(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141401
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】林業作業員危機回避システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20230928BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B25/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047710
(22)【出願日】2022-03-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年6月4日に下記URLで、株式会社アーネットによる「IoT機器/LPWA通信を利用した、林業従事者向け危険回避ソリューションの開発」について公開された。 https://www.art-net.jp/news/2091/
(71)【出願人】
【識別番号】310010852
【氏名又は名称】株式会社アーネット
(74)【代理人】
【識別番号】100166073
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】都留 栄一
(72)【発明者】
【氏名】奈須 哲治
(72)【発明者】
【氏名】工藤 郷介
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA53
5C086BA18
5C086CA06
5C086CA25
5C086CB27
5C086DA08
5C086FA02
5C086FA12
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA12
5C087AA42
5C087AA51
5C087BB18
5C087BB77
5C087CC22
5C087DD03
5C087EE18
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087GG08
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】林業において、現場の山中で木材の伐採を複数の作業員で行っている際に、伐採作業員同士や、作業員と重機とが意図せぬ近接により発生する労働災害事故を確実に防止する手段を提供する。
【解決手段】 GPSモジュール11とLPWAモジュール12と、BLEモジュール13とを有する作業員端末10を2台以上備えると共に、BLE通信機能31を有するタブレット端末30を備え、各作業員端末10が、作業員端末10間の距離を、電波の信号強度で判定する際に、電波の信号強度による接近検知に加え、GPSによる自分と相手方双方の緯度・経度情報から、方位角を計算して、接近方向についても判定要素として加えた近接判定手段17と、近接判定手段17の結果により近接警報を発報する発報手段18とを備え、該タブレット端末30が、BLE通信機能31により認識した各作業員端末10の位置を画面で確認可能とする位置表示手段32を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPSモジュールと、サブギガ帯周波数を使用してスペクトラム拡散方式を採用するLPWAモジュールとを有する作業員端末を、2台以上備え、
各作業員端末が、作業員端末間の距離を、電波の信号強度で判定する接近検知に加え、GPSによる自分と相手方双方の緯度・経度情報から、方位角を計算して、接近方向についても判定要素として加えた近接判定手段と、近接判定手段の結果により近接警報を発報する発報手段とを備えていることを特徴とする、林業作業員危機回避システム。
【請求項2】
GPSモジュールと、サブギガ帯周波数を使用してスペクトラム拡散方式を採用するLPWAモジュールと、BLEモジュールとを有する作業員端末を、2台以上備えると共に、BLE通信機能を有するタブレット端末を備え、
各作業員端末が、作業員端末間の距離を、電波の信号強度で判定する接近検知に加え、GPSによる自分と相手方双方の緯度・経度情報から、方位角を計算して、接近方向についても判定要素として加えた近接判定手段と、近接判定手段の結果により近接警報を発報する発報手段とを備え、
該タブレット端末が、BLE通信機能により認識した各作業員端末の位置を画面で確認可能とする位置表示手段を備えているとを特徴とする、林業作業員危機回避システム。
【請求項3】
前記作業員端末が、振動手段を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の林業作業員危機回避システム。
【請求項4】
前記作業員端末が、緊急信号発報手段を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の林業作業員危機回避システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、林業作業員危機回避システムに関する。
【背景技術】
【0002】
林業において、現場である山中で木材の伐採等を複数の作業員で行っている際に、伐採作業員同士や、作業員と重機とが意図しないで近接してしまうことにより、労働災害事故が発生している。
伐採する立木の2倍相当を半径とする円周内には、伐採者以外の立ち入りが法律で禁止されている。
例えば、20mの立木の場合では、立木周囲が半径40mの範囲で直経なら80mの範囲で、本人以外について立入禁止区域となる。
もちろん、現場では法令遵守が求められているが、実際には作業環境や作業員の意識が影響し、必ずしも守られていないのが実情である。
よって、林業の現場における有効な事故発生防止手段が望まれている。
【0003】
林業における事故発生防止手段として、作業員の転倒等による急激な身体変動を加速度センサーで感知して、自動で遠隔の仲間に無線で知らせる商品が販売されているが、意図せぬ近接による事故発生防止手段としては適していない。
【0004】
林業とは異なるが、建設現場における労働災害事故防止の手段として、特許文献1に記載の建設現場安全管理装置が知られている。
該特許文献1に記載の装置は、建設現場の建設機械及び/若しくは設置物及び/若しくは作業員に設置された測位装置及び/若しくは距離計測装置と無線通信可能に接続された建設現場安全管理装置であって、前記測位装置から送信される位置情報及び/若しくは前記距離計測装置から送信される距離情報を処理することで、前記建設機械及び/若しくは前記設置物及び/若しくは前記作業員の位置に関する関係を特定する認識部と、前記特定された位置に関する前記関係と、前記設置物及び/若しくは前記作業員に予め設定された前記建設機械に対する役割に関する情報とを対比させて、前記建設機械及び/若しくは前記設置物及び/若しくは前記作業員の近接度を判定する判定部とを具備し、前記判定された前記近接度を、前記建設機械若しくは前記作業員に送信するものである。
ここで、測位装置はGNSS受信機(世界測位系位置装置)及びIMU(慣性計測装置、角度センサ)で構成され、距離計測装置はRFIDタグ若しくはRFID検知器で構成されている。
該RFID検知器は、ID情報を埋め込んだRFタグから、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm~数m)の無線通信によって情報をやりとりするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の技術によると、作業員と建設機械の接触回避の装置を導入する際に、一律に距離を測って警告を発するのではなく、建設機械に対する作業員の役割を把握し、必要に応じた適切な警報発信、あるいは、注意喚起を行うことができる。
しかしながら、このような特許文献1に記載の技術を、仮に、林業の現場で使用した場合には、対象物間の距離をRFIDタグ若しくはRFID検知器で計測する際に、山中特有の高低差・窪地・立木等の影響で、充分に機能できなことが予測される。
また、伐採の際に使用するチェーンソー等の動作音により、警報を感知できないことも考えられる。
【0007】
なお、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)を利用して、各作業員の位置を把握し、作業員同士が近づいた際に、警報を発する技術も存在するが、山中では立木の枝葉等の影響で上空が閉塞されている場所が多く、GPS情報だけでは、確実に警報を発することができないとの課題が存在している。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、林業において、現場の山中で木材の伐採等を複数の作業員で行っている際に、伐採作業員同士や、作業員と重機とが意図せぬ近接により発生する労働災害事故を確実に防止する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0010】
第1に、
GPSモジュールと、サブギガ帯周波数を使用してスペクトラム拡散方式を採用するLPWAモジュールとを有する作業員端末を、2台以上備え、
各作業員端末が、作業員端末間の距離を、電波の信号強度で判定する接近検知に加え、GPSによる自分と相手方双方の緯度・経度情報から、方位角を計算して、接近方向についても判定要素として加えた近接判定手段と、近接判定手段の結果により近接警報を発報する発報手段とを備えていることを特徴とする、林業作業員危機回避システム。
第2に、
GPSモジュールと、サブギガ帯周波数を使用してスペクトラム拡散方式を採用するLPWAモジュールと、BLEモジュールとを有する作業員端末を、2台以上備えると共に、BLE通信機能を有するタブレット端末を備え、
各作業員端末が、作業員端末間の距離を、電波の信号強度で判定する接近検知に加え、GPSによる自分と相手方双方の緯度・経度情報から、方位角を計算して、接近方向についても判定要素として加えた近接判定手段と、近接判定手段の結果により近接警報を発報する発報手段とを備え、
該タブレット端末が、BLE通信機能により認識した各作業員端末の位置を画面で確認可能とする位置表示手段を備えているとを特徴とする、林業作業員危機回避システム。
第3に、
前記作業員端末が、振動手段を備えることを特徴とする、第1又は第2に記載の林業作業員危機回避システム。
第4に、
前記作業員端末が、緊急信号発報手段を備えることを特徴とする、第1~第3のいずれか一つに記載の林業作業員危機回避システム。
【0011】
ここで、前記GPSモジュールとは、グローバル・ポジショニング・システムにより、位置情報を緯度、経度で測定可能とする機能を有するものである。
前記サブギガ帯周波数を使用してスペクトラム拡散方式を採用するLPWAモジュールとは、LPWA(Low Power Wide Area)により、低消費電力で広い領域を対象にできる無線通信技術によるものであり、日本国内においては920MHz帯の周波数が割り当てられているLoRa(登録商標)規格のものを利用することが好ましい。
前記BLEモジュールとは、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格によるもので、近距離の無線通信規格の中でも省電力に特化した通信方式によるものである。
【0012】
前記タブレット端末は、一般的には、タッチ操作可能な画面、CPU、バッテリー、記録手段(メモリ)を備えたタブレット型のコンピューターのことを示すが、本発明においては、スマートフォンもタブレット端末に含められる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0014】
サブギガ帯周波数を使用してスペクトラム拡散方式を採用する無線モジュールにより、作業員端末間の距離を、電波の信号強度で判定する近接判定手段によって判定するので、山中特有の高低差・窪地・立木等の影響を小さくすることができ、山中において木材の伐採等を複数の作業員で行っている際に、伐採作業員同士や、作業員と重機とが意図せぬ近接により発生する労働災害事故を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の林業作業員危機回避システムの概略図である。
【
図3】本発明に係るタブレット端末の表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
ここで、添付図面において同一の部材には同一符号を付しており、また重複した説明は省略されている。
なお、ここでの説明は本発明が実施される一形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【実施例0017】
図1に示すように、本発明の林業作業員危機回避システムは、複数台の作業員端末10と、重機90に設置するタブレット端末30とにより構成されている。
該作業員端末10は、管理用PC50とWiFi通信によって接続可能であり、また、開発用PC70とシリアルインターフェイス(図示は省略)を介して接続可能なものである。
【0018】
作業員端末10は、GPSモジュール11、LPWAモジュール12、BLEモジュール13、WiFiモジュール14、CPU15、RTCモジュール16を有している。
また、作業員端末10は、近接判定手段17、発報手段18、振動手段19、緊急信号発報手段20、記録手段21を備えている。
【0019】
図2に示すように、作業員端末10には、正面側にSOSスイッチ1とキャンセルスイッチ2が取り付けられ、上面側に赤色による警告LED4と黄色による注意LED5が取り付けられ、側面側にアンテナ3が取り付けられている。
【0020】
3重の円で図示されるSOSスイッチ1は、内側から数えて1番目の円と2番目の円との間は、赤色表示の部分を示しているが、全体を赤色部分とすることもできる。
3重の円で図示されるキャンセルスイッチ2は、内側から数えて1番目の円と2番目の円との間は、白色表示の部分を示しているが、全体を白色部分とすることもできる。
【0021】
また、図示は省略するが、作業員端末10は、リチウムイオンバッテリー、発報手段18により動作する圧電ブザー、振動手段19を構成する振動モーターを備えている。
【0022】
GPSモジュール11は、グローバル・ポジショニング・システムにより、位置情報を緯度、経度で測定可能とする機能を有するものである。
該GPSモジュール11により、自端末の座標と、GPSから得られた時刻情報が記録される。
【0023】
LPWAモジュール12は、サブギガ帯周波数を使用してスペクトラム拡散方式を採用するものであり、LPWA(Low Power Wide Area)により、低消費電力で広い領域内で通信可能とするものである。
本実施例では、920MHz帯の周波数が割り当てられているLoRa(登録商標)規格のものを採用している。
【0024】
[実証実験]
LoRa(登録商標)規格のLPWAモジュール12による作業員端末10を2台準備し、大分県九重町の山林内で、1台の位置を固定し、他の1台の位置を移動して、移動中の作業員端末10で受信したGPS信号データを、固定した作業員端末10に送信する際の通信状態について、無線免許が不要な20mW出力で、晴天時と雨天時に実証実験を行った。
その結果、山林内でもGPS信号データが、半径約300mの範囲にあれば受信可能であり、20mの立木で半径40mの立入禁止地域となる現場なら、充分な性能が得られることが確認できた。
【0025】
この際、2台の作業員端末10間の距離は120m程度と近いが、間に尾根があり、高低差が10~30m程度あって双方が全く見通せない状況であっても、通信可能であることが確認できた。
このことより、回析し易い電波特性の920MHz帯の周波数が割り当てられているLoRa(登録商標)規格のLPWAモジュール12を用いることで、山中特有の高低差・窪地・立木等の影響が小さくなるのが確認できた。
【0026】
BLEモジュール13は、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格4.2によるもので、近距離の無線通信規格の中でも省電力に特化した通信方式によるものであるが、Bluetooth(登録商標) Classic規格でも動作するディアルモード対応のものである。
【0027】
WiFiモジュール14は、IEEE802.11b/g/n(HT40)規格に適合したものである。
【0028】
CPU15は、デュアルコアのマイクロプロセッサである。
【0029】
上記のBLEモジュール13、WiFiモジュール14、CPU15は、マイクロコントローラに組み込まれ、該マイクロコントローラは、モジュール基板に内蔵されている。
【0030】
RTCモジュール16は、時計や時計機能が実装されている集積回路によって時刻情報が確認可能となるモジュールであり、システムの電源が切られていても、リアルタイムクロック(Real Time Clock)を刻み続けることができるものである。
【0031】
近接判定手段17は、LPWAモジュール12により受信した他の作業員端末10からの電波の信号強度によって、近接関係を判定する際に、電波の信号強度による接近検知に加え、GPSによる自分と相手方双方の緯度・経度情報から、方位角を計算して、接近方向についても判定要素として加えたものである。
例えば、予め設定した3段階の近接レベル判定閾値に基づき、最も信号強度が強いとき(最も近接しているとき)は「危険」、中間を「警告」、弱いときを「注意」として判定することができる。
【0032】
ここで、「危険」は、端末間距離が50m以内で、他の作業員が近くにいるので、直ちに周囲を確認することが必要となるレベルである。
「警告」は、端末間距離が50m~70mの範囲で、他の作業員が近付いているので、周囲を警戒することが必要となるレベルである。
「注意」は、端末間距離が75m~100mの範囲で、他の作業員の存在が確認できるので、注意して作業することが必要となるレベルである。
【0033】
発報手段18は、近接判定手段17による判定に基づき、優先度の高いものから、「危険」、「警告」、「注意」のレベルに応じて、注意を促すものである。
例えば、「危険」の場合は、赤色による警告LED4及び黄色による注意LED5を500ms毎に点滅すると共に、ブザーを鳴らし、振動手段19による振動を発生させることで、チェーンソー等による作業環境下でも、作業員が気づくようにする。
「警報」の場合は、警告LED4のみを500ms毎に点滅させると共に、ブザーを鳴らし、振動手段19による振動を発生させる。
「注意」の場合は、注意LED5のみを500ms毎に点滅させると共に、ブザーを鳴らし、振動手段19による振動を発生させる。
なお、通常の場合は、警告LED4及び注意LED5は共に消灯しており、ブザーも鳴らず、振動も発生していない。
ここで、キャンセルスイッチ2を一定時間以上長押しすることで、警告LED4及び注意LED5は同じステータスである限り点滅したままであるが、ブザー及び振動を止めることが可能となる。
【0034】
振動手段19は、発報手段18からの信号により、振動モーターを動かすことで、作業員に振動を与えるものである。
【0035】
緊急信号発報手段20は、近接判定手段17による判定とは別に、作業員が転倒等により危険な状態になった際に、自らの意志で他の作業員の作業員端末10に危険な状態となったことを知らせるものである。
例えば、SOSスイッチ1を、単独で長押しすることで、SOSトリガが検知されることで、予めセットしたSOS判別データパターンが、LPWAモジュール12を介して送信される。
該SOS判別データパターンを受信した作業員端末10では、近接判定の「危険」とは別の特定パターンにより、警告LED4及び注意LED5を点滅させると共に、ブザーを鳴らし、振動モーターを動かす。
その結果、作業員が他の作業員からSOS信号が発信されたことを知り、救助活動を行うことが可能となる。
【0036】
記録手段21は、データを記録可能なものであればよく、本実施例ではマイクロSDカードが用いられているが、これに限定されず、固定タイプのメモリ、ハードディスク、SSDの他に、取り外し可能なSDカード等を採用することができる。
該記録手段21には、設定パラメータ、動作ログ、LoRa(登録商標)受信ログ、自端末位置ログ、他端末位置ログ等を記録することができる。
【0037】
記録手段21としてマイクロSDカードに記録された自端末及び他端末の位置(緯度/緯度)データは、管理用PC50とWiFi接続された際に、管理用PC50の記録手段(図示は省略)にコピー若しくは移動される。
【0038】
タブレット端末30は、BLE通信機能31と位置表示手段32とを備えており、図示は省略するが、タッチ操作可能な画面、CPU、バッテリー、記録手段を備えたタブレット型のコンピューターである。
該タブレット端末30は、作業員端末10とBLE通信機能31により通信し、作業員端末10から送られてくる情報を元に、各作業員端末10の位置の画面表示を行うことができるものである。
【0039】
BLE通信機能31は、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格によるもので、近距離の無線通信規格の中でも省電力に特化した通信方式によるものであるが、Bluetooth(登録商標) Classic規格でも動作するディアルモード対応のものである。
【0040】
位置表示手段32は、BLE通信機能31により認識した各作業員端末10の位置を画面で確認可能とするものである。
図3中の(A)に示すように、画面の上側がタブレット端末10が設置された重機90の操作者の向きとなり、中心には方位計が示されている。
円の中心から外側に向かって、方位計ゾーン、危険ゾーン、警告ゾーン、注意ゾーンが示されており、注意ゾーンに番号1と番号3で示す作業員端末が位置し、警告ゾーンに番号2と番号4で示す作業員端末が位置していることが確認できる。
図3中の(B)に示すように、番号4で示す作業員端末が危険ゾーンに移動した場合には、直ちにアラートメッセージが表示される。
【0041】
重機90は、図示は省略するが、旋回可能な作業アームを有し、オペレータが操縦席から操作するものであり、該操縦席にタブレット端末30が設置されている。
【0042】
次に、上記林業作業員危機回避システムの動作について説明する。
【0043】
近接判定手段による、近接レベルの判定は、次のように行う。
電波強度による近接レベル判定は、受信したLoRa(登録商標)データの電波強度と、近接レベル設定値から近接状態を判定する(近接レベル:検出無し、注意、警告、危険)。
近接レベルの離隔判定は、近接レベルが警告から注意のように離隔している場合は、状態移行の監視時間を設けて状態変化が連続して発生しないようにする。
近接レベル閾値設定値読込み機能により、記録手段としてのマイクロSDカード内の設定ファイルから近接レベル閾値設定値を読み込む。
また、電波強度値の平滑化により、受信電波強度値を平滑化フィルタに入力し、出力された値を近接レベル判定に用いる。
LPWAモジュールからのLoRa(登録商標)データ受信に際し、複数の端末LoRa(登録商標)データを受信し、個別の管理バッファに記録する。
近接レベルのマルチ判定の際は、受信した複数のLoRa(登録商標)受信データのそれぞれに対して、近接レベル判定を行う。
この際、電波強度による接近検知に加え、GPSによる自分と相手方双方の緯度・経度情報から、方位角を計算して、接近方向についても判定要素として加える。
【0044】
SOSスイッチ及びキャンセルスイッチを操作することで、動作モードの切り替えを行うことができる。
動作モードとしては、設定モード、近接レベル閾値校正モード、ログデータ転送モードがある。
動作モードは、2つのスイッチの押下パターンにより、起動して切り替えを行う。
【0045】
Bluetooth(登録商標)ペアリング設定モードは、Bluetooth(登録商標)デバイスとして動作し、Bluetooth(登録商標)サーバとの接続完了後は、Bluetooth(登録商標)プロトコルにてデータを送受信する。
パラメータ読出設定モードは、Bluetooth(登録商標)ホストからのパラメータ読出し要求に対し、端末の設定パラメータをBluetooth(登録商標)ホストへ返送する。
パラメータ書込設定モードは、Bluetooth(登録商標)ホストからのパラメータ書込み要求に対し、受信したパラメータ値を端末のパラメータ値として設定する。
端末データ読出設定モードは、Bluetooth(登録商標)ホストからLoRa/GPS等のデータ読出し要求に対して、Bluetooth(登録商標)ホストへデータを送信する。
【0046】
また、近接レベル閾値校正モードでは、次のように行われる。
スイッチ押下による閾値設定は、本モード動作中に装置スイッチを押下動作により、調整用作業員端末の電波強度を近接レベルの閾値として設定し、2つのスイッチの押下パターンに対応した近接レベル(検出無し、注意、警告、危険)の閾値を設定する。
近接レベル閾値設定完了通知は、スイッチ押下時に調整用作業員端末のデータよって近接レベル閾値の設定が完了した場合は、完了したことと設定した近接レベルが分かるように、LED信号と振動モータのパターンで通知する。
近接レベル閾値設定エラー通知は、スイッチ押下時に調整用作業員端末のデータを受信できていない場合など、近接レベル閾値の設定に失敗した場合は、失敗したことをLED信号と振動モータのパターンで通知する。
【0047】
ログデータ転送モードでは、PCへのログデータファイル転送を、マイクロSDカード内に存在するログデータをWifi経由で管理用PCへFTPによるファイル転送することで行う。
また、GPSデータ受信のKMLフォーマット変換では、GPS座標データはPCのGoogle(登録商標)Map/Earthで閲覧するため、KMLファイルフォーマットに変換してSDカード内に保存する。
管理用PC内のパラメータ設定ファイルダウンロードは、管理用PCへのファイル転送後、管理用PCの特定のフォルダ内にパラメータファイルが存在する場合は、作業員端末にダウンロードし、SDカード内に保存する。
【0048】
作業員端末における情報送信は、次のように行われれる。
LoRa(登録商標)データ送信は、GPSモジュール受信データ設定において、GPSモジュールが送信するNMEAデータの送信間隔とデータ内容を設定する。
GPSデータ受信は、GPSモジュールからNMEAデータを受信し、送信データ用のデータ変換を実施しバッファに書き込むことで行われる。
LoRa(登録商標)モジュールパラメータ設定は、LoRa(登録商標)モジュール(LR920ER)に対し、設定ファイルに記録されたパラメータを設定することで行われる。
LoRa(登録商標)データ送信は、GPSデータ、端末番号をLoRa(登録商標)データのPayloadにセットし、ブロードキャスト送信することで行われる。
BLEデータの送信は、BLEのシリアルプロトコルにてGPSデータ、自作業員端末番号、他の各作業員端末の電波強度をタブレット端末やスマートホンへ送信することで行われる。
【0049】
SOSスイッチの押下によるSOSトリガ検知は、スイッチの特定押下パターン(長押し、2スイッチ同時押し等)により、作業員のSOSを検知する。
SOSアラートデータ送信は、SOSを判別できるデータパターンをLoRa(登録商標)データにセットし、他作業員端末へデータ送信することで、他の作業員へSOSデータを送信する。
SOSアラート発報は、SOSアラートデータ受信において、受信したLoRa(登録商標)データを解析し、SOSアラートデータであることを特定したら、SOSアラートを作業員に通知するために、LED、ブザー、振動モータを特定パターンで動作させることで行われる。
【0050】
端末パラメータ設定において、端末データ表示における端末パラメータ読込の際は、端末に対してパラメータ読出し要求を送信し、受信した端末パラメータ設定値を画面上に表示する。
端末データ表示は、端末に対してデータ読出し要求を送信し、受信した端末データ(GPS座標、各端末毎の電波強度)を画面上に表示する。
端末パラメータ設定は、端末パラメータ設定画面上に表示している端末パラメータが編集可能であり、設定スイッチを押下することで表示中の設定値を端末に送信する(書き込み要求)。
【0051】
端末位置表示におけるBLEデータ受信は、シリアルデータ受信により端末から受信したGPS座標、電波強度データを、各端末毎の最新値として管理することで行われる。
他端末位置表示は、他端末方向計算について、受信した他端末のGPS座標と自端末GPS座標から、自端末からの他端末の方向を計算することで行われる。
端末位置表示は、重機に設置した端末の方位を固定し、他端末との方位、電波強度値を用いて画面上に他端末の位置を表示することで行われる。