(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141556
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータ制御方法、モータ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 23/20 20160101AFI20230928BHJP
【FI】
H02P23/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047934
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 高虎
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA15
5H505BB09
5H505DD03
5H505FF02
5H505FF04
5H505GG02
5H505GG08
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ22
5H505JJ25
5H505KK06
5H505LL06
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】モータの速度とトルクを高速に制御できるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置10は、回転動力を発生させるモータ4の基準速度指令を生成する基準速度指令生成部121を備える制御部12と、基準速度指令に対する速度補正量を生成する速度補正量生成部111と、速度補正量によって補正された基準速度指令および測定されたモータ4の速度を減算して速度偏差を算出する速度減算器114と、速度偏差をモータ4の基準トルク指令に変換する速度偏差変換部115と、基準トルク指令に対するトルク補正量を生成するトルク補正量生成部116と、トルク補正量によって補正された基準トルク指令および測定されたモータ4のトルクを減算してトルク偏差を算出するトルク減算器118と、トルク偏差をモータ4に対する印加電力に変換するトルク偏差変換部119を備え、処理周期が制御部12における処理周期より短い駆動部11を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動力を発生させるモータの基準速度指令を生成する基準速度指令生成部を備える制御部と、
前記基準速度指令に対する速度補正量を生成する速度補正量生成部と、当該速度補正量によって補正された前記基準速度指令および測定された前記モータの速度を減算して速度偏差を算出する速度減算器と、当該速度偏差を前記モータの基準トルク指令に変換する速度偏差変換部と、当該基準トルク指令に対するトルク補正量を生成するトルク補正量生成部と、当該トルク補正量によって補正された前記基準トルク指令および測定された前記モータのトルクを減算してトルク偏差を算出するトルク減算器と、当該トルク偏差を前記モータに対する印加電力に変換するトルク偏差変換部と、を備え、処理周期が前記制御部における処理周期より短い駆動部と、
を備えるモータ制御装置。
【請求項2】
前記速度補正量生成部は、前記モータの回転位置に応じた所定のパターンに従って前記速度補正量を生成する、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記トルク補正量生成部は、前記モータの速度に応じた所定のパターンに従って前記トルク補正量を生成する、請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記トルク補正量生成部は、前記速度偏差を微分して加速度偏差を算出する速度偏差微分器と、当該加速度偏差に加速度補償ゲインを乗算して前記トルク補正量を算出する加速度補償ゲイン乗算器と、を備える、請求項1から3のいずれかに記載のモータ制御装置。
【請求項5】
制御部において実行される、回転動力を発生させるモータの基準速度指令を生成する基準速度指令生成ステップと、
処理周期が前記制御部における処理周期より短い駆動部において実行される、前記基準速度指令に対する速度補正量を生成する速度補正量生成ステップと、当該速度補正量によって補正された前記基準速度指令および測定された前記モータの速度を減算して速度偏差を算出する速度減算ステップと、当該速度偏差を前記モータの基準トルク指令に変換する速度偏差変換ステップと、当該基準トルク指令に対するトルク補正量を生成するトルク補正量生成ステップと、当該トルク補正量によって補正された前記基準トルク指令および測定された前記モータのトルクを減算してトルク偏差を算出するトルク減算ステップと、当該トルク偏差を前記モータに対する印加電力に変換するトルク偏差変換ステップと、
を備えるモータ制御方法。
【請求項6】
制御部において実行される、回転動力を発生させるモータの基準速度指令を生成する基準速度指令生成ステップと、
処理周期が前記制御部における処理周期より短い駆動部において実行される、前記基準速度指令に対する速度補正量を生成する速度補正量生成ステップと、当該速度補正量によって補正された前記基準速度指令および測定された前記モータの速度を減算して速度偏差を算出する速度減算ステップと、当該速度偏差を前記モータの基準トルク指令に変換する速度偏差変換ステップと、当該基準トルク指令に対するトルク補正量を生成するトルク補正量生成ステップと、当該トルク補正量によって補正された前記基準トルク指令および測定された前記モータのトルクを減算してトルク偏差を算出するトルク減算ステップと、当該トルク偏差を前記モータに対する印加電力に変換するトルク偏差変換ステップと、
をコンピュータに実行させるモータ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転動力を発生させるモータの速度およびトルクを補償するモータ制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
急な加減速の際等、モータの動作を短時間で精密に制御する必要がある場合、処理周期が長いモータ制御装置では速度およびトルクの補償が間に合わない恐れがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、モータの速度およびトルクを高速に制御できるモータ制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のモータ制御装置は、回転動力を発生させるモータの基準速度指令を生成する基準速度指令生成部を備える制御部と、基準速度指令に対する速度補正量を生成する速度補正量生成部と、当該速度補正量によって補正された基準速度指令および測定されたモータの速度を減算して速度偏差を算出する速度減算器と、当該速度偏差をモータの基準トルク指令に変換する速度偏差変換部と、当該基準トルク指令に対するトルク補正量を生成するトルク補正量生成部と、当該トルク補正量によって補正された基準トルク指令および測定されたモータのトルクを減算してトルク偏差を算出するトルク減算器と、当該トルク偏差をモータに対する印加電力に変換するトルク偏差変換部と、を備え、処理周期が制御部における処理周期より短い駆動部と、を備える。
【0007】
この態様では、制御部より処理周期が短い駆動部において速度補正量およびトルク補正量が生成されるため、モータの速度およびトルクを高速に制御できる。
【0008】
本発明の別の態様は、モータ制御方法である。この方法は、制御部において実行される、回転動力を発生させるモータの基準速度指令を生成する基準速度指令生成ステップと、処理周期が制御部における処理周期より短い駆動部において実行される、基準速度指令に対する速度補正量を生成する速度補正量生成ステップと、当該速度補正量によって補正された基準速度指令および測定されたモータの速度を減算して速度偏差を算出する速度減算ステップと、当該速度偏差をモータの基準トルク指令に変換する速度偏差変換ステップと、当該基準トルク指令に対するトルク補正量を生成するトルク補正量生成ステップと、当該トルク補正量によって補正された基準トルク指令および測定されたモータのトルクを減算してトルク偏差を算出するトルク減算ステップと、当該トルク偏差をモータに対する印加電力に変換するトルク偏差変換ステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータの速度およびトルクを高速に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】基準速度指令に対する速度補正量の具体例を示す。
【
図4】基準速度指令に対する速度補正量の具体例を示す。
【
図5】基準トルク指令に対するトルク補正量の具体例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、被搬送物3を搬送する搬送装置2の搬送動作を制御する搬送制御装置1の構成を模式的に示す。被搬送物3としては、紐やワイヤ等の線状のものや、紙、布、フィルム、箔、ゴム等の面状のものが例示される。本実施形態では、面状の基材を被搬送物3として搬送方向(
図1における左右方向)に搬送するロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)方式の搬送装置2について説明する。搬送装置2は、搬送される被搬送物に対して任意の処理を施す装置、例えば、被搬送物にコーティングを施すコータまたは塗布装置、被搬送物に印刷を施す印刷機、被搬送物に張力を印加して延伸する延伸装置、被搬送物としての段ボール等を搬送しながら箱状に組み立てる製函機等の一部でもよい。
【0014】
搬送装置2は、搬送ローラ群20と、ダンサ24を備える。搬送ローラ群20は、被搬送物3を搬送する複数の搬送部としての複数の搬送ローラを備える。
図1の例における搬送ローラ群20は、被搬送物3の搬送方向に沿って直列に配置される3個の搬送ローラ対を備える。複数の搬送ローラは、搬送方向において隣接している。各搬送ローラ対は、後述する各駆動部11A~11Cによって回転駆動される駆動ローラ211~213と、当該駆動ローラ211~213との間で被搬送物3を挟み込んで当該駆動ローラ211~213と連動して回転する従動ローラ221~223を備える。3個の搬送ローラ対211/221~213/223と、それぞれに対応して搬送制御装置1に設けられる3個の駆動部11A~11Cは、互いに同様に構成できる。そこで、以下では第1搬送ローラ対211/221、第1駆動部11Aについて説明し、他の搬送ローラ対212/222、213/223、他の駆動部11B、11Cについての重複する説明は省略する。なお、搬送ローラ群20に設けられる搬送ローラ対の数は任意(1以上の任意の整数)でよい。
【0015】
駆動ローラ211および従動ローラ221は、被搬送物3を搬送する搬送部の一態様としての搬送ローラであり、搬送方向(
図1における左右方向)に直交する方向(
図1の紙面に垂直な方向)の回転軸の周りに回転可能である。駆動ローラ211に併設されるモータ(
図1では不図示)は、駆動部11A~11Cと共に本実施形態のモータ制御装置10を構成する後述の制御部12によって生成される基準回転速度指令に基づいて駆動部11Aによって回転駆動される。
図1における被搬送物3の搬送方向が右向きである場合、駆動ローラ211は駆動部11Aによって時計回り方向に回転駆動され、従動ローラ221は駆動ローラ211と連動して反時計回り方向に回転する。搬送ローラ群20を構成する各駆動ローラ211~213を搬送制御装置1の各駆動部11A~11Cによって個別に回転駆動することで、被搬送物3の各部の速度や張力をきめ細かく制御できるため、搬送装置2による被搬送物3の搬送動作や、当該搬送装置2が設けられる各種の装置による処理を最適化できる。
【0016】
ダンサ24は、搬送ローラ群20の搬送方向における上流(
図1における左側)と下流(
図1における右側)に、当該搬送ローラ群20を搬送方向の両側から挟み込むように設けられる。図示の二つのダンサ24は互いに同様に構成できるため、左側のダンサ24について説明する。
【0017】
ダンサ24は、被搬送物3に搬送方向における張力を付加する。ダンサ24は、被搬送物3の搬送経路(
図1において被搬送物3が延在する左右方向の経路)上に設けられる一対のローラ241、242と、当該一対のローラ241、242の間において被搬送物3の搬送経路から逸れた位置に設けられるダンサローラ243を備える。なお、ダンサローラはダンサロールとも呼ばれる。
【0018】
ダンサローラ243は、被搬送物3の搬送経路に垂直な方向(
図1における上下方向)において上端243Aと下端243Bの間を移動可能に設けられる。推力付加部としてのエアシリンダ244は、ダンサローラ243を被搬送物3の搬送経路から離れる方向(
図1における下方)に付勢または加圧する推力を生成する。この推力は、ピストンロッドまたはコネクティングロッドを介してダンサローラ243に接続されたエアシリンダ244の空気圧に基づく。エアシリンダ244の空気圧は、電気によって空気圧を制御する電空レギュレータ等によって構成される推力制御部17によって生成される。電空レギュレータ(推力制御部17)には略一定の電圧が印加されることが一般的であり、エアシリンダ244の空気圧すなわちダンサローラ243の推力は略一定に制御される。なお、エアシリンダ244に代えて他の原理に基づいてダンサローラ243に推力を付加する推力付加部(例えば、電気に基づいてダンサローラ243に推力を付加するリニアモータ等)を設けてもよい。
【0019】
エアシリンダ244からの推力によって下方に付勢または加圧されたダンサローラ243は、被搬送物3を搬送経路から離れる方向に引っ張ることで当該被搬送物3に張力を付加する。この時、ダンサローラ243は、エアシリンダ244から受ける下向きの推力と、被搬送物3から受ける上向きの張力が釣り合った位置で静止する。前述のように、一般的にはダンサローラ243がエアシリンダ244から受ける下向きの推力は略一定に維持または制御されるため、ダンサローラ243の上下方向の位置は被搬送物3の張力を表す。
【0020】
推力の方向(
図1における上下方向)におけるダンサローラ243の位置は、位置検出部245または位置センサによって電気信号として検出され、搬送制御装置1の減算器14に提供される。これに加えて減算器14には、搬送制御装置1の位置指令生成部13で生成された推力の方向におけるダンサローラ243の位置指令が入力される。前述の通り、ダンサローラ243の位置は被搬送物3の張力に略相当するため、位置指令生成部13が生成するダンサローラ243の位置指令は被搬送物3の張力指令に略相当する。搬送制御装置1の速度制御部15は、減算器14から提供されるダンサローラ243の位置または被搬送物3の張力の偏差を小さくするための速度指令を生成する。この速度指令は、被搬送物3の搬送速度に対する指令であり、具体的には以下で説明する駆動ローラ251の回転速度に対する指令である。
【0021】
搬送制御装置1の駆動部16は、速度制御部15から提供される速度指令に応じて、ダンサ24の直後に併設される駆動ローラ251を回転駆動する。駆動ローラ251は、被搬送物3の搬送方向に直交する回転軸の周りに回転可能な搬送ローラである。駆動ローラ251が
図1における時計回り方向に回転駆動されると、従動ローラ252が駆動ローラ251と連動して反時計回り方向に回転する。なお、ダンサ24の直前にも、駆動ローラ251と同様の駆動ローラ231および従動ローラ252と同様の従動ローラ232が設けられる。駆動ローラ231は例えば一定の回転速度で不図示の駆動部によって回転駆動される。これに対して、駆動ローラ251の回転速度は位置および/または張力の偏差に応じて適応的に制御される。このように、駆動ローラ251および従動ローラ252は間に挟み込まれた被搬送物3を搬送しながら、位置指令生成部13で生成されたダンサローラ243の位置指令すなわち被搬送物3の張力指令に応じた所望の張力を被搬送物3に付加する。
図1の例では、搬送ローラ群20の搬送方向における直前と直後に二つのダンサ24が設けられているため、搬送ローラ群20の入口部分(
図1における左端)と出口部分(
図1における右端)における被搬送物3の張力を所望の値に制御できる。
【0022】
前述のように搬送装置2はコータ、印刷機、延伸装置、製函機等の各種の装置に設けられうるが、各種の処理の最適化のために被搬送物3を急激に加減速する必要が生じうる。このようにモータの動作を短時間で精密に制御する必要がある場合、処理周期が長い従来のモータ制御装置では速度およびトルクの補償が間に合わない恐れがある。以下で説明する本実施形態のモータ制御装置10によれば、モータの速度およびトルクを高速に制御できる。
図1に示されるように、搬送制御装置1の一部を構成するモータ制御装置10は、駆動部11A~11C(以下では総称して駆動部11ともいう)と制御部12によって構成される。
【0023】
図2は、モータ制御装置10の機能ブロック図である。モータ制御装置10の制御部12は、基準速度指令生成部121を備える。モータ制御装置10の駆動部11は、速度補正量生成部111と、速度補正量加算器112と、回転位置微分器113と、速度減算器114と、速度偏差変換部115と、トルク補正量生成部116と、トルク補正量加算器117と、トルク減算器118と、トルク偏差変換部119を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0024】
基準速度指令生成部121は、各駆動ローラ211~213を回転駆動するための回転動力を発生させるモータ4の基準速度指令を生成する。以下で詳細に説明するように、制御部12より後段またはモータ4側に設けられる駆動部11は、基準速度指令生成部121から提供される基準速度指令に対して、速度補正量による速度補正または速度補償と、トルク補正量によるトルク補正またはトルク補償を施した上で、モータ4に対する三相交流等の印加電力を生成する。
【0025】
駆動部11における処理周期は制御部12における処理周期より短いため、駆動部11における速度補正およびトルク補正を制御部12より高速に実行できる。具体的には、駆動部11における処理周期は例えば数百マイクロ秒程度であり、制御部12における処理周期は例えば数ミリ秒程度であり、前者が後者の約10分の1以下になっている。このように駆動部11において高速に速度補正量およびトルク補正量を生成することで、搬送装置2が各種の処理の最適化のために必要とする被搬送物3の急激な加減速も確実に実行できる。
【0026】
駆動部11の速度補正量生成部111は、制御部12の基準速度指令生成部121が生成した基準速度指令に対する速度補正量を生成する。速度補正量の具体例については後述する。速度補正量加算器112は、制御部12の基準速度指令生成部121が生成した基準速度指令に対して、速度補正量生成部111が生成した速度補正量を加算する。回転位置微分器113は、PG(Position Generator)と呼ばれる回転位置測定器41によって測定されたモータ4の回転位置を微分して、モータ4の回転速度を算出する。速度減算器114は、速度補正量加算器112において速度補正量によって補正された基準速度指令および回転位置微分器113からの測定されたモータ4の速度を減算して速度偏差を算出する。速度偏差変換部115は、速度減算器114が算出した速度偏差をモータ4の基準トルク指令に変換する。
【0027】
トルク補正量生成部116は、速度偏差変換部115が生成した基準トルク指令に対するトルク補正量を生成する。トルク補正量の具体例については後述する。トルク補正量加算器117は、速度偏差変換部115が生成した基準トルク指令に対して、トルク補正量生成部116が生成したトルク補正量を加算する。トルク減算器118は、トルク補正量加算器117においてトルク補正量によって補正された基準トルク指令および測定されたモータ4のトルクを減算してトルク偏差を算出する。トルク偏差変換部119は、トルク減算器118が算出したトルク偏差をモータ4に対する印加電力に変換する。
【0028】
図3および
図4は、駆動部11の速度補正量生成部111が生成する、基準速度指令に対する速度補正量の具体例を示す。これらの図において、横軸は回転位置測定器41によって測定されるモータ4の回転位置を表し、縦軸は基準速度指令生成部121が生成した基準速度指令に対して速度補正量加算器112において加算される速度補正量生成部111が生成する速度補正量を表す。縦軸の中央または原点に対応する基準速度指令に対して、上方の速度補正量は基準速度指令に対する加速量を表し、下方の速度補正量は基準速度指令に対する減速量を表す。従って、
図3および
図4の例では、「加減速開始」の回転位置まで基準速度指令通りの速度に制御されていたモータ4が、減速、加速、減速を経て「加減速終了」の回転位置で基準速度指令通りの速度に復帰する。
【0029】
基準速度指令生成部121が生成する基準速度指令は、制御部12の処理周期(例えば数ミリ秒程度)で更新可能である。しかし、モータ4が高速に回転している場合や、制御部12の処理周期より短い時間でモータ4を細かく加減速する場合は、制御部12の長い処理周期では対応できない。そこで本実施形態では、短い処理周期(例えば数百マイクロ秒程度)の駆動部11の速度補正量生成部111において、
図3および
図4に示されるような基準速度指令に対する速度補正量のパターンを高速で生成する。
【0030】
ここで、制御部12に比べて制御リソースが少ない駆動部11でも対応できるように、速度補正量の加減速パターンを予め設定しておくのが好ましい。具体的には、
図3および
図4に示されるように、速度補正量生成部111は、モータ4の回転位置に応じた所定のパターンに従って速度補正量を生成するのが好ましい。速度補正量のパターンは、
図3に示されるように、速度補正量の各変化点の回転位置と加減速量の座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)、(X5,Y5)によって定義されてもよいし、
図4に示されるように、減速区間(DEC1,DEC2)、定速区間(CST1,CST2)、加速区間(ACC1,ACC2)等の各回転位置区間のパラメータ(例えば、回転位置区間の幅、速度補正量の傾き等)によって定義されてもよいし、モータ4の回転位置に応じて基準速度指令に対して乗算されるゲインによって定義されてもよい。
【0031】
図5は、駆動部11のトルク補正量生成部116が生成する、基準トルク指令に対するトルク補正量の具体例を示す。この図において、横軸は回転位置微分器113で得られるモータ4の速度を表し、縦軸は速度偏差変換部115が生成した基準トルク指令に対してトルク補正量加算器117において加算されるトルク補正量生成部116が生成するトルク補正量を表す。縦軸の中央または原点に対応する基準トルク指令に対して、上方のトルク補正量は基準トルク指令に対するトルク増加量を表し、下方のトルク補正量は基準トルク指令に対するトルク減少量を表す。制御部12より短い処理周期(例えば数百マイクロ秒程度)の駆動部11のトルク補正量生成部116は、
図5に示されるような基準トルク指令に対するトルク補正量のパターンを高速で生成する。
【0032】
ここで、制御部12に比べて制御リソースが少ない駆動部11でも対応できるように、
図3および
図4における速度補正量と同様にトルク補正量の増減パターンを予め設定しておくのが好ましい。具体的には、
図5に示されるように、トルク補正量生成部116は、モータ4の速度に応じた所定のパターンに従ってトルク補正量を生成するのが好ましい。トルク補正量のパターンは、
図5に示されるように、トルク補正量の各変化点の速度とトルク増減量の座標(0,Y0)、(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)等によって定義されてもよいし、
図4と同様に、各速度区間のパラメータ(例えば、速度区間の幅、トルク補正量の傾き等)によって定義されてもよいし、モータ4の速度に応じて基準トルク指令に対して乗算されるゲインによって定義されてもよい。
【0033】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0034】
例えば
図6に示されるように、トルク補正量生成部116は、速度減算器114が算出した速度偏差に基づいて、基準トルク指令に対するトルク補正量を生成してもよい。具体的には、トルク補正量生成部116は、速度減算器114が算出した速度偏差を微分して加速度偏差を算出する速度偏差微分器116Aと、当該加速度偏差に加速度補償ゲインを乗算してトルク補正量を算出する加速度補償ゲイン乗算器116Bを備える。ここで、加速度補償ゲイン乗算器116Bの加速度補償ゲインは、
図5のようにモータ4の速度に応じた所定のパターンに従って決定されるのが好ましい。
【0035】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 搬送制御装置、2 搬送装置、3 被搬送物、4 モータ、10 モータ制御装置、11 駆動部、12 制御部、20 搬送ローラ群、41 回転位置測定器、111 速度補正量生成部、112 速度補正量加算器、113 回転位置微分器、114 速度減算器、115 速度偏差変換部、116 トルク補正量生成部、116A 速度偏差微分器、116B 加速度補償ゲイン乗算器、117 トルク補正量加算器、118 トルク減算器、119 トルク偏差変換部、121 基準速度指令生成部、211 駆動ローラ。