(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141442
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ルーツ式ブロワ
(51)【国際特許分類】
F04C 27/00 20060101AFI20230928BHJP
F04C 18/18 20060101ALI20230928BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F04C27/00 331
F04C18/18 A
F04C29/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047770
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000127123
【氏名又は名称】株式会社アンレット
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】横井 隆志
(72)【発明者】
【氏名】横井 亮知
(72)【発明者】
【氏名】竹田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳身
(72)【発明者】
【氏名】八木 翼
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA06
3H129AA17
3H129AA21
3H129AB06
3H129BB32
3H129BB33
3H129BB45
3H129CC16
3H129CC17
(57)【要約】
【課題】軸封部のドレンがベアリング16に侵入するのを防止できるルーツ式ブロワ10を提供することを目的とする。
【解決手段】回転軸15の回転に伴って第1オイルシール18と第2オイルシール17に振動が作用しても、第1オイルシール18と第2オイルシール17の間に配置したスペーサ19によって第1オイルシール18と第2オイルシール17の嵌着位置がずれるのを防止する。第1オイルシール18と第2オイルシール17が振動でずれて圧縮ガス導入路12dの開口12fまたはドレン排出路12eの開口12gがオイルシール17、18で塞がれることはない。従って、圧縮ガスの軸封部への導入や軸封部からのドレンの排出が妨げられることはない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長円形のロータ室と、ロータ室の一側に開口する吸込口と、他側に開口する吐出口を形成したケーシングと、
ロータ室内で互いに逆方向へ回転される一対のロータと、
ロータの回転軸が貫通する貫通穴が設けられるとともに、回転軸を回転可能に支えるベアリングを組み込み、ロータ室から漏れたドレンの元となる空気や蒸気のガスが貫通穴を通してベアリングへ漏出するのを防止する軸封部を設けたハウジングを備え、
軸封部としてハウジングに、回転軸を囲む環状のシール室と、シール室に開口しシール室に圧縮ガスを導入する圧縮ガス導入路と、シール室に開口しシール室からドレンを排出するドレン排出路を形成し、
シール室にロータ室寄りの第1オイルシールを嵌着するとともに、第1オイルシールに対向するベアリング寄りの第2オイルシールを嵌着して第1オイルシールと第2オイルシールで圧縮ガス導入路の開口とドレン排出路の開口を囲み、
圧縮ガス導入路から圧縮ガスをシール室に導入し、ドレン排出路を通してシール室からドレンをハウジングの外部へ排出するように構成したルーツ式ブロワであって、
外周部にリング溝を形成し、リング溝の底面に圧縮ガスの導入孔とドレンの排出孔を形成したリング状のスペーサを備え、
圧縮ガス導入路の開口とドレン排出路の開口がリング溝に対向して連通するように第1オイルシールと第2オイルシールの間にスペーサを配置してスペーサをシール室に嵌着し、
第1オイルシールと第2オイルシールとスペーサの内周面で軸封部を区画形成したことを特徴とするルーツ式ブロワ。
【請求項2】
ベアリングに当接してベアリング室に固定されたカラーに第3オイルシールを係止し、
ハウジングに第2オイルシールと第3オイルシールの間で開放窓を形成し、
回転軸に嵌挿したシャフトスリーブにフリキリ板を嵌着し、
第2オイルシールで留められて解放窓側に漏れ出たドレンを回転軸の回転に伴い、フリキリ板で開放窓からハウジングの外部へ排出することを特徴とする請求項1に記載のルーツ式ブロワ。
【請求項3】
カラーにOリングを装着し、ハウジングとカラーとの接触面からベアリング側に漏出したドレンがベアリングに侵入するのを防止することを特徴とする請求項2に記載のルーツ式ブロワ。
【請求項4】
カラーの下部にドレン排出孔を形成し、
該ドレン排出孔がフリキリ板と第3オイルシールの間に配置されるようにカラーをベアリング室に固定し、
第2オイルシールと第3オイルシールの間に溜まったドレンを排出孔から開放窓へ排出するようにしたことを特徴とする請求項2に記載のルーツ式ブロワ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーツ式ブロワに関し、より詳しくはロータの回転軸の軸封部に関する。
【背景技術】
【0002】
ルーツ式ブロワは、一対の円弧面を有する長円形のロータ室及びロータ室の中間面の一側に開口する吸込口と、他側に開口する吐出口を形成したケーシングと、ロータ室内で互いに逆方向へ回転される一対のロータを備え、各ロータの回転軸がベアリングで回転可能にケーシングに支承されている。この回転軸のロータ室から突出する部位にはロータ室から漏出したドレンがベアリングに侵入するのを防止するため軸封部が設けられている。
【0003】
この種のルーツ式ブロワの一形式として、特開2020-90939号公報に開示されているルーツ式ブロワではケーシングに固定したハウジングに、ロータの回転軸が貫通する貫通穴を形成し、回転軸を回転可能に支えるベアリングと、軸封部及びドレンの排出口を設けている。
【0004】
このルーツ式ブロワでは軸封部としてハウジングに、回転軸を囲む環状のシール室と、シール室に不活性ガスを導入するガス導入路と、シール室からドレンを排出するドレン排出路を形成している。
【0005】
シール室にはロータ室寄りの第1オイルシールを嵌着するとともに、第1オイルシールに対向するベアリング寄りの第2オイルシールが嵌着され、第1オイルシールと第2オイルシールでシール室のガス導入路の開口とドレン排出路の開口を囲んでいる。
【0006】
このルーツ式ブロワによれば、ガス導入路から不活性ガスをシール室に導入し、ドレン排出路を通してシール室からドレンをハウジングの外部へ排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来のルーツ式ブロワでは、回転軸の回転に伴う振動でオイルシールの嵌着位置がずれてガス導入路の開口や、ドレン排出路の開口がオイルシールで塞がれてしまい、シール室へ不活性ガスを導入できなくなり、あるいはシール室からドレンを排出できなくなるおそれがある。その結果、軸封部からドレンがベアリングに侵入し、ベアリングが劣化してルーツ式ブロワが作動不良を来す。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み、軸封部のドレンがベアリングに侵入するのを防止できるルーツ式ブロワを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、長円形のロータ室と、ロータ室の一側に開口する吸込口と、他側に開口する吐出口を形成したケーシングと、
ロータ室内で互いに逆方向へ回転される一対のロータと、
ロータの回転軸が貫通する貫通穴が設けられるとともに、回転軸を回転可能に支えるベアリングを組み込み、ロータ室から漏れたドレンの元となる空気や蒸気のガスが貫通穴を通してベアリングへ漏出するのを防止する軸封部を設けたハウジングを備え、
軸封部としてハウジングに、回転軸を囲む環状のシール室と、シール室に開口しシール室に圧縮ガスを導入する圧縮ガス導入路と、シール室に開口しシール室からドレンを排出するドレン排出路を形成し、
シール室にロータ室寄りの第1オイルシールを嵌着するとともに、第1オイルシールに対向するベアリング寄りの第2オイルシールを嵌着して第1オイルシールと第2オイルシールで圧縮ガス導入路の開口とドレン排出路の開口を囲み、
圧縮ガス導入路から圧縮ガスをシール室に導入し、ドレン排出路を通してシール室から蒸気ドレンをハウジングの外部へ排出するように構成したルーツ式ブロワであって、
外周部にリング溝を形成し、リング溝の底面に圧縮ガスの導入孔とドレンの排出孔を形成したリング状のスペーサを備え、
圧縮ガス導入路の開口とドレン排出路の開口がリング溝に対向して連通するように第1オイルシールと第2オイルシールの間にスペーサを配置してスペーサをシール室に嵌着し、
第1オイルシールと第2オイルシールとスペーサの内周面で軸封部を区画形成したことを特徴とする。
【0011】
そして好ましくは、ベアリングに当接してベアリング室に固定されたカラーに第3オイルシールを係止し、
ハウジングに第2オイルシールと第3オイルシールの間で開放窓を形成し、
回転軸に嵌挿したシャフトスリーブにフリキリ板を嵌着し、
第2オイルシールで留められて解放窓側に漏れ出たドレンを回転軸の回転に伴い、フリキリ板で開放窓からハウジングの外部へ排出する。
【0012】
また、好ましくは、カラーにOリングを装着し、ハウジングとカラーとの接触面からベアリング側に漏出したドレンがベアリングに侵入するのを防止する。
【0013】
さらに好ましくは、カラーの下部にドレン排出孔を形成し、
該ドレン排出孔がフリキリ板と第3オイルシールの間に配置されるようにカラーをベアリング室に固定し、
第2オイルシールと第3オイルシールの間に溜まったドレンを排出孔から開放窓へ排出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転軸の回転に伴って第1オイルシールと第2オイルシールに振動が作用しても、第1オイルシールと第2オイルシールの間に配置したスペーサによって第1オイルシールと第2オイルシールの嵌着位置がずれるのを防止できる。そのため、第1オイルシールと第2オイルシールが振動でずれて圧縮ガス導入路の開口またはドレン排出路の開口がオイルシールで塞がれることはない。従って、圧縮ガスの軸封部への導入や軸封部からのドレンの排出が妨げられることはない。ここで、圧縮ガスとは、圧縮エアや圧縮された不活性ガスなどを意味する。
【0015】
圧縮ガス導入路の開口とドレン排出路の開口がリング溝に対向して連通するようにスペーサを配置したので、圧縮ガス導入路の開口とスペーサの導入孔が整列していなくても圧縮ガス導入路から導入された圧縮ガスは開口からリング溝を通り、導入孔から軸封部の内部に導入される。また、軸封部のドレンは排出孔からリング溝を通り、ドレン排出路からハウジングの外部に排出される。そのため、必ずしも圧縮ガス導入路の開口とスペーサの導入孔が整列するように、あるいはドレン排出路の開口とスペーサの排出孔が整列するようにスペーサを組み込む必要がないので、第1オイルシール、第2オイルシール及びスペーサによる軸封部の組み立て作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例に係るルーツ式ブロワを示す一部破断した正面図である。
【
図3】同ルーツ式ブロワの軸封部を示す拡大断面図である。
【
図5】同ルーツ式ブロワのスペーサを示す斜視図である。
【
図6】同ルーツ式ブロワのカラーを示す斜視図である。
【実施例0017】
以下に本発明を図面に基づき説明する。
図1及び
図2には本発明の一実施例に係るルーツ式ブロワ10が示されている。当該ルーツ式ブロワ10はケーシング11と、ケーシング11の左右両面に固着され、ケーシング11と一体を成すハウジング12を備えている。
【0018】
図2に示すように、ケーシング11の内部には一対の円弧面を有する長円形のロータ室11aと、ロータ室11aの中間面の一側に開口する吸込口11bと、他側に開口する吐出口11cが形成され、吸込口11bに吸込管11dが接続され、吐出口11cに吐出管11eが接続されている。ロータ室11aには互いに逆方向へ回転される一対のロータ14が格納されている。
【0019】
ロータ14の回転軸15はケーシング11の側面からロータ室11aの外部に突出し、突出する回転軸15を覆うようにハウジング12がケーシング11に固定されている。このハウジング12には回転軸15が貫通する貫通穴12aと、貫通穴12aを囲むようにシール室12bとベアリング室12cが形成され、シール室12bはロータ室11a寄りに配置され、シール室12bに隣接してベアリング室12cが配置されている。ベアリング室12cには回転軸15を回転可能に支えるベアリング16が組み込まれている。
【0020】
図3に拡大して図示するように、シール室12bにはベアリング16寄りに第2オイルシール17が、またロータ室14寄りに第1オイルシール18が嵌着されている。シール室12bにはスペーサ19が嵌着され、このスペーサ19で第1オイルシール18と第2オイルシール17が対向して配置されるとともに互いに隔絶されている。
【0021】
図4に示すように、ハウジング12にはシール室12bに例えば圧縮ガスとして圧縮エアを供給する圧縮ガス導入路12dとシール室12bからドレンを排出するドレン排出路12eが形成され、それぞれがシール室12bに開口している。第1オイルシール18と第2オイルシール17は、圧縮ガス導入路12dの開口12fとドレン排出路12eの開口12gを囲むようにシール室12bに嵌着されている。
【0022】
図5に示すように、スペーサ19はリング状の形状を有し、外周部にリング溝19aが形成されている。そして、リング溝19aの底面に圧縮ガスの導入孔19bとドレンの排出孔19cが形成されている。このスペーサ19は圧縮ガス導入路12dの開口12fとドレン排出路12eの開口12gがリング溝19aに対向して連通するように第1オイルシール18と第2オイルシール17の間に配置され、第1オイルシール18と第2オイルシール17とスペーサ19の内周面で、ロータ14室から蒸気が貫通穴12aを通してベアリング16へ漏出するのを防止する軸封部が区画形成されている。
【0023】
ベアリング16に当接してベアリング室に固定されたカラー20に第3オイルシール21が係止されている。
図6に示すように、カラー20は回転軸15が貫通する穴20aが形成されるとともに、穴20aに沿って鍔部20bが設けられている。第3オイルシール21はこの鍔部20bに係止されている。この鍔部20bの下部には3か所にドレン排出孔20cが形成されている。
【0024】
図3及び
図7に示すように、ハウジング12には、第2オイルシール17と第3オイルシール21の間で開放窓12hが形成されている。一方、回転軸15に嵌挿したシャフトスリーブ22にフリキリ板23が嵌着されている。
第2オイルシール17から漏れ出たドレンは回転軸15の回転に伴い、フリキリ板23で開放窓12hからハウジング12の外部へ排出される。
【0025】
カラー20はドレン排出孔20cがフリキリ板23と第3オイルシール21の間に配置されるようにベアリング室12cに固定されている。第2オイルシール17と第3オイルシール21の間に溜まったドレンがドレン排出孔20cから開放窓12hへ排出される。
【0026】
また、ハウジング12とカラー20との接触面からベアリング16側に漏出したドレンがベアリング16に侵入するのを防止するためカラー20の外周部にOリング24が装着されている。
【0027】
回転軸15にはタイミングギヤ27が取り付けられ、タイミングギヤ27を覆うように潤滑油カバー25がハウジング12に取り付けられ、潤滑油カバー25内部に潤滑油26が溜められている。
【0028】
本実施例に係るルーツ式ブロワ10の構造は以上の通りであって、駆動モータ(図示略)でロータ14を回転させると、空気あるいは蒸気が吸引口11bからロータ室11aへ吸引され、ロータ室11aで圧縮されて吐出口11cから排出される。
しかして、本実施例によれば、回転軸15の回転に伴って第1オイルシール18と第2オイルシール17に振動が作用しても、第1オイルシール18と第2オイルシール17の間に配置したスペーサ19によって第1オイルシール18と第2オイルシール17の嵌着位置がずれるのを防止できる。そのため、第1オイルシール18と第2オイルシール17が振動でずれて圧縮ガス導入路12dの開口12fまたはドレン排出路12eの開口12gがオイルシール17、18で塞がれることはない。従って、圧縮ガスの軸封部への導入や軸封部からのドレンの排出が妨げられることはない。
【0029】
圧縮ガス導入路12dの開口12fとドレン排出路12eの開口12gがリング溝19aに対向して連通するようにスペーサ19を配置したので、圧縮ガス導入路12dの開口12fとスペーサ19の導入孔19bが整列していなくても圧縮ガス導入路12dから導入された圧縮ガスは開口12fからリング溝19aを通り、導入孔19bから軸封部の内部に導入される。また、軸封部のドレンは排出孔19cからリング溝19aを通り、ドレン排出路12eからハウジング12の外部に排出される。そのため、必ずしも圧縮ガス導入路12dの開口12fとスペーサ19の導入孔19bが整列するように、あるいはドレン排出路12eの開口12gとスペーサ19の排出孔19cが整列するようにスペーサ19をシール室12bに組み込む必要がないので、第1オイルシール18と第2オイルシール17やスペーサ19による軸封部の組み立て作業が容易になる。
【0030】
第3オイルシール21を設けるとともに、第2オイルシール17と第3オイルシール21の間で開放窓12hを形成し、回転軸15に嵌挿したシャフトスリーブ22にフリキリ板23を嵌着したので、第2オイルシール17から漏れ出たドレンを回転軸15の回転に伴って、フリキリ板23で開放窓12hからハウジング12の外部へ排出でき、ドレンがベアリング16に侵入するのをより確実に防止できる。
【0031】
さらに、カラー20の外周部にOリング24を装着したので、ハウジング12とカラー20との接触面からベアリング16側に漏出したドレンがベアリング16に侵入するのをより確実に防止できる。
【0032】
カラー20をドレン排出孔20cがフリキリ板23と第3オイルシール21の間に配置されるようにベアリング室12cに固定したので、第2オイルシール17と第3オイルシール21の間に溜まったドレンがドレン排出孔20cから開放窓12hへ排出できる。