(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141375
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ロータリージョイント
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20230928BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20230928BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B25J19/00 F
B25J19/00 G
H02J50/10
H01F38/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047667
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】591113024
【氏名又は名称】株式会社近藤製作所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 拓也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CY04
3C707CY12
3C707CY13
3C707GS11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型で、ユニット間において、伝送効率の低下を防ぎつつ、高い信頼性を持って電力と電気信号の伝送を可能にすることができるロータリージョイントを提供する。
【解決手段】電気信号回路と電力回路と伝送ユニットAを有する固定側ユニットと、電気信号回路と電力回路と伝送ユニットBを有し、前記固定側ユニットに対して、1軸を中心に回転自在に保持された回転側ユニットとの間で、電力及び電気信号の非接触伝送を行うロータリージョイントにおいて、前記電力回路に整合回路を有していることにより、供給電力容量を増やして、大電力の送電を可能とし、伝送ユニット内の電気信号伝送コイル及び電力伝送コイルをフェライトシートで覆うことで、伝送コイル同士の電磁誘導による効率的な電気信号の双方向通信及び、電力の伝送ができ、且つ小型化が可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号回路と電力回路と伝送ユニットAを有する固定側ユニットと、電気信号回路と電力回路と伝送ユニットBを有し、前記固定側ユニットに対して、1軸を中心に回転自在に保持された回転側ユニットとの間で、電力及び電気信号の非接触伝送を行うロータリージョイントにおいて、前記電力回路に整合回路を有していることを特徴とするロータリージョイント。
【請求項2】
前記伝送ユニットA及び前記伝送ユニットBは、同心円状の凹部が2箇所形成され、一方の凹部に前記電気信号回路に接続された電気信号伝送コイルと、他方の凹部に前記電力回路に接続された電力伝送コイルと、前記電気信号伝送コイル及び電力伝送コイルを覆う磁性体を有しており、該磁性体がフェライトシートで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリージョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのアーム先端部などに設けられるロータリージョイントに関する。さらに詳しくは、流体と電気を固定側ユニットから回転側ユニットに連通する相対的に回転を行う二部材間に配設され、配管と電気配線をコンパクトにまとめたロータリージョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを用いた搬送工程や溶接工程などに用いられるロータリージョイントは、モーターを制御して作業を行う電動ハンドや、サーボガンなどのツールを使用している場合、該ツールを動かすためには、モーターや制御機器用の電力線と信号線などが必要となる。このため多関節ロボットのような自由度の高いロボットでは、ロボットの動きに追従して動力源や信号線が振り回されることになる。かかる自由度の高いロボットでは、他の機械と干渉しないようにロータリージョイントを経由して必要な配線が施されている。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2には、ロータリージョイントの構成として、回転側ユニットとロボットアームに対してフローティングして回り止めされた固定側ユニットと、回転側ユニット又は固定側ユニットに環状に設けられて回転側ユニットと固定側ユニットとを連通する流体通路と、電力用スリップリングと電気信号用スリップリングとが回転軸に対して同心円状に配置とからなるものが示されている。かかる構成のロータリージョイントには、流体通路と電力用スリップリングと電気信号用スリップリングとが、固定側ボディと回転側ボディとの間で連通及び接触することにより、流体や電力や電気信号がロボット側とツール側の間で供給及び伝送されるものとして提案がされている。
【0004】
しかしながら、かかるスリップリングの接触による電力と電気信号の伝送による方法では、ロータリージョイントの回転により、スリップリングの接点が磨耗することにより、電力と電気信号に対するノイズの発生や、定期的な磨耗粉の除去作業、各パーツの交換などのメンテナンスに多大な費用とメンテナンスを要するという問題がある。
【0005】
上記の問題を解決するために、特許文献3には、情報信号系回路と電力系回路とを有する固定ユニットと、情報信号系回路と電力系回路とを有し、固定ユニットに対して1 軸を中心に回転自在に保持された回転ユニットとの間で、電力及び情報信号の非接触伝送を行うロータリージョイントが記載されている。かかる構成のロータリージョイントは、固定ユニットに固定された1軸を中心とする第1磁性体コアと、回転ユニットに第1磁性体コアに対応する位置に固定された第2磁性体コアとを備え、磁性体コアには同心円状の凹部が形成され、凹部に情報信号回路に接続されたコイルと、電力系回路に接続されたコイルが配置され、コイル同士の電磁誘導により、情報信号の双方向通信と、電力の伝送を行うことができるものが提案されている。
【0006】
しかしながら、かかる電磁誘導による電力の伝送方法では、大電力を伝送するためには、コイルの巻き数を増やす必要があり、コイルが大型化してしまうことにより、ロータリージョイント自体が大型化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-167681
【特許文献2】特開2008-207293
【特許文献3】特開2009-200750
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、小型で、固定側ユニットと回転側ユニット間において、伝送効率の低下を防ぎつつ、高い信頼性を持って電力と電気信号の伝送を可能にすることができる高速回転可能なロータリージョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロータリージョイントの第一の態様は、電気信号回路と電力回路と伝送ユニットAを有する固定側ユニットと、電気信号回路と電力回路と伝送ユニットBを有し、前記固定側ユニットに対して、1軸を中心に回転自在に保持された回転側ユニットとの間で、電力及び電気信号の非接触伝送を行うロータリージョイントにおいて、前記電力回路に整合回路を有していることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記固定側ユニットと前記回転側ユニット間において、高い信頼性を持って電力と電気信号の伝送を可能とし、大電力の伝送を行う場合でも小型にすることができる。
【0011】
本発明のロータリージョイントの第二の態様は、前記第一の態様のロータリージョイントにおいて、前記伝送ユニットA及び前記伝送ユニットBは、同心円状の凹部が2箇所形成され、一方の凹部に前記電気信号回路に接続された電気信号伝送コイルと、他方の凹部に前記電力回路に接続された電力伝送コイルと、前記電気信号伝送コイル及び電力伝送コイルを覆う磁性体を有しており、該磁性体がフェライトシートで形成されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、電気信号伝送コイル同士及び、電力伝送コイル同士の電磁誘導により、効率的な電気信号の双方向通信及び、電力の伝送ができ、且つ小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施例のロータリージョイントの構造を示す断面図
【
図3】本実施例の伝送ユニットAの構成を示す模式図
【
図4】本実施例の伝送ユニットBの構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のロータリージョイントの形態を
図1から
図6に基づいて説明する。
【0015】
図1において、本実施形態にかかるロータリージョイントの構成を示す。ロータリージョイントは、ロボットのアーム先端部などに設けられ、ロボットに若干フローティングして回り止めされている固定側ボディ1と、ロボットの先端回転軸に取り付けられ、エアシリンダを使ったハンドや、電動ハンド、溶接ガンなどのツールが固定され、且つ、ベアリング3により、固定側ボディ1と相対的に回転可能に連結された回転側ボディ2により構成される。
【0016】
図1において、固定側ボディ1には、複数の固定側ポート4を備え、回転側ボディ2には、固定側ポート4と同数の回転側ポート5が配設されている。固定側ボディ1と回転側ボディ2の摺動面上にシール部材6を設けることにより、複数の流体通路7が設けられ、流体通路7を介して、固定側ポート4と回転側ポート5の配管が連通する。
【0017】
図2~5には、
図1において、固定側ボディ1に設けられた伝送ユニットA8と、回転側ボディ2に設けられた伝送ユニットB9の構造を示す。伝送ユニットA8には、送電側基板10が固定されており、且つ、同心円状の凹部が2箇所形成され、一方の凹部に送電側電力伝送コイル11が配置され、他方の凹部に送電側電気信号伝送コイル12が配置されており、伝送ユニットB9には、受電側基板13が固定されており、且つ、伝送ユニットA8の凹部に対応する位置に凹部が2箇所形成され、送電側電力伝送コイル11に対応する凹部に受電側電力伝送コイル14が配置され、送電側電気信号伝送コイル12に対応する凹部に受電側電気信号伝送コイル15が配置されている。
【0018】
伝送ユニットA8及び伝送ユニットB9の2箇所の凹部の壁面には、フェライトシート16が配設されており、送電側電力伝送コイル11、及び、送電側電気信号伝送コイル12、受電側電力伝送コイル14、受電側電気信号伝送コイル15の各コイルを覆うことにより、電磁誘導により発生する磁界を一方方向にのみ向くように規制することにより、高効率な電力、及び、電気信号の伝送を行うことができ、且つ、磁性体として、フェライトシート16を用いることにより、省スペースでの磁界誘導を可能とし、小型化を実現することができる。
【0019】
送電側電力伝送コイル11、及び、受電側電力伝送コイル14は、コイルの巻き始め、及び、巻き終わりに設けられる電力伝送コイルハーネス17により、送電側基板10、及び、受電側基板13に設けられている電力回路にそれぞれ接続されている。同様に、送電側電気信号伝送コイル12、及び、受電側電気信号伝送コイル15も、コイルの巻き始め、及び、巻き終わりに設けられる電気信号伝送コイルハーネス18により、送電側基板10、及び、受電側基板13に設けられている電気信号回路にそれぞれ接続されている。
【0020】
図6~8には、本実施例における伝送ユニット及び送電側基板、受電側基板の構成図を示す。送電側基板10及び受電側基板13には送電側外部電力20を受電側外部電力28に出力する電力回路と、送電側外部信号28と受電側外部信号33の双方向通信を行う電気信号回路とが含まれている。
【0021】
電力回路について説明する。送電側外部電力20は、直流電圧波形(DC)をしており、受電側に伝送する電力のほかに、伝送側DC/DCコンバータ21により、送電側CPU29に用いる電圧や、ほかの内部電子機器の動作可能電圧に変換され、各機器に供給される。受電側に伝送する電力は、インバータ回路22に流れると、矩形波を作ることによって交流電圧波形(AC)に変換される。次に、送電側整合回路23により、送電側電力伝送コイル11のインピーダンスを低くすることによって、電力を流れやすくし、電磁誘導を用いて、受電側基板13に含まれる電力回路内の受電側電力伝送コイル14に伝送される。
【0022】
受電側電力伝送コイル14は、受電側整合回路24により、インピーダンスを低くされて、電力を流しやすくしてあり、電磁誘導により伝送された電力を受電し、AC/DCコンバータ25に流れると、交流電圧波形から直流電圧波形に変換される。その後、DC/DCコンバータ26にて、電気信号回路に用いる受電側CPU32に用いる電圧や、ほかの内部電子機器の動作可能電圧、受電側外部電力27として用いる電圧に変換している。
【0023】
今回の例では、送電側外部電力20として、直流電圧波形を用いているが、交流電圧波形を用いても良い。その場合は、送電側外部電力をAC/DCコンバータに流して、交流電圧波形から直流電圧波形に変換したのちに、DC/DCコンバータにて、各電圧に変換する必要がある。
【0024】
次に、電気信号回路について説明する。送電側CPU29に入力される送電側外部信号28は、パラレル信号であり、送電側CPU29から出力されるときにシリアル信号に変換される。その後、送電側シリアル通信デバイス30から、受電側シリアル通信デバイス31に送電側電気信号伝送コイル12と受電側電気信号伝送コイル15間の電磁誘導による半二重通信により送電側外部信号20を送信している。
【0025】
受電側シリアル通信デバイス31に受信されたシリアル信号は、受電側CPU32により、パラレル信号に変換され、受電側外部信号33として、外部に出力される。
【0026】
また、受電側外部信号33として入力されたパラレル信号も、受電側CPU32により、シリアル信号に変換される。その後、受電側シリアル通信デバイス31から送電側シリアル通信デバイス30に送電側電気信号伝送コイル12と受電側電気信号伝送コイル15間の電磁誘導による半二重通信により受電側外部信号を送信している。
【0027】
送電側シリアル通信デバイス30に受信されたシリアル信号は、送電側CPU29により、パラレル信号に変換され、送電側外部信号28として、外部に出力される。
【0028】
以上のように、受電側から送電側と送電側から受電側の双方向からの電気信号の通信を行っている。
【0029】
上記方法により、高出力の電力伝送と電気信号の双方向通信が可能になるが、高出力の電力を伝送する際に、送電側インバータ回路22及び送電側整合回路23が発熱し、送電側整合回路23のインピーダンスが変動することにより、整合が不可能になったり、他の機器に悪影響を及ぼしたりするので、影響を与えない間隔を保持するために大きくなってしまう問題がある。
【0030】
そこで、上記問題を解決するために、送電側基板10のインバータ回路22及び送電側整合回路23に放熱用のプレートを取り付けることにより、インバータ回路22及び送電側整合回路23の発熱による影響を緩和することで、ロータリージョイント自体の小型化を実現できる。
【符号の説明】
【0031】
1 固定側ボディ
2 回転側ボディ
3 ベアリング
4 固定側ポート
5 回転側ポート
6 シール部材
7 流体通路
8 伝送ユニットA
9 伝送ユニットB
10 送電側基板
11 送電側電力伝送コイル
12 送電側電気信号伝送コイル
13 受電側基板
14 受電側電力伝送コイル
15 受電側電気信号伝送コイル
16 フェライトシート
17 電力伝送コイルハーネス
18 電気信号伝送コイルハーネス
20 送電側外部電力
21 送電側DC/DCコンバータ
22 インバータ回路
23 送電側整合回路
24 受電側整合回路
25 AC/DCコンバータ
26 受電側DC/DCコンバータ
27 受電側外部電力
28 送電側外部信号
29 送電側CPU
30 送電側シリアル通信デバイス
31 受電側シリアル通信デバイス
32 受電側CPU
33 受電側外部信号