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特開2023-141478ウェアラブル装置および送信制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141478
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ウェアラブル装置および送信制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230928BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G06Q50/10
H04N7/18 E
H04N7/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047816
(22)【出願日】2022-03-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】598057291
【氏名又は名称】株式会社富士通エフサス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内倉 勇作
(72)【発明者】
【氏名】小林 利史
(72)【発明者】
【氏名】安 炳和
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【テーマコード(参考)】
5C054
5L049
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054CD00
5C054CD03
5C054DA07
5C054EA01
5C054FC01
5C054FC12
5C054FE14
5C054GB02
5C054HA14
5C054HA24
5L049CC15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業中の情報漏洩を防止しつつ、保守作業に有効な情報を送信するウェアラブル装置及び送信制御方法を提供する。
【解決手段】Customer Engineerが、無線通信によってネットワークに接続し、サポートセンターサーバとの間でデータ通信を実行するスマートグラスを装着して、保守対象装置のメンテナンス作業を行うシステムにおいて、スマートグラス100は、カメラ101から映像データ141を取得する取得部151と、映像データ141に対してマスク処理を実行し、マスク処理を実行した映像データを、送信制御部153に出力するマスキング部152と、マスキング部152から取得する映像データを、サポートセンターサーバ50に送信する送信制御部153と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影範囲の映像を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された前記映像に含まれる対象物の領域を基にして、前記映像の第1の領域に対してマスク処理を実行し、前記第1の領域内の第2の領域に対して、前記マスク処理することを抑止するマスキング部と、
前記マスク処理が実行された映像の情報を外部装置に送信する送信部と、
を有することを特徴とするウェアラブル装置。
【請求項2】
前記マスキング部は、前記映像から所定のコードを検出し、前記所定のコードの領域を基準にして前記対象物の領域を特定することを特徴とする請求項1に記載のウェアラブル装置。
【請求項3】
前記マスキング部は、作業の開始時刻の後に前記撮影部に撮影された映像を基にして、前記対象物の領域から出力される印刷物の領域を、前記第2の領域として特定する処理を更に実行することを特徴とする請求項1に記載のウェアラブル装置。
【請求項4】
前記マスキング部は、前記映像の領域のうち、前記対象物の領域以外の領域と、印刷物の情報が含まれる領域とを、前記第1の領域として特定することを特徴とする請求項3に記載のウェアラブル装置。
【請求項5】
前記マスキング部は、前記映像から所定のコードを検出し、前記所定のコードの領域を基準にして、前記対象物となる印刷機の用紙排出口の領域を、前記第2の領域として特定する処理を更に実行することを特徴とする請求項1に記載のウェアラブル装置。
【請求項6】
撮影部によって撮影された映像に含まれる対象物の領域を基にして、前記映像の第1の領域に対してマスク処理を実行し、
前記第1の領域内の第2の領域に対して、前記マスク処理することを抑止し、
前記マスク処理が実行された映像の情報を外部装置に送信する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする送信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブル装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
CE(Customer Engineer)は、保守対象となる機器のメンテナンスを行い、機器の不具合等を見つけた場合に、該当部品を取り外して部品の交換や機器内の各種調整を行い、機器の修理を実施する。CEは、メンテナンス中に不具合の確認方法、部品の取り外し方法、修理方法等が分からない場合には、サポートセンターに電話で問い合わせを行う。
【0003】
サポートセンターに電話で問い合わせる方法では、CEによる電話の音声情報のみでサポートセンターのオペレータが内容を理解する必要があるため、具体的な不具合内容やCEが機器のどの部分を指し示しているのかを、サポートセンターのオペレータが理解できず、CEに的確な指示を行えない場合がある。CEに的確な指示を行えない場合には、不具合の可能性がある全ての部品交換や機器内の各種調整の実施を余儀なくされてしまい、メンテナンス時間が長引くことでCEへの負担が増えてしまう。
【0004】
CEへの負担を軽減させるために、VR(Virtual Reality)またはAR(Augmented Reality)等の機能を有するゴーグル型のヘッドセットをCEが現場で利用することがある。以下の説明では、VRまたはAR等の機能を有するゴーグル型のヘッドセットを「スマートグラス」と表記する。CEは、スマートグラスを装着してメンテナンスを行い、スマートグラスのカメラで、メンテナンス中の映像をサポートセンターに送信する。サポートセンターのオペレータは、メンテナンス中の映像をリアルタイムにかつ正確に把握できるため、CEに的確な指示を行うことができる。
【0005】
ここで、保守対象となる機器が設置されている場所は、顧客の執務室、コンピュータ室、データセンター等であり、かかる場所には、顧客の機密情報が存在する可能性がある。たとえば、CEがスマートグラスを装着してメンテナンスを行うと、メンテナンス中にCEが保守対象の機器とは関係のない場所を意図せず映してしまうことがある。この場合、スマートグラスのカメラの映像をそのままサポートセンターに送信すると、顧客の機密情報を外部に漏洩させてしまう。
【0006】
機密情報の漏洩を防止するために、保守対象の機器にID媒体を付与しておき、スマートグラスのカメラで撮影した映像に含まれるID媒体を基にして、映像の領域を、保守対象となる機器の領域と、保守対象の機器以外の領域とに分類し、保守対象の機器でない映像の領域をマスクする従来技術がある。また、スマートグラスのカメラで撮影された映像に文字情報が含まれる場合には、かかる文字情報をマスクすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-195191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、顧客の機密情報以外に、保守作業をサポートするために有効な情報までマスクしてしまう場合があった。
【0009】
たとえば、保守対象の機器がプリンタである場合、メンテナンス中に、故障したプリンタの印刷物を確認する場合がある。印刷物には、実際の印字障害(汚れ、にじみ、白抜け等)や、プリンタの設定情報等が印字されており、出力された印刷物に印字された文字は、保守作業に必要な情報となるが、上記の従来技術では、かかる印刷物の情報(たとえば、文字情報)はマスクされてしまい、サポートセンターのオペレータが参照することができず、CEをサポートできない場合がある。
【0010】
上記の問題は、プリンタ以外の機器(たとえば、文字情報等を出力する機器)であっても起こりうる問題である。
【0011】
1つの側面では、本発明は、作業中の情報漏洩を防止しつつ、保守作業に有効な情報を送信することができるウェアラブル装置および送信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の案では、ウェアラブル装置は、撮影部によって撮影された映像に含まれる対象物の領域を基にして、映像の第1の領域に対してマスク処理を実行し、第1の領域内の第2の領域に対して、マスク処理することを抑止し、マスク処理が実行された映像の情報を外部装置に送信する。
【発明の効果】
【0013】
作業中の情報漏洩を防止しつつ、保守作業に有効な情報を送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施例1に係るシステムの一例を示す図である。
図2図2は、本実施例に係るスマートグラスの処理を説明するための図である。
図3図3は、従来技術と比較したマスク処理の結果を示す図である。
図4図4は、本実施例に係るスマートグラスの構成を示す機能ブロック図である。
図5図5は、本実施例に係るスマートグラスの処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、マスク処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7図7は、スマートグラスが実行するその他の処理1を説明するための図である。
図8図8は、スマートグラスが実行するその他の処理2を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願の開示するウェアラブル装置および送信制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例0016】
図1は、本実施例1に係るシステムの一例を示す図である。図1に示すように、CE10は、スマートグラス100を装着して、保守対象装置20のメンテナンス作業を行う。本実施例では、一例として、保守対象装置20を「プリンタ」として説明を行う。
【0017】
スマートグラス100は、無線通信によって、ネットワーク30に接続し、サポートセンターサーバ50との間でデータ通信を実行する。スマートグラス100は、ウェアラブル装置の一例である。
【0018】
サポートセンターサーバ50は、サポートセンターのオペレータが操作する端末装置である。サポートセンターサーバ50は、スマートグラス100から送信される映像データを表示し、サポートセンターのオペレータは、かかる映像データを参照して、CE10のメンテナンス作業をサポートする。また、サポートセンターのオペレータは、サポートセンターサーバ50を操作して、スマートグラス100を装着したCE10と通話を行う。
【0019】
ここで、スマートグラス100は、CE10の周囲を撮影するカメラを備え、カメラが撮影した映像データを、サポートセンターサーバ50に送信する。映像データには、時系列の複数の画像フレーム(静止画像)が含まれる。本実施例では、適宜、スマートグラス100が実行する処理を、映像データに含まれる画像フレームを用いて説明を行う。
【0020】
スマートグラス100は、画像フレームを、サポートセンターサーバ50に送信する場合に、画像フレームの全領域のうち、顧客の機密情報を含んだ領域や、文字情報を含んだ領域をマスクする処理を行うことで、機密情報が漏洩することを抑止する。また、スマートグラス100は、マスクする処理を行う場合に、保守対象装置20の領域を基にして、画像フレームの全領域のうち、一部の領域については、マスクする処理を行うことを抑止する制御を行う。たとえば、スマートグラス100が、マスク処理を抑止する一部の領域は、保守作業中に、保守対象装置20の排出口から出力される印刷物の領域である。
【0021】
印刷物には、実際の印字障害(汚れ、にじみ、白抜け等)や、プリンタの設定情報等が印字されており、出力された印刷物に印字された文字は、保守作業に必要な情報となる。スマートグラス100は、マスクする処理の対象領域から、保守作業中に出力された印刷物の文字の領域がマスクされることを抑止し、印刷物の映像データ(画像フレーム)を、サポートセンターサーバ50に送信することを可能にする。
【0022】
図2は、本実施例に係るスマートグラスの処理を説明するための図である。スマートグラス100は、画像フレームIm10の領域を走査し、QR(Quick Response)コード(登録商標)5を検出する。スマートグラス100は、QRコード5から読み取った情報に、保守対象装置20の識別情報が含まれている場合、画像フレームIm10中のQRコード5の位置を基準とした所定領域を、保守対象装置20の領域25として特定する。また、スマートグラス100は、保守対象装置20の領域25を基準として、保守対象装置20の排出口の領域25aを特定する。
【0023】
スマートグラス100は、保守作業中に領域25aから印刷物が出力されたことを特定すると、特定した印刷物の領域を認識する。以下の説明では、保守作業中に領域25aから出力された印刷物の領域を、「印刷物領域26」と表記する。スマートグラス100は、各画像フレームにおいて、印刷物領域26を追従し、印刷物領域26がマスクされることを抑止する。
【0024】
図3は、従来技術と比較したマスク処理の結果を示す図である。図3において、画像フレームIm10-1は、スマートグラス100によってマスク処理された画像フレームを示す。画像フレームIm10-2は、従来技術に基づいてマスク処理された画像フレームを示す。
【0025】
たとえば、従来技術では、画像フレームIm10-2の領域のうち、保守対象装置20の領域25-2以外の領域がマスク処理され、保守作業に有効な印刷物の印刷物領域26-2についてもマスクされてしまう。
【0026】
一方、スマートグラス100は、画像フレームIm10-1の領域のうち、保守対象装置20の領域25-1以外の領域をマスク処理する一方で、印刷物領域26-1がマスク処理されることを抑止し、印刷物の情報(たとえば、印刷物の文字情報)をそのままにする。これによって、出力された印刷物に印字された文字の映像データ(画像フレーム)を、サポートセンターサーバ50に送信することを可能にする。
【0027】
次に、本実施例に係るスマートグラス100の構成例について説明する。図4は、本実施例に係るスマートグラスの構成を示す機能ブロック図である。図4に示すように、このスマートグラス100は、カメラ101と、マイク102と、スピーカ103と、ディスプレイ104と、加速度センサ105と、入力装置106と、無線通信部110と、記憶部140と、制御部150とを有する。
【0028】
カメラ101は、CE10の周囲を撮影するカメラである。たとえば、CE10の前方向の範囲を撮影するように、スマートグラス100に設置されているものとする。カメラ101は、撮影した映像データを、制御部150に出力する。カメラ101は、撮影部の一例である。
【0029】
マイク102は、マイク102の周辺の音を集音するマイクである。たとえば、マイク102は、CE10の音声を集音した音声データを、制御部150に出力する。
【0030】
スピーカ103は、制御部150から出力される音データの音を出力するスピーカである。たとえば、スピーカ103から出力される音は、サポートセンターサーバ50を操作するサポートセンターのオペレータからの音声である。
【0031】
ディスプレイ104は、制御部150から出力される各種の情報を表示する表示装置である。
【0032】
加速度センサ105は、加速度を測定するセンサである。加速度センサ105は、加速度の情報を、制御部150に出力する。
【0033】
入力装置106は、CE10が各種の操作をスマートグラスに対して行う場合に利用する入力装置である。入力装置106は、入力ボタンやタッチパネル等に対応する。たとえば、CE10は、カメラ101による撮影を開始する場合には、入力装置106を操作して「撮影開始指示」を入力する。CE10は、カメラ101による撮影を終了する場合には、入力装置106を操作して「撮影終了指示」を入力する。
【0034】
無線通信部110は、無線通信によってネットワーク30に接続し、ネットワーク30を介して、サポートセンターサーバ50とデータ通信を行う処理部である。無線通信部110は、無線通信装置の一例である。後述する制御部150は、無線通信部110を介して、サポートセンターサーバ50とデータをやり取りする。
【0035】
映像データ141は、カメラ101によって撮影された映像データである。たとえば、映像データ141は、時系列の画像フレームを含むデータである。
【0036】
制御部150は、取得部151と、マスキング部152と、送信制御部153と、通話制御部154とを有する。制御部150は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などによって実現できる。また、制御部150は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードワイヤードロジックによっても実現できる。
【0037】
取得部151は、カメラ101から映像データ141を取得する。取得部151は、取得した映像データ141を、記憶部140に登録する。たとえば、取得部151は、入力装置106から、撮影開始指示を受け付けた場合、カメラ101に撮影を開始させ、映像データ141の取得を開始する。取得部151は、入力装置106から、撮影終了指示を受け付けた場合、カメラ101に撮影を停止させ、映像データ141の取得を終了する。
【0038】
マスキング部152は、映像データ141に対してマスク処理を実行し、マスク処理を実行した映像データを、送信制御部153に出力する。たとえば、マスキング部152は、保守対象装置20の領域を特定する処理、印刷物領域26を特定する処理、マスキングを実行する処理を実行する。
【0039】
まず、保守対象領域の領域を特定する処理について説明する。マスキング部152は、画像フレームの全領域を走査して、QRコードを検出する。たとえば、マスキング部152は、QRコードの形状の特徴を保持しており、パターンマッチング等を実行して、QRコードを検出する。マスキング部152は、QRコードを検出すると、QRコードの情報を取得し、取得した情報に保守対象装置20の識別情報が含まれるか否かを判定する。マスキング部152は、QRコードの情報を、サポートセンターサーバ50に通知して、QRコードの情報に、保守対象装置20の識別情報が含まれているか否かの問い合わせ要求を行ってもよい。
【0040】
マスキング部152は、QRコードの情報に保守対象装置20の識別情報が含まれている場合には、画像フレームの全領域において、QRコードの位置を基準とする所定領域を、保守対象装置20の領域として特定する。マスキング部152は、保守対象装置20の領域を基準として、保守対象装置20の排出口の領域25aを特定する。図2で説明した例では、マスキング部152は、保守対象装置20の領域25と、排出口の領域25aを特定する。
【0041】
続いて、印刷物領域26を特定する処理について説明する。マスキング部152は、時系列の画像フレームの排出口の領域について、差分画像を生成する。マスキング部152は、差分画像を基にして、前フレームと後フレームとで異なる領域(動的な領域)を保守対象装置20から出力される印刷物の領域(印刷物領域26)として特定する。また、上記のように、映像データ141は、撮影開始指示が入力された後に、撮影された映像データであるため、マスキング部152が特定する印刷物領域26は、保守作業中に、保守対象装置20から出力された印刷物の領域であるといえる。なお、保守作業を行う前に、保守対象装置20に出力された印刷物の領域は、静的な領域となるため、印刷物領域26として特定されることはない。
【0042】
マスキング部152は、印刷物領域26を特定すると、後の画像フレームにおいて、印刷物領域26を追跡する。たとえば、マスキング部152は、印刷物領域26の形状特徴を保持し、次の画像フレームの領域に対して、印刷物領域26の形状特徴と同様の形状特徴となる領域を、次の画像フレームにおける印刷物領域26として特定する処理を繰り返し実行する。
【0043】
なお、上記で説明したマスキング部152が印刷物領域26を特定して追跡する処理は一例である。マスキング部152は、YOLO(YOU Only Look Once)、SSD(Single Shot Multibox Detector)、RCNN(Region Based Convolutional Neural Networks)などの既存の検出アルゴリズムを用いて、画像フレーム(映像データ141)から印刷物領域26を検出し、追跡を行ってもよい。
【0044】
続いて、マスキングする処理について説明する。マスキング部152は、画像フレームの全領域のうち、保守対象装置20の領域以外の領域をマスク処理の対象領域候補として設定する。
【0045】
また、マスキング部152は、画像フレームの全領域を走査して、文字が記載された領域を検出する。マスキング部152は、画像フレームの全領域のうち、文字が記載された領域を、マスク処理の対象領域候補として設定する。
【0046】
マスキング部152は、マスク処理の対象領域候補から、印刷物領域26を除外することで、マスク処理の対象領域を特定する。マスキング部152は、画像フレームのマスク処理の対象領域をマスクする。たとえば、マスキング部152は、所定の画素値によって、対象領域を塗りつぶす。
【0047】
マスキング部152は、上記処理を繰り返し実行することで、時系列の画像フレームに対してマスク処理を実行し、マスク処理を実行した映像データ(時系列の画像フレーム)を、送信制御部153に出力する。
【0048】
送信制御部153は、マスキング部152から取得する映像データを、サポートセンターサーバ50に送信する。送信制御部153は、入力装置106から、撮影終了指示を受け付けた場合、映像データを、サポートセンターサーバ50に送信する処理を停止する。
【0049】
通話制御部154は、スマートグラス100と、サポートセンターサーバ50との通話を制御する処理部である。たとえば、通話制御部154は、スマートグラス100と、サポートセンターサーバ50との通話回線を確立し、マイク102から入力されるCE10の音声データを、サポートセンターサーバ50に送信する。通話制御部154は、サポートセンターサーバ50から送信されるサポートセンターのオペレータの音声データを、スピーカ103に出力する。
【0050】
次に、本実施例に係るスマートグラス100の処理手順の一例について説明する。図5は、本実施例に係るスマートグラスの処理手順を示すフローチャートである。図5に示すように、スマートグラス100の取得部151は、撮影開始指示を受け付けた場合、映像の撮影を開始させ、映像データ141を記憶部140に登録する(ステップS101)。
【0051】
スマートグラス100のマスキング部152は、画像フレームからQRコードを検出する(ステップS102)。マスキング部152は、QRコードの情報を読み取り、保守対象装置20の識別情報が含まれるか否かを判定する(ステップS103)。
【0052】
マスキング部152は、QRコードの情報に、保守対象装置20の識別情報が含まれる場合には(ステップS104,Yes)、ステップS105に移行する。一方、マスキング部152は、QRコードの情報に、保守対象装置20の識別情報が含まれない場合には(ステップS104,No)、ステップS102に移行する。
【0053】
マスキング部152は、マスク処理を実行する(ステップS105)。スマートグラス100の送信制御部153は、マスク処理が行われた映像データを、サポートセンターサーバ50に送信する(ステップS106)。
【0054】
続いて、図5のステップS105に示したマスク処理の処理手順の一例について説明する。図6は、マスク処理の処理手順を示すフローチャートである。図6に示すように、スマートグラス100のマスキング部152は、QRコードの位置を基準として、保守対象装置20の領域および排出口の領域を特定する(ステップS201)。
【0055】
マスキング部152は、時系列の画像フレームの排出口の領域に関する差分画像を基にして、保守対象装置から出力される印刷物の印刷物領域を特定する(ステップS202)。マスキング部152は、画像フレームから文字情報の領域を特定する(ステップS203)。
【0056】
マスキング部152は、画像フレームの全領域のうち、保守対象装置20の領域以外の領域と、文字情報の領域とをマスク処理の対象領域候補に設定する(ステップS204)。マスキング部152は、マスク処理の対象領域候補から、印刷物領域を除外した領域を、マスク処理の対象領域に設定する(ステップS205)。
【0057】
マスキング部152は、対象領域を所定の画素値で塗りつぶす(ステップS206)。
【0058】
なお、図6に示したフローチャートの処理内容は一例である。たとえば、スマートグラス100は、画像フレームの全領域から、保守対象装置の領域および印刷物領域を除いた領域を、対象領域に設定し、マスク処理を行ってもよい。
【0059】
次に、本実施例に係るスマートグラス100の効果について説明する。スマートグラス100は、映像データを、サポートセンターサーバ50に送信する場合に、映像データの画像フレームの全領域のうち、顧客の機密情報を含んだ領域や、文字情報を含んだ領域をマスクする処理を行う。スマートグラス100は、マスクする処理を行う場合に、保守対象装置20の領域を基にして、画像フレームの全領域のうち、一部の領域については、マスクする処理を行うことを抑止する制御を行う。たとえば、マスク対象から除外する一部の領域は、保守作業中に保守対象装置20から出力される印刷物の領域である。
【0060】
印刷物には、実際の印字障害(汚れ、にじみ、白抜け等)や、プリンタの設定情報等が印字されており、出力された印刷物に印字された文字は、保守作業に必要な情報となる。スマートグラス100は、マスクする処理の対象領域から、保守作業中に出力された印刷物の文字の領域がマスクされることを抑止し、印刷物に印字された文字の映像データ(画像フレーム)を、サポートセンターサーバ50に送信することを可能にする。すなわち、作業中の情報漏洩を防止しつつ、保守作業に有効な情報を送信することができる。
【0061】
スマートグラス100は、映像データの画像フレームから、QRコードを検出し、QRコードの位置を基準として、保守対象装置20の領域および排出口の領域を特定する。これによって、印刷物が出力される領域を絞り込むことができ、印刷物領域を特定するための処理負荷を軽減させることができる。
【0062】
スマートグラス100は、保守作業中にカメラに撮影された映像データを基にして、印刷物の印刷物領域を特定する。これによって、保守作業の過程で保守対象装置20から出力される印刷物に絞って、印刷物領域を設定して、マスク処理を抑止することができる。
【0063】
ところで、上述したスマートグラス100の処理は一例であり、スマートグラス100は、上記処理以外の処理を実行してもよい。ここでは、スマートグラス100のその他の処理1~3について説明する。
【0064】
スマートグラス100の「その他の処理1」について説明する。上記の実施例で説明した保守対象装置20は、小型のプリンタを想定して説明を行ったが、大型のプリンタの場合、画像フレームに保守対象装置全体が収まらない場合や、収まったとしても排出口の領域が画像フレームの中で小さくなってしまうことから、保守対象装置の領域を特定して、保守対象装置の排出口の領域を特定することが困難になる。このため、保守対象装置の排出口付近にQRコードを予め設定しておくことで、大型プリンタの場合においても排出口の領域を特定することが可能となる。
【0065】
図7は、スマートグラスが実行するその他の処理1を説明するための図である。図7の画像フレームIm20は、スマートグラス100のカメラ101が撮影した映像データに含まれる画像フレームである。スマートグラス100のマスキング部152は、画像フレームIm20の全領域を走査して、QRコード6の位置を検出する。
【0066】
マスキング部152は、QRコード6から読み取った情報に、保守対象装置(大型プリンタ)の識別情報が含まれている場合、画像フレームIm20中のQRコード6の位置を基準とした保守対象装置の排出口の領域27を特定する。大型プリンタでは、用紙の排出口28が、左右にスイングしながら印刷物の出力を行うため、領域27は、印刷物の領域となる。
【0067】
たとえば、スマートグラス100のマスキング部152は、画像フレームIm20の全領域のうち、領域27のマスク処理を抑止する。すなわち、スマートグラス100のマスキング部152は、画像フレームIm20の全領域のうち、領域27以外の領域に対してマスク処理を行う。
【0068】
このように、スマートグラス100は、保守対象装置が大型プリンタである場合には、QRコードの位置を基準とした領域27に対するマスク処理を抑止することで、保守作業に有効な文字情報を、サポートセンターサーバ50のオペレータに通知することができる。
【0069】
スマートグラス100の「その他の処理2」について説明する。大型のプリンタの場合、排出口以外の領域でも印字状態が確認できる領域が存在する。このためかかる領域に、QRコードを予め設定しておくことで、印字状態が確認できる領域がマスク処理されることを抑止できる。
【0070】
図8は、スマートグラスが実行するその他の処理2を説明するための図である。図8に示す保守対象装置60は、覗き箇所60aと、排出口60bとが含まれる。保守対象装置60は、大型プリンタに対応する。覗き箇所60aは、保守対象装置60の内部の動作や印刷状況をオペレータや作業員が確認する箇所である。たとえば、作業員は、覗き箇所60aの内部に、覗き箇所を識別する情報を設定したQRコードを付与しておく。なお、排出口60bからは、印刷物が出力される。
【0071】
スマートグラス100のマスキング部152は、カメラ101が撮影した映像データの画像フレームを走査して、QRコードを検出する。スマートグラス100は、QRコード6から読み取った情報に、覗き箇所60aを識別する情報が含まれている場合、画像フレームの領域に対するマスク処理をスキップする。これによって、スマートグラス100のカメラ101が撮影した映像データであって、覗き箇所60aの内部の様子を含む映像データを、サポートセンターサーバ50のオペレータに通知することができる。
【0072】
スマートグラス100の「その他の処理3」について説明する。上記の実施例では、スマートグラス100は、保守作業中に保守対象装置20から出力された印刷物の印刷物領域26を追跡し、印刷物領域26に対するマスク処理を抑止する場合について説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、スマートグラス100のマスキング部152は、保守作業中に保守対象装置20から出力された印刷物を検出した場合に、保守対象装置20の排出口の領域25aに対するマスク処理を抑止する処理を行い、印刷物領域26を追跡する処理をスキップしてもよい。
【0073】
保守作業中に保守対象装置20から出力された印刷物が、保守対象装置20の排出口の領域25aに存在し続ける場合があり、印刷物領域26を追跡する処理をスキップすることで、スマートグラス100の処理負荷を軽減させることができる。
【符号の説明】
【0074】
100 スマートグラス
101 カメラ
102 マイク
103 スピーカ
104 ディスプレイ
105 加速度センサ
106 入力装置
110 無線通信部
140 記憶部
141 映像データ
150 制御部
151 取得部
152 マスキング部
153 送信制御部
154 通話制御部
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8