絶縁層13は、例えば酸化物又は酸窒化物からなる。ゲート絶縁層14は、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、又は酸化アルミニウムである。ゲート絶縁層14の厚さは、例えば2nm以上10nm以下である。
【0021】
層間絶縁層16、17、18は、例えばソース電極14とゲート電極12との間、ドレイン電極15とゲート電極12との間、及びゲート電極12の周囲に設けられる。層間絶縁層16、17、18は、ソース電極14、ドレイン電極15、及びゲート電極12の電気的分離を行う。層間絶縁層16、17、18は、例えば酸化物からなる。層間絶縁層16、17、18は、例えば酸化シリコンである。
【0022】
酸化物半導体トランジスタ10の製造工程について、
図4及び
図5を参照して説明する。まず、
図4(A)に示すように、縦型トランジスタ(SGT)の公知の製造方法に基づいて、ソース電極14、チャネル層11、ゲート絶縁層13、及びゲート電極12を有する構造体25を形成する。そのような構造体25上にチャネル層11と接するように、第2の酸化物導電体層24となるITO膜24X、第2のバリア層23となるTiN膜23X、及び第2の電極層22となるW膜22Xを順に成膜する。
【0023】
次に、
図4(B)に示すように、TiN膜23X及びW膜22Xを反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)等のドライエッチングによりエッチングし、バリア層23及び電極層22を形成する。次いで、バリア層23及び電極層22をマスクとして、ITO膜24Xのそれらから露出した部分を、
図1(B)に示した工程と同様にして、例えばH
2、NH
3、H
2S、H
2O等の少なくとも1つを含む還元性ガスのプラズマに晒す。これによって、
図5(A)に示すように、ITO膜24Xのマスクから露出した部分を、In-Snナノ粒子が堆積した変質膜24Yに変質させる。
【0024】
次いで、ITO膜24Xの変質膜24Yに変質した部分を、20%のHCl水溶液等の酸性の薬液で処理することによって、
図5(B)に示すように、変質膜24Yをエッチングして除去する。これによって、所望の形状を有すると共に、チャネル層11と接する第2の酸化物導電体層24を形成する。ITO膜24XにH
2等のプラズマによる還元処理とウェットエッチング処理とを組み合わせた処理を適用することによって、加工残渣を発生させることなく、ITO膜24Xをエッチングすることができる。従って、トランジスタ10を所望の形状に加工することができる。さらに、ITO膜24Xをドライエッチングのみで処理した場合、ITOをエッチングするRIEは高エネルギーが必要であるため、マスクの肩落ちや、処理装置のチャンバにInダストが付着する等の問題が生じる。これに対して、実施形態のITO処理によれば、これらの問題が発生することを抑制することが可能になる。なお、
図5(B)に示すエッチングにより、
図6に示すように、第2の酸化物導電体層24の断面積が、第2のバリア層23又は第2の電極層22の断面積より小さくなってもよい。
【0025】
上述した還元性ガスのプラズマによる還元処理とウェットエッチング処理とを組み合わせた処理を適用した場合、ITO膜24Xのサイドエッチングが発生する場合がある。ここで言うITO膜24Xのサイドエッチングとは、ITO膜24Xの第2の方向又は第3方向の長さがTiN膜23XとW膜22Xの第2の方向又は第3方向の長さより短い状態である。このような点に対して、
図7(A)、(B)に示すように、第2のバリア層23と第2の電極層22との積層膜の側面にスペーサ膜26を形成することが有効である。これによって、スペーサ膜26の膜厚の分だけサイドエッチングに対するマージンを確保することができるため、ITO膜24Xのサイドエッチングを抑制することが可能になる。
【0026】
まず、
図7(A)に示すように、第2のバリア層23と第2の電極層22との積層膜の側面及び上面と積層膜から露出するITO膜24Xの表面を覆うように、スペーサ膜26を形成する。スペーサ膜26には、例えばシリコン酸化物やシリコン窒化物、あるいは有機物が用いられる。スペーサ膜26の厚さは、ITO膜24Xの厚さ以上とすることが好ましい。次いで、
図7(B)に示すように、第2のバリア層23と第2の電極層22との積層膜の側面に存在するスペーサ膜26を残すように、第2の電極層22上及びITO膜24X上のスペーサ膜26をエッチングして除去する。
【0027】
次に、
図5(B)に示した工程と同様にして、ITO膜24Xの露出部分を、例えばH
2、NH
3、H
2S、H
2O等の少なくとも1つを含む還元性ガスのプラズマに晒すことによって、
図8(A)に示すように、ITO膜24Xのマスクから露出した部分を、In-Snナノ粒子が堆積した変質膜24Yに変質させる。次いで、ITO膜24Xの変質膜24Yに変質させた部分を、20%のHCl水溶液等の酸液で処理することによって、
図9(B)に示すように、変質膜24Yをエッチングして除去する。これによって、所望の形状を有する酸化物導電体層24を形成する。
図8(A)に示すプラズマ処理工程及び
図8(B)に示すエッチング工程において、スペーサ膜26の膜厚の分だけマージンを確保することができるため、ITO膜24Xのサイドエッチングを抑制することができる。
【0028】
図7及び
図8に示した製造工程を適用したトランジスタ10において、第2のバリア層23と第2の電極層22との積層膜の側面に存在するスペーサ膜26はサイドウォールとして利用することができる。この際、第2のバリア層23と第2の電極層22との積層膜の側面に対するサイドウォールは、
図7(A)、(B)に示したように、ITO膜24Xを還元性ガスのプラズマに晒す前に形成する工程に代えて、ITO膜24Xを還元性ガスのプラズマに晒した後に形成してもよい。この際、ITO膜24Xのプラズマ処理にNH
3のプラズマを使用すると、ITO膜24Xの変質膜24Yへの変質に加えて、第2のバリア層23と第2の電極層22との積層膜の側面をNH
3のプラズマに晒して表面処理することができる。
【0029】
W膜等からなる第2の電極層22の側面をNH3のプラズマで処理することによって、W膜の側面にWの窒化物(WN)が形成される。サイドウォールとしてシリコン窒化物(SiN)を適用する場合、W膜の側面に形成されたWNがSiNとの密着性を改善する。従って、第2の電極層22の側面に形成されるサイドウォールの密着性を向上させ、トランジスタ10の品質を高めることが可能になる。
【0030】
また、
図9に示すように、第2の酸化物導電体層24の端部を傾斜させる等によって、第2の酸化物導電体層24と第2のバリア層23との接合面より第2の酸化物導電体層24とチャネル層11との接合面を大きくしてもよい。つまり、第2の酸化物導電体層24の下面は、第2の酸化物導電体層24の上面より大きくしてもよい。このような形状とすることで、ドレイン電極15とチャネル層11の電気的な接続が容易になる。第2の酸化物導電体層24の下面は、チャネル層11の上面よりも大きいことが望ましい。また、第2の酸化物導電体層24の端部を傾斜させることに代えて、第2の酸化物導電体層24の断面形状が上端部の幅より下端部の幅が広くなるような形状(2段形状)であってもよい。このような形状を有する第2の酸化物導電体層24を形成するにあたっても、上述した第2の酸化物導電体層24に対する還元性ガスのプラズマによる還元処理とウェットエッチング処理とを組み合わせた処理を有効に適用することができる。
【0031】
図10を参照して、2段形状を有する酸化物半導体層24の形成工程について述べる。
図10は、隣り合うチャネル層11A、11B及び電極層22A、22Bの間に存在する酸化物導電体層24(ITO膜24X)の加工状態を示している。まず、
図10(A)に示すように、ITO膜24Xの露出部分を、例えばH
2、NH
3、H
2S、H
2O等の少なくとも1つを含む還元性ガスのプラズマで処理することによって、ITO膜24Xのマスクから露出した部分を変質膜24Yに変質させる。この際、還元性ガスのプラズマによる処理条件を調整することによって、変質膜24Yによる変質領域をITO膜24Xの厚さより浅く、すなわち表面から厚さ方向の一部に設定する。
【0032】
次いで、
図10(B)に示すように、20%のHCl水溶液等の酸液で処理することによって、変質膜24Yによる変質領域をエッチングする。この時点では、変質膜24Yによる変質領域をITO膜24Xの厚さより浅く設定しているため、ITO膜24Xの厚さ方向の一部のみがエッチングされて浅い凹部Hが形成される。次に、
図10(B)に示すエッチング工程後に残存するITO膜24Xの部分に対して、
図10(C)に示すように、還元性ガスのプラズマで処理することによって、ITO膜24Xの残存部分の一部を変質膜24Yに変質させる。この際、
図10(C)では図示していないが、マスクを設ける等によって、プラズマによる変質領域(変質膜24Yの形成領域)の幅を、隣り合うチャネル層11A、11B間の幅より狭くする。
【0033】
この後、
図10(D)に示すように、20%のHCl水溶液等の酸液で処理することによって、プラズマによる変質領域(変質膜24Yの形成領域)をエッチングする。このような2段階のプラズマ処理及びエッチング処理を施すことによって、断面形状が上端部の幅より下端部の幅が広くなる形状(2段形状)を有する第2の酸化物導電体層24を得ることができる。従って、位置ずれが生じた場合でも、チャネル層11と第2の酸化物導電体層24との電気的な接続が容易となる。なお、
図10(A)の前又は
図10(C)のプラズマ処理の前にスペーサ膜26を形成してもよい。
【0034】
なお、上述した各実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
1…基材、2…Inを含む化合物膜、3…金属ナノ粒子、10…トランジスタ、11…チャネル層、12…ゲート電極、13…ゲート絶縁層、14…ソース電極、15…ドレイン電極、19,22…電極層、22X…W膜、20,23…バリア層、23X…TiN膜、21,24…酸化物導電体層、24X…ITO膜、24Y…変質膜。