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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141472
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】AC-DC電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H02M7/12 P
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047807
(22)【出願日】2022-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】594170185
【氏名又は名称】大西 徳生
(72)【発明者】
【氏名】大 西 徳 生
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA01
5H006AA02
5H006CA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC01
5H006CC02
5H006CC08
5H006DA02
5H006DB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】交流電源からの交流電流波形に比例した波形に制御することが可能なAC-DC電源を提供する。
【解決手段】AC-DC電源の主回路200は、全波整流回路220の出力をスイッチS1によりLC共振周期で決まる一定のオン期間で周期的にオンオフ制御して全波整流電圧の大きさに比例した共振パルス電流で共振キャパシタCrを充電制御し、スイッチング周期を制御することにより、直流出力電圧vоを制御すると共に、共振キャパシタに充電された電圧に対し、インダクタとスイッチS2及びダイオードで構成される回路で、第一のスイッチのオフ期間における一定のオン期間で周期的にオンオフ制御してインダクタの電流を制御することにより交流電流波形を交流電源電圧波形に比例した波形に制御する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全波整流回路を交流電源に接続し、前記全波整流回路の直流出力端子側に第一のスイッチ回路を第一のダイオードを介して共振インダクタLrと逆充電防止用ダイオード付きの共振キャパシタCrで構成するLC共振回路に接続し、前記共振キャパシタCrにインダクタLdと第二のダイオードを介して平滑用キャパシタCdに接続すると共に、前記インダクタLdと前記第二のダイオードの接続点に第二のスイッチ回路を接続し前記共振キャパシタCrの他端に接続し、前記平滑用キャパシタCdの両端に直流負荷回路を接続する交流―直流変換回路において、
前記第一のスイッチ回路を前記LC共振回路の共振周期あるいはその整数倍の周期で決まる一定の期間オンした後、直流出力電圧を制御するに必要なオフ期間を含む一定の周期で周期的にスイッチング動作を繰り返して、前記LC共振回路に流れる共振電流が零電流あるいは零電流に近い値のときに、前記第一のスイッチ回路をスイッチング制御することによりスイッチング損失の低減やスイッチングノイズの発生を低減し、前記スイッチング周波数を変えることにより、前記交流電源の電圧波形の絶対値波形に比例した前記共振電流のパルス列の間隔を変えて、前記平滑用キャパタCdにより平滑された直流出力電圧の大きさ変えると共に
前記第二のスイッチ回路を前記第一のスイッチ回路の周期的なオンオフ制御のオフ期間内に、同期して一定の期間オンしてオフすることにより、前記インダクタLdに流れ出る電流を制御し、前記第一のスイッチに流れるパルス列の前記共振電流をLCフィルタ回路に通すことにより、前記直流負荷回路の負荷回路状態に係わらず、前記交流電源からの交流電流波形に比例した波形に制御することを特徴とするAC-DC電源。
【請求項2】
請求項1記載のAC-DC電源において、回路動作に影響することなく、前記第一のスイッチ回路と前記第二のスイッチ回路を直列接続するか、前記第二のスイッチ回路と前記第一のスイッチ回路を直列接続する主回路構成とすることにより、
前記第一のスイッチ回路と前記第二のスイッチ回路の二組のスイッチ回路間で、ドライブ電源のブートストラップ充電を可能として、前記二組のスイッチ回路のドライブ回路構成が簡単化できることを特徴とするAC-DC電源。
【請求項3】
請求項1から3記載のAC-DC電源において、前記交流電源が単相電源の場合は、前記全波整流回路を単相全波整流回路とし、前記交流電源が三相電源の場合は、前記全波整流回路を三相全波整流回路とし、前記共振電流のパルス列の電流を前記LCフィルタ回路に通すことにより前記交流電源が単相正弦波の場合は、正弦波状の交流電流波形に、三相正弦波の場合は、線間電圧波形の120度通流幅の交流電流波形に制御することを特徴とするAC-DC電源。
【請求項4】
請求項1から4記載のAC-DC電源において、設定する直流出力電圧あるいは直流出力電流の基準値と前記直流負荷回路の直流出力電圧あるいは直流出力電流の検出量との比較制御量で前記第一のスイッチ回路の前記スイッチング周波数を制御することにより、前記直流負荷回路の直流出力電圧あるいは直流出力電流が制御できることを特徴とするAC-DC電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としてのLED照明器具用電源から比較的容量の大きなインバータエアコンなど比較的容量の大きな応用分野の電気エネルギーを消費する負荷に対する直流電源の電源品質改善と小型化、軽量化、低価格化に貢献する技術である。
【背景技術】
【0002】
LED照明は、本来の低消費電力や長寿命の特徴に加えて省エネ化への期待や制御機能の向上が図られるため、近年の照明器具の低価格化と共に広く普及してきた。
【0003】
LED照明電源は、電気エネルギーを一方的に需要要求に応じて消費する負荷であるため、極めて簡単な回路構成でも実用に供することができることと、市販される台数が極めて多いため、低価格な電源で構成されることが多く、今後のさらなる普及発展には解決すべき課題も多い。
【0004】
一般的なLED照明用電源は、交流電源を整流して電解コンデンサで平滑した後、スイッチ回路で調光制御しており、ハードスイッチング損失、スイッチングノイズ、電解コンデンサによる寿命等の課題に加えて、力率改善対策としてPFC(Power Factor Correction:力率改善)整流回路を付加したものは、LED照明用駆動電源としては動作電圧が高くなり、その後段に電圧を下げるためにDC-DCコンバータを接続する2段構成となるなど、回路構成がさらに複雑化するなどの課題があった。
【0005】
一方、インバータエアコンの直流電源としては、インバータの動作電圧も高いため、接続される商用電源電圧によっては倍電圧整流が用いられるなど、LED照明電源に比べて、動作電圧は高いが、容量も大きく、その整流電源を得る時の動作特性が、電流波形ひずみによる周辺機器への影響も大きい。
【0006】
このため、インバータエアコン用電源においてもPFCコンバータが用いられており、回路構成が複雑化するだけでなく、スイッチング損失、高周波ノイズが課題となるため、種々の改善策も講じられている。
【0007】
本発明は、新しく開発したソフトスイッチング技術による簡単な回路構成でスイッチング損失やスイッチングノイズの低減に有効なソフトスイッチング制御技術と、交流電源電流の波形改善技術を併用した高性能で小型軽量化となるため、LED照明用電源からインバータエアコン用直流電源までの幅広い応用範囲で適用が期待される技術である。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2018-219842:「PFCコンバータ」
【特許文献2】特許第6667750:「DC-DCコンバータ」
【特許文献3】特許第6775745:「AC-DCコンバータ」
【0009】
LED照明用電源は、調光機能に加えて高い変換効率、高力率駆動が求められており、
インバータエアコン用の直流電源は、後段にPWMインバータで出力制御はできるものの、前段の直流電源を得る変換装置も力率改善と高調波低減が要求されており、いずれも交流電源の電流高調波対策が求められており、PFCコンバータの導入が進んでいるが、
スイッチング損失、スイッチングノイズが発生する問題や回路構成が複雑化するなどの課題があり、様々な改善策が講じられている。
【0010】
これら対策の多くは、ハードスイッチングによっているため、スイッチング損失だけでなく、スイッチングノイズの影響も問題となり、(
【特許文献1】)ではEMIノイズの低減、を目的に、またスイッチングに伴うリアクトル部での騒音の低減を目的にスイッチング周波数を調整する手法などが提案されている。
【0011】
ハードスイッチングノイズの課題を解決する手法として、零電圧スイッチングや零電流スイッチングなどのソフトスイッチング手法がある。
【0012】

【特許文献2】)は、新しい零電流スイッチング手法を用いたソフトスイッチング制御によるDC-DCコンバータであり、(
【特許文献3】)は、交流電源からの交流―直流変換動作にそのスイッチング手法を適用したAC-DCコンバータで、1個のスイッチ素子で構成できる特徴がある。
【0013】
このAC-DCコンバータは、LC共振回路によりソフトスイッチング動作をさせるときのスイッチング周期を制御することにより、電源電流波形は高周波スイッチングフィルタ回路を通すことにより、連続的に出力制御ができるが、直流負荷として白熱電球や電熱器などの抵抗負荷が接続される場合は、低次高調波電流が全く含まれない交流電源電圧波形と同じ正弦波に制御することができる優れた特性が得られる。
【0014】
しかし、直流回路負荷がLEDの場合は、順方向電圧降下が高く、AC-DCコンバータの出力電圧がこの電圧より高いときしか流れないため、正弦波の交流電源波形の中央付近は流れるが、零電圧近辺は電流が流れないので、交流電源波形は正弦波ではなくなる。
【0015】
また、LED照明の場合は、白熱電球とは異なり、この電流の流れに比例して明るさが変化するため、交流電源周波数の2倍の周波数でのフリッカも懸念される。
【0016】
そこで、出力端に平滑用キャパシタを接続するとき、AC-DCコンバータの出力電圧が平滑キャパシタの電圧以上にならないと電流は流れないため、電流波形はLED照明の場合と同様の動作波形となる。
【0017】
このため、(
【特許文献3】)のAC-DCコンバータ単独では、LED照明電源やインバータエアコンの直流電源としては、基本波力率は高いが、交流電流波形のひずみはコンデンサインプット形の整流回路に比べると抑えられるものの総合力率としては十分ではなく、出力電圧脈動がない一定の直流電源としては働かすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】

【特許文献3】)のAC-DCコンバータの優れたソフトスイッチング特性を活かし直流出力として一定の直流出力電圧、電流を得ながら、その入力電流は、高調波の発生を十分に抑えられ、ほぼ正弦波状とするための波形改善回路を付加したAC-DC電源とする必要がある。
【0019】
一方、一般のPFCコンバータは、一定の直流出力を得ると同時に、交流電流波形を正弦波状に制御することができる特徴を有している。
【0020】
このPFCコンバータの電流制御手段として、CCM(continuous Conduction Mode)と呼ばれる電流連続形のもの、DCM(Discontinuous Conduction Mode)と呼ばれる電流不連続形のも、あるいはCRMと呼ばれるものがあり、それぞれに優れた特徴とともに課題点も指摘されている。
【0021】
そして、DCM制御の場合を除いて、電流制御の基準波形の発生に掛け算処理等が必要となり、制御回路の構成が複雑化する。
【0022】
また、これらはいずれもハードスイッチングを基本としているために、上述したスイッチング損失やスイッチングノイズの発生や電流波形制御用リアクトル部での騒音や、EMIノイズ対策も課題となる。
【0023】
加えて、PFCコンバータは、交流電源電圧のピーク値以上の直流動作電圧でしか働かすことができないため、低い電圧出力を得るためのDC-DCコンバータを付加する場合は、主回路構成はさらに複雑化する。
【0024】

【特許文献3】)のAC-DCコンバータを、正弦波の交流電流波形に加えて、一定の直流出力が得られるAC-DC電源に改善させる上で、PFCコンバータ回路単独での使用に比べて、どれだけ優れた特性や制御機能を持たせられるかが課題といえる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
図1は、本発明のAC-DC電源のソフトスイッチング制御による単相AC-DCコンバータ部の基本回路構成図を示している。
【0026】
図2は、このAC-DCコンバータの直流負荷として抵抗が接続されている場合の基本動作波形であり、スイッチSをLC共振周期以上の期間オンしたのち、オフすることにより、交流電源電圧をダイオードブリッジ整流回路の出力電圧波形easの振幅値に比例した共振電流irが流れるため、交流電源電流波形iasは電源フィルタ回路を通すことにより正弦波電流波形iaが流れることを示している。
【0027】
このとき、スイッチSのオン、オフは共振電流irが零電流のときにスイッチすることになることから、零電流ソフトスイッチング動作を実現できることが分かる。
【0028】
なお、抵抗負荷時の電流ioは、共振キャパシタCrの端子電圧に比例した共振電流irの平均的な正弦波の絶対値に比例した電流が流れることとなる。
【0029】
図3は、三相電源電圧に対して三相全波整流回路の出力をAC-DCコンバータに接続したときの回路図を示している。
【0030】
図4は、三相AC-DCコンバータのスイッチング動作波形を示しており、スイッチSのオンオフ制御により三相全波整流回路の出力電圧波形easに比例した振幅の共振電流irが流れるため、交流電流は図示するような120度区間毎にこの共振電流波形がスイッチ切り換えされた電流波形iaが流れる。
【0031】
交流電流波形は単相の場合と三相の場合で異なるが、単相、三相いずれの動作においても、AC-DCコンバータの交流電流波形は、等価的に全波整流回路の出力端に抵抗負荷が接続されたときの電流波形に比例した電流が流れることとなり、スイッチSのスイッチング周期制御により出力制御されることを示している。
【0032】
次に、上記AC-DCコンバータの直流負荷としてLEDなど接続された負荷が接続されたときの動作を説明する。
【0033】
図5は、単相AC-DCコンバータの負荷として平滑用キャパシタCdとLED負荷が接続された時の等価回路を示していて、LEDの順方向電圧降下Vを起電力Eに対応させて示している。
【0034】
図6は、このような起電力源を含む負荷が接続された時の動作波形を示しており、AC-DCコンバータの出力電圧がこの起電力源となる電圧より高いときしか流れないため、交流電源波形の零電圧近辺は電流が流れず、中央付近にしか流れない電流波形となる。
【0035】
図7は、本発明のAC-DC電源の主回路構成を示しており、AC-DCコンバータのLC共振回路の出力と負荷の間にスイッチS2を用いたスイッチ回路を付加した回路とし、共振用スイッチS1と同期してスイッチS2を周期的にオン、オフ制御することにより、AC-DCコンバータだけの単独使用上に生じる課題を解決している。
【0036】
図8は、本発明によるAC-DC電源のスイッチング動作を示しており、AC-DCコンバータのソフトスイッチング用スイッチS1と改善用付加回路のスイッチS2のスイッチングタイミングと、これらスイッチングによる共振回路電流irと共振キャパシタCrからの電流id0とフリーフォイーリングダイオードD3の電流も含むインダクタLdへ流れる電流の波形idを示している。
【0037】
ここで、スイッチS1は、ほぼLC共振周期(Tw1)だけオンとした後、オフし、周期Tsでスイッチングを繰り返すことで、零電流ソフトスイッチング動作をしながら、全波整流出力電圧波形の振幅変化に比例した共振電流irを流しており、このスイッチS1のオフ期間に同期してスイッチS2を短期間(Tw2)オンすることで、共振電流により充電される共振キャパシタCrの電圧vrの振幅にほぼ比例した電流idを流す動作を繰り返す動作となっている。
【0038】
なお、インダクタLdに流れる電流は、スイッチS2のオン期間Tw2を長くしても共振キャパシタの電圧vrが零になっている期間は電流は上昇せず、回路損失が無ければほぼ一定の電流が流れ、スイッチS2をオフしたときに負荷の平滑キャパシタ電圧によって電流idは急激に減少して零電流となる。
【0039】
したがって、スイッチS1のオフ期間(Ts-Tw1)は、スイッチS2のオン、オフ期間を合わせて電流idが零に戻るまでの期間を確保する必要がある。
【0040】
以上の電流id制御は、PFCコンバータの不連続モード動作と類似した電流制御を行い、共振電流irと電流id0が相補的に短期間で電流制御することから、共振用インダクタLrと同程度の小さな値のインダクタLdとすることが必要である。
【発明の効果】
【0041】
図9は、以上のスイッチング動作を交流電源周期間で示したものであり、負荷に平滑用キャパシタが接続された起電力源を含む負荷が接続された時においても、図9に示す回路とS1とS2のスイッチング動作により、共振電流irと電流id0はスイッチング周期単位で同期してほぼ同じ平均電流で流すことができ、フィルタ回路を通した交流電流波形を電源電圧波形と同じ正弦波に制御することができる。
【0042】
そして、直流出力電圧は、正弦波の交流電源からソフトスイッチング制御スイッチS1のスイッチング周期Tsを制御することにより連続的に制御でき、単相システムにおいては、同図に示すように交流電源電流iaが正弦波状としながら直流電圧voあるいは直流電流ioは、時間変化しない一定の波形とできる、出力一定の直流安定化電源としても動作させることができる。
【0043】
また、三相システムでは、直流出力電圧は、スイッチS1のスイッチング周期Tsを制御することにより連続的に制御でき、三相交流電源電流は三相全波整流回路の直流出力電圧波形に比例した120通電区間の波形となるので、電流波形は正弦波とならないが、基本波力率は1で働かせることができる。
【0044】
さらに、本発明によるスイッチS2の信号は、スイッチS1と同期して一定のパルス場で制御できるために制御回路構成が、正弦波の電流基準波形や、波形制御のための電流検出回路およびこれらの瞬時値比較制御などの複雑な制御回路を必要とする一般のPFCコンバータと比べて、極めて簡単に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】単相ソフトスイッチング制御AC-DCコンバータ回路
図2】単相ソフトスイッチング制御AC-DCコンバータの動作波形
図3】三相ソフトスイッチング制御AC-DCコンバータ回路
図4】三相ソフトスイッチング制御AC-DCコンバータの基本動作波形
図5】平滑回路付きLED負荷駆動時の等価回路
図6】平滑回路付きLED負荷動作駆動時の動作波形
図7】波形改善スイッチ回路加基本回路
図8】波形改善スイッチ回路付基本回路の電流波形制御原理
図9】波形改善スイッチ回路付基本回路の基本動作波形
図10】単相AC-DC電源の実用回路例
図11】単相AC-DC電源の簡単化回路構成 ・ スイッチS1とスイッチS2の直列接続回路例 ・ スイッチS2とスイッチS1の直列接続回路例
図12】単相AC-DC電源の実用回路例と制御システム
図13】三相AC-DC電源の実用回路例
図14】単相AC-DC電源のシミュレーション回路と回路定数
図15】抵抗負荷接続時の単相AC-DC電源のソフトスイッチング単独制御動作波形
図16】直流電圧源を含む抵抗負荷接続時の単相ソフトスイッチング単独制御動作波形
図17】単相AC-DC電源の波形改善スイッチ制御有無による動作波形の比較
図18】単相AC-DC電源のスイッチ併用制御特性(fs=40kHz)
図19】単相AC-DC電源のスイッチ併用制御特性(fs=20kHz)
図20】単相AC-DC電源のスイッチの併用制御スイッチング動作波形
図21】波形改善スイッチ回路付三相AC-DC電源のシミュレーション回路と回路定数
図22】直流電圧源を含む抵抗負荷接続時の三相ソフトスイッチング単独制御動作波形
図23】三相AC-DC電源のスイッチ併用制御特性(fs=40kHz)
図24】三相AC-DC電源のスイッチ併用制御特性(fs=20kHz)
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明を実施する上で、図7に示すAC-DC電源の主回路構成に対して、スイッチS1とスイッチS2に対するドライブ回路の簡単化ができればさらに望ましい実施形態となる。
【0047】
本発明のAC-DC電源の基本回路構成である図7において、AC-DCコンバータ回路において、LC共振周期にほぼ等しい期間(Tw1)オンさせることにより、零電流でオンオフ制御した後のスイッチオフ期間に波形改善用スイッチS2を短期間(Tw2)だけオンすることで必要な電流制御ができるので、スイッチS1とスイッチS2は、直列接続することができる。
【0048】
図10は、図7におけるスイッチS2をスイッチS1の出力端からダイオードD3を介すると共に、電流制御インダクタLdの出力からダイオードD5を介してスイッチS2を接続する構成により、スイッチS1とスイッチS2を直列接続した主回路構成例であり、回路動作に影響することなく、同じスイッチング制御が実現できるようにしたAC-DC電源としての主回路構成例を示している。
【0049】
また、図11は、スイッチおよびインダクタの配置を変えることにより、新たなダイオードを付加することなく、二組のスイッチ回路を直列に接続する回路構成例であり、同図(a)は、スイッチS1とスイッチS2を直列接続した構成例、同図(b)は、スイッチS2とスイッチS1を直列接続した主回路構成例である。
【0050】
なお、スイッチS1の直列ダイオードD1は、回路の接続位置を変えているだけで、回路としてスイッチS1に直列に接続しているが、全波整流回路の直流出力端にスイッチS1を直接接続する場合は、回路図上からは全波整流回路のダイオードで兼用できるが、スイッチS1のスイッチング周波数が高いので兼用するためには、高速ダイオードを用いる必要がある。
【0051】
ここで、共振パルス電流irに対するフィルタ回路としては、図10に示すように単相全波整流回路の交流側に配置するケースだけでなく、単相全波整流回路の直流側あるいはフィルタ用インダクタを単相全波整流回路の交流側に、キャパシタを直流側に配置することもできる。
【0052】
図12は、以上をもとに本発明のAC-DCコンバータ電源の実施形態として、図10に示した主回路構成例に対するスイッチング制御システムの構成例を示している。
【0053】
LC共振回路定数に対応してスイッチS1のオン期間Tw1とスイッチS1がオフと同時にスイッチ切り換え時の素子間の短絡を防ぐデッドタイムを挟んでスイッチS2を期間Tw2だけオンする信号を発生させるだけの極めて簡単に制御システムを構成することができると共に、スイッチS1とスイッチS2は相補的にオンオフ制御できるので、チャージポンプ動作も可能となり、ドライブ回路の簡単化も達成することができる。
【0054】
また、同図において前記直流負荷回路の出力電圧あるいは出力電流を検出し、それらの基準値と比較制御した量で、第一のスイッチ回路のスイッチング周期Ts(=1/fs)を設定することで、直流電圧一定制御あるいは直流電流一定制御システムを構築することができる。
【0055】
図13は、三相電源に対する本発明のAC-DC電源の主回路構成を示しており、単相の主回路構成に対して、単相全波整流回路を三相全波整流回路に置き換えるだけで容易に構成できるが、共振パルス電流irに対するフィルタ回路としては、主回路構成の簡単化のため直流回路側に配置している例を示している。
【0056】
以下に、本発明のAC-DC電源のソフトスイッチング動作や負荷端に抵抗負荷から平滑用コンデンサや等価起電力源を含むLED負荷などが接続されたときの電流波形制御効果、出力制御特性等の基本動作特性をシミュレーション解析により確認する。
【実施例0057】
図14は、本発明の単相AC-DC電源のシミュレーション回路であり、シミュレーション解析で用いた回路定数ならびに動作条件を示している。
【0058】
本発明の単相AC-DC電源のシミュレーション解析においては、電圧Ea=100V,周波数fa=60Hzの交流電圧を加え、直流負荷には、抵抗負荷R=50ΩとLED負荷(抵抗R=50Ωと電圧EB=VF==100Vの等価起電力源を直列接続)について行った。
【0059】
本発明の単相AC-DC電源の回路パラメータとしては、Lr=100uH,Cr=0.18uFからなるLC共振回路に対して、共振周期に対応するパルス幅を15usecとして、スイッチS1のスイッチング周波数fsを20kHzおよび40kHZで行い、電流制御用インダクタンスLdをLrと等しく選び、直流平滑キャパシタCdとしてCd=2000uFを用いた。
1)AC-DCコンバータ動作
【0060】
先ず、ソフトスイッチング制御AC-DCコンバータの基本動作を確認するために、本発明のAC-DC電源において、電流波形改善のための付加回路におけるスイッチS2をオフとし働かさないときのシミュレーション解析結果を示す。
【0061】
図15は、直流負荷としてR=50Ωの抵抗負荷を接続したときの各部の電圧電流波形であり、同図(b)は同図(a)の波形の最大電流付近の時間軸を拡大したときの波形を示している。
【0062】
同図(b)からは、スイッチS(S1)のスイッチ信号のオン、オフ時点における共振電流irは零になっており、零電流スイッチング動作が確認でき、同図(a)からは白熱電球など抵抗負荷が接続されている場合は、正弦波の交流電流iaが流れることが確認できる。
【0063】
図16は、等価起電力源が含まれる負荷を接続したときの動作波形を示しており、同図(a)は、LEDの等価負荷として、R=50ΩとE=100Vが直列接続されたとき、同図(b)は、R=50Ωの抵抗負荷と並列にCd=2000uFの平滑用キャパシタが接続されている負荷に対する解析結果である。
【0064】
いずれの場合も、交流電源電流iaは、共振回路キャパシタCrの両端電圧vrが負荷回路の電圧値以上のとき、交流電源の中央付近のみに電流が流れることが確認される。
2)AC-DC電源動作
【0065】
図17は、直流負荷として等価起電力源が含まれるLED負荷に平滑用キャパシタが接続されたとき、電流波形改善のための付加回路のスイッチS2によるスイッチング動作の有無によるAC-DC電源の制御動作波形の比較を示している。
【0066】
同図(a)は、スイッチS2による制御をかけない場合、同図(b)は制御をかけた時の動作波形であり、制御により直流出力電圧voも高くなり、交流電流波形iaが正弦波に改善できていることが確認できる。
【0067】
次に、図18は、共振制御スイッチS1のオン期間(Tw1=15usec)は一定のもと、スイッチング周波数fsを40kHzとしたときの解析結果を示している。
【0068】
同図(b)は、同図(a)の波形の最大電流付近の時間軸を拡大したときの波形を示しているが、共振電流ir似対してスイッチS2により電流idが制御されることにより、正弦波状の交流電流波形iaが確認できる。
【0069】
これに対して、図19は、スイッチング周波数fsを20kHzに下げたときの同様の動作波形結果が得られているが、図18の結果と比較して周波数を下げることにより直流出力電圧voが低下し、負荷電流ioも下がり、交流電流波形iaの大きさも近く制御できていることが確認できる。
【0070】
以上により、本発明のAC-DC電源では直流出力電圧の脈動がない一定の直流電圧制御出力が得られ、交流電流波形は正弦波に制御できることが分かる。
【0071】
図20は、本発明のAC-DC電源の共振用スイッチS1と波形改善用付加回路のスイッチS2のスイッチ信号と電流波形をスイッチング周波数fsが40kHzと20kHzの場合の時間軸を拡大表示した波形である。
【0072】
スイッチS1は、スイッチ信号と共振電流波形から、共振電流が零のときにスイッチ動作となっており、ソフトスイッチング動作が確認されるが、電流波形改善負荷回路の電流idが、低い値のときにスイッチS2がオンすることによって電流値が上昇しており、スイッチS2がオン時点でもほぼ零電流スイッチに近い状態でスイッチできることが確認できる。
【0073】
スイッチS2のオフ時点で、スイッチに流れていたインダクタLdの電流idは負荷の平滑キャパシタCdに転流できるスナバ動作としてスイッチ制御でき、ノイズの抑制効果が期待できる。
【実施例0074】
図21は、本発明のAC-DC電源の三相システムにおける動作確認を行ったシミュレーション回路であり、シミュレーション解析で用いた回路定数ならびに動作条件を示している。
【0075】
三相AC-DC電源のシミュレーション解析においては、上述した単相AC-DC電源の単相電源を三相電源とし、三相電源の線間電圧Ea=200V、周波数fa=60Hzの交流電圧を加え、三相全波整流回路とLCフィルタ回路を介して、単相の場合と同じ回路パラメータで等価LED負荷(R=50Ω、EB=100V)を接続して行った。
・ AC-DCコンバータ動作
【0076】
図22は、AC-DC電源回路でスイッチS2をオフ状態にしたときのシミュレーション解析結果であり、三相全波整流回路の波形が平滑キャパシタの電圧以上のときのみ流れるため、交流電流波形は120度通流幅の電流に不連続区間が生じていることが分かる。
・ AC-DC電源動作
【0077】
図23は、LC共振期間とほぼ等しい期間(Tw1=15usec))で、オンさせていたスイッチS1がオフした後、スイッチS2を短期間(Tw2=5usec)オンした時の動作波形であり、同図(b)に時間軸拡大波形からスイッチS1による電流irとスイッチS2による電流idの電流制御の結果、同図(a)にみられるように、120度通流幅の交流電流波形iaが流れていることが確認できる。
【0078】
図24は、スイッチング周波数fsを20kHzとした時の動作波形であり、直流出力電圧voは単相の場合と同様にスイッチング周波数fsによって低下しており、制御効果が確認できる。
【0079】
本発明のAC-DC電源は、降圧動作と昇圧動作が組み合わさって動作するため、LED照明用電源として用いた場合、単相システム、三相システムいずれの場合においても、直列接続されたLEDの順方向電圧降下の変動に応じて、また交流電源電圧の変動に応じて直流出力電圧が広範に変化し、一方で交流電源電流は、単相システムでは正弦波に、三相システムでは120度通流幅の振幅変調された波形となることが確認できている。
【0080】
以上のように、本発明のAC-DC電源は、ソフトスイッチング制御によっているため、スイッチング損失の低減、スイッチングノイズの低減に有効で、流入電流波形に優れた直流電源として幅広い分野での適用が期待できるものと思われる。
【符号の説明】
【0081】
100 … 交流電源
200 … AC-DC電源の主回路
210 … 共振電流に対するLCフィルタ
220 … ダイオードブリッジ整流回路
230 … 共振スイッチ回路
230-2 …共振スイッチと波形改善スイッチによるスイッチ回路
240 … 逆充電防止用ダイオード付きLC共振回路
250 … 出力側LC回路
250-2 …波形改善スイッチ回路を含む出力側LC回路
250-3 …ダイオードスイッチ回路を含む出力側LC回路
300 … 直流負荷
300-2…抵抗負荷
300-3…LEDの順方向電圧降下等価電圧源を含む抵抗負荷
400 …制御信号発生回路

図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11
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図19
図20
図21
図22
図23
図24
【手続補正書】
【提出日】2022-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全波整流回路を交流電源に接続し、前記全波整流回路の直流出力端子側に第一のスイッチ回路を第一のダイオードを介して共振インダクタLrの一端に接続することで前記共振インダクタLrと逆充電防止用ダイオード付きの共振キャパシタCrで構成するLC共振回路に接続し、前記共振インダクタLrの他端は前記共振キャパシタCrの一端に接続され、前記共振キャパシタCrの一端にインダクタLdと第二のダイオードを介して平滑用キャパシタCdに接続すると共に、前記インダクタLdと前記第二のダイオードの接続点に第二のスイッチ回路の一端を接続し、前記第二のスイッチ回路の他端を前記共振キャパシタCrの他端に接続し、前記平滑用キャパシタCdの両端に直流負荷回路を接続する交流―直流変換回路において、
前記第一のスイッチ回路を前記LC共振回路の共振周期で決まる一定の期間オンした後、直流出力電圧を制御するに必要なオフ期間を含む一定の周期で周期的にスイッチング動作を繰り返して、前記LC共振回路に流れる共振電流が零電流あるいは零電流に近い値のときに、前記第一のスイッチ回路をスイッチング制御することによりスイッチング損失の低減やスイッチングノイズの発生を低減し、
前記一定の周波数に対応するスイッチング周波数を変えることにより、前記交流電源の電圧波形の絶対値波形に比例した前記共振電流のパルス列の間隔を変えて、前記平滑用キャパシタCdにより平滑された直流出力電圧の大きさ変えると共に
前記第二のスイッチ回路を前記第一のスイッチ回路の周期的なオンオフ制御のオフ期間内に、同期して一定の期間オンしてオフすることにより、前記インダクタLdに流れ出る電流を制御し、前記第一のスイッチ回路に流れるパルス列の前記共振電流を前記全波整流回路の交流側又は直流側に設けられたLCフィルタ回路に通すことにより、前記直流負荷回路の負荷回路状態に係わらず、前記交流電源からの交流電流波形に比例した波形に制御することを特徴とするAC-DC電源。
【請求項2】
請求項1記載のAC-DC電源において、回路動作に影響することなく、前記第一のスイッチ回路と前記第二のスイッチ回路を直列接続するか、前記第二のスイッチ回路と前記第一のスイッチ回路を直列接続する主回路構成とすることにより、
前記第一のスイッチ回路と前記第二のスイッチ回路の二組のスイッチ回路間で、ドライブ電源のブートストラップ充電を可能として、前記二組のスイッチ回路のドライブ回路構成が簡単化できることを特徴とするAC-DC電源。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか1項に記載のAC-DC電源において、前記交流電源が単相電源の場合は、前記全波整流回路を単相全波整流回路とし、前記交流電源が三相電源の場合は、前記全波整流回路を三相全波整流回路とし、前記共振電流のパルス列の電流を前記LCフィルタ回路に通すことにより前記交流電源が単相正弦波の場合は、正弦波状の交流電流波形に、三相正弦波の場合は、線間電圧波形の120度通流幅の交流電流波形に制御することを特徴とするAC-DC電源。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のAC-DC電源において、設定する直流出力電圧あるいは直流出力電流の基準値と前記直流負荷回路の直流出力電圧あるいは直流出力電流の検出量との比較制御量で前記第一のスイッチ回路の前記スイッチング周波数を制御することにより、前記直流負荷回路の直流出力電圧あるいは直流出力電流が制御できることを特徴とするAC-DC電源。

【手続補正書】
【提出日】2022-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
全波整流回路を交流電源に接続し、前記全波整流回路の直流出力端子側に第一のスイッチ回路を第一のダイオードを介して共振インダクタLrの一端に接続することで前記共振インダクタLrと逆充電防止用ダイオードが並列接続された共振キャパシタCrで構成するLC共振回路に接続し、前記共振インダクタLrの他端は前記共振キャパシタCrの一端に接続され、前記共振キャパシタCrの一端にインダクタLdと第二のダイオードを介して平滑用キャパシタCdに接続すると共に、前記インダクタLdと前記第二のダイオードの接続点に第二のスイッチ回路の一端を接続し、前記第二のスイッチ回路の他端を前記共振キャパシタCrの他端に接続し、前記平滑用キャパシタCdの両端に直流負荷回路を接続する交流―直流変換回路において、
前記第一のスイッチ回路を前記LC共振回路の共振周期で決まる一定の期間オンした後、直流出力電圧を制御するに必要なオフ期間を含む一定の周期で周期的にスイッチング動作を繰り返して、前記LC共振回路に流れる共振電流が零電流あるいは零電流に近い値のときに、前記第一のスイッチ回路をスイッチング制御することによりスイッチング損失の低減やスイッチングノイズの発生を低減し、
前記第一のスイッチ回路に対するスイッチング周波数を変えることにより、前記交流電源の電圧波形の絶対値波形に比例した前記共振電流のパルス列の間隔を変えて、前記平滑用キャパシタCdにより平滑された直流出力電圧の大きさ変えると共に
前記第二のスイッチ回路を前記第一のスイッチ回路の周期的なオンオフ制御のオフ期間内に、同期して電流波形制御に必要な一定の期間オンしてオフすることにより、前記インダクタLdに流れ出る電流を制御し、前記第一のスイッチ回路に流れるパルス列の前記共振電流を前記全波整流回路の交流側又は直流側に設けられたLCフィルタ回路に通すことにより、
前記直流負荷回路の負荷回路状態に係わらず、前記交流電源に流れる交流電流波形を前記交流電源の交流電圧波形にほぼ比例した波形に制御することを特徴とするAC-DC電源。