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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141354
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/337 20060101AFI20230928BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20230928BHJP
   B41M 5/46 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41M5/337 210
B41M5/40 213
B41M5/46 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047636
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】森本 郁稔
(72)【発明者】
【氏名】三原 直人
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB02
2H026BB21
2H026DD02
2H026DD53
2H026FF07
(57)【要約】
【課題】記録光の波長選択制の幅を拡げて装置構成を簡略化しつつ、記録光の発振波長のバラつき(温度変化等含む)の影響を低減して、安定した画像記録を行う。
【解決手段】実施形態の記録媒体は、それぞれが吸収ピークの異なる吸収スペクトルを有する複数の光熱変換材を含み、複数の光熱変換材の合成吸収スペクトルを吸収スペクトルとする感熱発色層を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが吸収ピークの異なる吸収スペクトルを有する複数の光熱変換材を含み、前記複数の光熱変換材の合成吸収スペクトルを吸収スペクトルとする感熱発色層を備える、
記録媒体。
【請求項2】
互いに前記合成吸収スペクトルの中心吸収波長が異なるとともに、互いに発色時の温度閾値が異なって独立して発色可能な複数の前記感熱発色層を備える、
請求項1記載の記録媒体。
【請求項3】
複数の前記感熱発色層は、積層されており、
前記中心吸収波長が短い前記感熱発色層ほど、記録光の入射側に積層されている、
請求項2記載の記録媒体。
【請求項4】
複数の前記感熱発色層を含む層の総厚は、記録光の焦点深度以下とされている、
請求項2または請求項3に記載の記録媒体。
【請求項5】
前記感熱発色層は、互いに発色時の色が異なるn層(nは、3以上の整数)設けられており、マルチカラー記録が行える、
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の記録媒体。
【請求項6】
前記感熱発色層は、中心周波数が異なる複数の記録光を吸収可能であり、前記複数の記録光のうちいずれの記録光に対しても発色可能な前記合成吸収スペクトルとされている、
請求項1記載の記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチカラーレーザー記録システムにおいて用いる記録媒体は、特定の波長を吸収して発熱する光熱変換材を発色層近傍に配置し、記録光としてのレーザ光を照射することによって発色するようにされていた。
【0003】
これにより、発色させる色毎に吸収する波長が異なる複数種の光熱変換材を用い、その吸収波長に合わせて記録する記録光としてのレーザ光の波長を選択することでマルチカラー記録が行えるようにされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-138558号公報
【特許文献2】特許第3509246号公報
【特許文献3】特許第4411394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、記録光としてのレーザ光の波長は、採用する記録媒体によって規定され、記録光の波長選択性の幅が狭かった。
さらに周囲環境温度あるいはレーザ光源自体の温度変化により、記録光の発振波長のバラつきの影響を大きく受け、発色が不安定となり、安定した画像記録が行えない虞があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、記録光の波長選択制の幅を拡げて装置構成を簡略化しつつ、記録光の発振波長のバラつき(温度変化等含む)の影響を低減して、安定した画像記録を行うことが可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、実施形態の記録媒体は、それぞれが吸収ピークの異なる吸収スペクトルを有する複数の光熱変換材を含み、複数の光熱変換材の合成吸収スペクトルを吸収スペクトルとする感熱発色層を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の記録媒体の情報記録がなされた状態における外観正面図である。
図2図2は、記録媒体の一部断面斜視図である。
図3図3は、光熱変換材の光吸収特性の一例の説明図である。
図4図4は、光熱変換材の原理構成説明図である。
図5図5は、実施形態の画像記録装置の概要構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に実施形態について図面を参照して説明する。
まず、実施形態の記録媒体について説明する。
[1]第1実施形態
図1は、実施形態の記録媒体の情報記録がなされた状態における外観正面図である。
【0010】
情報記録がなされた記録媒体MDは、大別すると、証明写真等のフルカラー画像を記録するフルカラー画像形成領域ARCと、フルカラー画像形成領域ARCの周囲に接する画像形成領域として形成され、ID情報、氏名、発行日などの特定情報がモノクロで記録されたモノクロ画像形成領域ARMと、を備えている。
【0011】
図1においては、記録媒体MDにおいて、フルカラー画像形成領域ARC及びモノクロ画像形成領域ARM以外の領域が存在しているが、フルカラー画像形成領域ARCを除く他の全ての領域をモノクロ画像形成領域ARMとしてもよい。
【0012】
また図1においては、フルカラー画像形成領域ARCとモノクロ画像形成領域ARMを接するように構成していたが、分離して配置してもよいし、いずれか一方あるいは双方を複数配置するようにしてもよい。
【0013】
次に記録媒体MDの構成について説明する。
図2は、記録媒体の一部断面斜視図である。
図2においては、記録媒体MDにレーザ光を照射している状態を示しており、符号32は、後述する画像記録装置において、レーザ光を集光する集光レンズである。
記録媒体MDは、図2に示すように、基材101上に、第1発色層102、第1中間層103、第2発色層104、第2中間層105、第3発色層106及び保護層107がこの順番で形成されている。
【0014】
ここで、第1発色層102は、感熱発色層として機能しており、第1発色層102には、シアン(C)の発色を行わせるための第1光熱変換材108が分散(混合)されている。
同様に第2発色層104は、感熱発色層として機能しており、第2発色層104には、マゼンタ(M)の発色を行わせるための第2光熱変換材109が分散(混合)されている。
第3発色層106は、感熱発色層として機能しており、第3発色層106には、イエロー(Y)の発色を行わせるための第3光熱変換材110が分散(混合)されている。
【0015】
上記構成において、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110は、単一の材料ではなく、後述するように複数の光熱変換材料が混合された混合材料である。
【0016】
また、第1中間層103及び第2中間層105は、伝熱量を調整し、伝熱を抑制する断熱層として機能している。
【0017】
また、基材101は、第1発色層102、第1中間層103、第2発色層104、第2中間層105、第3発色層106及び保護層107を保持する。
【0018】
上記構成において、基材101の厚みは、例えば、100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~5.00W/m/Kとされる。
【0019】
第1発色層102、第2発色層104及び第3発色層106は、光が照射されておらず、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109あるいは第3光熱変換材110が光熱変換を行っておらず、熱が加えられていない初期状態においては無色透明である。
【0020】
しかしながら、光が照射され、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109あるいは第3光熱変換材110が光熱変換を行っている状態では、熱が加えられることによって、発色する。
本実施形態では、第1発色層102は、低温閾値t1以上の温度の熱によってシアンが発色する。
【0021】
また、第2発色層104は、中温閾値t2以上の温度の熱によってマゼンタが発色する。
さらに、第3発色層106は、高温閾値t3以上の温度の熱によってイエローが発色する。
ここで、低温閾値t1<中温閾値t2<高温閾値t3である。
【0022】
さらに、第1発色層102、第2発色層104及び第3発色層106の厚みは、例えば、それぞれ1~50μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0023】
第1中間層103は、第2発色層104の発色時に熱的障壁を与え、第2発色層104側からの第1発色層102への伝熱を抑制する層である。
ここで、第1中間層103の厚みは、例えば、7~100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0024】
第2中間層105は、第3発色層106の発色時に熱的障壁を与え、第3発色層106側からの第2発色層104及び第1発色層102への伝熱を抑制する層である。
ここで、第2中間層105の厚みは、例えば、7~100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0025】
保護層107は、第1発色層102、第1中間層103、第2発色層104、第2中間層105、第3発色層106を保護するために設けられる層である。
ここで、保護層107の厚みは、例えば、0.5~10μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~1W/m/Kとされる。
【0026】
次に第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110の光吸収特性について詳細に説明する。
【0027】
図3は、光熱変換材の光吸収特性の一例の説明図である。
図3示すように、第1光熱変換材108は、吸収スペクトルSPYに示すように、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110のうち、もっとも短い波長側に吸収ピークPK1を有する光吸収特性を有している。
【0028】
また、第3光熱変換材110は、吸収スペクトルSPCに示すように、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110のうち、もっとも長い波長側に吸収ピークPK3を有する光吸収特性を有している。
【0029】
そして、第2光熱変換材109は、吸収スペクトルSPMに示すように、第1光熱変換材108の吸収ピークPK1の波長と、第3光熱変換材110の吸収ピークPK3の波長との間の波長に、吸収ピークPK2を有する光吸収特性を有している。
【0030】
したがって、光ファイバFBY(イエロー)に対応するレーザダイオードLDの出射するレーザ光の波長は、吸収ピークPK3に対応する波長とされ、光ファイバFBM(マゼンタ)に対応するレーザダイオードLDの出射するレーザ光の波長は、吸収ピークPK2に対応する波長とされ、光ファイバFBC(シアン)に対応するレーザダイオードLDの出射するレーザ光の波長は、吸収ピークPK1に対応する波長とされている。
【0031】
この場合において、図4に示したように、吸収ピークPK1、PK2、PK3の近傍において、吸収率が平坦になっているのは、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110のそれぞれにおいて、例えば、吸収ピークの近い複数の光熱変換材料を混合して構成しているからである。
【0032】
ここで、光熱変換材の構成についてより詳細に説明する。
この場合において、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110の構成原理については同様であるので、第1光熱変換材108を例として説明する。
【0033】
図4は、光熱変換材の原理構成説明図である。
図4(A)に示すように、第1光熱変換材108の吸収スペクトルは、例えば、吸収ピークPK11~PK15を有する5種類の光熱変換材料の吸収スペクトルの合成吸収スペクトルとして構成されている。
【0034】
すなわち、吸収ピークPK11~PK15を有する5種類の光熱変換材料の吸収スペクトルの合成吸収スペクトルは、図4(B)に示すように、吸収ピークPK1の吸収スペクトルSPYとして表されることとなる。
【0035】
このような構成を採ることで、吸収率が高い領域を、ピークPK11~PK15ではなく、全体として平坦に近づけることができ、レーザダイオードLD自身の動作中の温度変化や、周囲環境温度の影響、すなわち、記録光の中心波長の変動の影響を低減して安定して所望濃度の画像記録を行うことができる。
【0036】
次に実施形態の画像記録装置について説明する。
図5は、実施形態の画像記録装置の概要構成ブロック図である。
画像記録装置10は、画像データGDが入力され、画像記録のための各種計算を行う計算部11と、計算部11の計算結果に基づいて記録媒体MDにおける記録位置の制御を行う位置制御部12と、計算部11の計算結果に基づいて、記録媒体MDの各記録位置において、複数(図5の例では、3個)のレーザダイオードLDを備えた光源部13と、光源部13における各レーザダイオードLDの出力制御を行う出力制御部14と、各レーザダイオードLDが出射した記録光としてのレーザ光を伝送する複数の光ファイバFBY、FBM、FBCを備えたファイバ部15と、ファイバ部15を介して伝送されたレーザ光を出射して画像記録を行う記録ヘッド部16と、位置制御部12の制御下で、記録媒体MDを保持し、X-Y方向への駆動を行う保持駆動部17と、を備えている。
【0037】
ここで、複数のレーザダイオードLDは、複数のレーザ光源として機能している。
さらに、計算部11、位置制御部12、出力制御部14は、協働して、入力された画像データGDに基づいて、レーザ光源である複数のレーザダイオードLD及び駆動部である保持駆動部17を制御する制御部として機能している。
【0038】
上記構成において、記録ヘッド部16は、複数(図5では、3本)の光ファイバFBY、FBM、FBCを保持するファイバハウジング31と、光ファイバFBY、FBM、FBCを出射した記録光を集光する集光レンズ32と、ファイバハウジング31及び集光レンズ32を所定位置に保持するためのケーシング33と、を備えている。
【0039】
保持駆動部17は、記録媒体MDを所定位置に載置し、保持するためのステージ41と、ステージ41をX方向へガイドするX方向テーブル42と、位置制御部12の制御下でX方向テーブル42を駆動するX方向駆動モータ43と、ステージ41をY方向へガイドするY方向テーブル44と、位置制御部12の制御下でY方向テーブル44を駆動するY方向駆動モータ45と、を備えている。
【0040】
ここで、光ファイバFB及び集光レンズ32は、導光部材として機能しており、光ファイバFBYは、イエローに対応しており、光ファイバFBは、マゼンタに対応しており、光ファイバFBCは、シアンに対応しており、光ファイバFBY、FBM、FBCの3本で一組となってマルチカラー記録を実現している。
図5の例においては、光ファイバFBY、FBM、FBCは、複数画素(例えば、3画素(3ピクセル))分離間して配置されている。
【0041】
ここで、各光ファイバFBY、FBM、FBC同士の離間距離、すなわち、記録位置の離間距離は、一般的には、画素(ピクセル)間の距離のm(mは、整数)倍の位置とされるが、これは隣接する光ファイバによる同一の画素に対して記録を行う場合に、前回の画像記録の影響(特に熱)の影響を受けないように時間間隔(冷却時間)及び物理的な間隔を設けるためである。
【0042】
次に各層を構成する材料について説明する。
まず基材101について説明する。
基材101としては、一般的にカード、紙、フィルム素材として用いられる、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、グリコール変性ポリエステル(PET-G)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂などフィルム状あるいは板状に加工できる樹脂を用いることが可能である。
【0043】
さらには、上述した樹脂にフィラーとして、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナなどを添加して白色性や表面の平滑性、断熱性等を有する樹脂を基材101として用いることも可能である。
【0044】
例えば、また、これらのほかに特許第3889431号公報、特許第4215817号公報、特許第4329744号公報、特許第4391286号公報、などに記載の紙(用紙)および樹脂材料を使用可能である。
【0045】
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(A-PET、PETG)、ポリシクロヘキサン1,4-ジメチルフタレート(PCT)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、透明ABS(MABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、アクリル樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、スチレン/アクリル樹脂、エチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアマイド樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、生分解性樹脂、セルロース系樹脂等のその他の樹脂、紙基材、金属素材等が使用できる。
【0046】
なお、上記の樹脂類およびフィラーは一例であり、加工性、機能性を満たせば他の材料を使用することも可能である。
【0047】
上記構成において、好ましくは白色ないし透明な樹脂を使用することが望ましい。
ここで透明とは、可視光領域における光透過率が、可視光領域を平均して30%以上であることをいう。
【0048】
次に第1発色層102、第2発色層104、第3発色層106、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110について説明する。
第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110としては、ポリメチン系のシアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、無機酸化物粒子等、アゾ系色素、ナフトキノン系やアントラキノン系のキノン系色素、酸化セリウム、スズ酸化インジウム、アンチモン酸化スズ、セシウム酸化タングステン、六ホウ化ランタン、などが使用可能である。
【0049】
また、第1発色層102、第2発色層104及び第3発色層106に含まれるバインダ樹脂としては、ニトロセルロース、燐酸セルロース、硫酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、パルミチン酸セルロース、ミリスチン酸セルロース、セルロースアセテテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル類、ポリエステル系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂が使用可能である。
【0050】
また、第1発色層102、第2発色層104及び第3発色層106に含まれるバインダ樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミドなどのビニル系樹脂、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸などのアクリル樹脂類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリアクリレート樹脂類、エポキシ樹脂類、フェノール樹脂類なども使用可能である。
【0051】
特に、PET系樹脂、PETG、PVC系樹脂、PVA系樹脂、PC系樹脂、PP系樹脂、PE系樹脂、ABS系樹脂、ポリアミド系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などがその代表である。さらに、第1発色層102、第2発色層104及び第3発色層106としてこれらの樹脂をベースにしたコポリマーやシリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンなどの添加物を加えたものが使用可能である。
【0052】
第1発色層102、第2発色層104及び第3発色層106としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル、など透明性の高い樹脂類をバインダとして、ある閾値の温度を超えた時に発色する色材としては、ロイコ染料、ロイコ色素又は示温材料、並びに顕色剤を用いる。
【0053】
ロイコ染料、ロイコ色素又は示温材料としては、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチル-インドール-3-イル)フタリド、7-(1-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7-(4-ジエチルアミノ-2-メチル-フェニル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン、1-(2,4-ジクロロ-フェニルカルバモイル)-3,3-ジメチル-2-オキソ-1-フェノキシ-ブチル]-(4-ジエチルアミノーフェニル)-カルバミン酸イソブチルエステル、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン=CVL)、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-アミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ニトロフタリド、3,3-ビス3-ジメチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-(2-フルオロフェニルアミノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(2-フルオロフェニルアミノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-7-(N-メチルアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-イソアミルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N,N-ジエチルアミノ-7-o-クロルアニリノフルオラン、ローダミンBラクタム、3-メチルスピロジナフトピラン、3-エチルスピロジナフトピラン、3-ベンジルスピロナフトピランなどの発色染料を用いルことが可能である。
【0054】
また、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用できる。
例えば、活性白土、酸性白土等の無機物質、無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物またはその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物等の有機系顕色剤などが顕色剤として挙げられるが、フェノール系化合物が好ましい。
【0055】
顕色剤の具体例としては、ビス3-アリル-4-ヒドロキシフェニルスルホン、ポリヒドロキシスチレン、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸の亜鉛塩、3-オクチル-5-メチルサリチル酸の亜鉛塩、フェノール、4-フェニルフェノール、4-ヒドロキシアセトフェノン、2,2′-ジヒドロキシジフェニル、2,2′-メチレンビス(4-クロロフェノール)、2,2′-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′-イソプロピリデンビス(2-クロロフェノール)、4,4′-イソプロピリデンビス(2-メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2-メチルフェノール)、4,4′-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、2,2′-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-n-ヘプタン、4,4′-シクロヘキシリデンビス(2-イソプロピルフェノール)、4,4′-スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物の塩、サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジル等などが挙げられる。
【0056】
次に第1中間層103及び第2中間層105について説明する。
第1中間層103及び第2中間層105としては、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリスチレン、ポリアクリル等を用いることができる。
【0057】
保護層107は、必要に応じて設ければ良く、具体的な機能としては、機械的保護及び紫外線カットの機能の他、ホログラム、レンチキュラーレンズ、マイクロアレイレンズ、紫外励起型の蛍光インク等の偽造防止アイテム等の機能を持たせるようにしてもよい。
また、保護層107の下に記録されるカラー記録やモノクロ記録を記録終了後に視認する必要があるため、無色透明が好ましい。
【0058】
次に画像記録装置10における記録媒体MDへの記録処理について説明する。
本実施形態の画像記録装置10は、1ラインずつ記録媒体MDを走査して画素単位で画像記録を行っている。
【0059】
この場合において、各光ファイバFBY、FBM、FBC同士の離間距離、すなわち、記録位置の離間距離を画素(ピクセル)間の距離のm(mは、整数)倍の位置とした場合、走査は、画素(ピクセル)間の距離のm倍単位でなされる。
より具体的には、m=3の場合、画素間距離の3倍の距離単位で走査がなされる。
【0060】
この場合において、画像データGDに基づいて、イエロー発色用の光ファイバFBYはレーザ光(中心波長=PK1)を照射し、マゼンタ発色用の光ファイバFBMはレーザ光(中心波長=PK2)を照射し、シアン発色用の光ファイバFBCはレーザ光(中心波長=PK3)を照射する。
【0061】
この場合において、走査方向がX方向に沿ったものである場合、ステージ上の記録媒体MDがX方向テーブルにより駆動されて、イエロー発色用の光ファイバFBYが走査方向先頭に位置しており、走査方向において最初に発色を行う場合には、光ファイバFBYの記録位置に移動され、当該光ファイバFBYの位置を基準として、光ファイバFBM、FBCが記録対象位置にある場合には、記録を行うこととなる。
【0062】
以下、同様にして、走査を行い、走査方向においてもっとも近い記録位置に移動して、記録を行って、画像を形成することとなる。
より詳細には、光ファイバFBYによりレーザ光(中心波長=PK1)のみが照射された記録位置は、イエローが発色する。
【0063】
また光ファイバFBMによりレーザ光(中心波長=PK2)のみが照射された記録位置は、マゼンタが発色する。
また光ファイバFBCによりレーザ光(中心波長=PK3)のみが照射された記録位置は、シアンが発色する。
【0064】
さらに光ファイバFBYによりレーザ光(中心波長=PK1)が照射され、かつ、光ファイバFBCによりレーザ光(中心波長=PK3)が照射された記録位置においては、レッド(=イエロー+シアン)が発色する。
【0065】
さらに光ファイバFBMによりレーザ光(中心波長=PK2)が照射され、かつ、光ファイバFBCによりレーザ光(中心波長=PK3)が照射された記録位置においては、ブルー(=マゼンタ+シアン)が発色する。
【0066】
さらに光ファイバFBYによりレーザ光(中心波長=PK1)が照射され、かつ、光ファイバFBMによりレーザ光(中心波長=PK2)が照射された記録位置においては、グリーン(=イエロー+マゼンタ)が発色する。
【0067】
さらにまた、光ファイバFBYによりレーザ光(中心波長=PK1)が照射され、光ファイバFBMによりレーザ光(中心波長=PK2)が照射され、かつ、光ファイバFBCによりレーザ光(中心波長=PK3)が照射された記録位置においては、黒(灰)(=イエロー+マゼンタ+シアン)が発色する。
これらの結果、イエロー、マゼンタ及びシアンを3原色とするマルチカラー記録が行えることとなる。
【0068】
上述したように、本第1実施形態によれば、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110は、それぞれが吸収ピークの異なる吸収スペクトルを有する複数の光熱変換材を含み、複数の光熱変換材の合成吸収スペクトルを吸収スペクトルとする感熱発色層としての第1発色層102、第2発色層104及び第3発色層106を構成している。
したがって、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110の実効的な吸収スペクトル(合成吸収スペクトル)は、吸収率が高い領域が全体として平坦となっている。
この結果、第1発色層102、第2発色層104及び第3発色層106が発色するに際しては、レーザダイオードLD自身の動作中の温度変化や、周囲環境温度の影響を受けにくくなる。
すなわち、第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110の実効的な吸収スペクトル(合成吸収スペクトル)は、吸収率が高い領域が全体として平坦となっているため、第1発色層102、第2発色層104及び第3発色層106においては、レーザダイオードLD自身の動作中の温度変化や、周囲環境温度の影響、すなわち、記録光の中心波長の変動の影響を低減して安定して所望濃度の画像記録が行え、ひいては、所望の色合いを有するフルカラー画像を得ることができる。
【0069】
[2]第2実施形態
上記第1実施形態はフルカラーの画像記録を行う場合の実施形態であったが、本第2実施形態は、モノクロームの画像記録を行う場合の実施形態である。
本第2実施形態の画像記録装置の構成は第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は援用するものとする。
【0070】
ここで、第2実施形態の記録媒体について説明する。
本第2実施形態の記録媒体は、モノクロームの画像記録を行うものであるので、基材上に、発色層及び保護層がこの順番で形成されている。
【0071】
ここで、発色層には、黒(BK)の発色を行わせるための光熱変換材が分散(混合)されている。
【0072】
本第2実施形態では、発色層は、所定の温度閾値以上の温度の熱によって黒が発色するが、図3に吸収スペクトルSPMCで示すように、光熱変換材は、第1実施形態における第1光熱変換材108、第2光熱変換材109及び第3光熱変換材110のいずれの吸収ピークも含む広範な波長範囲で光を吸収して、光熱変換がなされるようになっている。
【0073】
このように、光熱変換材が広範な波長範囲で光熱変換を行うことが可能なのは、吸収ピークが異なる複数の光熱変換材料を混合して、より平坦な光吸収特性を実現するようにしているからである。
【0074】
このように構成とすることによって、環境温度及びレーザダイオードLD自身の動作中の温度変化の影響を受けることなく、第1実施形態におけるいずれのレーザダイオードLDによっても発色を行え、安定したモノクロームの画像記録を行える。
【0075】
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、第1実施形態の場合と比較して、3本の光ファイバで同時に3画素の画像記録を行えるので、3倍の速度で画像記録を行える。一般的には、n本の光ファイバでモノクロームの画像記録を行う場合には、n本の光ファイバでn色でマルチカラーの記録を行う場合に比較して、一回の記録でn画素の画像記録が行えるので、最大でn倍の速度で画像記録を行える。
【0076】
この場合においても、同時に記録を行う光ファイバについては空間的に離間して配置することができるので、画像記録時に、ある記録対象の画素において発生する熱が他の記録対象の画素に与える影響を低減して、安定した画像記録を行える。
【0077】
また隣接する画素の記録を時間的にも離すことができ、安定した記録と高速記録とを両立することができる。
また隣設する画素に対しては、所定時間経過後に画像記録を行うので、安定した記録と、高速記録を両立することが可能となる。
【0078】
[3]実施形態の変形例
本実施形態の画像記録装置の制御部は通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0079】
本実施形態の画像記録装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、USBメモリ、SSD(Solid State Drive)などの半導体メモリ装置、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0080】
また、本実施形態の画像記録装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の画像記録装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0081】
また、本実施形態の画像記録装置で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0083】
例えば、以上の説明においては、記録ヘッドを固定し、記録媒体を駆動して走査するようにしていたが、記録ヘッドの走査を行うようにし、記録媒体を固定するように構成することも可能である。
【0084】
また、以上の説明においては、フルカラー記録として、イエロー、マゼンタおよびシアンの3色を用いる場合について説明したが、4色以上の色を用いるようにすることも可能である。
また、2色(例えば、黒、赤)で記録を行うようにすることも可能である。
【0085】
これらの場合においては、使用する色数(異なる色の発色層数)をn(nは、2以上の整数)とした場合に、少なくとも光ファイバの記録位置の離間距離を画素間距離(画素中心位置間の距離)のn倍の距離とすればよい。
なお、この場合において、走査速度が高いと、記録対象の画素に対し、隣接する画素における熱の影響を受けるおそれがあるので、nより大きな整数倍の距離を設定するのが好ましい。
【0086】
以上の説明においては、導光部材として、光ファイバを用いる場合について説明したが、これに限らず、シート状あるいは板状の光導波路で構成するようにすることも可能である。
また、導光部材として、一つの集光レンズを用いる構成としていたが、各導光部材に対応するマイクロレンズを設けるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 画像記録装置
11 計算部
12 位置制御部
13 光源部
14 出力制御部
15 ファイバ部
16 記録ヘッド部
17 保持駆動部
31 ファイバハウジング
32 集光レンズ
33 ケーシング
41 ステージ
42 X方向テーブル
43 X方向駆動モータ
44 Y方向テーブル
45 Y方向駆動モータ
101 基材
102 第1発色層(感熱発色層)
103 第1中間層
104 第2発色層(感熱発色層)
105 第2中間層
106 第3発色層(感熱発色層)
107 保護層
108 第1光熱変換材
109 第2光熱変換材
110 第3光熱変換材
A~V 画素位置
FBC 光ファイバ(シアン)
FBM 光ファイバ(マゼンタ)
FBY 光ファイバ(イエロー)
GD 画像データ
LD レーザダイオード
MD 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5