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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141517
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】クレーンの巻過防止装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B66C23/88 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047873
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】503171913
【氏名又は名称】サコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 雅之
(72)【発明者】
【氏名】豊田 達也
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA06
3F205AA07
3F205HA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来に比較してより安全性が向上し、しかも設置コストを安価に出来、さらには確実にクレーンロープの巻過を防止できる巻過防止装置を提供でき、また、ロープの緩みを検出して巻過防止を行う巻過防止装置に加えて本発明による巻過防止装置を設けることにより、二重に巻過を防止できるクレーンの巻過防止装置を提供する。
【解決手段】本発明は、クレーンのブーム先端部2と該先端部から巻き上げロープ3を介して吊下された吊り具4とを有し、前記ブーム先端部2下面と前記吊り具4上面の間には、ロープ巻き上げ時の接近不可間隔Hが設定されてなり、前記巻き上げロープ3の巻き上げ時に、前記吊り具4上面が前記接近不可間隔H内に進入したとき、前記吊り具4の上面が当接して検知信号を発するセンサ6を前記接近不可間隔H内に設けたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのブーム先端部と該先端部から巻き上げロープを介して吊下された吊り具とを有し、
前記ブーム先端部下面と前記吊り具上面の間には、ロープ巻き上げ時の接近不可間隔が設定されてなり、
前記巻き上げロープの巻き上げ時に、前記吊り具上面が前記接近不可間隔内に進入したとき、前記吊り具の上面が当接して検知信号を発するセンサを前記接近不可間隔内に設けた、
ことを特徴とするクレーンの巻過防止装置。
【請求項2】
前記センサは、前記接近不可間隔内で前記吊り具の上面と対向する箇所に前記吊り具の上面の当接を検知するセンサとして設けられた、
ことを特徴とする請求項1記載のクレーンの巻過防止装置。
【請求項3】
クレーンのブーム先端部と該先端部から巻き上げロープを介して吊下された吊り具とを有し、
前記ブーム先端部下面と前記吊り具上面の間には、ロープ巻き上げ時の接近不可間隔が設定されてなり、
前記巻き上げロープの巻き上げ時に、前記吊り具上面が前記接近不可間隔内に進入したとき、前記ブーム先端から吊下された重錘が吊り具正面に載置して吊下ロープの緩みを発生させ、前記緩みを検知して巻き上げロープの巻き上げを停止させる防止装置と共に、前記吊り具の上面が当接して検知信号を発するセンサを前記接近不可間隔内に設け、二重の防止装置とした、
ことを特徴とするクレーンの巻過防止装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの巻過防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンの巻過防止装置とは、クレーンに接続されている吊り具のフックを最上限まで巻上げたときにワイヤーロープの巻上げを停止させ、ワイヤーロープ巻過によるクレーンの破損や、ワイヤーロープ切断による荷の落下などの危険を防止するための装置をいう。
【0003】
従来、前記巻過防止装置には、吊り具の位置を、吊り下げられた重錘、あるいはレバーまたは近接センサなどで検知し、これにより例えば、リミットスイッチを作動させ、また、巻上げドラムの回転に連動して動くねじに取付けられたトラベラーが、リミットスイッチを作動させ、間接的にフックの上限位置を検出するものがあった。
上記の重錘を用いた巻過防止装置は、吊り具を構成するフックが決められた上限の高さになると、自動的に警報を発したりフックブロックの巻上げを停止させたりする。
【0004】
ここで、重錘を用いた従来の巻過防止装置は、巻き上げ用ロープを通過可能にした貫通孔が設けられた重錘を使用し、該重錘はクレーンを構成するブーム先端に取り付けた巻き上げロープが前記貫通孔を貫挿して前記重錘の上下運動を規制し、かつ別の吊り下げロープによりブーム先端から吊り下げられて用いられる。
【0005】
この重錘を有する巻過防止装置は、巻き上げ用ロープの巻き上げにより前記吊り具が持ち上げられ、該吊り具が設定された高さに達すると、すなわちクレーンのブーム先端部下面と巻き上げられる吊り具の上面までの間隔が設定された間隔以下になると、前記重錘により引っ張られている吊下ロープに緩みを生じさせる構造となっている。そして、この緩みを検出器が検出し、前記検出器より停止信号が発信されて巻き上げを停止させるものであった。
【0006】
ところで、従来では前記ロープの緩みを介しての間接的な検出方法は、上限まで吊り具を上げて行う吊り上げ運搬作業で採用されている安全装置の一つではあるが、近年信頼性に不安があるとの懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-256356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解消するために創案されたものであり、従来に比較してより安全性が向上し、しかも設置コストを安価に出来、さらには確実にクレーンロープの巻過を防止できる巻過防止装置を提供でき、また、ロープの緩みを検出して巻過防止を行う巻過防止装置に加えて本発明による巻過防止装置を設けることにより、二重に巻過を防止できるクレーンの巻過防止装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
クレーンのブーム先端部と該先端部から巻き上げロープを介して吊下された吊り具とを有し、
前記ブーム先端部下面と前記吊り具上面の間には、ロープ巻き上げ時の接近不可間隔が設定されてなり、
前記巻き上げロープの巻き上げ時に、前記吊り具上面が前記接近不可間隔内に進入したとき、前記吊り具の上面が当接して検知信号を発するセンサを前記接近不可間隔内に設けた、
ことを特徴とし、
または、
前記センサは、前記接近不可間隔内で前記吊り具の上面と対向する箇所に前記吊り具の上面の当接を検知するセンサとして設けられた、
ことを特徴とし、
または、
クレーンのブーム先端部と該先端部から巻き上げロープを介して吊下された吊り具とを有し、
前記ブーム先端部下面と前記吊り具上面の間には、ロープ巻き上げ時の接近不可間隔が設定されてなり、
前記巻き上げロープの巻き上げ時に、前記吊り具上面が前記接近不可間隔内に進入したとき、前記ブーム先端から吊下された重錘が吊り具正面に載置して吊下ロープの緩みを発生させ、前記緩みを検知して巻き上げロープの巻き上げを停止させる防止装置と共に、前記吊り具の上面が当接して検知信号を発するセンサを前記接近不可間隔内に設け、二重の防止装置とした、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来のクレーンの巻過防止装置と比較して、より安全性が高く、しかも設置コストを安価に出来、さらには確実にクレーンロープの巻過を防止できる巻過防止装置を提供でき、また、ロープの緩みを検出して巻過防止を行う巻過防止装置に加えて本発明による巻過防止装置を設けることにより、二重に巻過を防止できるクレーンの巻過防止装置を提供できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による巻過防止装置の概略構成を説明する説明図である。
図2】移動式クレーンの概略構成を説明する説明図(1)である。
図3】移動式クレーンの概略構成を説明する説明図(2)である。
図4】テープスイッチの概略構成を説明する説明図(1)である。
図5】テープスイッチの概略構成を説明する説明図(2)である。
図6】従来の巻過防止装置の概略構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
図に示すように、本発明は、例えば移動式クレーン1の巻過防止装置に関するものであるが、まず、移動式クレーン1の構成について説明する。
【0013】
移動式クレーン1は、移動式クレーン1の本体車両から突設された揺動可能なブーム5と、該ブーム5のブーム先端部2から下側に向けて延出する巻き上げロープ3と、この巻き上げロープ3を介して吊下される吊り具4とを有して構成されている。
そして、移動式クレーン1の吊り具4によって所定の吊り荷が吊り上げられ、所定の箇所に運搬されるものとなる。
【0014】
ところで、クレーン作業においては、その安全対策が厳密に定められている。例えば、吊り荷の下に作業者を立ち入らせない。強風等により危険が予想されるときは作業を中止する。 地盤の状況、周辺設備、関係作業者等の周囲状況の安全確認を行う。特に移動式クレーンは、原則としてアウトリガーを最大に張り出して作業するなどの対策である。
【0015】
さらに、ブーム5の先端部から吊下される巻き上げロープ3の巻過ぎにも厳密な規定が設けられている。
例えば、移動式クレーン1は、吊り荷を吊り具4のフックなどに掛け、巻き上げロープ3で吊上げる。吊り上げ後には、さらに上方に向かって吊り荷を持ち上げたり、下げたりする。これは、前記巻き上げロープ3を巻き取ったり、伸ばしたりして行われる。
【0016】
しかしながら、巻き上げロープ3の巻き上げあるいは伸長は、これ以上巻き取れないという限界と、もうこれ以上伸ばせないという限界がある。
特に、これ以上巻き取れないという限界は、前記吊り具4の上面がブーム5の先端部に接触する箇所までで、該限界点は厳格に守らなければならない。
前記限界点を超え、吊り具4の上面がブーム5の先端部に接触しているのに、巻き上げロープ3を巻き取ろうとすると、前記巻き上げロープ3は伸びに伸びて、最終的には巻き上げロープ3が切れてしまうからである。そして、この巻き上げ過ぎが事故に至ることとなる。かかる事態を防ぐため、通常、クレーン装置には巻過防止装置が設置されている。
【0017】
ここで、クレーンに設けられる巻過防止装置は、通常、吊り具4の上面から25センチ以上の位置で働くようにしてあり、移動式クレーン1のような直動式の場合は、例えば、吊り具4の上面から5センチ以上で働くよう調整されている場合もある。
上記の「吊り具の上面から25センチ」あるいは「5センチ」という間隔については、前記巻過防止装置を機能させる「接近不可間隔H」として定義されている。
【0018】
前記「接近不可間隔H」を設け、この間隔内に設けられた巻過防止装置が働くことで、吊り具4がブーム5の先端部と接触することを防止しているのである。巻過防止装置とは、作業中に知らず知らずに限界以上に巻き上げロープ3を巻過ぎ、それによって巻き上げロープ3が切断する危険などを防止できる安全装置なのである。
【0019】
ここで、本発明では、前記ブーム5の先端部下面と前記吊り具4上面の間に、ロープ巻き上げ時の接近不可間隔Hを設定した。接近不可間隔Hの例を挙げれば、前記したように、吊り具4の上面から上側に向かいブーム5の先端部下面までの25センチあるいは吊り具4の上面から上側に向かいブーム5の先端部下面までの5センチということになる。
【0020】
そして、本発明では、巻き上げロープ3の巻き上げ時に、吊り具4上面が上昇して接近不可間隔内に進入したとき、前記吊り具4の上面が当接などして検知信号を発するセンサ6を接近不可間隔H内に設けたのである。
ここで、本発明によるセンサ6の構成につき説明する。該センサ6は、テープスイッチ9で構成されるがそれに限定されるものではない。
【0021】
テープスイッチ9とは、テープ状の感圧スイッチを指標する。テープスイッチ9は、上部電極10と下部電極11の2つの電極(導電板)を有し、その間を保つ絶縁材や前記上部、下部の2つの電極(導電板)を被覆する外装被覆材12で構成されている。
【0022】
そして、外装被覆材12の上面幅方向略中央部分に設けられた突起状の押圧式スイッチ部8を押圧することで、その箇所において上下の電極10、11が接触し、スイッチがONになる様構成されている。このテープスイッチ9の最大の特長は、長さ方向に自在にカットして使用できることであり、動作荷重が選択できることである。
【0023】
図1に示すように前記テープスイッチ9で構成されたセンサ6は、前記接近不可間隔H内に設けられる。一具体例としては、吊り具4の上面と対向する箇所、すなわち本実施例においては、ブーム5の先端部下面に設けられるものとなる。
【0024】
図1では、接近不可間隔Hの上方側にセンサ6が設けられているが、センサ6の裏面に長さの長い長さ調整土台7を設け、センサ6が接近不可間隔Hの中間位置あるいは下側位置に位置するよう設置しても構わない。
【0025】
尚、センサ6をブーム5の先端部下面に設ける場合には、前記突起状の押圧式スイッチ部8が対向する吊り具4の下面の表面と略直角の方向に突出する様配置する。
また、センサ6を吊り具4の下面に設ける場合には、前記突起状の押圧式スイッチ部8が対向するブーム5の先端部下面の表面と略直角の方向に突出する様配置する。
【0026】
ここで、センサ6の取り付け方向であるが、テープスイッチ9で構成されたセンサ6の場合、押圧式スイッチ部8がテープスイッチ9の幅方向略中央部に長手方向へ延出する連続した突条部として構成されることとなる。
【0027】
すなわち、前記押圧式スイッチ部8はテープスイッチ9の上面において1箇所のみに形成されるのではなく、テープスイッチの幅方向略中央部に長手方向へ延出する連続した突条部のいずれの箇所においても押圧式スイッチ部8として構成されるのである。
【0028】
よって、センサ6をブーム先端部2の下面に取り付けるに際し、前記センサ6を例えばブーム先端部2下面の前後方向に前記テープスイッチ9の突条形押圧式スイッチ部8の延出方向が向くように設置するか、あるいはブーム先端部2の前後方向に前記テープスイッチ0の突条形押圧式スイッチ部8の延出方向が向くように設置するかをブーム先端部2の下面形状などを考慮して取り付けることとなる。
上記いずれの取り付け方向が、より多くより確実にセンサ6による検出が良好に行えるかを考慮しなければならないからである。
【0029】
ところで図1は、従来の重錘13を利用した巻過防止装置に、さらに本発明による巻過防止装置を取り付け、二重に安全対策を施した実施例である。
この実施例において、重錘13が吊り具4の上面に載置するほどブーム5の下面と吊り具4の上面との間隔が狭まったとき、従来の巻過防止装置が起動する。すなわち、重錘13を吊下している吊下ロープ14が緩む。すると、その緩みを検知器15が検知し、巻き上げ停止信号を発信する構成となっている。
【0030】
しかしながら、何らかの原因で、前記の状況時に巻き上げ停止信号が発信されなかったとき、さらに、本発明の巻過防止装置が機能する。すなわち、ブーム5の先端部下面に取り付けられた本発明の巻過防止装置に吊り具4の上面が接触し、これにより巻き上げ停止信号を発信することが出来るものとなる。
【0031】
このように、巻き上げロープの巻き上げ時に、前記吊り具4の上面が前記接近不可間隔H内に進入したとき、前記ブーム5の先端から吊下された重錘13が吊り具4の上面に載置して吊下ロープ14の緩みを発生させ、前記緩みを検知して巻き上げロープの巻き上げを停止させるのであるが、何らかの理由で検知されなかったときに、前記吊り具4の上面が当接して検知信号を発するセンサ6を前記接近不可間隔H内に設けることにより、二重の巻過防止装置としたのである。
【0032】
ブーム5の長さやブーム5の作動角度等が変化するクレーンの巻き上げ作動時においては、たとえ従来の巻過防止装置が設置されていても、前記重錘13を含む吊り具4等が不意にブーム5の先端部に接触する可能性を否定できない。よって、該ブーム5の先端部下面と吊り具4の上面との間を接近不可間隔Hとし、該接近不可間隔H内に本発明のセンサ6を設置して二重の巻過防止装置とすれば突発的に不意に起こる重錘13を含む吊り具4等がブーム5の先端部に接触する可能性をなくすことが出来る。
【0033】
尚、前記したように、該センサ6は、接触物の損傷を防ぐクッション機能を持つ外装被覆材12で構成されており、例えば、外装被覆材12として成形ゴムが使用され、該外装被覆材12内にテープスイッチが内蔵されて構成されたものである。このテープスイッチの押し深さは2~3mmの押し深さのものが使用される。
【0034】
そして、該センサ6からのスイッチON信号が検知器15に送出されてクレーンの停止信号を発信し、この停止信号によりクレーンの作動、例えば巻き上げロープ3の巻き上げが停止するものとなる。
【符号の説明】
【0035】
1 移動式クレーン
2 ブーム先端部
3 巻き上げロープ
4 吊り具
5 ブーム
6 センサ
7 長さ調節土台
8 押圧式スイッチ部
9 テープスイッチ
10 上部電極
11 下部電極
12 外装被覆材
13 重錘
14 吊下ロープ
15 検知器
H 接近不可間隔

図1
図2
図3
図4
図5
図6