(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141504
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20230928BHJP
A47K 1/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E03C1/042 C
A47K1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047855
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 啓之
(72)【発明者】
【氏名】日影 正弘
(72)【発明者】
【氏名】神野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】中野 太久馬
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美香
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA03
2D060BC00
2D060BE11
2D060BE15
2D060BF01
(57)【要約】
【課題】デザイン性に優れた水栓装置を提供する。
【解決手段】水栓装置Aは、ミラーキャビネット40と、ミラーキャビネット40の下方に配置された立壁14と、立壁14に取り付けられた水栓機能部22と、水栓機能部22とは別体の部材として設けられ、水栓機能部22を操作するための吐止水用操作部材60と、ミラーキャビネット40に取り付けられ、吐止水用操作部材60を操作可能な状態に支持するカバー50と、吐止水用操作部材60に設けられ、カバー50がミラーキャビネット40に取り付けられたときにのみ、操作力を水栓機能部22に伝達する操作力伝達部64と、を備えている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーキャビネットと、
前記ミラーキャビネットの下方に配置された立壁と、
前記立壁に取り付けられた水栓機能部と、
前記水栓機能部とは別体の部材として設けられ、前記水栓機能部を操作するための操作部材と、
前記ミラーキャビネットに取り付けられ、前記操作部材を操作可能な状態に支持するカバーと、
前記操作部材に設けられ、前記カバーが前記ミラーキャビネットに取り付けられたときにのみ操作力を前記水栓機能部に伝達する操作力伝達部と、を備えている水栓装置。
【請求項2】
前記水栓機能部は、前記操作部材からの押し操作力を受けることによって進退移動する被操作部を有し、
前記操作力伝達部と前記被操作部の少なくとも一方には、前記被操作部の進退方向と直交する操作力伝達面が設けられている請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記操作力伝達部は、
板厚方向を前記被操作部の進退方向と直交する方向に向けた平板部と、
前記平板部から板厚方向に突出したリブとを有している請求項2に記載の水栓装置。
【請求項4】
前記被操作部は、前記操作部材からの押し操作を受けることによって、後退位置と進出位置とに交互に保持され、
前記操作部材は、前記被操作部が前記後退位置から前記進出位置へ移動するときに、前記被操作部からの押圧力によって前記カバーから突き出した突出位置へ押し動かされる請求項2及び請求項3のいずれか1項に記載の水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓を洗面台に設けた水栓装置が開示されている。水栓は、水栓本体と、水栓本体を前面側から覆うカバーとを備えている。水栓本体とカバーは、洗面台のカウンター部から立ち上がった背面板に取り付けられている。洗面台の上方にはミラーキャビネットが配置されている。カバーは、ミラーキャビネットの下端縁に沿うように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような水栓装置は、洗面台とミラーキャビネットは建物の躯体に対して個別に固定されるため、ミラーキャビネットの下端縁とカバーの上端縁とが綺麗に揃わなくなり、デザイン性が低下することが懸念される。デザイン性向上を図るためには、カバーをミラーキャビネットに取り付ければよい。カバーをミラーキャビネットに取り付ける場合、更にデザイン性を高める手段として、水栓本体の操作部を、カバーの前面の開口に露出させることが考えられる。しかし、水栓本体は洗面台に取り付けられているため、操作部とカバーの開口との位置がずれる虞がある。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、デザイン性に優れた水栓装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水栓装置は、ミラーキャビネットと、前記ミラーキャビネットの下方に配置された立壁と、前記立壁に取り付けられた水栓機能部と、前記水栓機能部とは別体の部材として設けられ、前記水栓機能部を操作するための操作部材と、前記ミラーキャビネットに取り付けられ、前記操作部材を操作可能な状態に支持するカバーと、前記操作部材に設けられ、前記カバーが前記ミラーキャビネットに取り付けられたときにのみ操作力を前記水栓機能部に伝達する操作力伝達部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1の洗面化粧台を斜め上前方から見た斜視図
【
図3】ミラーキャビネットとカバーを外した状態を斜め上前方から見た部分拡大斜視図
【
図5】水栓機能部を立壁に取り付けた状態を斜め上後方から見た斜視図
【
図6】ミラーキャビネットを斜め下前方から見た部分拡大斜視図
【
図8】吐止水用操作部材が吐水位置にある状態の部分拡大平断面図
【
図9】吐止水用操作部材が吐止水位置にある状態の部分拡大平断面図
【
図10】吐止水用操作部材を斜め上前方から見た斜視図
【
図11】吐止水用操作部材を斜め上後方から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本開示を具体化した実施形態1を
図1~
図11を参照して説明する。本実施形態1の水栓装置Aは、洗面化粧台として使用されるものである。水栓装置Aは、床面に載置される洗面台10と、水栓機能部22と、ミラーキャビネット40と、カバー50と、吐止水用操作部材60(操作部材)とを備えている。水栓機能部22は、洗面台10に取り付けられている。ミラーキャビネット40は、洗面台10の上方において建物の壁面Wに固定されている。
【0009】
以下の説明において、水栓装置Aの前後の方向については、使用者が水栓装置A(洗面化粧台)を利用する位置に立ったときに、使用者から見て手前側を前側、使用者から見て奥側(壁面W側)を後側と定義する。
図1,3~11におけるX軸の正方向が、前方である。水栓装置Aの左右の方向については、使用者が水栓装置Aを使用する位置に立ったときに、使用者から見た向きを、そのまま、左方及び右方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。
図1~11におけるY軸の正方向が、右方である。上下の方向については、
図1~7,10,11におけるZ軸の正方向を、上方と定義する。上下方向と高さ方向を同義で用いる。
【0010】
図1に示すように、洗面台10は、箱形の下側収納部11と、下側収納部11の上面に配置された天板12と、天板12に取り付けたボウル部13と、天板12の後端縁から上方へ立ち上がった立壁14とを有する。
【0011】
図2,3に示すように、立壁14の前面上端部には、上面が開放された箱形のケース15が取り付けられている。ケース15の背面部と底面部には、挿通孔16が形成されている。ケース15には、吐水部17が取り付けられている。吐水部17は、屈曲した形状をなし、下向きの給水ポート18と、斜め下前方へ延びたノズル19とを有する。吐水部17は、背面部の挿通孔16と立壁14の連通孔20(
図5参照)を貫通した状態で、ネジ止めによってケース15に固定されている。給水ポート18は、立壁14の後面側に配置される。ノズル19は、底面部の挿通孔16を貫通し、ケース15の下方へ突出している。
【0012】
立壁14のうち左右方向中央よりも右方の領域には、水栓機能部22が取り付けられている。
図3~5に示すように、水栓機能部22は、混合栓23と吐止水用バルブ33とを備えている。混合栓23と吐止水用バルブ33は同じ高さに配置され、混合栓23は吐止水用バルブ33よりも右方に位置する。
【0013】
混合栓23と吐止水用バルブ33は、立壁14に対し貫通した状態で取り付けられている。立壁14には、立壁14を前後方向に貫通する左右一対の水栓用取付孔24が形成されている。
図7,8には、左側の水栓用取付孔24のみを図示する。混合栓23と吐止水用バルブ33は、いずれも、前後に分離可能な構造である。混合栓23と吐止水用バルブ33は、いずれも、立壁14を前後に貫通し、フランジ部25によって立壁14を前後から挟み込むことによって立壁14に固定されている。後述するように混合栓23と吐止水用バルブ33には配管26,27,28,29,36が接続される。配管接続時の組付け誤差を吸収するために、立壁14に対する混合栓23と吐止水用バルブ33の位置は、上下方向及び左右方向へ調整することが可能となっている。
【0014】
図4,5に示すように、混合栓23には、上水道(図示省略)に繋がる給水配管26の下流端と、給湯器(図示省略)に繋がる給湯配管27の下流端と、第1混合水配管28の上流端と、第2混合水配管29の上流端と、が接続されている。給水配管26と給湯配管27と第1混合水配管28と第2混合水配管29は、いずれも、立壁14よりも後方(壁面W側)に配管されている。給水配管26と給湯配管27を通して混合栓23に供給された水(水と湯の両方を含む)は、第1混合水配管28及び第2混合水配管29へ吐出される。
【0015】
混合栓23は、下方へ突出した調節用操作部材30を有する。調節用操作部材30は、立壁14よりも前方に配置されている。第1混合水配管28及び第2混合水配管29へ吐出される水の温度と流量は、調節用操作部材30の操作によって調節することができる。調節用操作部材30を前方へ動かすと流量が増大し、調節用操作部材30を後方へ動かすと流量が低下する。調節用操作部材30を最後端位置まで移動させると、第1及び第2混合水配管28,29への吐水が停止する。調節用操作部材30を時計回り方向へ回転させると、給湯配管27から混合栓23に供給される湯の量が増大し、第1及び第2混合水配管28,29へ吐出される水の温度が高くなる。調節用操作部材30を反時計回り方向へ回転させると、第1及び第2混合水配管28,29へ吐出される水の温度が低下する。調節用操作部材30を反時計回り方向における回転端まで回転させると、給湯配管27から混合栓23への湯の供給が停止する。
【0016】
吐止水用バルブ33は、開閉弁機構が内蔵されたバルブ本体部34と、バルブ本体部34の前面に配置された被操作部35とを有する。バルブ本体部34には、第2混合水配管29の下流端と、第3混合水配管36の上流端とが接続されている。第3混合水配管36は、立壁14の後方に配管されている。混合栓23の吐出ポートに接続された第1混合水配管28の下流端と、吐止水用バルブ33の吐出ポートに接続された第3混合水配管36の下流端は、共通の合流配管(図示省略)に接続されている。吐止水用バルブ33は、水の温度と流量を調節する機能を有しない開閉弁である。
【0017】
被操作部35は、立壁14よりも前方に配置され、バルブ本体に対して前後方向へ相対移動し得るようになっている。被操作部35の前面は、後述する吐止水用操作部材60からの操作力(押込力)を受けるための操作力受け面37(操作力伝達面)として機能する。操作力受け面37は、被操作部35の移動方向と直交する平面、即ち立壁14に対する吐止水用バルブ33の位置調整方向と平行な平面からなる。吐止水用バルブ33を前方から見た正面視において、被操作部35(操作力受け面37)は円形をなしている。
【0018】
被操作部35は、前方からの押込力を受ける度に、止水位置(
図9参照)と、止水位置よりも前方へ水平に進出した吐水位置(
図8参照)とに交互に保持される。被操作部35が止水位置に保持されている状態では、吐止水用バルブ33は、第3混合水配管36への吐水を停止する止水モードに維持される。止水位置の被操作部35が前方から押されると、被操作部35は、一旦後方へ移動した後、バネ(図示省略)の弾力によって前方の吐水位置へ移動し、吐水位置に保持される。
【0019】
被操作部35が吐水位置へ移動すると、吐止水用バルブ33は、第2混合水配管29から供給された水を第3混合水配管36へ吐出する吐水モードに切り替わり、吐水モードを維持する。吐止水用バルブ33は、水の温度と流量を調節する機能を有していない。したがって、吐止水用バルブ33から第3混合水配管36へ吐出される水の温度と流量は、混合栓23で規定されている温度と流量によって決まる。吐水モードにおいて、吐水位置の被操作部35が前方から押されると、被操作部35は後方の止水位置へ移動し、止水位置に保持される。被操作部35が止水位置へ移動すると、吐止水用バルブ33は、第3混合水配管36への吐水を停止する止水モードに切り替わり、止水モードを維持する。
【0020】
図1に示すように、ミラーキャビネット40は、上側収納部41と、3枚のミラー42とを有する。
図6に示すように、上側収納部41は、収納ボックス43と幕板部45とコンセントボックス46とを一体形成した部材である。収納ボックス43は、前面が開口した箱状をなし、左右に区画された3つの収納室44を有している。3枚のミラー42は、収納ボックス43に取り付けられていて、3つの収納室44の前面の開口を個別に開閉するようになっている。
【0021】
幕板部45は、収納ボックス43の前面下端縁部から下方へ延出している。コンセントボックス46は、幕板部45の右端部から下方へ突出している。幕板部45のうちコンセントボックス46よりも少し左方の位置には、左右に間隔を空けた一対のカバー用取付孔(図示省略)が形成されている。幕板部45の左端部にも、1つのカバー用取付孔(図示省略)が形成されている。コンセントボックス46には、コンセント47が設けられている。ミラー42が閉じた状態では、幕板部45がミラー42によって前方から覆い隠される。
【0022】
ミラーキャビネット40には、合成樹脂製のカバー50と、合成樹脂製の吐止水用操作部材60と、が取り付けられている。
図7に示すように、カバー50は、左右方向に細長い底板部51と、底板部51の前端縁から上方立ち上がった左右方向に細長い前板部52と、左側板部53L(
図7参照)と、右側板部53R(
図7参照)を有する。左側板部53Lは、底板部51及び前板部52の左側縁部に連なっている。右側板部53Rは、底板部51の右側縁部から低く立ち上がっている。カバー50の内側の空間(前板部52の上端よりも下方で、底板部51の後端よりも前方の空間)は、収容空間54として機能する。カバー50の底板部51のうち左右方向中央よりも右方の領域には、操作用開口部55と、吐水用開口部56とが形成されている。
【0023】
図6,7に示すように、前板部52のうち左右方向中央よりも右方の領域には、ガイド用開口部57が形成されている。カバー50を前方から見た正面視において、ガイド用開口部57の開口形状は、上下方向の高さ寸法に比べて左右方向の幅寸法が大きい横長の長方形である。上下方向におけるガイド用開口部57の開口範囲は、前板部52の上下方向中央高さよりも下方の領域のみである。詳細には、ガイド用開口部57は、前板部52の下半分の領域のみに開口している。
図8,9に示すように、前板部52には、吐止水用操作部材60を前後方向に進退移動し得るようにガイドするためのガイド部58が形成されている。ガイド部58は、横長の筒状をなし、ガイド用開口部57の開口縁から後方(カバー50の内側)へ延出している。
【0024】
前板部52の前面のうちガイド用開口部57を包囲する領域には、前方へ突出した形状の膨出部59が形成されている。膨出部59は、ガイド用開口部57に接近するほど、前方への突出量が大きくなる膨出形状である。膨出部59の前端面にガイド用開口部57が開口している。
【0025】
図10,11に示すように、吐止水用操作部材60は、ボタンベース61とボタンヘッド68とを組み付けて一体化させた部材である。吐止水用操作部材60は、高さ寸法に比べて幅寸法の大きい偏平なトラック形状をなす。ボタンベース61の左右両端部には、後方へ片持ち状に延出した一対の弾性係止片62が形成されている。弾性係止片62の後端部には、外向きの係止突起63が形成されている。弾性係止片62は、左右方向への弾性変形が可能である。
【0026】
ボタンベース61の幅方向中央部には、後方へ片持ち状に突出した操作力伝達部64が形成されている。操作力伝達部64は、平板部65と、上下一対のリブ66とを有する。平板部65は、前後方向に細長く、板厚方向を上下方向に向けた形状をなす。一対のリブ66は、前後方向に細長く延びていて、平板部65の上下両面から直角に突出した形状である。リブ66は、平板部65の左右方向中央位置に配置され、平板部65の先端から後端に至って形成されている。
【0027】
吐止水用操作部材60を後方から見た背面視において、操作力伝達部64は、高さ寸法に比べて幅寸法の大きい十字形をなす。操作力伝達部64の後端面は、吐止水用バルブ33の操作力受け面37に対して前方から当接する操作力付与面67(操作力伝達面)として機能する。操作力付与面67の幅寸法と高さ寸法は、操作力受け面37の直径よりも小さい寸法に設定されている。
【0028】
ボタンヘッド68は、高さ寸法に比べて幅寸法の大きい偏平な形状をなし、ボタンベース61の前端部に組み付けられている。ボタンヘッド68の前面は、操作面69として機能する。ボタンヘッド68の外周面のうち後端側領域(
図8,9における想像線よりも後方の領域)には、識別部70が形成されている。識別部70は、ボタンヘッド68の外周面の前端側領域及び操作面69に対して、表面処理、色調、光沢度等を異ならせたものである。識別部70の一例として、サテン仕上げの表面処理を施したものがある。
【0029】
吐止水用操作部材60は、その一部をガイド部58内に収容した状態で、カバー50の前板部52に取り付けられている。ボタンベース61の前端側領域と、ボタンヘッド68の後端側領域とがガイド部58内に収容されている。吐止水用操作部材60の前端部(ボタンヘッド68の前端側領域一部)は、カバー50の前面の平面領域よりも前方に位置し、膨出部59(ガイド部58)の最前端から前方へ突出している。吐止水用操作部材60は、ガイド部58によってガイドされることにより、止水位置(
図9参照)と、止水位置よりも前方の吐水位置(
図8参照)との間で進退移動する。
【0030】
図6,7に示すように、前板部52の上端縁の右端部には、左右に間隔を空けた一対の取付部71が形成されている。前板部52の上端縁の左端部にも、1つの取付部71が形成されている。取付部71は、前板部52から上方へ突出した形状であり、貫通孔72を有している。カバー50は、幕板部45に取り付けられている。3つの取付部71は幕板部45の前面に重ねられ、各取付部71の貫通孔72が幕板部45のカバー用取付孔(図示省略)に整合している。貫通孔72とカバー用取付孔に貫通させた固定部材73によって、カバー50が幕板部45に固定されている。
【0031】
カバー50は、収納ボックス43の下面を覆い、立壁14の前面上端縁部を覆うように配置されている。カバー50の前板部52は、幕板部45の下方に隣接するように配置される。前板部52の前面(膨出部59が形成されていない平面領域)と幕板部45の前面は、前後方向において同じ位置に配置されている。膨出部59を含む前板部52の全体は、閉じた状態のミラー42の前面よりも後方に位置する。カバー50は、コンセントボックス46と同じ高さに配置され、コンセントボックス46の左方に隣り合うように配置される。カバー50は、閉じた状態のミラー42の下端よりも下方に並ぶように配置されている。カバー50の上端と、ミラー42の下端は、同じ高さに位置する。調節用操作部材30は、操作用開口部55を貫通して、カバー50の底板部51よりも下方へ突出している。吐水部17の一部とケース15は、カバー50の収容空間54内に収容される。吐水部17のノズル19は、吐水用開口部56を貫通して、カバー50(底板部51)よりも下方へ突出している。
【0032】
カバー50をミラーキャビネット40に取り付けた状態では、吐止水用操作部材60の操作力付与面67が、吐止水用バルブ33の被操作部35の操作力受け面37に対して前方から当接する。吐止水用操作部材60が止水位置にある状態では、被操作部35が止水位置に押し込まれ、吐止水用バルブ33が止水モードに保持される。吐止水用操作部材60が止水位置にある状態では、操作面69が、閉じた状態にあるミラー42の前面と、前後方向において概ね同じ位置にある。このとき、識別部70は、その全体がガイド部58内に収容されているため、識別部70を目視することができない。
【0033】
止水位置の吐止水用操作部材60の操作面69を前方から押すと、この操作力が、吐止水用操作部材60の操作力付与面67から被操作部35の操作力受け面37に伝達される。吐止水用操作部材60と被操作部35は、一旦僅かに後退した後、被操作部35側からのバネ(図示省略)による押し戻し力によって前方へ押し返される。押し返された吐止水用操作部材60が吐水位置に到達すると、弾性係止片62の係止突起63がガイド部58の後端縁に引っ掛かることによって、吐止水用操作部材60と被操作部35が吐水位置に保持される。吐止水用操作部材60が吐水位置へ移動すると、吐止水用バルブ33が吐水モードに切り替わる。
【0034】
吐水位置にある吐止水用操作部材60の操作面69を、吐止水用バルブ33のバネ(図示省略)の弾力に抗して押し操作すると、この操作力が、吐止水用操作部材60の操作力付与面67から被操作部35の操作力受け面37に伝達される。吐止水用操作部材60と被操作部35は、一体となって後方へ移動し、止水位置に保持される。吐止水用操作部材60が止水位置へ移動すると、吐止水用バルブ33が止水モードに切り替わる。
【0035】
吐止水用操作部材60が吐水位置にある状態では、操作面69が、閉じた状態にあるミラー42の前面よりも前方へ突出した位置にある。このとき、識別部70がガイド用開口部57(膨出部59の最前端)よりも前方へ露出するので、目視することができる。識別部70を目視できるか否かによって、吐止水用操作部材60が止水位置と吐水位置のいずれに位置しているか(吐止水用バルブ33が止水モードと吐水モードのいずれであるか)を識別することができる。
【0036】
吐止水用操作部材60の上端縁と、ミラー42の下端縁との間には指掛け用空間75(
図1参照)が空いている。ミラー42を開くときに、指を、指掛け用空間75に指を差し入れてミラー42の下端部に引っ掛けることができるので、指が吐止水用操作部材60に当たる虞はない。使用者の掌や指先が汚れているような場合に、手の甲で吐止水用操作部材60を押しても、手の甲がミラー42の下端部に当たる虞はない。
【0037】
吐止水用バルブ33における吐水モードと止水モードとの切替えは、吐止水用操作部材60の前面の操作面69を押すことによって行われるので、吐止水用操作部材60を2本の指で摘む必要がない。掌や指が汚れている場合は、手の甲によって吐止水用操作部材60を操作することができる。手や指の運動機能が低下した高齢者や身障者でも、吐止水用操作部材60を操作することができる。
【0038】
水栓装置Aは、吐止水用操作部材60を前方から見た正面視において、吐止水用バルブ33の操作力受け面37の中心と、吐止水用操作部材60の操作力付与面67の中心とが合致するように設計されている。しかし、立壁14(洗面台10)における吐止水用バルブ33の取付け位置のズレや、立壁14とミラーキャビネット40(カバー50)との間の位置ズレなどのために、吐止水用バルブ33と、吐止水用操作部材60をガイドするカバー50とが、上下左右に位置ズレすることが考えられる。
【0039】
この点に鑑み、吐止水用操作部材60は、吐止水用バルブ33から物理的に切り離して設け、吐止水用操作部材60の操作力を吐止水用バルブ33の被操作部35に伝達するようにしている。ここで、被操作部35の操作力受け面37と吐止水用操作部材60の操作力付与面67は、いずれも、上記の位置ズレ方向と平行な平面で構成され、互いに前後方向に対向するように配置されている。かかる構成により、吐止水用バルブ33とカバー50(ガイド用開口部57及びガイド部58)とが位置ズレしても、吐止水用操作部材60の操作力を吐止水用バルブ33の被操作部35に対して適正に伝達することができる。
【0040】
本実施形態1の水栓装置Aは、ミラーキャビネット40と、ミラーキャビネット40の下方に配置された立壁14と、立壁14に取り付けられた水栓機能部22と、水栓機能部22の吐止水用バルブ33を操作するための吐止水用操作部材60とを備えている。吐止水用操作部材60は、吐止水用バルブ33とは別体の部材として設けられている。ミラーキャビネット40には、吐止水用操作部材60を操作可能な状態に支持するためのカバー50が取り付けられている。吐止水用操作部材60には、操作力伝達部64が設けられている。操作力伝達部64は、カバー50がミラーキャビネット40に取り付けられたときにのみ、操作力を吐止水用バルブ33に伝達する。
【0041】
ミラーキャビネット40の設置位置と立壁14の設置位置とがずれていても、吐止水用操作部材60の操作力が操作力伝達部64を介して吐止水用バルブ33に伝達される。カバー50はミラーキャビネット40に取り付けられるので、カバー50とミラーキャビネット40との間に位置ずれは生じない。カバー50は吐止水用操作部材60を支持しているので、カバー50と吐止水用操作部材60との間に位置ずれは生じない。よって、デザイン性に優れている。
【0042】
吐止水用バルブ33は、吐止水用操作部材60からの押し操作力を受けることによって進退移動する被操作部35を有している。操作力伝達部64には、被操作部35の進退方向と直交する操作力伝達面付与面が設けられ、被操作部35には、被操作部35の進退方向と直交する操作力受け面37が設けられている。吐止水用操作部材60と水栓機能部22とが、被操作部35の進退方向と直交する上下方向や左右方向へ位置ズレしても、その位置ズレは操作力付与面67及び操作力受け面37において吸収される。よって、吐止水用操作部材60から被操作部35への操作力は安定して伝達される。
【0043】
操作力伝達部64は、板厚方向を被操作部35の進退方向と直交する方向に向けた平板部65と、平板部65から板厚方向に突出したリブ66とを有している。操作力伝達部64を平板状の形状にしたので、厚肉の形状に比べて材料コストの低減と軽量化を図ることができる。平板部65はリブ66によって剛性が高められているので、操作力伝達部64が変形する虞はない。
【0044】
被操作部35は、操作部材からの押し操作を受けることによって、止水位置(後退位置)と吐水位置(進出位置)とに交互に保持される。吐止水用操作部材60は、被操作部35が止水位置から吐水位置へ移動するときに、被操作部35からの押圧力によってカバー50から突き出した吐水位置へ押し動かされる。したがって、止水位置の吐止水用操作部材60を手作業によって吐水位置へ引っ張る必要がない。
【0045】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
水栓機能部は、吐止水用バルブに限らず、温調機能や流調機能を備えた混合栓でもよい。
立壁は、ボウル部を有する洗面台から立ち上がるものに限らず、洗面台以外の収納部から立ち上がるものや、単独で建物の壁面に固定されるものでもよい。
水栓装置は、浴室やキッチン等も適用することができる。
操作部材の操作形態は、プッシュ式に限らず、回転式でもよい。
操作力伝達部は、リブを有しない平板状のものでもよく、厚肉のブロック状のものでもよい。
操作力伝達面の背面視形状は、十字形(クロス形)に限らず、H字形、L字形、コ字形、ロ字形等でもよい。
吐止水用操作部の操作面の正面視形状は、トラック形状に限らず、長方形、正方形、円形、楕円形、長円形等でもよい。操作面は、平面に限らず、スリット状の面や、複数の突起がランダムに配置された面等でもよい。
【符号の説明】
【0046】
A…洗面化粧台、14…立壁、22…水栓機能部、35…被操作部、37…操作力受け面(操作力伝達面)、40…ミラーキャビネット、50…カバー、60…吐止水用操作部材(操作部材)、64…操作力伝達部、65…平板部、66…リブ、67…操作力付与面(操作力伝達面)