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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141539
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】印刷装置、固定方法及び固定具
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/54 20060101AFI20230928BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230928BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41J29/54 A
B41J2/01 303
B41J3/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047911
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 大輔
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA10
2C056FB01
2C056HA36
2C061AP10
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS11
2C061BB23
(57)【要約】
【課題】装置に衝撃が加わった際にも印刷装置の品質を維持することのできる印刷装置、固定方法及び固定具を提供する。
【解決手段】印刷装置1が、第1方向への移動が可能であり、第1係止受け部を有する移動体と、
第2係止受け部を有する非移動体と、
第1端側に、前記移動体に設けられた前記第1係止受け部を係止する第1係止部と、第2端側に、前記非移動体に設けられた前記第2係止受け部を係止する第2係止部と、を含む少なくとも1つの固定具と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向への移動が可能であり、第1係止受け部を有する移動体と、
第2係止受け部を有する非移動体と、
第1端側に、前記移動体に設けられた前記第1係止受け部を係止する第1係止部と、第2端側に、前記非移動体に設けられた前記第2係止受け部を係止する第2係止部と、を含む少なくとも1つの固定具と、を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記移動体の前記第1方向と交差する第2方向における両端部に、前記第1係止受け部を有し、
前記非移動体の前記第2方向における両端部に、前記第2係止受け部を有し、
前記固定具は少なくとも一対設けられ、
一対の前記固定具はそれぞれ、前記第1係止部と前記第2係止部とにより前記移動体の前記第2方向における両端部を係止することで、前記移動体を固定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1係止受け部は、前記第1係止部を係止可能な孔部、突起部、凹部のいずれかであり、
前記第2係止受け部は、前記第2係止部を係止可能な孔部、突起部、凹部のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1係止部と前記第2係止部とのうち少なくとも一方は、鉤状部である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記固定具は、取り付け時又は取り外し時にユーザによって把持される把持部を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第2係止受け部は、前記非移動体における前記第1方向の端部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記移動体は、第3係止受け部を有しかつ印刷対象への印刷と、前記第1方向と交差する第2方向への移動と、が可能な印刷手段を含み、
前記固定具は、前記第1端側に、前記印刷手段に設けられた前記第3係止受け部を係止する第3係止部をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
第1方向への移動が可能であり、第1係止受け部を有する移動体と、第2係止受け部を有する非移動体と、を含む印刷装置に着脱可能で、第1端側に、前記移動体に設けられた前記第1係止受け部を係止する第1係止部と、第2端側に、前記非移動体に設けられた前記第2係止受け部を係止する第2係止部と、を含む固定具を、前記第1係止部と前記第2係止部とにおいて係止することで前記移動体を固定する、
ことを特徴とする固定方法。
【請求項9】
第1方向への移動が可能であり第1係止受け部を有する移動体と、第2係止受け部を有する非移動体と、を含む印刷装置に着脱可能で、
第1端側に、前記移動体に設けられた前記第1係止受け部を係止する第1係止部と、第2端側に、前記非移動体に設けられた前記第2係止受け部を係止する第2係止部と、を含む、
ことを特徴とする固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、固定方法及び固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指の爪等にデザイン(ネイルデザイン)の印刷を施す印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている。このような印刷装置では、印刷動作を行う印刷ヘッド等をXY平面におけるX方向やY方向に移動させながら印刷を行うことが想定されている(例えば特許文献1参照。)。
こうした装置では、印刷動作を行う際に不具合の無いよう印刷ヘッド等に高い位置精度が求められ、例えば装置の輸送時等、印刷動作を行わないときには印刷ヘッド等が自由に移動しないように保持されていることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-018456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、印刷装置を誤って落下させてしまった場合等、何らかの衝撃が装置に加わると、印刷ヘッド等が意図せず移動してしまうおそれがある。
衝撃によって印刷ヘッド等が移動すると、印刷ヘッドやこれを移動させる機構の各部等に過度な力がかかり、破損するおそれがある。また、印刷ヘッドの位置等がずれることで印刷精度が低下する場合もある。印刷ヘッドの精度が低下すると高品位の印刷を実現することが難しくなる。
【0005】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、装置に衝撃が加わった場合にも印刷の品質を維持することのできる印刷装置、固定方法及び固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の印刷装置は、
第1方向への移動が可能であり、第1係止受け部を有する移動体と、
第2係止受け部を有する非移動体と、
第1端側に、前記移動体に設けられた前記第1係止受け部を係止する第1係止部と、第2端側に、前記非移動体に設けられた前記第2係止受け部を係止する第2係止部と、を含む少なくとも1つの固定具と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置に衝撃が加わった場合にも印刷の品質を維持することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態における印刷装置の天面側を外して装置内部の要部構成を示した平面図である。
図2図1に示す印刷装置の前方、左側を拡大して示す要部斜視図である。
図3図1に示す印刷装置の前方、右側を拡大して示す要部斜視図である。
図4】本実施形態の固定具の構成例を示す斜視図である。
図5】固定具の一変形例の構成を示す斜視図である。
図6図5に示す固定具を取り付けた印刷装置の一例を示す斜視図である。
図7図6の一部を拡大した要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から図4を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、固定方法及び固定具の一実施形態について説明する。
本実施形態の印刷装置1は、「第1方向」(実施形態において「Y方向」)への移動が可能な移動体40と、移動しない非移動体と、移動体40と非移動体とを連結する少なくとも1つの固定具7(本実施形態では、一対の固定具7によって固定装置70が構成される。)と、備えている。以下の実施形態では、固定具7(固定装置70)が取り付けられる印刷装置1が、例えば手の指等の爪を印刷対象としてこれに印刷する印刷装置(ネイルプリント装置)を例に説明するが、印刷装置1は、例えばネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪以外のものを印刷対象とするものでもよい。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、本実施形態における印刷装置(ネイルプリント装置)の要部内部構成を示す平面図である。図1では、筐体2の上側部分を取り外して内部の構成を示している。
なお、以下の実施形態において、左右及び前後は、図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、図1に示した方向をいうものとする。
【0011】
図1に示すように、印刷装置1は、筐体2と、筐体2内に収容された装置本体3と、を有している。
筐体2は、全体がほぼ箱形に形成されている。筐体2における装置の正面側(図1において前側)であって装置幅方向(図1等におけるX方向)のほぼ中央部には開口部21が形成されている。開口部21は、印刷対象となる爪に対応する指(いずれも図示せず)を装置内に挿入する際の挿入口となる。
なお筐体2には、印刷装置を操作するための操作部(操作ボタン)や表示等が設けられていてもよい。
【0012】
装置本体3は、基台31及び基台31の上に組付けられたシャーシ35等を備えている。
シャーシ35は、例えば板金を折り曲げ加工等することで形成されており、基台31上にビス等で固定されている。基台31及びシャーシ35は装置内で自由移動しない「非移動体」である。
基台31における装置前面側には左右方向(X方向)のほぼ中央部に図示しない指配置部が配置される切り欠き部32が形成されている。指配置部は、開口部21から装置内に挿入された指(印刷対象である爪に対応する指、いずれも図示せず)を載置させ、保持するものであり、指が指配置部の所定の位置に配置されると、指の爪の表面(印刷対象面)が後述する印刷機構4による印刷を行うのに適した位置に保持される。
【0013】
また装置本体3は、印刷を行う印刷機構4を有している。なお、装置本体3は撮影部等、その他各種の機能部を有していてもよいが、本実施形態では図示及び説明を省略する。
印刷機構4は、指配置部に配置された指の爪(印刷対象)に印刷を施すものであり、印刷手段としての印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41を移動させる移動機構等を備えている。
印刷ヘッド41は、図1に示すようにキャリッジ42に搭載されている。なお、印刷ヘッド41は図示しないホルダ等に保持された状態でキャリッジ42に搭載されてもよい。
本実施形態において、印刷ヘッド41を含むキャリッジ42は、後述の移動機構により第1方向(本実施形態では図1におけるY方向、装置の前後方向を「第1方向」とする。なお、図1では「第1方向」を白抜き矢印でも示す。)に移動可能となっており、「第1方向」への移動が可能に構成された「移動体」(図1等において一点鎖線で囲んで示す移動体40)である。
【0014】
本実施形態の印刷ヘッド41は、基台31の表面に対向する面(下側の面)が、インクを吐出させる複数のノズル口を備えたインク吐出面(いずれも図示せず)となっており、インクを微滴化し、インク吐出面から爪表面に直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェットヘッドである。本実施形態では、印刷ヘッド41は、例えばマルチパス方式の印刷等を行うことが可能となっており、爪の表面等に繊細な印刷を施すことが可能に構成されている。
印刷ヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインク吐出面等の吐出機構部とインクを貯留するインクカートリッジとが一体となったカートリッジ一体型のヘッドである。
印刷ヘッド41は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の色インクを吐出可能となっている。なお、印刷ヘッド41の種類や数は特に限定はされない。例えば上記のような色インクを吐出する印刷ヘッドの他に、デザインを印刷する前に下地となる液剤を印刷する下地用の印刷ヘッド等を含んでいてもよい。
本実施形態の印刷ヘッド41は移動機構により、X方向及びY方向の2軸方向に移動される。
【0015】
移動機構は、印刷ヘッド41をY方向(「第1方向」)に移動させるためのY方向移動機構及び印刷ヘッド41をX方向(「第2方向」)に移動させるためのX方向移動機構を含んでいる。
Y方向移動機構は、装置の左右両端側にY方向に沿って平行に配置された一対のガイドシャフト46、各ガイドシャフト46に沿ってそれぞれ設けられた図示しない駆動ベルト、駆動ベルトを動作させる図示しないY方向移動モータ等を含んでいる。Y方向移動モータとしては例えばステッピングモータが採用される。
本実施形態において、ガイドシャフト46のY方向における両端側(シャフト端部461)は、基台31上のシャーシ35に固定されており、基台31やシャーシ35とともに「非移動体」を構成する。なお、本実施形態では、シャフト端部461をコイルばね462によって引き上げ、ガイドシャフト46が挿通されているシャーシ35の図示しない挿通孔の上側に突き当ててガイドシャフト46を位置決め・固定するようになっている。
【0016】
Y方向移動機構の、左右一対のガイドシャフト46には、第2方向(図1におけるX方向、装置の左右方向)に延在するキャリッジ42が左右方向に架橋するように渡されている。キャリッジの42のX方向(左右方向)の両端側には、それぞれ板金部材421が設けられており、この板金部材421が移動可能にガイドシャフト46に取り付けられることでキャリッジ42がガイドシャフト46に保持される。キャリッジ42(キャリッジ42に搭載された印刷ヘッド41)は、Y方向移動モータが動作することで、ガイドシャフト46に沿ってY方向(「第1方向」)に移動可能となっている。
【0017】
キャリッジ42の左右両端側に設けられた一対の板金部材421には、X方向に沿って配置されるガイドシャフト422の両端側がそれぞれ固定されている。
本実施形態では、ガイドシャフト422、ガイドシャフト422に沿って設けられた図示しない駆動ベルト、駆動ベルトを動作させる図示しないX方向移動モータ等を含んで、印刷ヘッド41をキャリッジ42内において、Y方向(「第1方向」)と交差(本実施形態では直交)するX方向(「第2方向」)に移動させるX方向移動機構が構成されている。なお、X方向移動モータとしては例えばステッピングモータが採用される。
【0018】
図2は、図1における装置の左側端部を拡大した要部斜視図であり、図3は、図1における装置の右側端部を拡大した要部斜視図である。
前述のように本実施形態では、印刷ヘッド41や印刷ヘッド41を含むキャリッジ42等が、「第1方向」(本実施形態では図1におけるY方向、装置の前後方向)への移動が可能とされた移動体40となる。
図2及び図3に示すように、左右一対の板金部材421には、それぞれ第1係止受け部423(移動体40側の係止受け部)が設けられている。本実施形態において第1係止受け部423は、後述する固定具7の第1係止部71を係止可能な孔部である。
なお図示例では、第1係止受け部423が板金部材421の内外に貫通する孔部であり、第1係止部71を係止させると、板金部材421の外側に第1係止部71の一部が突出する場合を例示したが、第1係止受け部423はこのようなものに限定されない。
第1係止受け部423は第1係止部71を係止可能なものであればよく、例えば、貫通しない凹部等であってもよい。
【0019】
また本実施形態において、基台31の左右側部に配置されたシャーシ35からそれぞれ突出するシャフト端部461は、固定具7の第2係止部72を係止可能な突起部であり、第2係止受け部(非移動体側の係止受け部)として機能する。
第2係止受け部としてのシャフト端部461が突出する部分は、装置本体3における「第1方向」(Y方向)の端部又は端部近傍位置となっている。
【0020】
固定装置70は、左右一対の固定具7で構成されており、各固定具7は、図1に示すように、装置本体3の左右両側部に取り付けられる。各固定具7を取り付ける位置は図示例には限定されないが、できるだけ装置本体3における「第1方向」(Y方向)の端部に近い位置で移動体40を固定する方が移動体40の一方向(図2図3の場合、前方向)への移動を確実に規制できるため、ガタつきが殆どなく、衝撃に強いしっかりとした固定を行うことができ、好ましい。
左右一対の固定具7は、移動体40をその左右両端側で、非移動体(基台31やシャーシ35等)に連結させる。これにより移動体40が「第2方向」(X方向)の2箇所において非移動体に固定される。移動体40が固定具7を介して連結される非移動体は、基台31やシャーシ35等、動かない部分であればどこであってもよいが、本実施形態では後述のように非移動体の一部であるシャフト端部461に連結され、固定される。
【0021】
ここで図4を参照しつつ、固定装置70を構成する固定具7の詳細について説明する。
固定具7は、例えば線ばねであり、図4に示すように、第1端側に、第1係止部71を備え、第2端側(第1端の他端側)に第2係止部72を備えている。また、第1係止部71付近は、衝撃などによって容易に各固定具7が外れないようにするため、Y方向に沿った形状となっている。
第1係止部71は、移動体40に設けられた第1係止受け部423(すなわち、キャリッジ42の板金部材421)に係止される。
また第2係止部72は、非移動体(基台31やシャーシ35等)に設けられた第2係止受け部に係止される。本実施形態では前述のように、シャーシ35に固定されるシャフト端部461に第2係止部72が係止される。
【0022】
第1係止部71及び第2係止部72は、ともに線ばねをフック状に折り曲げ加工することで形成された鉤状部である。
図2に示すように、装置左側の第1係止部71は、板金部材421に形成された孔部である第1係止受け部423内に、装置右側から左側に通すように引っ掛けることで第1係止受け部423に係止される。また第2係止部72は、シャフト端部461に装置左側から右側に回しかけるように引っ掛けることでシャフト端部461に係止される。
【0023】
また、図3に示すように、装置右側の第1係止部71は、図2に示す場合とは逆に、板金部材421に形成された孔部である第1係止受け部423内に、装置左側から右側に通すように引っ掛けることで第1係止受け部423に係止される。また第2係止部72は、シャフト端部461に装置右側から左側に回しかけるように引っ掛けることでシャフト端部461に係止される。
このように、第1係止部71と第2係止部72とで、非移動体側の係止受け部(第1係止受け部423や第2係止受け部としてのシャフト端部461)に引っ掛ける方向を逆にすることで、第1係止部71と第2係止部72との間でテンションがかかり、第1係止部71及び第2係止部72が第1係止受け部423及び第2係止受け部(本実施形態ではシャフト端部461)に係止されて、固定具7が外れにくくなる。
【0024】
また固定具7には、取り外し時にユーザによって把持される把持部73が設けられている。本実施形態では、第2係止部72よりも下に把持部73を設けている。
固定具7を掴む部分がないとユーザは固定具を外す際に力が入りにくく、容易に外すことができない。つまり上述のように、本実施形態の固定具7は、第1係止部71と第2係止部72との間でテンションがかかるように取り付けられて、外れにくくなっているため、持ちにくい状態では外すのに手間取る可能性がある。このためユーザが持ちやすい位置に把持部73を設けることで力が入れやすくなり、容易に取り外し(取り付け)が可能となる。
なお、把持部73を設ける位置や把持部73の形状等は特に限定されない。図4に示す例では把持部73が丸みを帯びたU字状となっているが、例えば指を引っ掛けやすいようにリング状に折り曲げ加工して把持部73としたり、把持部73をT字状等にして2本指を引っ掛けて引っ張りやすい形状としてもよい。
【0025】
次に、本実施形態において左右一対の固定具7で構成される固定装置70の作用について説明する。
印刷装置1の出荷時、運搬時等には、図1に示すように、装置本体3の左右両側側で、それぞれ固定具7を介して移動体40が非移動体(基台31等の動かない部分)に連結され、自由に移動しないように固定された状態となっている。これにより、運搬時等に衝撃を受けても印刷装置1の各構成部が破損したり、移動部40に含まれる印刷ヘッド41が位置ずれを生じること等が防止される。
【0026】
印刷装置1を使用する際には、ユーザは、固定具7の把持部73を持って、固定具7を取り外す。例えば装置左側に取り付けられている固定具7(図2参照)を外す場合には、把持部73を持ちながら、まずX方向の左側などに固定具7を引っ張りながら第2係止部72を第2係止受け部であるシャフト端部461から取り外す。これにより、固定具7にテンションがかかった状態が解除され、ユーザはさらに、第1係止部71を孔部である第1係止受け部423の右側から取り外す。
【0027】
また、例えば装置右側に取り付けられている固定具7(図3参照)を外す場合には、把持部73を持ちながら、まずX方向の右側などに固定具7を引っ張りながら第2係止部72を第2係止受け部であるシャフト端部461から取り外す。これにより、固定具7にテンションがかかった状態が解除され、ユーザはさらに、第1係止部71を孔部である第1係止受け部423の左側から取り外す。
【0028】
本実施形態では、このようにねじを外すためのドライバー等の工具を用いることなく、ユーザが把持部73を持って引っ張ることで容易に固定具7を取り外すことができる。
このようにして左右一対の固定具7を装置本体3から取り外すと、移動体40が非移動体に連結された状態が解消される。これにより移動体40が「第1方向」(Y方向)に移動することが可能な状態となり、印刷装置1を用いて印刷を行うことができる。
また装置本体3から取り外された固定装置70(一対の固定具7)は、廃棄しても構わない。なお、本実施形態の固定具7は、線ばねを折り曲げ加工したものであるため、固定装置70を廃棄する場合にもかさばらずに処分することができ、発泡材等で移動体40を固定する場合と比較して、簡易に処分することができる。
【0029】
なお、取り外した固定具7(左右一対の固定具7で構成される固定装置70)は、廃棄せずに再利用することも可能である。
例えば、印刷装置1を当初配送された自宅等から別の場所に持ち出して使用したい場合等には、移動体40を「第1方向」(Y方向、装置前後方向)の装置前方側の端部側まで移動させ、この状態で移動体40の固定を行う。
【0030】
移動体40の固定は、固定具7を取り外したときとは逆の手順で行う。すなわち、ユーザは把持部73を持ちながら、まず第1係止部71を孔部である第1係止受け部423に引っ掛け、次に第2係止部72を第2係止受け部であるシャフト端部461に引っ掛ける。
これにより移動体40の左右両側が、左右一対の固定具7を介して非移動体である基台31のシャーシ35(シャーシ35に固定されているシャフト端部461)と連結され、自由に移動しないように係止(固定)される。この場合にも、移動体40の固定を行うのにねじやドライバー等の工具を用いる必要はなく、容易に固定することができる。
【0031】
このように、本実施形態では移動体40を装置の左右2箇所で非移動体に連結させ、固定することができるため、装置を誤って落下させた場合等、印刷装置1に衝撃が加わった場合でも移動体40が意図せず動くのを防止して、印刷精度を維持させることができる。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、印刷装置1が、「第1方向」(Y方向)への移動が可能であり第1係止受け部423を有する移動体40と、第2係止受け部としてのシャフト端部461を有する非移動体と、第1端側に、移動体40に設けられた第1係止受け部423を係止する第1係止部71と、第2端側に、非移動体に設けられた第2係止受け部としてのシャフト端部461を係止する第2係止部72と、を含む少なくとも1つの固定具7と、を備えている。
これにより、印刷ヘッド41を含むキャリッジ42等からなる移動体40を、非移動体である基台31等に対して簡易に係止することができる。このため、印刷装置1に衝撃が加わった際に移動体40が意図せず移動するのを防ぎ、印刷機構4の印刷ヘッド41等が位置ずれ等を生じない。これにより、印刷装置1を、高品位の印刷を実現可能な状態に維持することができる。
【0033】
特に本実施形態では、固定具7は少なくとも一対設けられ、移動体40の「第1方向」(Y方向)と交差する「第2方向」(X方向)における両端部に、第1係止受け部423を有し、非移動体の「第2方向」(X方向)における両端部に、第2係止受け部としてのシャフト端部461を有し、一対の固定具7はそれぞれ、第1係止部71と第2係止部72とにより移動体40の「第2方向」(X方向)における両端部を係止することで、移動体40を固定する。
このように、印刷ヘッド41を含むキャリッジ42等からなる移動体40を、X方向の両端部で非移動体である基台31等に対して確実に係止する。このため、印刷装置1に衝撃が加わった際に移動体40がY方向に傾いたり歪みを生じたりするのを防ぐことができる。これにより、印刷機構4の印刷ヘッド41等が位置ずれ等のない正しい状態に保たれ、高品位の印刷を実現可能な状態を維持することができる。
【0034】
また本実施形態では、移動体40は、印刷対象(例えば爪)に印刷を行う印刷手段である印刷ヘッド41を含んでいる。
印刷ヘッド41等の印刷手段は衝撃を受けた際に位置ずれ等を生じやすく、印刷ヘッド41等にずれを生じると印刷品質を低下させてしまう。この点、印刷ヘッド41等を搭載するキャリッジ42等の移動体40を基台31等に係止させることで、印刷ヘッド41等を衝撃から保護することができる。このため、印刷装置1の耐衝撃性が向上し、落下等の衝撃が加えられた場合にも印刷品質の低下を防ぐことができる。
【0035】
また本実施形態では、第1係止受け部423は、第1係止部71を係止可能な孔部であり、第2係止受け部としてのシャフト端部461は、第2係止部72を係止可能な突起部である。
これにより、固定具7を係止させる構成を、印刷装置1にソレノイドなどを用いた固定機構を設けて大型させることなく、簡易に実現することができる。
【0036】
また本実施形態では、第1係止部71又は第2係止部72が、鉤状部となっている。
これにより、第1係止部71や第2係止部72を係止させる際にも、また取り外す際にも、容易に着脱を行うことができる。また、鉤状部を引っ掛けて係止させるという比較的簡易な構成で移動体40の固定を行うことができ、ねじ止め等、工具を要する作業が必要ないため、ユーザにとって扱いやすい。また、簡易な構成であるため、固定具7を製造するコストや手間、固定具7の着脱の手間等も少なくて済む。
【0037】
また本実施形態では、固定具7は、取り付け時又は取り外し時にユーザによって把持される把持部73を有する。
これにより、ユーザが固定具7を取り付けたり、取り外したりする際に力をかけやすく、容易に取り外すことができる。
【0038】
また本実施形態では、第2係止受け部としてのシャフト端部461は、非移動体における「第1方向」(Y方向)の端部位置に設けられている。
これにより、移動体40であるキャリッジ42等は「第1方向」の端部位置に突き当てられて固定される。このため「第1方向」の中間部分等において係止されるよりも確実に移動体40を固定して、衝撃等による意図しない移動を抑えることができる。
【0039】
また本実施形態では、固定具7は、線ばねである。
これにより、固定具7を工具等を用いずに容易に取り外すことが可能である。また固定具7を線ばねで構成した場合、多少変形することができるため、落下等により印刷装置1に衝撃が加わった際に、衝撃を吸収することができ、耐衝撃性が向上する。さらに固定具7を製造するコストや取り付け等における手間も少なくて済む。
【0040】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0041】
例えば、固定具の構成は図4に示したものに限定されない。
図5に固定具の一変形例の斜視図を示す。図5に示すように、固定具7aは、前述の実施形態で説明した固定具7と同様に第1係止部71a、第2係止部72及び把持部73を備えている他、第1係止部71aが設けられている第1端側に、第1係止部71aとは逆方向(図示例では左側)に折り曲げられた鉤状(フック状)の第3係止部74を備えている。
【0042】
図6は、図5に示す変形例に係る固定具を用いて移動体を非移動体に係止させた場合の印刷装置を示す斜視図である。なお、図6では筐体2の上側を外して内部が見える状態としている。
また、また図7は、図6の一部(ホルダ周辺部分)を拡大した要部拡大斜視図である。
例えば、図6に示すように、移動体40側の係止受け部として、キャリッジ42の板金部材421に形成された第2係止受け部423の他に、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するホルダ43)の側部等に第3係止受け部431として凹部等を設け、第3係止受け部431に第3係止部74を係止してもよい。なお図6及び図7では、第3係止受け部431に第3係止部74が係止された様子を見やすくするため、印刷ヘッド41の図示を省略している。
【0043】
なお、図6及び図7では第3係止受け部431がホルダ43の側壁の外側面に形成された凹部であり、ホルダ43の内側には貫通していない例を示したが、第3係止受け部431は第3係止部74を係止可能なものであればよく、凹部に限定されない。
例えば第3係止受け部431はホルダ43の側壁の内外に貫通する孔部であって、第3係止部74を係止させると、ホルダ43の内側に第3係止部74の一部が突出するものであってもよい。また、第3係止受け部431はホルダ43ではなく、ホルダ43内に保持された印刷ヘッド41の一部に設けられていてもよい。
このようにキャリッジ全体としてだけでなく、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するホルダ43)をも固定具7aによって係止する場合には、装置内で移動する移動体40を、Y方向だけでなくX方向でも固定することができ、装置を大型化させることなく、より確実に移動体40を固定することができる、という更なる利点を有する。なお、第3係止部74及び第3係止受け部431等の形状は図示例に限定されず、適宜変更が可能である。
【0044】
なお、図6では一対の固定具のうち、一方(図示例では装置の右側に設けられた固定具)のみを、第3係止部74を備える固定具7aとした例を図示している。
印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するホルダ43)は、キャリッジ42内に1つ設けられており、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するホルダ43)を固定具71aに係止する場合、左右いずれかの端部において係止することとなるが、左右両方の固定具をいずれも第3係止部74を備える固定具7aとし、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するホルダ43)の左右両側部に第3係止受け部431を設けておき、キャリッジ42内の左右どちらの位置でも第3係止部74によって印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を保持するホルダ43)を係止できるように構成してもよい。
【0045】
また例えば、固定具7の第1係止部71及び第2係止部72がいずれも本実施形態のようにフック状の鉤状部である場合に、第1係止受け部及び第2係止受け部がいずれも孔部や凹部であってもよいし、第1係止受け部及び第2係止受け部がいずれも突起部であってもよい。
第1係止受け部及び第2係止受け部は固定具7の第1係止部71及び第2係止部72を引っ掛けることができるものであればよく、例えばブロック状の発泡材(例えば発泡スチロール)等を用いて移動体40を固定する場合と比較して、設計の自由度が高い。
【0046】
また例えば、第1係止部71及び第2係止部72は、第1係止受け部423、第2係止受け部(本実施形態ではシャフト端部461)に係止可能なものであればよく、固定具7の形状等は図示例に限定されない。
例えば第1係止受け部423、第2係止受け部がL字状の突起部等である場合、第1係止部71や第2係止部72は突起部に引っ掛けるリング状やT字状等の形状に形成されてもよい。
【0047】
また固定具7が把持部73を備えることは必須ではなく、把持部73を備えなくてもよい。
例えば固定具7を手で引っ張って外すのではなく、鋏等を用いて切断して取り外すことが可能な場合には、ユーザが固定具7を掴む部分を設ける必要がない。
また固定具7は、線ばねであるものに限定されず、例えば樹脂等で形成されてもよい。樹脂等で形成する場合、鋏等で容易に切断可能となっていてもよい。
【0048】
また本実施形態では第2係止受け部が「第1方向」(Y方向)の前端部位置に設けられているシャフト端部461である場合を例示したが、第2係止受け部はこれに限定されない。
例えば、第2係止受け部は「第1方向」(Y方向)の後端部位置に設けられているシャフト端部であってもよい。
また、第2係止受け部が「第1方向」(Y方向)の中間位置等の基台31やシャーシ35に設けられていてもよい。
固定具7を介して移動体40を非移動体に連結させ、固定することができるものであれば非移動体側の第2係止受け部の位置は特に限定されない。
【0049】
また本実施形態では第1係止受け部423がキャリッジ42の板金部材421に形成された孔部である場合を例示したが、第1係止受け部の位置や形状等は図示例に限定されない。
第1係止受け部は移動体40を構成するいずれかの構成部に設けられていればよく、例えばキャリッジ42の底面等に第1係止受け部としての孔部や突起部を設けて、これに第1係止部71が係止されるようにしてもよい。
【0050】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
第1方向への移動が可能であり、第1係止受け部を有する移動体と、
第2係止受け部を有する非移動体と、
第1端側に、前記移動体に設けられた前記第1係止受け部を係止する第1係止部と、第2端側に、前記非移動体に設けられた前記第2係止受け部を係止する第2係止部と、を含む少なくとも1つの固定具と、を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記移動体の前記第1方向と交差する第2方向における両端部に、前記第1係止受け部を有し、
前記非移動体の前記第2方向における両端部に、前記第2係止受け部を有し、
前記固定具は少なくとも一対設けられ、
一対の前記固定具はそれぞれ、前記第1係止部と前記第2係止部とにより前記移動体の前記第2方向における両端部を係止することで、前記移動体を固定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記第1係止受け部は、前記第1係止部を係止可能な孔部、突起部、凹部のいずれかであり、
前記第2係止受け部は、前記第2係止部を係止可能な孔部、突起部、凹部のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記第1係止部と前記第2係止部とのうち少なくとも一方は、鉤状部である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記固定具は、取り付け時又は取り外し時にユーザによって把持される把持部を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記第2係止受け部は、前記非移動体における前記第1方向の端部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項7>
前記移動体は、第3係止受け部を有しかつ印刷対象への印刷と、前記第1方向と交差する第2方向への移動と、が可能な印刷手段を含み、
前記固定具は、前記第1端側に、前記印刷手段に設けられた前記第3係止受け部を係止する第3係止部をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項8>
第1方向への移動が可能であり、第1係止受け部を有する移動体と、第2係止受け部を有する非移動体と、を含む印刷装置に着脱可能で、第1端側に、前記移動体に設けられた前記第1係止受け部を係止する第1係止部と、第2端側に、前記非移動体に設けられた前記第2係止受け部を係止する第2係止部と、を含む固定具を、前記第1係止部と前記第2係止部とにおいて係止することで前記移動体を固定する、
ことを特徴とする固定方法。
<請求項9>
第1方向への移動が可能であり第1係止受け部を有する移動体と、第2係止受け部を有する非移動体と、を含む印刷装置に着脱可能で、
第1端側に、前記移動体に設けられた前記第1係止受け部を係止する第1係止部と、第2端側に、前記非移動体に設けられた前記第2係止受け部を係止する第2係止部と、を含む、
ことを特徴とする固定具。
【符号の説明】
【0051】
1 印刷装置
4 印刷機構
40 移動体
41 印刷ヘッド(印刷手段)
42 キャリッジ
7 固定具
70 固定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7