IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エンジン 図1
  • 特開-エンジン 図2
  • 特開-エンジン 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141548
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 23/08 20060101AFI20230928BHJP
   F02F 3/26 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F02B23/08 S
F02F3/26 C
F02B23/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047923
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】山下 翔平
【テーマコード(参考)】
3G023
【Fターム(参考)】
3G023AA02
3G023AA05
3G023AB03
3G023AC02
3G023AD03
3G023AD05
3G023AD07
3G023AG02
3G023AG03
(57)【要約】
【課題】高リーンバーン化、高EGR化に簡単な構造で対応できるエンジンを提供する。
【解決手段】シリンダヘッド4に形成されたペントルーフ型の下向き凹所8に、点火プラグ17がシリンダボア1の軸心から排気側に寄った部位に配置されている。点火プラグ17を挟んで吸気側に位置したエリアに、タンブル流の余流を点火プラグ17に向けてガイドするガイド溝21が形成されている。ガイド溝21は、シリンダボア1の軸心O1よりも排気側に位置した下向き傾斜面21bを有している。燃焼室の中央部に乱流強度が高い初期火炎23を生成できるため、空燃比が低くても全体に火炎を伝播させて燃焼を確実化できる。その結果、高リーンバーン化、高EGR化、NOx低減を促進できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボアにピストンが摺動自在に嵌挿されたシリンダブロックと、前記シリンダブロックに固定されたシリンダヘッドとを有し、
前記シリンダヘッドには、前記ピストンに向けて拡径したテーパ面を有するペントルーフ型の燃焼室用下向き凹所が形成されており、前記下向き凹所に、一対ずつの吸気ポートと排気ポートとが前記シリンダボアの軸心を挟んだ反対側から開口しているエンジンであって、
前記下向き凹所の内面のうち前記シリンダボアの軸心よりも排気側に寄った部位でかつ一対の排気ポートの間のエリアに点火プラグが配置されて、
前記下向き凹所の内面に、吸気側と排気側との両方に跨がるように下向き傾斜部が配置され、前記下向き傾斜部の少なくとも一部が前記シリンダボアの軸心よりも排気側にずれるようにして形成されている、
エンジン。
【請求項2】
前記下向き凹所の内面のうち前記点火プラグよりも吸気側のエリアに、圧縮工程において混合気を前記点火プラグに向かわせるガイド溝が配置されて、前記ガイド溝部に前記下向き傾斜部を設けている、
請求項1に記載したエンジン。
【請求項3】
前記点火プラグは、前記下向き凹所のテーパ面と略直交した姿勢に配置されている一方、
前記下向き傾斜部は、前記点火プラグの軸心と略直交した方向に向かうように形成されている、
請求項1又は2に記載したエンジン。
【請求項4】
前記ピストンの頂面に、吸気側が浅くて排気側が深くなった上向き凹所が形成されている、
請求項1~3のうちのいずれか1項に記載したエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ピストンを有するレシプロエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンにおいては、燃費の向上やNOxの低減のためにリーンバーン化や高EGR化が進んでいるが、リーンバーン化すると燃料への着火性が低下しやすい。従って、空燃比を高めつつ燃焼を確実化できる技術が要請されている。
【0003】
他方、特許文献1,2には、タンブル流に着目し、シリンダヘッドに形成されているペントルーフ型の下向き凹所(燃焼室)の内面のうち吸気側の部位に、圧縮工程においてタンブル流を点火プラグのスパークギャップに誘導する凹部や溝を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2019/197860号公報
【特許文献2】特開2015-218621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は直噴方式であり、凹部にインジェクタを臨ませているが、燃料と空気やEGRガスとの混合性を高められるか否か不明であり、従って、高リーンバーン化や高EGR化には対応し難いのではないかと推測される。
【0006】
他方、特許文献2は失火防止を主眼としており、着火後の火炎がシリンダヘッドのペントルーフ面に当たることを防止すべく、ペントルーフ面に形成した溝により、タンブル流を、スパークギャップに当てつつ燃焼室の中央部に向かうようにガイドしている。しかし、特許文献2では、溝は点火プラグに近接しているため、混合気は点火プラグの電極に対して斜め上から当たっており、このため、点火プラグの火花を混合気に対してまんべんなく曝すことができるとは云い難く、従って、着火の確実性が疑問である。従って、特許文献2においても、高リーンバーン化や高EGR化には対応し難いのではないかと推測される。
【0007】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、高リーンバーン化や高EGR化に簡単な構造で対応できる技術を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は多くの構成を備えており、その典型を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、
「シリンダボアにピストンが摺動自在に嵌挿されたシリンダブロックと、前記シリンダブロックに固定されたシリンダヘッドとを有し、
前記シリンダヘッドには、前記ピストンに向けて拡径したテーパ面を有するペントルーフ型の燃焼室用下向き凹所が形成されており、前記下向き凹所に、一対ずつの吸気ポートと排気ポートとが前記シリンダボアの軸心を挟んだ反対側から開口している」
という基本構成になっている。
【0009】
そして、請求項1の発明は、上記基本構成において、
「前記下向き凹所の内面のうち前記シリンダボアの軸心よりも排気側に寄った部位でかつ一対の排気ポートの間のエリアに点火プラグが配置されて、
前記下向き凹所の内面に、吸気側と排気側との両方に跨がるように下向き傾斜部が配置され、前記下向き傾斜部の少なくとも一部が前記シリンダボアの軸心よりも排気側にずれるようにして形成されている」
という特徴を有している。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、
「前記下向き凹所の内面のうち前記点火プラグよりも吸気側のエリアに、圧縮工程において混合気を前記点火プラグに向かわせるガイド溝が配置されて、前記ガイド溝部に前記下向き傾斜部を設けている」
という構成になっている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記点火プラグは、前記下向き凹所のテーパ面と略直交した姿勢に配置されている一方、
前記下向き傾斜部は、前記点火プラグの軸心と略直交した方向に向かうように形成されている」
という構成になっている。ここに、「略直交」には、例えば交差角度が80度以上程度が含まれる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1~3のうちのいずれか1項において、
「前記ピストンの頂面に、吸気側が浅くて排気側が深くなった上向き凹所が形成されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、テーパ面を有するペントルーフ構造の燃焼室を前提としつつ、下向き傾斜部の少なくとも一部がシリンダボアの軸心よりも排気側に位置しているため、タンブル流を、点火プラグの電極(スパークギャップ)を通過させつつ燃焼室の中央部に案内できる。従って、初期火炎を燃焼室の中央部に生成させて、強い火炎を燃焼室の全体にまんべんなく伝播できる。
【0014】
すなわち、下向き傾斜部に沿ってタンブル流の余流が流れるが、タンブル流は多数の乱流に分離しているため、点火プラグによる着火によって生成した初期火炎は乱流強度が高くなっており、しかも、初期火炎を燃焼室の内面に当てることなく燃焼室の中央部に生成できるのであり、これにより、燃焼室の全体に強い火炎を速やかに伝播できる。従って、安定した燃焼を保持できる希釈限界(空燃比の限界)を低下させて、高リーンバーン化や高EGR化に対応できる。その結果、熱効率(燃費)の向上やNOxの低減に貢献できる。
【0015】
下向き傾斜部は、例えばリブによって形成することも可能であるが、請求項2のようにガイド溝によって形成すると、混合気のガイド機能を確実化できて好適である。しかも、シリンダヘッドのガイド溝を工夫するだけの簡単な構造であるため、コストを抑制できる。
【0016】
請求項3の構成を採用すると、ガイド溝から放出された混合気に対する火花の接触性を向上できると共に、燃焼室の内面に対して火炎が接触することを的確に阻止できるため、乱流強度が高い初期火炎の生成を確実化できる。従って、高リーンバーン化や高EGR化への対応性を更に向上できる。
【0017】
吸気ポートはシリンダボアの軸心を挟んで片側に位置しているため、混合気は流れの直進性によって排気側に向かう性質があるが、請求項4のように下向き凹所に対応した上向き凹所を形成すると、乱流強度が高い火炎を燃焼室の中央部に生成させることを、混合気の流れの性質を利用して無理無く実現できる。従って、高リーンバーン状況下や高EGR状況下でも燃焼をより一層確実化して、熱効率(燃費)の向上やNOxの低減を更に促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態を示す図で、(A)は縦断正面図で図2(A)の IA-IA視断面図、(B)は(A)のIIB-IIB 視断面図、(C)は(A)の部分拡大図である。
図2】(A)は図1のIIA-IIA 視底面図(シリンダヘッドの部分底面図)、(B)は図1のIIB-IIB 視平面図(ピストンの平面図)である。
図3】圧縮工程の途中での縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車用の多気筒エンジンに適用している。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、前後方向はクランク軸線方向で、左右方向はクランク軸線及びシリンダボア軸線と直交した方向である。
【0020】
(1).基本構造
エンジンの基本構造は従来と同様であり、図1に示すように、シリンダボア1が形成されたシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上面にガスケット3を介して固定されたシリンダヘッド4とを有しており、シリンダボア1にはピストン5が摺動自在に嵌挿されている。ピストン5にはコンロッド6がピストンピン7によって連結されており、コンロッド6はクランクピン(図示せず)に連結されている。
【0021】
シリンダヘッド4には、シリンダボア1に向けて開口した燃焼室用下向き凹所8が形成されている。下向き凹所8は、テーパ面8aを有するペントルーフ型に形成されており、図2(A)に示すように、底面視ではクランク軸線方向に長い形態を成している。
【0022】
そして、シリンダヘッド4には、下向き凹所8に向けて開口した前後一対ずつの吸気ポート9と排気ポート10とが左右に振り分けて形成されており、かつ、図1(A)に示すように、吸気ポート9を開閉する吸気バルブ11と、排気ポート10を開閉する排気バルブ12とが摺動自在に装着されている。図2(A)に示すように、吸気ポート9の出口と排気ポート10の入口にはバルブシート13,14を嵌着している。
【0023】
シリンダヘッド4の下向き凹所8は、概ねシリンダボア1の軸心O1を中心にして対称形状になっているが、左右長手の中心線O2(図2参照)で切断した図1(A)の状態では、僅かに排気側に膨れている。他方、ピストン5について見ると、概ねシリンダヘッド4の下向き凹所8と平面視で重なるように、ピストン5の頂面に上向き凹所15が形成されている。
【0024】
ピストン5の上向き凹所15は、排気側に最深部15aが位置するように、吸気側が浅くて排気側が深くなるように前後方向視で非対称に形成されている。また、最深部15aは、点火プラグ17よりも排気側にオフセットされている。正確には、上向き凹所15は、深さが吸気側から排気側に向けて徐々に深くなる緩傾斜部15bと、深さがほぼ一定の最深部15aと、最深部15aよりも排気側に位置して深さが急激に浅くなった急傾斜部15cとを有して、最深部15aは点火プラグ17よりも排気側にオフセットされている。従って、下向き凹所8と上向き凹所15とで構成された燃焼室は、排気側に膨れた状態になっている。上向き凹所15には、バルブ11,12を逃がすためのバルブリセス15d(図2(B)参照)が連続している。
【0025】
図示していないが、吸気ポート9にはインジェクタを設けている。従って、本実施形態のエンジンは、ポート噴射方式である。なお、図1,3において符号16で示すのは冷却水ジャケットである。
【0026】
(2).点火プラグ及びガイド溝
シリンダヘッド4の下向き凹所8のうち、一対ずつの吸気ポート9及び排気ポート10で囲われて部位でかつシリンダボア1の軸心O1よりも排気側に位置したエリア8bに、点火プラグ17が配置されている(点火プラグ17は、一対の排気ポート10の間のエリア8cに配置することも可能である。)。点火プラグ17は、エリア8b,8c内のどこに配置されてもよいが、左右長手の中心線O2上に配置されることが好ましい(火炎を前後方向に均等に拡散して、燃焼を均一化できる。)。
【0027】
点火プラグ17は、前後方向から見た状態で、その軸心O3とシリンダボア1の軸心O1との間隔が上に向けて広がるように、シリンダボアO1の軸心に対してある程度の角度θ1だけ傾けた姿勢に配置されている。また、点火プラグ17の軸心O3は、下向き凹所8のテーパ面8aとほぼ直交している。従って、電極18,19はシリンダボア1の内周面のうち吸気側に向いている。
【0028】
この場合、中心電極18及び接地電極19によって形成されるスパークギャップ20が左右方向に開口するように設定している。換言すると、接地電極19の柱が、点火プラグ17の軸心O3を挟んで前又は後ろに位置するように設定している。従って、ガイド溝21を通過した混合気は、スパークギャップ20をスムースに通過する傾向を呈する。
【0029】
そして、図1(A)及び図2(A)に示すように、シリンダヘッド4における下向き凹所8のうち点火プラグ17を挟んで吸気側に位置したエリアに、左右長手の中心線O2上に位置した左右長手のガイド溝21を形成している。ガイド溝21は、例えば図1(B)に示すように断面円弧状(U形やV形でもよい)であり、大半は一対の吸気ポート用バルブシート13の間に位置しており、終端は点火プラグ17に近接している。
【0030】
一対の吸気ポート用バルブシート13の間隔は、その軸心間の箇所が最も狭くて軸心から左右に離れるにしたがって間隔は広がっている。そこで、ガイド溝21は、両吸気ポート用バルブシート13の軸心間の部位で最も狭くて左右両端に向けて広くなっている。従って、ガイド溝21は底面視で鼓形(或いは砂時計状)の形態を成している。
【0031】
そして、下向き凹所8はテーパ面8aを有するペントルーフ型であることから、ガイド溝21は、吸気側の始端から排気側の終端に向けて高くなるように傾斜しているが、終端部は点火プラグ17の電極18,19に向かうように傾斜している。すなわち、ガイド溝21は、その大部分を占める上向き傾斜面21aと終端部のみに位置した下向き傾斜面21bとを有して、両者の連接部は最も高いピーク21cになっている。
【0032】
前後方向から見た状態(図1(A)(C),図3の状態)で、ピーク21cはシリンダボア1の軸心O1よりも吸気側に寄せられており、下向き傾斜面21bが吸気側と排気側との両方に跨がった状態で形成されている。なお、下向き傾斜面21bは、請求項に記載した下向き傾斜部に相当する。
【0033】
また、図1(A)のとおり、ガイド溝21の深さは、始端からおおよそ中間部(両吸気ポート用バルブシート13の軸心間)まで深さが徐々に増大して、略中間部から下向き傾斜面21bまでは概ね深さは一定している。下向き傾斜面21bの箇所では、深さは急激に低下している。図1において、ガイド溝21における下向き傾斜面21bの延長線を符号22で表示しているが、この延長線22は、概ね点火プラグ17の軸心O3と直交している(下向き傾斜面21bと点火プラグ17との交差角度θ2は、80度以上程度になっている。)。
【0034】
(3).まとめ
以上の構成において、吸気行程において混合気は直進性によってシリンダボア1でタンブル流となり、図3に示すように、圧縮行程では、混合気はタンブル流を残しながら加圧されていく。そして、上死点では、タンブル流は多数の乱流に分離していくが、タンブル流の流れ自体は残っている。
【0035】
特に、本実施形態では、燃焼室が排気側に膨れていることから、ピストン5の加圧によって混合気が吸気側から排気側に流れる傾向を呈してタンブル流が余流として強く残っており、このタンブル流の余流がガイド溝21を伝い流れるが、ガイド溝21の終端部が下向の傾斜面21bになっているため、タンブル流の余流は、下向き傾斜面21bのガイド作用によって点火プラグ17のスパークギャップ20に向かう流れとなり、これにより、図1(A)に網かけで示すように塊状の初期火炎23が生成される。
【0036】
そして、下向き傾斜面21bが点火プラグ17の軸心O3と略直交していることから、混合気に対して火花がまんべんなく接触して混合気に対する着火性に優れている。また、点火プラグ17のスパークギャップ20は下向き凹所8におけるテーパ面8aから離れているため、初期火炎23がテーパ面8aに接触することはなくて、火炎の熱が奪われることはない。つまり、初期火炎23の塊を燃焼室の中央部に生成できる。
【0037】
そして、タンブル流の余流は微細な乱流で構成されていることから、初期火炎23は乱流強度が高くなっているため、燃焼室の全体に火炎を急速に伝播させることができる。従って、失火をもたらすことなく燃焼できる空燃比の限界(希釈限界)を引き上げて、高リーンバーン化、高EGR化を促進できるのであり、その結果、熱効率(燃費)の向上やNOxの低減に大きく貢献できる。CO2削減にも貢献できる。
【0038】
実施形態のように、点火プラグ17をシリンダボア1の軸心O1に対して傾斜させつつ、スパークギャップ20を左右方向(混合気の流れ方向)に開口させると、混合気に対する火花の接触性を向上できる(混合気を火花に強く曝すことができる)ため、強くて大きい初期火炎23を生成できる。
【0039】
そして、タンブル流の余流は吸気側から排気側に流れるため、点火プラグ17を排気側にずらして配置すると、混合気の流れを利用して乱流強度が高い初期火炎23を無理なく生成できるが、本実施形態では、ガイド溝21の下向き傾斜面21bがシリンダボア1の軸心O1よりも排気側に寄っているため、混合気の流れをスパークギャップ20に対してスムースに案内できる。これにより、乱流強度が高い初期火炎23の生成を確実化できる利点がある。
【0040】
また、実施形態では、初期火炎23はシリンダボア1の軸心O1よりも排気側に少しずれているが、シリンダヘッド4に形成された下向き凹所8とピストン5に形成された上向き凹所15で構成された燃焼室が排気側に膨れているため、初期火炎23を燃焼室の中央部に配置できて、火炎を燃焼室の全体に均一にまんべんなく伝播できる利点がある。
【0041】
更に、実施形態のようにガイド溝21の下向き傾斜面21bを前後方向に広げると、下向き傾斜面22bから離反した混合気は電極18,19を包むようにして流れるため、初期火炎23を前後方向にも広がった状態に生成できる。これにより、燃焼室全体に火炎をまんべんなく伝播させる効果を向上できる。
【0042】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、ガイド溝21のピーク21cをシリンダボア1の軸心O1上に形成することも可能である。或いは、ピーク21cを軸心O1よりも排気側にずらすことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明は、エンジンに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 シリンダボア
2 シリンダブロック
4 シリンダヘッド
5 ピストン
8 ペントルーフ型の下向き凹所
9 吸気ポート
10 排気ポート
11 吸気バルブ
12 排気バルブ
13,14 バルブシート
15 ピストンに形成した上向き凹所
17 点火プラグ
18,19 電極
20 スパークギャップ
21 ガイド溝
21a 上向き傾斜面
21b 下向き傾斜面
21c ピーク
23 初期火炎
図1
図2
図3