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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141513
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230928BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047869
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】中澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森岡 利仁
(72)【発明者】
【氏名】蒲 裕充
(72)【発明者】
【氏名】太田 喬
【テーマコード(参考)】
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA18
5F131BA37
5F131BB04
5F131CA12
5F131CA32
5F131CA33
5F131CA36
5F131CA42
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB62
5F131DB76
5F131EA06
5F131EA24
5F131EB42
5F131EB43
5F131EB55
5F131GA14
5F131JA28
5F131JA32
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB18
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157BB22
5F157BB45
5F157CF70
5F157CF74
5F157DA41
5F157DB02
(57)【要約】
【課題】基板の下面への処理液の付着を抑制しつつ基板の保持の安定性を向上する。
【解決手段】基板処理装置では、基板9の下面92とベース部21のベース面210との間にガスを送出して径方向外方へと向かう気流93を形成し、ベルヌーイ効果によって基板9とベース部21との間の空間に圧力降下を生じさせる。ベース面210の第2面212は、径方向外方に向かうに従って上方へと向かう。第3面213は、第2面212の外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう。第4面214は、第3面213の下端縁に連続する円環状の面である。第4面214は、基板9の外周縁よりも径方向外側にて径方向外方へと広がる。これにより、基板9の下面92への処理液の付着を抑制することができるとともに、基板9の保持の安定性を向上することもできる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置であって、
基板を水平状態にて保持する基板保持部と、
前記基板保持部を上下方向を向く中心軸を中心として回転させる基板回転機構と、
前記基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部と、
を備え、
前記基板保持部は、
前記基板の下面に対向するとともに前記基板の外周縁から径方向外方へと延在するベース面を有するベース部と、
前記ベース面上にて周方向に配列されるとともに前記ベース面から上方に突出し、前記基板の前記下面の外周部に接触する複数の支持ピンと、
前記基板の前記下面と前記ベース部の前記ベース面との間にガスを送出して径方向外方へと向かう気流を形成し、ベルヌーイ効果によって前記基板と前記ベース部との間の空間に圧力降下を生じさせるガス供給部と、
を備え、
前記ベース面は、
前記基板の中央部と上下方向に対向する水平な円状の面である第1面と、
前記基板の下方において前記第1面の外周縁から径方向外方へと広がる円環状の面であり、径方向外方に向かうに従って上方へと向かうとともに前記複数の支持ピンが配置される第2面と、
前記基板の前記下面よりも下側にて前記第2面の外周縁に連続する円環状の面であり、前記第2面の前記外周縁から鉛直下方へと広がる、または、径方向外方に向かうに従って下方へと向かう第3面と、
前記第3面の下端縁に連続する円環状の面であり、前記基板の前記外周縁よりも径方向外側にて径方向外方へと広がる第4面と、
を備え、
前記ガス供給部は、前記第1面と前記第2面との境界上、または、前記第1面に設けられて径方向外方に向かってガスを送出する周状のガス送出口を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記第4面は、前記第3面の前記下端縁と上下方向の同じ位置にて広がり、または、前記第3面の前記下端縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かうことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記ベース面は、前記第4面の外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう円環状の第5面をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記第3面は、前記第2面の前記外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かうとともに、径方向外方かつ上方に向かって凸となる湾曲面であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記第3面は、前記基板の下方にて前記第2面の前記外周縁に連続することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記第2面と前記第3面との境界と、前記基板の前記外周縁との間の径方向における距離は、0.5mm以上かつ2.0mm以下であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記第2面と前記第3面との境界と、前記基板の前記下面との間の上下方向における距離は、0.6mm以上かつ1.0mm以下であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記第2面は、前記第1面の前記外周縁から所定の傾斜角にて径方向外方かつ上方へと向かう傾斜面であり、
前記第2面の前記傾斜角は、15°以下であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記第2面の径方向の長さは、10mm以上であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記第1面と前記基板の前記下面との間の上下方向における距離は、0.6mm以上かつ1.5mm以下であることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板に対して様々な処理が施される。例えば、水平状態で基板保持部に保持された基板を回転させ、回転中の基板の表面に処理液を供給することにより、基板に対する液処理が行われる。
【0003】
特許文献1のウェットエッチング装置では、基板を保持する基板保持部として、基板の下方に位置する支持体と基板との間に高圧ガスを供給し、基板の下面に沿って流れるガスによる負圧を利用して基板を支持体に向けて吸引するベルヌーイチャックが用いられている。当該ガスは、基板の外周部の下方において支持体上面に形成された環状ノズルから、基板と支持体との間の空間に供給される。当該支持体には、環状ノズルから基板の外周縁よりも径方向外側まで広がるとともに基板から下方に離間する環状のガス排出部が設けられる。ガス排出部の下方には、上記環状ノズルから径方向外方かつ下方に延びる環状のガス排出流路が設けられる。
【0004】
当該ウェットエッチング装置では、基板の上面に供給されたエッチング液が、基板の外周縁から下面側へと回り込み、基板の下面の周縁部と支持体のガス排出部の上面との隙間を満たす。これにより、基板の下面の周縁部に対するエッチング処理が行われる。基板の下面に回り込んだエッチング液は、ガス排出流路を介して径方向外方へと排出される。また、環状ノズルから基板と支持体との間に供給されたガスも、当該ガス排出流路を介して径方向外方へと排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-142818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板に対する液処理では、特許文献1のエッチング処理とは異なり、基板の上面に供給された処理液が基板の下面に回り込むことを防止すべき場合もある。しかしながら、特許文献1のようなベルヌーイチャックにより基板を保持する場合、基板と支持体との間に生じる負圧により、基板の上面に供給されて基板の外周縁から流れ落ちる処理液等が吸引され、基板の下面に回り込むおそれがある。
【0007】
一方、基板と支持体との間に供給されるガスの流量を増大させ、基板下面への処理液の回り込みを防止しようとすると、当該ガスにより基板が押し上げられ、ベルヌーイチャックによる基板保持の安定性が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板の下面への処理液の付着を抑制しつつ基板の保持の安定性を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、基板を水平状態にて保持する基板保持部と、前記基板保持部を上下方向を向く中心軸を中心として回転させる基板回転機構と、前記基板の上面に対して処理液を供給する処理液供給部とを備え、前記基板保持部は、前記基板の下面に対向するとともに前記基板の外周縁から径方向外方へと延在するベース面を有するベース部と、前記ベース面上にて周方向に配列されるとともに前記ベース面から上方に突出し、前記基板の前記下面の外周部に接触する複数の支持ピンと、前記基板の前記下面と前記ベース部の前記ベース面との間にガスを送出して径方向外方へと向かう気流を形成し、ベルヌーイ効果によって前記基板と前記ベース部との間の空間に圧力降下を生じさせるガス供給部とを備え、前記ベース面は、前記基板の中央部と上下方向に対向する水平な円状の面である第1面と、前記基板の下方において前記第1面の外周縁から径方向外方へと広がる円環状の面であり、径方向外方に向かうに従って上方へと向かうとともに前記複数の支持ピンが配置される第2面と、前記基板の前記下面よりも下側にて前記第2面の外周縁に連続する円環状の面であり、前記第2面の前記外周縁から鉛直下方へと広がる、または、径方向外方に向かうに従って下方へと向かう第3面と、前記第3面の下端縁に連続する円環状の面であり、前記基板の前記外周縁よりも径方向外側にて径方向外方へと広がる第4面とを備え、前記ガス供給部は、前記第1面と前記第2面との境界上、または、前記第1面に設けられて径方向外方に向かってガスを送出する周状のガス送出口を備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記第4面は、前記第3面の前記下端縁と上下方向の同じ位置にて広がり、または、前記第3面の前記下端縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理装置であって、前記ベース面は、前記第4面の外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう円環状の第5面をさらに備える。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記第3面は、前記第2面の前記外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かうとともに、径方向外方かつ上方に向かって凸となる湾曲面である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記第3面は、前記基板の下方にて前記第2面の前記外周縁に連続する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の基板処理装置であって、前記第2面と前記第3面との境界と、前記基板の前記外周縁との間の径方向における距離は、0.5mm以上かつ2.0mm以下である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記第2面と前記第3面との境界と、前記基板の前記下面との間の上下方向における距離は、0.6mm以上かつ1.0mm以下である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記第2面は、前記第1面の前記外周縁から所定の傾斜角にて径方向外方かつ上方へと向かう傾斜面であり、前記第2面の前記傾斜角は、15°以下である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記第2面の径方向の長さは、10mm以上である。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記第1面と前記基板の前記下面との間の上下方向における距離は、0.6mm以上かつ1.5mm以下である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、基板の下面への処理液の付着を抑制しつつ基板の保持の安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一の実施の形態に係る基板処理システムを示す平面図である。
図2】基板処理装置の構成を示す側面図である。
図3】基板保持部を示す平面図である。
図4】基板保持部の一部を示す断面図である。
図5】基板保持部の外周部を示す断面図である。
図6】基板保持部の外周部を示す断面図である。
図7A】基板の外周部近傍のガスの流れを示す図である。
図7B】基板の外周部近傍のガスの流れを示す図である。
図7C】基板の外周部近傍のガスの流れを示す図である。
図8A】基板の外周部近傍のガスの流れを示す図である。
図8B】基板の外周部近傍のガスの流れを示す図である。
図8C】基板の外周部近傍のガスの流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システム10のレイアウトを示す図解的な平面図である。基板処理システム10は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を処理するシステムである。基板処理システム10は、インデクサブロック101と、インデクサブロック101に結合された処理ブロック102とを備える。
【0022】
インデクサブロック101は、キャリア保持部104と、インデクサロボット105と、IR移動機構106とを備える。キャリア保持部104は、複数枚の基板9を収容できる複数のキャリア107を保持する。複数のキャリア107(例えば、FOUP)は、所定のキャリア配列方向に配列された状態でキャリア保持部104に保持される。IR移動機構106は、キャリア配列方向にインデクサロボット105を移動させる。インデクサロボット105は、基板9をキャリア107から搬出する搬出動作、および、キャリア保持部104に保持されたキャリア107に基板9を搬入する搬入動作を行う。基板9は、インデクサロボット105によって水平な姿勢で搬送される。
【0023】
処理ブロック102は、基板9を処理する複数(たとえば、4つ以上)の処理ユニット108と、センターロボット109とを備えている。複数の処理ユニット108は、平面視において、センターロボット109を取り囲むように配置されている。複数の処理ユニット108では、基板9に対する様々な処理が施される。後述する基板処理装置は、複数の処理ユニット108のうちの1つである。センターロボット109は、処理ユニット108に基板9を搬入する搬入動作、および、基板9を処理ユニット108から搬出する搬出動作を行う。さらに、センターロボット109は、複数の処理ユニット108間で基板9を搬送する。基板9は、センターロボット109によって水平な姿勢で搬送される。センターロボット109は、インデクサロボット105から基板9を受け取るとともに、インデクサロボット105に基板9を渡す。
【0024】
図2は、基板処理装置1の構成を示す側面図である。図2では、基板処理装置1の構成の一部を断面にて描く。基板処理装置1は、基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板9に処理液を供給して液処理を行う。当該液処理では、例えば、基板処理装置1に搬入されるよりも前の処理において基板9に付着した異物の除去(すなわち、洗浄)が行われる。当該異物は、例えば、基板9に対する研削処理において基板9の表面に残留した残渣である。以下の説明では、図2中の上側および下側を、単に「上側」および「下側」とも呼ぶ。
【0025】
基板処理装置1は、基板保持部2と、基板回転機構33と、カップ部4と、処理液供給部51と、処理部移動機構52と、チャンバ11と、を備える。基板保持部2、基板回転機構33、カップ部4および処理液供給部51等は、チャンバ11の内部空間に収容される。チャンバ11の天蓋部には、当該内部空間にガスを供給して下方に流れる気流(いわゆる、ダウンフロー)を形成する気流形成部12が設けられる。気流形成部12としては、例えば、FFU(ファン・フィルタ・ユニット)が利用される。なお、基準測定値では、FFU以外の気流形成部12が設けられてもよい。
【0026】
基板保持部2および基板回転機構33はそれぞれ、略円板状の基板9を保持して回転させるスピンチャックの一部である。基板保持部2は、水平状態の基板9を下側から保持する。基板保持部2は、ベルヌーイ効果により基板9を吸着して保持するベルヌーイチャックである。基板9は、例えば、直径300mmの略円板状の基板である。
【0027】
図3は、基板保持部2を示す平面図である。図4は、基板保持部2を図3中のIV-IVの位置にて切断した断面図である。図4では、基板保持部2に保持される基板9を二点鎖線にて示す。図3および図4に示すように、基板保持部2は、ベース部21と、複数の支持ピン22と、ガス供給部23とを備える。
【0028】
ベース部21は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする略円板状の部材である。基板9は、ベース部21の上方にベース部21から離間して配置される。ベース部21の上側の主面210(以下、「ベース面210」とも呼ぶ。)は、基板9の下側の主面(以下、「下面92」とも呼ぶ。)から下方に離間した位置にて、基板9の下面92と上下方向に対向する。ベース部21の直径は、基板9の直径よりも大きく、ベース面210は、基板9の外周縁から全周に亘って径方向外方へと延在する。
【0029】
複数の支持ピン22は、ベース部21のベース面210上において、中心軸J1を中心とする周方向(以下、単に「周方向」とも呼ぶ。)に互いに離間しつつ配列される。複数の支持ピン22は、中心軸J1を中心とする同一の円周上に配置される。複数の支持ピン22は、例えば、周方向において略等角度間隔に配置される。図3に示す例では、複数の支持ピン22の数は30個である。複数の支持ピン22は、ベース面210から上方に突出する突起部である。各支持ピン22の形状は、例えば、略半球状である。複数の支持ピン22は、ベース部21に固定されており、ベース部21に対して相対的に移動しない。基板保持部2は、複数の支持ピン22を基板9の下面92の外周部に下側から接触させることにより、基板9の下面92の中央部に非接触の状態で基板9を略水平状態にて保持する。
【0030】
ガス供給部23は、ベース部21のベース面210に設けられる複数のガス送出口232を備える。複数のガス送出口232は、平面視において基板9と重なる位置にて、基板9の下面92から下方に離間して配置される。複数のガス送出口232は、中心軸J1から径方向外側に離れた位置において、中心軸J1を中心とする同一の円周上に、周方向に互いに離間しつつ配列される。複数のガス送出口232の数は、例えば150個である。複数のガス送出口232は、複数の支持ピン22よりも径方向内側において、基板9の外周部の下方に周状に配置される。
【0031】
複数のガス送出口232は、ベース部21の内部に設けられたガス流路231を介して、図示省略のガス供給源に接続される。各ガス送出口232からは、径方向外方かつ上方(すなわち、斜め上)に向かってガスが送出される。ガス送出口232からのガスの送出方向に沿って見たガス送出口232の形状は、例えば略円形である。ガス送出口232の当該形状は、様々に変更されてよい。また、ガス送出口232の配置や個数も、様々に変更されてよい。
【0032】
ガス供給部23は、ベース面210の中央部に設けられる中央ガス送出口234をさらに備える。中央ガス送出口234は、例えば、平面視において中心軸J1と重なる位置にて、基板9の下面92から下方に離間して配置される1つの送出口である。中央ガス送出口234は、ベース部21の内部に設けられたガス流路233を介して、上述のガス供給源に接続される。中央ガス送出口234からは、略鉛直上方に向かって(すなわち、中心軸J1に沿って)ガスが送出される。中央ガス送出口234からのガスの送出方向に沿って見た中央ガス送出口234の形状は、例えば略円形である。中央ガス送出口234の当該形状は、様々に変更されてよい。また、中央ガス送出口234の配置や個数も、様々に変更されてよい。
【0033】
ガス供給部23では、中央ガス送出口234および複数のガス送出口232から、基板9の下面92とベース部21のベース面210との間の空間(以下、「下方空間90」とも呼ぶ。)にガスが送出される。当該ガスは、例えば、窒素ガス等の不活性ガス、または、空気等である。当該ガスは、例えば、高圧ガスまたは圧縮ガスである。中央ガス送出口234および複数のガス送出口232から送出されたガスは、下方空間90において径方向外方へと流れる。これにより、下方空間90において径方向中央部(以下、単に「中央部」とも呼ぶ。)から径方向外方へと向かう気流が形成され、当該気流によるベルヌーイ効果によって下方空間90に圧力降下が生じる。その結果、基板9が基板保持部2に吸着される。換言すれば、下方空間90の気圧が基板9の上方の気圧よりも低くなり(すなわち、負圧となり)、基板9が上下の気圧差により基板保持部2の複数の支持ピン22に対して押圧されて、その位置が固定される(すなわち、保持される)。
【0034】
基板9が基板保持部2に保持された状態では、ベース部21、中央ガス送出口234および複数のガス送出口232は、基板9から下方に離間しており、基板9とは非接触である。なお、基板9が基板保持部2に対して吸着されていない状態では、基板9は、複数の支持ピン22から容易に上方へと離間可能であり、また、複数の支持ピン22と接触した状態で略水平に移動する(すなわち、複数の支持ピン22上で側方に滑る)ことも可能である。
【0035】
基板保持部2では、ベース部21のベース面210上に、図示省略の複数のリフトピン、および、複数のセンタリングピンが設けられる。複数のリフトピン、および、複数のセンタリングピンは、複数の支持ピン22よりも径方向外側に位置する。複数のリフトピンは、基板処理装置1に対する基板9の搬出入時に、複数の支持ピン22との間で基板9の受け渡しを行う。複数のセンタリングピンは、複数の支持ピン22上に載置されて吸着されていない状態の基板9の外周縁を水平方向に押すことにより、基板9の水平位置を調節する。
【0036】
図2に示すように、基板回転機構33は、基板保持部2の下方に配置される。基板回転機構33は、中心軸J1を中心として基板9を基板保持部2と共に回転する。基板回転機構33は、シャフト331と、モータ332とを備える。シャフト331は、中心軸J1を中心とする略円筒状の部材である。シャフト331は、上下方向に延び、基板保持部2のベース部21の下面中央部に接続される。モータ332は、シャフト331を回転させる電動回転式モータである。モータ332がシャフト331を回転させることにより、シャフト331に接続されたベース部21が、共に回転される。なお、基板回転機構33は、他の構造を有するモータ(例えば、中空モータ等)を備えていてもよい。
【0037】
カップ部4は、中心軸J1を中心とする環状のカップ41を備える。カップ41は、基板9および基板保持部2の周囲において全周に亘って配置され、基板9および基板保持部2の側方を覆う。カップ41は、回転中の基板9から周囲に向かって飛散する処理液等の液体を受ける受液容器である。カップ41は、基板保持部2の回転および静止に関わらず、周方向において静止しており回転しない。カップ41の底部には、カップ41にて受けられた処理液等をチャンバ11の外部へと排出する排液ポート(図示省略)が設けられる。
【0038】
カップ41は、図示省略の昇降機構により上下方向に移動する。当該昇降機構は、例えば、電動リニアモータ、エアシリンダ、または、ボールネジおよび電動回転式モータを備える。カップ部4は、径方向に積層される複数のカップ41を備えていてもよい。カップ部4が複数のカップ41を備える場合、複数のカップ41はそれぞれ独立して上下方向に移動可能であり、基板9から飛散する処理液の種類に合わせて、複数のカップ41が切り替えられて処理液の受液に使用される。
【0039】
処理液供給部51は、基板9の上面91に対して処理液(例えば、洗浄液)を供給する。処理液供給部51は、基板9の上面91に向けて処理液を吐出する上ノズル511を備える。上ノズル511は、例えば、処理液とガスとを混合して当該処理液を基板9の上面91に向けて噴霧する二流体ノズルである。処理液供給部51では、処理液がガスの高速な流れと衝突することにより粉砕され、微粒化された状態で基板9の上面91に対して高速にて吹き付けられる。これにより、基板9の上面91に対して物理的な洗浄が行われ、基板9の上面91に付着している異物が除去される。当該処理液は、例えば、DIWまたはCO水である。当該ガスは、例えば、窒素ガス等の不活性ガス、または、空気等である。当該ガスは、例えば、高圧ガスまたは圧縮ガスである。
【0040】
処理部移動機構52は、処理液供給部51の上ノズル511を基板9の上方の空間において略水平に揺動する揺動機構である。処理部移動機構52は、アーム521と、アーム回転機構522とを備える。アーム521は、略水平に延びる棒状部材である。アーム521の一方の端部には上ノズル511が固定され、他方の端部は、カップ部4の径方向外側に位置するアーム回転機構522に接続される。アーム回転機構522は、上下方向に延びる回転軸を中心としてアーム521を略水平方向に回転させる。
【0041】
処理部移動機構52は、回転中の基板9に対して処理液を吐出する上ノズル511を、基板9の上面91の中央部と上下方向に対向する第1位置と、当該第1位置よりも径方向外側に位置する第2位置との間で往復移動させる。当該第2位置は、基板9の上面91の外周部と上下方向に対向することが好ましい。これにより、基板9の上面91の略全面に亘って上述の物理的な洗浄処理が行われる。洗浄処理が終了すると、処理部移動機構52は、処理液供給部51の上ノズル511を基板9の上方の空間から、基板9の外周縁よりも径方向外側の退避位置へと移動する。処理部移動機構52のアーム回転機構522は、例えば、電動回転式モータを備える。処理部移動機構52は、他の構造を有していてもよい。
【0042】
図4に例示するように、ベース部21のベース面210は、中心軸J1から径方向外方へと略水平に広がり、基板9の外周部の下方において、径方向外方かつ上方へと広がる傾斜面となる。ベース面210は、複数の支持ピン22よりも径方向外側にて下方へと向かい、平面視において基板9の外周縁よりも径方向外側の位置から略水平に広がる水平面となる。ベース面210は、当該水平面の径方向外端から径方向外方かつ下方へと広がる。
【0043】
図3および図4に示すように、ベース面210は、第1面211と、第2面212と、第3面213と、第4面214と、第5面215とを備える。第1面211、第2面212、第3面213、第4面214および第5面215は、中心軸J1から径方向外方に向かってこの順に連続する。第1面211は、中心軸J1を中心として略水平に(すなわち、中心軸J1に対して略垂直に)広がる略円状の面である。第1面211は、基板9の中央部と上下方向に対向する。
【0044】
第2面212は、基板9の下方において、第1面211の略円周状の外周縁から径方向外方へと広がる略円環状の面である。第1面211の外周縁(すなわち、第1面211と第2面212との境界)は、平面視において基板9と重なる。以下の説明では、「基板9の下方」とは、平面視において基板9と重なり、かつ、基板9の下面92よりも上下方向において下側の位置を意味する。第2面212は、第1面211の外周縁から径方向外方に向かうに従って上方へと向かう傾斜面である。図4に示す例では、第2面212の全体は、上下方向に関して基板9の下面92よりも下側に位置する。第2面212の縦断面は略直線状であり、水平方向に対する第2面212の傾斜角(鋭角)は略一定である。換言すれば、第2面212は、第1面211の外周縁から所定の傾斜角にて径方向外方に向かうに従って上方へと向かう平坦な傾斜面である。なお、第2面212は、例えば、径方向内方かつ上方に向かって凸となる湾曲面であってもよい。
【0045】
第2面212上には、上述の複数の支持ピン22が配置される。複数の支持ピン22は、第2面212の略円周状の外周縁(すなわち、第2面212の上端縁)よりも径方向内側に位置し、第2面212から上方に向かって突出する。また、上述の複数のガス送出口232は、第2面212と第1面211との境界上、または、当該境界よりも径方向内側において第1面211上に設けられる。
【0046】
第3面213は、上下方向に関して基板9の下面92よりも下側において、第2面212の外周縁に連続する略円環状の面である。図4に示す例では、第2面212の外周縁(すなわち、第2面212と第3面213との境界)は、平面視において基板9と重なる。換言すれば、第3面213は、基板9の下方にて第2面212の外周縁に連続する。第3面213は、第2面212の外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう傾斜面である。第3面213は、例えば、径方向外方かつ上方に向かって凸となる湾曲面である。すなわち、水平方向に対する第3面213の傾斜角(鋭角)は、径方向外方に向かうに従って大きくなる。第3面213は、例えば、中心軸J1を中心とする略円環体の外側面の一部である。
【0047】
なお、第3面213は、当該傾斜角が略一定な平坦な傾斜面であってもよく、径方向内方かつ下方に向かって凸となる湾曲面であってもよい。また、第3面213は、第2面212の外周縁から略鉛直下方へと広がる面であってもよい。この場合、第3面213は、中心軸J1を中心とする略円筒状の面である。
【0048】
第4面214は、第3面213の略円周状の下端縁から径方向外方へと広がる略円環状の面である。図4に示す例では、第4面214は、第3面213の下端縁から略水平に広がる。換言すれば、第4面214は、第3面213の下端縁と上下方向の略同じ位置にて、中心軸J1に略垂直に広がる水平面である。第3面213の下端縁(すなわち、第3面213と第4面214との境界)は、基板9の外周縁よりも径方向外側に位置する。したがって、第4面214の全体が、基板9の外周縁よりも径方向外側に位置する。なお、第3面213が、第2面212の外周縁から径方向外方かつ下方へと向かう傾斜面である場合、第3面213と第4面214との境界は、第3面213の外周縁でもある。
【0049】
ベース面210では、第4面214は、第3面213の下端縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう傾斜面であってもよい。また、第3面213と第4面214との境界は、基板9の外周縁と径方向の略同じ位置に位置してもよい。この場合、第4面214の内周縁は平面視において基板9の外周縁と重なり、基板9の内周縁以外の部位は、基板9の外周縁よりも径方向外側に位置し、平面視において基板9とは重ならない。ベース面210では、第3面213と第4面214との境界は、基板9の外周縁よりも径方向内側に位置していてもよい。この場合、第4面214の内周部は平面視において基板9の外周部と重なり、基板9の内周部以外の部位は、基板9の外周縁よりも径方向外側に位置し、平面視において基板9とは重ならない。
【0050】
第5面215は、第4面214の略円周状の外周縁から、径方向外方へと広がる略円環状の面である。第4面214の外周縁(すなわち、第4面214と第5面215との境界)は、基板9の外周縁よりも径方向外側に位置する。第5面215は、第4面214の外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう傾斜面である。図4に示す例では、第5面215の縦断面は略直線状であり、水平方向に対する第5面215の傾斜角(鋭角)は略一定である。なお、第5面215は、例えば、径方向外方かつ上方に向かって凸となる湾曲面であってもよい。
【0051】
図5は、ベース部21の外周部近傍を拡大して示す図である。図5は、支持ピン22が配置されていない位置におけるベース部21の縦断面図であるため、図5では、支持ピン22を二点鎖線にて描いている。基板処理装置1では、上述のように、中央ガス送出口234(図4参照)および複数のガス送出口232から送出されたガスにより、下方空間90において径方向中央部から径方向外方へと向かう気流が形成される。そして、当該気流によるベルヌーイ効果によって下方空間90に圧力降下が生じ、基板9が基板保持部2に吸着される。図5では、当該気流を、符号93を付した矢印で概念的に示す。基板処理装置1では、基板9が基板回転機構33(図2参照)によって回転することにより、気流93が遠心力によって増速される。換言すれば、基板9が回転している状態では、下方空間90における径方向外方へと向かうガスの流速が増大する。本実施の形態では、基板9の回転数は、例えば、200rpm~1500rpmである。中央ガス送出口234および複数のガス送出口232から下方空間90に供給されるガスの流量は、例えば、270L/分~300L/分である。
【0052】
また、基板処理装置1では、基板9の上面91上のガスが、基板9の回転による遠心力によって径方向外方へと移動する。これにより、基板9の上面91上において、径方向中央部から径方向外方へと向かう気流が形成される。図5では、当該気流を、符号94を付した矢印で概念的に示す。基板9の上面91に沿って径方向外方へと向かう気流94は、基板9の外周縁よりも径方向外側において、ベース面210との間に生じるコアンダ効果によって、ベース面210に沿うように径方向外方かつ下方へと流れる。これにより、基板9の外周縁近傍の部位に下方へと向かう力が作用し、基板9の外周部が複数の支持ピン22に対して押圧される。その結果、基板保持部2による基板9の保持の安定性が向上する。換言すれば、基板処理装置1では、気流93によるベルヌーイ効果、および、気流94のコアンダ効果により、基板9が基板保持部2によって強固に保持される。
【0053】
基板処理装置1では、基板9の上面91上に供給された処理液は、上述のように、基板9の回転による遠心力によって径方向外方へと移動し、基板9の外周縁から径方向外方へと飛散する。基板9の外周縁近傍の処理液には、上述のベルヌーイ効果による負圧によって、基板9の下面92へと回り込む方向の力が働く。一方、基板9の外周縁近傍の処理液には、上述のコアンダ効果により基板9の外周縁からベース面210に沿って流れる気流94よって、基板9の外周縁から径方向外方かつ下方へと向かう力も働く。これにより、基板9の上面91上の処理液が、基板9の下面92へと回り込んで付着することが抑制される。
【0054】
基板保持部2では、上述のように、ベース部21の第2面212が、基板9の外周部の下方において径方向外方へと向かうに従って上方へと向かう傾斜面とされる。これにより、基板9の外周部の下方において、下方空間90の上下方向の高さ(以下、単に「高さ」とも呼ぶ。)を漸減させ、気流93の速度を増大させている。その結果、ベルヌーイ効果による基板9の吸着力(すなわち、ベルヌーイ効果によって基板9を複数の支持ピン22に押圧する力)を増大させることができる。また、第1面211と基板9の下面92との間の上下方向の距離を比較的大きく確保することができるため、中央ガス送出口234(図4参照)および複数のガス送出口232から送出されるガスにより、基板9が上方へと押し上げられることを抑制することができる。
【0055】
基板保持部2では、第2面212の外周縁から下方へと広がる第3面213が設けられることにより、コアンダ効果によって基板9を複数の支持ピン22に押圧する力を増大させることができる。その結果、基板9の保持の安定性を向上することができる。また、当該コアンダ効果による気流94によって、基板9の上面91上の処理液を外周縁から下方へと導くことができるため、当該処理液が下面92に回り込む(すなわち、基板9の外周縁から径方向内方へと移動する)ことを抑制することができる。
【0056】
基板保持部2では、第3面213の外周縁から径方向外方へと広がる第4面214が設けられることにより、コアンダ効果によって基板9の外周縁から下方へと向かう気流94が、径方向外方へと導かれる。これにより、基板9の上面91上の処理液が、基板9の下面92に回り込んで付着することをさらに抑制することができる。また、第4面214が、第3面213の下端縁よりも上側には広がらないことにより、基板9の外周縁から径方向外方かつ下方へと向かう気流94が好適に形成される。これにより、基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。なお、基板9の保持の安定性向上の観点からは、第4面214上には、上方へと突出する円環状の構造等は設けられないことが好ましい。
【0057】
基板保持部2では、第4面214の外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう第5面215がさらに設けられることにより、第4面214に沿って径方向外方へと向かう気流93が斜め下方へと導かれる。これにより、当該気流93と、基板9の外周縁から径方向外方かつ下方に向かう気流94とが衝突して(すなわち、合流して)乱流が発生することを抑制することができる。その結果、コアンダ効果による基板9の外周部の下方への押圧を好適に実現し、基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。
【0058】
図6に示すように、基板保持部2では、基板9の下方に位置する第2面212と第3面213との境界(すなわち、第3面213の内周縁)と、基板9の外周縁との間の径方向における距離をL1とすると、距離L1は0.5mm以上かつ2.0mm以下であることが好ましい。上記距離L1が0.5mm以上であることにより、第2面212と第3面213との境界を径方向外方に向かって通過した気流93(図5参照)が、基板9の外周縁から径方向外方かつ上方に向かうことを抑制することができる。これにより、気流93とコアンダ効果による気流94(図5参照)とが、基板9の外周縁近傍にて衝突して乱流が発生することを抑制することができる。その結果、コアンダ効果による基板9の外周部の下方への押圧を好適に実現し、基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。一方、距離L1が2.0mm以下であることにより、ベルヌーイ効果による吸着力を、基板9の外周縁近傍に好適に作用させることができる。その結果、基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。
【0059】
基板保持部2では、第2面212と第3面213との境界と、基板9の下面92との間の上下方向における距離L2は、0.6mm以上かつ1.0mm以下であることが好ましい。距離L2が0.6mm以上であることにより、第2面212と第3面213との境界を径方向外方に向かって通過する気流93の速度が過大になることを抑制することができる。これにより、気流93とコアンダ効果による気流94とが、基板9の外周縁近傍にて衝突して乱流が発生することを抑制することができる。その結果、コアンダ効果による基板9の外周部の下方への押圧を好適に実現し、基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。一方、距離L2が1.0mm以下であることにより、基板9の外周部の下方における気流93の速度低下を抑制し、ベルヌーイ効果による基板9の吸着力が過小となることを抑制することができる。また、基板9の外周縁近傍の処理液が、ベルヌーイ効果による負圧によって、基板9の下面92へと回り込むことを好適に抑制することができる。その結果、基板9の下面92への処理液の付着をさらに抑制することができる。
【0060】
基板保持部2では、第2面212の上述の傾斜角θは、15°以下であることが好ましい。これにより、複数の支持ピン22近傍における下方空間90の過剰な圧力上昇を抑制することができる。その結果、ベルヌーイ効果による基板9の吸着が、上述の過剰な圧力上昇によって阻害されることを抑制し、基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。なお、第2面212が、径方向内方かつ上方に向かって凸となる湾曲面である場合、上記傾斜角θは、中心軸J1を通る基板保持部2の縦断面において、第2面212の内周縁と外周縁とを結ぶ仮想的な直線と、水平方向に延びる直線との成す角度(鋭角)である。第2面212の傾斜角θの下限は特に限定されないが、現実的には、傾斜角θは10°以上である。
【0061】
基板保持部2では、第2面212の径方向の長さL3(すなわち、第2面212の内周縁と外周縁との間の径方向における最短距離)は、10mm以上であることが好ましい。これにより、第2面212の傾斜角θを過大とすることなく、基板9の外周部の下方において気流93の速度を増大させることができる。その結果、ベルヌーイ効果による基板9の吸着力を好適に増大させ、基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。第2面212の径方向の長さL3の上限は特に限定されないが、現実的には、長さL3は20mm以下である。
【0062】
基板保持部2では、第1面211と基板9の下面92との間の上下方向における距離L4は、0.6mm以上かつ1.5mm以下であることが好ましい。距離L4が0.6mm以上であることにより、中央ガス送出口234(図4参照)および複数のガス送出口232から送出されるガスにより、基板9が上方へと押し上げられることを抑制することができる。また、距離L4が1.5mm以下であることにより、基板9の下方における気流93の速度低下を抑制し、ベルヌーイ効果による基板9の吸着力が過小となることを抑制することができる。その結果、基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。
【0063】
基板保持部2では、第3面213の上下方向の高さ(すなわち、第3面213の上端縁と下端縁との間の上下方向の距離)L5は、1mm以上であることが好ましい。これにより、コアンダ効果を強化して基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。第3面213の高さL5の上限は特に限定されないが、現実的には、高さL5は10mm以下である。
【0064】
以上に説明したように、基板9を処理する基板処理装置1は、基板保持部2と、基板回転機構33と、処理液供給部5とを備える。基板保持部2は、基板9を水平状態にて保持する。基板回転機構33は、基板保持部2を上下方向を向く中心軸J1を中心として回転させる。処理液供給部5は、基板9の上面91に対して処理液を供給する。基板保持部2は、ベース部21と、複数の支持ピン22と、ガス供給部23とを備える。ベース部21は、基板9の下面92に対向する。ベース部21は、基板9の外周縁から径方向外方へと延在するベース面210を有する。複数の支持ピン22は、ベース面210上にて周方向に配列される。複数の支持ピン22は、ベース面210から上方に突出し、基板9の下面92の外周部に接触する。ガス供給部23は、基板9の下面92とベース部21のベース面210との間にガスを送出して径方向外方へと向かう気流93を形成し、ベルヌーイ効果によって基板9とベース部21との間の空間(すなわち、下方空間90)に圧力降下を生じさせる。
【0065】
ベース面210は、第1面211と、第2面212と、第3面213と、第4面214とを備える。第1面211は、基板9の中央部と上下方向に対向する水平な円状の面である。第2面212は、基板9の下方において第1面211の外周縁から径方向外方へと広がる円環状の面である。第2面212は、径方向外方に向かうに従って上方へと向かう。第2面212には、上述の複数の支持ピン22が配置される。第3面213は、基板9の下面92よりも下側にて第2面212の外周縁に連続する円環状の面である。第3面213は、第2面212の外周縁から鉛直下方へと広がる。または、第3面213は、第2面212の外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう。第4面214は、第3面213の下端縁に連続する円環状の面である。第4面214は、基板9の外周縁よりも径方向外側にて径方向外方へと広がる。ガス供給部23は、第1面211と第2面212との境界上、または、第1面211に設けられて径方向外方に向かってガスを送出する周状のガス送出口232を備える。
【0066】
当該基板処理装置1では、上述のように、気流93によるベルヌーイ効果、および、コアンダ効果による気流94によって、基板9の下面92への処理液の付着を抑制することができるとともに、基板9の保持の安定性を向上することもできる。
【0067】
基板処理装置1では、第4面214は、第3面213の下端縁と上下方向の同じ位置にて広がり、または、第3面213の下端縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かうことが好ましい。これにより、上述のように、コアンダ効果によって基板9の外周縁から下方へと向かう気流94が、径方向外方へと好適に導かれる。その結果、基板9の下面92への処理液の付着をさらに抑制することができるとともに、基板9の保持の安定性をさらに向上することもできる。
【0068】
基板処理装置1では、ベース面210は、第4面214の外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かう円環状の第5面215をさらに備えることが好ましい。これにより、上述のように、コアンダ効果を強化して基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。
【0069】
上述のように、第3面213は、第2面212の外周縁から径方向外方に向かうに従って下方へと向かうとともに、径方向外方かつ上方に向かって凸となる湾曲面であることが好ましい。これにより、コアンダ効果を強化して基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。
【0070】
図7Aないし図7Cは、第3面213の形状を変更した場合のガスの流れを、CFD(Computational Fluid Dynamics)シミュレーションにより求めた図である。図7Aないし図7Cでは、基板9の外周部近傍のガスの流れを示す。当該CFDシミュレーションは、Ansys社製のAnsys Fluentにより、基板9の回転速度を1500rpmとし、ガス供給部23(図4参照)から下方空間90へのガス供給流量を300L/分として行った。なお、図7Aないし図7Cでは、第2面212の形状が上記例と少し異なるが、CFDシミュレーション結果の傾向は大きく異ならない。
【0071】
図7Aでは、第3面213は、第2面212の外周縁から径方向外方かつ下方に向かって広がるとともに、径方向外方かつ上方に向かって凸となる湾曲面である。第3面213の水平方向に対する傾斜角(すなわち、中心軸J1を通る基板保持部2の縦断面において、第3面213の内周縁と外周縁とを結ぶ仮想的な直線と、水平方向に延びる直線との成す角度(鋭角))は、約50°である。図7Bでは、第3面213は、第2面212の外周縁から径方向外方かつ下方に向かって広がる平坦な傾斜面である。第3面213の水平方向に対する傾斜角は約45°である。図7Aおよび図7Bに示す第3面213の当該傾斜角は、上述のコアンダ効果を好適に生じさせるという観点からは、30°以上であることが好ましい。図7Cでは、第3面213は、第2面212の外周縁から鉛直下方に広がる円筒面である。
【0072】
図7Aないし図7Cに示すように、第3面213が上記湾曲面である場合(図7Aに対応)、基板9の外周縁近傍(すなわち、基板9の外周縁の径方向外側)において、基板9の上方から径方向外方へと向かうガスの流れが下方に向かって最も大きく凹んでおり、上述のコアンダ効果が最も大きいことがわかる。第3面213が上記湾曲面である場合に基板9に作用する保持力(すなわち、吸着力)は、第3面213が上記傾斜面または上記円筒面である場合(図7Bまたは図7Cに対応)の当該保持力よりも、約1%~2%大きかった。
【0073】
基板処理装置1では、第3面213は、基板9の下方にて第2面212の外周縁に連続することが好ましい。これにより、第2面212と第3面213との境界を径方向外方に向かって通過した気流93(図5参照)と、コアンダ効果によって基板9の外周縁から径方向外方かつ下方へと向かう気流94(図5参照)とが、基板9の外周縁近傍にて衝突して乱流が発生することを抑制することができる。したがって、コアンダ効果による基板9の外周部の下方への押圧を好適に実現し、基板9の保持の安定性をさらに向上することができる。
【0074】
図8Aないし図8Cは、第2面212と第3面213との境界と、基板9の外周縁との位置関係を変更した場合のガスの流れを、CFDシミュレーションにより求めた図である。図8Aないし図8Cでは、基板9の外周部近傍のガスの流れを示す当該CFDシミュレーションは、Ansys社製のAnsys Fluentにより、基板9の回転速度を1000rpmとし、ガス供給部23から下方空間90へのガス供給流量を300L/分として行った。なお、図8Aないし図8Cでは、第2面212および第3面213の形状が上記例と少し異なるが、CFDシミュレーション結果の傾向は大きく異ならない。
【0075】
図8Aでは、第2面212と第3面213との境界は基板9の下方に位置し、上述の距離L1(すなわち、第2面212と第3面213との境界と、基板9の外周縁との間の径方向における距離)は、0.5mmである。図8Bでは、第2面212と第3面213との境界は基板9の下方に位置し、距離L1は3.5mmである。図8Cでは、第2面212と第3面213との境界は、基板9の下方には位置しておらず、基板9の外周縁よりも径方向外側に位置する。第2面212と第3面213との境界は、図8Aに示す位置よりも3.0mm径方向外側に位置している。
【0076】
図8Cに示すように、第2面212と第3面213との境界が基板9の下方に位置していない場合、基板9の外周縁近傍(すなわち、基板9の外周縁の径方向外側)において、基板9の上方から径方向外方へと向かうガスの流れと、基板9の下方から径方向外方へと向かうガスの流れとが衝突して乱流が発生する。一方、図8Aおよび図8Bに示すように、第2面212と第3面213との境界が基板9の下方に位置している場合、基板9の外周縁近傍において、基板9の上方から径方向外方へと向かうガスの流れと、基板9の下方から径方向外方へと向かうガスの流れとの衝突が抑制される。その結果、コアンダ効果による基板9の外周部の下方への押圧が好適に実現され、基板9の保持の安定性が向上される。第2面212と第3面213との境界が基板9の下方に位置している場合に基板9に作用する保持力(すなわち、吸着力)は、当該境界が基板9の下方に位置していない場合の当該保持力よりも、約7%~8%大きかった。
【0077】
また、図8Aおよび図8Bに示すように、上述の距離L1が0.5mm以上かつ2.0mm以下である場合(図8Aに対応)、当該距離L1が2.0mmよりも大きい場合(図8Bに対応)に比べて、基板9の上方から径方向外方へと向かうガスの流れが、基板9の外周縁近傍において下方に向かって大きく凹んでいる。したがって、距離L1が0.5mm以上かつ2.0mm以下である場合、上述のコアンダ効果が大きくなり、基板9の保持の安定性が向上することがわかる。
【0078】
上述の基板処理装置1では、様々な変更が可能である。
【0079】
例えば、支持ピン22の数および形状は、上記例に限定されるものではなく、様々に変更されてよい。また、ガス送出口232の数、形状および配置は、上記例に限定されるものではなく、様々に変更されてよい。例えば、複数のガス送出口232に代えて、中心軸J1を中心とする略円環状の1つのガス送出口が、ベース面210上に設けられてもよい。
【0080】
基板保持部2では、ベース面210の形状や寸法は、上記例には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、第1面211と基板9の下面92との間の上下方向における距離L4は、0.6mm未満であってもよく、1.5mmよりも大きくてもよい。また、第2面212と第3面213との境界と、基板9の下面92との間の上下方向における距離L2は、0.6mm未満であってもよく、1.0mmよりも大きくてもよい。第2面212と第3面213との境界と、基板9の外周縁との間の径方向における距離L1は、0.5mm未満であってもよく、2.0mmよりも大きくてもよい。
【0081】
基板保持部2では、第2面212の径方向の長さL3は、10mm未満であってもよい。また、第2面212の傾斜角θは15°よりも大きくてもよい。第2面212は、必ずしも、内周縁から外周縁に至る全域に亘って傾斜している必要はなく、例えば、第2面212の外周縁近傍の部位は、中心軸J1に略垂直な水平面であってもよい。この場合、当該水平面上に複数の支持ピン22が配置されてもよい。
【0082】
基板保持部2では、第3面213は、基板9の外周縁よりも径方向外側において第2面212の外周縁に連続していてもよい。
【0083】
基板保持部2では、第4面214は、第3面213の下端縁から径方向外方に向かうに従って上方に向かって広がっていてもよい。また、ベース面210は、第5面215を含んでいなくてもよい。
【0084】
上述の例では、基板処理装置1により処理される基板9は、上下方向の厚さが略全面に亘って略均一であるものとして説明したが、これには限定されない。例えば、基板9は、外周部の厚さが、当該外周部よりも内側の領域(以下、「主部」とも呼ぶ。)よりも厚い基板であってもよい。当該基板9の上面91は、例えば、主部において外周部よりも下方に凹んでいる。当該基板9は、例えば、略均一な厚さを有する基板に対して、主部に相当する部位を研削処理(すなわち、グラインド処理)することにより形成される。
【0085】
基板処理装置1は、半導体基板以外に、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等の平面表示装置(Flat Panel Display)に使用されるガラス基板、あるいは、他の表示装置に使用されるガラス基板の処理に利用されてもよい。また、上述の基板処理装置1は、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等の処理に利用されてもよい。
【0086】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0087】
1 基板処理装置
2 基板保持部
5 処理液供給部
9 基板
21 ベース部
22 支持ピン
23 ガス供給部
33 基板回転機構
51 処理液供給部
90 下方空間
91 (基板の)上面
92 (基板の)下面
210 ベース面
211 第1面
212 第2面
213 第3面
214 第4面
215 第5面
232 ガス送出口
J1 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C