(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141417
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】車両用制御システム
(51)【国際特許分類】
H04L 45/247 20220101AFI20230928BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H04L45/247
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047735
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】元木 雅之
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA12
5K030HC14
5K030HD03
5K030JA10
5K030JA11
5K030LB08
5K030MB01
5K030MD02
5K030MD07
(57)【要約】
【課題】一の第1制御装置が第2制御装置を介して他の第1制御装置に所定の制御処理を実行させることができる可能性が高い車両用制御システムを提供する。
【解決手段】ボデーECU20と運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11D,11P,11RR,11RLの各々とはLIN30を用いてLIN通信が可能になっており、ボデーECU20と運転席SW-ECU11DとはCAN40を用いてCAN通信が可能になっており、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとは両者間のLIN通信に異常が発生するまではLIN通信を行い、異常が発生するとCAN通信を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ操作を受け付けて当該ユーザ操作に応じた制御処理を行う複数の第1制御装置と、前記複数の第1制御装置の各々との間で通信を行う第2制御装置とを備える車両用制御システムであって、
前記複数の第1制御装置のうちの一の第1制御装置は、前記複数の第1制御装置のうちの他の第1制御装置に所定の制御処理を実行させるユーザ操作を受け付けた場合、通信により、前記所定の制御処理の実行に関わる実行指令を、前記第2制御装置を介して、前記他の第1制御装置に対して行うことが可能であり、
前記一の第1制御装置から前記第2制御装置への前記実行指令に関わる信号の送信は、前記一の第1制御装置と前記第2制御装置とを接続する第1通信路を用いた前記一の第1制御装置と前記第2制御装置との通信に異常が発生するまでは、前記一の第1制御装置と前記第2制御装置とを接続する前記第1通信路を用いて行われ、異常が発生すると、前記一の第1制御装置と前記第2制御装置とを接続する前記第1通信路とは異なる第2通信路を用いて行われる
ことを特徴とする車両用制御システム。
【請求項2】
前記第2制御装置から前記他の第1制御装置への前記実行指令に関わる信号の送信は、前記一の第1制御装置と前記第2制御装置とを接続する前記第1通信路を用いた前記一の第1制御装置と前記第2制御装置との通信に異常が発生しているか否かにかかわらず、前記第2制御装置と前記他の第1制御装置とを接続する第1通信路を用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御システム。
【請求項3】
前記第1通信路は、Local Interconnect Networkであり、
前記第2通信路は、Controller Area Networkである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一の第1制御装置が第2制御装置を介して他の第1制御装置に所定の制御処理を実行させる車両用制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パワーウインドウスイッチの操作により、駆動用のモータを正逆回転させて車両の窓ガラスを上下に移動させて開閉する車両用パワーウインドウ制御システムがある。このような車両用パワーウインドウ制御システムでは、例えば、運転席に着座した乗員が操作可能な位置に、複数のドア(右フロントサイドドア、左フロントサイドドア、右リアサイドドア、左リアサイドドア)それぞれに対応する窓ガラスの開閉用のパワーウインドウスイッチが設けられており、運転席に着座した乗員が複数のドアの窓ガラスの開閉を行うことができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両用パワーウインドウ制御システム100は、例えば、
図7に示す構成をしており、ボデーECU20Cと、ユーザ操作を受け付けて当該ユーザ操作に応じた制御処理を行う運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11CD,11P,11RR,11RLの各々とは、例えば、LIN(Local Interconnect Network)30を構成するLIN通信路30D,30P,30RR,30RLを用いたLIN通信が可能になっている。ここで、ボデーECU20Cがマスタであり、運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11CD,11P,11RR,11RLの各々がスレーブである。ボデーECU20Cは、コマンドを順番に運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11CD,11P,11RR,11RLへ送信し、コマンドを受信した運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11CD,11P,11RR,11RLはボデーECU20Cへレスポンスを送信する。
【0005】
運転席操作スイッチ14Dは運転席に着座した乗員が操作可能なスイッチであり、運転席に着座した乗員が運転席操作スイッチ14D内の助手席窓ガラス開閉スイッチ14DPを用いて助手席窓ガラス13Pを閉じる操作をした場合について記載する。ボデーECU20Cから送信されたコマンドを受信した運転席SW-ECU11CDは、LIN通信により助手席窓ガラス13Pを閉める処理の実行に関わる実行指令を含むレスポンスをボデーECU20Cへ送信する。ボデーECU20CはLIN通信により当該実行指令を含むコマンドを助手席SW-ECU11Pへ送信する。LIN通信により当該実行指令を含むコマンドを受信した助手席SW-ECU11Pは助手席窓ガラス13Pが閉まるように助手席モータ12Pの回転を制御する。
【0006】
しかしながら、ボデーECU20Cと運転席SW-ECU11CD間のLIN通信に異常が発生すると、運転席SW-ECU11CDは、LIN通信により、上記の実行指令をボデーECU20Cへ送ることができなくなる。このため、運転席SW-ECU11CDは、ボデーECU20Cを介して、助手席SW-ECU11Pに対して、助手席窓ガラス13Pを閉める制御処理を実行させることができなくなる。このとき、運転者が助手席窓ガラス13Pを閉めたい場合は助手席操作スイッチ14PP内の助手席窓ガラス開閉スイッチ14PPを操作するしかなく、走行中であれば停車などが必要となり、急に雨が降ってきたときにはすぐに助手席窓ガラス13Pを閉めることができずに車内が濡れてしまう。
【0007】
本発明の目的は、一の第1制御装置が第2制御装置を介して他の第1制御装置に所定の制御処理を実行させることができる可能性が高い車両用制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両用制御システムは、ユーザ操作を受け付けて当該ユーザ操作に応じた制御処理を行う複数の第1制御装置と、前記複数の第1制御装置の各々との間で通信を行う第2制御装置とを備える車両用制御システムであって、前記複数の第1制御装置のうちの一の第1制御装置は、前記複数の第1制御装置のうちの他の第1制御装置に所定の制御処理を実行させるユーザ操作を受け付けた場合、通信により、前記所定の制御処理の実行に関わる実行指令を、前記第2制御装置を介して、前記他の第1制御装置に対して行うことが可能であり、前記一の第1制御装置から前記第2制御装置への前記実行指令に関わる信号の送信は、前記一の第1制御装置と前記第2制御装置とを接続する第1通信路を用いた前記一の第1制御装置と前記第2制御装置との通信に異常が発生するまでは、前記一の第1制御装置と前記第2制御装置とを接続する前記第1通信路を用いて行われ、異常が発生すると、前記一の第1制御装置と前記第2制御装置とを接続する前記第1通信路とは異なる第2通信路を用いて行われることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、一の第1制御装置から第2制御装置への実行指令に関わる信号の送信は、一の第1制御装置と第2制御装置とを接続する第1通信路を用いた一の第1制御装置と第2制御装置との通信に異常が発生するまでは第1通信路を用いて行われ、異常が発生すると第2通信路を用いて行われる。このように、一の第1制御装置から第2制御装置への実行指令に関わる信号の送信経路を2経路用意することにより、一の第1制御装置と第2制御装置とを接続する第1通信路を用いた一の第1制御装置と第2制御装置との通信に異常が発生しても、一の第1制御装置と第2制御装置とを接続する第2通信路を用いた一の第1制御装置と第2制御装置との通信に異常が発生していなければ、一の第1制御装置が第2制御装置を介して他の第1制御装置に所定の制御処理を実行させることができる。
【0010】
また、前記第2制御装置から前記他の第1制御装置への前記実行指令に関わる信号の送信は、前記一の第1制御装置と前記第2制御装置とを接続する前記第1通信路を用いた前記一の第1制御装置と前記第2制御装置との通信に異常が発生しているか否かにかかわらず、前記第2制御装置と前記他の第1制御装置とを接続する第1通信路を用いて行われるとしてもよい。
【0011】
これによれば、第1通信路を用いた通信を行うための通信機能とは異なる他の通信路(例えば第2通信路)を用いた通信を行うための機能を他の第1制御装置に追加して搭載する必要がなく、また、第2制御装置と他の第1制御装置とを接続する第1通信路とは異なる他の通信路(例えば第2通信路)を追加して敷設する必要がないので、コストの増加や作業負荷の増大を抑えることができる。
【0012】
また、前記第1通信路は、Local Interconnect Networkであり、前記第2通信路は、Controller Area Networkであるとしてもよい。
【0013】
これによれば、一の第1制御装置と第2制御装置とのLocal Interconnect Network(LIN)を用いた通信に異常が発生した場合にはController Area Network(CAN)を用いた通信を行うので、一の第1制御装置と第2制御装置とのLINを用いた通信に異常が発生していないときのCANを用いた通信の通信品質を確保できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一の第1制御装置から第2制御装置への実行指令に関わる信号の送信は、一の第1制御装置と第2制御装置とを接続する第1通信路を用いた一の第1制御装置と第2制御装置との通信に異常が発生するまでは第1通信路を用いて行われ、異常が発生すると第2通信路を用いて行われる。このように、一の第1制御装置から第2制御装置への実行指令に関わる信号の送信経路を2経路用意することにより、一の第1制御装置と第2制御装置とを接続する第1通信路を用いた一の第1制御装置と第2制御装置との通信に異常が発生しても、一の第1制御装置と第2制御装置とを接続する第2通信路を用いた一の第1制御装置と第2制御装置との通信に異常が発生していなければ、一の第1制御装置が第2制御装置を介して他の第1制御装置に所定の制御処理を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用パワーウインドウ制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の車両用パワーウインドウ制御システムが適用される車両の車室前部の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1のボデーECUが行うボデーECUと運転席SW-ECU間の通信切替制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の車両用パワーウインドウ制御システムのECU間の通信の一例を説明するための図である。
【
図5】
図1の車両用パワーウインドウ制御システムのECU間の通信の他の例を説明するための図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る車両用パワーウインドウ制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】従来の車両用パワーウインドウ制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
≪第1実施形態≫
以下、本発明の第1実施形態の車両用パワーウインドウ制御システム1について説明する。なお、各実施形態でいう前後、左右、上下とは車両Xのシートに着座した状態での前後、左右、上下を意味する。
【0018】
まず、車両用パワーウインドウ制御システム1が適用される車両Tの構成について
図1および
図2を参照しつつ説明する。なお、車両用パワーウインドウ制御システム1は、本発明の「車両用制御システム」に相当する。
【0019】
本実施形態の車両Tは所謂右ハンドル車であり、車両Tには車室前部の右側および左側に運転席2Dおよび助手席2Pが配置されている。運転席2Dおよび助手席2Pの前方には、インストルメントパネル3Aが配置されており、運転席2Dと助手席2Pとの間にはセンターコンソール3Bが配置されており、これらは一体的に形成されている。運転席2Dの前方には、ステアリングホイール4が配置されている。インストルメントパネル3Aの左右方向中央部には、カーナビゲーション装置5が配置されており、カーナビゲーション装置5のディスプレイ5Aは、運転席2Dに着座した乗員等がタッチ操作可能なタッチパネルを含むように構成されている。インストルメントパネル3Aの左右方向両端部には、それぞれ空調用空気の吹出口であるサイドレジスタ6が設けられている。
【0020】
運転席2Dの右側には、右フロントサイドドア(運転席用サイドドア)7Dが配置されており、助手席2Pの左側には、左フロントサイドドア(助手席用サイドドア)7Pが配置されている。さらに、運転席2Dおよび助手席2Pの後方には、後席(不図示)が配置されており、後席の右側および左側には右リアサイドドア(不図示)および左リアサイドドア(不図示)が配置されており、各リアサイドドアは後席用サイドドアである。
【0021】
右・左フロントサイドドア7D,P、および、右・左リアサイドドアの夫々の上部には、運転席・助手席窓ガラス13D,13P、および、右後席,左後席窓ガラス13RR,13RL(
図1参照)によって閉鎖される窓用開口部が形成されている。
【0022】
また、右・左フロントサイドドア7D,P、および、右・左リアサイドドアの夫々の下部内には、運転席・助手席窓ガラス13D,13P、および、右後席,左後席窓ガラス13RR,13RLを運転席・助手席モータ12D,モータ12P(
図1参照)、および、右後席・左後席モータ12RR,12RL(
図1参照)の駆動力により上下移動させて開閉する運転席・助手席パワーウインドウ装置10D,10P(
図1参照)、および、右後席・左後席パワーウインドウ装置10RR,10RL(
図1参照)が配設されている。
【0023】
また、右・左フロントサイドドア7D,P、および、右・左リアサイドドアの夫々の下部の車内側には、それぞれドアトリムパネル8が設けられており、各ドアトリムパネル8には、それぞれアームレスト部8Aおよびドアインナハンドル8Bが設けられている。各アームレスト部8Aの上面には、パワーウインドウ操作用の運転席・助手席操作スイッチ14D,14P(
図1参照)、および、右後席・左後席操作スイッチ14RR,14RL(
図1参照)が配置されている。
【0024】
続いて、車両用パワーウインドウ制御システム1の構成について
図1を参照しつつ説明する。
【0025】
車両用パワーウインドウ制御システム1は、運転席・助手席・右後席・左後席パワーウインドウ装置10D,10P,10RR,10RL、および、ボデーECU20を含む。
【0026】
運転席パワーウインドウ装置10Dの運転席SW-ECU11DとボデーECU20とは、通信用ハーネスを用いて構築されているLocal Interconnect Network(LIN)30のLIN通信路30Dに接続されており、両者間でLIN通信が可能になっている。また、助手席パワーウインドウ装置10Pの助手席SW-ECU11PとボデーECU20とは、LIN30のLIN通信路30Pに接続されており、両者間でLIN通信が可能になっている。また、右後席パワーウインドウ装置10RRの右後席SW-ECU11RRとボデーECU20とは、LIN30のLIN通信路30RRに接続されており、両者間でLIN通信が可能になっている。また、左後席パワーウインドウ装置10RLの左後席SW-ECU11RLとボデーECU20とは、LIN30のLIN通信路30RLに接続されており、両者間でLIN通信が可能になっている。
【0027】
LIN通信において、ボデーECU20がマスタとなり、運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11D,11P,11RR,11RLの各々がスレーブとなる。(1)ボデーECU20は運転席SW-ECU11Dへコマンドを送信し、コマンドを受信した運転席SW-ECU11DはボデーECU20へレスポンスを送信する。次に、(2)ボデーECU20は助手席SW-ECU11Pへコマンドを送信し、コマンドを受信した助手席SW-CU11PはボデーECU20へレスポンスを送信する。次に、(3)ボデーECU20は右後席SW-ECU11RRへコマンドを送信し、コマンドを受信した右後席SW-ECU11RRはボデーECU20へレスポンスを送信する。次に、(4)ボデーECU20は左後席SW-ECU11RLへコマンドを送信し、コマンドを受信した左後席SW-ECU11RLはボデーECU20へレスポンスを送信する。(1)~(4)が定期的に行われる。
【0028】
運転席SW-ECU11DとボデーECU20とは、通信用ハーネスを用いて構築されているController Area Network(CAN)40に接続されており、両者間でCAN通信が可能になっている。なお、助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RLの各々は、CAN40に接続されていない。
【0029】
運転席SW-ECU11DとボデーECU20間のLIN通信に異常が発生した場合でも、助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RLの各々とボデーECU20とはLIN通信を正常に行うことができる場合がある。本実施形態では、運転席SW-ECU11DとボデーECU20間のLIN通信に異常が発生しているか否かにかかわらず、助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RLの各々とボデーECU20とは、LIN通信を行うようになっている。
【0030】
なお、運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11D,11P,11RR,11RLの各々は、本発明の「複数の第1制御装置」に相当し、運転席SW-ECU11Dは本発明の「一の第1制御装置」に相当し、助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RLの各々は、本発明の「他の第1制御装置」に相当する。また、ボデーECU20は、本発明の「第2制御装置」に相当する。また、LIN30(LIN通信路30D,30P,30RR,30RL)は、本発明の「第1通信路」に相当し、CAN40は、本発明の「第2通信路」に相当する。
【0031】
ボデーECU20は、車両Tのドア、ウインカーなどの車載電装品の動作を制御するためのECUである。ボデーECU20は、上述したように、運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11D,11P,11RR,11RLの各々とLIN通信を行うことが可能であり、運転席SW-ECU11DとCAN通信を行うことが可能になっている。なお、LIN通信はCAN通信と独立した通信きかくである。
【0032】
ボデーECU20は、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとの間での通信をLIN通信からCAN通信に切り換える通信切替制御を行い、この通信切替制御について
図3を参照して説明する。
【0033】
ボデーECU20は、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとの間の通信をLIN通信に設定する(ステップS1)。運転席SW-ECU11Dは、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとの間の通信をLIN通信に設定する。これにより、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとは、両者間のLIN通信に異常が発生するまでは、LIN通信を行うことになる。
【0034】
ボデーECU20は、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生したか否かを判定する(ステップS2)。上述したように、LIN通信では、ボデーECU20は、定期的に、運転席SW-ECU11Dへコマンドを送信し、コマンドを受信した運転席SW-ECU11DはボデーECU20へレスポンスを送信する。しかしながら、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生した場合には、ボデーECU20は、運転席SW-ECU11Dへ送信したコマンドに対するレスポンスを運転席SW-ECU11Dから受信しない。ステップS2の判定では、ボデーECU20は、運転席SW-ECU11Dへ送信したコマンドに対するレスポンスを運転席SW-ECU11Dから受信しない事象がN(Nは1以上の整数)回連続して発生した場合に、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生したと判定する。ここで、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信の異常は、例えば、両者間を接続するLIN通信路30Dの断線により起こる。
【0035】
ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生していないと判定された場合(S2:NO)、ステップS2の処理に戻り、一方、両者間のLIN通信に異常が発生していると判定された場合(S2:YES)、ステップS3の処理に進む。
【0036】
ボデーECU20は、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとの間の通信を、LIN通信からCAN通信に切り換える。そして、ボデーECU20は、CAN通信により、運転席SW-ECU11Dに対して、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとの間の通信をLIN通信からCAN通信に切り換えることを指令する信号を送信する(ステップS3)。この信号を受けた運転席SW-ECU11Dは、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとの間の通信をLIN通信からCAN通信に切り換える。これにより、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとは、両者間のLIN通信に異常が発生すると、CAN通信を行うようになる。
【0037】
ここで、ボデーECU20と、運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11D,11P,11RR,11RLの各々との間の通信についてまとめる。(1)ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生するまでは、ボデーECU20と、運転席・助手席・右後席・左後席SW-ECU11D,11P,11RR,11RLの各々との間の通信は、LIN通信である。(2)ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生すると、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとの通信はCAN通信となり、ボデーECU20と、助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RLの各々との間の通信は、LIN通信のままである。
【0038】
運転席パワーウインドウ装置10Dは、運転席SW-ECU11D、および、運転席モータ12Dを含むように構成されている。運転席モータ12Dは、運転席窓ガラス13Dを閉める際には一方向の回転(本実施形態では正回転)の制御が行われ、開ける際には他方向の回転(本実施形態では逆回転)の制御が行われる。
【0039】
運転席SW-ECU11Dには、機能無効・有効スイッチ14D1、運転席窓ガラス開閉スイッチ14DD、助手席窓ガラス開閉スイッチ14DP、右後席窓ガラス開閉スイッチ14DRR、および、左後席窓ガラス開閉スイッチ14DRLを含む、運転席操作スイッチ14Dが接続されている。運転席操作スイッチ14Dは、運転席2Dに着座した乗員が操作可能な位置に配置されている。
【0040】
機能無効・有効スイッチ14D1は、助手席操作スイッチ14P、右後席操作スイッチ14RR、および、左後席操作スイッチ14RLの操作を無効にしたり、有効にしたりする際に乗員等により操作されるスイッチである。機能無効・有効スイッチ14D1のスイッチ状態として、機能を無効にするスイッチ状態(以下、「無効スイッチ状態」と記載する。)と、機能を有効にするスイッチ状態(以下、「有効スイッチ状態」と記載する。)と、機能を無効したり有効にしたりしないスイッチ状態とがある。
【0041】
運転席・助手席・右後席・左後席窓ガラス開閉スイッチ14DD,14DP,14DRR,14DRLは、運転席・助手席・右後席・左後席窓ガラス13D,13P,13RR,13RLを開けたり、閉めたりする際に乗員等により操作されるスイッチである。運転席・助手席・右後席・左後席窓ガラス開閉スイッチ14DD,14DP,14DRR,14DRLのスイッチ状態として、窓ガラスを開けるスイッチ状態(以下、「開スイッチ状態」と記載する。)と、窓ガラスを閉めるスイッチ状態(以下、「閉スイッチ状態」と記載する。)と、窓ガラスの開閉が行われないスイッチ状態とがある。
【0042】
運転席SW-ECU11Dは、パワーウインドウに関わる制御などを行うものであり、上述したように、ボデーECU20とLIN通信およびCAN通信を行うことが可能になっている。
【0043】
運転席SW-ECU11Dは、運転席窓ガラス開閉スイッチ14DDが乗員等により操作されて閉スイッチ状態になっていることを検出すると、運転席モータ12Dを正回転させる制御を行い、開スイッチ状態になっていることを検出すると、運転席モータ12Dを逆回転させる制御を行う。
【0044】
運転席SW-ECU11Dは、助手席窓ガラス開閉スイッチ14DPが乗員等により操作されて閉スイッチ状態になっていることを検出すると、助手席窓ガラス13Pを閉める処理の実行に関わる実行指令(以下、「助手席窓ガラス閉実行指令」と記載する。)を、ボデーECU20を介して、助手席SW-ECU11Pに対して行う。助手席窓ガラス閉実行指令を受けた助手席SW-ECU11Pは助手席モータ12Pを正回転させる制御を行う。
【0045】
ここで、運転席SW-ECU11Dが助手席窓ガラス閉実行指令をボデーECU20を介して助手席SW-ECU11Pに対して行う場合のECU間の通信について説明する。
【0046】
ます、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生していない場合について
図4を参照しつつ説明する。
【0047】
(A1)ボデーECU20はLIN通信によりコマンドを運転席SW-ECU11Dへ送信し、コマンドを受信した運転席SW-ECU11DはLIN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含むレスポンスをボデーECU20へ送信し、ボデーECU20はLIN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含むレスポンスを受信する。
【0048】
(A2)ボデーECU20はLIN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含むコマンドを助手席SW-ECU11Pへ送信し、助手席SW-ECU11PはLIN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含むコマンドを受信する。
【0049】
続いて、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生している場合について
図5を参照しつつ説明する。
【0050】
(B1)運転席SW-ECU11DはCAN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含む信号をボデーECU20へ送信し、ボデーECU20はCAN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含む信号を受信する。
【0051】
(B2)ボデーECU20はLIN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含むコマンドを助手席SW-ECU11Pへ送信し、助手席SW-ECU11PはLIN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含むコマンドを受信する。
【0052】
運転席SW-ECU11Dは、助手席窓ガラス開閉スイッチ14DPが乗員等により操作されて開スイッチ状態になっていることを検出すると、助手席窓ガラス13Pを開ける処理の実行に関わる実行指令(以下、「助手席窓ガラス開実行指令」と記載する。)を、ボデーECU20を介して、助手席SW-ECU11Pに対して行う。助手席窓ガラス開実行指令を受けた助手席SW-ECU11Pは、助手席モータ12Pを逆回転させる制御を行う。なお、助手席窓ガラス開実行指令に関わるECU間の通信は、
図4および
図5を用いて説明した助手席窓ガラス閉実行指令に関わるECU間の通信と同様である。
【0053】
運転席SW-ECU11Dは、右後席窓ガラス開閉スイッチ14DRRが乗員等により操作されて閉スイッチ状態になっていることを検出すると、右後席窓ガラス13RRを閉める処理の実行に関わる実行指令(以下、「右後席窓ガラス閉実行指令」と記載する。)を、ボデーECU20を介して、右後席SW-ECU11RRに対して行う。右後席窓ガラス閉実行指令を受けた右後席SW-ECU11RRは、右後席モータ12RRを正回転させる制御を行う。また、運転席SW-ECU11Dは、右後席窓ガラス開閉スイッチ14DRRが乗員等により操作されて開スイッチ状態になっていることを検出すると、右後席窓ガラス13RRを開ける処理の実行に関わる実行指令(以下、「右後席窓ガラス開実行指令」と記載する。)を、ボデーECU20を介して、右後席SW-ECU11RRに対して行う。右後席窓ガラス開実行指令を受けた右後席SW-ECU11RRは、右後席モータ12RRを逆回転させる制御を行う。なお、右後席窓ガラス閉実行指令および右後席窓ガラス開実行指令夫々に関わるECU間の通信は、
図4および
図5を用いて説明した助手席窓ガラス閉実行指令に関わるECU間の通信と同様である。
【0054】
運転席SW-ECU11Dは、左後席窓ガラス開閉スイッチ14DRLが乗員等により操作されて閉スイッチ状態になっていることを検出すると、左後席窓ガラス13RLを閉める処理の実行に関わる実行指令(以下、「左後席窓ガラス閉実行指令」と記載する。)を、ボデーECU20を介して、左後席SW-ECU11RLに対して行う。左後席窓ガラス閉実行指令を受けた左後席SW-ECU11RLは、左後席モータ12RLを正回転させる制御を行う。また、運転席SW-ECU11Dは、左後席窓ガラス開閉スイッチ14DRLが乗員等により操作されて開スイッチ状態になっていることを検出すると、左後席窓ガラス13RLを開ける処理の実行に関わる実行指令(以下、「左後席窓ガラス開実行指令」と記載する。)を、ボデーECU20を介して、左後席SW-ECU11RLに対して行う。左後席窓ガラス開実行指令を受けた左後席SW-ECU11RLは、左後席モータ12RLを逆回転させる制御を行う。なお、左後席窓ガラス閉実行指令および左後席窓ガラス開実行指令夫々に関わるECU間の通信は、
図4および
図5を用いて説明した助手席窓ガラス閉実行指令に関わるECU間の通信と同様である。
【0055】
運転席SW-ECU11Dは、機能無効・有効スイッチ14D1が乗員等により操作されて無効スイッチ状態になっていることを検出すると、助手席操作スイッチ14Pの操作を無効にする処理の実行に関わる実行指令(以下、「助手席操作スイッチ無効実行指令」と記載する。)、右後席操作スイッチ14RRの操作を無効にする処理の実行に関わる実行指令(以下、「右後席操作スイッチ無効実行指令」と記載する。)、および、左後席操作スイッチ14RLの操作を無効にする処理の実行に関わる実行指令(以下、「左後席操作スイッチ無効実行指令」と記載する。)を、ボデーECU20を介して、助手席SW-ECU11P、右後席SW-ECU11RR、および、左後席SW-ECU11RLに対して行う。これらのスイッチ無効実行指令を受けた助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RLは、助手席・右後席・左後席操作スイッチ14P,14RR,14RLの操作を無効にする処理を行う。なお、助手席操作スイッチ無効実行指令、右後席操作スイッチ無効実行指令、および、左後席操作スイッチ無効実行指令夫々に関わるECU間の通信は、
図4および
図5を用いて説明した助手席窓ガラス閉実行指令に関わるECU間の通信と同様である。
【0056】
運転席SW-ECU11Dは、機能無効・有効スイッチ14D1が乗員等により操作されて有効スイッチ状態になっていることを検出すると、助手席操作スイッチ14Pの操作を有効にする処理の実行に関わる実行指令(以下、「助手席操作スイッチ有効実行指令」と記載する。)、右後席操作スイッチ14RRの操作を有効にする処理の実行に関わる実行指令(以下、「右後席操作スイッチ有効実行指令」と記載する。)、および、左後席操作スイッチ14RLの操作を有効にする処理の実行に関わる実行指令(以下、「左後席操作スイッチ有効実行指令」と記載する。)を、ボデーECU20を介して、助手席SW-ECU11P、右後席SW-ECU11RR、および、左後席SW-ECU11RLに対して行う。これらのスイッチ有効実行指令を受けた助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RLは、助手席・右後席・左後席操作スイッチ14P,14RR,14RLの操作を有効にする処理を行う。なお、助手席操作スイッチ有効実行指令、右後席操作スイッチ有効実行指令、および、左後席操作スイッチ有効実行指令夫々に関わるECU間の通信は、
図4および
図5を用いて説明した助手席窓ガラス閉実行指令に関わるECU間の通信と同様である。
【0057】
助手席パワーウインドウ装置10Pは、助手席SW-ECU11P、および、助手席モータ12Pを含むように構成されている。助手席モータ12Pは、助手席窓ガラス13Pを閉める際には正回転の制御が行われ、開ける際には逆回転の制御が行われる。助手席SW-ECU11Pには、助手席窓ガラス13Pを開けたり、閉めたりする際に乗員等により操作される、助手席操作スイッチ14DPと同じスイッチ状態がある助手席窓ガラス開閉スイッチ14PPを含む助手席操作スイッチ14Pが接続されている。助手席操作スイッチ14Pは、助手席2Pに着座した乗員が操作可能な位置に配置されている。
【0058】
助手席SW-ECU11Pは、パワーウインドウに関わる制御などを行うものであり、上述したように、ボデーECU20とLIN通信を行うことが可能になっている。
【0059】
助手席SW-ECU11Pは、運転席SW-ECU11Dと同様に、助手席窓ガラス開閉スイッチ14PPのスイッチ状態に応じて助手席モータ12Pの回転制御を行う。また、助手席SW-ECU11Pは、運転席SW-ECU11DからボデーECU20を介して助手席窓ガラス閉実行指令を受け取ると、助手席モータ12Pを正回転させる制御を行い、助手席窓ガラス開実行指令を受け取ると、助手席モータ12Pを逆回転させる制御を行う。また、助手席SW-ECU11Pは、運転席SW-ECU11DからボデーECU20を介して助手席操作スイッチ無効実行指令を受け取ると、助手席操作スイッチ14Pの操作を無効にする処理を行い、助手席操作スイッチ有効実行指令を受け取ると、助手席操作スイッチ14Pの操作を有効にする処理を行う。
【0060】
右後席パワーウインドウ装置10RRは、右後席SW-ECU11RR、および、右後席モータ12RRを含むように構成されている。右後席モータ12RRは、右後席窓ガラス13RRを閉める際には正回転の制御が行われ、開ける際には逆回転の制御が行われる。右後席パワーウインドウ装置10RRには、右後席窓ガラス13RRを開けたり、閉めたりする際に乗員等により操作される、助手席操作スイッチ14DPと同じスイッチ状態がある右後席窓ガラス開閉スイッチ14RRRRを含む右後席操作スイッチ14RRが接続されている。右後席操作スイッチ14RRは、後席の右側に着座した乗員が操作可能な位置に配置されている。
【0061】
右後席SW-ECU11RRは、パワーウインドウに関わる制御などを行うものであり、上述したように、ボデーECU20とLIN通信を行うことが可能になっている。
【0062】
右後席SW-ECU11RRは、運転席SW-ECU11Dと同様に、右後席窓ガラス開閉スイッチ14RRRRのスイッチ状態に応じて右後席モータ12RRの回転制御を行う。また、右後席SW-ECU11RRは、運転席SW-ECU11DからボデーECU20を介して右後席窓ガラス閉実行指令を受け取ると、右後席モータ12RRを正回転させる制御を行い、右後席窓ガラス開実行指令を受け取ると、右後席モータ12RRを逆回転させる制御を行う。また、右後席SW-ECU11RRは、運転席SW-ECU11DからボデーECU20を介して右後席操作スイッチ無効実行指令を受け取ると、右後席操作スイッチ14RRの操作を無効にする処理を行い、右後席操作スイッチ有効実行指令を受け取ると、右後席操作スイッチ14RRの操作を有効にする処理を行う。
【0063】
左後席パワーウインドウ装置10RLは、左後席SW-ECU11RL、および、左後席モータ12RLを含むように構成されている。左後席モータ12RLは、左後席窓ガラス13RLを閉める際には正回転の制御が行われ、開ける際には逆回転の制御が行われる。左後席パワーウインドウ装置10RLには、左後席窓ガラス13RLを開けたり、閉めたりする際に乗員等により操作される、助手席操作スイッチ14DPと同じスイッチ状態がある左後席窓ガラス開閉スイッチ14RLRLを含む左後席操作スイッチ14RLが接続されている。左後席操作スイッチ14RLは、後席の左側に着座した乗員が操作可能な位置に配置されている。
【0064】
左後席SW-ECU11RLは、パワーウインドウに関わる制御などを行うものであり、上述したように、ボデーECU20とLIN通信を行うことが可能になっている。
【0065】
左後席SW-ECU11RLは、運転席SW-ECU11Dと同様に、左後席窓ガラス開閉スイッチ14RLRLのスイッチ状態に応じて左後席モータ12RLの回転制御を行う。また、左後席SW-ECU11RLは、運転席SW-ECU11DからボデーECU20を介して左後席窓ガラス閉実行指令を受け取ると、左後席モータ12RLを正回転させる制御を行い、左後席窓ガラス開実行指令を受け取ると、左後席モータ12RLを逆回転させる制御を行う。また、左後席SW-ECU11RLは、運転席SW-ECU11DからボデーECU20を介して左後席操作スイッチ無効実行指令を受け取ると、左後席操作スイッチ14RLの操作を無効にする処理を行い、左後席操作スイッチ有効実行指令を受け取ると、左後席操作スイッチ14RLの操作を有効にする処理を行う。
【0066】
以上の第1実施形態によれば、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとの間の通信としてLIN通信とCAN通信との2経路用意することにより、両者間のLIN通信に異常が発生しても、両者間のCAN通信に異常が発生していなければ、運転席操作スイッチ14Dを操作して助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RLに制御処理を実行させることができる。運転席2Dに着座した乗員が頻繁に行う助手席・右後席・左後席窓ガラス13P,13RR.13RLの開閉に関わる機能の喪失を防止できる。
【0067】
また、ボデーECU20と運転席SW-ECU11Dとの間のLIN通信に異常が発生しているか否かに関わらず、ボデーECU20と助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RL各々との間ではLIN通信が行われる。このため、助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RL各々に例えばCAN通信のための通信機能を追加して搭載する必要がなく、ボデーECU20と助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RL各々とを接続する例えばCANのための配線を追加して敷設する必要がないので、コストの増加や作業負荷の増大を抑えることができる。
【0068】
また、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間では、両者間のLIN通信に異常が発生している場合に、両者間でCAN通信が行われるようになっているので、両者間のLIN通信に異常が発生していないときの(正常なときの)CAN通信の通信品質を確保できる。
【0069】
≪第2実施形態≫
以下、本発明の第2実施形態の車両用パワーウインドウ制御システム1について説明する。第1実施形態では、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生すると両者間の通信をLIN通信からCAN通信に切り替えることで、運転席2Dに着座した乗員が助手席・右後席・左後席窓ガラス13P,13RR,13RLの開閉等を行うことができるようにしている。これに対して、第2実施形態では、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生すると、インストルメントパネル3A等の運転席2Dに着座した乗員が操作できる位置に配置され、ボデーECU20とCAN通信可能な、例えばタッチパネルを含むように構成されたディスプレイ装置50(例えば、CID(Center Information Display))に、運転席操作スイッチ14D内の各スイッチ14D1,14DD,14DP,14DRR,14DRLと同等の各スイッチを操作可能に含む操作画面(以下、「運転席スイッチ操作画面」と記載する。)を表示し、運転席2Dに着座した乗員が操作画面のスイッチを操作することで、助手席・右後席・左後席窓ガラス13P,13RR,13RLの開閉等を行うことができるようになっている。
【0070】
第2実施形態の車両用パワーウインドウ制御システム1Aは、
図6に示す構成をしており、ボデーECU20にはディスプレイ装置50がCAN40で接続されている。なお、第1実施形態の車両用パワーウインドウ制御システム1とは異なり、ボデーECU20と運転席SW-ECU11DとはCAN40で接続されていない。なお、
図6では、右後席、左後席に関する部分の図示を省略している。
【0071】
第2実施形態において、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間の通信異常が発生するまでは、例えば助手席窓ガラススイッチ開閉スイッチ14DPが閉スイッチ状態になると
図4を用いて説明した内容の処理が行われる、など第1実施形態と同じ内容の処理が行われる。
【0072】
ボデーECU20は、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間の通信異常が発生しているか否かを判定し、異常が発生していると判定した場合、CAN通信により、上記の運転席スイッチ操作画面の表示の実行の指令を含む信号を、ディスプレイ装置50へ送信し、当該指令を含む信号を受信したディスプレイ装置50は上記の運転席スイッチ操作画面を表示する。
【0073】
(C1)ディスプレイ装置に表示された運転席スイッチ操作画面において、例えば、運転席2Dに着座した乗員が助手席窓ガラス開閉スイッチ14DPに対応する運転席スイッチ操作画面内のスイッチを用いて助手席窓ガラス13Pを閉める操作をする。ディスプレイ装置50は、CAN通信により、助手席窓ガラス閉実行指令を含む信号をボデーECU20へ送信し、ボデーECU20はCAN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含む信号を受信する。(C2)ボデーECU20はLIN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含むコマンドを助手席SW-ECU11Pへ送信し、助手席SW-ECU11PはLIN通信により助手席窓ガラス閉実行指令を含むコマンドを受信する。助手席窓ガラス閉実行指令を含むコマンドを受信した助手席SW-ECU11Pは、助手席モータ12Pの正回転の制御を行う。なお、他のスイッチ操作においても同様のことが行われる。
【0074】
以上の第2実施形態によれば、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生した場合にはボデーECU20とCAN通信が可能なディスプレイ装置に運転席スイッチ操作画面が表示されるので、両者間のLIN通信に異常が発生しても、運転席スイッチ操作画面内の各スイッチを操作して助手席・右後席・左後席SW-ECU11P,11RR,11RLに制御処理を実行させることができる。運転席2Dに着座した乗員が頻繁に行う助手席・右後席・左後席窓ガラス13P,13RR.13RLの開閉に関わる機能の喪失を防止できる。
【0075】
また、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生していないときの(正常なときの)CAN通信の通信品質を確保できる。
【0076】
また、車両Tの左右方向の中央付近に配置されたディスプレイ装置を用いれば、車両Tの側面に他車両やポールなどの地物が衝突したり、車両Tの左右方向の中央部より先に水没することが多い車両Tの側部が水没したりしても、ディスプレイ装置の損壊を免れて、運転席2Dに着座した乗員が頻繁に行う助手席・右後席・左後席窓ガラス13P,13RR.13RLの開閉に関わる機能の喪失を防止できる。
【0077】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0078】
例えば、上記第1実施形態では、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信の異常が発生しているか否かの判定を、ボデーECU20が行うとしたが、これに限定されるものではなく、運転席SW-ECU11Dが行うようにしてもよい。なお、例えば、運転席SW-ECU11Dは、ボデーECU20から所定期間(M(Mは1以上の整数)回連続してコマンドを受信しない期間に相当)コマンドを受信しない事象が発生した場合に、ボデーECU20と運転席SW-ECU11D間のLIN通信に異常が発生したと判定する。
【0079】
また、上記第2実施形態では、運転席操作スイッチ14D内の各スイッチ14D1,14DD,14DP,14DRR,14DRLと同等の各スイッチを操作可能に含む操作画面を表示する表示装置が、車載装置の一つであるとしているが、これに限定されるものではなく、例えばスマートフォンなどであってもよい。
【0080】
また、上記第1実施形態および第2実施形態において、各々の運転席SW-ECU11D,11P,11RR,11RLの各々は、各々のパワーウインドウ装置10D,10P,10RR,10RLに含まれているが、これに限定されるものではない。具体的には、各々の運転席SW-ECU11D,11P,11RR,11RLの各々は、各々のパワーウインドウ操作用の操作スイッチ14D,14,P14RR,14RLに含まれていてもよい。
【0081】
また、上記第1実施形態および第2実施形態において、ECU間の通信として、LIN通信およびCAN通信を用いるとしているが、これに限定されるものではない。
【0082】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、車両用制御システムを、車両用パワーウインドウ制御システムとしているが、これに限定されるものではない。
【0083】
また、上記の実施形態で説明した内容や上記の変形例で説明した内容を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0084】
本発明は、一の第1制御装置が第2制御装置を介して他の第1制御装置に所定の制御処理を実行させる車両用制御システムに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:車両用制御システム
11D:運転席SW-ECU
11P:助手席SW-ECU
11RR:右後席SW-ECU
11RL:左後席SW-ECU
20:ボデーECU
30:LIN
40:CAN