(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141459
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】制御装置、乾燥制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A45D 29/00 20060101AFI20230928BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A45D29/00
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047790
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 孝幸
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EB30
2C056EB31
2C056EC14
2C056EC36
2C056EC38
2C056EE10
2C056EE18
2C056FB01
2C056FB09
2C056FC02
2C056FC06
2C056HA42
2C056HA47
(57)【要約】
【課題】印刷後の爪を適切な時間で乾燥させることのできる制御装置、乾燥制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置10が、温度及び湿度の少なくとも一方の測定結果を取得する測定結果取得手段、及び測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段としてのファン61の送風条件を設定する設定手段として機能する制御部11を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度及び湿度の少なくとも一方の測定結果を取得する測定結果取得手段と、
前記測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段の送風条件を設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記温度は、少なくとも乾燥対象である爪が配置される乾燥空間内の温度であり、前記湿度は、前記乾燥空間内の湿度である、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記送風条件は、前記送風手段による送風時間を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記送風条件は、前記送風手段を動作させるモータに印加する電圧の値を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
一連の複数工程を経て前記爪に印刷を行う場合に、各工程ごとに乾燥処理を行わせ、前記温度及び湿度の測定は、各工程ごとの乾燥処理を行う前に行われて、その測定結果に基づいて各工程における乾燥処理の送風条件が設定される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
温度及び湿度の少なくとも一方の測定結果を取得し、
前記測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段の送風条件を設定する、
ことを特徴とする乾燥制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
温度及び湿度の少なくとも一方の測定結果を取得する測定結果取得機能と、
前記測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段の送風条件を設定する設定機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、乾燥制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば指の爪にマニキュアを施す場合、マニキュア液を塗布したのち、これを乾燥させる工程が必要となる。
従来、人の爪等に印刷を行う印刷装置が知られている。このような印刷装置を用いて印刷によってネイルプリントを施す場合でも、印刷後にインク等の液剤を乾燥させる必要がある。
【0003】
この点、例えば特許文献1には、マニキュア液を噴霧するマニキュア液塗装手段と、塗装されたマニキュア液を乾燥させるマニキュア液乾燥手段とを備えた自動マニキュア塗り器の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インク等の液剤(特許文献1においてマニキュア液)を印刷(塗布)した後、十分に乾燥させなければ、印刷されたデザインが滲んだり崩れたりしてしまう。他方で必要以上に乾燥時間を長くすると、ネイルプリントに要する時間が長くなり、ユーザの負担が大きくなってしまう。
この点、特許文献1に記載の構成では、必ずしも乾燥時間を適切に設定できる構成とはなっていなかった。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、印刷後の爪を適切な時間で乾燥させることのできる制御装置、乾燥制御方法及びプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の制御装置の一態様は、
温度及び湿度の少なくとも一方の測定結果を取得する測定結果取得手段と、
前記測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段の送風条件を設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷後の爪を適切な時間で乾燥させることができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る乾燥装置及びこれを制御する制御装置を備える印刷装置の外観構成を示す要部斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る乾燥装置を含む印刷装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る乾燥制御の全体の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態において、乾燥時間を設定する流れを示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態において、乾燥時間及び印加電圧値を設定する流れを示すフローチャートである。
【
図6】(a)は、デザイン印刷の成功例を示す平面図であり、(b)は、デザイン印刷の失敗例を示す平面図である。
【
図7】(a)は、下地印刷の成功例を示す平面図であり、(b)は、下地印刷の失敗例を示す平面図である。
【
図8】温度及び湿度と乾燥時間とを対応付ける対応付けテーブルの一例を示す表である。
【
図9】温度及び湿度と乾燥時間及び印加電圧値とを対応付ける対応付けテーブルの一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図9を参照しつつ、本発明に係る制御装置及び制御装置により制御される乾燥装置等を備える印刷装置の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
本実施形態の印刷装置は、後述するように、印刷対象である指の爪に印刷を施す印刷手段(実施形態中において「印刷機構」)と、印刷後の爪を乾燥させる乾燥装置、及びこれらを制御する制御装置等、を含んでいる。
なお、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷する印刷装置を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。
【0012】
図1は、本実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、
図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、
図1に示した方向をいうものとする。
【0013】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成されたケースとしての筐体2を有している。
筐体2の前面側(印刷装置1の正面側、
図1において前側)には、開口部21が形成されている。
本実施形態では、筐体2の内部は、後述するように仕切り板15によって上下に区切られており、後述するように仕切り板15の下側は、印刷後の爪の乾燥を行うことのできる乾燥用の空間(乾燥空間SP、
図1参考)となっている。乾燥空間SP内には、後述するファン61等を含む乾燥装置6が設けられている。
【0014】
なお、乾燥装置6は両手の10本の指の爪を一度に乾燥させることのできるものでもよく、この場合には、
図1に示すように、開口部21のうち、少なくとも仕切り板15よりも下側の部分(装置底面に近い部分)が、左右の手を並べた状態で装置内に挿入することができるように、装置左右方向(印刷装置1の横方向、左右方向、
図1においてX方向)のほぼ全体に亘る広い幅に形成される。
なお、乾燥装置6は両手を挿入できるものに限定されず、例えば片手ずつ挿入したり、指1本ずつを挿入して乾燥を行うものでもよい。この場合には、乾燥空間SPを広くとる必要がなく、乾燥装置6、ひいてはこれを備える印刷装置1をコンパクトな構成にすることができる。
【0015】
筐体2の上面(天板)には、印刷装置1の操作部22が設けられている。操作部22は、例えば印刷装置1の電源をON/OFFする電源スイッチボタン等の操作ボタンである。操作部22が操作されると、操作に応じた操作信号が制御装置10に出力され、制御装置10が操作信号にしたがった制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。例えば操作部22が電源スイッチボタンである場合、ボタン操作に応じて印刷装置1の電源がON/OFFされる。
【0016】
また筐体2の上面(天板)には、表示部23が設けられている。
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
なお、表示部23の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部22として機能する。
本実施形態では、ユーザが操作部22等から入力・選択したネイルデザインや、各種の案内画面、警告表示画面等が表示部23に表示可能となっている。なお、表示部23に表示される内容はこれに限定されない。
なお筐体2の構成は図示例に限定されない。例えば操作部22、表示部23等の配置は、筐体2の上面(天板)に限定されず、印刷装置1の前面や側面等であってもよい。
【0017】
筐体2の内部には筐体2内を上下にわける仕切り板15等を備える装置本体が収容されている。
仕切り板15における装置左右方向(
図1等におけるX方向)のほぼ中央には、印刷を行う際に印刷対象である爪に対応する指を配置する指配置部3が設けられている。
また、前述のように、仕切り板15の下側の空間は印刷後の爪を乾燥させる乾燥用の空間(乾燥空間SP)となっており、乾燥装置6が配置されている。
本実施形態では、仕切り板15よりも上に指配置部3の開口部31が形成されており、開口部31から指配置部3に指を入れて、後述の印刷機構4により爪に印刷を行い、印刷後には、仕切り板15の下側の乾燥空間SP内に手を入れて、乾燥装置6により印刷対象である爪の乾燥を行うことができるようになっている。
【0018】
図2は、本実施形態に係る乾燥装置を含む印刷装置の制御構成を示す要部ブロック図である。
図2に示すように、乾燥装置6は、爪に対して送風する送風手段としてのファン61と、温度センサ等で構成される温度測定手段62、湿度センサ等で構成される湿度測定手段63等を含んでいる。
【0019】
ファン61は、例えば図示しないモータを含み、モータの駆動によって回転駆動するプロペラ(翼)を有する軸流ファンである。乾燥装置6は、ファン61の回転により、ファン61の一側(
図1に示す例等では、上側)から風(空気)を吸い込み、他側(図示例では下側)から風(空気)を吐き出すようになっている。
ファンを動作させるモータは後述する制御装置10の制御部11によって制御され、例えばモータに印加する電圧の値(以下これを「印加電圧値」ともいう。)が高くなると、モータの回転数が上がり、これによってファン61からの風量や風速が大きくなる。
【0020】
温度測定手段62は、少なくとも乾燥対象である爪が配置される空間である乾燥空間SP内の温度を測定するものである。
また、湿度測定手段63は、乾燥空間SP内の湿度を測定するものである。
温度測定手段62及び湿度測定手段63により得られた測定結果は、制御装置10の制御部11において取得される。
なお、温度測定手段62、湿度測定手段63は、乾燥空間SP内の温度や湿度を測定可能なものであればよく、その具体的な構成や設けられる位置等は特に限定されない。温度測定手段62、湿度測定手段63は、仕切り板15よりも下方の乾燥装置6が配置されている空間内に設けられることが好ましいが、例えば筐体2内であれば仕切り板15の上下に関わらず乾燥空間SP内の温度や湿度を把握することができるような場合には筐体2内のいずれかに設けられていてもよい。
【0021】
また、本実施形態の印刷装置1は、仕切り板15よりも上の空間に、
図2に示す印刷機構4、撮影部5等を備えている。
印刷機構4は、印刷対象である爪の表面(印刷対象面)に印刷を施すものである。
印刷機構4は、印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41を適宜移動させる移動機構等を備えている。
【0022】
本実施形態の印刷ヘッド41は、その下面(仕切り板15の表面と対向する面)にインクを吐出させる吐出口が形成された図示しないインク吐出部を備え、インクを貯留する貯留部(インクカートリッジ)とインク吐出部とが一体に形成されたカートリッジ一体型のヘッドである。
また印刷ヘッド41は、インク吐出部から微滴化したインクを印刷対象面に吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のヘッドである。
【0023】
印刷ヘッド41は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の各色のインク(以下「デザイン用インク」という。)を吐出可能なデザイン用ヘッドと、デザインを印刷する前に下地となる液剤(以下「下地用インク」という。)を印刷する下地用ヘッドと、を含んでいる。デザイン用インクは例えば水溶性のインクであり、インク受容層が塗布された上に印刷される。また下地用インクは例えば顔料インクである。
【0024】
なお、印刷装置1が備える印刷ヘッド41の種類や数はここに示した例に限定されない。例えばさらに複数の色のインクが吐出可能となっていてもよい。
また、印刷ヘッド41の構成はここに例示したものに限定されない。例えば、印刷ヘッド41は、各種方式で印刷(インク等の液剤の塗布)を行うものを含んでもよい。
【0025】
また移動機構は、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41がホルダに保持されている場合には印刷ヘッド41を保持するホルダ)を、装置左右方向であるX方向及び装置前後方向であるY方向(
図1等にいうX方向、Y方向参照)に移動させるものである。
移動機構は、X方向への移動の際に駆動するX方向移動モータ45、Y方向への移動の際に駆動するY方向移動モータ47等を含んでいる。X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47は、例えばステッピングモータである。
【0026】
また撮影部5は、カメラ51と、光源52とを備えている。
撮影部5は例えば筐体2の天面内側や、仕切り板15上に立設された図示しない支持部材等に取り付けられている。撮影部5の配置は特に限定されないが、例えば装置左右方向(X方向)のほぼ中央部(指配置部3の上方又はその近傍位置等)に配置される。
なお、撮影部5の構成や配置は、図示例に限定されない。
本実施形態では、指配置部3に配置された指及びその爪を適宜光源52によって照らしながら撮影部5のカメラ51により撮影し、爪を含む指の画像(「爪画像」という)を取得する。そしてこの「爪画像」から印刷対象である爪の形状(「爪輪郭」)が検出(取得)され、爪輪郭の内側領域が、印刷領域である「爪領域」とされる。
【0027】
印刷装置1に搭載される制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部11と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部12とを備えるコンピュータである。
制御装置10は、例えば筐体2の上面(天板)の内側(下面側)等に配置された図示しない基板等に搭載されている。
【0028】
記憶部12は、印刷装置1及び乾燥装置6を動作させるための各種プログラムやデータ等を記憶している。
具体的には、記憶部12には、印刷処理を行うための印刷制御プログラム、爪の乾燥処理を行うための乾燥制御プログラム等の各種プログラムが格納されており、制御部11がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部11において実行されることによって、印刷装置1や乾燥装置6の各部が統括制御されるようになっている。
また、記憶部12には、制御部11によって取得された爪輪郭や爪形状に関する各種データ等が記憶される。
なお、記憶部12には、撮影部5によって取得された爪画像等のデータが記憶されてもよいし、その他各種データが記憶されてもよい。
【0029】
さらに本実施形態の記憶部12は、後述するように、乾燥装置6のファン61を動作させる時間(送風時間、乾燥時間)等の送風条件を決めるための対応付けテーブル(
図8及び
図9参照)を記憶している。
また、乾燥装置6の温度測定手段62によって測定された乾燥空間SP内の温度や、湿度測定手段63によって測定された乾燥空間SP内の湿度等、制御部11が取得した測定結果が記憶されてもよい。
【0030】
制御部11は、機能的に見た場合、例えば印刷装置1の各部を制御して動作させる印刷制御手段として機能する他、乾燥装置6の各部を制御して動作させる乾燥制御手段等として機能する。なお、制御部11の機能はここに例示したものに限定されない。例えば、印刷装置1は、各種端末装置等の外部機器との間で通信を行うための通信部25を有しており、制御部11は、通信制御手段としてこの通信部25の動作を制御し、外部機器との間で通信を行わせることができる。
印刷制御手段、乾燥制御手段等としての機能は、制御部11と記憶部12に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0031】
印刷制御手段としての制御部11は、印刷装置1の表示部23の表示動作を制御し、撮影部5のカメラ51や光源52を制御して撮影を行わせ、爪画像等の画像を取得させる。そして、撮影部5に撮影させて取得した爪画像を解析(画像解析、画像処理)することにより爪に関する情報(これを「爪情報」という。)を取得する。さらにこの爪情報に基づいて爪輪郭(爪輪郭の内側領域である爪領域)を検出し、ユーザによって選択されたデザイン(ネイルデザイン)爪領域内に合わせ込む等により印刷データを生成する。
そして印刷データにしたがって爪に印刷を施すように印刷機構4の各部を制御する。
【0032】
また乾燥制御手段としての制御部11は、乾燥装置6の動作を制御する。
具体的には、制御部11は、乾燥装置6の温度測定手段62によって測定された乾燥空間SP内の温度や、湿度測定手段63によって測定された乾燥空間SP内の湿度等の測定結果を取得する測定結果取得手段として機能する。
そして制御部11は、これらの測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段であるファン61の送風条件を設定する設定手段としても機能する。
また本実施形態の制御部11はタイマー機能を有しており、例えば処理開始からの経過時間を把握可能となっている。
【0033】
本実施形態において送風条件は、例えばファン61による送風時間(乾燥時間)や、ファン61を動作させるモータに印加する電圧の値(印加電圧値)等の条件を含んでいる。前述のように、送風時間(分)や印加電圧値(V)等の送風条件は、乾燥具合に影響を及ぼす要素である乾燥空間SP内の温度及び湿度と対応付けられ、乾燥条件対応付けテーブル(
図8に示す第1の対応付けテーブル121、
図9に示す第2の対応付けテーブル122参照)として規定されている。
なお、
図8及び
図9では、送風時間を記載したが、特定のファン61において、送風中に印加電圧値の変化がない場合、一定の風を送っていると解されるため、爪に当たる風の総量として考えた場合、送風時間の大小は送風量の大小と読み替えても同様ということができる。
【0034】
爪にインク等の液剤を塗布又は印刷した場合、液剤に含まれる水分を蒸発させて除去又は減少させて乾燥させる必要がある。
空気は温度ごとに含むことのできる水蒸気量があり、これを相対湿度で表現すると下記の式1で表すことができる。
「ある温度の空気に含むことのできる最大水蒸気圧」とは飽和水蒸気量であり、式1に示すように、相対湿度100%とは空気が飽和水蒸気量の水分を含んだ状態である。
【数1】
【0035】
一般に温度が高く、湿度が低く、風速(風量)が大きいほど乾燥しやすいとされ、これは、温度が高ければそれだけ空気が膨張して水蒸気を蓄えることのできる体積が増加するためであり、逆に温度が低ければ現状の空気中に蓄えることのできる水蒸気の分量も少なくなるためであると解される。なお、風速(風量)が大きいとは、ファン61によって供給される空気量が大きくなることを意味する。
【0036】
本実施形態では、温度測定手段62や湿度測定手段63が、乾燥対象である爪が配置される乾燥空間SP内の温度及び湿度を測定した測定結果が、測定結果取得手段として機能する制御部11によって取得される。そして、制御部11は、これらの測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段であるファン61の送風条件を設定する設定手段としても機能する。このため、乾燥空間SP内の温度や湿度等に応じた乾燥処理を行うことが可能である。
【0037】
特に本実施形態では、後述するように、爪にデザイン(ネイルデザイン)を施す印刷処理が複数の工程を経て行われるようになっており、乾燥装置6における乾燥処理は、各工程ごとに行われる。
制御部11は、各工程ごとの乾燥処理を行う前に温度測定手段62や湿度測定手段63により乾燥空間SP内の温度や湿度を測定させて、その測定結果を取得する。そして、その測定結果に基づいて各工程における乾燥処理の送風条件を設定するようになっている。
【0038】
次に、本実施形態における乾燥制御方法、乾燥装置6等を制御する制御装置10及び乾燥装置6を含む印刷装置1の作用・効果について説明する。
図3は、爪に印刷を行う場合の一連の工程の全体的な流れを示すフローチャートである。
本実施形態において爪に印刷処理を施す場合には、
図3に示すように、まず、爪にベースコートを塗布する(A工程、ステップS1)。ベースコートはその後の工程において印刷又は塗布される液剤が爪に浸透するのを防いで爪を保護するものである。ベースコートは例えばユーザ等が刷毛等を用いて液剤を手塗りすることが想定されている。
ベースコートが塗布されると、ユーザは爪(爪に対応する手)を仕切り板15の下の乾燥空間SPに配置させて、乾燥装置6によりベースコートを乾燥させる乾燥処理を行う(ステップS2、A工程の乾燥処理)。
【0039】
そしてベースコートの乾燥後、ベースコートの上に白色インク等の下地用インクを用いて下地印刷を行う(B工程、ステップS3)。本実施形態において、下地印刷は例えば前述の印刷ヘッド41(下地用ヘッド)により行われる。前述のように下地用インクとしては例えば顔料インクが用いられる。その後ユーザは、手を乾燥空間SPに移動させて、乾燥装置6により下地印刷(下地用インク)を乾燥させる乾燥処理を行う(ステップS4、B工程の乾燥処理)。
【0040】
次に、白色等の下地の上からインク受容層を形成する液剤を塗布して(C工程、ステップS5)、インク受容層を形成させる。インク受容層を形成する液剤は、例えば水溶性樹脂等を主成分とする水性の液剤であり、その後の工程で印刷されるデザイン用インク(インクに含まれる染料、色材)を吸収・吸着させて下地印刷上に定着させるためのものである。インク受容層は、例えばユーザ等が刷毛等を用いて液剤を手塗りすることで形成することが想定されている。
インク受容層が形成されると、再び手を乾燥空間SPに配置させて、乾燥装置6により、このインク受容層を乾燥させる乾燥処理を行う(ステップS6、C工程の乾燥処理)。
【0041】
そして、インク受容層が形成された上に各色のカラーインク等のデザイン用インクを用いてデザイン(ネイルデザイン)の印刷を行う(D工程、ステップS7)。デザインは前述の印刷ヘッド41(デザイン用ヘッド)により印刷される。デザイン用インクとしては水性の液剤が用いられる。デザイン印刷が完了すると、ユーザは手を乾燥空間SPに移動させて、乾燥装置6によりデザイン印刷(デザイン用インク)を乾燥させる乾燥処理を行う(ステップS8、D工程の乾燥処理)。
【0042】
さらにデザイン(ネイルデザイン)の印刷及び乾燥が完了すると、その上にトップコート用の液剤を塗布して(E工程、ステップS9)、トップコート層を形成する。トップコート層は、デザイン印刷を保護するものであり、ネイルデザインの持ちを向上させる。トップコート層は、例えばユーザ等が刷毛等を用いて液剤を手塗りすることで形成することが想定されている。その後、ユーザは手を乾燥空間SPに移動させて、乾燥装置6によりトップコート層の乾燥を行う乾燥処理を行う(ステップS10、E工程の乾燥処理)。
【0043】
本実施形態では、このようなA工程からE工程までの5つの工程を経て、一連のネイルプリントの印刷工程(生成工程)が完了する。なお、ネイルプリントの工程はここに例示した5工程に限定されず、これらすべてを含んでいなくてもよいし、これ以外の工程を含んでいてもよい。
また本実施形態では、上記のように、これら各工程ごとに乾燥処理を行い、インク等の液剤を乾燥させてから次の工程に進むようになっている。
なおこの実施形態では、上記のようにベースコートやインク受容層の形成、トップコート層の形成における液剤の塗布は手塗りすることを想定しているが、ベースコートやインク受容層の形成、トップコート層の形成における液剤の塗布は、例えばエアブラシや筆ペン状の道具等を用いて自動で塗布するようにしてもよい。
【0044】
図3に説明したように、本実施形態では、各印刷(又は塗布)の工程(A工程~E工程)が終了する度に、乾燥装置6による乾燥処理を行う(
図3におけるステップS2、ステップS4、ステップS6、ステップS8、ステップS10)。
図4及び
図5は、これら乾燥工程におけるファン61の送風条件(乾燥条件)の設定について説明するフローチャートである。
【0045】
本実施形態では、前述のように記憶部12等に乾燥条件対応付けテーブル(
図8に示す第1の対応付けテーブル121、
図9に示す第2の対応付けテーブル122参照)が記憶されており、このテーブルを参照することにより、乾燥空間SP内の温度や湿度に対応する送風条件(乾燥条件)が、ファン61に設定されるようになっている。
乾燥条件対応付けテーブル121,122は、予め爪又は爪と同様の面積や形状を有する爪様のサンプルチップ(例えばネイルチップ等)を用いて、ネイルプリントの各工程(A工程~E工程)を行い、各温度・湿度の条件下で乾燥処理を行った場合に、良好な結果を得られた測定値を設定値としてデータテーブル化(データベース化)したものである。すなわち、各工程における印刷結果(仕上がり具合)を検証したときに、OKと判断されたもの、NGと判断されたものの発生頻度等から有効値を導き、設定値としている。
【0046】
例えば、
図6(a)は、デザイン(ネイルデザイン)の印刷を行うD工程において良好(OK)と判断されたサンプルチップObへの印刷例であり、
図6(b)は、デザイン(ネイルデザイン)の印刷を行うD工程において不良(NG)と判断されたサンプルチップObへの印刷例である。
【0047】
良好(OK)と判断されたサンプルチップObではデザインがくっきりと見え、色の境界が明確であるのに対して、不良(NG)と判断されたサンプルチップObでは、色同士が溶け合って境界が不明瞭な品質の悪い印刷結果となっている。これはD工程に移行する前のC工程について、乾燥処理が不十分であったためと考えられる。C工程において塗布されるインク受容層を形成するための液剤は水性であり、デザイン用インクも同じく水性であるため、C工程で形成されたインク受容層の乾燥が不十分である場合、その上に乗ったデザイン用インクが溶け出しやすく、デザインが滲んだり、発色の悪い部分が生じたりする可能性が高い。また図示は省略するが、インク受容層の乾燥が不十分である場合にはインクの定着自体もよくないために、デザイン印刷の後にトップコート層を乗せようとした際に刷毛等によってインクがそぎ落とされてしまったり、デザイン自体が崩れてしまうおそれもある。
【0048】
また例えば、
図7(a)は、白色等の下地用インクで下地印刷を行うB工程において良好(OK)と判断されたサンプルチップObへの印刷例であり、
図7(b)は、白色等の下地用インクで下地印刷を行うB工程において不良(NG)と判断されたサンプルチップObへの印刷例である。
【0049】
良好(OK)と判断されたサンプルチップObでは全体が均一に白く仕上がっているのに対して、不良(NG)と判断されたサンプルチップObでは、下地にむらが生じており、図示はされていないが、場所によっては下の爪が透けて見える部分がある等、品質の悪い印刷結果となっている。このような印刷状態のまま次の工程に進んでいった場合、デザインの印刷も全体に均一な美しい仕上がりとならないおそれがある。下地印刷が行われる前のA工程においてベースコートの塗布を手塗りで行った場合、全体に均一に塗ることが難しく、刷毛目が残っていたり、厚く塗られた部分と薄く塗られた部分とが混在していたりすることがある。このような場合、下地印刷自体は全体に均一に行われたとしてもむらになりやすく、特にベースコートが厚く塗られた部分では乾燥不足も生じやすいため、下地用インクが流れて偏りやむら、皴等を生じやすい。
【0050】
乾燥条件対応付けテーブル(
図8に示す第1の対応付けテーブル121、
図9に示す第2の対応付けテーブル122)は、印刷における各工程において、乾燥空間SP内の温度や湿度の条件を様々に変えて試行錯誤を繰り返し、その結果から各工程における各条件下での好ましい送風条件(乾燥条件)を規定している。
【0051】
まず、
図8に示す第1の対応付けテーブル121は、ファン61の送風条件(乾燥条件)のうち、送風時間(乾燥時間)を設定するための乾燥条件対応付けテーブルの一例である。なお、
図8では、湿度「10%」から「80%」の場合に対応するテーブルのうち、一部を省略して例示している。なお
図8において送風時間を示す数値の単位は「分」である。
図4は、
図8に示す第1の対応付けテーブル121を用いて、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定結果に基づいてファン61の送風時間(乾燥時間)を設定する場合の処理を示すフローチャートである。
図4に示す例では、ファン61には定格電圧を与えるものとする。
【0052】
本実施形態では、制御部11は、各工程ごとの乾燥処理を行う前に温度測定手段62や湿度測定手段63により乾燥空間SP内の温度や湿度を測定させて、その測定結果を取得し、その測定結果に基づいて各工程における乾燥処理の送風条件(乾燥時間)を設定する。
具体的には、
図4に示すように、各工程が終了すると制御部11は、乾燥条件対応付けテーブル(第1の対応付けテーブル121)から、終了した工程に対応するテーブルを読み出して設定する(ステップS21)。例えば終了した工程が、インク受容層を形成する液剤を塗布する「C工程」である場合、乾燥条件対応付けテーブル(第1の対応付けテーブル121)のうち「C工程」に対応する欄が読み出されて設定される。
【0053】
そして、測定結果取得手段としての制御部11は、温度測定手段62により乾燥空間SP内の温度を測定させ、その測定結果を取得する(ステップS22)。
例えば乾燥空間SP内の温度が「20度」であった場合、乾燥条件対応付けテーブル(第1の対応付けテーブル121)のうち「20度」に対応する欄(
図8中、細破線で囲った部分)を送風時間対応付け部分として読み出す(ステップS23)。
【0054】
さらに、測定結果取得手段としての制御部11は、湿度測定手段63により乾燥空間SP内の湿度を測定させ、その測定結果を取得する(ステップS24)。
例えば湿度が「20%」であった場合には、設定手段としての制御部11は、乾燥条件対応付けテーブル(第1の対応付けテーブル121)のうち細破線で囲った、温度「20度」に対応する送風時間対応付け部分の、湿度「20%」に対応する欄(
図8中、太破線で囲った部分)が交わる部分(図中薄い網掛けで示す)の送風時間を読み出し(ステップS25)、読み出された送風時間(
図8に示す例では「2.5」分)を設定値としてファン61に設定する(ステップS26)。また例えば湿度が「60%」であった場合には、乾燥条件対応付けテーブル(第1の対応付けテーブル121)のうち細破線で囲った、温度「20度」に対応する送風時間対応付け部分の、湿度「60%」に対応する欄(
図8中、太一点鎖線で囲った部分)が交わる部分(図中濃い網掛けで示す)の送風時間を読み出し、読み出された送風時間(
図8に示す例では「5」分)をファン61の動作時間の設定値として設定する。なお、送風時間(乾燥時間)を設定することを、
図8では制御部11が設定された時間だけファン61を動作させるタイマー制御等のために記憶部12等に記憶させる意味で「書き込む」と表現している(以下における「書き込む」との表現について共通)。
【0055】
そして、制御部11はファン61を起動させるとともに、タイマーをスタートさせる(ステップS27)。
制御部11は、タイムアウトしたか(すなわち、設定された送風時間だけファン61が動作したか)否かを随時判断し(ステップS28)、まだ設定された時間が経過していない場合(ステップS28;NO)には、ステップS28の判断を繰り返す。
他方、タイムアウトした場合(ステップS28;YES)には、制御部11はファン61を停止させ(ステップS29)、次の工程があるか否かを判断する(ステップS30)。次の工程がない場合(ステップS30;NO、例えば現在「E工程」まで終了している場合)には、ここで処理を終了する。
【0056】
他方、例えば先の例のように、現在「C工程」である場合、次の工程として「D工程」がある。この場合、制御部11は次の工程あり(ステップS30;YES)として当該次の工程が終了したか否かをさらに判断する(ステップS31)。次の工程が終了していない場合(ステップS31;NO)には、制御部11は、ステップS31の判断を繰り返す。次の工程が終了している場合(ステップS31;YES)には、制御部11は、乾燥条件対応付けテーブル(第1の対応付けテーブル121)のうち、当該終了した工程(例えば「D工程」)に対応する欄を読み出して設定する(ステップS32)。そしてステップS22に戻って以降の処理を繰り返す。
【0057】
なお、印刷処理を構成する工程の中に、印刷装置1による自動の印刷工程ではない手塗りの工程(例えば
図3に示す「A工程」「C工程」「E工程」)がある場合には、ユーザが操作部22や表示部23のタッチパネル等から次の工程の有無や次工程に処理を進めるための指示等を適宜入力してもよい。指示等が入力された場合には、制御部11は当該指示にしたがって処理を行う。
【0058】
また、
図9に示す第2の対応付けテーブル122は、ファン61の送風条件(乾燥条件)のうち、送風時間(乾燥時間)及びファン61を動作させるモータに印加する電圧の値(印加電圧値)を設定するための乾燥条件対応付けテーブルの一例である。なお、
図9では、テーブルのうち、湿度「20%」の場合に対応する部分のみを抜き出して例示している。
図5は、
図9に示す第2の対応付けテーブル122を用いて、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定結果に基づいてファン61の送風時間(乾燥時間)及びファン61を動作させるモータに印加する電圧の値(印加電圧値)を設定する場合の処理を示すフローチャートである。
図5に示す例は、ファン61に与える定格電圧を所望の電圧に変更できる構成となっていることを前提とする。
【0059】
各工程で使用される液剤の種類や液剤ごとの組み合わせ等によっては、送風時間(乾燥時間)だけを変えても印刷の仕上がりが向上されない場合もある。例えば乾燥に時間がかかるが流れやすい液剤を用いる工程がある場合、そのような工程に対応する乾燥処理において送風時間を長くし過ぎると、ファン61からの風でインクが流れて仕上がりに悪影響が生じる可能性もある。このような場合、送風時間を長くするとともにファン61からの風の風速(風量)を抑えると良好な結果を得られる場合もある。逆に強い風(風速や風量の大きな風)により短い時間で乾燥させた方が良好な結果を得られる場合もある。
そこで、ファン61に与える電圧の値を変えることができる場合には、
図5に示すように、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定結果に基づいてファン61の送風時間(乾燥時間)とファン61に与える電圧の値(印加電圧値)とを設定可能とすることで、乾燥処理を行う時間とファン61からの風の風速(風量)とを適宜変えることが有効である。
【0060】
なお、例えば、
図9に示す例では、温度が25度である場合、送風条件の設定として、送風時間(乾燥時間)を2.5分、風速(風量)を決める電圧の値(印加電圧値)を8Vとしているのに対して、温度が10度である場合には、送風条件の設定として、送風時間(乾燥時間)を5分、風速(風量)を決める電圧の値(印加電圧値)を6Vとしている。温度が10度の場合の送風条件では、電圧の値(印加電圧値)が6Vであり、8Vよりも低い分、温度が25度である場合よりも風速は抑えられるが、送風時間(乾燥時間)を倍としているため、爪に当たる風の総量として考えた場合、温度が25度の場合の送風条件に比べて全体としての送風量は多くなる。
【0061】
なお、
図5におけるステップS41からステップS46は、乾燥条件対応付けテーブルが第1の対応付けテーブル121ではなく、印加電圧値にも対応した第2の対応付けテーブル122である点を除いて、
図5におけるステップS21からステップS26と同様の内容であるため、ここでは説明を省略する。
また以下の説明では、ステップS41において、「終了した工程」がインク受容層を形成する液剤を塗布する「C工程」(
図9において、太二点鎖線で示す)であるとされた場合を例とする。
【0062】
図5に示すように、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定結果が測定結果取得手段としての制御部11において取得され、この設定値に基づいて、制御部11が設定手段としてファン61の送風時間(乾燥時間)を設定すると、第2の対応付けテーブル122のうちの、乾燥空間SP内の温度に対応する印加電圧値対応付け部分(
図9中、「10度」に対応する部分を細破線で囲み、「25度」に対応する部分を太破線で囲っている)から、乾燥空間SP内の湿度に対応する電圧値を読み出す(ステップS47)。ここでは、
図9に示されるように、測定された湿度が「20%」であった場合を例とする。
【0063】
例えば測定された温度が「10度」である場合には、「C工程」のうち、湿度「20%」(
図9中、太二点鎖線で囲った部分)と温度「10度」(
図9中、細破線で囲った部分)とが交わる部分(図中薄い網掛けで示す)の電圧値(印加電圧値)を読み出し、読み出された電圧値(図示例では「6V」)を、設定手段としての制御部11が、ファン61に印加される電圧の設定値として設定する(ステップS48)。また、測定された温度が「25度」である場合には、「C工程」のうち、湿度「20%」(
図9中、太二点鎖線で囲った部分)と温度「25度」(
図9中、太破線で囲った部分)とが交わる部分(図中濃い網掛けで示す)の電圧値(印加電圧値)を読み出し、読み出された電圧値(図示例では「8V」)を、制御部11が、ファン61に印加される電圧の設定値として設定する。なお、
図9において「書き込む」との表現は、
図8の場合と同様である。
【0064】
設定手段としての制御部11により、ファン61の送風時間(乾燥時間)とファン61に印加する電圧値が設定されると、制御部11は、設定された電圧値をファン61のモータに印加し、ファン61を起動させるとともに、タイマーをスタートさせる(ステップS49)。
なお、
図5におけるステップS50からステップS54は、乾燥条件対応付けテーブルが第1の対応付けテーブル121ではなく、印加電圧値にも対応した第2の対応付けテーブル122である点を除いて、
図5におけるステップS28からステップS32と同様の内容であるため、ここでは説明を省略する。
このように乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定結果に基づいて乾燥装置6の動作を制御することができるようにすることで、適切かつ効果的に爪の乾燥を行うことができる。
【0065】
図4に示すように、
図8に示すような第1の対応付けテーブル121を用いて、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定結果に基づき、ファン61の送風時間(乾燥時間)を設定して乾燥装置6による乾燥処理を行うのか、
図5に示すように、
図9に示すような第2の対応付けテーブル122を用いて、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定結果に基づき、ファン61の送風時間(乾燥時間)とファン61に与える電圧値とを設定して乾燥装置6による乾燥処理を行うのかは、いずれか一方の処理しか行わない構成となっていてもよいし、いずれの処理にも対応できるように構成されていてもよい。
【0066】
どちらの処理にも対応できる構成とした場合、例えば爪に印刷を行う一連の工程の中でも第1の対応付けテーブル121を用いた処理を行うか、第2の対応付けテーブル122を用いた処理を行うのかが、各工程ごとに適宜選択できてもよい。
また、同じ内容の工程であっても、その工程で用いられる液剤の種類によっていずれの処理を行うかを選択・設定できてもよい。
【0067】
さらにここでは、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定結果に基づき、ファン61の送風時間(乾燥時間)のみを設定して乾燥装置6による乾燥処理を行う場合と、ファン61の送風時間(乾燥時間)とファン61に与える電圧値とを設定して乾燥装置6による乾燥処理を行う場合と、の2種類の処理態様を示したが、これ以外の対応付けテーブルを用意し、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定結果に基づいて他の設定を行うことができるようにしてもよい。また、例えば送風時間はデフォルトの値に固定され、ファン61の風速や風量を変える印加電圧値のみを変化させる設定ができてもよい。
【0068】
以上のように、本実施形態の制御装置10は、少なくとも乾燥対象である爪が配置される乾燥空間SP内の温度及び乾燥空間SP内の湿度の測定結果を取得する測定結果取得手段として機能するとともに、測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段であるファン61の送風条件を設定する設定手段としても機能する制御部11を備えている。
これにより、印刷処理の各工程において液剤の乾燥に影響を及ぼす要素である温度と湿度に応じてファン61の動作を制御することができる。このため、乾燥装置6において適切な乾燥を行うことができ、高品位の印刷結果を得ることが可能となる
【0069】
また本実施形態の送風条件は、ファン61による送風時間を含んでいる。
これにより、過不足のない最適な時間で、乾燥を行うことができ、ユーザの負担を抑えつつ、高品位の印刷結果を得ることができる。
【0070】
また本実施形態の送風条件は、ファン61を動作させるモータに印加する電圧の値を含んでいる。
これにより、ファン61からの風の風速(風量)の調整も可能となり、より適切な乾燥を行うことができるため、高品位の印刷結果を実現できる。
【0071】
また本実施形態では、一連の複数工程を経て爪に印刷を行う場合に、各工程ごとに乾燥処理を行わせ、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定は、各工程ごとの乾燥処理を行う前に行われて、その測定結果に基づいて各工程における乾燥処理の送風条件が設定される。
このように乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定を行うことで、各工程間で時間があいてしまった場合や、温度や湿度の環境が変化しやすい状況下等でも、適切にファン61の送風条件(乾燥条件)を設定することができ、良好な印刷結果を得ることができる。
【0072】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0073】
例えば、本実施形態では、
図1に示すように、乾燥装置6が、左右の手の爪の乾燥に対応するように、ファン61を2つ備えている場合を例示したが、乾燥装置6が備えるファン61は1つでもよい。この場合ユーザは、片方の手ずつ乾燥装置6内に配置して、片手ずつ爪の乾燥を行う。
乾燥装置6を1つしか備えない場合には、両手を装置内に配置する構成と比較して、幅方向(X方向)にコンパクトな装置構成を実現することができる。
【0074】
また、本実施形態では、印刷装置1が乾燥装置6を含んでいる場合を例示したが、乾燥装置6は印刷装置1と一体となったものに限定されず、乾燥装置単体として構成されているものであってもよい。
この場合も乾燥装置は、両手を装置内に配置できる構成でもよいし、片手ずつ配置して爪の乾燥を行う構成のものでもよい。
また、乾燥装置6が印刷装置1と一体となっている場合でも、測定結果取得手段、設定手段として機能する制御部を備える制御装置は印刷装置1を制御する制御装置10とは別個に設けられていてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、温度測定手段62、湿度測定手段63が、乾燥空間SP内の温度や湿度を測定可能なものである場合を例示したが、乾燥装置6のファン61の動作を制御するための要素(条件)を取得できればよく、取得される温度や湿度は乾燥空間SPのものに限定されない。
例えば温度や湿度は、乾燥空間SP内のものに限られず、周囲の温度・湿度を広く含んでもよい。この場合には、温度測定手段62、湿度測定手段63は、印刷装置1や乾燥装置6の内部ではなく、その周囲や近傍等に配置されていてもよい。
【0076】
さらに温度と湿度は必ずしも両方を取得しなければならないわけではなく、測定結果取得手段は、温度及び湿度のうちの少なくとも一方の測定結果を取得するものであってもよい。この場合には温度又は湿度のいずれか、測定された方が送風条件を設定する際に考慮される。
【0077】
また、本実施形態では、印刷装置1や乾燥装置6が単体で印刷処理作及び乾燥処理を完結することができるように構成されたものを例示したが、印刷装置1や乾燥装置6はここに示すようなものに限定されず、例えばスマートフォン等の端末装置等、各種の外部機器と連携して印刷処理や乾燥処理等を行うものであってもよい。
印刷装置1や乾燥装置6が外部機器と連携して各種処理を行う場合には、例えば、爪画像からの爪情報の検出処理や印刷データの生成処理等の印刷関係の処理や、送風条件の設定処理等の乾燥装置6としての処理が、外部機器(例えばスマートフォン等である端末装置)において行われる構成としてもよい。
【0078】
この場合、乾燥装置6の温度測定手段62、湿度測定手段63によって測定された乾燥空間SP内の温度や湿度の測定結果を取得する測定結果取得手段、測定結果に基づいて送風条件の設定を行う設定手段として機能する制御部を備える制御装置は、外部機器に設けられている制御装置であってもよい。この場合には、乾燥空間SP内の温度や湿度を測定した測定結果が乾燥装置6側から通信部25等を介して外部機器に送信され、設定結果である送風条件(乾燥条件)が外部機器から乾燥装置6に送り返される構成としてもよい。
【0079】
また、この場合には、撮影部5のカメラ51により爪が撮影され爪画像(指を含む爪の画像)が取得されると、撮影部5によって取得された爪画像は、通信部25を介して外部機器に送られる。そして外部機器の制御装置によって爪情報の検出や印刷データの生成が行われて、生成された印刷データが印刷装置1に送られるようになっていてもよい。
この場合、印刷装置1は印刷機構4、撮影部5、乾燥装置6のみを備えていればよく、印刷装置1の構成を簡易なものとすることができる。
【0080】
さらに、本実施形態では、印刷装置1に操作部22や表示部23が設けられている場合を例示したが、印刷装置1が外部機器と連携して各種処理を行う場合には、外部機器の操作部や表示部がこれらに代わって各種入力操作を行ったり各種画面を表示させてもよく、この場合には印刷装置1が操作部22や表示部23を備えなくてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、印刷装置1の印刷ヘッド41として、インクジェット方式の印刷ヘッド41を備える構成としたが、印刷ヘッド41の構成はこれに限定されない。
刷毛や筆ペン状のヘッド、シリンジ型のヘッドやペン型のヘッド等、インクジェット方式の印刷ヘッド41とは異なる構成のものを備えてもよい。
【0082】
本実施形態において手塗りを前提としていた工程(例えばA工程、C工程、E工程)を印刷装置1の印刷機構4によって機械的に自動で印刷又は塗布することができるようにした場合には、人が手塗する場合と比較して均一に液剤を塗布することができ、実際の液剤の塗布量も、液剤の噴射量やインクカートリッジに残されたインク残量等から正確に算出することも期待できる。
液剤の塗布量が多い部分の方が少ない部分に比べて乾燥に時間がかかることから、このように塗布量を制御装置が把握することができる場合には、本実施形態の温度や湿度に加えて、液剤の塗布量(塗布された厚み)も送風条件を設定する際の参照要素に加えてもよい。
【0083】
また本実施形態では、一連の複数工程を経て爪に印刷を行う場合に、各工程ごとに乾燥処理を行わせ、乾燥空間SP内の温度及び湿度の測定は、各工程ごとの乾燥処理を行う前に行われて、その測定結果に基づいて各工程における乾燥処理の送風条件を設定するものとしたが、温度や湿度の測定は各工程ごとに行う場合に限定されない。
例えば印刷装置1を温度や湿度の環境がある程度一定に保たれた室内等で用いる場合には、一連の工程を開始する前や、最初の工程(例えばA工程)について乾燥処理を行う前に1回乾燥空間SP内の温度及び湿度を測定して、当該測定結果に基づいて送風条件(乾燥条件)を設定したら、そのまま設定ですべての工程の乾燥処理を行ってもよい。温度や湿度の環境が変化しにくい状況下であれば、何度の設定を調整しなくても、良好な送風条件で乾燥処理を行うことが可能であり、工程ごとに測定や設定を繰り返す時間を省いて迅速に印刷処理を行うことができる。
【0084】
さらに乾燥装置6内等にヒータ等の発熱手段や冷却手段等を備えて、乾燥空間SP内の温度がほぼ一定に維持されるように構成してもよい。
この場合には、温度環境の変化しやすい場所で乾燥装置6(乾燥装置6を含む印刷装置1)を使用する場合にも、湿度に対応する送風条件(乾燥条件)を設定すれば足り、簡易にファン61の送風制御を行うことができる。
【0085】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
温度及び湿度の少なくとも一方の測定結果を取得する測定結果取得手段と、
前記測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段の送風条件を設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする制御装置。
<請求項2>
前記温度は、少なくとも乾燥対象である爪が配置される乾燥空間内の温度であり、前記湿度は、前記乾燥空間内の湿度である、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
<請求項3>
前記送風条件は、前記送風手段による送風時間を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
<請求項4>
前記送風条件は、前記送風手段を動作させるモータに印加する電圧の値を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制御装置。
<請求項5>
一連の複数工程を経て前記爪に印刷を行う場合に、各工程ごとに乾燥処理を行わせ、前記温度及び湿度の測定は、各工程ごとの乾燥処理を行う前に行われて、その測定結果に基づいて各工程における乾燥処理の送風条件が設定される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御装置。
<請求項6>
温度及び湿度の少なくとも一方の測定結果を取得し、
前記測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段の送風条件を設定する、
ことを特徴とする乾燥制御方法。
<請求項7>
コンピュータに、
温度及び湿度の少なくとも一方の測定結果を取得する測定結果取得機能と、
前記測定結果に基づいて、爪に対して送風する送風手段の送風条件を設定する設定機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0086】
1 印刷装置
2 筐体
4 印刷機構
41 印刷ヘッド
6 乾燥装置
61 ファン(送風手段)
62 温度測定手段
63 湿度測定手段
11 制御部
12 記憶部