IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

<>
  • 特開-便座装置 図1
  • 特開-便座装置 図2
  • 特開-便座装置 図3
  • 特開-便座装置 図4
  • 特開-便座装置 図5
  • 特開-便座装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141426
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/30 20060101AFI20230928BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20230928BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20230928BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A47K13/30 B
E03D9/08 B
A61L9/00 C
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047750
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本並 洋二
(72)【発明者】
【氏名】福田 達則
(72)【発明者】
【氏名】福本 和広
(72)【発明者】
【氏名】福井 健二
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 哲郎
【テーマコード(参考)】
2D037
2D038
4C180
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AD12
2D038BB12
2D038BB18
2D038BB24
2D038BC01
2D038JH00
2D038KA03
4C180AA02
4C180BB03
4C180BB06
4C180BB12
4C180CC03
4C180CC04
4C180DD03
4C180EA14X
4C180EA34X
4C180HH05
4C180HH17
4C180HH18
4C180HH19
4C180KK04
4C180LL11
4C180MM01
(57)【要約】
【課題】光触媒フィルタを含む2種類のフィルタを簡易な構成で切り替えながら使用して、脱臭効率を高めつつフィルタの長寿命化を図る。
【解決手段】便座装置の脱臭装置は、光触媒を有する第1フィルタが配置された第1流路と、第1フィルタとは種類の異なる第2フィルタが配置され第1流路よりも圧力損失が大きい第2流路とが内部に並列に設けられた流路と、光触媒に光を照射するランプと、送風するファンと、第1フィルタを収容すると共に貯水可能な収容槽とを備える。便座装置は、収容槽に給水する給水部と、収容槽に貯水していない状態で第1流路に空気を流通させて第1フィルタで脱臭する第1脱臭制御と、第1フィルタが水に浸漬するように収容槽に貯水させて第1流路の空気の流通を抑制した状態で第2流路に空気を流通させて第2フィルタで脱臭する第2脱臭制御とを実行する制御部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱臭装置を備える便座装置であって、
前記脱臭装置は、
光触媒を有する第1フィルタおよび該第1フィルタとは種類の異なる第2フィルタと、 前記第1フィルタの前記光触媒に光を照射するランプと、
前記第1フィルタが配置された第1流路と、前記第2フィルタが配置され前記第1流路よりも圧力損失が大きい第2流路とが内部に並列に設けられ、吸気口から吸入された空気が前記第1流路および前記第2流路のいずれかを流通して排気口から排出される流路と、
前記吸気口から前記排気口に向けて空気が流通するように送風するファンと、
前記第1流路に設けられ、前記第1フィルタを収容すると共に貯水可能な収容槽と、
を備え、
前記収容槽に給水する給水部と、
前記収容槽に貯水していない状態で前記第1流路に空気を流通させて前記第1フィルタで脱臭するように前記ランプと前記給水部と前記ファンとを制御する第1脱臭制御と、前記第1フィルタが水に浸漬するように前記収容槽に貯水させて前記第1流路の空気の流通を抑制した状態で前記第2流路に空気を流通させて前記第2フィルタで脱臭するように前記給水部と前記ファンとを制御する第2脱臭制御と、を実行する制御部と、
を備える便座装置。
【請求項2】
請求項1に記載の便座装置であって、
前記第2フィルタは、前記第1フィルタよりも圧力損失が大きく且つ脱臭性能が高いものであり、
前記第1流路は、前記収容槽が貯水している状態で空気が流通不能に構成され、
前記第2流路には、空気の流通を絞る絞り部が設けられている
便座装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の便座装置であって、
前記収容槽は、所定の排水量で便器の便鉢内に常時排水するように構成され、
前記制御部は、使用者による前記便座装置の使用が開始されると前記第2脱臭制御を開始するために前記所定の排水量を超える給水量で前記収容槽に給水し、前記第2脱臭制御中は前記所定の排水量を補う給水量で前記収容槽に給水し、前記第2脱臭制御を終了すると前記収容槽への給水を終了するように、前記給水部を制御する
便座装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の便座装置であって、
前記制御部は、使用者による前記便座装置の使用が開始されると、前記ランプを消灯して前記第1脱臭制御を終了すると共に前記第2脱臭制御を開始し、前記便座装置の使用終了から所定時間が経過すると、前記第2脱臭制御を終了すると共に前記ランプを点灯して前記第1脱臭制御を開始する
便座装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の便座装置であって、
人体局部に洗浄水を噴出する洗浄ノズルを備え、
前記給水部は、給水先を前記洗浄ノズルと前記収容槽とに切り替え可能に構成され、
前記制御部は、前記第2脱臭制御を開始する際に、前記収容槽に給水するように前記給水部を制御し、前記第2脱臭制御中に人体局部の洗浄が指示された際に、前記洗浄ノズルに給水するように前記給水部を制御する
便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便座装置としては、臭気成分を吸着して脱臭する脱臭装置を備えるものが提案されている。例えば、特許文献1には、複数の吸着材が配置された脱臭装置を備えるものが記載されている。また、特許文献2には、アレルゲンフィルタと、脱臭剤との二種類のフィルタが流路内に配置された脱臭装置や、空気(臭気)の流通を切り替えるように駆動する切替手段をさらに備えた脱臭装置などを備えるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-81829号公報
【特許文献2】特開2005-336953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、脱臭装置が、洗浄により再生可能な光触媒を有する光触媒フィルタと、再生はできないものの脱臭性能が比較的高い活性炭などを有する脱臭フィルタと備え、必要に応じて2種類のフィルタを使い分けることで脱臭効率を高めつつフィルタの長寿命化を図ることが考えられる。しかし、各フィルタを切り替えるための切替手段と、光触媒フィルタを洗浄するための洗浄手段とを設けると、構造が複雑になって装置全体の大型化やコストの増加を招いてしまう。
【0005】
本開示は、光触媒フィルタを含む2種類のフィルタを簡易な構成で切り替えながら使用して、脱臭効率を高めつつフィルタの長寿命化を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の便座装置は、
脱臭装置を備える便座装置であって、
前記脱臭装置は、
光触媒を有する第1フィルタおよび該第1フィルタとは種類の異なる第2フィルタと、 前記第1フィルタの前記光触媒に光を照射するランプと、
前記第1フィルタが配置された第1流路と、前記第2フィルタが配置され前記第1流路よりも圧力損失が大きい第2流路とが内部に並列に設けられ、吸気口から吸入された空気が前記第1流路および前記第2流路のいずれかを流通して排気口から排出される流路と、
前記吸気口から前記排気口に向けて空気が流通するように送風するファンと、
前記第1流路に設けられ、前記第1フィルタを収容すると共に貯水可能な収容槽と、
を備え、
前記収容槽に給水する給水部と、
前記収容槽に貯水していない状態で前記第1流路に空気を流通させて前記第1フィルタで脱臭するように前記ランプと前記給水部と前記ファンとを制御する第1脱臭制御と、前記第1フィルタが水に浸漬するように前記収容槽に貯水させて前記第1流路の空気の流通を抑制した状態で前記第2流路に空気を流通させて前記第2フィルタで脱臭するように前記給水部と前記ファンとを制御する第2脱臭制御と、を実行する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の便座装置では、第1フィルタの収容槽に貯水していない状態で第1流路に空気を流通させて第1フィルタで脱臭する第1脱臭制御と、第1フィルタが水に浸漬するように収容槽に貯水させて第1流路の空気の流通を抑制した状態で第2流路に空気を流通させて第2フィルタで脱臭する第2脱臭制御と、を実行する。これにより、収容槽に貯水させることで、空気の流通を第1流路から第2流路に切り替えることができ、また、光触媒を洗浄して再生することができる。したがって、流路の切替手段と光触媒の洗浄手段とを別々に設ける必要のない簡易な構成で、2種類のフィルタを切り替えながら使用して脱臭効率を高めつつフィルタの長寿命化を図ることができる。
【0009】
本開示の便座装置において、前記第2フィルタは、前記第1フィルタよりも圧力損失が大きく且つ脱臭性能が高いものであり、前記第1流路は、前記収容槽が貯水している状態で空気が流通不能に構成され、前記第2流路には、空気の流通を絞る絞り部が設けられているものとしてもよい。こうすれば、第2脱臭制御では、第2流路に空気を確実に流通させて第2フィルタで効率よく脱臭させることができる。また、第1脱臭制御では、第2フィルタの圧力損失と第2流路の絞り部との相乗効果により、第1流路への空気の流通を促して第1フィルタで脱臭させるから、第2フィルタの使用時間を抑制することができる。
【0010】
本開示の便座装置において、前記収容槽は、所定の排水量で便器の便鉢内に常時排水するように構成され、前記制御部は、使用者による前記便座装置の使用が開始されると前記第2脱臭制御を開始するために前記所定の排水量を超える給水量で前記収容槽に給水し、前記第2脱臭制御中は前記所定の排水量を補う給水量で前記収容槽に給水し、前記第2脱臭制御を終了すると前記収容槽への給水を終了するように、前記給水部を制御するものとしてもよい。こうすれば、収容槽の貯水(第1フィルタの浸漬)と、貯水(浸漬)の解除とを、簡易な構成で速やかに切り替えることができる。
【0011】
本開示の便座装置において、前記制御部は、使用者による前記便座装置の使用が開始されると、前記ランプを消灯して前記第1脱臭制御を終了すると共に前記第2脱臭制御を開始し、前記便座装置の使用終了から所定時間が経過すると、前記第2脱臭制御を終了すると共に前記ランプを点灯して前記第1脱臭制御を開始するものとしてもよい。こうすれば、ランプの点灯を第1脱臭制御の実行中に限定して、第1フィルタによる脱臭を適切に行うことができる。
【0012】
本開示の便座装置において、人体局部に洗浄水を噴出する洗浄ノズルを備え、前記給水部は、給水先を前記洗浄ノズルと前記収容槽とに切り替え可能に構成され、前記制御部は、前記第2脱臭制御を開始する際に、前記収容槽に給水するように前記給水部を制御し、前記第2脱臭制御中に人体局部の洗浄が指示された際に、前記洗浄ノズルに給水するように前記給水部を制御するものとしてもよい。こうすれば、人体局部の洗浄と収容槽への給水とに給水部を共用することができるから、簡易な構成として装置の大型化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図である。
図2】洗浄便座装置10の構成図である。
図3】脱臭処理の一例を示すフローチャートである。
図4】脱臭処理が行われる際の一例を示すタイムチャートである。
図5】使用時脱臭制御が行われる際の空気の流通の様子を示す説明図である。
図6】非使用時脱臭制御が行われる際の空気の流通の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本開示の実施形態を図面を用いて説明する。図1は、洗浄便座装置10が取り付けられた便器1の外観斜視図である。図2は、洗浄便座装置10の構成図である。便器1は、洋式便器であり、便器1の上面に洗浄便座装置10が設置されている。
【0015】
洗浄便座装置10は、図1に示すように、便器1の後方に設置される便座装置本体11と、便座装置本体11に回動自在に支持された便座12と、便座装置本体11に回動自在に支持された便蓋13と、使用者により操作される操作パネル14とを備える。また、洗浄便座装置10は、便座装置本体11に、使用者の局部洗浄を行うおしり洗浄ノズルやビデ洗浄ノズルなどの洗浄ノズル21を有するノズルユニット20と、臭気を脱臭する脱臭ユニット30と、洗浄便座装置10の全体を制御する制御部50とを備える。
【0016】
ノズルユニット20は、給水源に接続された給水路22の通水の有無を切り替える給水バルブ23と、給水バルブ23を通過した洗浄水を加熱する加熱ヒータ24と、加熱ヒータ24から出力された洗浄水の供給先の切り替えと給水量の調整とが可能な切替バルブ25とを備える。加熱ヒータ24は、例えば洗浄水を瞬間的に加熱するセラミックヒータであり、例えば1500Wの定格出力を有する。切替バルブ25は、おしり洗浄用の洗浄ノズル21へ洗浄水を供給するおしり洗浄用供給路26aと、ビデ洗浄用の洗浄ノズル21へ洗浄水を供給するビデ洗浄用供給路26bと、脱臭ユニット30の後述する光触媒フィルタ44へ洗浄水を供給する光触媒用供給路26cとのうちいずれかに、洗浄水を選択的に供給するように構成されている。なお、ノズルユニット20は、この他に、各洗浄ノズル21を前後方向に進退移動させるノズル駆動部や、洗浄水の流量を検出する流量センサ、加熱ヒータ24により加熱された洗浄水の温度を検出する温度センサなどを備える。
【0017】
脱臭ユニット30は、吸気口31aから吸入され筒状の流路31を流通して排気口31bから排出される空気(臭気)を脱臭する。本実施形態では、例えば便器1の便鉢内に吸気口31aが開口し、便器1が設置されたトイレ室内に排気口31bが開口するように流路31が形成されている。脱臭ユニット30は、流路31内に、活性炭フィルタ42と、光触媒フィルタ44と、LEDランプ46と、ファン48とを備える。
【0018】
活性炭フィルタ42は、活性炭が基材に担持されたフィルタであり、活性炭によりアンモニアや硫化水素などの臭気成分を吸着除去することが可能となっている。光触媒フィルタ44は、例えば酸化チタンなどの光触媒が基材に担持されたフィルタであり、LEDランプ46から紫外線などの光が照射されることにより臭気成分を分解除去することが可能となっている。活性炭フィルタ42は、光触媒フィルタ44よりも、圧力損失が大きく且つ脱臭性能が高いフィルタであり、例えば圧力損失が光触媒フィルタ44の2倍程度となるように形成されている。特に限定するものではないが、例えば活性炭フィルタ42の圧力損失が80~90Paで、光触媒フィルタ44の圧力損失が40~50Paである。なお、活性炭フィルタ42の圧力損失を、光触媒フィルタ44の2倍以上に大きくしてもよい。また、光触媒フィルタ44に光を照射するランプは、LEDランプ46に限られず、ハロゲンランプや蛍光ランプなどでもよい。ファン48は、吸気口31aから流路31内に空気を吸入し排気口31bから排出するように送風する。
【0019】
また、脱臭ユニット30の流路31には、ファン48よりも上流側の一部に、空気の流通方向(図2の左右方向,軸方向)に沿って延在する隔壁32が設けられている。本実施形態では、流路31内の一部が隔壁32によって上下に区画されており、上側が活性炭フィルタ42が配置された活性炭用流路(活性炭フィルタ流路)33となり、下側が光触媒フィルタ44が配置された光触媒用流路(光触媒フィルタ流路)35となっている。このように、活性炭フィルタ42と光触媒フィルタ44とが流路31内に並列に配置されている。このため、吸気口31aから吸入された空気は、活性炭用流路33の活性炭フィルタ42および光触媒用流路35の光触媒フィルタ44のいずれかを通って排気口31bから排出される。
【0020】
活性炭用流路33は、流路31の内壁面から隔壁32に向けて延在する絞り壁34によって、下流側(出口側、ファン48側)の出口の流路面積が絞られている。光触媒用流路35には、例えば2つの光触媒フィルタ44が流通方向に沿って並んで配置されており、上流側および下流側にそれぞれ流路31の内壁面から隔壁32に向けて延在する仕切壁36,37が設けられている。隔壁32には、光触媒用流路35側の面(図2の下面)から2つの光触媒フィルタ44の間を下方に延在する延在壁32aが設けられている。このため、吸気口31a側の光触媒フィルタ44は、上流側の仕切壁36と延在壁32aとに挟まれるように配置され、排気口31b側の光触媒フィルタ44は、延在壁32aと下流側の仕切壁37とに挟まれるように配置されている。したがって、光触媒用流路35を流通する空気は、仕切壁36と隔壁32との間、吸気口31a側の光触媒フィルタ44、延在壁32aの下方、排気口31b側の光触媒フィルタ44、仕切壁37と隔壁32との間を順に流通する。なお、LEDランプ46は、隔壁32の光触媒用流路35側の面(図2の下面)に、各光触媒フィルタ44に対向するように2つ取り付けられている。
【0021】
また、光触媒用流路35には、流路31の内壁の一部と、仕切壁36,37とにより、2つの光触媒フィルタ44を収容すると共に水(洗浄水)を貯留可能な収容槽(貯留槽)38が設けられている。収容槽38は、底面が光触媒用供給路26cに連通しており、光触媒用供給路26cから洗浄水が供給される。光触媒用供給路26cから収容槽38に供給された洗浄水は、光触媒フィルタ44を浸漬するように貯留して、光触媒フィルタ44を洗浄する。また、延在壁32aの下端以上に収容槽38に洗浄水が貯留して光触媒フィルタ44が浸漬された状態では、光触媒用流路35を空気が流通することができなくなる。収容槽38は、底面に排水路39が接続されており、排水路39を介して槽内の洗浄水を、便器1の便鉢内に排出するものとなっている。排水路39は、光触媒用供給路26cよりも小さな断面積であり、収容槽38内の洗浄水を便鉢内に常時排出する。
【0022】
操作パネル14には、おしり洗浄を指示するおしり洗浄スイッチやビデ洗浄を指示するビデ洗浄スイッチ、洗浄の停止を指示する停止スイッチ、洗浄水の温度を調整する温度調整スイッチ、脱臭ユニット30による脱臭動作の有無を指示する脱臭スイッチなどが設けられている。
【0023】
制御部50は、CPU52を中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPU52の他にROM54やRAM56,タイマ58,入出力ポートなどを備える。制御部50には、図2に示すように、操作パネル14からの操作信号やトイレ室内の人体(使用者)を検知する人体検知センサ15からの検知信号、便座12への使用者の着座を検知する着座検知センサ16からの検知信号などが入力ポートを介して入力される。また、制御部50からは、ノズルユニット20の加熱ヒータ24や切替バルブ25、洗浄ノズル21の駆動部などへの駆動信号や、脱臭ユニット30のLEDランプ46やファン48への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0024】
次に、こうして構成された洗浄便座装置10の脱臭ユニット30の動作について説明する。図3は、脱臭処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、脱臭スイッチがオンされている(脱臭動作ありとなっている)状態で制御部50のCPU52により実行される。また、図4は、脱臭処理が行われる際の一例を示すタイムチャートである。図4では、光触媒フィルタ44の収容槽38の貯水量と、収容槽38への給水量と、LEDランプ46の点灯有無(オンオフ)との時間推移を示す。
【0025】
図3の脱臭処理では、制御部50のCPU52は、まず、一定の風量を送風(吸引)するようにファン48の駆動を開始し(S100)、人体検知センサ15からの検知信号に基づいて使用者を検知したか否か(S110)、非使用時脱臭(第1脱臭制御)中であるか否か(S120)、をそれぞれ判定する。CPU52は、S110で使用者を検知していないと判定し且つS120で非使用時脱臭中であると判定すると、S110に戻る。また、CPU52は、S120で非使用時脱臭中でないと判定すると、S220に進み、非使用時脱臭を開始するが、詳細は後述する。
【0026】
一方、CPU52は、S110で使用者を検知したと判定すると、洗浄水の供給先を光触媒用供給路26cに切り替えるように切替バルブ25を制御して光触媒フィルタ44の収容槽38へ給水すると共にLEDランプ46をオフとする(S130,図4の時刻t0)。S130では、収容槽38を速やかに満水とするように、単位時間当たりに排水路39の所定の排水量を超える最大(100%)の給水量で給水が行われる。
【0027】
これにより、収容槽38の貯水量が増加して(図4の時刻t0~t1)、光触媒フィルタ44が水に浸漬するため、光触媒用流路35に空気(臭気)を流通させないようにすることができる。このため、図5に示すように、吸気口31aから吸入した空気(臭気)は活性炭用流路33を流通するから(図5の実線矢印)、活性炭フィルタ42により臭気を迅速に除去する使用時脱臭制御(第2脱臭制御)が開始される。このように、収容槽38に洗浄水を給水して光触媒フィルタ44を浸漬させることで、流路31内の流通経路を光触媒用流路35から活性炭用流路33に切り替えて、活性炭フィルタ42で脱臭するのである。なお、S130では加熱ヒータ24を駆動することなく常温の洗浄水を収容槽38に供給してもよいし、加熱ヒータ24を駆動して加熱された洗浄水を収容槽38に供給してもよい。後者の場合、光触媒フィルタ44を洗浄する効果を前者の場合よりも高めることができるから、洗浄による光触媒フィルタ44の脱臭性能(除去性能)の回復効果を高めることができる。
【0028】
収容槽38を満水とするための洗浄水の供給が完了すると、CPU52は、光触媒フィルタ44の浸漬(収容槽38の貯水量)を維持するように、排水分を補給(供給)する(S140、図4の時刻t1)。上述したように、収容槽38は、排水路39から洗浄水を常時排水する。このため、使用時脱臭中は、S140でその排水分を補給することで、光触媒フィルタ44の浸漬を維持する。続いて、CPU52は、操作パネル14からの操作信号に基づいて局部洗浄が指示されたか否かを判定し(S150)、局部洗浄が指示されていないと判定すると、S190に進む。
【0029】
CPU52は、S150で局部洗浄が指示されたと判定すると、洗浄水の供給先を局部洗浄用の供給路に切り替えるように切替バルブ25を制御する(S160)。CPU52は、S160では、おしり洗浄が指示されていた場合におしり洗浄用供給路26aに切り替えるように切替バルブ25を制御し、ビデ洗浄が指示されていた場合にビデ洗浄用供給路26bに切り替えるように切替バルブ25を制御する。これにより、光触媒フィルタ44の収容槽38に洗浄水が補給されなくなり、収容槽38の貯水量が減少していく(図4の時刻t2~t3)。なお、収容槽38の貯水量が減少しても、直ちに貯水量が値0となるわけではなく、濡れた状態の光触媒フィルタ44は空気が流通しにくいため、空気(臭気)は活性炭用流路33を流通して脱臭される。
【0030】
そして、CPU52は、局部洗浄が終了するのを待ち(S170)、局部洗浄が終了したと判定すると、洗浄水の供給先を光触媒用供給路26cに切り替えるように切替バルブ25を制御して収容槽38への給水を再開する(S180)。S180では、S130と同様に、収容槽38を速やかに満水とするように最大(100%)の給水量で供給する(図4の時刻t3~t4)。なお、時刻t3~t4の時間は、時刻t2~t3の局部洗浄中に収容槽38から排出された排出分を補給するのに必要な時間として算出することができる。次に、CPU52は、着座検知センサ16からの検知信号により使用者の脱座を検知したか否かを判定し(S190)、脱座を検知していないと判定すると、S140に戻り処理を繰り返す。
【0031】
一方、CPU52は、S190で脱座を検知したと判定すると、タイマ58により脱座後時間の計時を開始して(S200)、脱座後時間が所定時間に到達するのを待つ(S210)。所定時間は、例えば1分などの数分程度の時間に定められている。CPU52は、脱座後時間が所定時間に到達したと判定すると、光触媒フィルタ44の収容槽38への給水を停止すると共にLEDランプ46をオンとして(S220,図4の時刻t5)、S110に戻る。収容槽38への給水を停止すると、収容槽38に貯留されていた水が排水路39から排水されていくから、収容槽38の貯水量が徐々に減少する。また、光触媒フィルタ44が乾いて圧力損失の大小関係が元に戻ると、空気(臭気)は主に光触媒用流路35を流通し(図6の実線矢印)、圧力損失の大きい活性炭用流路33には流通しにくいものとなる(図6の点線矢印)。このようにして、主に光触媒フィルタ44で脱臭する非使用時脱臭を開始すると、CPU52は、S110に戻り処理を繰り返す。
【0032】
以上説明した洗浄便座装置10では、収容槽38が貯水していない状態で光触媒用流路35に空気を流通させて光触媒フィルタ44で脱臭する非使用時脱臭制御(第1脱臭制御)と、光触媒フィルタ44が水に浸漬するように収容槽38が貯水した状態で活性炭用流路33に空気を流通させて活性炭フィルタ42で脱臭する使用時脱臭制御(第2脱臭制御)とを実行する。これにより、収容槽38に貯水させることで、空気が流通する流路を切り替えることができ、また、光触媒フィルタ44を洗浄し臭気分解時に生じた生成物を除去して脱臭性能を再生することができる。したがって、流路の切替手段と光触媒フィルタ44の洗浄手段(洗浄水の供給手段)とを別々に設ける必要のない簡易な構成で、2種類のフィルタを適切に切り替えて脱臭効率を高めつつ長寿命化を図ることができる。
【0033】
また、活性炭フィルタ42は、光触媒フィルタ44よりも圧力損失が大きく且つ脱臭性能が高いが、光触媒フィルタ44のように再生することができないものである。光触媒用流路35は、光触媒フィルタ44が水に浸漬すると空気が流通不能に構成されている。また、活性炭用流路33には、空気の流通を絞る絞り壁34が設けられている。これらのことから、洗浄便座装置10の使用時には、活性炭用流路33に空気を確実に流通させて吸着効率の高い活性炭フィルタ42で脱臭させるから、臭気を急速に脱臭することが可能となる。また、洗浄便座装置10の非使用時には、活性炭フィルタ42の圧力損失と活性炭用流路33の絞り壁34との相乗効果により、活性炭用流路33の圧力損失を光触媒用流路35よりも確実に大きくする。これにより、非使用時には光触媒用流路35への空気の流通を促して、使用時に脱臭しきれずに漂う臭気を光触媒フィルタ44で脱臭することができる。また、非使用時には、活性炭フィルタ42への空気の流通を抑制して使用時間を限定するため、活性炭フィルタ42の長寿命化を図ることができる。
【0034】
また、使用時脱臭制御が開始されると排水路39からの所定の排水量を超える給水量で収容槽38に給水し、使用時脱臭制御中は所定の排水量を補う給水量で収容槽38に給水し、使用時脱臭制御を終了すると収容槽38への給水を終了して排水させる。このため、収容槽38内の光触媒フィルタ44の浸漬と、浸漬の解除とを、簡易な構成で速やかに切り替えることができる。
【0035】
また、使用者を検知すると、LEDランプ46の点灯を非使用時脱臭中に限定して不要な点灯を抑制するから、光触媒フィルタ44による脱臭を適切に行うことができる。
【0036】
また、切替バルブ25は、給水路22を流通した洗浄水の供給先を、洗浄ノズル21(おしり洗浄ノズルまたはビデ洗浄ノズル)と収容槽38とに切り替え可能に構成されている。制御部50は、使用時脱臭制御を開始する際に、収容槽38に洗浄水が供給されるように切替バルブ25を制御し、使用時脱臭制御中に局部洗浄が指示された際に、洗浄ノズル21に洗浄水が供給されるように切替バルブ25を制御する。このため、局部洗浄用に給水する構成と収容槽38に給水する構成とを共用するから、簡易な構成として洗浄便座装置10の大型化を防止することができる。また、加熱ヒータ24で加熱された洗浄水を収容槽38に供給することで光触媒フィルタ44を洗浄する効果を高めることもできる。
【0037】
上述した実施形態では、局部洗浄用に給水する構成と収容槽38に給水する構成とを共用したが、これに限られず、局部洗浄用に洗浄水を供給する構成と収容槽38に洗浄水を供給する構成とを別々に設けてもよい。即ち、脱臭ユニット30が、収容槽38に洗浄水を供給するための専用の給水部を備えてもよい。こうすれば、使用時脱臭制御中に局部洗浄が行われても、収容槽38の満水状態(光触媒フィルタ44の浸漬)を確実に維持することができる。なお、脱臭ユニット30が、収容槽38に洗浄水を供給する給水部と、使用時脱臭制御と非使用時脱臭制御とを実行する制御部とを備えるものとしてもよい。
【0038】
実施形態では、使用者を検知すると、LEDランプ46を消灯して非使用時脱臭制御を終了すると共に使用時脱臭制御を開始し、脱座の検知から所定時間が経過すると(脱座後時間が所定時間になると)、使用時脱臭制御を終了すると共にLEDランプ46を点灯して非使用時脱臭制御を開始したが、これに限られない。例えば、着座検知センサ16により便座12への着座を検知すると、LEDランプ46を消灯して非使用時脱臭制御を終了すると共に使用時脱臭制御を開始してもよい。また、収容槽38への貯水が完了するタイミングで、LEDランプ46を消灯して非使用時脱臭制御を終了すると共に使用時脱臭制御を開始してもよい。また、人体検知センサ15で使用者を検知しなくなると、使用時脱臭制御を終了すると共にLEDランプ46を点灯して非使用時脱臭制御を開始してもよい。また、収容槽38から排水が完了するタイミングで、LEDランプ46を点灯して非使用時脱臭制御を開始してもよい。あるいは、LEDランプ46を常時点灯し続けるものなどとしてもよい。また、実施形態では、洗浄便座装置10の非使用時に非使用時脱臭制御としての第1脱臭制御を実行し、洗浄便座装置10の使用時に使用時脱臭制御としての第2脱臭制御を実行したが、これに限られない。即ち、使用時か否かに拘わらず、第1脱臭制御と第2脱臭制御とを切り替えて実行するものでもよい。
【0039】
実施形態では、収容槽38(排水路39)は、便鉢内に常時排水するように構成されたが、これに限られず、排水の有無を切り替え可能に構成されていてもよい。ただし、簡易な構成とするために、実施形態のように構成するものが好ましい。
【0040】
実施形態では、光触媒フィルタ44(第1フィルタ)とは種類の異なる第2フィルタとして活性炭フィルタ42を備えたが、これに限られない。第2フィルタは、第1フィルタと異なり光触媒を有さないフィルタであればよく、活性炭などで物理的に吸着するフィルタ以外に、例えばイオン交換繊維などで化学的に吸着する化学フィルタでもよいし、化学的な吸着と物理的な吸着とが可能なフィルタでもよい。
【0041】
実施形態では、ファン48を一定の回転速度で駆動して風量を一定としたが、これに限られず、風量を変化させてもよい。例えば使用時脱臭ではファン48の回転速度を上げて風量を大きくし、非使用時脱臭ではファン48の回転速度を下げて風量を小さくしてもよい。あるいは、使用者からの操作指示に基づいて風量を変化させてもよい。
【0042】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した本開示の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態の洗浄便座装置10が本開示の「便座装置」に相当し、脱臭ユニット30が「脱臭装置」に相当し、光触媒フィルタ44が「第1フィルタ」に相当し、活性炭フィルタ42が「第2フィルタ」に相当し、LEDランプ46が「ランプ」に相当し、光触媒用流路35が「第1流路」に相当し、活性炭用流路33が「第2流路」に相当し、流路31が「流路」に相当し、ファン48が「ファン」に相当し、収容槽38が「収容槽」に相当し、給水路22と給水バルブ23と切替バルブ25とが「給水部」に相当し、制御部50が「制御部」に相当する。また、絞り壁34が「絞り部」に相当する。洗浄ノズル21が「洗浄ノズル」に相当する。
【0043】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した本開示の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した本開示を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した本開示の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した本開示についての解釈はその欄の記載に基づいて行われるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した本開示の具体的な一例に過ぎないものである。
【0044】
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示は、便座装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 便器、10 洗浄便座装置、11 便座装置本体、12 便座、13 便蓋、14 操作パネル、15 人体検知センサ、16 着座検知センサ、20 ノズルユニット、21 洗浄ノズル、22 給水路、23 給水バルブ、24 加熱ヒータ、25 切替バルブ、26a おしり洗浄用供給路、26b ビデ洗浄用供給路、26c 光触媒用供給路、30 脱臭ユニット、31 流路、31a 吸気口、31b 排気口、32 隔壁、32a 延在部、33 活性炭用流路、34 絞り壁、35 光触媒用流路、36,37 仕切壁、38 収容槽、39 排水路、42 活性炭フィルタ、44 光触媒フィルタ、46 LEDランプ、48 ファン、50 制御部、52 CPU、54 ROM、56 RAM、58 タイマ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6