(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141367
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液体噴射装置及び液体噴射装置を備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B23Q11/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047658
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】504404216
【氏名又は名称】冨松工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】冨松 健二
(57)【要約】
【課題】作業性の高い液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】一対の腕部30によって工作機械の作業領域を囲う位置に液体を帯状に噴射する噴射部40を位置決めすることにより、工作機械の作業領域を囲う位置に液体を帯状に噴射することができ、帯状の液体により切削屑やミスト等が作業領域から飛散する可能性を低減した液体噴射装置20を提供することができる。この液体噴射装置20は、一対の腕部30の噴射部40が互いに隣接する位置である閉位置と、噴射部が互いに離間する開位置と、に位置決めされるため、加工作業中は閉位置とすることで切削屑やミスト等が作業領域から飛散する可能性を低減し、加工作業が終了した後は、開位置とすることにより、腕部30が移動しない場合と比較して、作業領域を清掃したり、工具14を交換したりする際の作業性を向上させることができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に設けられた加工台を含む領域である作業領域の外周位置に液体を噴射する工作機械用の液体噴射装置であって、
液体を帯状に噴射する噴射長孔を有する噴射部が一端側に設けられた一対の腕部と、
前記噴射部が互いに隣接する位置である閉位置と、前記噴射部が互いに離間する開位置と、に前記一対の腕部を位置決めする第一駆動手段と、
を備えることを特徴とする、
液体噴射装置。
【請求項2】
前記噴射長孔は、前記噴射部の一端側から他端側方向に長孔形状に設けられており、
前記一対の腕部が前記閉位置に位置決めされた際、前記一対の腕部のそれぞれの前記噴射部が互いに隣接し、前記作業領域の外周に沿った位置に位置することを特徴とする、
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記腕部を、前記作業領域の外周位置に位置する作業位置から、前記作業位置から遠ざかる方向に移動した退避位置に移動する第二駆動手段と、
を備え、
前記腕部は、前記作業位置から前記退避位置に移動する際、前記閉位置から前記開位置に位置決めした後に、前記退避位置に移動することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記一対の腕部は、前記腕部の外周側に位置し、前記噴射長孔に液体を供給する供給部と、前記供給部から供給された前記液体を前記噴射長孔に供給する流通路と、を有し、
前記流通路は、前記供給部と対向する位置に凹部を有していることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記噴射長孔は、前記凹部が設けられている位置の幅が、他の部分の幅よりも広く形成されていることを特徴とする、
請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記噴射長孔は、円弧形状であり、閉位置において、前記一対の腕部のそれぞれに設けられた前記噴射長孔が略円形形状に位置することを特徴とする、
請求項1から5のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の液体噴射装置を備えたことを特徴とする、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置及び液体噴射装置を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、ワークの切削加工時に、切削屑やミストなどが飛散する。そこで、切削屑等の飛散を防止するため、切削液によるシャワーカーテンを工具の周りに形成する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置は、閉環状に形成されたシャワーノズルユニットを備え、シャワーノズルユニットの内側を、主軸が上下移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、シャワーノズルユニットが閉環状に形成されているため、工具の交換時やワークの確認時などにおいて、シャワーノズルユニットが邪魔になり、作業性が低下するという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、作業性の高い液体噴射装置を提供することを主目的とする。また、このような液体噴射装置を備えた工作機械を提供することも、目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の液体噴射装置は、
工作機械に設けられた加工台を含む領域である作業領域の外周位置に液体を噴射する工作機械用の液体噴射装置であって、
液体を帯状に噴射する噴射長孔を有する噴射部が一端側に設けられた一対の腕部と、
前記噴射部が互いに隣接する位置である閉位置と、前記噴射部が互いに離間する開位置と、に前記一対の腕部を位置決めする第一駆動手段と、
を備えることを趣旨とする。
【0008】
この液体噴射装置は、一対の腕部によって工作機械の作業領域を囲う位置に噴射部を位置決めし、この噴射部から液体を帯状に噴射することで、工作機械の作業領域を囲う位置に液体を帯状に噴射する。こうすることにより、加工台を含む領域である作業領域を囲う位置に帯状の液体の層が形成され、作業領域で切削等を行った際に発生する切削屑やミスト等がこの液体の層に阻まれ、作業領域から飛散する可能性を低減することができる。このとき、一対の腕部は、噴射部が互いに隣接する位置である閉位置と、噴射部が互いに離間する開位置と、に位置決めされるため、加工作業中は閉位置とすることで切削屑やミスト等が作業領域から飛散する可能性を低減することができる。加えて、加工作業が終了した後は、開位置とすることにより、一対の腕部にそれぞれ設けられた噴射部が互いに離間し、この噴射部の間から作業領域を清掃したり、作業領域の工具を交換したりすることができるため、腕部が固定されている場合と比較して、作業性を向上させることができる。さらに、加工作業中に一時的に開位置にすることで加工作業の状態を視認しやすくすることができるため、加工状況の確認を行うこともできる。
【0009】
本発明の液体噴射装置において、前記噴射長孔は、前記噴射部の一端側から他端側方向に長孔形状に設けられており、前記一対の腕部が前記閉位置に位置決めされた際、前記一対の腕部のそれぞれの前記噴射部が互いに隣接し、前記作業領域の外周に沿った位置に位置することを特徴としてもよい。液体を帯状に噴射する噴射長孔が作業領域の外周に沿った位置に位置することにより、作業領域を囲う位置に帯状の液体の層が形成され、作業領域で切削等を行った際に発生する切削屑やミスト等がこの液体の層に阻まれ、作業領域から飛散する可能性を低減することができる。こうすることにより、加工作業中は閉位置とすることで切削屑やミスト等が作業領域から飛散する可能性を低減し、加工作業が終了した後は、開位置とすることにより、腕部が移動しない場合と比較して、作業領域を清掃したり、工具を交換したりする際の作業性を向上させることができる。また、加工作業中に一時的に開位置にすることで加工作業の状態を視認することができるため、加工状況を確認しやすい。
【0010】
本発明の液体噴射装置において、前記腕部を、前記作業領域の外周位置に位置する作業位置から、前記作業位置から遠ざかる方向に移動した退避位置に移動する第二駆動手段と、を備え、前記腕部は、前記作業位置から前記退避位置に移動する際、前記閉位置から前記開位置に位置決めした後に、前記退避位置に移動することを特徴としてもよい。このように、腕部を開位置とすることにより、作業領域に工具が備えられた状態であっても、一方の腕部の噴射部と他方の腕部の噴射部との間を工具が通過可能になるため、腕部を作業領域の外周に位置する作業位置から退避位置に移動することができ、退避位置に移動できない場合と比較して、作業領域を清掃したり、工具を交換したりする際の作業性をより向上させることができる。
【0011】
本発明の液体噴射装置において、前記一対の腕部は、前記腕部の外周側に位置し、前記噴射長孔に液体を供給する供給部と、前記供給部から供給された前記液体を前記噴射長孔に供給する流通路と、を有し、前記流通路は、前記供給部と対向する位置に凹部を有していることを特徴としてもよい。このように、腕部の外周側に供給部を設けることにより、腕部が移動する際に供給部に接続されるチューブ等の導水手段が噴射部から噴射される液体の射線を遮り、噴射される帯状の液体による層の形成を妨げる可能性を未然に低減することができる。加えて、流通路の供給部に対向する位置には凹部を設けることにより、供給部から勢いよく供給された液体が凹部周囲で一度対流することになり、流通路を通過する際の水流を安定させることができる。こうすることにより、凹部を有しない場合と比較して、噴射長孔から噴射される液体の量を均一に近づけることができ、幅が均一に近い帯状の液体を噴射することができる。
【0012】
この態様を採用した本発明の液体噴射装置において、前記噴射長孔は、前記凹部が設けられている位置の幅が、他の部分の幅よりも広く形成されていることを特徴としてもよい。こうすることにより、全ての幅が均一に形成されている場合と比較して、噴射部から噴射される液体の量を均一に近づけ、帯状の液体の幅を均一に近づけることができる。
【0013】
本発明の液体噴射装置において、前記噴射長孔は、円弧形状であり、閉位置において、前記一対の腕部のそれぞれに設けられた前記噴射長孔が略円形形状に位置することを特徴としてもよい。こうすることにより、作業領域の外周に沿って略円形形状に液体を噴射することができるため、切削屑やミスト等が作業領域から飛散する可能性を低減することができる。
【0014】
本発明の工作機械は、上述したいずれかの液体噴射装置を備えることを趣旨とする。
【0015】
この工作機械は、上述したいずれかの液体噴射装置を備えるものである。上述した液体噴射装置は、切削屑やミスト等が作業領域から飛散する可能性を低減したり、作業領域を清掃したり、工具を交換したりする際の作業性を向上させることができるものであるから、これを備えた工作機械も同様の効果をえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】工作機械10の構成の概略を示す概略側面図である。
【
図2】斜め上から視認した液体噴射装置20の構成の概略を示す斜視図である。
【
図3】斜め下から視認した液体噴射装置20の内部構成の概略を示す斜視図である。
【
図4】第一腕部30aの構成の概略を示す底面図である。
【
図5】腕部30の動きを説明するための説明図であり、(a)が作業位置を、(b)が退避位置を、それぞれ示す。
【
図6】腕部30の動きを説明するための説明図であり、(a)が閉状態を、(b)が開状態を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態の一例として、液体噴射装置20を備えた工作機械10について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、工作機械10及び液体噴射装置20の動作の一例を示すことで、本発明の工作機械及び液体噴射装置の動作の一例も明らかにする。
【0018】
本発明の実施の形態の一例である工作機械10は、
図1に示すように、上下方向に移動する主軸12と、主軸12に取り付けられた工具14と、前後左右に移動する加工台13と、ベース部16のレール17(
図3参照)に移動可能に取り付けられ、第一駆動手段18によって、加工台13を含む作業領域Rの周囲に帯状の液体を噴射する液体噴射装置20と、を備え、前面側には開閉可能な扉19が備えられている。この工作機械10は、加工台13に設置したワークWに対して、工具14によって切削等の加工を施す。このとき、加工台13を含む作業領域Rの周囲に帯状の液体を噴射する液体噴射装置20が備えられているため、加工時に切削屑やミスト等が発生した場合でも、液体噴射装置20から噴射される液体によって飛散が妨げられ、作業領域Rから飛散する可能性を低減することができる。なお、ここで「液体」とは、水や、水に適宜成分を添加した水系液体、油などを用いることができ、例えば、ワークWの加工に使用する研削液などを用いてもよい。
【0019】
ベース部16は、
図3に示すように、金属製の部材であり、上面側が工作機械10の内側面に固定されている(
図1参照)。このベース部16には、板状のレール17と、第一駆動手段18と、が備えられている。このベース部16には、液体噴射装置20が支持部22を介して移動可能に支持されており、第一駆動手段18が駆動すると、レール17に沿って液体噴射装置20が移動し、主軸12を含む作業領域Rを一対の腕部30で囲い込む作業位置(
図5(a)参照)と、腕部30が作業領域Rから後側へ移動した退避位置(
図5(b)参照)と、にそれぞれ位置決めされる。このように、液体噴射装置20を退避位置に移動させることにより、作業領域Rを清掃したり、工具14を交換したりする際に腕部30が作業を阻害しないため、作業性をより向上させることができる。
【0020】
第一駆動手段18は、液体噴射装置20を移動可能な機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、公知の空気や水や油などを用いる流体圧シリンダであってもよいし、モータや電磁ソレノイドやその他のアクチュエータを用いてもよい。
【0021】
液体噴射装置20は、
図2及び
図3に示すように、板状のレール17及び第一駆動手段18と移動可能に支持される金属製の固定部材である支持部22と、第一回転軸24a及び第二回転軸24b(以下、「回転軸24」とも言う。)によって支持部22に回動可能に取り付けられた第一腕部40a及び第二腕部40b(以下、「腕部40」とも言う。)と、支持部22に固定され、回転軸24を回動軸として腕部30を回動する第二駆動手段26と、を備える。この液体噴射装置20は、第二駆動手段26が駆動すると、回転軸24を回転軸として腕部30が回動し、第一噴射部40aと第二噴射部40b(以下、「噴射部40」とも言う。)と、が隣接した状態で主軸12を含む作業領域Rを囲い込む閉状態(
図6(a)参照)と、第一噴射部40aと第二噴射部40bが離間した状態である開状態(
図6(b)参照)と、に変化する。こうすることにより、噴射部40から液体を噴射する際、作業領域Rを囲い込む位置に液体を噴射することができると共に、腕部30を開位置とすることにより、作業領域Rに工具14が備えられた状態であっても、第一噴射部40aと第二噴射部40bとの間を工具14が通過可能になるため、液体噴射装置20を作業位置から退避位置に移動することができ、腕部30を回動できない場合と比較して、作業領域Rを清掃したり、工具14を交換したりする際の作業性をより向上させることができる。
【0022】
支持部22は、ベース部16のレール17に前後方向へ移動可能に支持される金属製の部材であり、第二駆動手段26を固定するとともに、第一回転軸24a及び第二回転軸24bで、第一腕部30a及び第二腕部30bをそれぞれ回転可能に固定する。こうすることにより、腕部40は、主軸12が通る作業領域Rを一対の腕部30で囲い込む作業位置(
図5(a)参照)と、腕部30が作業領域Rから後側へ移動した退避位置(
図5(b)参照)との間を回転することができる。
【0023】
第二駆動手段26は、外力によって伸縮するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、公知の空気や水や油などを用いる流体圧シリンダであってもよいし、モータや電磁ソレノイドやその他のアクチュエータを用いてもよい。
【0024】
腕部30は、
図3に示すように、噴射部40が設けられている一端側から他端側に向かって延伸し、回転軸24の位置で外側方向(
図3中、左右方向)へ屈曲する鉤形状に形成された金属製の部材である。この腕部30の他端側はそれぞれ第二駆動手段26と連結されており、第二駆動手段26が伸縮すると、第二駆動手段26の伸縮に伴って腕部30の他端側が移動し、回転軸24で回動することで、噴射部40が互いに近づかせたり、離間させたりすることができる。具体的には、第二駆動手段26が伸長すると、第二駆動手段26の伸長に伴って腕部30の他端側がそれぞれ外側方向に移動し、回転軸24で回動することにより、一端側に位置する噴射部40が互いに近づく方向に移動する。こうすることにより、噴射部40が作業領域Rを囲い込む位置(開状態,
図5(a)参照)に配置することができる。一方、第二駆動手段26が短縮すると、第二駆動手段26の短縮に伴って腕部30の他端側がそれぞれ内側方向に移動し、回動軸24で回動することにより、一端側に位置する噴射部40が互いに遠ざかる方向に移動する。こうすることにより、第一噴射部40aと第二噴射部40bとが離れた位置(閉位置,
図5(b)参照)に配置することができる。このように、腕部30を開状態(
図6(b)参照)に位置決めすることで、作業領域Rに工具14が備えられた状態であっても、第一噴射部40aと第二噴射部40bとの間を工具14が通過することができ、液体噴射装置20を作業位置(
図5(a)参照)から退避位置(
図5(b)参照)に移動することができる。こうすることにより、腕部30を回動できない場合と比較して、作業領域Rを清掃したり、工具14を交換したりする際の作業性をより向上させることができる。
【0025】
第一噴射部40aは、
図4に示すように、半円弧形状に形成された金属製の部材であり、一面側(工作機械10に取り付けられた際の下方側)に、液体を噴射する第一噴射長孔42aが、外周側に第一供給部34aが、それぞれ設けられており、第一供給部34aと第一噴射長孔42aは第一流通路32aによって連結されている。こうすることにより、図示しない液体供給源から図示しないホースを介して第一供給部34aに供給された液体は、第一流通路32aを介して第一噴射長孔42aから噴射される。このとき、腕部30が閉状態に位置する際には、第一噴射部40aはそれぞれ半円弧形状であるため、第一噴射部40aと第二噴射部40bとが隣接することで全体として円環状となり、作業領域Rの外周位置に液体を噴射することができる。こうすることにより、加工時に生じる切削屑やミスト等が作業領域から飛散する可能性を低減することができる。なお、第二噴射部40bについても同様であるため、ここでは説明を省略する。また、以下の説明において、第一噴射部40a及び第二噴射部40bを噴射部40と、第一噴射長孔42a及び第二噴射長孔42bを噴射長孔42と、第一流通路32a及び第二流通路32bを流通路32と、それぞれ言うこともある。
【0026】
第一噴射長孔42aは、第一噴射部40aの一面側(工作機械10に取り付けられた際の下方側)に設けられた半円弧形状であってスリット状の長孔に形成されており、腕部30が閉状態に位置する際には、第一噴射長孔42aと第二噴射長孔42bとが互いに隣接することで、噴射長孔42が略円形形状となる位置に形成されている。このように、第一噴射長孔42aを略円形形状のスリット状に形成することにより、第一噴射長孔42aから液体を噴射した際、帯状に噴射することができる。加えて、閉状態で略円形形状を形成するため、作業位置において、閉状態で第一噴射長孔42aから液体を噴射する際、作業領域Rの外周位置に帯状の液体を噴射することができ、この帯状の液体によって加工時に生じる切削屑やミスト等が作業領域Rから飛散する可能性を低減することができる。加えて、第一噴射長孔42aは、第一流通路32aの第一凹部44aが形成されている位置と対向する位置の開口幅Y3が、他の位置の開口幅Y1及び開口幅Y2のそれぞれ2倍となる幅に形成されている。こうすることにより、噴射長孔42から液体が噴射される際、噴射される液体の幅が略均一に噴射することができる。なお、第二噴射長孔42bについても同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0027】
第一流通路32aは、第一供給部34aから供給した液体を第一噴射長孔42aに供給するための流通路であり、第一供給部34aと連接する第一領域32aaと、第一領域32aaと連接し第一領域32aaよりも短い第二領域32abと、からなり、第一領域32aaと第二領域32abとの間の位置には、第一凹部44aが設けられている。こうすることにより、第一供給部34aから供給された液体が第一凹部44aで一度対流することになり、第一流通路32aを通過する際の水流を安定させることができる。このような理由は定かではないが、発明者が試行した結果、第一凹部44aを有しない場合と比較して、第一噴射長孔42aから噴射される液体の量を均一に近づけることができ、幅が均一に近い帯状の液体を噴射することができる。なお、第二流通路32bについても同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
また、この第一流通路32aにおいて、第二領域32abの流通路断面積が、第一領域32aaの流通路断面積よりも大きく形成されている。具体的には、第二領域32abの流通路幅X2が、第一領域32aaの流通路幅X1よりも大きく形成されている。こうすることにより、液体が第一供給部34aから供給された際、流通路幅が広い第一領域32aaに流通路幅が狭い第二領域32abよりも多く液体が流れることになるため、流通路が長い第一流通路32aの先端まで均一に液体を供給することができ、第一噴射長孔42aから液体が噴射される際、噴射される液体の幅が略均一に噴射することができる。なお、第二流通路32bについても同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0029】
加えて、第一流通路32aにおいて、第一領域32aaの末端部の断面積が第一領域32aaの始端部の断面積よりも大きく形成されている。具体的には、第一領域32aaの末端部には、内側へ円弧状に凹む凹部状に形成されている。これにより、第一領域32aaの末端部の流通路幅X3が、第一領域32aaにおける末端部以外の部位の流通路幅X1よりも大きく、第二領域32abの流通路幅X2と同じ幅に設定されている。このような理由は定かではないが、発明者が試行した結果、第一領域32aaの末端部の流通路幅X3と第二領域32abの流通路幅X2とを同じ幅にすることにより、第一噴射長孔42aから液体が噴射される際、噴射される液体の幅が略均一に噴射することができる。なお、第二流通路32bについても同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0030】
ここで、腕部30の動きについて、
図5及び
図6を用いて、詳しく説明する。腕部30は、工作機械10を使用する前は、作業領域Rから離れた退避位置(
図5(b)参照)に開状態(
図6(b)参照)に位置する。工作機械10を使用する際、加工台13にワークWが積置されると、腕部30は、第一駆動手段18によって退避位置から作業位置に位置決めされる。このとき、腕部30を退避位置から作業位置に移動する際、工具14が第一噴射部40aと第二噴射部40bとの間を通過することができるため、工具14を取り付けた状態のまま、腕部30を作業位置に移動することができる。続いて、第二駆動手段26によって、開状態(
図6(b)参照)から閉状態(
図6(a)参照)に変化する。こうすることにより、作業領域Rを囲う位置に腕部30が位置することで、作業領域Rの外周位置に噴射部40から帯状に液体が噴射されることにより、作業領域RでワークWを加工した際に生じる切削屑やミスト等が帯状の液体に阻害され、作業領域Rから飛散する可能性を低減することができる。
【0031】
一方、加工終了後には、第二駆動手段26によって、腕部30が閉状態から開状態に変化させ、作業位置から退避位置に移動する。このとき、腕部30を作業位置から退避位置に移動する際、工具14が第一噴射部40aと第二噴射部40bとの間を通過することができるため、工具14を取り付けた状態のまま、腕部30を作業位置に移動することができる。なお、ここで、
図5は、腕部30の動きを説明するための説明図であり、(a)が作業位置を、(b)が退避位置を、それぞれ示す。また、
図6は、腕部30の動きを説明するための説明図であり、(a)が閉状態を、(b)が開状態を、それぞれ示す。
【0032】
以上詳述した実施の形態の工作機械10によれば、一対の腕部30によって工作機械10の作業領域Rを囲う位置に液体を帯状に噴射する噴射部40を位置決めすることにより、工作機械10の作業領域Rを囲う位置に液体を帯状に噴射することができ、帯状の液体により切削屑やミスト等が作業領域Rから飛散する可能性を低減することができる。このとき、一対の腕部30は、噴射部40が互いに隣接する位置である閉位置と、噴射部が互いに離間する開位置と、に位置決めされるため、加工作業中は閉位置とすることで切削屑やミスト等が作業領域Rから飛散する可能性を低減し、加工作業が終了した後は、開位置とすることにより、腕部30が移動しない場合と比較して、作業領域Rを清掃したり、工具14を交換したりする際の作業性を向上させることができる。また、加工作業中に一時的に開位置にすることで加工作業の状態を視認することができるため、加工状況の確認を行うこともできる。
【0033】
また、噴射長孔42は、噴射部40の一端側から他端側方向に長孔形状に設けられており、一対の腕部40が閉位置に位置決めされた際、第一噴射部40aと第二噴射部40bとが互いに隣接し、作業領域Rの外周に沿った位置に位置するため、作業領域Rの外周に沿った位置に位置する長孔形状の噴射長孔42から帯状の液体を噴出することにより、切削屑やミスト等が作業領域Rから飛散する可能性を低減することができる。加えて、加工作業中は閉位置とすることで切削屑やミスト等が作業領域Rから飛散する可能性を低減し、加工作業が終了した後は、開位置とすることにより、腕部30が移動しない場合と比較して、作業領域Rを清掃したり、工具14を交換したりする際の作業性を向上させることができる。また、加工作業中に一時的に開位置にすることで加工作業の状態を視認することができるため、加工状況の確認を行うこともできる。
【0034】
更に、第二駆動手段26が腕部30を作業位置から退避位置に移動する際、閉位置から開位置に位置決めした後に、退避位置に移動することにより、作業領域Rに工具14が備えられた状態であっても、第一噴射部40aと第二噴射部40bとの間を工具14が通過可能になるため、工具14を取り外すこと無く、腕部30を作業位置から退避位置に移動することができる。このため、退避位置に移動できない場合や退避位置に移動する前に工具14を取り外す必要がある場合と比較して、作業領域Rを清掃したり、工具14を交換したりする際の作業性をより向上させることができる。
【0035】
更にまた、供給部34は腕部30の外周側であって、腕部30の一端側より他端側に近い位置に設けられており、流通路32の供給部34と対向する位置には凹部44が設けられているため、腕部30が移動する際に供給部34に接続される図示しないチューブ等の導水手段が噴射長孔42から噴射される液体の射線を遮り、作業領域Rの外周に沿って液体を噴出することを妨げる可能性を未然に低減することができる。加えて、流通路32の供給部34に対向する位置に凹部44を設けることにより、供給部34から勢いよく供給された液体が凹部44の周囲で一度対流することになり、流通路32を通過する際の水流を安定させることができる。こうすることにより、凹部44を有しない場合と比較して、噴射長孔42から噴射される液体の量を均一に近づけることができ、幅が均一に近い帯状の液体を噴射することができる。
【0036】
加えて、噴射長孔42は、凹部44が設けられている位置の幅が、他の部分の幅よりも広く形成されているため、全ての幅が均一に形成されている場合と比較して、噴射長孔42から噴射される液体の量を均一に近づけ、幅が均一に近い帯状の液体を噴射することができる。
【0037】
加えて更に、噴射長孔42は、円弧形状であり、閉位置において、略円形形状に位置するため、作業領域Rの外周に沿って略円形形状に液体を噴射することができ、切削屑やミスト等が作業領域から飛散する可能性を低減することができる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施の形態では、噴射部40は半円弧形状であるものとしたが、三角形、四角形等の多角形形状であってもよい。この場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0040】
上述した実施の形態では、噴射長孔42は半円弧形状であるものとしたが、三角形、四角形等の多角形形状であってもよい。また、噴射部40と噴射長孔42の形状が異なっていてもよい。これらの場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上述した実施の形態で示すように、工作分野、特に工作機に取り付けて使用する液体噴射装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
R…作業領域、W…ワーク、10…工作機械、12…主軸、13…加工台 14…工具、16…ベース部、17…レール、18…第一駆動手段、19…扉、20…液体噴射装置、22…支持部、24…回転軸、24a…第一回転軸、24b…第二回転軸、26…第二駆動手段、30…腕部、30a…第一腕部、30b…第二腕部、32…流通路、32a…第一流通路、32aa…第一領域、32ab…第二領域、32b…第二流通路、32ba…第一領域、32bb…第二領域、34…供給部、34a…第一供給部、34b…第二供給部、40…噴出部、40a…第一噴出部、40b…第二噴出部、42…噴射長孔、42a…第一噴射長孔、42b…第二噴射長孔、44…凹部、44a…第一凹部、44b…第二凹部。