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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141429
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】自由落下衝撃試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/303 20060101AFI20230928BHJP
   G01M 7/08 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G01N3/303 A
G01M7/08 Z
G01N3/303 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047754
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堺 勇行
(72)【発明者】
【氏名】西平 拓
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA13
2G061AB04
2G061BA04
2G061EA01
2G061EB05
2G061EB07
2G061EC07
(57)【要約】
【課題】実現象に合った再現性の高い落下衝撃試験を実施できる装置を提供する。
【解決手段】落下物を自由落下させて衝撃受け板に衝突させる自由落下衝撃試験装置であって、前記落下物から独立した状態で前記落下物を水平方向外側から囲むカバーと、前記落下物とともに自由落下する前記カバーを鉛直方向に案内するガイドと、を備える。前記カバーは、鉛直方向から見て前記落下物よりも大きい下開口を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下物を自由落下させて衝撃受け板に衝突させる試験に用いられる自由落下衝撃試験装置であって、
前記落下物から独立した状態で前記落下物を水平方向外側から囲むカバーと、
前記落下物とともに自由落下する前記カバーを鉛直方向に案内するガイドと、を備え、
前記カバーは、鉛直方向から見て前記落下物よりも大きい下開口を有する、自由落下衝撃試験装置。
【請求項2】
前記落下物とともに落下した前記カバーの下端が、前記衝撃受け板から上方に所定高さ離れた特定位置に到達したときに、前記カバーの落下を阻止する少なくとも1つのストッパを更に備え、
前記所定高さは、前記落下物の最大高さ寸法よりも大きい、請求項1に記載の自由落下衝撃試験装置。
【請求項3】
前記カバーは、その下端から上方に延びたスリットを有し、
前記ストッパは、前記カバーの前記下端が前記特定位置に到達したときに、前記下開口が拡がるように前記カバーに外力を付与する、請求項2に記載の自由落下衝撃試験装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのストッパは、一対のストッパを含み、
前記一対のストッパは、前記カバーの上端部における前記スリットの両側の部分にそれぞれ接続される一端部と、前記特定位置にある前記カバーの上端よりも上方にある部材に固定される他端部と、を有し、
前記一対のストッパは、前記カバーの前記下端が前記特定位置に到達したときに張力を発生する長さを有する、請求項3に記載の自由落下衝撃試験装置。
【請求項5】
前記衝撃受け板の上方に突出したテーパ壁を更に備え、
前記カバーは、その下端から上方に延びたスリットを有し、
前記テーパ壁は、前記カバーとともに落下した前記落下物が前記衝撃受け板に衝突する前に、前記下開口が拡がるように前記カバーの内面を案内する、請求項1に記載の自由落下衝撃試験装置。
【請求項6】
前記カバーと前記ガイドとの間の界面に塗布された潤滑剤を更に備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自由落下衝撃試験装置。
【請求項7】
前記落下物と前記カバーとの間の界面に塗布された潤滑剤を更に備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の自由落下衝撃試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、落下物を自由落下させて衝撃受け板に衝突させる試験に用いられる自由落下衝撃試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、試験物の姿勢を一定に保った状態で前記試験物を自由落下させて衝突受け板に衝突させる落下衝撃試験装置が開示されている。この装置では、前記試験物を保持するテーパ付ホルダがリニアレールに沿って落下する。前記試験物は、前記テーパ付ホルダの下開口を通じて前記衝突受け板に衝突し、前記テーパ付ホルダは、前記衝突受け板よりも下方の衝撃吸収材に衝突して停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-166922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、前記ホルダの前記下開口が前記試験物よりも小さく、前記ホルダに前記試験物が保持されるため、前記試験物は実際の落下速度とは異なる落下速度になり得て、実現象に合った自由落下を再現できない可能性がある。
【0005】
そこで本開示の一態様は、実現象に合った再現性の高い落下衝撃試験を実施できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る自由落下衝撃試験装置は、落下物を自由落下させて衝撃受け板に衝突させる試験に用いられる自由落下衝撃試験装置であって、前記落下物から独立した状態で前記落下物を水平方向外側から囲むカバーと、前記落下物とともに自由落下する前記カバーを鉛直方向に案内するガイドと、を備える。前記カバーは、鉛直方向から見て前記落下物よりも大きい下開口を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、カバーが落下物に同伴して自由落下して且つ落下物はカバーから独立して自由落下し、実現象に合った落下物の自由落下が再現される。よって、自由落下衝撃試験装置において、実現象に合った再現性の高い落下衝撃試験を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る自由落下衝撃試験装置の斜視図である。
図2図2は、図1のカバー及びその近傍の鉛直断面図である。
図3図3は、図2のカバーの斜視図である。
図4図4は、図2のカバー及びその近傍の水平断面図である。
図5図5は、図1の衝撃受け板及びその近傍における落下物が衝撃受け板に衝突する直前の鉛直断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る自由落下衝撃試験装置の図5相当の鉛直断面図である。
図7図7は、第3実施形態に係る自由落下衝撃試験装置の図5相当の鉛直断面図である。
図8図8は、第4実施形態に係る自由落下衝撃試験装置の図5相当の鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る自由落下衝撃試験装置1の斜視図である。図1に示すように、自由落下衝撃試験装置1では、落下物10を自由落下させて衝撃受け板11の上面に衝突させる試験が実施される。落下物10を試験物としてもよいし、衝撃受け板11を試験物としてもよい。落下物10及び衝撃受け板11は、特に限定されず、試験目的に応じて決められる。一例として、航空機の翼を模擬した試験物を衝撃受け板11とする場合には、鳥を模擬したゼラチン球体を落下物10としてもよいし、丸氷を落下物10としてもよい。本実施形態では、落下物10を球体として衝撃受け板11を水平板とした例を説明する。
【0011】
自由落下衝撃試験装置1は、ベース2と、少なくとも1つの荷重計3と、架台4と、ガイド5と、カバー6と、少なくとも1つのストッパ7と、ビデオカメラ8と、を備える。
【0012】
ベース2は、地面に設置される板である。少なくとも1つの荷重計3は、ベース2上に設置されている。荷重計3は、ロードセルとし得る。本実施形態では、少なくとも1つの荷重計3は、ベース2上に分散配置された複数(例えば、4つ)の荷重計3を含む。荷重計3は、衝撃受け板11を下方から支持する。即ち、荷重計3は、衝撃受け板11に上方から付与された荷重を計測する。なお、ベース2を省略して荷重計3が地面に直接設置されてもよい。
【0013】
架台4は、複数の脚4a及び支持板4bを有する。脚4aは、地面上又はベース2上に設置されている。支持板4bは、荷重計3に支持される衝撃受け板11よりも上方において水平配置され、脚4aに下方から支持されている。支持板4bは、鉛直方向に開口した通過孔Hを有する。なお、複数の脚4aで囲まれた衝突空間Sは、透明板によって側方から囲まれていてもよい。
【0014】
ガイド5は、架台4の支持板4bに支持されている。ガイド5は、支持板4bから上方に延びている。ガイド5は、落下物10とともに自由落下するカバー6を鉛直方向に案内する。ガイド5は、例えば、鉛直方向に延びる軸線を有するパイプである。ガイド5の内面5aは、鉛直方向から見て、カバー6の外面6eの形状と相似の形状を有する。ガイド5の内部の案内空間Gの水平断面は、鉛直方向に沿って一定の形状及び大きさである。本実施形態では、ガイド5は丸パイプであり、案内空間Gの水平断面は円形である。
【0015】
カバー6は、落下物10が配置される内部空間を有する。カバー6は、落下物10を水平方向外側から囲む内面6dを有する。カバー6は、落下物10から離間自在であり、落下物10から独立した部材である。カバー6の内面6dは、鉛直方向から見て、落下物10の外形と相似な形状を有する。カバー6は、案内空間Gの水平断面の外形と相似な外面6eを有する。即ち、カバー6は、ガイド5の内面5aと相似な外面6eを有する。カバー6は、例えば筒である。当該筒は、円筒に限られず多角形筒でもよい。カバー6は、可撓性を有する。カバー6は、例えば樹脂製である。カバー6は、例えば透明又は半透明である。
【0016】
少なくとも1つのストッパ7は、落下物10とともに自由落下したカバー6の下端が後述の特定位置P(図5参照)に到達したときにカバー6の落下を阻止する。本実施形態では、少なくとも1つのストッパ7は、一対のストッパ7を含む。一対のストッパ7は、例えば糸である。ストッパ7の一端部はカバー6の上端部に接続され、ストッパ7の他端部は後述の特定位置Pに到達したカバー6の上端よりも上方にある部材15に固定されている。ストッパ7は、自由落下するカバー6に連れられてガイド5の案内空間Gを降下する。部材15は、自由落下衝撃試験装置1とは異なる固定設備でもよいし、ガイド5の上端部であってもよいし、当該固定設備又はガイド5に設置されるリールであってもよい。
【0017】
ビデオカメラ8は、衝撃受け板11及び衝突空間Sを側方から撮影できるように配置されている。ビデオカメラ8は、例えば高速度カメラである。なお、図1は、荷重計3及びビデオカメラ8の両方が使用される例を示しているが、荷重計3のみが使用されてもよいし、ビデオカメラ8のみが使用されもよい。なお、試験に用いる計測装置は、荷重計及びビデオカメラに限られず、他の装置(例えば、ひずみゲージ等)が使われてもよい。
【0018】
図2は、図1のカバー6及びその近傍の鉛直断面図である。図2に示すように、カバー6は、例えば、鉛直方向に開口した円筒である。カバー6は、内部空間を下方に開放する下開口6aと、内部空間を上方に開放する上開口6bと、を有する。ガイド5の内面5aとカバー6の外面6eとの間には、遊びが設けられている。カバー6の内面6dと落下物10の外面との間にも、遊びが設けられている。カバー6とガイド5との間の界面には、グリース等の潤滑剤が塗布されている。落下物10とカバー6との間の界面にも、グリース等の潤滑剤が塗布されている。具体的には、カバー6の内面6d及び外面6eに潤滑剤が塗布されている。なお、潤滑剤は、部分的に使用されてもよいし、使用されなくてもよい。
【0019】
落下準備完了状態では、落下物10をカバー6に挿入した状態でカバー6の下端部がガイド5の案内空間Gに上方から挿入される。落下準備完了状態では、カバー6及び落下物10は、作業者の手によって保持されるなどして静止している。落下準備完了状態では、落下物10の下端は、カバー6の下開口6aから上方に所定距離Lだけ離れている。なお、落下物10の下部は、カバー6の下開口6aから下方に食み出てもよい。
【0020】
図3は、図2のカバー6の斜視図である。図3に示すように、カバー6は、その下端から上方に延びたスリット6cを有する。本実施形態では、スリット6cは、カバー6の下端から上端まで延びている。即ち、カバー6は、C形状の水平断面を有する。なお、スリット6cは、カバー6の下端から上端近傍まで延び、カバー6の上端にスリット6cが到達していなくてもよい。即ち、スリット6cは、カバー6の弾性変形によって下開口6aが拡がることが可能なように形成されていればよい。一対のストッパ7の一端部すなわち下端部は、カバー6の上端部におけるスリット6cの両側の部分にそれぞれ接続されている。
【0021】
図4は、図2のカバー6及びその近傍の水平断面図である。図4に示すように、カバー6の内面は、鉛直方向から見て落下物10の外形よりも大きい。即ち、カバー6の下開口6a(図2参照)は、鉛直方向から見て落下物10の外形よりも大きい。カバー6の内面6dは、下方から見て落下物10と重ならない。落下物10は、カバー6により下方から支持されない。衝撃受け板11は、ガイド5の案内空間Gを包含するように配置されている。即ち、衝撃受け板11は、鉛直方向から見て落下物10を包含するように配置されている。衝撃受け板11は、鉛直方向から見て落下物10よりも大きい面積を有する。なお、衝撃受け板11は、鉛直方向から見て落下物10よりも小さい面積を有してもよい。
【0022】
図5は、図1の衝撃受け板11及びその近傍における落下物10が衝撃受け板11に衝突する直前の鉛直断面図である。図5に示すように、前記落下準備完了状態(図2参照)から作業者が落下物10及びカバー6から手を離すと、落下物10とともにカバー6がガイド5に沿って自由落下する。即ち、自由落下中の落下物10の側方には、同時に自由落下するカバー6の内面6dが存在することになる。そのため、自由落下中の落下物10は、ガイド5の内面5aに直接接触することはない。そして、カバー6の下端が、衝撃受け板11から上方に所定高さH1だけ離れた特定位置Pに到達したときに、ストッパ7がカバー6の落下を阻止する。
【0023】
具体的には、ストッパ7は、カバー6の下端が特定位置Pに到達したときに張力を発生する長さを有する。これにより、ストッパ7は、カバー6が特定位置Pを下方に越えて衝撃受け板11に向かわないように、カバー6の下端が特定位置Pに到達したときにカバー6を引き止める。自由落下している落下物10は、落下阻止されたカバー6の下開口6aを下方に通過して衝撃受け板11に向かう。
【0024】
衝撃受け板11の上面を基準とした特定位置Pの高さH1は、落下物10の最大高さ寸法Dよりも大きい。特定位置Pの高さH1は、衝撃受け板11の上面からガイド5の下端までの高さH2よりも小さい。特定位置Pは、ビデオカメラ8の撮影範囲よりも上方に位置している。特定位置Pは、落下物10が衝撃受け板11に衝突して上方に跳ね返ると予想される高さよりも上方に設定されている。
【0025】
特定位置Pは、カバー6の下端が特定位置Pに到達したときにカバー6の上端がガイド5の案内空間Gに位置するように設定されてもよい。これにより、次の試験のためにストッパ7を巻き上げてカバー6を上方に引き上げる際に、カバー6が簡単に案内空間Gを通って上方に導かれることになる。なお、ガイド5の案内空間Gの下部を水平方向に拡大させた形状とすれば、カバー6の下端が特定位置Pに到達したときにカバー6の下端がガイド5の案内空間Gに位置するように特定位置Pが設定されてもよい。即ち、特定位置Pは、カバー6の下端が特定位置Pに到達したときに、カバー6のうち少なくとも上端がガイド5の案内空間Gに位置するように設定されるとよい。
【0026】
ストッパ7は、カバー6の下端が特定位置Pに到達したときに下開口6aが水平方向に拡がるようにカバー6に外力を付与する。具体的には、一対のストッパ7の一端部である下端部は、カバー6の上端部におけるスリット6cの両側の部分にそれぞれ接続されているため、一対のストッパ7の張力がカバー6の上端部に作用し、スリット6cの下部を水平方向に拡げるような荷重が発生する。これにより、可撓性を有するカバー6の下開口6aが拡がり、落下物10は下開口6aを下方に通過する際にカバー6に接触しにくくなる。
【0027】
本実施形態では、カバー6の下端が特定位置Pに到達した状態において、一対のストッパ7は、上方にいくにつれて互いに近づく向きに延びる。なお、カバー6の下端が特定位置Pに到達した状態において、一対のストッパ7は、上方に向けて平行に延びていてもよい。
【0028】
落下阻止されたカバー6の下開口6aを下方に通過した落下物10は、衝撃受け板11に上方から衝突する。荷重計3は、落下物10から衝撃受け板11が受けた荷重を計測する。ビデオカメラ8は、衝撃受け板11に対する落下物10の衝突の挙動を撮影する。
【0029】
以上に説明した構成によれば、カバー6が落下物10に同伴して自由落下して且つ落下物10はカバー6から独立して自由落下する。そのため、自由落下中の落下物10がカバー6に接触しても落下物10には鉛直方向の抵抗が生じ難く、実現象に合った自由落下を再現できる。よって、自由落下衝撃試験装置1において、実現象に合った再現性の高い落下衝撃試験を実施できる。
【0030】
カバー6の下開口6aは、落下物10よりも大きくて衝撃受け板11が落下物10よりも大きい面積を有する。そのため、衝撃受け板11が落下物10よりも小さい面積を有する場合に比べ、実現象に合った衝突挙動を再現できる。
【0031】
落下物10とともに落下したカバー6の下端が衝撃受け板11から上方に所定高さHだけ離れた特定位置Pに到達したときに、ストッパ7がカバー6の落下を阻止する。よって、落下物10が衝撃受け板11に衝突する際に、落下物10がカバー6に囲まれない。よって、実現象に合った衝突挙動が再現されやすくなると共に、落下物10の衝突挙動を視覚的に確認しやすい。
【0032】
ストッパ7はカバー6の下端が特定位置Pに到達したときに、下開口6aが拡がるようにカバー6に外力を付与する。よって、落下物10が衝撃受け板11に衝突する直前においてカバー6が落下物10に接触し難くなり、落下物10の衝突姿勢を安定化できる。
【0033】
一対のストッパ7は、カバー6の下端が特定位置Pに到達したときに張力を発生する長さを有する。よって、カバー6の下端が特定位置Pに到達したとき、カバー6の上端部におけるスリット6cの両側の部分が上方に引っ張られてカバー6の下開口6aが拡がる。よって、落下物10が衝撃受け板11に衝突する直前においてカバー6が落下物10に接触し難くなり、落下物10の衝突姿勢を安定化できる。
【0034】
カバー6とガイド5との間の界面に潤滑剤が塗布されている。そのため、落下中のカバー6がガイド5に接触してもカバー6に鉛直方向の抵抗が生じ難いため、カバー6の落下速度の低下が抑制され、落下物10とカバー6との間に相対速度差が生じ難くなる。よって、落下中の落下物10がカバー6に接触しても落下物10には鉛直方向の抵抗が生じ難く、実現象に合った自由落下を再現できる。
【0035】
落下物10とカバー6との間の界面にも潤滑剤が塗布されている。よって、落下中の落下物10がカバー6に接触しても落下物10に鉛直方向の抵抗が生じ難いため、落下物10の落下速度の低下が抑制され、実現象に合った自由落下を再現できる。
【0036】
なお、ガイド5は、パイプに限られず、自由落下するカバー6の姿勢を保つようにカバー6を案内できるものであればよい。例えば、ガイド5は、自由落下するカバー6の落下経路を、遊びをもって囲むように水平方向に分散配置された複数の鉛直棒でもよい。ガイド5は、遊びをもってカバー6を下方に案内する鉛直レールであってもよい。カバー6は、上開口6bを閉鎖した有底筒状のものであってもよい。
【0037】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る自由落下衝撃試験装置101の図5相当の鉛直断面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図6に示すように、第2実施形態の自由落下衝撃試験装置101では、ストッパ107が第1実施形態のものと異なる。ストッパ107は、ガイド5の案内空間Gの下端において、案内空間Gの外周部を下方から閉鎖している。
【0038】
ストッパ107は、鉛直方向から見てガイド5の内面5aより内方に突出している。ストッパ107は、鉛直方向から見てカバー106の外面106eよりも内方に突出している。ストッパ107は、ガイド5の案内空間Gに連続する通過孔Hを有する。ストッパ107の通過孔Hは、ガイド5の案内空間Gの水平断面よりも小さい。カバー106は、円筒であるが、第1実施形態のスリット6c(図3参照)が設けられていない。但し、カバー106にはスリット6cがあってもよい。
【0039】
カバー106の下端が衝撃受け板11の上方の特定位置Pに到達したときにカバー106がストッパ107に下方から受け止められ、ストッパ107がカバー106の落下を阻止する。自由落下している落下物10は、落下阻止されたカバー106の下開口106aを下方に通過して衝撃受け板11に向かう。本構成によっても、実現象に合った再現性の高い落下衝撃試験を実施できる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0040】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る自由落下衝撃試験装置201の図5相当の鉛直断面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図7に示すように、第3実施形態の自由落下衝撃試験装置201には、ストッパ207とともにテーパ壁220が設けられている。ストッパ207は、ガイド5と衝撃受け板11との間に配置されている。ストッパ207は、カバー6の下端が衝撃受け板11から上方に所定高さH3だけ離れた特定位置Pに到達したときにカバー6の落下を阻止する。
【0041】
テーパ壁220は、衝撃受け板11の上方に突出している。具体的には、テーパ壁220は、ストッパ207の内端から上方に突出している。テーパ壁220は、上から下にいくにつれて水平方向に拡がる形状を有する。テーパ壁220は、例えば、円錐台形状とし得る。テーパ壁220の上端は、鉛直方向から見てガイド5の内面5aより内方に位置している。テーパ壁220の上端は、鉛直方向から見てカバー6の内面6dよりも内方に突出している。
【0042】
落下物10とともに自由落下してガイド5を下方に通過したカバー6は、その内面6dがテーパ壁220によって水平方向外方に案内されることで、カバー6の下開口6aが拡げられる。そして、下開口6aが拡げられたカバー6は、ストッパ207によって受け止められる。落下阻止されたカバー6の下開口6aを下方に通過した落下物10は、衝撃受け板11に上方から衝突する。本構成によっても、実現象に合った再現性の高い落下衝撃試験を実施できる。なお、他の構成は前述した第1又は第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0043】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態に係る自由落下衝撃試験装置301の図5相当の鉛直断面図である。図8に示すように、第4実施形態の自由落下衝撃試験装置301には、衝撃受け板11の上方においてカバー306の落下を阻止するストッパが設けられていない。カバー306は、互いに分離可能な一対のカバー半体306a,306bの組合せである。カバー半体306a,306bの各々は半筒であり、カバー306は全体として実質的に円筒形状を有する。即ち、カバー306は、カバー306の下端から上端まで延びる一対のスリット306cを有する。
【0044】
衝撃受け板11の上方には、テーパ壁320が上方に突出している。テーパ壁320は、例えば、ベース2から上方に突出している。テーパ壁320は、上から下にいくにつれて水平方向に拡がる形状を有する。テーパ壁320は、例えば、円錐台形状とし得る。テーパ壁320の上端は、鉛直方向から見てガイド5(図7参照)の内面より内方に位置している。テーパ壁320の上端は、鉛直方向から見てカバー306の内面よりも内方に突出している。
【0045】
落下物10とともに自由落下するカバー306は、その内面がテーパ壁320によって水平方向外方に案内されることで、一対のカバー半体306a,306bは、互いに水平方向に離れる。よって、衝撃受け板11に上方から衝突する落下物10は、カバー306に接触しにくい。本構成によっても、実現象に合った再現性の高い落下衝撃試験を実施できる。なお、他の構成は前述した第1乃至第3実施形態のいずれかと同様であるため説明を省略する。
【0046】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1,101,201,301 自由落下衝撃試験装置
5 ガイド
6,106,306 カバー
6a,106a 下開口
6c,306c スリット
7,107,207 ストッパ
10 落下物
11 衝撃受け板
15 部材
220,320 テーパ壁
P 特定位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8