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特開2023-141555搬送制御装置、搬送制御方法、搬送制御プログラム
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  • 特開-搬送制御装置、搬送制御方法、搬送制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141555
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】搬送制御装置、搬送制御方法、搬送制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/188 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
B65H23/188
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047933
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 高虎
【テーマコード(参考)】
3F105
【Fターム(参考)】
3F105AA01
3F105AA04
3F105AA08
3F105AA12
3F105AB03
3F105BA02
3F105CA15
3F105CB05
3F105DA02
3F105DA04
3F105DB02
(57)【要約】
【課題】被搬送物の張力を高精度に制御できる搬送制御装置等を提供する。
【解決手段】搬送制御装置1は、ダンサローラ243によって張力が付加された被搬送物3の張力を張力検出器26から取得する減算器18と、被搬送物3の張力指令を生成する張力指令生成部17と、減算器18によって取得された張力と張力指令生成部17によって生成された張力指令の差に基づいて、ダンサローラ243に被搬送物3の張力と逆向きに付加される推力を補正する推力補正部19と、を備える。推力補正部19によって補正される推力は、ダンサローラ243に接続されたエアシリンダ244の空気圧に基づく。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンサローラによって張力が付加された被搬送物の張力を検出する張力検出部と、
前記被搬送物の張力指令を生成する張力指令生成部と、
前記検出された張力と前記張力指令の差に基づいて、前記ダンサローラに前記被搬送物の張力と逆向きに付加される推力を補正する推力補正部と、
を備える搬送制御装置。
【請求項2】
前記推力は、前記ダンサローラに接続されたエアシリンダの空気圧に基づく、請求項1に記載の搬送制御装置。
【請求項3】
前記推力の方向における前記ダンサローラの位置を検出する位置検出部と、
前記推力の方向における前記ダンサローラの位置指令を生成する位置指令生成部と、
前記検出された位置と前記位置指令の差に基づいて、前記被搬送物の搬送速度を制御する速度制御部と、
を更に備える請求項1または2に記載の搬送制御装置。
【請求項4】
前記速度制御部は、前記検出された位置と前記位置指令の差に基づいて、前記被搬送物の搬送方向に直交する回転軸の周りに回転可能な搬送ローラの回転速度を制御する、請求項3に記載の搬送制御装置。
【請求項5】
ダンサローラによって張力が付加された被搬送物の張力を検出する張力検出ステップと、
前記被搬送物の張力指令を生成する張力指令生成ステップと、
前記検出された張力と前記張力指令の差に基づいて、前記ダンサローラに前記被搬送物の張力と逆向きに付加される推力を補正する推力補正ステップと、
を備える搬送制御方法。
【請求項6】
ダンサローラによって張力が付加された被搬送物の張力を検出する張力検出ステップと、
前記被搬送物の張力指令を生成する張力指令生成ステップと、
前記検出された張力と前記張力指令の差に基づいて、前記ダンサローラに前記被搬送物の張力と逆向きに付加される推力を補正する推力補正ステップと、
をコンピュータに実行させる搬送制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
紐やワイヤ等の線状の被搬送物や紙や布等の面状の被搬送物を搬送する搬送装置として、被搬送物の張力を検出するものが知られている。例えば特許文献1には、ワイヤの張力の検出値と基準値の差に基づいてモータに対する操作量を生成し、ワイヤの張力を基準値に維持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-176080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における張力検出器は、厳密には被搬送物の張力を直接的に検出しているのではなく、被搬送物に張力を付加するダンサローラの位置を検出している。このため、ダンサローラの位置と被搬送物の張力の相関性が完全でない場合は、被搬送物の張力の制御に誤差が生じてしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、被搬送物の張力を高精度に制御できる搬送制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の搬送制御装置は、ダンサローラによって張力が付加された被搬送物の張力を検出する張力検出部と、被搬送物の張力指令を生成する張力指令生成部と、検出された張力と張力指令の差に基づいて、ダンサローラに被搬送物の張力と逆向きに付加される推力を補正する推力補正部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、被搬送物の張力を直接的に検出し、張力指令との差に基づいてダンサローラに付加される推力(被搬送物の張力と釣り合う)を補正することで、被搬送物の張力を高精度に制御できる。
【0008】
本発明の別の態様は、搬送制御方法である。この方法は、ダンサローラによって張力が付加された被搬送物の張力を検出する張力検出ステップと、被搬送物の張力指令を生成する張力指令生成ステップと、検出された張力と張力指令の差に基づいて、ダンサローラに被搬送物の張力と逆向きに付加される推力を補正する推力補正ステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被搬送物の張力を高精度に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】搬送制御装置の構成を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る搬送制御装置1の構成を模式的に示す。搬送制御装置1は、被搬送物3を搬送する搬送装置2の搬送動作を制御する装置である。被搬送物3としては、紐やワイヤ等の線状のものや、紙、布、フィルム、箔、ゴム等の面状のものが例示される。本実施形態では、面状の基材を被搬送物3として搬送方向(図1における左右方向)に搬送するロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式の搬送装置2について説明する。搬送装置2は、搬送される被搬送物に対して任意の処理を施す装置、例えば、被搬送物にコーティングを施すコータまたは塗布装置、被搬送物に印刷を施す印刷機、被搬送物に張力を印加して延伸する延伸装置等の一部でもよい。
【0014】
搬送装置2は、駆動ローラ231と、駆動ローラ251と、ダンサ24と、張力検出器26を備える。後述する駆動部161によって回転駆動される駆動ローラ231には、当該駆動ローラ231との間で被搬送物3を挟み込んで当該駆動ローラ231と連動して回転する従動ローラ232が併設されてもよい。後述する駆動部16によって回転駆動される駆動ローラ251には、当該駆動ローラ251との間で被搬送物3を挟み込んで当該駆動ローラ251と連動して回転する従動ローラ252が併設されてもよい。なお、駆動ローラ231および/または駆動ローラ251がサクションロール等によって構成される場合は、従動ローラ232および/または従動ローラ252を設ける必要はない。
【0015】
駆動ローラ231/251および従動ローラ232/252は、被搬送物3を搬送する搬送部の一態様としての搬送ローラであり、搬送方向(図1における左右方向)に直交する方向(図1の紙面に垂直な方向)の回転軸の周りに回転可能である。駆動ローラ231/251は、速度制御部151/15によって生成される回転速度指令に応じてモータ等の駆動部161/16によって回転駆動される。図1における被搬送物3の搬送方向が右向きである場合、駆動ローラ231/251は駆動部161/16によって時計回り方向に回転駆動され、従動ローラ232/252は駆動ローラ231/251と連動して反時計回り方向に回転する。
【0016】
ダンサ24は、駆動ローラ231と駆動ローラ251の間に設けられる。
【0017】
ダンサ24は、被搬送物3に搬送方向における張力を付加する。ダンサ24は、被搬送物3の搬送経路(図1において被搬送物3が延在する左右方向の経路)上に設けられる一対のローラ241、242と、当該一対のローラ241、242の間において被搬送物3の搬送経路から逸れた位置に設けられるダンサローラ243を備える。なお、ダンサローラはダンサロールとも呼ばれる。
【0018】
ダンサローラ243は、被搬送物3の搬送経路から離れる方向(図1における上下方向)において上端243Aと下端243Bの間を移動可能に設けられる。推力付加部としてのエアシリンダ244は、ダンサローラ243を被搬送物3の搬送経路から離れる方向(図1における下方)に付勢または加圧する推力を生成する。この推力は、ピストンロッドまたはコネクティングロッドを介してダンサローラ243に接続されたエアシリンダ244の空気圧に基づく。エアシリンダ244の空気圧は、電気によって空気圧を制御する電空レギュレータ等によって構成される後述する推力補正部19によって生成される。従来の電空レギュレータでは一定の電圧が印加されることが一般的であり、エアシリンダの空気圧すなわちダンサローラの推力が一定に制御されていたが、本実施形態ではエアシリンダ244の空気圧すなわちダンサローラ243の推力が適応的に制御される。なお、エアシリンダ244に代えて他の原理に基づいてダンサロール243に推力を付加する推力付加部(例えば、電気に基づいてダンサロール243に推力を付加するリニアモータ等)を設けてもよい。
【0019】
エアシリンダ244からの推力によって下方に付勢または加圧されたダンサローラ243は、被搬送物3を搬送経路から離れる方向に引っ張ることで当該被搬送物3に張力を付加する。この時、ダンサローラ243は、エアシリンダ244から受ける下向きの推力と、被搬送物3から受ける上向きの張力が釣り合った位置で静止する。前述のように、一般的にはダンサローラ243がエアシリンダ244から受ける下向きの推力は略一定に維持または制御されるため、ダンサローラ243の上下方向の位置は被搬送物3の張力を表す。
【0020】
推力の方向(図1における上下方向)におけるダンサローラ243の位置は、位置検出部245または位置センサによって電気信号として検出され、搬送制御装置1の減算器14に提供される。これに加えて減算器14には、搬送制御装置1の位置指令生成部13で生成された推力の方向におけるダンサローラ243の位置指令が入力される。搬送制御装置1の速度制御部15は、減算器14から提供されるダンサローラ243の位置または被搬送物3の張力の偏差を小さくするための速度指令を生成する。この速度指令は、被搬送物3の搬送速度に対する指令であり、具体的には以下で説明する駆動ローラ251の回転速度に対する指令である。
【0021】
搬送制御装置1の駆動部16および/または161は、速度制御部15および/または151から提供される速度指令に応じて、ダンサ24の直後および/または直前に併設される駆動ローラ251および/または駆動ローラ231を回転駆動する。以下では、ダンサ24の直後に併設される駆動ローラ251の制御について詳述するが、これらの内容はダンサ24の直前に併設される駆動ローラ231の制御についても適用可能である。また、図1では、ダンサ24の直前に併設される駆動ローラ231に関連する構成(例えば位置指令生成部13や減算器14等)が省略されている。駆動ローラ251は、被搬送物3の搬送方向に直交する回転軸の周りに回転可能な搬送ローラである。駆動ローラ251が図1における時計回り方向に回転駆動されると、従動ローラ252が駆動ローラ251と連動して反時計回り方向に回転する。駆動ローラ251の回転速度は位置および/または張力の偏差に応じて適応的に制御される。このように、駆動ローラ251および従動ローラ252は間に挟み込まれた被搬送物3を搬送しながら、位置指令生成部13で生成されたダンサローラ243の位置を制御する。
【0022】
以上のようにダンサ24は、一定推力を付加しているだけで(推力と基材張力との釣り合いだけで張力制御しており)実際の張力を直接的に検出して制御しているのではないため、張力精度は電空変換器への電圧指令やエアシリンダの空気圧指令に依存し、被搬送物3の張力の制御に誤差が生じてしまう。以下で説明するように、本実施形態に係る搬送制御装置1によれば、ダンサ24による「粗い」張力制御に加えておよび/または代えて「細かい」張力制御を実現することで、被搬送物3の張力を従来に比べて高精度に制御できる。細かい張力制御のために、搬送装置2には、ダンサローラ243によって張力が付加された被搬送物3の張力を直接的に検出する張力検出器26が、張力制御区間である駆動ローラ231と251との間に設けられる。ダンサ24の前段/後段は問わない。
【0023】
搬送制御装置1は、粗い張力制御を実現するための機能ブロックとして、前述の位置指令生成部13と、減算器14と、速度制御部15と、駆動部16を備え、細かい張力制御を実現するための機能ブロックとして、張力指令生成部17と、減算器18と、推力補正部19を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0024】
張力指令生成部17は、被搬送物3の張力指令を生成する。張力検出部として機能する減算器18は、張力検出器26によって直接的に検出された被搬送物3の張力と、張力指令生成部17によって生成された張力指令の差を演算する。推力補正部19は、減算器18によって演算された実際の張力と張力指令の差に基づいて、ダンサローラ243に被搬送物3の張力と逆向き(図1における下向き)に付加される推力を補正する。具体的には、推力補正部19は例えば電空レギュレータによって構成され、実際の張力と張力指令の張力偏差を小さくするための電圧をエアシリンダ244に印加する。そして、エアシリンダ244が所望の張力と直接的に釣り合う下向きの推力または空気圧を適応的に生成することで、張力偏差が直接的に最小化される。このように、本実施形態によれば、被搬送物3の張力を従来に比べて高精度に制御できる。
【0025】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0026】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 搬送制御装置、2 搬送装置、3 被搬送物、13 位置指令生成部、14 減算器、15 速度制御部、16 駆動部、17 張力指令生成部、18 減算器、19 推力補正部、20 搬送ローラ群、24 ダンサ、26 張力検出器、243 ダンサローラ、244 エアシリンダ、245 位置検出部、251 駆動ローラ。
図1