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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141440
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】リザーバタンク
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
F01P11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047768
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水田 真介
(72)【発明者】
【氏名】金森 匡
(72)【発明者】
【氏名】清家 秀規
(72)【発明者】
【氏名】岡部 誠介
(72)【発明者】
【氏名】阪田 俊介
(57)【要約】
【課題】 タンク本体内部の液面のあばれを抑制し、リザーバタンクの気液分離性能を高める。
【解決手段】 リザーバタンク10は、タンク本体11と、流入管15と流出管16を有する。タンク本体11は、第1隔壁W1および第2隔壁W2を有し、第1隔壁W1には第1連通穴H1が1つ設けられ、第2隔壁W2には第2連通穴H2が1つ設けられて、タンク本体11は、第1室R1、第2室R2、および第3室R3を有する3階建ての構造を有する。少なくとも第1室R1と第2室R2は冷却液に満たされる。流入管15と流出管16は、第1室R1に接続されていて、流入管15からの冷却液が、第1隔壁W1に向かうように鉛直方向上方に流れたのち、第1隔壁W1に沿う方向に水平に流れ、その後流出管16に向かうよう構成される。鉛直方向に沿って見て、第1連通穴H1と第2連通穴H2は、一部が重なり合うように設けられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、
リザーバタンクは、
冷却液を貯留するタンク本体と、
冷却液経路からタンク本体に冷却液を送り込む流入管と、
タンク本体から冷却液経路に冷却液を排出する流出管と
を有しており、
前記タンク本体は、略水平方向に延在する第1隔壁および第2隔壁を有し、
少なくとも第1室、第2室、および第3室を有するよう、隔壁によりタンク本体の内部空間が隔てられており、
第1室と第2室は第1隔壁により隔てられるとともに、第2室が第1室の鉛直方向上側に位置し、
第2室と第3室は第2隔壁により隔てられるとともに、第3室が第2室の鉛直方向上側に位置し、
少なくとも第1室と第2室は冷却液に満たされており、
第1隔壁には、第1室と第2室を連通する第1連通穴が1つ設けられ、
第2隔壁には、第2室と第3室を連通する第2連通穴が1つ設けられ、
前記流入管と前記流出管は、第1室に接続されており、
第1室において、前記流入管から送り込まれた冷却液が、第1隔壁に向かうように鉛直方向上方に流れたのち、第1隔壁に沿う方向に水平に流れ、その後、前記流出管に向かうよう、第1室は構成されており、
鉛直方向に沿って見て、第1連通穴と第2連通穴は、一部が重なり合うように設けられている、
リザーバタンク。
【請求項2】
第1連通穴を通じ第1室から第2室に向かう流れのベクトルの延長線を避けて、前記第2連通穴が設けられている、
請求項1に記載のリザーバタンク。
【請求項3】
第2室には、鉛直方向に沿って見て、第1室よりも水平方向外側に張り出すように、袋小路状の袋部が設けられている、
請求項1または請求項2に記載のリザーバタンク。
【請求項4】
第3室には、鉛直方向に沿って見て、第1室よりも水平方向外側に張り出すように、袋小路状の袋部が設けられている、
請求項3に記載のリザーバタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーバタンクに関する。特に液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
液冷式冷却システムは、内燃機関や電気素子、電子基板等の冷却に活用されている。液冷式の冷却システムでは、冷却液を循環させて、冷却対象部材から熱を集めて、熱放出器から熱を放散して、冷却対象部材を冷却する。液冷式の冷却システムにおいて、冷却液を循環させる冷却液経路中に、冷却液のタンク、すなわちリザーバタンクを設けることがある。リザーバタンクは、冷却液の気化等による減少を補ったり、冷却液の温度変化による体積変化を吸収したりする。また、冷却液中に気泡が生じると、冷却効率が低下することがあるため、リザーバタンクにより冷却液中の気泡を分離する、すなわち気液分離を行うことがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、リザーバタンク本体の中に、矩形状のバッフルプレートを、特定の向きの風車状となるように配置する技術が開示されている。当該リザーバタンクによれば、通水抵抗の増加や構造の複雑化を招かずに冷却液から気泡を分離できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-248753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、冷却システムをより高性能化するために、特許文献1のようなリザーバタンクを通過する冷却液の流量をより増加させたいとの要請が生じてきている。しかしながら、特許文献1のようなリザーバタンクにおいてリザーバタンクを通過する冷却液の流量が増加すると、タンク本体内部に流れ込んだ冷却液の勢いで、冷却液の液面が波打つように暴れやすく、タンク内の空気を巻き込んで気泡が発生してしまい、期待するレベルの気液分離効果が得られにくいことが判明した。
【0006】
特に、近年、リザーバタンクの小型化の要請や冷却液流量増加の要請が高まるにつれて、タンク本体内部の冷却液のあばれが発生しやすくなってきた。
本発明の目的は、リザーバタンクのタンク本体内部の液面のあばれを抑制し、リザーバタンクの気液分離性能を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、さらに鋭意検討し、その結果、リザーバタンクのタンク本体を3つ以上のタンク室が3階建てに並んでこれらタンク室が連通穴により直列に連通する構造としつつ、連通穴が鉛直方向に見て互いに重なり合うように配置するとともに、一番下のタンク室に流入管と流出管を接続して、当該タンク室内部に特定の流れを発生させると、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、リザーバタンクは、冷却液を貯留するタンク本体と、冷却液経路からタンク本体に冷却液を送り込む流入管と、タンク本体から冷却液経路に冷却液を排出する流出管とを有しており、前記タンク本体は、略水平方向に延在する第1隔壁および第2隔壁を有し、少なくとも第1室、第2室、および第3室を有するよう、隔壁によりタンク本体の内部空間が隔てられており、第1室と第2室は第1隔壁により隔てられるとともに、第2室が第1室の鉛直方向上側に位置し、第2室と第3室は第2隔壁により隔てられるとともに、第3室が第2室の鉛直方向上側に位置し、少なくとも第1室と第2室は冷却液に満たされており、第1隔壁には、第1室と第2室を連通する第1連通穴が1つ設けられ、第2隔壁には、第2室と第3室を連通する第2連通穴が1つ設けられ、前記流入管と前記流出管は、第1室に接続されており、第1室において、前記流入管から送り込まれた冷却液が、第1隔壁に向かうように鉛直方向上方に流れたのち、第1隔壁に沿う方向に水平に流れ、その後、前記流出管に向かうよう、第1室は構成されており、鉛直方向に沿って見て、第1連通穴と第2連通穴は、一部が重なり合うように設けられている、リザーバタンクである(第1発明)。
【0009】
第1発明において、好ましくは、第1連通穴を通じ第1室から第2室に向かう流れのベクトルの延長線を避けて、前記第2連通穴が設けられている(第2発明)。また、第1発明もしくは第2発明において、好ましくは、第2室には、鉛直方向に沿って見て、第1室よりも水平方向外側に張り出すように、袋小路状の袋部が設けられている(第3発明)。また、第3発明において、好ましくは、第3室には、鉛直方向に沿って見て、第1室よりも水平方向外側に張り出すように、袋小路状の袋部が設けられている(第4発明)。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリザーバタンク(第1発明)によれば、タンク本体内部の液面のあばれを抑制し、リザーバタンクの気液分離性能を高めることができる。
【0011】
さらに、第2発明のようにされた場合には、特に液面のあばれが抑制され、気液分離性能がより高められる。また、第3発明または第4発明のようにされた場合には、細かい気泡も除去されやすくなり、特に気液分離性能が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態のリザーバタンクの構造を示す断面図である。
図2】第1実施形態のリザーバタンク内部の流れと気泡の動きを示す断面図である。
図3】第1実施形態のリザーバタンクの連通穴付近の流れを示す模式図である。
図4】第2実施形態のリザーバタンクの構造を示す断面図である。
図5】第1室と流入管および流出管の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、自動車の内燃機関の液冷式冷却システムに設けられるリザーバタンクを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。液冷式冷却システムの用途は、内燃機関に限定されず、パワー素子やインバータなどの電気素子や電子回路基板等の電気部品を冷却する用途であってもよく、他の用途であってもよい。
【0014】
図1に第1実施形態のリザーバタンク10の構造を断面図で示す。図1の中央の図は、リザーバタンク10を紙面と平行な平面で切断した断面図を示し、図1の周囲の図はそれぞれ、図示された切断面におけるリザーバタンク10の断面図を示している。
【0015】
リザーバタンク10は、中空のタンク本体11に流入管15と流出管16が接続されて構成されている。リザーバタンクの使用時には、タンク本体11に冷却液Lが貯留される。また、タンク本体11の鉛直方向上部には、少なくとも一部に空気が貯留される。液冷式冷却システムの冷却液経路の中で、リザーバタンク10は、冷却液経路から流入管15を通じて中空のタンク本体11内に冷却液が流れこみ、中空のタンク本体11から流出管16を通じて冷却液経路に冷却液が流れ出ていくように、冷却液経路中に配置・接続されて使用される。
【0016】
必須ではないが、典型的には、別個に射出成型された前側ケースと後側ケースとが一体化されて、リザーバタンク10が構成されている。すなわち、図1の中央の図の紙面奥側の部分を後側ケースとし、紙面手前側の部分を前側ケースとして、前側ケースと後側ケースとが一体化されることにより、中空のタンク本体11が構成される。流入管15および流出管16は前側ケースや後側ケースのいずれかに一体成形されていてもよいが、流入管15および流出管16は別の構成によってタンク本体11に一体化されたものであってもよい。
【0017】
また、必須ではないが、リザーバタンク10には、注入口17が設けられていてもよい。冷却システムが組み立てられる際に、注入口17を通じて、タンク本体11に冷却液が注入される。冷却システムが作動し、タンクが使用される際には、注入口にキャップが取り付けられる。タンク本体内部の圧力が過剰にならないように、キャップには圧力調整弁が設けられていることが好ましい。
【0018】
タンク本体11は、複数の隔壁W1,W2,W3により、タンク本体の内部空間が隔てられており、タンク本体は、少なくとも第1室R1、第2室R2、および第3室R3の3つのタンク室を有する。必須ではないが、本実施形態では、第4室R4も設けられている。本実施形態では、注入口17は第4室に冷却液を注入するように、タンク本体の第4室R4の上部に設けられている。なお、後述する他の実施形態のように、第4室はなくてもよく、その場合は、注入口17は第3室に冷却液を注入するように設けられることが好ましい。
【0019】
タンク本体11は、略水平方向に延在する第1隔壁W1および第2隔壁W2を有する。第1隔壁W1および第2隔壁W2は平坦な形状でもよいが、湾曲した曲面状や、中央部が高くされた錐面状であってもよい。また、隔壁は、中実の板であってもよいが、肉抜きされた中空の板状であってもよい。第1室R1と第2室R2は第1隔壁W1により隔てられるとともに、第2室R2が第1室R1の鉛直方向上側に位置する。また、第2室R2と第3室R3は第2隔壁W2により隔てられるとともに、第3室R3が第2室R2の鉛直方向上側に位置する。すなわち、タンク本体11において、第1室R1と第2室R2と第3室R3は、いわば3階建ての建物のように積み重ねられている。
必須ではないが、本実施形態では、第3室R3と第4室R4は第3隔壁W3により隔てられるとともに、第4室R4が第3室R3の鉛直方向上側に位置する。すなわち、本実施形態では、タンク本体11において、第1室R1ないし第4室R4が、いわば4階建ての建物のように積み重ねられている。
【0020】
リザーバタンク10が使用される際には、冷却液がタンク本体11に注入され、少なくとも第1室R1と第2室R2は冷却液に満たされている。本実施形態においては、第3室R3も冷却液に満たされており、冷却液の液面LVは、第4室R4内に設定されている。冷却液の液面LVは第3室R3内に設定されてもよい。
【0021】
第1隔壁W1には、第1室R1と第2室R2を連通する第1連通穴H1が1つ設けられている。さらに、第2隔壁W2には、第2室R2と第3室R3を連通する第2連通穴H2が1つ設けられている。第1連通穴H1と第2連通穴H2の形状は特に限定されないが、例えば円形や矩形状であってもよい。第1連通穴H1および第2連通穴H2はそれぞれ1つだけ設けられているため、第1室R1と第2室R2の間には環状に閉じた流路は構成されず、第2室R2と第3室R3の間にも環状に閉じた流路は構成されない。
必須ではないが、本実施形態では、第3隔壁W3には、第3室R3と第4室R4を連通する第3連通穴H3が1つ設けられている。第3連通穴H3は複数設けられていてもよい。
【0022】
前記流入管15と前記流出管16は、第1室R1に接続されている。すなわち、冷却液は、流入管15から第1室R1に流れ込み、第1室R1から流出管16を通じてタンクの外部へ流れ出ていく。
【0023】
以上のように、タンク本体11は、第1室R1と第2室R2と第3室R3が3階建てに積み重ねられて、これらタンク室が、第1連通穴H1と第2連通穴H2により直列に接続された構造を有している。そして、第1室R1と第2室R2は冷却液に満たされていて、流入管15と流出管16は、一階に相当する第1室R1に接続されている。したがって、冷却システムの冷却液回路における直接の流路を兼ねている第1室R1に対し、第2室R2と第3室R3は、第1室R1から袋小路状に分岐したタンク室になっている。
【0024】
第1室R1内において、以下の流れが生ずるように、第1室は構成されている。図2では冷却液の流れを白抜き矢印で示している。なお、図1の中央の図および図2では、図の上下方向が鉛直上下方向となっている。
図2に示したように、流入管15から第1室R1内に送り込まれた冷却液は、第1隔壁W1に向かうように鉛直方向上方に流れたのち、第1隔壁W1に沿う方向に水平に流れ、その後、流出管16に向かうよう流れる。この流れが実現されるよう、流入管15や流出管16の配置や管路の向き、第1隔壁W1の形状、第1連通穴H1の配置や大きさ、フィンF1の配置や大きさ、形状、などが決定される。
【0025】
本実施形態では、冷却液は、流入管15から略水平に第1室R1内に流れ込んだのち、第1室の底面に沿って流れ、第1室の側面にぶつかって鉛直方向上方に向かって流れる。鉛直方向上方に向かう流れQ0は、第1室の上面である第1隔壁W1にぶつかって、第1隔壁W1に沿う方向に水平に流れるよう向きを変え、流出管16に向かって流れる。鉛直方向上方に向かう流れQ0が、第1隔壁11に沿う方向に水平に流れるよう向きを変えるので、第1室R1内には、略水平方向に横倒しになった軸(図2において紙面と直交する軸)周りに回転するような渦成分を有する流れが生ずる。
【0026】
第1室R1内で、鉛直方向上方に向かう流れQ0は水平方向に向きを変える際に、その流れの一部Q1が第1連通穴H1を通じて第2室R2へと流れ込み、流れの残りQ2は略水平に流れたのちに流出管16に向かう。第1隔壁W1の形状(傾斜等)や、第1連通穴H1の大きさ、配置などにより、第2室R2へと流れ込む流れQ1と流出管16に向かう流れQ2の比率が決定される。
【0027】
図1に示したように、鉛直方向に沿って見て、第1連通穴H1と第2連通穴H2は、一部が重なり合うように設けられている。本実施形態のように、鉛直方向に沿って見て、第1連通穴H1と第2連通穴H2の半分以上が重なっていることが好ましい。すなわち、第1連通穴H1と第2連通穴H2は、鉛直方向に沿って整列するように配置される。また、鉛直方向に沿って見て、第1連通穴H1が第2連通穴H2に含まれるように重なり合っていてもよく、逆に、鉛直方向に沿って見て、第2連通穴H2が第1連通穴H1に含まれるように重なり合っていてもよい。また、鉛直方向に沿って見て、第1連通穴H1と第2連通穴H2が同じ大きさ、形状で重なっていてもよい。
【0028】
必須ではないが、好ましくは、図2に示したように、第1連通穴H1を通じ第1室R1から第2室R2に向かう流れQ1の流れベクトルの延長線(一点鎖線で示す)を避けて、前記第2連通穴H2が設けられている。すなわち、好ましくは、第1室R1から第2室R2に向かって流れ込む冷却液の流れQ1が、そのまま第2連通穴H2に向かっていかないように、第1室R1内部の冷却液流れが調整され、第2連通穴H2が配置されることが好ましい。
【0029】
また、必須ではないが、好ましくは、図1に示したように、第2室R2には、鉛直方向に沿って見て、第1室R1よりも水平方向外側に張り出すように、袋小路状の袋部R22が設けられている。袋部R22は袋小路状であるため、袋部R22内部の冷却液の流れが穏やかになる。本実施形態のように、袋部R22の幅wに比べ、袋部R22の長さtが大きいと、流れがより穏やかになり、特に好ましい。また、袋部R22の高さhに比べ、袋部R22の長さtが大きいと、流れがより穏やかになり、特に好ましい。
【0030】
また、必須ではないが、好ましくは、図1に示したように、さらに、第3室R3には、鉛直方向に沿って見て、第1室R1よりも水平方向外側に張り出すように、袋小路状の袋部R33が設けられている。袋部R33は袋小路状であるため、袋部R33内部の冷却液の流れが穏やかになる。本実施形態のように、袋部R33の幅wに比べ、袋部R33の長さtが大きいと、流れがより穏やかになり、特に好ましい。また、袋部R33の高さhに比べ、袋部R33の長さtが大きいと、流れがより穏やかになり、特に好ましい。
【0031】
リザーバタンク10のタンク本体11や流入管15、流出管16、および、第1室R1、第2室R2、第3室R3、第1隔壁W1、第2隔壁W2、第1連通穴H1、第2連通穴H2等が構成できる限りにおいて、具体的に、どのような部材に分割してかかる構造を実現するかは特に限定されない。例えば、上述したように、隔壁等を一体成型した前側ケースと後側ケースの2つに分割して射出成型パーツを作成し、これら射出成型パーツを組み立てて、かかる構成を実現してもよいし、別の部材構成によりこうした構造を実現してもよい。たとえば、タンク本体11を重箱状に水平面で分割した形態に、それぞれの構成部材を形成し、それらを溶着等の手段により組み立てて、かかる構成を実現してもよい。
【0032】
また、上記実施形態のリザーバタンク10を構成する材料や、リザーバタンク10の製造方法は特に限定されず、公知の材料や公知の製造方法により、リザーバタンク10を製造できる。典型的には、リザーバタンク10は、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂により構成される。使用される冷却液の種類や温度、圧力などに応じて、リザーバタンクの材料や補強構造等が決定される。また、典型的には、リザーバタンク10は、上記前側ケース、後側ケースに相当する部材を、それぞれ射出成型により形成し、これら部材を振動溶着や熱板溶着などにより一体化して製造することができる。その場合、流入管15や流出管16、注入口17、隔壁12は、それぞれ、下側ケースもしくは上側ケースに一体成型しておくことが好ましいが、別部材としておいて、後で組み立てて一体化してもよい。
【0033】
上記第1実施形態のリザーバタンク10の作用および効果について説明する。上記第1実施形態のリザーバタンク10では、タンク本体内部の液面のあばれを抑制し、リザーバタンクの気液分離性能を高めることができる。
【0034】
特許文献1に示されるような、従来技術のリザーバタンクでは、冷却液中に小さな気泡が生じてしまうと、小さな気泡は冷却液とともにリザーバタンクの外に流れ出てしまい、小さな気泡はなかなか除去できなかった。これが、従来技術における気液分離性能の第1の課題である。
【0035】
また、従来技術のリザーバタンクでは、タンクを通過する冷却液の流量が増加すると、タンク内での流れが激しくなり、その結果、タンク内の液面が激しく波立ってしまう。液面が波立つと、空気が巻き込まれて、新たな気泡が生じてしまう。これが、従来技術における気液分離性能の第2の課題である。近年、冷却液の流量が増加する傾向にあり、特に第2の課題の解決が求められている。
【0036】
上記第1実施形態のリザーバタンク10においては、冷却液に比較的大きな気泡が含まれていると、大きな気泡は、第1連通穴H1および第2連通穴H2を通じて、第1室R1から第2室R2を経て第3室R3へと導かれる。リザーバタンク10では、鉛直方向に沿って見て、第1連通穴H1と第2連通穴H2が、一部が重なり合うように設けられているため、すなわち鉛直方向に沿って第1連通穴H1と第2連通穴H2が整列しているため、大きな気泡は、速やかに、第1室R1から第3室R3へと導かれ、冷却液から効率的に分離される。大きな気泡が除去されると、大きな気泡が冷却液中で小さな気泡に分裂することが抑制され、気液分離性能が向上する。
【0037】
また、上記第1実施形態のリザーバタンク10においては、第1室R1、第2室R2、第3室R3がいわゆる3階建ての構造となっていて、第1隔壁と第2隔壁には、連通穴がそれぞれ1つだけ設けられているので、冷却液の流量が増えても、第2室R2や第3室R3の内部の流れや液面のあばれが少なくなって、比較的細かい気泡の気液分離効果が高められるとともに、液面が暴れて空気を巻き込んで新たな気泡を生じさせてしまうことが予防される。以下、その機序について説明する。
【0038】
図3に示すように、上下にタンク室RL,RHが並んで、両タンク室が隔壁Wで仕切られ、隔壁Wには1つしか連通穴Hがなく、上のタンク室RHの側が袋小路状になっている場合、連通穴H付近の流れは以下のようなものとなる。連通穴Hを通じて、下側のタンク室RLから上向きに冷却液が流れQXで流れ込むと、上側のタンク室RHは行き止まりになっているため、上側のタンク室RHから下向きに冷却液が流れることが必要となる(流れQY)。したがって、連通穴Hを通過する上向きの流れQXと下向きの流れQYは、対となって、流れの鉛直方向成分が、同じ大きさで、逆向きとなるように生ずる。
【0039】
連通穴Hの部分にこのような対となる逆向きの流れの組QX,QYが生ずると、これら流れの間に大きな抵抗が生ずる。この抵抗は、流れが強くなると急速に大きくなる。そのため、図2のように、連通穴H1を通じて第2室R2に向かう流れQ1と、流出管16に向かう流れQ2がある場合、流れの流速が大きくなると、流れQ1と流れQ2の大きさの比の値が小さくなる、すなわち、冷却液の流量が高まれば、冷却液が第2室R2に向かいにくくなり、より多くの冷却液が流出管16に向かうようになる。
【0040】
したがって、リザーバタンク10では、第1隔壁と第2隔壁には連通穴がそれぞれ1つだけ設けられているため、第1室R1を通過する冷却液の流量が増加しても、第2室や第3室に流れ込む冷却液の増加が抑制される。そのため、勢いよく冷却液が流れる第1室R1に比べ、第2室R2、特に、第3室R3ではタンク室内での冷却液の流れが落ち着いたゆっくりしたものとなり、冷却液に含まれる細かい気泡の気液分離が促進される。すなわち、比較的細かい気泡に対しても気液分離効果が高められる。
【0041】
また、特に、第3室R3での冷却液の流れが、落ち着いたゆっくりしたものとなることにより、冷却液の液面のあばれが効果的に抑制される。本実施形態では、液面LVは第4室に設けられているので、特に、液面のあばれが抑制される。これにより、液面の波立ちによって冷却液に空気が巻き込まれて新たな気泡を発生させてしまうことが効果的に抑制される。
【0042】
以上説明したように、上記第1実施形態のリザーバタンク10によれば、比較的大きな気泡も比較的小さな気泡も効果的に除去されるとともに、タンク本体内部の液面のあばれも抑制され、リザーバタンクの気液分離性能が高められる。
【0043】
必須ではないが、液面のあばれをより効果的に抑制する観点からは、第1連通穴H1を通じ第1室R1から第2室R2に向かう流れQ1の流れベクトルの延長線を避けて、第2連通穴H2が設けられていることが好ましい。このようにされていると、第2連通穴H2を通じ第2室R2から第3室R3に向かう流れを小さくすることができ、第3室や第4室における冷却液の流れを、落ち着いた、ゆっくりしたものとできるからである。
【0044】
必須ではないが、細かい気泡に対する気液分離性能をより高めようとする観点からは、第2室R2には、鉛直方向に沿って見て、第1室R1よりも水平方向外側に張り出すように、袋小路状の袋部R22が設けられていることが好ましい。袋小路状の袋部R22は、第2室R2の中でも流れが特に穏やかな部分となるため、袋部R22では、比較的細かい気泡が重力の作用によって冷却液から効果的に気液分離される。
【0045】
また、必須ではないが、細かい気泡に対する気液分離性能をより高めようとする観点からは、さらに、第3室R3には、鉛直方向に沿って見て、第1室R1よりも水平方向外側に張り出すように、袋小路状の袋部R33が設けられていることが好ましい。袋小路状の袋部R33は、第3室R3の中でも流れが特に穏やかな部分となるため、袋部R33では、比較的細かい気泡が重力の作用によって冷却液から効果的に気液分離される。
【0046】
第2室R2や第3室R3の袋部R22,R33における、かかる気液分離効果をより高めるためには、袋部の長さtが、高さhや幅wのいずれかよりも大きい、すなわち、袋部が行き止まりとなっている方向に細長くのびていることが好ましく、長さtが、高さhや幅wのいずれかの2倍以上であることが特に好ましい。
【0047】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同じ番号を付して説明し、その詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0048】
図4には第2実施形態のリザーバタンク20を示す。図4は、図1の中央の図と右側の図に対応する断面図である。第2実施形態のリザーバタンク20は第1実施形態のリザーバタンク10と比べ、流入管15の配置や、第1室R1の内部構造、第2室、第3室が袋部を備えない点、第4室がなく液面LVは第3室内にある点等が異なっているが、他の構成は、おおむね第1実施形態のリザーバタンク10と同様である。
【0049】
本実施形態のリザーバタンク20では、流入管15は、第1室R1の下面に上下方向に延在するように設けられ、鉛直方向上向きの流れを第1室内に生じさせる。また、本実施形態のリザーバタンク20の第1室R1には、フィンF1は設けられていないが、流出管16の配置と相まって、第1室R1内には、流入管15から送り込まれた冷却液が、第1隔壁W1に向かうように鉛直方向上方に流れたのち、第1隔壁W1に沿う方向に水平に流れ、その後、流出管16に向かう流れが生じる。
【0050】
リザーバタンク20のタンク本体は、第4室を有さず、袋部(R22,R33)を有しないが、大きな気泡が、速やかに第1室R1から第3室R3に排出される点や、第2室R2や第3室の冷却液流れが穏やかとなって、細かい気泡の気液分離が促進される点、および、液面のあばれや波立ちが抑制され、空気が巻き込まれ新たな気泡が生ずることが抑制される点では、第1実施形態のリザーバタンク10と同様の効果を有する。
【0051】
流入管15から送り込まれた冷却液が、第1隔壁W1に向かうように鉛直方向上方に流れたのち、第1隔壁W1に沿う方向に水平に流れ、その後流出管16に向かう流れを、第1室R1内に生じさせることができる限りにおいて、第1室の具体的構成や、流入管15や流出管16の向きや配置は変更可能である。図5には、第1室R1および流入管15や流出管16の変更例を示す。なお、図5では、タンク本体11の内、第1室R1と流入管15,流出管16の部分のみを、断面図で示している。
【0052】
図5(a)の変形例では、流入管15と流出管16はいずれも第1室R1の下面に上下方向に設けられている。第1室R1の内部には、下面から、流入管15と流出管16の間を間仕切りするようなフィンF2が設けられている。かかる構造により、冷却液は、白抜き矢印で示したように、逆U字状に流れる。
【0053】
図5(b)の変形例は、図4の第2実施形態と同様の構成を有し、冷却液は、白抜き矢印で示したように、逆L字状に流れる。なお、この変形例のように、第1室の断面形状は台形状であってもよい。
【0054】
図5(c)の変形例では、流入管15は、第1室側壁の下部に水平方向(紙面左右方向)を向いて設けられ、流出管16は、第1室側壁の上部に水平方向(紙面奥行方向)を向いて設けられている。第1室R1の内部には、側壁から、流入管15と流出管16の間を間仕切りするようなガイドフィンF3が水平方向に延在するように設けられている。
かかる構造により、冷却液は、白抜き矢印で示したように、C字状に流れる。
【0055】
図5(a)~(c)のいずれの変形例においても、流入管15から送り込まれた冷却液が、第1隔壁W1に向かうように鉛直方向上方に流れたのち、第1隔壁W1に沿う方向に水平に流れ、その後流出管16に向かう流れが生じ、流れの一部は、第1連通穴H1を通じて第2室R2に向かうとともに、残りの流れが、流出管16に向かう流れとなって、上記したのと同様な作用効果を生ずる。かかる第1室内の流れを実現するために、流入管15から流れ込んだ流れを分散/集中、偏向、整流させるための、ガイド板、リブ、フィン、偏向板、凹溝などが、第1室R1に設けられることが好ましい。
【0056】
以上説明した実施形態のリザーバタンク10、20では、タンク本体11は直方体状や厚板状であったが、リザーバタンクのタンク本体の形状は直方体状や厚板状に限定されない。例えば、タンク本体は球状、円筒状、楕円筒状、楕円体状、角柱状、角錐状など他の形状であってもよい。
【0057】
また、上記実施形態の説明では、隔壁に設けられる第1連通穴H1や第2連通穴H2が、板に開けられた穴である実施形態を説明したが、これら連通穴の形態も変更可能である。例えば、穴の周に沿って短い筒が設けられたような短筒状の連通穴を有するようにリザーバタンクを構成してもよい。また、上記実施形態のように、連通穴は、穴の周囲が隔壁に取り囲まれるように設けられてもよいが、隔壁の周縁とタンクの壁部に間に隙間や切り欠きを設けて、その部分を連通穴としてもよい。
【0058】
また、リザーバタンクは、さらに他のタンク室を有していてもよい。流入管15と流出管16からたどっていって、第1室と第2室と第3室とが、直列に、第1室からたどって行き止まりの袋小路となるようにつながっているとの構成が維持されている限り、第1室と第2室と第3室のいずれかに、他のタンク室が接続されていてもよく、上記実施形態と同様の作用効果を発揮する。
【0059】
上記実施形態のリザーバタンクは、タンクの使用時に第1室と第2室が冷却液に満たされるが、常時満たされている必要はなく、気液分離を必要とする際にこれら第1室と第2室が満たされればよい。すなわち、冷却液の温度が上昇し、冷却液に気泡が含まれるようになって、冷却液回路中の冷却液の体積が増加した状態で、これら第1室と第2室が冷却液で満たされるようにされていればよい。例えば、冷却液が十分に冷えて冷却液に気泡がほとんど含まれない状態では、液面が第2室まで下がってきていてもよい。
【0060】
本発明のリザーバタンクは、更に他の構成を有していてもよい。例えば、タンク本体に圧力開放弁を設けてもよい。また、リザーバタンクには、必要に応じ、車体等に取り付けるためのステーやボス部材などが一体化されていてもよい。また、リザーバタンクに要求される耐圧性等に応じて、リザーバタンクには、リブ等の補強構造が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
上記リザーバタンクは冷却システムの冷却液経路中に使用でき、冷却液中の気泡が除去でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0062】
10 リザーバタンク
11 タンク本体
R1 第1室
R2 第2室
R3 第3室
W1 第1隔壁
W2 第2隔壁
H1 第1連通路
H2 第2連通路
15 流入管
16 流出管
17 注入口
LV 冷却液の液面
図1
図2
図3
図4
図5