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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141443
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ビスの緩み検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230928BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230928BHJP
【FI】
G01L5/00 103B
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047771
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 誠也
【テーマコード(参考)】
2F051
2G024
【Fターム(参考)】
2F051AA21
2F051AB06
2F051BA07
2G024AA05
2G024BA25
2G024BA27
2G024CA18
2G024DA21
2G024FA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電子機器の利用者に対してビスの緩みの進行度合いを段階的に知らせることができる、ビスの緩み検知装置を提供する。
【解決手段】ビスの緩み検知装置10は、スペーサ28と、子基板16をスペーサ28の端面28aに押し付けることによって、子基板16をメイン基板14に固定するビス18と、子基板16の表面における平面視でビス18の周囲に位置する部分に設けられた複数の電極30a~30cと、スペーサ28に電圧を付与する電源部32と、電極30a~30cの電圧を検知する電圧検知部34とを備える。スペーサ28およびビス18は導電性を有する。ビス18が緩むと、第1電極30aおよび第2電極30bがスペーサ28から離間し、これらの電圧が順番に低下する。その後、第3電極30cが、ビス18から離間し、その電圧が低下する。電圧検知部34は、段階的に検知した電圧に基づいて、警報装置を制御するための制御信号を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し、電子機器を構成するメイン基板と子基板との間に介在するように前記メイン基板に設けられるスペーサと、
導電性を有し、前記スペーサに形成された雌ネジに螺合され、前記子基板を前記スペーサの端面に押し付けることによって前記子基板を前記メイン基板に固定するビスと、
前記子基板の表面における平面視で前記ビスの周囲に位置する部分に、互いに離間した状態で設けられ、前記子基板が前記メイン基板に固定された状態において、前記スペーサまたは前記ビスに接触する複数の電極と、
前記スペーサに電圧を付与する電源部と、
複数の前記電極のそれぞれの電圧を検知するとともに、検知した前記電圧に基づいて警報装置を制御するための制御信号を出力する電圧検知部とを備える、ビスの緩み検知装置。
【請求項2】
複数の前記電極は、第1電極および第2電極を含み、
前記ビスが緩んだときに前記子基板が前記メイン基板に対して傾斜する方向を基準方向としたとき、前記第1電極および前記第2電極は、前記子基板の2つの主面のいずれか一方に、平面視で前記基準方向から前記ビスを挟むように設けられ、
前記子基板が傾斜した状態において、前記メイン基板から前記第1電極までの第1距離は、前記メイン基板から前記第2電極までの第2距離よりも長くなる、請求項1に記載のビスの緩み検知装置。
【請求項3】
複数の前記電極は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた少なくとも1つの中央電極を含む、請求項2に記載のビスの緩み検知装置。
【請求項4】
前記第1電極および前記第2電極のそれぞれの表面は、平坦面に形成され、
前記第1電極および前記第2電極の一方の表面には、軟質の第1導電層が形成され、
前記第1電極および前記第2電極の他方の表面には、前記第1導電層よりも薄い軟質の第2導電層が形成され、または、導電層が形成されない、請求項2に記載のビスの緩み検知装置。
【請求項5】
前記電圧検知部は、前記子基板よりも大きい前記メイン基板に実装され、
複数の前記電極のそれぞれと前記電圧検知部とは、前記メイン基板と前記子基板とを電気的および物理的に接続するコネクタを介して電気的に接続される、請求項2に記載のビスの緩み検知装置。
【請求項6】
複数の前記電極は、前記子基板における前記メイン基板側の主面に設けられる前記第1電極および前記第2電極と、前記子基板における前記メイン基板側とは反対側の第2主面に設けられる第3電極とを含み、
前記第3電極の少なくとも一部は、前記子基板を挟んで前記第1電極の反対側に設けられる、請求項2ないし5のいずれか1項に記載のビスの緩み検知装置。
【請求項7】
前記電圧検知部は、
前記第1電極の電圧低下を検知したとき、前記ビスの緩みが開始したことを示す警報を表示させるように表示パネルの動作を制御し、
前記第2電極の電圧低下を検知したとき、警告音を発生させるように警告音発生装置の動作を制御し、
前記第3電極の電圧低下を検知したとき、前記電子機器への電源供給を停止するように電源装置の動作を制御する、請求項6に記載のビスの緩み検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビスの緩み検知装置に関し、特にたとえば、電子機器の子基板をメイン基板に固定するビスの緩みを検知する、ビスの緩み検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の子基板をメイン基板に固定する固定構造として、子基板に設けられたコネクタがメイン基板に設けられたコネクタに接続されるとともに、子基板がメイン基板にビスを用いて固定される構造が一般に知られている。この固定構造において、ビスが緩むと、コネクタの接続状態が不安定になるおそれがあり、また、ビスが完全に外れると、ショート事故を引き起こすおそれがあった。そこで、従来では、ビスの緩みを目視で点検したり、検知装置で検知したりすることによって、上記問題の発生を防止していた。
【0003】
下記特許文献1に記載された緩み検出装置付端子台は、緩み検出装置を備えている。この緩み検出装置は、従来のビスの緩み検知装置の一例であり、端子台に電線を固定するためのねじ(ビス)と、絶縁枠を挟んで互いに対向して設けられた弾力性を有する2枚の電極と、リレーを有する検出回路と、表示灯を有する警報回路とを備えている。
【0004】
この緩み検出装置において、ねじ(ビス)を締め付けると、ねじ(ビス)に押された一方の電極が他方の電極に接触し、検出回路は、リレーの動作によって警報回路へ流れる電流を遮断する。一方、ねじ(ビス)が緩むと、一方の電極が復元力によって他方の電極から離れ、検出回路は、リレーの動作によって警報回路へ電流を流し、表示灯を点灯させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-276573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された緩み検出装置では、ねじ(ビス)が緩んだときに警報が発せられるが、電子機器の利用者が警報から得られる情報は、ねじ(ビス)が緩んでいるか否かの情報だけであり、利用者は、緩みの進行度合いを段階的に知ることができなかった。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、電子機器の利用者に対してビスの緩みの進行度合いを段階的に知らせることができる、ビスの緩み検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、導電性を有し、電子機器を構成するメイン基板と子基板との間に介在するようにメイン基板に設けられるスペーサと、導電性を有し、スペーサに形成された雌ネジに螺合され、子基板をスペーサの端面に押し付けることによって子基板をメイン基板に固定するビスと、子基板の表面における平面視でビスの周囲に位置する部分に、互いに離間した状態で設けられ、子基板がメイン基板に固定された状態において、スペーサまたはビスに接触する複数の電極と、スペーサに電圧を付与する電源部と、複数の電極のそれぞれの電圧を検知するとともに、検知した電圧に基づいて警報装置を制御するための制御信号を出力する電圧検知部とを備える、ビスの緩み検知装置である。
【0009】
第1の発明において、ビスが緩むと、子基板がメイン基板に対して傾斜する。すると、子基板の表面に設けられた1つの電極が、スペーサまたはビスから離間し、電圧検知部は、その電極の電圧低下を検知するとともに、警報装置を制御するための制御信号を出力する。例えば、制御信号を受信した警報装置としての表示パネルは、ビスの緩みが開始したことを示す警報(文字、記号など)を表示する。
【0010】
その後、ビスがさらに緩むと、他の1つの電極が、スペーサまたはビスから離間し、電圧検知部は、その電極の電圧低下を検知するとともに、警報装置を制御するための制御信号を出力する。例えば、制御信号を受信した警報装置としての警告音発生装置は、ビスの緩みが進行したことを知らせる警告音を発する。したがって、電子機器の利用者は、ビスの緩みの進行度合いを段階的に知ることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属するビスの緩み検知装置であり、複数の電極は、第1電極および第2電極を含み、ビスが緩んだときに子基板がメイン基板に対して傾斜する方向を基準方向としたとき、第1電極および第2電極は、子基板の2つの主面のいずれか一方に、平面視で基準方向からビスを挟むように設けられ、子基板が傾斜した状態において、メイン基板から第1電極までの第1距離は、メイン基板から第2電極までの第2距離よりも長くなる。
【0012】
第2の発明において、第1電極および第2電極が子基板におけるメイン基板側の第1主面に設けられる場合、ビスが緩むと、まず、第1電極がスペーサから離間し、電圧検知部は、第1電極の電圧低下を検知するとともに、警報装置を制御するための制御信号を出力する。その後、ビスがさらに緩むと、第2電極がスペーサから離間し、電圧検知部は、第2電極の電圧低下を検知するとともに、警報装置を制御するための制御信号を出力する。したがって、電子機器の利用者は、ビスの緩みの進行度合いを、実際の状態変化に即して正確に知ることができる。
【0013】
第2の発明において、第1電極および第2電極が子基板におけるメイン基板側とは反対側の第2主面に設けられる場合、ビスが緩むと、まず、第2電極がビスから離間し、電圧検知部は、第2電極の電圧低下を検知するとともに、警報装置を制御するための制御信号を出力する。その後、ビスがさらに緩むと、第1電極がビスから離間し、電圧検知部は、第1電極の電圧低下を検知するとともに、警報装置を制御するための制御信号を出力する。したがって、電子機器の利用者は、ビスの緩みの進行度合いを、実際の状態変化に即して正確に知ることができる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明に従属するビスの緩み検知装置であり、複数の電極は、第1電極と第2電極との間に設けられた少なくとも1つの中央電極を含む。
【0015】
第3の発明によれば、第1電極、中央電極および第2電極が、平面視で基準方向へ並べて設けられるので、ビスが緩むと、これらの電極がスペーサまたはビスから順番に離間する。電圧検知部は、これらの電極の電圧低下を段階的に検知し、警報装置は、各段階で警報を発する。したがって、電子機器の利用者は、少なくとも3つの警報に基づいて、ビスの緩みの進行度合いを段階的に知ることができる。
【0016】
第4の発明は、第2の発明に従属するビスの緩み検知装置であり、第1電極および第2電極のそれぞれの表面は、平坦面に形成され、第1電極および第2電極の一方の表面には、軟質の第1導電層が形成され、第1電極および第2電極の他方の表面には、第1導電層よりも薄い軟質の第2導電層が形成され、または、導電層が形成されない。
【0017】
第4の発明によれば、第1電極および第2電極の他方とスペーサまたはビスとの電気的な接続条件は、第1電極および第2電極の一方とスペーサまたはビスとの電気的な接続条件よりも厳しくなる。例えば、第1電極および第2電極の他方とスペーサまたはビスとの接触圧は、第1電極および第2電極の一方とスペーサまたはビスとの電気的な接触圧よりも小さくなる。したがって、第1電極および第2電極の他方がスペーサまたはビスから離間したことを検知する感度を高めることができる。
【0018】
第5の発明は、第2の発明に従属するビスの緩み検知装置であり、電圧検知部は、子基板よりも大きいメイン基板に実装され、複数の電極のそれぞれと電圧検知部とは、メイン基板と子基板とを電気的および物理的に接続するコネクタを介して電気的に接続される。
【0019】
第5の発明によれば、子基板よりも大きいメイン基板に電圧検知部が実装されるので、電圧検知部が実装されるスペースを確保し易い。
【0020】
第6の発明は、第2ないし第5の発明のいずれかに従属するビスの緩み検知装置であり、複数の電極は、子基板におけるメイン基板側の主面に設けられる第1電極および第2電極と、子基板におけるメイン基板側とは反対側の第2主面に設けられる第3電極とを含み、第3電極の少なくとも一部は、子基板を挟んで第1電極の反対側に設けられる。
【0021】
第6の発明において、ビスが緩むと、まず、第1電極がスペーサから離間し、続いて、第2電極がスペーサから離間し、最後に、第3電極がビスから離間する。つまり、第1電極、第2電極および第3電極のそれぞれの電圧が順番に低下する。電圧検知部は、これらの電極の電圧低下を段階的に検知し、警報装置は、各段階で警報を発する。したがって、電子機器の利用者は、3つの警報に基づいて、ビスの緩みの進行度合いを段階的に知ることができる。
【0022】
第7の発明は、第6の発明に従属するビスの緩み検知装置であり、電圧検知部は、第1電極の電圧低下を検知したとき、ビスの緩みが開始したことを示す警報を表示させるように表示パネルの動作を制御し、第2電極の電圧低下を検知したとき、警告音を発生させるように警告音発生装置の動作を制御し、第3電極の電圧低下を検知したとき、電子機器への電源供給を停止するように電源装置の動作を制御する。
【0023】
第7の発明によれば、ビスの緩みの段階に応じて、「警報表示」、「警告音発生」および「電源オフ」を行うので、電子機器の利用者は、ビスの緩みの進行度合いに応じて、適切な情報を得ることができるとともに、安全性を確保できる。なお、電圧検知部による表示パネル、警告音発生装置および電源装置の制御動作は、制御信号を出力することによって実行される。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、電子機器の利用者に対してビスの緩みの進行度合いを段階的に知らせることができる。
【0025】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例に係るビスの緩み検知装置の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図2】(A)は、第1電極および第2電極の構成を示す底面図、(B)は、第3電極の構成を示す平面図である。
図3】実施例に係るビスの緩み検知装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】ビスの緩みの進行度合いに応じた固定構造の状態を示す図であり、(A)は、緩みが生じていない状態を示す正面図、(B)は、緩みが開始した状態を示す正面図、(C)は、緩みが進行した状態を示す正面図、(D)は、ビスが外れた状態を示す正面図である。
図5】ビスの緩みの進行度合いと各電極の電圧との関係を示す表である。
図6】実施例に係るビスの緩み検知装置の動作を示すフロー図である。
図7】(A)~(D)は、第1電極および第2電極の少なくとも一方に軟質の導電層が設けられた子基板の構成を示す正面図である。
図8】(A)は、第3電極が省略された子基板の構成を示す正面図であり、(B)は、メイン基板側とは反対側の主面(第2主面)に第1電極および第2電極が設けられた子基板の構成を示す正面図である。
図9】第1電極、第2電極および中央電極の構成を示す底面図である。
図10】他の実施例に係るビスの緩み検知装置の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1(A),(B)に示すこの発明の実施例に係るビスの緩み検知装置10は、画像形成装置などの電子機器12のメイン基板14に子基板16をビス18で固定する固定構造20において、ビス18の緩みを検知するものである。
【0028】
メイン基板14は、各種の電子部品(図示省略)が実装された板状の部材であり、子基板16よりも十分に大きいサイズで、平面視で四角形に形成されている。メイン基板14の上面14aには、子基板16を電気的および物理的に接続するための第1コネクタ22が設けられている。なお、図1(A),(B)では、メイン基板14の一部だけを示している。
【0029】
子基板16は、各種の電子部品(図示省略)が実装された板状の部材であり、平面視で四角形に形成されている。子基板16の一つの端縁には、第1コネクタ22に挿し込まれる第2コネクタ24が設けられている。図1(A)に示すように、子基板16における第2コネクタ24が設けられた側とは反対側に位置する2つの角部には、貫通孔26が形成されており、貫通孔26に挿通されるビス18を主要部品として上記の固定構造20が構成されている。
【0030】
なお、本実施例では、2つの固定構造20を用いて子基板16を固定しているが、固定構造20の数は1つでもよい。また、本実施例では、ビス18が緩んだときに子基板16を傾斜させるために、子基板16が、第1コネクタ22および第2コネクタ24によって片持ちで支持されているが、子基板16を傾斜させるための構成は、適宜変更されてもよい。
【0031】
図1(B)に示すように、ビスの緩み検知装置10は、スペーサ28と、ビス18と、複数(本実施例では3つ)の電極30a~30cと、電源部32と、電圧検知部34とを備えている。スペーサ28、ビス18および電極30a~30cは、固定構造20に対して一体的に組み込まれている。スペーサ28およびビス18は、ビスの緩み検知装置10の部品であるとともに、固定構造20の部品でもある。
【0032】
図1(B)に示すスペーサ28は、導電性を有する材料によって形成された円柱状の部材であり、メイン基板14と子基板16との間に介在するようにメイン基板14の上面14aに設けられている。スペーサ28の端面28aは、メイン基板14の上面14aに対して平行となる平面視で円形の平坦面に形成されている。図2(A)に示すように、端面28aの直径は、貫通孔26の内径よりも十分に大きく定められている。また、図1(B)に示すように、スペーサ28には、ビス18が螺合される雌ネジ36が、端面28aの中央部に開口するように形成されている。
【0033】
図1(B)に示すビス18は、導電性を有する材料によって形成されたネジ部材であり、頭部18aと、軸部18bと、軸部18bの外周面に形成された雄ネジ18cとを有している。軸部18bは、子基板16の貫通孔26に上方から挿通されており、雄ネジ18cは、スペーサ28に形成された雌ネジ36に螺合されている。頭部18aは、子基板16の上面、すなわちメイン基板14側とは反対側の第2主面16bに、第3電極30cを介して押し当てられている。子基板16は、頭部18aから受ける押圧力によって、スペーサ28の端面28aに押し当てられ、メイン基板14に対して固定されている。この状態において、子基板16のメイン基板14側の第1主面16aとスペーサ28の端面28aとの間には、後述する第1電極30aおよび第2電極30bが介在されている。
【0034】
複数の電極30a~30cのそれぞれは、銅箔などの導電性を有するシート状または薄板状の部材であり、子基板16の表面(すなわち2つの主面16a,16b)における平面視でビス18および貫通孔26の周囲に位置する部分に、互いに離間した状態で設けられている。各電極30a~30cの表面は、平坦面に形成されている。
【0035】
図4(D)中の矢印で示すように、ビス18が緩んだときに子基板16がメイン基板14に対して傾斜する方向を「基準方向」と定義すると、図1(B)に示すように、第1電極30aおよび第2電極30bは、子基板16におけるメイン基板14側の第1主面16aに、平面視で基準方向からビス18および貫通孔26を挟むように設けられている。
【0036】
図1(B)に示す基準方向で見たとき、第1電極30aは、貫通孔26よりも子基板16の端縁側に設けられており、第2電極30bは、貫通孔26よりも子基板16の中央側に設けられている。したがって、図4(B)に示すように、ビス18が緩んで子基板16がメイン基板14に対して傾斜したとき、メイン基板14から第1電極30aまでの第1距離L1は、メイン基板14から第2電極30bまでの第2距離L2よりも長くなる。
【0037】
図2(A)に示すように、第1電極30aおよび第2電極30bは、貫通孔26よりも大きく、かつ、スペーサ28の端面28aよりも小さい円で切り抜かれた四角形のシートまたは薄板を、二つに分割した形状に形成されている。図1(B)に示す固定構造20において、第1電極30aおよび第2電極30bのそれぞれの表面(平坦面)は、スペーサ28の端面28aに押し当てられて、スペーサ28に対して電気的に接続されている。
【0038】
なお、第1電極30aおよび第2電極30bの形状および大きさは、特に限定されるものではなく、平面視で基準方向からビス18および貫通孔26を挟むことを条件として、適宜変更されてもよい。
【0039】
図1(B)に示すように、第3電極30cは、子基板16におけるメイン基板14側とは反対側の第2主面16bに、ビス18および貫通孔26を囲むように設けられている。図2(B)に示すように、第3電極30cは、貫通孔26よりも大きく、かつ、ビス18の頭部18aよりも小さい円で切り抜かれた四角形のシート状に形成されている。図1(B)に示す固定構造20において、第3電極30cは、ビス18の頭部18aに押し当てられて、スペーサ28に対してビス18を介して電気的に接続されている。
【0040】
なお、第3電極30cの形状および大きさは、特に限定されるものではなく、少なくとも一部が、子基板16を挟んで第1電極30aの反対側に設けられることを条件として、適宜変更されてもよい。
【0041】
図1(B)に示す電源部32は、スペーサ28に電圧(3.3V)を付与する部分である。図3に示すように、電子機器12は、電源装置40を備えており、電源部32は、電源装置40の出力電圧を3.3Vに変圧するための電子回路を有している。なお、電源部32の出力電圧は、3.3Vに限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0042】
図3に示すように、電圧検知部34は、複数(本実施例では3つ)の電極30a~30cのそれぞれの電圧を検知するとともに、検知した電圧に基づいて「警報装置」を制御するための制御信号を出力する部分である。本実施例では、「警報装置」として、表示パネル42、警告音発生装置44および電源装置40が用いられている。なお、本実施例の電源装置40は、ビス18の緩みが大きく進行したことを、電子機器12への電源供給を停止することによって利用者に知らせる警報機能を有している。
【0043】
本実施例の電圧検知部34は、表示パネル42、警告音発生装置44および電源装置40を制御する機能を有する電圧検知IC(集積回路)として構成されており、電圧検知部34の各端子には、複数の電極30a~30c、表示パネル42、警告音発生装置44および電源装置40が電気的に接続されている。
【0044】
また、図3に示すように、電源部32と各電極30a~30cとの間には、プルアップ抵抗46が接続されており、各電極30a~30cとグランド(GND)との間には、プルダウン抵抗48が接続されている。プルアップ抵抗46およびプルダウン抵抗48の抵抗値は、特に限定されるものではないが、本実施例では、プルアップ抵抗46が1kΩに定められており、プルダウン抵抗48が100kΩに定められている。
【0045】
図4は、ビス18の緩みの進行度合いに応じた固定構造20の状態を示す図であり、(A)は、緩みが生じていない状態を示す正面図、(B)は、緩みが開始した状態を示す正面図、(C)は、緩みが進行した状態を示す正面図、(D)は、ビス18が外れた状態を示す正面図である。
【0046】
図4(A)に示す状態は、図5に示す「ビス緩み無し」の状態であり、図3に示す電圧検知部34が検知する各電極30a~30cの電圧は高く保持されている。なお、図5に記載された「High」は、電圧が高く保持されていることを示しており、「Low」は、電圧が低くなったことを示している。
【0047】
図4(B)に示すように、「ビス緩み無し」の状態からビス18が少し緩むと、コネクタ22,24(図1(B))で片持ちにされた子基板16の自由端が浮き上がり、子基板16が傾斜することによって、第1電極30aがスペーサ28から離間する。図4(B)に示す状態は、図5に示す「緩み開始」の状態であり、電圧検知部34が検知する第1電極30aの電圧が低くなっている。
【0048】
図4(C)に示すように、ビス18の緩みが進行すると、子基板16の自由端がさらに浮き上がり、第2電極30bがスペーサ28から離間する。図4(C)に示す状態は、図5に示す「緩み進行」の状態であり、電圧検知部34が検知する第1電極30aおよび第2電極30bのそれぞれの電圧が低くなっている。
【0049】
図4(D)に示すように、ビス18の緩みがさらに進行して、ビス18が雌ネジ36から外れると(または、外れる寸前に至ると)、第3電極30cがビス18の頭部18aから離間する。図4(D)に示す状態は、図5に示す「ビス外れ」の状態であり、電圧検知部34が検知するすべての電極30a~30cの電圧が低くなっている。
【0050】
図6は、ビスの緩み検知装置10の動作を示すフロー図である。電子機器12の電源装置40(図3)がオンにされたとき、或いは、検知開始スイッチ(図示省略)がオンにされたとき、電圧検知部34による警報装置の制御動作が開始される。
【0051】
図6に示すように、警報装置の制御動作が開始されると、電圧検知部34は、まず、ステップS1において、第3電極30cの電圧が予め定められた閾値電圧(例えば1V)以下であるか否かを判断する。そして、YESと判断すると、ステップS3において、「ビス外れ」の状態(図5)に達していることを検知した後、ステップS5に進む。
【0052】
ステップS5において、電圧検知部34は、電子機器12への電源供給を停止(電源オフ)するように電源装置40(図3)の動作を制御し、制御動作を終了する。なお、電圧検知部34による電源装置40の制御は、制御信号を出力することによって行われる。
【0053】
ステップS1において、NOと判断したとき、電圧検知部34は、ステップS7において、第2電極30bの電圧が予め定められた閾値電圧(例えば1V)以下であるか否かを判断する。そして、YESと判断すると、ステップS9において、「緩み進行」の状態(図5)に達していることを検知した後、ステップS11に進む。
【0054】
ステップS11において、電圧検知部34は、警告音を発生させるように警告音発生装置44の動作を制御し、制御動作を終了する。なお、電圧検知部34による警告音発生装置44の制御は、制御信号を出力することによって行われる。
【0055】
ステップS7において、NOと判断したとき、電圧検知部34は、ステップS13において、第1電極30aの電圧が予め定められた閾値電圧(例えば1V)以下であるか否かを判断する。そして、YESと判断すると、ステップS15において、「緩み開始」の状態(図5)に達していることを検知した後、ステップS17に進む。
【0056】
ステップS17において、電圧検知部34は、文字または記号などの警報を表示させるように表示パネル42の動作を制御し、制御動作を終了する。なお、電圧検知部34による表示パネル42の制御は、制御信号を出力することによって行われる。
【0057】
ステップS13において、NOと判断したとき、電圧検知部34は、ステップS19に進み、所定時間待機した後、ステップS1に戻る。
【0058】
本実施例に係るビスの緩み検知装置10によれば、上記構成により、以下の効果を奏することができる。すなわち、図6に示すように、電圧検知部34は、ビス18の緩みの段階に応じて、「警報表示」、「警告音発生」および「電源オフ」を行うので、電子機器12の利用者は、ビス18の緩みの進行度合いを段階的に知ることができる。また、ビス18の緩みの進行度合いに応じて、適切な情報を得ることができるとともに、安全性を確保できる。
【0059】
図4(A)~(C)に示すように、ビス18が緩むと、固定構造20の状態が変化するが、電圧検知部34は、状態変化の各段階に応じて警報を発するように各警報装置を制御するので、電子機器12の利用者は、ビス18の緩みの進行度合いを、固定構造20の実際の状態変化に即して正確に知ることができる。
【0060】
なお、本明細書中で挙げた、ビスの緩み検知装置10の具体的な構成は、いずれも単なる一例であり、実際の製品の仕様に応じて適宜変更可能である。たとえば、上記実施例では、図1(B)に示す第1電極30aおよび第2電極30bのそれぞれの表面がスペーサ28の端面28aに直に接触しているが、第1電極30aおよび第2電極30bの一方の表面には、半田などの軟質の第1導電層50が形成され、第1電極30aおよび第2電極30bの他方の表面には、第1導電層50よりも薄い半田などの軟質の第2導電層52が形成されてもよい。
【0061】
また、第1電極30aおよび第2電極30bの一方の表面には、軟質の第1導電層54が形成され、第1電極30aおよび第2電極30bの他方の表面には、導電層が形成されなくてもよい。
【0062】
図7(A)に示す子基板16は、第1電極30aに第2導電層52が形成されるとともに、第2電極30bに第1導電層50が形成されたものである。図7(B)に示す子基板16は、第1電極30aに導電層が形成されず、第2電極30bに第1導電層54が形成されたものである。これらの構成によれば、第2電極30bに形成された第1導電層50,54によって、第1電極30aとスペーサ28との電気的な接続条件が厳しくされているので、第1電極30aがスペーサ28から離間したことを検知する感度を高めることができる。なお、電気的な接続条件とは、具体的には、接触圧や接触面の安定性などであり、例えば、接触圧が低くなるほど接続条件は厳しくなる。
【0063】
図7(C)に示す子基板16は、第1電極30aに第1導電層50が形成されるとともに、第2電極30bに第2導電層52が形成されたものである。図7(D)に示す子基板16は、第1電極30aに第1導電層54が形成され、第2電極30bに導電層が形成されないものである。これらの構成によれば、第1電極30aに形成された第1導電層50,54によって、第2電極30bとスペーサ28との電気的な接続条件が厳しくされているので、第2電極30bがスペーサ28から離間したことを検知する感度を高めることができる。
【0064】
上記実施例では、図1(B)に示す子基板16の表面に3つの電極30a~30cが設けられているが、電極の数は2つでもよいし、4つ以上でもよい。例えば、上記の第3電極30cが基準方向に分割されて、合計4つの電極とされてもよい。
【0065】
また、図8(A)に示すように、第3電極30cが省略されてもよし、図8(B)に示すように、第1電極30aおよび第2電極30bが、子基板16におけるメイン基板14側とは反対側の第2主面16bに設けられてもよい。図8(B)に示す構成において、ビス18が緩むと、まず、第2電極30bがビス18の頭部18aから離間し、その後、第1電極30aがビス18の頭部18aから離間する。
【0066】
図8(B)に示す構成においても、図7(A)~(D)に示す構成と同様に、第1電極30aおよび第2電極30bの一方には、第1導電層50が形成され、第1電極30aおよび第2電極30bの他方には、第2導電層52が形成されてもよい。また、第1電極30aおよび第2電極30bの一方には、第1導電層54が形成され、第1電極30aおよび第2電極30bの他方には、導電層が形成されなくてもよい。
【0067】
上記実施例では、図2(A)に示す第1電極30aと第2電極30bとが単純に隔てられているが、図9に示すように、第1電極30aと第2電極30bとの間に、少なくとも1つ(この実施例では2つ)の中央電極30dが設けられてもよい。つまり、上記の複数の電極は、第1電極30aと第2電極30bとの間に設けられた少なくとも1つの中央電極30dを含んでいてもよい。
【0068】
この構成において、ビス18が緩むと、第1電極30a、中央電極30dおよび第2電極30bがスペーサ28またはビス18から順番に離間する。電圧検知部34は、これらの電極30a,30d,30bの電圧低下を段階的に検知し、警報装置は、各段階で警報を発する。したがって、電子機器12の利用者は、少なくとも3つの警報に基づいて、ビス18の緩みの進行度合いを段階的に知ることができる。
【0069】
上記実施例では、図1(B)に示す電圧検知部34が子基板16に実装されているが、図10に示すように、電圧検知部34はメイン基板14に実装されてもよい。この場合、複数の電極30a~30cのそれぞれと電圧検知部34とは、メイン基板14と子基板16とを電気的および物理的に接続するコネクタ22,24を介して電気的に接続されてもよい。この構成によれば、子基板16よりも大きいメイン基板14に電圧検知部34が実装されるので、電圧検知部34が実装されるスペースを確保し易い。
【符号の説明】
【0070】
10…画像形成装置
12…電子機器
14…メイン基板
16a…第1主面
16b…第2主面
16…子基板
18…ビス
20…固定構造
22…第1コネクタ
24…第2コネクタ
26…貫通孔
28a…端面
28…スペーサ
30a~30c電極
30d…中央電極
32…電源部
34…電圧検知部
36…雌ネジ
40…電源装置
42…表示パネル
44…警告音発生装置
50,54…第1導電層
52…第2導電層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10