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特開2023-141512斜軸式液圧回転機および斜軸式液圧回転機システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141512
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】斜軸式液圧回転機および斜軸式液圧回転機システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/2085 20200101AFI20230928BHJP
   F04B 53/00 20060101ALI20230928BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230928BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F04B1/2085
F04B53/00 B
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047868
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 竜一
(72)【発明者】
【氏名】海野 豪
(72)【発明者】
【氏名】福島 俊輔
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3H070
3H071
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA22
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
3H070AA01
3H070BB06
3H070BB15
3H070CC02
3H070CC07
3H070CC33
3H070DD07
3H070DD94
3H071AA03
3H071BB02
3H071CC22
3H071CC26
3H071CC35
3H071DD84
(57)【要約】
【課題】 センサの取付性を向上させる。
【解決手段】 油圧ポンプ1は、ケーシング本体2に設けられ回転軸4を回転可能に支持するメインベアリング21,22およびサブベアリング23を備えている。挿通孔29は、ケーシング本体2に設けられ、サブベアリング23に向けて延びている。振動センサ30は、挿通孔29から挿入されてケーシング本体2に取付けられている。振動センサ30は、サブベアリング23の外周面に接触しつつサブベアリング23の外周面に沿って延びてサブベアリング23の振動を検出する線状の検出部30Cを有している。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に回転可能に設けられ、周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ穴を有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの前記各シリンダ穴内に往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、
前記ケーシング内に回転可能に設けられ、前記シリンダブロックの回転の中心軸から傾斜した方向に延び、前記複数のピストンに連結され、前記シリンダブロックと共に回転する回転軸と、
前記ケーシングに設けられ前記回転軸を回転可能に支持する複数のテーパーローラーベアリングと、を備えた斜軸式液圧回転機において、
前記ケーシングに設けられ、前記複数のテーパーローラーベアリングのうちいずれか1つからなる被検出ベアリングに向けて延びた挿通孔と、
前記挿通孔から挿入されて前記ケーシングに取付けられ、前記被検出ベアリングの外周面に接触しつつ前記被検出ベアリングの前記外周面に沿って延びて前記被検出ベアリングの振動を検出する線状の検出部を有する振動センサと、を備えたことを特徴とする斜軸式液圧回転機。
【請求項2】
前記複数のテーパーローラーベアリングは、互いに対向したメインベアリングとサブベアリングとを含み、
前記被検出ベアリングは、前記サブベアリングであり、
前記サブベアリングは、外輪がスペーサに嵌合し、内輪がベアリングナットに接触した状態で前記ケーシングに取付けられ、
前記スペーサと前記振動センサとの間には円環状の柔軟部材が設けられており、
前記ベアリングナットの締め込みにより前記サブベアリングの前記外輪の外径が拡張し、前記振動センサの前記検出部が前記柔軟部材の内周面と前記サブベアリングの前記外輪の外周面との間に挟み込まれること特徴とする請求項1に記載の斜軸式液圧回転機。
【請求項3】
前記サブベアリングは、前記メインベアリングよりも外径寸法が小さく形成され、前記メインベアリングよりも前記シリンダブロックから離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の斜軸式液圧回転機。
【請求項4】
前記振動センサは、ピエゾ電線センサであることを特徴とする請求項1に記載の斜軸式液圧回転機。
【請求項5】
ケーシングと、
前記ケーシング内に回転可能に設けられ、周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ穴を有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの前記各シリンダ穴内に往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、
前記ケーシング内に回転可能に設けられ、前記シリンダブロックの回転の中心軸から傾斜した方向に延び、前記複数のピストンに連結され、前記シリンダブロックと共に回転する回転軸と、
前記ケーシングに設けられ前記回転軸を回転可能に支持する複数のテーパーローラーベアリングと、
前記ケーシングに設けられ、前記複数のテーパーローラーベアリングのうちいずれか1つからなる被検出ベアリングに向けて延びた挿通孔と、
前記挿通孔から挿入されて前記ケーシングに取付けられ、前記被検出ベアリングの外周面に接触しつつ前記被検出ベアリングの前記外周面に沿って延びて前記被検出ベアリングの振動を検出する線状の検出部を有する振動センサと、
前記振動センサに接続され、前記振動センサから出力される振動検出信号に基づいて、前記被検出ベアリングの状態を監視するベアリング監視装置と、を備えたことを特徴とする斜軸式液圧回転機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械に搭載され、油圧ポンプ、油圧モータとして用いられる斜軸式液圧回転機および斜軸式液圧回転機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、斜軸式液圧回転機は、回転軸を回転可能に支持する複数の軸受を備えている。このような軸受のメンテナンス時期を把握するために、軸受の状態を監視する監視装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された監視装置は、軸受に作用する負荷荷重を検出する荷重検出手段と、この荷重検出手段の検出信号を判定情報の一つに用いて軸受に関する所定の判定を行う判定手段とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-159710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば斜軸式油圧ポンプは、軸方向に発生する油圧反力を支持するために、回転軸の軸受として複数のテーパーローラーベアリングが使用される。このとき、複数のテーパーローラーベアリングは、メインベアリングとサブベアリングとを対向させた状態で取付けられる。これらのベアリングには予圧をかける必要があり、管理のばらつきの中で予圧が高めにかかってしまった場合は、負荷容量の小さなサブベアリングが先に寿命を迎えることになる。そのため、運転中にサブベアリングの状態をモニタリングし、サブベアリングの損傷を早期に検知することによって、ポンプ自体の損傷を把握できる場合がある。
【0005】
サブベアリングの状態をモニタリングし、サブベアリングの損傷を早期に検知するために、特許文献1に記載された監視装置を適用することが考えられる。しかしながら、この監視装置では、荷重検出手段として例えば歪ゲージセンサを接着剤で予めベアリングの外径部分に固定し、そのベアリングをケーシング内部に入れる必要がある。また、センサがベアリングに接着固定されているため、センサの故障によってセンサを交換するときには、ベアリングをケーシングから一旦取外して、センサを交換する必要がある。
【0006】
この場合、ベアリングへのセンサの取付けや交換は、ベアリングがケーシングに入っていない状態で行う。このため、ベアリングをケーシングに入れる際に、センサのケーブルが切断されたり、センサのケーブルをケーシングとベアリングとの間に挟んだりする虞れがある。また、センサの交換時に、多大な時間がかかるという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、センサの取付性を向上させることが可能な斜軸式液圧回転機および斜軸式液圧回転機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に設けられ、周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ穴を有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックの前記各シリンダ穴内に往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記ケーシング内に回転可能に設けられ、前記シリンダブロックの回転の中心軸から傾斜した方向に延び、前記複数のピストンに連結され、前記シリンダブロックと共に回転する回転軸と、前記ケーシングに設けられ前記回転軸を回転可能に支持する複数のテーパーローラーベアリングと、を備えた斜軸式液圧回転機において、前記ケーシングに設けられ、前記複数のテーパーローラーベアリングのうちいずれか1つからなる被検出ベアリングに向けて延びた挿通孔と、前記挿通孔から挿入されて前記ケーシングに取付けられ、前記被検出ベアリングの外周面に接触しつつ前記被検出ベアリングの前記外周面に沿って延びて前記被検出ベアリングの振動を検出する線状の検出部を有する振動センサと、を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明による斜軸式液圧回転機システムは、ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に設けられ、周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ穴を有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックの前記各シリンダ穴内に往復動可能に挿嵌された複数のピストンと、前記ケーシング内に回転可能に設けられ、前記シリンダブロックの回転の中心軸から傾斜した方向に延び、前記複数のピストンに連結され、前記シリンダブロックと共に回転する回転軸と、前記ケーシングに設けられ前記回転軸を回転可能に支持する複数のテーパーローラーベアリングと、前記ケーシングに設けられ、前記複数のテーパーローラーベアリングのうちいずれか1つからなる被検出ベアリングに向けて延びた挿通孔と、前記挿通孔から挿入されて前記ケーシングに取付けられ、前記被検出ベアリングの外周面に接触しつつ前記被検出ベアリングの前記外周面に沿って延びて前記被検出ベアリングの振動を検出する線状の検出部を有する振動センサと、前記振動センサに接続され、前記振動センサから出力される振動検出信号に基づいて、前記被検出ベアリングの状態を監視するベアリング監視装置と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検出ベアリングがケーシング内部に存在する状態でも、被検出ベアリングに振動センサを取付けることができる。これにより、振動センサを設置するときの振動センサの損傷を防止することができると共に、振動センサの交換を容易に行うことができ、振動センサの取付性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による可変容量型斜軸式油圧ポンプを示す縦断面図である。
図2図1中のサブベアリングおよび振動センサの周囲を拡大して示す縦断面図である。
図3】振動センサ等を図2中の矢示III-III方向からみた横断面図である。
図4】振動センサ、柔軟部材等を図3中の矢示IV-IV方向からみた断面図である。
図5】ベアリングナットを締め付けて、振動センサに押し付け力を付与する状態を示す図4と同様位置の断面図である。
図6】サブベアリングが正常な状態について、振動センサの振動検出信号の周波数と振幅との関係を示す特性線図である。
図7】サブベアリングが異常な状態について、振動センサの振動検出信号の周波数と振幅との関係を示す特性線図である。
図8】変形例の振動センサ等を示す図3と同様な位置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による斜軸式液圧回転機および斜軸式液圧回転機システムとして、可変容量型斜軸式油圧ポンプを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1ないし図7は、本発明の実施形態を示している。図1において、斜軸式液圧回転機としての可変容量型斜軸式油圧ポンプ1(以下、油圧ポンプ1という)は、例えば油圧ショベルの原動機(駆動源となるエンジンや電動モータ)によって回転駆動され、作動油タンクからの油液を吸込んで、油圧管路の下流側に接続される各種油圧機器(いずれも図示せず)に圧油を供給する。油圧ポンプ1は、ケーシング本体2と、ヘッドケーシング3と、回転軸4と、シリンダブロック5と、ピストン7と、メインベアリング21,22と、サブベアリング23とを備えている。
【0014】
ケーシング本体2は、油圧ポンプ1の外殻となる中空の筒状体として形成されている。ケーシング本体2は、軸方向の一側に位置して略円筒状に形成された軸受収容部2Aと、軸受収容部2Aの他端から傾斜して延びたシリンダブロック収容部2Bとを備えている。即ち、ケーシング本体2は、軸方向の一側が軸受収容部2Aとなっている。シリンダブロック収容部2Bの他端には、ヘッドケーシング3が組付けられている。ケーシング本体2とヘッドケーシング3は、油圧ポンプ1全体のケーシングを構成している。
【0015】
ヘッドケーシング3は、ケーシング本体2の軸方向の他側の開口、即ち、シリンダブロック収容部2Bの他端を閉塞して設けられている。ヘッドケーシング3は、ケーシング本体2のシリンダブロック収容部2B側に位置するヘッド側端面に取付けられている。ヘッドケーシング3は、ケーシング本体2側に位置する一端面3Aに、矩形の長溝となる凹円弧状摺接部3Bを有している。一方、ヘッドケーシング3には、凹円弧状摺接部3Bの奥部に位置して傾転機構10のシリンダ孔11が設けられている。
【0016】
ヘッドケーシング3には、一対の給排通路(いずれも図示せず)が形成されている。これらの給排通路のうち低圧側の給排通路(吸入通路)は、タンク(図示せず)からの作動油を弁板8の低圧ポートとなる吸入ポート(図示せず)を介して各シリンダ穴5B内に供給する。また、高圧側の給排通路(排出通路)は、弁板8の高圧ポートとなる排出ポート(図示せず)側から下流の油圧機器(例えば、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータ)に向けて圧油(吐出油)を排出(吐出)する。
【0017】
入力軸となる回転軸4は、ケーシング本体2の軸受収容部2A内に位置して、軸受収容部2A内を軸方向に延びて設けられている。回転軸4は、複数(例えば、3個)のテーパーローラーベアリングであるメインベアリング21,22およびサブベアリング23を介して、ケーシング本体2の軸受収容部2Aに回転可能に支持されている。回転軸4の一端側は、ケーシング本体2から軸方向に突出する突出端4Aとなり、この突出端4Aには、エンジン等の原動機が動力伝達機構等(いずれも図示せず)を介して連結される。一方、回転軸4には、ケーシング本体2内への挿入側先端部、即ち、軸方向の他端部に位置して円板状のドライブディスク4Bが形成されている。即ち、回転軸4は、突出端4Aとは軸方向の反対側となる先端部がドライブディスク4Bとなっている。
【0018】
ドライブディスク4Bには、シリンダブロック5と対向する他側端面の中心側に位置して中心側凹球面部4B1が設けられている。中心側凹球面部4B1には、センタシャフト6の球形部6Aが摺動可能に連結される。ドライブディスク4Bの他側端面には、中心側凹球面部4B1の径方向外側に位置して回転伝達用の複数の外径側凹球面部4B2が互いに周方向に離間して設けられている。各外径側凹球面部4B2には、各ピストン7の球形部7Aがそれぞれ揺動可能に連結される。回転軸4は、突出端4Aとドライブディスク4Bとの間に位置して雄ネジ部4Cを備えている。雄ネジ部4Cには、ベアリングナット25が螺合されている。
【0019】
シリンダブロック5は、ケーシング本体2のシリンダブロック収容部2B内に設けられている。シリンダブロック5は、センタシャフト6、各ピストン7等を介してドライブディスク4Bに連結され、回転軸4と一体に回転する。シリンダブロック5は、円柱体(円筒体)として形成され、その中心軸線に沿って中心シリンダとしてのセンタシャフト挿入孔5Aが設けられている。センタシャフト挿入孔5Aには、センタシャフト6が挿入されている。また、シリンダブロック5には、センタシャフト挿入孔5Aの周囲に位置して軸方向に延びるシリンダ穴5Bが周方向に間隔をもって複数配置されている。
【0020】
さらに、シリンダブロック5は、弁板8側となる軸方向の他端面が摺接端面5Cとなっている。摺接端面5Cは、凹球面状に形成されている。摺接端面5Cは、弁板8の摺動球面部8Bと摺接する。即ち、シリンダブロック5は、軸方向の他端面に凹球面状の摺接端面5Cが形成されている。シリンダブロック5の摺接端面5Cと各シリンダ穴5Bとの間には、摺接端面5C側で弁板8の吸入ポート、排出ポート(いずれも図示せず)と連通、遮断される複数のシリンダポート5D(1本のみ図示)が形成されている。
【0021】
センタシャフト6は、シリンダブロック5のセンタリングを行うために、シリンダブロック5のセンタシャフト挿入孔5Aに挿通されている。センタシャフト6は、一端側が回転軸4のドライブディスク4Bの回転中心位置に摺動可能に連結されている。即ち、センタシャフト6の一端側は、球形部6Aとなっている。球形部6Aは、ドライブディスク4Bの中心側凹球面部4B1内に揺動(摺動)可能に連結されている。センタシャフト6の他端側は、センタシャフト挿入孔5Aに挿通されている。
【0022】
複数のピストン7は、それぞれシリンダブロック5の各シリンダ穴5B内に往復動可能に挿嵌されている。複数のピストン7は、シリンダ穴5Bから突出した一端側が回転軸4のドライブディスク4Bに揺動可能に連結されている。即ち、各ピストン7は、一端側が球形部7Aとなっている。球形部7Aは、ドライブディスク4Bの外径側凹球面部4B2内に揺動(摺動)可能に連結されている。各ピストン7は、回転軸4に対して傾転したシリンダブロック5が回転することにより、シリンダ穴5B内で往復動し、油液の吸込(吸入)、吐出(排出)を行う。
【0023】
弁板8は、ヘッドケーシング3とシリンダブロック5との間に設けられている。弁板8は、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bに沿って傾転する。弁板8の一端面8A、即ち、シリンダブロック5と対面する側の端面(側面)となる一端面8Aには、シリンダブロック5の摺接端面5Cと摺接する凸球面状の摺動球面部8Bが形成されている。弁板8の摺動球面部8Bは、シリンダブロック5の摺接端面5Cと凹凸嵌合(球面嵌合)する。弁板8の摺動球面部8Bは、シリンダブロック5の摺接端面5Cが回転しつつ摺動する切換面となっている。
【0024】
一方、摺動球面部8Bとは反対側となる弁板8の他端面は、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bに対応した円弧をもって突出した凸円弧状摺接部8Cとなっている。弁板8の凸円弧状摺接部8Cは、傾転機構10の作動時に、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bに傾転可能に摺接する。
【0025】
また、弁板8には、摺動球面部8Bの中央に位置して軸方向に貫通した嵌合孔8Dが設けられている。嵌合孔8Dは、サーボピン13の先端側が挿入される。弁板8には、眉形状をなす吸入ポートと排出ポート(いずれも図示せず)が形成されている。
【0026】
吸入ポートおよび排出ポートは、シリンダブロック5の回転に伴って各シリンダ穴5Bのシリンダポート5Dと間欠的に連通する。即ち、シリンダブロック5は、その摺接端面5Cが弁板8の摺動球面部8Bに対して摺接しつつ回転することにより、各シリンダ穴5Bと吸入ポートまたは排出ポートとの間で圧油の供給または排出が行われる。
【0027】
傾転機構10は、ヘッドケーシング3に設けられている。傾転機構10は、シリンダブロック5と共に弁板8を傾転させる。傾転機構10は、凹円弧状摺接部3Bの最深部よりも奥部に位置して弁板8の傾転方向に直線状に延びて設けられたシリンダ孔11と、シリンダ孔11に摺動可能に挿嵌された動作部としてのサーボピストン12と、サーボピストン12の長さ方向の中間部位に設けられ、サーボピストン12から径方向に突出して弁板8側に向けて延びたサーボピン13とを備えている。
【0028】
サーボピン13は、基端側がサーボピストン12に形成されたピン孔12A内に挿入され、先端側が弁板8の嵌合孔8Dに挿入(接続)されている。傾転機構10は、油通孔(図示せず)からシリンダ孔11内に油液を供給することにより、シリンダ孔11に沿ってサーボピストン12を移動させることができる。このように、サーボピストン12を移動させることにより、サーボピン13を介して弁板8をシリンダブロック5と共に傾転させることができる。これにより、傾転機構10は、回転軸4に対するシリンダブロック5と弁板8の傾転角度を、最小傾転位置と最大傾転位置との間で調整することができる。
【0029】
メインベアリング21,22は、ケーシング本体2に設けられている。図1および図2に示すように、2個のメインベアリング21,22は、ケーシング本体2の軸受収容部2Aの内側に取付けられている。メインベアリング21,22は、テーパーローラーベアリングによって構成されている。メインベアリング21,22は、軸方向の他側から一側に向かうに従って、テーパーローラの回転軸が外径側から内径側に向けて傾斜している。メインベアリング21は、内輪21A、外輪21B、テーパーローラ21Cを備えている。メインベアリング22は、内輪22A、外輪22B、テーパーローラ22Cを備えている。メインベアリング21は、メインベアリング22よりも軸方向の他側に位置して、軸受収容部2Aの奥部に配置されている。
【0030】
なお、本実施形態では、油圧ポンプ1が2個のメインベアリング21,22を備えた場合を例示した。これに限らず、油圧ポンプは1個のメインベアリングを備えてもよく、3個以上のメインベアリングを備えてもよい。
【0031】
サブベアリング23は、ケーシング本体2に設けられている。サブベアリング23は、ケーシング本体2の軸受収容部2Aの内側にスペーサ24を介して取付けられている。サブベアリング23は、メインベアリング22と互いに対向している。サブベアリング23は、内輪23A、外輪23B、テーパーローラ23Cを備えている。テーパーローラ23Cは、内輪23Aと外輪23Bとの間に回転可能な状態で保持されている。サブベアリング23は、軸方向の他側から一側に向かうに従って、テーパーローラの回転軸が内径側から外径側に向けて傾斜している。メインベアリング21,22およびサブベアリング23は、回転軸4を回転可能に支持している。サブベアリング23は、被検出ベアリングであり、振動検出の対象となっている。サブベアリング23は、メインベアリング21,22よりも外径寸法が小さく形成され、メインベアリング21,22よりもシリンダブロック5から離れた位置に配置されている。
【0032】
スペーサ24は、サブベアリング23の径方向外側に位置して、サブベアリング23(外輪23B)の外周面と軸受収容部2Aの内周面との間に配置されている。図2ないし図5に示すように、スペーサ24は、本体部24A、底部24B、突出部24Cを備えている。本体部24Aは、サブベアリング23の外輪23Bよりも径方向寸法の大きな円筒状に形成されている。本体部24A内には、サブベアリング23が配置されている。底部24Bは、本体部24Aの軸方向他側の端部に位置して、円盤状に形成されている。底部24Bは、本体部24Aの軸方向他側の端部から径方向内側に向けて突出している。底部24Bの軸方向一側面は、サブベアリング23の外輪23Bの軸方向他側端面に当接している。底部24Bの軸方向他側面は、メインベアリング22の外輪22Bの軸方向一側端面に当接している。突出部24Cは、本体部24Aの軸方向一側の端面から突出し、円弧状に形成されている。突出部24Cは、本体部24Aの周方向に複数個(例えば6個)取付けられている。これら複数個の突出部24Cは、本体部24Aの周方向に対して互いに離間している。このため、周方向で隣り合う2個の突出部24Cの間には、隙間が形成されている。
【0033】
本体部24Aの内周側には、軸方向一側に位置して、センサ収容部24Dが形成されている。センサ収容部24Dは、本体部24Aの全周にわたって延びる円環状の溝であり、本体部24Aの内周面に形成されている。センサ収容部24Dは、本体部24Aおよび突出部24Cの径方向内側に位置して、これらの内周部分を切欠くことによって形成されている。センサ収容部24Dは、突出部24Cの先端からサブベアリング23の外輪23Bの外周面と対向する位置まで軸方向に延びている。
【0034】
ベアリングナット25は、回転軸4の雄ネジ部4Cに螺着されている。図2に示すように、ベアリングナット25は、スペーサ24よりも径方向寸法が小さい円筒状に形成され、その内周側に雄ネジ部4Cに螺合する雌ネジ部25Aを備えている。図4および図5に示すように、ベアリングナット25の軸方向他側の端面は、サブベアリング23の内輪23Aの軸方向一側の端面に当接している。ベアリングナット25は、内輪23Aに対して、軸方向の一側から他側に向かう押圧力を付与している。この押圧力によって、サブベアリング23のテーパーローラ23Cと外輪23Bには、径方向内側から外側に向かう力が作用している。
【0035】
シールカバー26は、サブベアリング23の軸方向一側を覆ってケーシング本体2に取付けられている。図2に示すように、シールカバー26は、円盤状に形成され、軸受収容部2Aの径方向内側に挿入されている。シールカバー26は、軸受収容部2Aの開口端側を施蓋している。シールカバー26の軸方向一側の端面には、円環状のリングリテイニング27が当接している。リングリテイニング27は、軸受収容部2Aの内周面の円環溝に取付けられている。一方、シールカバー26の軸方向他側の端面には、スペーサ24の突出部24Cの先端面が当接している。このとき、シールカバー26は、軸方向に対して、スペーサ24とリングリテイニング27との間に挟持されている。これにより、シールカバー26は、抜止め状態で、軸受収容部2Aの内側に取付けられている。
【0036】
シールカバー26の径方向内側には、円環状のシール部材28が取付けられている。シール部材28は、回転軸4の外周面に摺接し、軸受収容部2Aの内部と外部との間をシールしている。
【0037】
挿通孔29は、ケーシング本体2に設けられている。図2および図3に示すように、挿通孔29は、貫通孔によって構成され、ケーシング本体2の外周面から被検出ベアリングとなるサブベアリング23に向けて延びている。具体的には、挿通孔29は、ケーシング本体2の外周面から内周面まで直線状に延びている。挿通孔29は、ケーシング本体2に例えば2つ形成されている。本実施形態においては、これら2つの挿通孔29は、互いに平行に延びている。挿通孔29の一端は、ケーシング本体2の外部に開口している。図3に示すように、挿通孔29の他端は、スペーサ24の2つの突出部24C間の隙間と対向した位置で、ケーシング本体2の軸受収容部2A内に開口している。これにより、挿通孔29は、2つの突出部24C間の隙間を介して、スペーサ24のセンサ収容部24D内に連通している。
【0038】
振動センサ30は、例えばピエゾフィルムを芯線に巻き付けたピエゾ電線センサによって構成されている。振動センサ30は、一方の挿通孔29から挿入されて、ケーシング本体2に取付けられている。具体的には、振動センサ30の基端側は、一方の挿通孔29とスペーサ24の2つの突出部24C間の隙間を通じてサブベアリング23の外輪23Bの外周面に到達している。このとき、振動センサ30の基端側は、一方の挿通孔29とスペーサ24の2つの突出部24C間の隙間を通じてサブベアリング23の外輪23Bの外周面に到達している。
【0039】
振動センサ30の先端部分は、他方の挿通孔29からケーシング本体2の外側に引き出されている。このとき、振動センサ30の先端側は、サブベアリング23の外輪23Bの外周面からスペーサ24の2つの突出部24C間の隙間と他方の挿通孔29を通じて、ケーシング本体2の外側に引き出されている。
【0040】
振動センサ30は、サブベアリング23の外輪23Bの外周面に接触した状態でサブベアリング23の外周面に沿って延びている。振動センサ30は、外輪23Bの外周面に複数回巻き付けられてもよく、略1周分だけ巻き付けられてもよい。
【0041】
図3に示すように、振動センサ30は、基端側固定部30A、先端側固定部30B、検出部30Cを有している。基端側固定部30Aは、振動センサ30の基端部分に位置して、一方の挿通孔29からケーシング本体2の外部に突出している。先端側固定部30Bは、振動センサ30の先端部分に位置して、他方の挿通孔29からケーシング本体2の外部に突出している。先端側固定部30Bは、ノイズ対策のために、検出部30Cよりも少し太くなっている。
【0042】
基端側固定部30Aおよび先端側固定部30Bは、いずれもコンプレッションフィッティング31を用いてケーシング本体2に固定されている。コンプレッションフィッティング31は、例えば金属材料によって形成され、挿通孔29に挿入された状態でケーシング本体2の外周面に取付けられている。コンプレッションフィッティング31は、挿通孔29を封止し、挿通孔29を通じてケーシング本体2内の油が漏れるのを防止している。
【0043】
検出部30Cは、サブベアリング23の振動を検出する振動センサ30の線状部分である。検出部30Cは、基端側固定部30Aと先端側固定部30Bとの間に位置して、線状に延びている。検出部30Cは、ピエゾ効果を有する線状の材料によって形成され、サブベアリング23の外輪23Bの外周面に接触した状態で、周方向に延びている。検出部30Cは、サブベアリング23の振動に応じた電気的な振動検出信号を出力する。これにより、振動センサ30は、サブベアリング23の振動を検出する。
【0044】
柔軟部材32は、振動センサ30の検出部30Cを覆った状態で、スペーサ24のセンサ収容部24Dに挿入されている。柔軟部材32は、例えばフッ素ゴムスポンジを用いて略円環状に形成されている。柔軟部材32は、フッ素ゴムスポンジに限らず、所望の耐熱性、耐寒性、耐油性を有する他の材料を用いて形成されてもよい。図2ないし図5に示すように、柔軟部材32は、振動センサ30の検出部30Cを覆った状態で、サブベアリング23の外輪23Bの外周面とセンサ収容部24Dの内周面との間に挿入されている。これにより、柔軟部材32は、振動センサ30の検出部30Cとスペーサ24との間に取付けられている。
【0045】
図3に示すように、ベアリング監視装置33は、振動センサ30に電気的に接続されている。ベアリング監視装置33は、例えばマイコンピュータ等を含んで構成され、記憶部(図示せず)に格納されたプログラムを実行する。これにより、ベアリング監視装置33は、振動センサ30からの振動検出信号に基づいて、サブベアリング23の振動を検出する。このとき、ベアリング監視装置33は、振動検出信号の周波数成分を取得する。ベアリング監視装置33は、振動検出信号の周波数成分から回転軸4の回転数に対応した基本周波数成分と、その整数倍の周波数成分を除去する。ベアリング監視装置33は、残余の周波数成分の大きさが予め決められた判定値よりも大きいか否かを判定する。残余の周波数成分の大きさが判定値よりも大きいときに、ベアリング監視装置33は、サブベアリング23に異常が発生していると判断し、エラー信号を出力する。なお、判定値は、例えば実験等によって予め決められた一定値でもよく、基本周波数成分の大きさに応じて相対的に決められる値でもよい。
【0046】
次に、振動センサ30の取付け方法について説明する。振動センサ30は、シールカバー26等を取外した状態で、サブベアリング23に取付けられる。このとき、振動センサ30の検出部30Cは、ベアリングナット25を緩めた状態で、サブベアリング23の外輪23Bの外周面に巻き付けられる。一方、振動センサ30の基端側固定部30Aと先端側固定部30Bは、挿通孔29を通じてケーシング本体2の外側に引き出される。このとき、基端側固定部30Aと先端側固定部30Bには、コンプレッションフィッティング31が取付けられている。このため、コンプレッションフィッティング31を挿通孔29に挿入して、挿通孔29を封止することによって、振動センサ30の基端側固定部30Aと先端側固定部30Bは、ケーシング本体2に固定される。これに伴い、振動センサ30の検出部30Cは、サブベアリング23の外輪23Bの外周面に接触した状態で固定される。
【0047】
また、振動センサ30をサブベアリング23に巻き付けた後には、柔軟部材32がスペーサ24のセンサ収容部24Dに挿入される。このとき、柔軟部材32は、振動センサ30の検出部30Cを覆った状態で、サブベアリング23の外輪23Bの外周面とセンサ収容部24Dの内周面との間に隙間がないように、センサ収容部24D内に取付けられる。
【0048】
図5に示すように、振動センサ30と柔軟部材32が取付けられた後は、回転軸4の雄ネジ部4Cにベアリングナット25が締め込まれる。このとき、サブベアリング23の内輪23Aは、メインベアリング22に近付く方向に変位する。これにより、サブベアリング23のテーパーローラ23Cには、径方向外側に向かう力が作用する。この結果、サブベアリング23の外輪23Bには、径方向外側に向けて膨らむような力が作用する。このため、振動センサ30の検出部30Cも、外輪23Bと同様に、径方向外側に向けて膨らもうとする。しかしながら、振動センサ30の検出部30Cは、柔軟部材32によって拘束されると共に、柔軟部材32はスペーサ24によって拘束されている。従って、振動センサ30の検出部30Cは、柔軟部材32によってサブベアリング23の外輪23Bの外周面に押し当てられる。ベアリングナット25を締め込んだときに、振動センサ30に適切な押え付け力が発生するように、予め柔軟部材32の内径寸法は適宜設定されている。これにより、振動センサ30をサブベアリング23に取付けるときに、振動センサ30に適切な押付力が付与された状態で、振動センサ30を簡単に油圧ポンプ1に設置することができる。また、計測時には、サブベアリング23の外周面に振動センサ30を適切に固定することができる。
【0049】
ベアリングナット25の締め付けが完了した後は、シールカバー26およびシール部材28が取付けられる。その後、リングリテイニング27がケーシング本体2に取付けられる。これにより、シールカバー26は、ケーシング本体2に固定され、サブベアリング23の軸方向一側を覆った状態で、ケーシング本体2の軸受収容部2Aを施蓋する。
【0050】
実施形態による油圧ポンプ1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0051】
エンジン、モータ等の原動機(図示せず)によって回転軸4を回転駆動すると、回転軸4のドライブディスク4Bと共にシリンダブロック5が回転する。シリンダブロック5の回転中心軸は、回転軸4に対して傾斜しているので、シリンダブロック5の回転に伴って、ピストン7が各シリンダ穴5B内で往復動する。シリンダブロック5は、弁板8の切換面となる摺動球面部8B上を回転摺動し、シリンダブロック5に設けられた各シリンダ穴5Bのシリンダポート5Dは、弁板8に設けられた一対の給排ポート、即ち、低圧ポートとなる吸入ポートと高圧ポートとなる排出ポートに間欠的に連通する。
【0052】
シリンダポート5Dが各給排ポートのうち低圧側(吸込側)のポートである吸入ポートに連通する半回転の間は、ピストン7がシリンダ穴5Bから突出する吸込行程となり、シリンダ穴5B内に作動油が吸込まれる。即ち、ピストン7の吸込行程では、作動油タンクから弁板8の吸入ポートを通じてシリンダ穴5B内に油液を吸込む。一方、シリンダポート5Dが各給排ポートのうち高圧側(吐出側)のポートである排出ポートに連通する半回転の間は、ピストン7がシリンダ穴5B内に進入する吐出行程となり、吸込行程でシリンダ穴5B内に吸込まれた作動油を加圧して弁板8の排出ポートに排出(吐出)する。即ち、ピストン7の吐出行程では、シリンダ穴5B内から圧油を吐出し、この圧油を弁板8の排出ポートを通じて油圧管路の下流側に接続される各種油圧機器(図示せず)に圧油を供給する。
【0053】
ところで、シリンダブロック5が回転すると、油圧反力により、ピストン7がドライブディスク4Bを押す。ドライブディスク4Bを押す力は、メインベアリング21,22とサブベアリング23に伝達された後、力の一部がスペーサ24やシールカバー26にも作用して、最終的にケーシング本体2やリングリテイニング27に受承される。サブベアリング23に与圧を付与するために、メインベアリング21,22およびサブベアリング23は、ドライブディスク4Bとベアリングナット25に拘束されている。
【0054】
振動センサ30は、サブベアリング23とスペーサ24の間に配置され、サブベアリング23の外周に沿って取付けられている。振動センサ30の両端は、スペーサ24やケーシング本体2に形成された挿通孔29を通って、ケーシング本体2の外部に引き出されている。振動センサ30をサブベアリング23に押し付けるため、振動センサ30とスペーサ24の間には、柔軟部材32が設けられている。
【0055】
回転軸4の回転に伴って、サブベアリング23に振動が生じる。このとき、サブベアリング23には、回転軸4の回転数に対応した基本周波数の振動が生じるのに加え、基本周波数の整数倍の振動が生じる。一方、サブベアリング23の外輪23Bには、振動センサ30が巻き付けられている。これにより、振動センサ30は、サブベアリング23の振動を検出し、振動に応じた振動検出信号を出力する。
【0056】
ベアリング監視装置33は、振動センサ30からの振動検出信号に基づいて、サブベアリング23に異常が生じたか否かを検出する。図6に示すように、油圧ポンプ1が正常な場合には、振動センサ30からの振動検出信号には、回転軸4の回転数に対応した基本周波数成分と、その整数倍の周波数成分が含まれる(図6中の実線のピーク)。このとき、振動検出信号は、基本周波数成分とその整数倍の周波数成分では、振幅が大きくなり、他の周波数成分では、振幅が小さくなる。
【0057】
これに対し、図7に示すように、油圧ポンプ1が異常な場合には、振動センサ30からの振動検出信号には、基本周波数成分およびその整数倍の周波数成分(図7中の実線のピーク)のいずれとも異なる周波数でピークが発生する(図7中の点線のピーク)。このピークは、異常振動の周波数成分に対応する。このとき、異常振動の周波数成分の振幅は、正常状態のときに比べて大きくなる。そこで、ベアリング監視装置33は、この異常振動の周波数成分の大きさが予め決められた判定値を超えたか否かを判定する。異常振動の周波数成分の大きさが判定値よりも大きくなると、ベアリング監視装置33は、サブベアリング23に異常が発生していると判断し、エラー信号を出力する。これにより、油圧ポンプ1の異常を早期に検知することができる。
【0058】
かくして、本実施形態では、油圧ポンプ1は、ケーシング本体2(ケーシング)と、ケーシング本体2内に回転可能に設けられ、周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ穴5Bを有するシリンダブロック5と、シリンダブロック5の各シリンダ穴5B内に往復動可能に挿嵌された複数のピストン7と、ケーシング本体2内に回転可能に設けられ、シリンダブロック5の回転の中心軸から傾斜した方向に延び、複数のピストン7に連結され、シリンダブロック5と共に回転する回転軸4と、ケーシング本体2に設けられ回転軸4を回転可能に支持する複数のテーパーローラーベアリング(メインベアリング21,22、サブベアリング23)と、を備えている。
【0059】
本実施形態では、油圧ポンプ1は、ケーシング本体2に設けられ、複数のテーパーローラーベアリングのうちいずれか1つからなる被検出ベアリングとしてのサブベアリング23に向けて延びた挿通孔29と、挿通孔29から挿入されてケーシング本体2に取付けられ、サブベアリング23の外周面に接触しつつサブベアリング23の外周面に沿って延びてサブベアリング23の振動を検出する線状の検出部30Cを有する振動センサ30と、を備えたことを特徴としている。
【0060】
このため、サブベアリング23への振動センサ30の取付けを、サブベアリング23がケーシング本体2の内部にある状態でも行うことができる。従って、接着剤を用いてサブベアリング23に振動センサ30を固着した後に、サブベアリング23をケーシング本体2に取付ける場合に比べて、取付時の振動センサ30の損傷を防ぐことができる。また、振動センサ30の交換を容易に行うことができる。これにより、サブベアリング23への振動センサ30の取付性を向上させることでき、生産性およびメンテナンス性を高めることができる。
【0061】
本実施形態では、複数のテーパーローラーベアリングは、互いに対向したメインベアリング22とサブベアリング23とを含み、被検出ベアリングは、サブベアリング23であり、サブベアリング23は、外輪23Bがスペーサ24に嵌合し、内輪23Aがベアリングナット25に接触した状態でケーシング本体2に取付けられ、スペーサ24と振動センサ30との間には円環状の柔軟部材32が設けられており、ベアリングナット25の締め込みによりサブベアリング23の外輪23Bの外径が拡張し、振動センサ30の線状の検出部30Cが柔軟部材32の内周面とサブベアリング23の外輪23Bの外周面との間に挟み込まれている。
【0062】
このため、ベアリングナット25を締め込むことによって、振動センサ30をサブベアリング23の外輪23Bの外周面に押付ける力が増加し、振動センサ30に適切な押付け荷重が作用する。この結果、稼働中のサブベアリング23の振動を適切にモニタリングすることができ、サブベアリング23の異常を早期に検出することができる。
【0063】
このとき、サブベアリング23は、メインベアリング21,22よりも外径寸法が小さく形成され、メインベアリング21,22よりもシリンダブロック5から離れた位置に配置されている。
【0064】
このため、サブベアリング23は、メインベアリング21,22に比べて、摩耗や損傷が生じ易い。これに対し、本実施形態では、サブベアリング23に振動センサ30を取付けたから、サブベアリング23の異常を検出することによって、油圧ポンプ1自体の早期損傷を把握することができる。
【0065】
また、振動センサ30は、ピエゾ電線センサによって構成されている。このため、振動センサ30は、例えば接着等によってサブベアリング23に剛に固定する必要がなく、サブベアリング23の外周面に巻き付けることによって、サブベアリング23の振動を検出することができる。このため、振動センサ30の取付性を向上させることができる。
【0066】
本実施形態の斜軸式液圧回転機システムでは、振動センサ30に接続され、振動センサ30から出力される振動検出信号に基づいて、サブベアリング23の状態を監視するベアリング監視装置33を備えている。
【0067】
油圧ポンプ1が異常な場合には、振動センサ30からの振動検出信号には、回転軸4の回転数に対応した基本周波数成分およびその整数倍の周波数成分のいずれとも異なる異常振動の周波数成分が大きくなる。このため、ベアリング監視装置33は、この異常振動の周波数成分の大きさが予め決められた判定値を超えたか否かを判定することによって、サブベアリング23の異常が検知することができる。
【0068】
なお、実施形態では、振動センサ30の先端側固定部30Bをケーシング本体2の外部に引き出して固定した場合を例に挙げて説明した。これに限らず、振動センサ30の先端側固定部30Bは、例えば挿通孔29の内部に固定される構成としてもよい。また、例えば図8に示す変形例のように、振動センサ40の先端側固定部40Bは、スペーサ24内に収容した状態で固定される構成としてもよい。この場合、振動センサ40の基端側固定部40Aは、コンプレッションフィッティング31を用いて挿通孔29の開口端部位に固定されている。また、振動センサ40の線状の検出部40Cは、サブベアリング23の外輪23Bの外周面に沿って延び、スペーサ24のセンサ収容部24Dに取付けられている。
【0069】
実施形態では、サブベアリング23に振動センサ30を取付けた場合を例に挙げて説明した。これに限らず、例えば挿通孔からの挿入によって振動センサの取付けが可能であれば、メインベアリングに振動センサを取付けてもよい。
【0070】
実施形態では、スペーサ24と振動センサ30との間に柔軟部材32を設けた場合を例に挙げて説明した。これに限らず、振動センサ30に適切な押し付け力が付与可能であれば、柔軟部材を省いてもよい。
【0071】
実施形態では、サブベアリング23がスペーサ24を介してケーシング本体2に設けられた場合を例に挙げて説明した。これに限らず、スペーサとケーシング本体とを一体化させた場合には、スペーサを省き、ケーシング本体にサブベアリングを直接的に取付けてもよい。
【0072】
実施形態では、振動センサ30がピエゾ電線センサである場合を例に説明した。これに限らず、振動センサは、振動を検出する線状の検出部を有する各種のセンサ(例えば、光ファイバセンサ等)が適用可能である。
【0073】
実施形態では、斜軸式液圧回転機として可変容量型の油圧ポンプ1を例に挙げて説明した。これに限らず、例えば、固定容量型の油圧ポンプを用いてもよい。また、実施形態では、斜軸式液圧回転機として油圧ポンプ1を例に挙げて説明した。これに限らず、例えば、斜軸式液圧回転機として斜軸式油圧モータ等に適用してもよい。
【0074】
実施形態では、油圧ポンプ1を油圧ショベルに適用する場合を例に挙げて説明した。これに限らず、例えば、油圧クレーン、ホイールローダ等の油圧ショベル以外の建設機械に適用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 油圧ポンプ(斜軸式液圧回転機)
2 ケーシング本体
3 ヘッドケーシング
4 回転軸
5 シリンダブロック
5B シリンダ穴
7 ピストン
21,22 メインベアリング
23 サブベアリング(被検出ベアリング)
24 スペーサ
29 挿通孔
30 振動センサ
30A 基端側固定部
30B 先端側固定部
30C 検出部
32 柔軟部材
33 ベアリング監視装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8