(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141441
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】身体姿勢変更補助具
(51)【国際特許分類】
A61G 7/053 20060101AFI20230928BHJP
A47C 31/08 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61G7/053
A47C31/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047769
(22)【出願日】2022-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】511240612
【氏名又は名称】ハッピープールカンパニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 典子
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA03
4C040AA08
4C040GG14
(57)【要約】
【課題】既存のベッドの側柵に簡単に取り付けることができる身体姿勢変更補助具とする。
【解決手段】身体姿勢変更補助具1000は、ベッド900に寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の変更を補助する身体姿勢変更補助具であって、ベッド900の側柵910に固定される固定部材100と、この固定部材100に接続された紐部材200と、この紐部材200の先端に設けられた把持部300とを備えており、紐部材200はベッド900に寝そべった状態の人が手を伸ばして把持部300に届く長さに設定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の変更を補助する身体変更補助具であって、
身体の側方に設けられた被固定部に固定される固定部材と、この固定部材に接続された紐部材と、この紐部材の先端に設けられた把持部とを具備しており、前記紐部材は寝そべった人が手を伸ばして把持部に届く長さに設定されていることを特徴とする身体姿勢変更補助具。
【請求項2】
前記被固定部は、ベッドの側柵又はフレームであることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項3】
前記被固定部は、ベッドの側面に形成された突起又は開口であることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項4】
前記被固定部は、ベッドの側面に取り付けられた補助部材であることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項5】
前記被固定部は、敷布団又はマットレスの下に設けられたベースプレートの側縁部又はこのベースプレートの側縁部に設けられた突出部材であることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項6】
前記被固定部は、敷布団又はマットレスの側縁部に形成された突出片であることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項7】
前記固定部材は、積層された複数枚の面ファスナーを有しており、この面ファスナーは略中央部分で連結されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項8】
前記把持部は、貫通穴が開設されたボール状部材であって、前記貫通穴に紐部材が挿通されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項9】
前記固定部材には、被固定部に固定された状態を維持するロック機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項10】
座った状態からの立ち上がり、歩行時の補助、起立状態の維持のように使用者の身体の支持を補助する身体支持補助具であって、
被固定部に固定される固定部材と、この固定部材に接続された紐部材と、この紐部材の先端に設けられた把持部とを具備しており、前記紐部材は使用者が把持部に手を伸ばして届く長さに設定されていることを特徴とする身体支持補助具。
【請求項11】
前記固定部材には、被固定部に固定された状態を維持するロック機構が設けられていることを特徴とする請求項10記載の身体支持補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドに寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の姿勢の変更を補助する身体姿勢変更補助具と、座った状態からの立ち上がり、歩行時の補助、起立状態の維持のように使用者の身体の支持を補助する身体支持補助具とに関する
【背景技術】
【0002】
身体障害者、高齢者、病者等が使用するベッドには、使用者自身や布団の落下防止のために側柵が設けられている。かかる側柵は、使用者の寝返り、仰臥位からの側臥位、起き上がり等の体位変換のためにも使用される。
しかし、障害、病状や手術等で麻痺や痛みがある使用者は、身体の可動域や活動範囲が制限されているので側柵を利用できなかったり、側柵自体に手が届かなかったりすることも多く、そのため体位変換が容易に行えないという問題がある。
かかる場合、医療者、介護者や家族等による体位変換の補助が必要となるが、自尊心や相手への迷惑等を考えて補助の依頼を躊躇し、我慢してしまうことも多かった。かかる事態は自分自身で体位変換が行えない者にとって精神的肉体的苦痛となる。
また、長時間にわたって体位変換が行われず同一体位でいると、身体圧迫に起因する血流不全から褥瘡や神経圧迫、身体的損傷にまで及ぶおそれがある。かかる事態は、身体のさらなる痛みや不快感等の原因となり、より深刻な精神的肉体的痛苦の大きな要因となっているという実状がある。
【0003】
少しの工夫や補助があれば、自力を最大限に活かし体位変換が行える。それは人間の尊厳を守り、自己回復能力の向上にも繋がる。また、患者自身で体位変換というケアを行うことができるので、医療者等はより自身の業務に集中できるし、介護者や家族等の負担も大きく軽減される。
【0004】
そこで、特許第3815749号では、『ベッドのサイドフレームに着脱可能に取り付けられる基枠の一端部に垂直部と水平部とからなるL字形アームの垂直部下端を接合して手摺り本体を側面視で一側開口のコ字型に構成して、サイドフレームの足部側に取り付けた際に、ベッド上の仰臥している人が足を伸ばした状態で左右方向に通過可能な頭部側開口の空間部を設け、前記L字形アームの水平部先端に左右方向に張り出すように平面視においてループ状に形成した取っ手を固着し、さらに前記手摺本体には、その側面視中央空間部を塞ぐように枠体を立設すると共に、この枠体を適宜着脱可能として、前記空間部を側面視において適宜開放可能とした』ベッドにおける手摺装置が提案されている。
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このベッドにおける手摺装置は、『使用者が取っ手を手がかりとして上半身を起しながらベッド側部に腰掛けた状態に姿勢を変化させていく』(特許文献1の段落番号0020参照)としている。
すなわち、このベッドにおける手摺装置は、身体の姿勢の変化を補助するものではあるが、既存のベッドに簡単に取り付けられるものではないという問題点を有している。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、既存のベッドや敷布団、マットレスと簡単に組み合わせることができる身体姿勢変更補助具、或いは既存のベッド等ではなく専用のベッド等と組み合わせる身体姿勢変更補助具と、座った状態からの立ち上がり、歩行時の補助、起立状態の維持のように使用者の身体の支持を補助する身体支持補助具とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る身体姿勢変更補助具は、ベッドに寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の変更を補助する身体姿勢変更補助具であって、
身体の側方に設けられた被固定部に固定される固定部材と、この固定部材に接続された紐部材と、この紐部材の先端に設けられた把持部とを備えており、前記紐部材は寝そべった人が手を伸ばして把持部に届く長さに設定されている。
【0009】
前記被固定部は、ベッドの側柵又はフレーム、ベッドの側面に形成された突起又は開口、敷布団又はマットレスの側縁部に形成された突出片、ベッドの側面に取り付けられた補助部材、敷布団又はマットレスの下に設けられたベースプレートの側縁部又はこのベースプレートの側縁部に設けられた突出部材である。
【0010】
また、前記固定部材は、積層された複数枚の面ファスナーを有しており、この面ファスナーは略中央部分で連結されている。
【0011】
さらに、前記把持部は、貫通穴が開設されたボール状部材であって、前記貫通穴に紐部材が挿通されている。
【0012】
また、本発明に係る身体支持補助具は、座った状態からの立ち上がり、歩行時の補助、起立状態の維持のように使用者の身体の支持を補助する身体支持補助具であって、
被固定部に固定される固定部材と、この固定部材に接続された紐部材と、この紐部材の先端に設けられた把持部とを具備しており、前記紐部材は使用者が把持部に手を伸ばして届く長さに設定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る身体姿勢変更補助具は、固定部座によってベッドの側柵に固定されるため、固定部材に連結された紐部材の先端に設けられた把持部を、ベッドに寝そべった状態の人が把持して自分の力でもって寝返りをうったり上半身を引き起こすことができる。
しかも、この身体姿勢変更補助具を既存のベッドの側柵又はフレームに固定するだけでよいので、簡単に取り付けることができる。
また、この身体姿勢変更補助具は、専用のベッド等と組み合わせることも可能である。
【0014】
本発明に係る身体支持補助具は、立ち上がりや歩行、起立状態の維持が困難な人であっても、把持部を把持することで身体の支持が容易になる。また、その取り付けは容易である。
本発明に係る身体姿勢変更補助具や身体支持補助具は、身体障害者や高齢者等のより健康で質の高い生活に資するとともに、怪我や手術等でリハビリが必要な人にとっても有意義なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具の概略的斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を構成する固定部材と紐部材との接続状態を示す概略的平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を構成する紐部材と把持部との接続状態を示す概略的断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具をベッドの側柵に固定する方法を示す概略的斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具をベッドの側柵に取り付けた状態を示す概略的側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を構成する他の把持部と紐部材との接続状態を示す概略的断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具をベッドのフレームに取り付けた状態を示す概略的斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付ける敷布団又はマットレスの下に設けられたベースプレートを示す概略的斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付ける敷布団又はマットレスの側縁部に形成された突出片を示す概略的斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付けるベッドの側面に形成された突起を示す概略的斜視図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付けるベッドの側面に形成された開口を示す概略的斜視図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付ける補助部材とそれが取り付けられるベッドの側面とを示す概略的斜視図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を構成するその他の把持部と紐部材との接続状態を示す概略的断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る身体姿勢補助具を構成する他の紐部材の概略的正面図である。
【
図15】本発明の他の実施の形態に係る身体姿勢補助具の概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具1000は、ベッド900に寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の変更を補助する身体姿勢変更補助具であって、
ベッド900の側柵910に固定される固定部材100と、この固定部材100に接続された紐部材200と、この紐部材200の先端に設けられた把持部300とを備えており、紐部材200はベッド900に寝そべった状態の人が手を伸ばして把持部300に届く長さに設定されている。
【0017】
ベッド900には、身体障害者や高齢者等である使用者や布団が落下しないようにするための側柵910が設けられている。この側柵910は主として布団の落下を防止するために、使用者の下半身側に設けられている。
かかる側柵910は、
図5に示すように、角が丸まった長方形状の主フレーム911と、この主フレーム911の上辺から下辺を連ねてより下方向に突出形成された一対の縦桟912と、この縦桟912の間に掛け渡された横桟913とが一体に形成されたものである。
前記縦桟911の下端は、ベッド900のフレーム920に連結される。
【0018】
身体姿勢変更補助具1000を構成する固定部材100は、積層された複数枚(図面では4枚)の略帯状の面ファスナー110A~110Dを有している。
4枚の同じサイズの面ファスナー110A~110Dを重なるように積層し、その略中央部分を縫製して連結することで固定部材100が構成される。なお、図面では、縫製箇所を×印で示している。
かかる固定部材100への紐部材200の連結は後述する。
なお、固定部材100は積層された4枚の面ファスナー110A~110Dには限定されることなく、2枚でも5枚以上の面ファスナーであってもよいことはいうまでもない。 なお、各面ファスナー110A~110Dは、一面に無数のループ、他面に無数の鉤状フックがそれぞれ形成されたもので、鉤状フックがループに引っ掛かることによって連結されるものである。
【0019】
かかる固定部材100は、側柵910の縦桟912と横桟913とが交わる箇所より上側において縦桟912に固定される。すなわち、側柵910を被固定部として使用するのである。
最内側の面ファスナー110Aを縦桟912に巻き付け、さらに2枚目の面ファスナー110Bを最も内側の面ファスナー110Aの上に巻き付ける、というように4枚の面ファスナー110A~110Dを縦桟912に順次巻き付けるのである。この際、最も内側の面ファスナー110Aを右側を縦桟912に直接巻き付け、左側を面ファスナー110Aの上側に巻き付けるようにしたならば、2枚目の面ファスナー110Bは左側を最も内側の面ファスナー110Aの上に、右側を2枚目の面ファスナー110Bの左側の上に巻き付けるようにする。
このように各面ファスナー110A~110Dを交互に巻き付けることよって、固定部材100はより強固に縦桟912に固定されることになる。
【0020】
また、前記把持部300は、握り心地がよくかつ強度に優れた木製等のボール状部材であって、その径は5~10cmとされている。かかる把持部300には、一対の平行な貫通穴310が形成されている。この貫通穴310は、前記紐部材200が貫通される部分である。
後述するように、紐部材200は両端が固定部材100に連結されてループ状になるので、紐部材200を一対の貫通穴310に貫通させることによって、把持部300が紐部材200と連結されることになる。
【0021】
一方、前記紐部材200は、例えば、内部の複数の芯材と、この芯材をカバーする表皮とを有し、前記芯材はさらに複数の繊維を縒り合わせたものであり、前記表皮は複数の繊維を編み込んで構成されるいわゆるパラシュートコードと称される強度に優れたものが使用される。
かかる紐部材200は、両端が4分割され、それぞれが図示しない2枚の当て布に挟まれた状態で当て布に縫製される。すなわち、紐部材200には4組の当て布が接続される形になる。この4組の当て布が前記固定部材100を構成する4枚の面ファスナー110A~110Dにそれぞれ縫製して接続される。そして、4枚の面ファスナー110A~100Dが中央部分で縫製されることで固定部材100に接続されることになる。
【0022】
なお、この紐部材200は両端を固定部材100に接続するため、紐部材200はループ状となり、上述したように把持部300の貫通穴310にループ状になった紐部材200を貫通させて連結することができる。
【0023】
また、この紐部材200は、ベッド900に寝そべった状態の人が手を伸ばして把持部300に届く長さに設定されている。具体的には、20~80cmである。ただし、使用者の体格によって最適な長さは異なるので、紐部材200の長さが異なる複数種類のものから使用者が適宜選択することができるようにしておくことも考えられる。
この紐部材200は、固定部材100と把持部300との間では、例えば2本の紐が交互に結ばれる左右結び(左右編み)と称される結び方で縒り合わせられ、見た目には1本ものとなっている。
【0024】
このように構成された身体姿勢変更補助具1000は以下のようにして使用される。
まず、固定部材100を側柵910に固定する。この固定部材100の側柵910への固定は、上述したように、固定部材100を構成する4枚の面ファスナー110A~110Dを交互に巻き付けて積層連結することで行われる。
この身体姿勢変更補助具1000の側柵910への固定は4枚の面ファスナー110A~110Dを巻き付ける簡単な作業なので、誰にでも行うことができる上、既存のベッド900の側柵910に簡単に固定することができる。
【0025】
把持部300は、使用者であるベッド900に寝そべった人の手が届く程度の位置にあるので、寝そべったまま握ることができる。
使用者は把持部300を握った状態で身体姿勢変更補助具1000を力をこめて引っ張るようにして、寝返りをうったり上半身を引き起こしたりする。
身体姿勢変更補助具1000は、固定部材100によって側柵910に強固に固定されているため、身体の姿勢を変更する程度の力では外れることがない。
使用者が自分で身体の姿勢を変更することができるようにすると、良肢位の保持、立て直しにも役立ち、しかも使用者が自力で行うことになるので、軽いながらも運動になる。特に、高齢者や身体に障害のある方、手術後のリハビリ実施中の使用者にとっては無理せずともできる有益な運動となる。
【0026】
なお、上述した説明では、把持部300は一対の平行な貫通穴310が開設されたボール状部材であるとしたが、
図6に示すように貫通穴310は1つでもよい。貫通穴310が1つの場合には、紐部材200は、ループ状ではなく、貫通穴310を貫通した先で貫通穴310より大きな留め部材320と連結する。また、留め部材320の代わりに紐部材200の終端を貫通穴310より大きな結び玉としてもよい。
また、把持部300は、ボール状部材ではなく、リング状部材であってもよい。
【0027】
上述した説明では、固定部材100は4枚の面ファスナー110~110Dを積層したものであるとしたが、本発明がこれに限定されるものではない。
例えば、固定部材100は、カラビナ(開閉できる部品(ゲート)がついた金属リング)等であってもよい。ただし、側柵910は金属製であることが多いので、固定部材100が金属製のカラビナであると接触音が響くという問題があるので、側柵910と接する部分は合成樹脂や布で覆うようにするとよい。
また、固定部材100としては、強固なナイロン製ベルトとこれに連結された一対のDリングとから構成することも可能である。
【0028】
また、紐部材200もパラシュートコードではなく、強固なナイロン製ベルトとすることも可能である。この場合、把持部300の貫通穴310は、ナイロン製ベルトが貫通可能な一対の平板状穴とし、この平板状穴をナイロン製べルトがループ状に貫通することで紐部材200に把持部300を接続する。もちろん、紐部材200をコットン等の通常の自然繊維から構成してもよいことはいうまでもない。
【0029】
さらに、上述した実施の形態では、身体姿勢変更補助具1000をベッド900の側柵910に固定するとしたが、
図7に示すような側柵910が設けられていないベッド900の場合には、固定部材100をベッド900のフレーム920に直接巻き付けて固定することで身体姿勢変更補助具1000を取り付けるようにしてもよい。
なお、側柵910が設けられているベッド900であっても身体姿勢変更補助具1000は、フレーム920に固定するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0030】
また、
図10に示すように、ベッド900の側面950に突起951を形成し、この突起951を被固定部として身体姿勢変更補助具1000の固定部材100を巻き付けることで身体姿勢変更補助具1000を固定することも可能である。突起951の先端には、巻き付けた固定部材100が不用意に抜けないように、固定部材100を巻き付ける部分より太く形成された抜け防止部材952が形成されている。
【0031】
さらに、
図11に示すように、ベッド900の側面950に開口953を形成し、この開口953を被固定部として固定部材100を巻き付けることで身体姿勢変更補助具1000を固定することも可能である。
この開口953は横たわった使用者の胸部付近に位置するようにすると、使用者の体位変換に最も都合がよい。
【0032】
また、上述したような側面950の突起951や開口953が形成されていないベッド900の場合には、
図12に示すような補助部材960を被固定部として利用することも可能である。
この補助部材960は、ベッド900の側面950を挟み込む略凹字形状の本体961と、この本体961にねじ込まれる雄ねじ部962とを有している。本体961は、一対の平行な板材961Aを連結材961Bで連結することで、全体として略凹字形状に形成されている。
前記一対の板材961Aの間隔は、標準的なベッド900の側面950の厚さ寸法より大きく設定されている。一方の板材961Aには、前記雄ねじ部962に対応した雌ねじ部(図示省略)が形成されている。ベッド900の側面950を一対の板材961Aで挟み込んだ状態で雌ねじ部に雄ねじ部962をねじ込むことで補助部材960をベッド900の側面950に固定する。
雄ねじ部962は、本体961をベッド900の側面950に固定した状態でも固定部材100を巻き付けることができる程度の長さが突出している。この突出した部分に固定部材100を巻き付けることで身体姿勢変更補助具1000を固定する。
この補助部材960の雄ねじ部962は、保持部材960自身をベッド900に固定するものであるとともに、被固定部として固定部材100が巻き付けられる部分ともなっている。
この補助部材960も横たわった使用者の胸部付近に位置するようにする。ただし、この補助部材960の位置は使用者の体格や好みに応じて変更することはいうまでもない。
【0033】
ベッド900ではなく、畳に直接敷く通常の敷布団やマットレス(以下、敷布団等800とする)を使用している場合には、上述のようにベッド900の側柵910、フレーム920、側面950、補助部材960を使用することができない。
この場合には、
図8に示すように、敷布団等800の下側に設置されるベースプレート810を使用する。このベースプレート810の側縁部には突出部材820が設けられており、この突出部材820に固定部材100を固定する。この突出部材820は、使用者のほぼ胸部の位置になるようにセットされる。
危険性を最小限とするため、金属のように位置や形が変わらないものではなく、ロープ等の位置や形が変わるものを使用する。
【0034】
また、ベースプレート810に突出部材820を設けるのではなく、ベースプレート810の側縁部にを開口を形成し、この開口に身体姿勢変更補助具1000の固定部材100を巻き付けるようにすることも可能である。この場合には、突出部材820のように突出するものがないので、より安全に使用することができる。
なお、ベースプレート810は、敷布団等800に寝そべった使用者の最も体重が加わる位置、すなわち腰部から胸部の間に設置するとよい。それであると、使用者の体重の多くがベースプレート810に加わるので、使用時にベースプレート810ひいては身体姿勢変更補助具1000が動くおそれが少なく安全である。
【0035】
また、
図9に示すように、敷布団等800の側縁部に形成された突出片830を形成し、この突出片変830を被固定部とすることも可能である。
この突出片830は、敷布団等800の側縁部に強固に縫い付けられた舌片状部材であって、開口831が開設されている。この開口831を利用して固定部材100を連結するのである。
なお、この突出片830は、
図9に示すような略円環状のものでなくても、単に敷布団団等800の側縁部から突出したもので、固定部材100が確実に巻き付けられるものであればよい。
この突出片830も横たわった使用者の胸部付近に位置するようにする。
【0036】
また、上述した実施の形態では、把持部300は、一対の平行な貫通穴310が開設されたボール状部材であるとしたが、貫通穴310は
図13(A)に示すように捩れの位置で交差したするようなものであってもよいし、
図13(B)に示すようにX字状に交差したものであってもよいことはいうまでもない。
【0037】
さらに、上述した実施の形態では、把持部300は紐部材200の先端にのみ接続されるとして説明したが、
図14(A)に示すように、紐部材200の途中に複数個を間隔をあけて設けてもよい。この場合、把持部300を複数個設けると、使用者の姿勢や体格の違いに適切に対応することができる。なお、この把持部300は、紐部材200を編み込む又は結ぶことで位置がずれないようにしている。または、把持部300を図示しない留め具で留めることで位置がずれないようにすることでもよい。
【0038】
また、紐部材300の先端にのみ把持部300を接続し、紐部材200の途中には
図14(B)に示すようなループ210を形成することで使用者の姿勢や体格の違いに適切に対応することができるようになる。なお、このループ210は、紐部材200を編み込む又は結ぶことで位置がずれないようにしている。または、ループ部材210を図示しない留め具で留めることで位置がずれないようにすることでもよい。
【0039】
把持部300としては、
図14(A)(B)に示すようなボール状部材のみならず、
図14(C)に示すようなループ状のものであってもよい。このループ状の300は、紐部材200とは別体ではなく、紐部材200の先端部分をループ状にしたものある。このように紐部材200の一部を把持部300として活用するならば、より構成部材数を減少させることができるので、身体姿勢変更補助具1000のコストの低減を計ることができる。
【0040】
複数の把持部300やループ210の代わりに、紐部材200を結ぶことで形成する結び玉であってもよいことは勿論である。
【0041】
上述した実施の形態では、身体姿勢変更補助具1000は、固定部材100は4枚の同じサイズの面ファスナー110A~110Dを重なるように積層し、その略中央部分を縫製して連結することで構成していた。
しかしながら、
図15に示すように4枚の同じサイズの面ファスナー110A~110Dを一部のみが重なるようにずらして積層することで固定部材100を構成することも可能である。
【0042】
すなわち、かかる4枚の面ファスナー110A~110Dは、
図15に示すように、面ファスナー110Aは図面上左端部、面ファスナー110Bは図面上右端部、面ファスナー110Cは図面上左端部、面ファスナー110Dは図面上右端部をそれぞれ重ねた状態でつなげられる。
このように各面ファスナー110A~110Dの一部のみを重なるように積層することで面ファスナー110A~110Dのサイズを小さくしながら全体のサイズは各面ファスナー110A~110Dを重なるように積層したものと同じものとすることができる。
【0043】
なお、この面ファスナー110A~110Dをずらして積層したものものも、ずらさずに重なるように積層したものであっても、各面ファスナー110A~110Dの一面にのみ鉤状フック又はループを形成したもの、各面ファスナー110A~110Dの一面に鉤状フックを、他面にループをそれぞれ形成したもののいずれをも利用することかできることはいうまでもない。
【0044】
固定部材100は、被固定部に固定されて容易には取り外せないようになっている。
固定部材100が被固定部に完全に固定されていればよいが、万が一、若干外れていたりすると把持部300を把持して姿勢を変更しようとした際に固定部材100力が加わって外れてしまい、使用者が落下したりする事故が発生するおそれがある。
かかる事故を未然に防ぐために、被固定部に固定された固定部材100が外れないように、固定部材100に被固定部に固定された状態を維持するロック機構を設けることも可能である。
このロック機構には、一般的な錠前、例えば、専用の鍵によって掛け金が開放されるいわゆる南京錠、磁石を利用した専用の鍵にって掛け金が施錠、解錠が可能ないわゆるマグネット錠、暗証番号によって掛け金の施錠、解錠が可能なダイヤル錠などが利用される。なお、ロック機構に使用される錠前は上記のものに限定されることなく、一般的な通常の錠前であれば流用することが可能である。
【0045】
例えば、4枚の面ファスナー110A~110Dを利用した固定部材100であると、各面ファスナー110A~110Dが被固定部に固定された状態で一致する開口を各面ファスナー110A~110Dに設け、このすべての開口に一気に掛け金を通すことで各面ファスナー110A~110Dが外れない、すなわち固定部材100が被固定部から外れないようにしている。
固定部材100を被固定部から外す場合には、ロック機構を解除した上で、4枚の面ファスナー110A~110Dを引き剥がすことで簡単に外すことができる。
【0046】
このロック機構は、固定部材100が外れてはならない場合には外れることがなく、外す際には簡単に外すことができるようになっているので、身体姿勢変更補助具をより安全に使用することができるようになっている。
【0047】
上述の説明は、寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の変更を補助する身体姿勢変更補助具1000のものであるが、この身体姿勢変更補助具1000と同様の構成を有する身体支持補助具は、座った状態からの立ち上がり、歩行時の補助、起立状態の維持のように使用者の身体の支持を補助するものである。
この身体支持補助具は、被固定部に固定される固定部材と、この固定部材に接続された紐部材と、この紐部材の先端に接続された把持部とを備えており、前記紐部材は使用者が把持部に手を伸ばして届く長さに設定されている。
この身体支持補助具を構成する固定部材、紐部材及び把持部は、身体姿勢変更補助具1000と同様のものを使用している。
この身体支持補助具が身体姿勢変更補助具1000と異なる点は、固定具がどのような箇所、物品に固8されるかである。
【0048】
かかる身体支持補助具は、例えばバリアフリー用の器具を被固定部とする。すなわち、この身体支持補助具は、トイレ、階段、廊下等に設置されている手すり、いわゆる突っ張り棒として知られている床面と天上面との間に立設される縦型手すり等のように座った姿勢、歩行時の補助、起立状態の維持のためのバリアフリーを実現するための器具を被固定部として取り付けられる。
【0049】
なお、この身体支持補助具は、上述した身体姿勢変更補助具に設けらることができるロック機構と同等のロック機構を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
100 固定部材
200 紐部材
300 把持部
900 ベッド
910 側柵
920 フレーム
1000 身体姿勢変更補助具
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の姿勢の変更を補助する身体姿勢変更補助具であって、
身体の側方に設けられた被固定部に固定される固定部材と、この固定部材に接続された紐部材と、この紐部材の先端に設けられた把持部とを具備しており、前記紐部材は寝そべった人が手を伸ばして把持部に届く長さに設定されており、前記固定部材は積層された複数枚の面ファスナーを有しており、この面ファスナーは略中央部分で連結されていることを特徴とする身体姿勢変更補助具。
【請求項2】
前記被固定部は、ベッドの側柵又はフレームであることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項3】
前記被固定部は、ベッドの側面に形成された突起又は開口であることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項4】
前記被固定部は、ベッドの側面に取り付けられた補助部材であることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項5】
前記被固定部は、敷布団又はマットレスの下に設けられたベースプレートの側縁部又はこのベースプレートの側縁部に設けられた突出部材であることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項6】
前記被固定部は、敷布団又はマットレスの側縁部に形成された突出片であることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項7】
前記把持部は、貫通穴が開設されたボール状部材であって、前記貫通穴に紐部材が挿通されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の身体姿勢変更補助具。
【請求項8】
前記固定部材には、被固定部に固定された状態を維持するロック機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の身体姿勢変更補助具。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、ベッドに寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の姿勢の変更を補助する身体姿勢変更補助具に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明に係る身体姿勢変更補助具は、ベッドに寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の姿勢の変更を補助する身体姿勢変更補助具であって、
身体の側方に設けられた被固定部に固定される固定部材と、この固定部材に接続された紐部材と、この紐部材の先端に設けられた把持部とを備えており、前記紐部材は寝そべった人が手を伸ばして把持部に届く長さに設定されており、前記固定部材は積層された複数枚の面ファスナーを有しており、この面ファスナーは略中央部分で連結されている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明に係る身体姿勢変更補助具は、固定部材によってベッドの側柵に固定されるため、固定部材に連結された紐部材の先端に設けられた把持部を、ベッドに寝そべった状態の人が把持して自分の力でもって寝返りをうったり上半身を引き起こすことができる。
しかも、この身体姿勢変更補助具を既存のベッドの側柵又はフレームに固定するだけでよいので、簡単に取り付けることができる。
また、この身体姿勢変更補助具は、専用のベッド等と組み合わせることも可能である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具の概略的斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を構成する固定部材と紐部材との接続状態を示す概略的平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を構成する紐部材と把持部との接続状態を示す概略的断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具をベッドの側柵に固定する方法を示す概略的斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具をベッドの側柵に取り付けた状態を示す概略的側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を構成する他の把持部と紐部材との接続状態を示す概略的断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具をベッドのフレームに取り付けた状態を示す概略的斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付ける敷布団又はマットレスの下に設けられたベースプレートを示す概略的斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付ける敷布団又はマットレスの側縁部に形成された突出片を示す概略的斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付けるベッドの側面に形成された突起を示す概略的斜視図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付けるベッドの側面に形成された開口を示す概略的斜視図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を取り付ける補助部材とそれが取り付けられるベッドの側面とを示す概略的斜視図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具を構成する他の把持部と紐部材との接続状態を示す概略的断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る
身体姿勢変更補助具を構成する他の紐部材の概略的正面図である。
【
図15】本発明の実施の形態に係る身体姿勢変更補助具の概略的斜視図である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
上述の説明は、寝そべった状態の人の自力による寝返り、上半身の引き起し等の身体の姿勢の変更を補助する身体姿勢変更補助具1000のものであるが、この身体姿勢変更補助具1000と同様の構成を有する身体支持補助具は、座った状態からの立ち上がり、歩行時の補助、起立状態の維持のように使用者の身体の支持を補助するものである。
この身体支持補助具は、被固定部に固定される固定部材と、この固定部材に接続された紐部材と、この紐部材の先端に接続された把持部とを備えており、前記紐部材は使用者が把持部に手を伸ばして届く長さに設定されている。
この身体支持補助具を構成する固定部材、紐部材及び把持部は、身体姿勢変更補助具1000と同様のものを使用している。
この身体支持補助具が身体姿勢変更補助具1000と異なる点は、固定具がどのような箇所、物品に固定されるかである。