(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141343
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 5/00 20060101AFI20230928BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230928BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20230928BHJP
H01L 23/06 20060101ALI20230928BHJP
B29C 65/16 20060101ALI20230928BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H05K5/00 C
H05K5/02 J
H01L23/28 K
H01L23/06 Z
B29C65/16
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047619
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡留 寛人
(72)【発明者】
【氏名】大澤 貴子
(72)【発明者】
【氏名】荻巣 祐司
(72)【発明者】
【氏名】下田 大輔
【テーマコード(参考)】
4E360
4F211
4M109
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB08
4E360AB31
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360EA03
4E360EA12
4E360EA24
4E360ED07
4E360EE02
4E360GA23
4E360GA29
4E360GB99
4E360GC06
4E360GC08
4E360GC12
4E360GC17
4E360GC20
4F211AA24
4F211AA28
4F211AA29
4F211AB18
4F211AG07
4F211AH42
4F211AK03
4F211TA01
4F211TA03
4F211TC15
4F211TD11
4F211TN27
4F211TN44
4F211TN47
4M109AA04
4M109CA26
4M109EA12
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB13
4M109EB16
4M109EC01
(57)【要約】
【課題】電子部品に接続されている導体が筐体の内部から外部へ引き出されていても、電子部品を容易かつ高い確実性をもって密閉できる電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含む第一部材21の収容空間23に、電子部品3を配置し、かつ電子部品3に接続された導体4を収容空間23から開口24を通して外部へ引き出す。第一部材21に熱可塑性樹脂を含む第二部材22を、開口24を閉塞するように重ね、第一部材21と第二部材22とで導体4を挟み、かつ第一部材21と第二部材22との各々と導体4との間に、熱可塑性の樹脂被覆6と、熱硬化型の接着剤5とのうち、少なくとも一方を介在させる。第一部材21と第二部材22とをレーザ溶着により接合して筐体2を作製し、かつ樹脂被覆6と接着剤5の硬化物とのうち少なくとも一方を介して第一部材21と第二部材22との各々と導体4とを接着する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含み、内部に収容空間を有し、かつ前記収容空間の内部と外部とを通じさせる開口を有する第一部材と、
熱可塑性樹脂を含む第二部材と、
電子部品と、
前記電子部品に接続されている導体とを用意し、
前記第一部材の前記収容空間に、前記電子部品を配置し、かつ前記電子部品に接続された前記導体を前記収容空間から前記開口を通して前記収容空間の外部へ引き出し、
前記第一部材に前記第二部材を、前記開口を閉塞するように重ね、前記第一部材と前記第二部材とで前記導体を挟み、かつ前記第一部材と前記第二部材との各々と前記導体との間に、前記導体を覆う熱可塑性の樹脂被覆と、熱硬化型の接着剤とのうち、少なくとも一方を介在させ、
前記第一部材と前記第二部材との境界へ向けてレーザ光を照射することで、前記第一部材と前記第二部材とをレーザ溶着により接合し筐体を作製し、かつ前記樹脂被覆と前記接着剤の硬化物とのうち少なくとも一方を介して前記第一部材と前記第二部材との各々と前記導体とを接着する、
電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第一部材に含まれる前記熱可塑性樹脂と、前記第二部材に含まれる前記熱可塑性樹脂との各々は、ポリエステル、ポリアミド、及びポリカーボネートよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する、
請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第一部材は、カーボンを含有する、
請求項1又は2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂被覆を使用し、
前記樹脂被覆が含有する前記熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリエステル及びフッ素含有樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記接着剤を使用し、
前記接着剤は、ウレタン系熱硬化型接着剤、シリコーン系熱硬化型接着剤、アクリル系熱硬化型接着剤、又はエポキシ系熱硬化型接着剤である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子デバイスの製造方法に関し、詳しくは、筐体と、筐体に収容されている電子部品とを備える電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンコントロールユニット(ECU)やセンサー等の電子制御部品等における、電気回路等を密閉するための樹脂成形部品等に関し、成形部品を接合する方法、及び樹脂による注型(ポッティング)を施さずに気密性を得る方法として、レーザ溶着法が検討されていることが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の課題は、筐体と、筐体に収容されている電子部品とを備える電子デバイスを製造するにあたり、電子部品に接続されている導体が筐体の内部から筐体の外部へ引き出されていても、電子部品を筐体によって容易かつ高い確実性をもって密閉できる電子デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る電子デバイスの製造方法では、熱可塑性樹脂を含み、内部に収容空間を有し、かつ前記収容空間の内部と外部とを通じさせる開口を有する第一部材と、熱可塑性樹脂を含む第二部材と、電子部品と、前記電子部品に接続されている導体とを用意する。前記第一部材の前記収容空間に、前記電子部品を配置し、かつ前記電子部品に接続された前記導体を前記収容空間から前記開口を通して前記収容空間の外部へ引き出す。前記第一部材に前記第二部材を、前記開口を閉塞するように重ね、前記第一部材と前記第二部材とで前記導体を挟み、かつ前記第一部材と前記第二部材との各々と前記導体との間に、前記導体を覆う熱可塑性の樹脂被覆と、熱硬化型の接着剤とのうち、少なくとも一方を介在させる。前記第一部材と前記第二部材との境界へ向けてレーザ光を照射することで、前記第一部材と前記第二部材とをレーザ溶着により接合して筐体を作製し、かつ前記樹脂被覆と前記接着剤の硬化物とのうち少なくとも一方を介して前記第一部材と前記第二部材との各々と前記導体とを接着する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、筐体と、筐体に収容されている電子部品とを備える電子デバイスを製造するにあたり、電子部品に接続されている導体が筐体の内部から筐体の外部へ引き出されていても、電子部品を筐体によって容易かつ高い確実性をもって密閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1Aは本開示の実施形態の一例の概略の断面図である。
図1Bは、本開示の実施例の他の例の概略の断面図である。
【
図2】
図2は本開示の実施形態の概略の斜視図である。
【
図3】
図3は本開示の実施形態の概略の斜視図である。
【
図4】
図4は本開示の実施形態の一部の概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.本開示の完成に至るまでの経緯
まず、発明者が本開示の完成に至るまでの経緯の概略について説明する。
【0009】
複雑な形状を有する製品、例えば、エンジンコントロールユニット(ECU)やセンサー等の電子デバイスの筐体は、例えば射出成形などによって成形された樹脂成形品である。筐体内部に電子基板等の電子部品が封入される。
【0010】
電子部品を封入するために、ポッティング法などにより筐体内を樹脂で充填することで電子部品を封止することが行われているが、ポッティング法の場合はポッティング材が重量の増加を招くため、軽量化等のために、ポッティング法以外の方法で電子部品を封入することも検討されている。
【0011】
例えば超音波溶着法や熱板溶着法といった方法によって、二つの樹脂成形品を接合することで筐体を作製し、これにより、筐体内に電子部品を封入することがある。しかし、発明者の調査によると、これらの方法では、振動や熱により電子部品がダメージを負うことがあり、また摩耗粉やバリの発生により後処理が必要になることもある、という問題がある。
【0012】
また、熱可塑性樹脂製の成形部品を接合する方法として、特許文献1に記載されているように、レーザ溶着法が検討されている。この方法では、接触させた樹脂成形品間の境界にレーザ光を照射することで、樹脂成形品同士を溶融接合させる。レーザ溶着法を用いれば、超音波溶着法や熱板溶着法を用いる場合の問題が解消されうる。
【0013】
しかし、発明者は、上記の溶着法では、筐体と、筐体に収容されている電子部品とを備える電子デバイスを製造するにあたり、電子部品に接続されているワイヤーハーネス、バスバー等の導体を筐体の内部から筐体の外部へ引き出そうとした場合、筐体の気密性を確保することが困難である、という問題を見出した。これは、二つの樹脂成形品を組み合わせて、溶着法により樹脂成形品を接合する場合、二つの樹脂成形品の間に導体が挟まれていると、導体と樹脂成形品との間の気密性を確保することが困難になるためである。また、導体が筐体における二つの樹脂成形品が接合する箇所以外の箇所を通過するようにすると、樹脂成形品等の製造工程が煩雑になってしまう。
【0014】
そこで、発明者は、筐体と、筐体に収容されている電子部品とを備える電子デバイスを製造するにあたり、電子部品に接続されている導体が筐体の内部から筐体の外部へ引き出されていても、電子部品を筐体によって容易かつ高い確実性をもって密閉できる電子デバイスの製造方法を提供すべく、本開示の完成に至った。
【0015】
なお、本開示は上記の経緯により完成したものであるが、上記の経緯は、本開示に係る電子デバイスの製造方法の適用範囲を制限するものではない。
【0016】
2.概要
本開示の一実施形態を、
図1A、
図1B、
図2及び
図3に示す。本開示の一実施形態に係る電子デバイス1の製造方法では、熱可塑性樹脂を含み、内部に収容空間23を有し、かつ収容空間23の内部と外部とを通じさせる開口24を有する第一部材21と、熱可塑性樹脂を含む第二部材22と、電子部品3と、電子部品3に接続されている導体4とを用意する。第一部材21の収容空間23に、電子部品3を配置し、かつ電子部品3に接続された導体4を収容空間23から開口24を通して収容空間23の外部へ引き出す(
図2参照)。第一部材21に第二部材22を、開口24を閉塞するように重ね、第一部材21と第二部材22とで導体4を挟み、かつ第一部材21と第二部材22との各々と導体4との間に、導体4を覆う熱可塑性の樹脂被覆6と、熱硬化型の接着剤5とのうち、少なくとも一方を介在させる。第一部材21と第二部材22との境界へ向けてレーザ光7を照射することで、第一部材21と第二部材22とをレーザ溶着により接合して筐体2を作製し、かつ樹脂被覆6と接着剤5の硬化物とのうち少なくとも一方を介して第一部材21と第二部材22との各々と導体4とを接着する(
図3参照)。なお、
図1Aは接着剤5を用いる場合の例を示し、
図1Bは樹脂被覆6を用いる場合の例を示す。
【0017】
本実施形態によると、第一部材21と第二部材22とがレーザ溶着により接合され、かつ導体4と第一部材21及び第二部材22の各々との間が樹脂被覆6と接着剤5の硬化物とのうち少なくとも一方にて接着されているため、筐体2の気密性を確保できる。このため、電子部品3を筐体2内に密閉できる。また、電子デバイス1の製造時には、レーザ溶着のために第一部材21と第二部材22との境界へ向けてレーザ光7を照射することで、導体4を覆う熱可塑性の樹脂被覆6と、熱硬化型の接着剤5とのうち、少なくとも一方を加熱させることができ、これにより、導体4と第一部材21及び第二部材22の各々との間を、樹脂被覆6と接着剤5の硬化物とのうち少なくとも一方にて接着できる。そのため、電子部品3に接続されている導体4が筐体2の内部から筐体2の外部へ引き出されていても、電子部品3を筐体2によって容易かつ高い確実性をもって密閉できる。
【0018】
このため、例えば電子部品3が水分によって損傷を受けやすい場合でも、筐体2における導体4の周囲などから筐体2内へ水分が侵入することが抑制されるため、電子部品3が損傷を受けにくくなる。すなわち、電子デバイス1の耐湿信頼性が向上しうる。
【0019】
また、本実施形態では、筐体2の内部(収容空間23内)にポッティング材等の封止材を充填しなくても、電子部品3を筐体2によって容易かつ高い確実性をもって密閉できる。そのため、ポッティング材による重量増大を抑制できる。なお、密閉性を更に高めるなどの目的で、本実施形態において、筐体2の内部(収容空間23内)にポッティング材等の封止材を充填してもよい。
【0020】
2.第一部材及び第二部材
第一部材21及び第二部材22の詳細について説明する。
【0021】
上記のとおり、第一部材21は、内部に収容空間23を有し、かつ収容空間23の内部と外部とを通じさせる開口24を有する。第二部材22は、第一部材21の開口24を覆うように第一部材21に重ねられうるような形状及び寸法を有する。第二部材22が前記のように第一部材21に重ねられることで、第一部材21と第二部材22とが組み合わされて、筐体2が構成される。
【0022】
第一部材21と第二部材22とは、レーザ溶着により接合される。この場合、例えば第一部材21はレーザ光吸収材、第二部材22はレーザ光透過材として機能する。
【0023】
第一部材21と第二部材22との各々は、上記のとおり、熱可塑性樹脂を含む。例えば第一部材21と第二部材22との各々は、熱可塑性樹脂を含む成形用樹脂組成物を射出成形法等の方法により成形することで、作製される。
【0024】
第一部材21に含まれる熱可塑性樹脂と、第二部材22に含まれる熱可塑性樹脂との各々は、例えばポリエステル、ポリアミド、及びポリカーボネートよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。この場合、第一部材21と第二部材22とをレーザ溶着により接合させることができ、また特にレーザ光透過材である第二部材22に良好なレーザ光透過性を付与できる。第一部材21に含まれる熱可塑性樹脂と、第二部材22に含まれる熱可塑性樹脂との各々が、特にポリエステルを含有する場合、レーザ溶着により第一部材21と第二部材22とを特に容易に接合でき、かつ筐体2が良好な耐熱性を有することができる。なお、熱可塑性樹脂は、前記のみには制限されない。
【0025】
第一部材21及び第二部材22の各々を作製するために使用される成形用樹脂組成物について、説明する。
【0026】
上述のとおり、成形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有し、熱可塑性樹脂は、例えばポリエステル、ポリアミド、及びポリカーボネートよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0027】
熱可塑性樹脂がポリエステルを含有する場合、ポリエステルは、結晶性を有する成分を含んでいてもよく、結晶性を有しない非晶質(アモルファス)の成分を含んでいてもよい。
【0028】
ポリエステルは、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、及びポリエチレンナフタレート系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。ポリエステルが、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を含有することがより好ましい。成形用樹脂組成物がポリブチレンテレフタレート系樹脂を含有することで、第一部材21と第二部材22とをレーザ溶着により特に容易に接合可能となり、かつ筐体2が特に良好な耐熱性を有することができる。
【0029】
ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、例えばテレフタル酸と1,4-ブタンジオールとを含む単量体成分を共重合させることで、合成される。単量体成分は、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとのみを含んでもよい。単量体成分は、更に適宜の多価カルボン酸及びポリオールよりなる群から選択される少なくとも一種の単量体を含んでもよい。多価カルボン酸は、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、シュウ酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含むことができる。ポリオールは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含むことができる。
【0030】
ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートイソフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレートアジペート共重合体、ポリブチレンテレフタレートセバケート共重合体、ポリブチレンテレフタレートデカンジカルボキシレート共重合体、ポリブチレンテレフタレートナフタレート共重合体、及びポリエチレンブチレンテレフタレートよりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。
【0031】
成形用樹脂組成物がポリエステルを含有する場合、成形用樹脂組成物は、更にエポキシ樹脂を含有してもよい。エポキシ樹脂は、ポリエステルと反応することで、成形用樹脂組成物、並びに第一部材21及び第二部材22に、耐加水分解性を付与できる。エポキシ樹脂は、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、及び複素環式エポキシ樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びビスフェノールS型エポキシ樹脂等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。ノボラック型エポキシ樹脂は、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。脂環式エポキシ樹脂は、例えば3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレ-ト、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及び1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。グリシジルエステル類は、例えばフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、及びダイマー酸グリシジルエステル等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。グリシジルアミン類は、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp-アミノフェノール、及びN,N-ジグリシジルアニリン等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。複素環式エポキシ樹脂は、例えば1,3-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン、及びトリグリシジルイソシアヌレート等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。
【0032】
エポキシ樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含有することが好ましく、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含有することがより好ましい。この場合、第一部材21及び第二部材22の耐加水分解性をより向上させることができる。
【0033】
成形用樹脂組成物の固形分全量に対するエポキシ樹脂の百分比は、0.5質量%以上7質量%以下であることが好ましい。このエポキシ樹脂の百分比は、1質量%以上であればより好ましい。また、エポキシ樹脂の百分比は、5質量%以下であればより好ましく、2質量%以下であれば更に好ましい。
【0034】
成形用樹脂組成物は、無機充填材を含有してもよい。無機充填材は、第一部材21及び第二部材22の機械的強度を向上できる。無機充填材は、例えばタルク、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、マイカ、クレー、ワラストナイト、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、及び水酸化マグネシウムからなる少なくとも一種を含有する。成形用樹脂組成物の固形分全量に対する無機充填材の百分比は、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。この場合、第一部材21及び第二部材22の械的強度等の特性を良好にすることができる。また、特に第二部材22を作製するための成形用樹脂組成物において、無機充填材の百分比が0.5質量%以上であると、第二部材22のレーザ光透過性を良好に維持できる。無機充填材の百分比は1質量%以上であればより好ましく、2質量%以上であれば更に好ましい。また無機充填材の百分比は4質量%以下であることが更に好ましい。
【0035】
成形用樹脂組成物は、鱗片状ガラスを含有してもよい。鱗片状ガラスは、第一部材21及び第二部材22における水分の透過を抑制できる。また、第一部材21と第二部材22とをレーザ溶着により接合する際、鱗片状ガラスがレーザ光7を散乱させることで、第一部材21と第二部材22との接合部分における炭化等の損傷(樹脂ヤケ)を生じにくくできる。成形用樹脂組成物が鱗片状ガラスを含有する場合、鱗片状ガラスの百分比は、成形用樹脂組成物の固形分全量に対し、10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。鱗片状ガラスの百分比が35質量%以下であればより好ましい。
【0036】
成形用樹脂組成物は、ガラス繊維を含有してもよい。ガラス繊維は、第一部材21及び第二部材22の機械的強度を向上できる。成形用樹脂組成物がガラス繊維を含有する場合、成形用樹脂組成物の固形分全量に対するガラス繊維の百分比は、10質量%以上20質量%以下であることが好ましい。この場合、第一部材21及び第二部材22の機械的強度をより高めることができる。
【0037】
成形用樹脂組成物は、本開示の目的を逸脱しない限りにおいて、上記以外の成分、例えば添加剤を含有してもよい。添加剤は、例えば離型剤、増粘剤、消泡剤、熱安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、及び紫外線安定剤等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。離型剤としては、例えばステアリン酸、モンタン酸、ミスチリン酸等といった脂肪酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等といった脂肪族酸金属塩、リン酸エステル等の界面活性剤、カルナバワックス、ポリエチレンワックス等を挙げることができる。増粘剤としては、例えばマグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウムからなる群から選択される少なくとも一種の2価の金属の酸化物、若しくは水酸化物、又はアクリルポリマー等を挙げることができる。消泡剤としては、例えばシリコーン系消泡剤が挙げられる。
【0038】
また、特にレーザ光吸収材である第一部材21を作製するための成形用樹脂組成物は、レーザ光吸収性を有する材料を含有することが好ましく、特にカーボンを含有することが好ましい。すなわち、第一部材21は、レーザ光吸収性を有する材料を含有することが好ましく、特にカーボンを含有することが好ましい。この場合、第一部材21と第二部材22とをレーザ溶着により接合する際に、第一部材21がレーザ光7を吸収して発熱しやすく、このため第一部材21と第二部材22とを効率良く接合できる。なお、第一部材21がレーザ光7を吸収して発熱しうるのならば、第一部材21を作製するための成形用樹脂組成物及び第一部材21は、カーボン等のレーザ光吸収性を有する材料を含有しなくてもよい。
【0039】
第一部材21を作製するための成形用樹脂組成物の固形分全量に対する、この成形用樹脂組成物中のカーボンの百分比は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。この百分比は、0.2質量%以上であれば更に好ましい。また、この百分比は、1質量%以下であればより好ましく、0.5質量%以下であれば更に好ましい。
【0040】
また、第一部材21に対する、第一部材21中のカーボンの百分比は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。この百分比は、0.2質量%以上であれば更に好ましい。また、この百分比は、1質量%以下であればより好ましく、0.5質量%以下であれば更に好ましい。
【0041】
成形用樹脂組成物を調製する際は、例えば成形用樹脂組成物の原料を混合してから、加熱混練する。原料に鱗片状ガラスとガラス繊維とのうち少なくとも一方が含まれる場合には、まず鱗片状ガラス及びガラス繊維以外の原料を混合して得られた混合物を加熱してから、この混合物に鱗片状ガラスとガラス繊維とのうち少なくとも一方を加え、続いてこれらを混練することが好ましい。原料を加熱混練することにより得られた物(混練物)を、冷却することで固化させ、更に必要によりペレット状に成形することで、成形用樹脂組成物が得られる。
【0042】
成形用樹脂組成物を、射出成形法等の適宜の方法で成形することで、第一部材21及び第二部材22の各々を作製できる。
【0043】
3.電子部品及び導体
電子部品3は、例えば配線板に半導体チップ等の部品を実装して得られる電子基板であるが、これに限られない。電子部品3には、例えば耐湿性向上のための封止又はコート等が施されている。電子部品3として、例えばシリコーン樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂等の樹脂で封止されているエンジンコントロールユニット又はセンサー等、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂等の樹脂で封止又はコートされている各種マザーボード、並びにエポキシ樹脂等の樹脂で封止されているフイルムコンデンサー等が、挙げられる。
【0044】
電子部品3に接続される導体4は、例えばワイヤーハーネス又はバスバー等の外部接続端子であるが、これらに限られない。導体4は、導電性を有する材質から作製されていればよい。導体4は、例えば銅又はアルミニウム等の金属から作製される。導体4は、合金から作製されていてもよい。導体4には金属メッキが施されていてもよい。電子部品3には一つの導体4が接続されていてもよいが、通常は電子部品3に複数の導体4が接続されている。
【0045】
4.電子デバイスの製造工程
まず、
図2に示すように、第一部材21の収容空間23に、電子部品3を配置する。電子部品3に接続された導体4を収容空間23から開口24を通して収容空間23の外部へ引き出する。続いて、第一部材21に第二部材22を、開口24を閉塞するように重ねる。例えば第一部材21の開口24の周囲にはこの開口24を囲む平坦な面(以下、接合面25という)が形成されており、この接合面25に第二部材22が重なることで、第一部材21に第二部材22が重ねられ、かつ第二部材22によって開口24が閉塞される。
【0046】
また、上記のように第一部材21に第二部材22が重ねられた状態で、第一部材21と第二部材22とで導体4を挟む。
【0047】
さらに、第一部材21と第二部材22とで導体4が挟まれた状態で、第一部材21と第二部材22との各々と導体4との間に、導体4を覆う熱可塑性の樹脂被覆6と、熱硬化型の接着剤5とのうち、少なくとも一方を介在させる。
【0048】
熱可塑性の樹脂被覆6を使用する場合は、導体4の全体が樹脂被覆6で覆われていてもよく、導体4における第一部材21と第二部材22とに挟まれる部分のみが樹脂被覆6で覆われていてもよい。また、接着剤5を使用する場合、接着剤5は、例えば導体4における第一部材21と第二部材22とに挟まれる部分の周りに配置され、導体4が樹脂被覆6により覆われている場合にはこの樹脂被覆6の周りに配置される。
【0049】
次に、
図3に示すように、第一部材21と第二部材22との境界へ向けてレーザ光7を照射することで、第一部材21と第二部材22とをレーザ溶着により接合して筐体2を作製する。レーザ光7は、例えば透過材料である第二部材22を透過させてから、第一部材21と第二部材22との境界において吸収材である第一部材21へ到達するように、すなわち接合面25に到達するように、照射される。これにより、第一部材21がレーザ光7を吸収して発熱し、そのために第一部材21と第二部材22との境界の周囲で第一部材21と第二部材22とが溶融してから固化することで、第一部材21と第二部材22とが接合される。レーザ光7の照射位置を移動させることで、第一部材21と第二部材22との境界の全体にわたってレーザ光7を照射することで、第一部材21と第二部材22との境界の全域において、第一部材21と第二部材22とが接合される。これにより、筐体2が作製される。
【0050】
このように第一部材21と第二部材22とがレーザ溶着による接合される過程において、レーザ光7が、導体4における第一部材21と第二部材22とに挟まれる部分の周囲に照射されると、樹脂被覆6が使用されている場合は、樹脂被覆6が加熱されて溶融してから固化することで、樹脂被覆6によって導体4が第一部材21と第二部材22との各々に接着される。また、接着剤5が使用される場合は、接着剤5が加熱されて硬化することで、接着剤5の硬化物によって、導体4が第一部材21と第二部材22との各々に接着される。また、樹脂被覆6と接着剤5とが併用される場合には、導体4が、樹脂被覆6と接着剤5の硬化物とによって、第一部材21と第二部材22との各々に接着される(
図1A及び
図1B参照)。このため、導体4と、第一部材21及び第二部材22の各々とが密着し、筐体2の気密性が高まる。このため、電子部品3に接続されている導体4が筐体2の内部から筐体2の外部へ引き出されていても、電子部品3を筐体2によって容易かつ高い確実性をもって密閉できる。
【0051】
本実施形態において、導体4における第一部材21と第二部材22とに挟まれている部分の、導体4の第一部材21から第二部材22に向かう方向に沿った厚みは、2mm以下であることが好ましい。この場合、導体4が熱の伝達を阻害しにくいため、レーザ溶着により第一部材21及び第二部材22を接合する際に生じた熱が、樹脂被覆6及び接着剤5に伝わりやすくなり、樹脂被覆6が効率良く溶融し、また接着剤5が効率良く硬化することができる。また、導体4の厚みは、例えば5μm以上であるが、これに限られない。なお、導体4が樹脂被覆6により覆われている場合には、樹脂被覆6を含めた導体4の厚みが、前記の範囲であることが好ましい。
【0052】
また、導体4における第一部材21と第二部材22とに挟まれている部分において、導体4の、開口24の縁に沿った方向の寸法(幅寸法)は、30mm以下であることが好ましい。この場合、第一部材21における、導体4によってレーザ光7が遮蔽される部分が、過大になりすぎないようにでき、そのため導体4によるレーザ溶着の効率低下を、抑制できる。この幅寸法は20mm以下であればより好ましい。導体4の幅寸法は、例えば5μm以上であるが、これに限られない。なお、導体4が樹脂被覆6により覆われている場合には、樹脂被覆6を含めた導体4の幅寸法(導体4と樹脂被覆6との組み合わせの幅寸法)が、前記の範囲であることが好ましい。
【0053】
本実施形態において、第一部材21と第二部材22との少なくとも一方には、第一部材21と第二部材22とで導体4が挟まれている状態で導体4が配置される箇所に、
図4に示すように、凹所8が形成されていてもよい。第一部材21における凹所8は、例えば導体4に向けて開口し、かつ収容空間23側と収容空間23とは反対側とをつなぐ溝状である。第二部材22における凹所8は、例えば導体4に向けて開口し、かつ収容空間23側と収容空間23とは反対側とをつなぐ溝状である。この場合、導体4の少なくとも一部が凹所8内に収まることで、導体4が第一部材21と第二部材22との間に導体4が挟まれていても、第一部材21と第二部材22との間に隙間を生じにくくでき、又は第一部材21と第二部材22との間の隙間を小さくできる。そのため、レーザ溶着により第一部材21と第二部材22とを接合する際の、処理効率を高めることができ、また、筐体2の密閉性を特に高めることができる。
【0054】
凹所8の寸法は、レーザ溶着により接合された第一部材21と第二部材22との間に隙間が生じないように適宜設定されるが、凹所8の深さ寸法は、導体4の厚みよりも小さいことが好ましく、例えば第一部材21における凹所8の深さ寸法と第二部材22における凹所8の深さ寸法との合計(第一部材21と第二部材22とのうち一方のみが凹所8を有する場合はその凹所8の深さ寸法)が導体4の厚みの1/2である。なお、ここでいう導体4の厚みは、導体4が樹脂被覆6により覆われている場合には、導体4のみの厚みに樹脂被覆6の厚みを加えた厚みである。
【0055】
なお、レーザ溶着により第一部材21と第二部材22とを接合することで筐体2の密閉性を確保できるのであれば、第一部材21及び第二部材22に凹所8が形成されていなくてもよい。
【0056】
本実施形態において、樹脂被覆6を使用する場合、樹脂被覆6は、第一部材21の融点と、第二部材22の融点との、いずれよりも低い融点を有することが好ましい。この場合、第一部材21と第二部材22とをレーザ溶着により接合する過程において発生した熱で、樹脂被覆6を確実に溶融させることができる。このため、筐体2の気密性を、より容易かつ確実に高めることができる。なお、第一部材21、第二部材22及び樹脂被覆6の各々の融点は、後述する実施例において示される方法で測定される。
【0057】
樹脂被覆6が含有する熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリエステル及びフッ素含有樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。この場合、レーザ溶着により第一部材21と第二部材22とを接合する際に、樹脂被覆6が特に溶融しやすく、このため樹脂被覆6によって筐体2の密閉性を特に向上しうる。熱可塑性樹脂がフッ素含有樹脂を含有する場合、フッ素含有樹脂は、例えばテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0058】
樹脂被覆6が含有する熱可塑性樹脂が、ポリエステルを含有すれば、特に好ましい。ポリエステルは、環境への負荷をかけにくく、かつ適度に低い融点を有するために樹脂被覆6によって筐体2の密閉性が特に向上しうる。
【0059】
本実施形態において、接着剤5を使用する場合、接着剤5は、ウレタン系熱硬化型接着剤、シリコーン系熱硬化型接着剤、アクリル系熱硬化型接着剤、又はエポキシ系熱硬化型接着剤であることが好ましい。この場合、第一部材21と第二部材22とをレーザ溶着により接合する際に、接着剤5を十分に硬化させることができ、かつ接着剤5の硬化物が水分を透過させにくくなる。接着剤5が、エポキシ系熱硬化型接着剤であれば、特に好ましい。この場合、接着剤5の硬化物が水分を特に透過させにくくなる。エポキシ系熱硬化型接着剤が、アミン類とチオール類とのうち少なくとも一方を含有することも好ましい。なお、接着剤5は、前記のみには制限されない。
【0060】
レーザ溶着により第一部材21と第二部材22とを接合する際のレーザ光7の照射条件に関しては、レーザ光7の波長は例えば880nm以上1200nm以下である。レーザ光7は、例えばYAGレーザ、Nd:YAGレーザ、又は半導体レーザ等であるが、これらに限られない。レーザ光7の出力は、第一部材21及び第二部材22の材質及び厚み等に応じて、第一部材21と第二部材22とが十分に接合されるように適宜調整されうる。レーザ光7の出力は、例えば9W以上であることが好ましく、20W以上であればより好ましい。また、第一部材21及び第二部材22が過度に加熱されて変形及び損傷などが生じないように、レーザ光7の出力は200W以下であることが好ましく、40W以下であれば更に好ましい。
【0061】
レーザ光7の照射位置の移動速度も第一部材21及び第二部材22の材質及び厚み等に応じて、第一部材21と第二部材22とが十分に接合されるように適宜調整されうる。この移動速度は3000mm/秒以下であることが好ましい。またこの移動速度は、処理効率を考慮すると10mm/秒以上であることが好ましく、100mm/秒以上であればより好ましい。
【0062】
レーザ溶着により第一部材21と第二部材22とを接合する際、樹脂被覆6を十分に加熱して溶融させ、また接着剤5を十分に加熱して硬化させるためには、レーザ光7の照射位置を導体4の位置及びその近傍で移動させる際に、照射位置の移動速度を低下させてもよい。導体4の位置及びその近傍で、レーザ光7の照射位置を往復移動させてもよい。レーザ光7の照射位置が導体4の位置及びその近傍にある場合に、レーザ光7の出力を高めてもよい。
【0063】
レーザ光7の照射条件は、上記のみに限られず、第一部材21と第二部材22とが十分に接合されるように設定されればよい。
【0064】
レーザ溶着により第一部材21と第二部材22とを接合する際の、第二部材22におけるレーザ光7が透過する部分の厚みは、2mm以下であることが好ましい。この場合、第二部材22内でのレーザ光7の過度な減衰が起こりにくく、そのためレーザ溶着の効率を良好に保つことができる。また、この厚みは0.1mm以上であることが好ましい。この場合、筐体2における水分の透過が抑制されうる。
【実施例0065】
以下、本実施形態の具体的な実施例を提示する。なお、本実施形態は、下記の実施例のみに制限されるものではない。
【0066】
1.第一部材及び第二部材
(1)第二部材のための成形用樹脂組成物(第二組成物)の調製
下記のポリエステル樹脂1を40.0質量部、ポリエステル樹脂2を25.0質量部、エポキシ樹脂を1.0質量部、及び無機充填材を4.0質量部配合して、ブレンダーで混合した。これにより得られた混合物に鱗片状ガラスを30.0質量部加えてから、混合物を、シリンダー温度を260℃に加熱した二軸押出混練機で混練した。これにより得られた物(混練物)を、水中で冷却してから、ペレタイザーにより、2~4mm程度のペレット状に切断することで、成形用樹脂組成物(以下、第二組成物という)のペレットを得た。
-ポリエステル樹脂1:ポリブチレンテレフタレート(PBT:PolyButyleneterephthalate)樹脂(東レ株式会社製 品名トレコンPBT1200)。
-ポリエステル樹脂2:ポリエチレンテレフタレート(PET:PolyEthyleneterephthalate)樹脂(株式会社クラレ製 品名クラペットPETKL236R)。
-エポキシ樹脂:o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量210g/eq.)。
-無機充填材:タルク、林株式会社製のミクロンホワイト#500S(L値95)。
-鱗片状ガラス:日本板硝子株式会社製 品名MEG160FY-M01。マイクログラスファインフレーク(登録商標)。Eガラス。平均厚みt:0.7μm、平均粒径a:160μm。
【0067】
(2)第一部材のための成形用樹脂組成物(第一組成物)の調製
第二組成物における樹脂材料のうちの1質量%を、カーボンブラックを含有するマスターバッチ品に置換したこと以外は、第二組成物の場合と同様にして、第一組成物を調製した。なお、マスターバッチ100質量部に対するこのマスターバッチ中のカーボンブラックの量は33質量部である。
【0068】
(3)第一部材及び第二部材の作製
第一組成物を恒温槽で140℃4時間の条件で乾燥させた。続いて、第一組成物を射出成形法で成形することで、第一部材を作製した。第一部材の外形寸法は、76mm×76mm×32mm、第一部材内の収容空間の寸法は72mm×72mm×30mmである。
【0069】
また、第二組成物を恒温槽で140℃4時間の条件で乾燥させた。続いて、第二組成物を射出成形法で成形することで、第二部材を作製した。第二部材の寸法は、76mm×76mm×1mmである。
【0070】
また、実施例1-5において、第一部材の接合面に、表1に示す寸法の、断面矩形状の溝状の凹所を形成した。なお、第二部材には凹所は形成しなかった。
【0071】
2.電子部品及び導体
70mm×70mm×2mmのFR-4相当の基板に、銅箔から作製された導体配線を設け、さらに基板の中央に20mm×20mm×0.5mmの寸法の半導体チップを実装した。このとき、ダイボンド材として銀ペーストを使用し、半導体チップの上面の回路及びパッドをアルミニウムで形成し、このパッドと導体配線とをアルミニウムワイヤーで接続した。これにより、電子部品を作製した。
【0072】
実施例1、3、4では、電子部品における基板の導体配線に、導体として六個のハーネスを接続した。実施例2、5及び比較例では、電子部品における基板の導体配線に、導体として二つのバスバーを接続した。各実施例及び比較例における導体の断面寸法(厚み及び幅寸法)は、表1に示すとおりである。また、実施例1、3、4では、導体が表1に示す材質からなる樹脂被覆で覆われており、表1に示す導体の断面寸法は、樹脂被覆を含めない寸法である。
【0073】
3.電子デバイスの製造
第一部材の収容空間内に電子部品を入れ、かつ電子部品に接続されている導体を第一部材の開口から収容空間の外部に引き出した。実施例1-5においては、導体を、第一部材の凹所を通るように配置した。
【0074】
第二部材を第一部材に、第二部材で第一部材の開口を閉塞するように重ね、かつ第一部材と第二部材とで導体を挟んだ。また、実施例2、3、5では、導体の周りに表1に示す品番のパナソニック株式会社製の熱硬化型エポキシ系接着剤を塗布することで、導体と第一部材及び第二部材の各々との間に熱硬化型エポキシ系接着剤を介在させた。
【0075】
パナニックデバイスSUNX株式会社製のガルバノスキャニング式レーザー加工機(型番VL-W1500)を使用し、波長655nm、出力20Wのレーザ光を、第二部材を透過させてから、第一部材の接合面に到達するように照射し、かつレーザ光の照射位置を100mm/gの速度で移動させることで、第一部材と第二部材とをレーザ溶着により接合した。これにより電子デバイスを製造した。
【0076】
また、参考例1として、実施例2において、第一部材に第二部材を接合せず、第一部材のみで筐体が構成された電子デバイスを用意し、また参考例2として、実施例2において、第一部材に第二部材を接合せず、第一部材内をポッティング材で封止して作製した電子デバイスを用意した。
【0077】
4.製品重量
電子デバイスの重量を電子天秤で測定した。
【0078】
5.信頼性試験
電子デバイスの2つの導体間に50Vの電圧を印加しながら、導体間の電流値(初期電流値)を測定し、初期電流値が4.5Aから5.5Aの間に収まることを確認した。
【0079】
続いて、電子デバイスにおける二つの導体間に100Vの電圧を印加した状態で、電子デバイスを85℃、85%RHの雰囲気に1000時間曝露した。
【0080】
続いて、電子デバイスの2つの導体間に50Vの電圧を印加しながら、導体間の電流値を測定した。その結果、得られた電流値と初期電流値との間の差の絶対値が、初期電流値の20%以内である場合を「良」、20%を超える場合を「不良」と、評価した。
【0081】
【0082】