(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141341
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20230928BHJP
【FI】
F16H57/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047609
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝則
(72)【発明者】
【氏名】湯川 洋久
(72)【発明者】
【氏名】湯本 泰章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 務
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB01
3J063AB13
3J063AB23
3J063AC04
3J063BB41
3J063CD41
3J063XE31
(57)【要約】
【課題】動力伝達装置の大型化を抑制する。
【解決手段】駆動源の駆動力を駆動輪に伝達する動力伝達機構と、動力伝達機構を収容するハウジングと、オイルレベルゲージを前記ハウジング内に案内するためのチャージングパイプと、を備え、前記チャージングパイプは、前記ハウジング内に設けられている、動力伝達装置。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の駆動力を駆動輪に伝達する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を収容するハウジングと、
オイルレベルゲージを前記ハウジング内に案内するためのチャージングパイプと、を備え、
前記チャージングパイプは、前記ハウジング内に設けられている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記動力伝達機構は、無段階変速機構と、差動機構を含み、
前記ハウジングは、
前記無段階変速機構と前記差動機構を内包する外壁部と、
前記外壁部の内側の空間を、前記無段階変速機構側の空間と、前記差動機構側の空間とに区画する隔壁部と、を有し、
前記チャージングパイプは、前記差動機構側の空間に配置される、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ハウジングは、
前記外壁部における前記差動機構側の開口を覆うカバー部を有しており、
前記チャージングパイプは、前記カバー部に支持されている、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記カバー部では、
トルクコンバータの外周に沿う第1壁部、
前記第1壁部の外周を囲むと共に、前記ハウジングの外壁部に連結される第2壁部と、を有し、
前記第1壁部と前記第2壁部との間の空間に、前記チャージングパイプが配置される、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1壁部と前記第2壁部との間の空間は、前記トルクコンバータの回転軸方向から見て、前記トルクコンバータの外周に沿う形状で形成されていると共に、前記差動機構側の空間に連絡しており、
前記チャージングパイプは、前記第1壁部と前記第2壁部との間の空間内で、前記動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線方向に沿う向きで配置されている、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記チャージングパイプは、前記第1壁部と前記第2壁部とにより、前記トルクコンバータの回転軸の径方向の変位が規制されている、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6の何れか一項において、
前記第1壁部と前記第2壁部との間の空間は、前記差動機構側の空間に連絡しており、
前記カバー部において前記チャージングパイプは、前記差動機構側の空間との対向部に支持されている、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項4から請求項7の何れか一項において、
前記チャージングパイプは、両端に開口部を有する筒状部材であり、
前記チャージングパイプの一端は、前記ハウジング内に配置された回転体の側方に位置しており、
前記回転体と、前記チャージングパイプの一端との間に、プレートが配置されている、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記チャージングパイプの他端は、前記ハウジングの上部に開口している、動力伝達装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記第1壁部は、
前記回転体の回転軸方向で、前記プレートに対向する対向領域を有しており、
前記チャージングパイプの一端側は、前記対向領域と前記プレートにより、前記回転軸方向の変位が規制されている、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オイルレベルゲージを案内するためのガイドパイプを、自動変速機のケーシングの外壁に付設することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ガイドパイプの一種であるチャージングパイプは、ケース内に充填されたオイルの高さの測定と、ケース内へのオイルの充填に用いられる。
チャージングパイプを、自動変速機(動力伝達装置)のケーシング(ハウジング)の外壁に付設すると、チャージングパイプの分だけ動力伝達装置が大型化する。
そのため、動力伝達装置を大型化しないようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、
駆動源の駆動力を駆動輪に伝達する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を収容するハウジングと、
オイルレベルゲージを前記ハウジング内に案内するためのチャージングパイプと、を備え、
前記チャージングパイプは、前記ハウジング内に設けられている、動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、動力伝達装置の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、車両における動力伝達装置の配置を説明する模式図である。
【
図2】
図2は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、ケースを第2カバー側から見た図である。
【
図4】
図4は、第2カバーをケース側から見た図である。
【
図5】
図5は、第2カバーをエンジン側から見た図である。
【
図6】
図6は、チャージングパイプの配置を説明する断面図である。
【
図7】
図7は、チャージングパイプの配置を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、チャージングパイプの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置1がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置1は、エンジンとモータ(回転電気)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。
【0009】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0010】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0013】
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0014】
「回転方向の下流側」とは、車両前進時における回転方向または車両後進時における回転方向の下流側を意味する。頻度の多い車両前進時における回転方向の下流側にすることが好適である。
【0015】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0016】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0017】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0018】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0019】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0020】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、車両Vにおける動力伝達装置1の配置を説明する模式図である。
図2は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
【0022】
図1に示すように、車両Vの前部において動力伝達装置1は、左右のフレームFR、FRの間に配置される。動力伝達装置1のハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
図2に示すように、ハウジングHSの内部に、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCVなどが収容される。
【0023】
動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。
前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0024】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0025】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0026】
減速機構4は、アウトプットギア41と、アイドラギア42と、リダクションギア43と、ファイナルギア45とを、有する。
アウトプットギア41は、セカンダリプーリ32の出力軸33と一体に回転する。
アイドラギア42は、アウトプットギア41に回転伝達可能に噛合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44にスプライン嵌合しており、アイドラ軸44と一体に回転する。アイドラ軸44には、アイドラギア42よりも小径のリダクションギア43が設けられている。リダクションギア43は、差動装置5のデフケース50の外周に固定されたファイナルギア45に、回転伝達可能に噛合している。
【0027】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリの回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3(第3軸)上で同軸に配置される。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4(第4軸)上で同軸に配置される。動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xとも標記する。
【0028】
図3は、ケース6を、第2カバー8側から見た平面図である。
なお、
図3の拡大図では、ストレーナ10とメカオイルポンプMOPの図示を省略して、隔壁部62に設けた接続部625、627周りを示している。
【0029】
図3に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。隔壁部62は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。
図2に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第2室S2である。
【0030】
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。第2室S2には、バリエータ3が収容される。
ケース6では、第1室S1側の開口が、第2カバー8(トルコンカバー)で封止される。第2室S2側の開口が、第1カバー7(サイドカバー)で封止される。
ケース6では、第1カバー7と第2カバー8との間の空間(第1室S1、第2室S2)の下部に、動力伝達装置1の作動や、動力伝達装置1の構成要素の潤滑に用いられるオイルが貯留される。
【0031】
図3に示すように、ケース6は、第2カバー8側(紙面手前側)の端面が、第2カバー8との接合部611となっている。接合部611は、隔壁部62の第2カバー8側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。接合部611には、第2カバー8側の接合部811(
図2参照)が全周に亘って接合される。ケース6と第2カバー8は、互いの接合部611、811同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。
これにより、ケース6の開口が第2カバー8で封止された状態で保持されて、閉じられた第1室S1が形成される。
【0032】
図3に示すように、ケース6では、接合部611の内側に、隔壁部62が位置している。
ケース6の隔壁部62は、回転軸(回転軸X1~X4)に対して略直交する向きで設けられている。隔壁部62には、貫通孔621、622、624と、支持穴623が設けられている。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔621を囲む円筒状の支持壁部631と、支持壁部631の外周を、間隔をあけて囲む周壁部641とが、設けられている。
図3において支持壁部631と周壁部641は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。
【0033】
支持壁部631と周壁部641の間の領域651は、前後進切替機構2のピストン(図示せず)や、摩擦板(前進クラッチ、後進ブレーキ)などを収容する円筒状の空間である。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、プライマリプーリ31の入力軸34(
図2参照)が回転可能に支持される。
【0034】
図3に示すように、貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X2は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
【0035】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔622を囲む円筒状の支持壁部632が設けられている。
図3において支持壁部632は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。
支持壁部632の内周には、ベアリングBを介して、セカンダリプーリ32の出力軸33(
図2参照)が回転可能に支持される。
【0036】
図3に示すように、支持穴623は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X3は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方、かつ回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方に位置している。
【0037】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、支持穴623を囲む円筒状の支持壁部633が設けられている。
図3において支持壁部633は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。支持壁部633は、支持穴623の外周を間隔を空けて囲んでいる。支持壁部633の内周には、ベアリングBを介して、減速機構4のアイドラ軸44(
図2参照)が、回転可能に支持されている。
【0038】
図3に示すように、貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X4は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め下方、回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方、そして、回転軸X3から見て車両前方側の斜め下方に位置している。
【0039】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624を囲む円筒状の支持壁部634が設けられている。
図3において支持壁部634は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。支持壁部634は、貫通孔624の外周を間隔を空けて囲んでいる。支持壁部634の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(
図2参照)が、回転可能に支持されている。
図2に示すように、デフケース50の外周には、回転軸X4方向から見てリング状を成すファイナルギア45が固定されている。ファイナルギア45は、デフケース50と一体に回転軸X4周りに回転する。
【0040】
図3に示すように、隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624の下側にバッフルプレート66が取り付けられている。回転軸X4方向から見てバッフルプレート66は、曲面を下方に向けた半円形状を成しており、ファイナルギア45の回転軸X4方向の両方の側面を覆う側板部661と、回転軸X4の径方向の外周を覆う弧状壁部662とを有している(
図10参照)。なお、
図3では、紙面手前側の側板部661の図示を省略している。
【0041】
ケース6では、バッフルプレート66の弧状壁部662よりも車両前方側の領域であって、前記した弧状の周壁部641の下側の領域にストレーナ10が配置されている。
【0042】
図3に示すように隔壁部62では、周壁部641の下側にストレーナ10との接続部625と、メカオイルポンプMOPとの接続部627が設けられている。
接続部625の接続口625aと接続部627の接続口627aは、同一方向を向いて開口している。接続部625の接続口625aは、隔壁部62内に設けた油路626に連絡している。接続部627の接続口627aは、隔壁部62内に設けた油路628に連絡している。
油路626、628は、隔壁部62内を収容部68側(図中、右側)に、直線状に延びている。油路626は、ケース6内の油路を介して、収容室S3内に収容された電動オイルポンプEOP(
図2参照)に連絡している。油路628は、ケース6内の油路を介して、収容室S3内に設置されたコントロールバルブCV(
図2参照)に連絡している。
【0043】
図2に示すように、収容室S3は、ケース6の車両前方側に位置している。
ケース6の車両前方側の側面には、開口を車両前方側に向けた収容部68が付設されている。収容室S3は、収容部68の開口を第3カバー9で封止して形成される。
収容部68と第3カバー9は、互いの接合部683、911同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の車両前方側の側面に、閉じられた収容室S3が形成される。
収容室S3には、コントロールバルブCVと電動オイルポンプEOPが、縦置き配置されている。
【0044】
図2に示すように、コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。コントロールバルブCVの内部には、油圧制御回路(図示せず)が形成されている。油圧制御回路には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧などで作動する調圧弁SP(スプール弁)が設けられている。
【0045】
収容室S3内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向(紙面、上下方向)に沿わせた向きで、縦置きされている。
収容室S3では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数の調圧弁SP(スプール弁)が、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ(
図3参照)、(b)調圧弁SP(スプール弁)の進退移動方向Xpが水平線方向に沿う向きとなる(
図3参照)。
【0046】
これにより、調圧弁SP(スプール弁)の進退移動が阻害されないようにしつつ、コントロールバルブCVが収容室S3内で縦置きされる。よって、収容室S3が車両前後方向に大型化しないようにされている。
なお、電動オイルポンプEOPは、モータ(図示せず)の回転軸を、鉛直線VL方向に沿わせた向きで縦置き配置されている。
図2に示すように、電動オイルポンプEOPとコントロールバルブCVは、動力伝達機構の回転軸X方向に並んでいる。
【0047】
図4は、第2カバー8を、ケース6側から見た平面図である。
図4では、第2カバー8を、当該第2カバー8のケース6側の面に取り付けられたチャージングパイプ200と共に示している。
図5は、第2カバー8をエンジンENG側から見た平面図である。
図5では、第1領域825の内部に収容されたトルクコンバータT/Cの範囲を明確にするために、一部を切り欠いたトルクコンバータT/Cを、重畳表示している。
【0048】
図4に示すように、第2カバー8は、筒状の周壁部81と、隔壁部82と、を有する。隔壁部82は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。
周壁部81は、ケース6側(紙面手前側)の端面が、ケース6との接合部811となっている。接合部811は、隔壁部82の第2カバー8側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。
第2カバー8では、接合部811の内側に、隔壁部82が位置している。
隔壁部82には、貫通孔821、824と、支持穴822、823が設けられている。
隔壁部82は、第1領域825と、第2領域826と、を有する。
第1領域825は、回転軸X1を中心とした略円形の領域である。第1領域825は、紙面手前側(第1室S1側)に膨出している。
【0049】
第1領域825の略中心に位置する貫通孔821は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部82における第1室S1側(紙面手前側)の面には、貫通孔821を囲む円筒状の支持壁部831が設けられている。
【0050】
第2領域826は、隔壁部82における第1領域825を除いた領域である。
第2領域826には、支持穴822、823と、貫通孔824が設けられている。
支持穴822は、回転軸X2を中心として形成された有底穴である。第2領域826では、支持穴822を囲む円筒状の支持壁部832が設けられている。
図4において支持壁部832は、紙面手前側に突出している。
支持壁部832の内周には、ベアリングBを介して、セカンダリプーリ32の出力軸33(
図2参照)が、回転可能に支持される。
【0051】
支持穴823は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。第2領域826では、支持穴823を囲む円筒状の支持壁部833が設けられている。
図4において支持壁部833は、紙面手前側に突出している。
支持壁部833の内周には、ベアリングBを介して、減速機構4のアイドラ軸44(
図2参照)が、回転可能に支持される。
【0052】
貫通孔824は、回転軸X4を中心として形成されている。第2領域826では、貫通孔824を囲む円筒状の支持壁部834が設けられている。
図4において支持壁部834は、紙面手前側に突出している。
支持壁部834の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(
図2参照)が、回転可能に支持される。
【0053】
図4に示すように、第1領域825では、車両前方側に、凹部827が形成されている。この凹部827は、第2カバー8の上部から、水平線HLを跨いで下部側まで及んで形成されている。
この凹部827には、チャージングパイプ200が設けられている。チャージングパイプ200は、第1領域825の車両前方側(図中、左側)で、上下方向に沿う向きで配置されている。
【0054】
図6は、第2カバー8におけるチャージングパイプ200の配置を説明する図である。
図6は、
図4におけるA-A線に沿って第2カバー8を切断した断面を模式的に示している。
図6では、隔壁部82の第1領域825と第2領域826が、ケース6の断面と共に示されている。
図6に示すように、第1領域825のエンジンENG側(図中、左側)は、トルクコンバータT/Cの収容室S3となっている。
第1領域825は、トルクコンバータT/Cの回転軸X1の径方向の側面120と、ケース6側の裏面121を、間隔を空けて囲むように湾曲している。
第1領域825の車両前方側の端部825aは、周壁部81の内周に接続している。
【0055】
第1領域825の端部825a側には、収容室S3側に窪んだ湾曲部825bが形成されている。この湾曲部825bのケース6側(図中、右側)が、チャージングパイプ200を配置する凹部827となっている。凹部827は、第1室S1側に開口している。
ここで、ケース6と第2カバー8との間に形成される第1室S1は、ケース6内部のケース側領域S1aと、第2カバー8内部の第2カバー側領域S1bとから構成される。凹部827は、第2カバー側領域S1b内に位置している。
本実施形態では、凹部827内に配置されたチャージングパイプ200が、第2カバー側領域S1b内に留まり、ケース側領域S1a内に膨出しないように、凹部827を規定する湾曲部825bの形状が設定されている。
【0056】
そのため、
図5に示すように、第2カバー8のエンジンENG側の面では、凹部827を形成する湾曲部825bの領域が、紙面手前側に膨出している。
なお、湾曲部825bの紙面手前側への膨出高さは、トルクコンバータT/Cとの干渉を避けることができる高さに設定されている。収容室S3の内部にトルクコンバータT/Cを配置すると、湾曲部825bの領域がトルクコンバータT/Cの裏側に隠れるようになっている。
【0057】
図7は、ケース6と第2カバー8との間におけるチャージングパイプ200の配置を説明する図である。
図7は、
図4におけるB-B線に沿って第2カバーを切断した断面を模式的に示している。
図8は、チャージングパイプ200の出口となる先端200aと、バッフルプレート160の側壁部162との位置関係を説明する図である。
図8は、ケース6を第2カバー8側から見た図に、第2カバー8で支持されたチャージングパイプ200を重畳表示している。
【0058】
図7に示すように、第2カバー8の上部に位置する周壁部81では、ケース6側の接合部811と、エンジンENG側の接合部812との間の領域に、接続部250が設けられている。
接続部250は、周壁部81を厚み方向に貫通した筒状部材である。接続部250の内部には、第2カバー8の内部と外部を連通させる連通孔250aが設けられている。
連通孔250aは、周壁部81の上面で開口している(
図1参照)。
【0059】
図7に示すように、連通孔250aは、オイルレベルゲージ(図示せず)の挿入口として利用される。オイルレベルゲージを使用しないときには、連通孔250aの開口は、図示しないプラグで封止される。
【0060】
接続部250の連通孔250aには、第2カバー8の内部から、チャージングパイプ200の基端200bが挿入されている。
図4に示すように、回転軸X1から見てチャージングパイプ200は、第2カバー8の上部から、水平線HLを超えて、第2カバー8の下部まで及んで設けられている。
【0061】
前記したように、第1領域825の車両前方側に凹部827が設けられている。凹部827は、上下方向の略中央部が車両前方側に膨出するように僅かに湾曲している。
そのため、凹部827内に配置されたチャージングパイプ200は、基端200bと先端200aとの間の領域が、第1領域825の車両前方側を迂回するように湾曲している。
【0062】
なお、チャージングパイプ200における凹部827に収容された領域は、車両前後方向の変位が、第1領域825における凹部827を形成する湾曲部825b(
図6参照)の部分で規制されている。
【0063】
図4に示すように、チャージングパイプ200では、基端200b側と、先端200a側に、ホルダ205、205が取り付けられている。ホルダ205、205は、図示しないボルトで、第2カバー8に固定されている。すなわち、チャージングパイプ200は、長手方向の一端側(基端200b側)と、他端側(先端200a側)の2箇所で、第2カバー8に固定されている。
この状態においてチャージングパイプ200は、
図7に示すように、ケース6と第2カバー8との接合界面(境界線BL)よりも第2カバー8側に位置している。ハウジングHS内の第1室S1においてチャージングパイプ200は、前記した第2カバー側領域S1b内に位置して、ケース側領域S1a内に膨出しないようになっている。
【0064】
図7に示すように、回転軸X1の径方向から見て、チャージングパイプ200の先端200aは、第1領域825におけるバッフルプレート160に対向する対向領域825dと、バッフルプレート160の側壁部162との間に位置している。
チャージングパイプ200の先端200a側は、対向領域825dと側壁部162により、回転軸X1方向の変位が抑制されている。
【0065】
第2カバー8の下部では、第1領域825の下端部825cが、周壁部81との間に回転軸X1の径方向に間隔を開けて設けられている。第2カバー8の下部では、トルクコンバータT/Cの下部まで及ぶオイル捕捉部S4が形成されている。
オイル捕捉部S4は、チャージングパイプ200の下側で、第1室S1に連絡している。
オイル捕捉部S4から見てケース6側(図中、右側)には、回転伝達機構150により駆動されるメカオイルポンプMOPが位置している。メカオイルポンプMOPは、第1室S1のケース側領域S1a内に位置している。
【0066】
回転伝達機構150は、ドライブスプロケット151と、ドリブンスプロケット152と、チェーン153と、から構成される。
ドライブスプロケット151は、トルクコンバータT/Cのポンプインペラスリーブ155を介して入力される回転駆動力で、回転軸X1回りに回転する。
【0067】
ドライブスプロケット151に入力された回転は、チェーン153を介して、ドリブンスプロケット152に伝達される。ドリブンスプロケット152は、伝達された回転で回転軸X5回りに回転する。ドリブンスプロケット152が回転すると、ドリブンスプロケット152が連結されたメカオイルポンプMOPの回転軸が回転して、メカオイルポンプMOPが駆動される。
これにより、ケース6の下部に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10(
図3参照)を介して吸引される。
【0068】
メカオイルポンプMOPと第2カバー8との間には、バッフルプレート160が設けられている。バッフルプレート160は、回転するドリブンスプロケット152によるオイルOLの攪拌を抑えるために設けられている。
バッフルプレート160は、ドリブンスプロケット152の回転軸X5方向の両側を覆う側壁部161、162と、ドリブンスプロケット152の下部側の外周を覆う周壁部163と、から構成される。
【0069】
図8に示すように、側壁部162は、ドリブンスプロケット152の側面を完全に覆っている。周壁部163は、ドリブンスプロケット152の下部側の外周を覆う範囲に設けられている。
【0070】
側壁部162では、車両前方側の上部に、延出部164が設けられている。
延出部164は、チャージングパイプ200の先端200a側に沿って、斜め上方に直前状に延びている。回転軸X1方向から見て延出部164は、チャージングパイプ200の先端200a側の領域と重なる位置関係で設けられている。
ここで、オイルレベルゲージ(図示せず)を、チャージングパイプ200に挿入すると、チャージングパイプ200の先端200aから、オイルレベルゲージの先端側が、ハウジングHS内に挿入される。この際に、バッフルプレート160が設けられていることにより、挿入されたオイルレベルゲージが、ドリブンスプロケット152と干渉しないようになっている。
【0071】
さらに、
図7に示すように、チャージングパイプ200の先端200a側は、境界線BLに沿って設けられている。境界線BLのケース6側には、バッフルプレート160の側壁部162が位置している。ケース6とは反対側には、ケース6から離れる方向に窪んだオイル捕捉部S4が位置している。
そのため、チャージングパイプ200の先端200aから供給されたオイルOLは、ドリブンスプロケット152側に流れることなく、オイル捕捉部S4内に速やかに流入する。
【0072】
このように、チャージングパイプ200の先端200aの延長上にオイルOLの流れを阻害する物がないので、チャージングパイプ200を用いたハウジングHS内へのオイルOLの注入を速やかに行うことができる。
【0073】
以上の通り、本実施の形態にかかる車両用の動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1は、
エンジンENG(駆動源)の駆動力を駆動輪WH、WHに伝達する動力伝達機構(トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5)と、
動力伝達機構を収容するハウジングHSと、
オイルレベルゲージをハウジングHS内に案内するためのチャージングパイプ200と、を備える。
チャージングパイプ200は、ハウジングHS内に設けられている。
【0074】
このように構成すると、チャージングパイプ200がハウジングHS内部に配置されるので、ハウジングHSの外にチャージングパイプを配置する場合のような動力伝達装置の大型化を制限できる。
【0075】
(2)動力伝達機構は、バリエータ3(無段階変速機構)と、差動装置5(差動機構)を含む。
ハウジングHSのケース6は、バリエータ3と差動装置5を内包する周壁部61(外壁部)と、
周壁部61の内側の空間を、バリエータ3側の第2室S2(空間)と、差動装置5側の第1室S1(空間)とに区画する隔壁部62と、を有する。
チャージングパイプ200は、第1室S1に配置される。
【0076】
ハウジングHSの内部では、バリエータ3側の第2室S2に、チャージングパイプ200を鉛直線VLに沿う上下にレイアウトするための空間的な余裕がない。差動装置5側の第1室S1は、第2室S2に比べて空間的な余裕がある。
すなわち、レイアウトに余裕がある第1室S1側にチャージングパイプ200を配置することで、動力伝達機構を構成する回転要素との干渉避けて、チャージングパイプ200を配置できる。すなわち、チャージングパイプ200と動力伝達機構を構成する回転要素との干渉を防止しやすくなる。
【0077】
(3)ハウジングHSは、
ケース6の周壁部61における差動装置5側の開口を覆う第2カバー8(カバー部)を有する。
チャージングパイプ200は、第2カバー8に支持されている。
【0078】
動力伝達機構の構成部品が多く配置される周壁部61の内側や隔壁部62にチャージングパイプ200を取り付けようとすると、各構成部品に干渉しないように気を使いながら、チャージングパイプ200のボルト止め等を行う必要がある。
第2カバー8にチャージングパイプ200を取り付けることで、ケース6にチャージングパイプ200を設ける場合のような煩わしさがない。これにより、ハウジングHSに対するチャージングパイプ200の組付け性を向上できる。
【0079】
(4)第2カバー8は、
トルクコンバータT/Cの外周に沿う第1領域825(第1壁部)と、
第1領域825の外周を囲むと共に、ケース6の周壁部61に連結される周壁部81(第2壁部)と、を有する。
第1領域825と周壁部81との間の凹部827(空間)に、チャージングパイプ200が配置される。
【0080】
第1領域825と周壁部81との間の径方向の隙間(凹部827)には、動力伝達機構の構成部品や回転体が配置されないため、これらとの干渉に気を使う必要が無い。
よって、ハウジングHSにおけるチャージングパイプ200の組付け性を向上できる。
【0081】
(5)第1領域825と周壁部81との間の凹部827(空間)は、トルクコンバータT/Cの回転軸X1方向から見て、トルクコンバータT/Cの外周に沿う形状で形成されている。
凹部827は、ケース6の第1室S1に連絡している。
チャージングパイプ200は、第1領域825と周壁部81との間の凹部827内で、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VLに沿う向きで配置されている。
チャージングパイプ200は、第2カバー8の上部から、回転軸X1を通る水平線HLを跨いで、第2カバー8の下部側まで及んでいる。
【0082】
このように構成すると、チャージングパイプ200は、トルクコンバータT/Cの外周に沿って、弧状を成すように配置される。
オイルレベルゲージをチャージングパイプ200に挿入すると、チャージングパイプ200の先端側の測定部を、ハウジングHSの上部からオイルOLが貯留されている下部までスムーズに誘導できる。
【0083】
(6)第2カバー8においてチャージングパイプ200は、第1領域825(第1壁部)と周壁部81(第2壁部)とにより、トルクコンバータT/Cの回転軸X1の径方向の変位が規制されている。
【0084】
このように構成すると、チャージングパイプ200の回転軸X1の径方向の変位を抑えることができる。
【0085】
(7)第1領域825と周壁部81との間の凹部827(空間)は、ケース6の第1室S1に連絡している。
第2カバー8では、第1室S1との対向部に、チャージングパイプ200が支持されている。
【0086】
ケース6と第2カバー8との間に形成される第1室S1は、ケース6側の空間であるケース側領域S1aと、第2カバー8側の空間である第2カバー側領域S1bと、から構成される。
上記のように構成すると、チャージングパイプ200が、第2カバー側領域S1bに配置される。第2カバー側領域S1bは、差動装置5が収容されるケース側領域S1aとは別の空間である。
これにより、チャージングパイプ200が動力伝達機構の構成要素、例えば差動装置5や減速機構4を構成する回転体と干渉する可能性を低減できる。
【0087】
(8)チャージングパイプ200は、両端に開口部を有する筒状部材である。
チャージングパイプ200の先端200a(一端)は、ケース6内に配置された回転体であるドリブンスプロケット152の回転軸X5方向の側方に位置している。
ドリブンスプロケット152とチャージングパイプ200の先端200aとの間に、バッフルプレート160の側壁部162(プレート)が配置されている。
【0088】
このように構成すると、チャージングパイプ200の開口部から突出したオイルレベルゲージと、ドリブンスプロケット152との干渉を、側壁部162により防ぐことができる。
【0089】
(9)チャージングパイプ200の基端200b(他端)は、鉛直線VL方向における周壁部81の上部に開口している。
【0090】
チャージングパイプ200の基端200bは、周壁部81の上部に開口する連通孔250aを持つ接続部250に接続されている。
上記のように構成すると、オイルレベルゲージの挿入口となる開口部が、ハウジングHSの上部に開口しているので、オイルレベルゲージのチャージングパイプ200内への挿入を容易に行うことができる。さらに、オイルレベルゲージを、オイルOLが貯留されているハウジングの下部までスムーズに誘導できると共に、誘導したオイルレベルゲージと、ハウジングHS内の回転体との干渉を防ぐことができる。
【0091】
(10)第1領域825(第1壁部)は、
ドリブンスプロケット152の回転軸X5方向で、バッフルプレート66の側壁部162に対向する対向領域825dを有している。
チャージングパイプ200の先端200a側の領域は、対向領域825dと側壁部162により、回転軸X5方向の変位が規制されている。
【0092】
チャージングパイプ200の先端200a側の回転軸X5方向の変位を規制できるので、チャージングパイプ200の振動を好適に防止できると共に、チャージングパイプ200と周囲の部品との干渉を適切に防止できる。
【0093】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電気)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOP共に、収容室S3に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電気)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0094】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 動力伝達装置
2 前後進切替機構(動力伝達機構)
3 バリエータ(無段変速機構、動力伝達機構)
4 減速機構(動力伝達機構)
5 差動装置(差動機構、動力伝達機構)
6 ケース
61 周壁部(外壁部)
62 隔壁部
7 第1カバー
8 第2カバー(カバー部)
81 周壁部(第2壁部)
82 隔壁部
825 第1領域(第1壁部)
825d 対向領域
827 凹部(第1壁部と第2壁部との間の空間)
9 第3カバー
S1 第1室(差動機構側の空間)
S2 第2室(無段変速機構側の空間)
T/C トルクコンバータ(動力伝達機構)
HS ハウジング
152 ドリブンスプロケット(回転体)
160 バッフルプレート(プレート)
200 チャージングパイプ(筒状部材)
200a 先端(一端)
200b 基端(他端)