(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141589
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】固形燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/46 20060101AFI20230928BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20230928BHJP
B09B 3/32 20220101ALI20230928BHJP
B09B 101/67 20220101ALN20230928BHJP
【FI】
C10L5/46
B09B3/70 ZAB
B09B3/32
B09B101:67
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047992
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】507394639
【氏名又は名称】株式会社サムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪田 勇
(72)【発明者】
【氏名】岡野 公美
(72)【発明者】
【氏名】鴨沢 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】阪田 乾仁
(72)【発明者】
【氏名】阪田 光子
【テーマコード(参考)】
4D004
4H015
【Fターム(参考)】
4D004AA06
4D004AA07
4D004AA12
4D004BA03
4D004CA02
4D004CA07
4D004CA14
4D004CA34
4D004CA42
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA10
4H015AA01
4H015AB01
4H015BA13
4H015BB03
4H015BB11
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、含水率が低く、高発熱量を備えた固形燃料及び固形燃料の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、廃棄物から形成した固形燃料13であって、パルプ6、プラスチック8、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつ1を石灰を含む分解処理液3で分解処理して、パルプ6、プラスチック8、高分子吸収体を回収し、使用済み紙おむつ1から回収した少なくともプラスチック8を用いて形成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物から形成した固形燃料(13)であって、
パルプ(6)、プラスチック(8)、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつ(1)を石灰を含む分解処理液(3)で分解処理して、前記パルプ(6)、前記プラスチック(8)、前記高分子吸収体を回収し、前記使用済み紙おむつ(1)から回収した少なくとも前記プラスチック(8)を用いて形成したことを特徴とする固形燃料(13)。
【請求項2】
前記使用済み紙おむつ(1)から回収した前記高分子吸収体は、前記石灰を含む分解処理液(3)で不活化してプラスチック(8)として回収し、該プラスチック(8)を用いて形成したことを特徴とする請求項1に記載の固形燃料(13)。
【請求項3】
前記使用済み紙おむつ(1)と前記分解処理液(3)とが投入され、使用済み紙おむつ(1)を紙おむつを構成する複数種の素材に分離機(2)で分解し、前記分離機(2)内で使用済み紙おむつ(1)を分解した後の固形成分であるプラスチック(8)とこのプラスチック(8)に付着しているパルプ(6)を選別機(10)で乾燥させて選別し、前記選別機(10)で前記パルプ(6)と選別されたプラスチック(8)を用いて形成したことを特徴とする請求項2に記載の固形燃料(13)。
【請求項4】
前記固形燃料(13)が、燃料として石炭を用いた火力発電所において石炭に代わる補助燃料として使用されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固形燃料。
【請求項5】
前記固形燃料は、前記使用済み紙おむつから回収したプラスチックを50~60%、パルプを40~50%含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固形燃料。
【請求項6】
廃棄物から固形燃料(13)を製造する固形燃料の製造方法であって、
パルプ(6)、プラスチック(8)、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつ(1)を分離機(2)内で石灰を含む分解処理液(3)で分解処理し、前記分離機(2)内で使用済み紙おむつ(1)を分解した後の固形成分であるプラスチック(8)とこのプラスチック(8)に付着しているパルプ(6)を選別機(10)で乾燥させて選別し、前記選別機(10)で前記パルプ(6)と選別されたプラスチックを用いて前記固形燃料(13)を形成することを特徴とする固形燃料(13)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄された紙・プラスチックで製造される固形燃料及び固形燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示されているように、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)は、廃棄された紙・プラスチックで製造された固形燃料である。RPFは石炭に代わる燃料として主に製紙会社などの大型ボイラー等で利用されている。製紙会社では、大量のRPFを使用しているため、大量のRPFを長期間に亘りストックしている。大量のRPFを長期間にわたりストックする場合、屋外に設置された場所に保管していることが多い。当然ながら降雨の際には、RPFに雨水が当たり、RPF中に水分が染み込んでいく。屋外に長時間保管する場合などは、水分が染み込む他にかびが発生することも懸念される。
【0003】
紙が多く含まれるRPFの場合には水分を吸収し、RPFが膨張するケースもある。RPFが膨張するとボイラーで燃焼の際、安定燃焼を阻害する要因ともなり、発電も不安定になる。また、水分が多くなるということは熱量(カロリー)も下がることになり、必要な熱量を確保するために余分にRPFを投入せざるを得なくなる。
【0004】
また、昨今は使用済み紙おむつをRPF化する事業者も現れているが、高分子吸収体の分解までは至っておらず、このため降雨の際に雨水を吸収し、同様に膨張してRPF自体の崩れ、劣化につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、RPFの含水率が高くなると発熱量の低下による燃焼温度の低下、水分の蒸発のため排ガス量の増加、また排ガス処理設備のコスト増加という課題を引き起こす。また、使用済み紙おむつを原料としたRPFに高分子吸収体が分解されずに残存していると、雨水等の水分を当然に吸収し、さらに膨張、形状の崩れの原因となる。
【0007】
そこで、本発明は、含水率が低く、高発熱量を備えた固形燃料及び固形燃料の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様は、廃棄物から形成した固形燃料であって、パルプ、プラスチック、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつを石灰を含む分解処理液で分解処理して、前記パルプ、前記プラスチック、前記高分子吸収体を回収し、前記使用済み紙おむつから回収した少なくとも前記プラスチックを用いて形成したことを特徴としている。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記使用済み紙おむつから回収した前記高分子吸収体は、前記石灰を含む分解処理液で不活化してプラスチックとして回収し、該プラスチックを用いて形成したことを特徴としている。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記使用済み紙おむつと前記分解処理液とが投入され、使用済み紙おむつを構成する複数種の素材に分離機で分解し、前記分離機内で使用済み紙おむつを分解した後の固形成分であるプラスチックとこのプラスチックに付着しているパルプを選別機で乾燥させて選別し、前記選別機で前記パルプと選別されたプラスチックを用いて形成したことを特徴としている。
【0011】
本発明の第4の態様は、前記固形燃料が、前記燃料として石炭を用いた火力発電所において石炭に代わる補助燃料として使用されることを特徴としている。
【0012】
本発明の第5の態様は、前記固形燃料は、前記使用済み紙おむつから回収したプラスチックを50~60%、パルプを40~50%含むことを特徴としている。
【0013】
本発明の第6の態様は、廃棄物から固形燃料を製造する固形燃料の製造方法であって、
パルプ、プラスチック、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつを分離機内で石灰を含む分解処理液で分解処理し、前記分離機内で使用済み紙おむつを分解した後の固形成分であるプラスチックとこのプラスチックに付着しているパルプを選別機で乾燥させて選別し、前記選別機で前記パルプと選別されたプラスチックを用いて前記固形燃料(13)を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、使用済み紙おむつから回収したプラスチックを用いているので、含水率が低く、高発熱量を備えた固形燃料を得ることができる。すなわち、本発明では、パルプ、プラスチック、高分子吸収体を含み、使用した後の廃棄物としての使用済み紙おむつを石灰を含む分解処理液で分解処理して、パルプ、プラスチック、高分子吸収体を回収し、使用済み紙おむつから回収した少なくともプラスチックを用いて固形燃料を製造しているので、JIS規格を満足する固形燃料を製造することが可能で低い含水率で、高発熱量を有したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る固形燃料を製造する工程を示す工程図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る固形燃料の組成分析結果、細菌分析結果、重金属溶出試験結果を示す表である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る固形燃料の品質における高位発熱量、水分、灰分、全塩素分を示す表である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る固形燃料のプラスチックとパルプの配合割合を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る固形燃料及び固形燃料の製造方法について説明する。本発明の実施の形態に係る固形燃料は、廃棄物としての使用済み紙おむつから回収したプラスチックを用いている。本実施の形態に係る固形燃料13は、パルプ6、プラスチック8、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつ1を石灰を含む分解処理液3で分解処理して、パルプ6、プラスチック8、高分子吸収体を回収し、使用済み紙おむつから回収した少なくともプラスチック8を用いて形成されている。
【0017】
以下に、固形燃料13を製造するためのプラスチック8を使用済み紙おむつ1から回収する工程について説明する。
図1に示すように、病院、施設、一般家庭から収集された使用済み紙おむつ1は処理施設内の分離機2に投入される。分離機2内には、石灰、消毒剤、洗剤等からなる分解処理液3も投入される。
【0018】
分離機2は、図示しない外胴分離槽と、この外胴分離槽内に回転自在に配設された内胴分離槽とで形成されている。内胴分離槽内に回収された使用済み紙おむつ1と石灰、消毒剤、洗剤等が含まれた分解処理液3とを投入し、内胴分離槽を回転させることで使用済み紙おむつ1が分解処理される。内胴分離槽の回転により使用済み紙おむつ1を分解処理した後に、内胴分離槽の外周に設けた複数の孔から外胴分離槽内に液体である排液4を排出し、外胴分離槽内から外方に排液4を排出する。
【0019】
外胴分離槽内から排液4を排出した状態では、分解処理液3に溶解しなかった固形物5が内胴分離槽内に残る。ここで、内胴分離槽を回転させることで脱水し、排液4と共に脱水された液体が外胴分離槽内から外方へ排出する。液体である排液4中には、分解処理された使用済み紙おむつ1からパルプ6、し尿類7が溶解している。パルプ6、し尿類7が溶解している排液4は、液体肥料14、メタン発酵原料15、段ボール原料12等として利用される。
【0020】
外胴分離槽内から液体(排液)が排出された状態では、内胴分離槽内にはパルプ6、プラスチック8、その他9が固形物として残る。この場合、排液4に溶解しなかったパルプ6はプラスチック8や、その他9に付着している。これらのパルプ6、プラスチック8、その他9は、選別機10によりパルプ6、プラスチック8、プラパル11、その他9に選別される。
【0021】
選別機10は、図示しない外胴選別槽と、この外胴選別槽内に回転自在に配設された内胴選別槽とで形成されている。内胴選別槽内には、内胴分離槽内に残った固形物5であるパルプ6、プラスチック8とが投入される。また、外胴選別槽内には、温風が供給されて、回転する内胴選別槽内のパルプ6、プラスチック8を乾燥させる。乾燥させた後の温風は、外胴選別槽内から排出される。
【0022】
内胴選別槽が回転し、温風が吹き付けられることでプラスチック8、その他9に付着していたパルプ6が剥がれて、排出される温風と共に選別機10の外方へ排出され、フィルター等によって温風に混在しているパルプ6が回収される。また、内胴選別槽が回転し、温風が吹き付けられることで付着しているパルプ6が剥がされた状態の少量のパルプ6が付着しているプラスチック8、その他9を回収する。
【0023】
外胴選別槽内から排出された温風内から回収されたパルプ6は、段ボール原料12となり、内胴選別槽内に残ったプラスチック8、その他9及び、少量のパルプ6が付着しているプラスチック(プラパル)11は固形燃料13の原料となる。以下、使用済み紙おむつから回収したプラスチック8、その他9、プラパル11から形成した固形燃料(RPF)13について説明する。
【0024】
図2は、使用済み紙おむつ1から回収したプラスチック8、その他9、プラパル11から形成した固形燃料13の組成分析結果、細菌分析結果、重金属溶出試験結果を示す。組成分析結果は、JIS Z 7311「廃棄物由来の紙、プラスチックなどの固形化燃料」に定める品質要求事項による。JIS Z 7311では、高位発熱量(MJ/kg)が25MJ/kg以上、水分(%)が5%以下、灰分(%)が10%以下、全塩素分(%)が0.3%以下の規格値に定められている。
【0025】
図2に示すように、使用済み紙おむつ1から回収したプラスチック8、その他9、プラパル11から形成した固形燃料13の試料1~試料9の高位発熱量の平均値は29.0MJ/kgであり、水分の平均値は2.52%であり、灰分の平均値は7.21%であり、全塩素分の平均値は0.03%であった。したがって、使用済み紙おむつ1から回収したプラスチック8、その他9、プラパル11から形成した固形燃料13は、組成分析の結果、JIS Z 7311に規定する要求品質を満足している。
【0026】
細菌分析結果における細菌分析参考値4.5×10
3は、貸しおしぼりの衛生確保について(環指第一五七号)における衛生基準の(四)「一般細菌数は、1枚当たり10万個を超えないことが望ましいこと」を基に、おしぼり1枚22g(乾燥物、実測値)として換算した。
図2に示すように、使用済み紙おむつ1から回収したプラスチック8、その他9、プラパル11から形成した固形燃料13の試料1~試料9の一般細菌数はいずれも参考値4.5×10
3以下であり、大腸菌類、黄色ブドウ球菌は検出されなかった。
【0027】
また、重金属溶出試験における参考値は、昭和四十八年総理府令第五号 金属を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令による判定基準値とした。重金属溶出試験における参考値は、水銀又はその化合物は0.005mg/L以下、カドミウム又はその化合物は0.09mg/L以下、鉛又はその化合物は0.3mg/L以下、六価クロム化合物は1.5mg/L以下、砒素又はその化合物は0.3mg/L以下、セレン又はその化合物は0.3mg/L以下とした。
【0028】
図2に示すように、試料1、試料4、試料7では、水銀又はその化合物は0.0005未満であり、カドミウム又はその化合物は0.001未満であり、鉛又はその化合物は0.005未満であり、六価クロム化合物は0.05未満であり、砒素又はその化合物は0.005未満であり、セレン又はその化合物は0.002未満であった。したがって、試料1、4、7は、いずれの重金属溶出試験の結果では参考値以下であり、省令による重金属の溶出における判定基準値を満足している。
【0029】
図3に示すように、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)の品種は、RPF-coke、RPF-A、RPF-B、RPF-Cがある。RPF-cokeは、高位発熱量が33MJ/kg以上、水分が3%以下、灰分が5%、全塩素分が0.6%以下に規定されている。また、RPF-A、RPF-B、RPF-Cの高位発熱量はいずれも25MJ/kg以上、水分は5%以下、灰分は10%以下と規定されている。RPF-Aの全塩素分は0.3%以下であり、RPF-Bの全塩素分は0.3%を超え0.6%以下であり、RPF-Cの全塩素分は0.6%を超え2.0%以下と規定されている。
図3に示すように、本実施の形態の固形燃料(RPF)13の平均値は、RPF-Aの規定の範囲となっており、RPF-Aの等級となっている。
【0030】
以下、本実施の形態において、使用済み紙おむつ1から回収したプラスチック8、パルプ6、プラパル11により製造した固形燃料13の配合割合と高位発熱量について説明する。
1)製品時における紙おむつの構成割合
一例として紙おむつメーカーU社の紙おむつの素材の構成割合は、パルプ52%、ポリアクリル酸ナトリウム(SAP)20%、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系)28%となっている。
2)上記試料1~9の物質の収支及び構成素材ごとの重量
上記試料1~9の固形燃料を製造するため、本実施の形態では使用済み紙おむつ280kgを分離機内に投入し、280kgの使用済み紙おむつに使用されているプラスチック8、パルプ6、プラパル11(プラスチックの表面にパルプが付着した状態のプラスチック)を回収した。
3)ここで国土交通省が開示している「紙おむつに関する基礎情報」によれば、使用済み紙おむつはし尿を吸収するため、重量が大人用の紙おむつで4.2倍となることから、280kgの使用済み紙おむつは使用前製品状態での重量が66.7kgとなり、紙おむつの素材の上記構成割合から66.7kgの使用前製品状態の紙おむつの構成割合はパルプ34.7kg、ポリアクリル酸ナトリウム13.3kg、プラスチック18.7kgとなる。
4)280kgの使用済み紙おむつ1を上述の分離機2、選別機10によって分解処理して最終的に回収されるパルプ6は約16kg、パルプ6が付着したプラスチック(プラパル)11は約85kg、その他はごみ(リント等)を含む汚泥約24.8kgとなる。また、使用済み紙おむつ1から回収したプラパル11は、プラスチックの表面に付着しているパルプをパルプ除去工程により取り除くことでRPF-A資材となる。このRPF-A資材は、水分を含むパルプがプラスチック表面から取り除かれることで結果としてプラスチックの水分率が低下する。
【0031】
5)
図4に示す表は、使用済み紙おむつ1から回収したプラパル11を用いた固形燃料13のプラスチックとパルプの配合割合を示す。
図4における表の一段目(No.1)は、上記RPF-A資材であるプラパル11を用いて固形燃料13を製造した場合の高位発熱量が30.5MJ/kgの最大値のときのプラスチックとパルプの配合割合を示し、プラスチック60%、40%となっている。
図4における表の二段目(No.2)は、上記RPF-A資材であるプラパル11を用いて固形燃料13を製造した場合の高位発熱量が29.0MJ/kgのときのプラスチックとパルプの配合割合を示し、プラスチック57%、43%となっている。この二段目(No.2)に示す固形燃料13が、前述した
図2における表の試料1~9となっている。
6)
図4における表の三段目(No.3)は使用済み紙おむつ1から回収したプラパル11で固形燃料13を製造した場合の、プラスチックとパルプの配合割合を示す。三段目(No.3)に示す固形燃料13は、プラスチックの表面にパルプが付着した状態のもので、パルプが付着することでプラスチックとしての水分の量が多い。このため、高位発熱量は24.0MJ/kgとなっている。このときのプラスチックとパルプの配合割合は、プラスチック47%、パルプ53%となっている。
7)
図4における表の四段目(No.4)は、使用済み紙おむつ1から回収したプラパルとパルプとを用いて製造した固形燃料13を製造した場合の、プラスチックとパルプの配合割合を示す。四段目(No.4)に示す固形燃料13は、使用済み紙おむつ1から回収したプラパル11とパルプ6とから製造されており、パルプを用いていることからパルプに含まれる水分があるため、高位発熱量は21.4MJ/kgとなっている。
8)
図4における表の5段目(No.5)は、JIS規格に定める固形燃料の高位発熱量と、プラスチックとパルプの配合割合を示す。この規格では、25MJ/kgの高位発熱量が得られるプラスチックとパルプの配合割合は、プラスチックが49%、パルプが51%となっている。
【0032】
9)以上のことから、使用済み紙おむつ1から回収したプラパル11から、このプラパル11に付着しているパルプをパルプ除去工程により取り除くことでRPF-A資材とし、このRPF-A資材で製造した本実施形態の固形燃料13は、高位発熱量がJIS規格値25MJ/kgを超えている。また、本実施形態の固形燃料13のプラスチックとパルプの配合割合は、上記の結果から、JIS規格である高位発熱量25MJ/kg以上を満たすためのプラスチック及びパルプの配合割合は、プラスチック49~60%、パルプ40%~51%となる。この場合、ポリアクリル酸ナトリウムは不活化後にパルプ、排水にどの程度含まれているか不明であるので加味しない。また、選別機他から排出しているパルプ等も加味しない。この場合、プラスチックの含有量が60%を超えて、パルプの含有量が40%以下とすると、固形燃料に成形した際に成形状態が悪く、固形燃料としての形態に成形しづらくなる。また、パルプの含有量が40%を上回り、プラスチックの含有量が50%を下回ると高位発熱量が低下し、JIS規格に定める規格値を満足することができない。
【0033】
次に紙おむつを原料とする他社の固形燃料と本実施の形態における固形燃料との違いについて以下に説明する。S社が2020年度に東京都の実証事業「SFDシステムによる使用済み紙おむつの燃料化事業」を実施した際に製造した固形燃料と実施の形態の固形燃料との比較
a)本実施の形態の固形燃料は、使用済み紙おむつを分解処理し、発熱量の高いプラスチック類を中心とした固形燃料なので、使用済み紙おむつそのものを破砕、乾燥、発酵させているS社製の固形燃料に比べて13%ほど発熱量が高くなっている。
b)本実施の形態の固形燃料は、洗浄、消毒、分離工程を経て、使用済み紙おむつを素材ごとに分解しているので、塩素分(紙おむつには塩素基を含有する成分は使用されていない。またパルプの漂白方法も無塩素漂白法(ECF)へ移行が完了しており、し尿も洗浄により排水として排出しているので全塩素分数値の安定した低減化を達成している。
c)灰分は、本実施の形態の固形燃料は、使用済み紙おむつを処理する処理液に石灰を用いているので、S社が製造した固形燃料と比べて高い値となっているが、石灰は高分子吸収体の不活化に有効に作用している。
【0034】
次に石炭の発熱量について説明する。
「石炭の分類について」((独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 令和2年3月)の7頁に「石炭の代表的銘柄と品位(炭質)」が掲載されている。同文献では、火力発電所用の石炭は、一般炭(瀝青炭及び亜瀝青炭)とされている。瀝青炭一般灰は灰分(14%)、亜瀝青炭一般は全水分(26%)が高い値となっている。また、発熱量も本実施の形態の固形燃料より低くなっている。これらのことから本実施の形態の固形燃料は、火力発電所の補助燃料、あるいは主燃料となりうることが言え高炉吹き込み用であるPCI炭と同等となっている。
【0035】
さらに、硫黄分が高い場合、SOxとして大気汚染の原因ともなるので、本実施形態の固形燃料の0.01%未満の数値は、大気汚染の改善を期待できる燃料となっている。
【0036】
また、石炭にはないと思われるが、本実施の形態の固形燃料では塩素分が低いことがダイオキシン類の発生の抑制、高温燃焼によって塩化水素ガス発生からの装置腐食等の防止に極めて有効となっている。因みに一般炭の価格は、1tあたり18,080円(2020年10月)となっており、本実施の形態の固形燃料を使用することでCO2の排出削減とともに燃料費の低減に有効となっている。
【0037】
他の原料から製造した固形燃料と本実施の形態の固形燃料との違いについて説明する。通常製造されている固形燃料(紙、廃プラスチック、木くず等)では、塩素分が高く、固形燃料の利用先である製紙会社の受け入れ基準(0.3%以下)を常時クリアしていくのは原料が安定しない中で課題が多い。
【0038】
国土交通省の資料によれば、使用済み紙おむつのごみ焼却への影響について以下のように掲載されています「水分を70%余り含み厨芥類(生ごみ)と同レベルの低位発熱量(3,8000KJ/kg)である使用済み紙おむつは焼却炉における自然の限界レベルであり、助燃剤の投入による化石燃料の消費、CO2削減、税金の無駄な投入を抑えていくためには素材ごとにリサイクルを進めていくことが重要である。このことは素材の一つであるプラスチックを固形燃料(RPF-A)として、高い発熱量かつ低塩素な有用なリサイクル手法として、また石炭の代替燃料として国内、国外での普及を図ることで脱炭素社会の実現に寄与できるものである。」。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態に係る固形燃料は、使用済み紙おむつ1から回収したプラスチック8を用いているので、含水率が低く、高発熱量を備えた固形燃料13を得ることができる。すなわち、パルプ6、プラスチック8、高分子吸収体を含み、使用した後の廃棄物としての使用済み紙おむつ1を石灰を含む分解処理液3で分解処理して、パルプ6、プラスチック8、高分子吸収体を回収し、使用済み紙おむつ1から回収した少なくともプラスチック8を用いて固形燃料13を製造しているので、JIS規格を満足する固形燃料13を製造することが可能で低い含水率で、高発熱量を有したものとなる。
【0040】
また、本実施の形態に係る固形燃料は、RPF-Aの等級で高位発熱量が高いので、石炭を燃料とする火力発電所において、石炭に代わる補助燃料として用いることが可能となり、化石燃料代替として用いることにより、二酸化炭素の排出量を削減することができ、従来、ごみ焼却場にて一般可燃ごみと共に焼却処分されていた使用済み紙おむつ1を火力発電の補助燃料として用いることができる。さらに、使用済み紙おむつ1から回収したプラパル11に付着しているパルプを取り除くことで、水分率を低下させれば高位発熱量を高くすることができるので、石炭に替わって本実施形態の固形燃料13を主燃料とすることも可能となる。この場合には、石炭を燃料として用いることがなくなるので、二酸化炭素の排出量を大幅に低下させることが可能となる。
【0041】
さらに、本実施の形態に係る固形燃料は、水分の質量分率が低く、含水率が低いので型崩れや、かびの発生を抑制することができ、長期間の輸送、保管が可能となる。
【0042】
また、本実施の形態に係る固形燃料が、使用済み紙おむつ1に28%から54%含まれているプラスチックを回収し、このプラスチックを用いることで、国が推進しているプラスチックの資源循環促進に寄与することができる。使用済み紙おむつ1からプラスチックを回収し、このプラスチックを固形燃料の原料とすることで、自然界へのプラスチックの放出を抑制することができ、ひいてはマイクロプラスチックの削減も行うことが可能となる。
【0043】
また、本実施の形態に係る固形燃料が、使用済み紙おむつ1に含まれるプラスチックを用いることで固形燃料を製造するための原料を安定して供給することができ、多種類のプラスチックが混在した原料に比較してほぼ均一なプラスチックなので、品質が安定した固形燃料を製造することができる。これにより、高位発熱量も安定し、高品質な固形燃料を製造することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態では、固形燃料13がプラスチックの表面にパルプが付着したプラパル11により製造した例を示したが、使用済み紙おむつ1から回収したプラパル11の表面からパルプをパルプ除去工程により完全に取り除いてプラスチックのみを用いても良い。また、プラスチックの表面にある程度、すなわち水分量が多くない程度であって高位発熱量がJIS規格値を上回る程度にパルプが付着していても良い。
【0045】
次に、本実施の形態において、使用済み紙おむつ1を分離機2内で処理液により処理されて選別機10により回収されたプラスチック8は固形燃料13の原料として用いている。そして、固形燃料13に含有されているプラスチック8は、ボイラ等内で燃焼することにより気体となって最終的に大気中に放出されている。このため、使用済み紙おむつ1から回収されたプラスチック8は、固形燃料13として燃焼することにより熱エネルギーを生み出すリサイクル資源となってはいるが、結果として使用済み紙おむつ1から回収されたプラスチック8は焼却されるので、焼却処分されている。
【0046】
使用済み紙おむつ1から、分離機2、選別機10等の処理装置によって回収されたプラスチック8を最終的に固形燃料13として焼却処分する前に、リサイクル資源として他に利用することで、使用済み紙おむつ1から回収されたプラスチック8を有効利用することができる。
【0047】
近年、プラスチック製品を回収し、回収したプラスチックを溶解してペレット状に加工し、このペレット状のプラスチックを成形材料として再度成形してプラスチック製品を製造することが行われている。そこで、使用済み紙おむつ1から回収され、最終的に固形燃料13として焼却されることで処分されるプラスチック8を、固形燃料13の原料とする前に溶解してペレット状に加工し、再度成形することでプラスチック製品としてリサイクルすることができる。例えば、使用済み紙おむつ1を廃棄するためのごみ回収ボックスに成形しても良い。
【0048】
そして、回収ボックスやその他のプラスチック製品としての機能が終了した後に回収して使用済み紙おむつ1から回収したパルプ6とともに固形燃料13の原料としても良い。この場合、使用済み紙おむつ1から回収したプラスチック8を固形燃料13の原料とする前に溶解してペレット状に加工し、このプラスチック8のペレットによって、使用済み紙おむつ1を回収する際の回収袋や回収ボックスに成形することで、使用済み紙おむつ1から回収したプラスチック8を最終的に固形燃料13として焼却処分する前に有効に利用することができる。
【0049】
上述の通り、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によって本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が請求項に含まれることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る固形燃料は、リネン工場などのボイラーでの燃料として用いるほかに、石炭を燃料とする火力発電所における燃料としても利用することができ、化石燃料の代替燃料として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 使用済み紙おむつ
3 分解処理液
6 パルプ
8 プラスチック
11 プラパル
13 固形燃料
【手続補正書】
【提出日】2022-08-02
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、廃棄された紙・プラスチックで製造される固形燃料の製造方法に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
そこで、本発明は、含水率が低く、高発熱量を備えた固形燃料の製造方法の提供を目的とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様は、廃棄物から固形燃料(13)を製造する固形燃料の製造方法であって、パルプ(6)、プラスチック(8)、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつ(1)を分離機(2)内で石灰を含む分解処理液(3)で分解処理し、前記分離機(2)内で使用済み紙おむつ(1)を分解した後の固形成分であるプラスチック(8)と、このプラスチック(8)に付着しているパルプ(6)を選別機(10)で乾燥させて選別し、前記選別機(10)で選別されたプラスチック(8)を50~60%、パルプ(6)を40~50%含む前記固形燃料(13)を形成することを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物から固形燃料(13)を製造する固形燃料の製造方法であって、
パルプ(6)、プラスチック(8)、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつ(1)を分離機(2)内で石灰を含む分解処理液(3)で分解処理し、前記分離機(2)内で使用済み紙おむつ(1)を分解した後の固形成分であるプラスチック(8)と、このプラスチック(8)に付着しているパルプ(6)を選別機(10)で乾燥させて選別し、前記選別機(10)で選別されたプラスチック(8)を50~60%、パルプ(6)を40~50%含む前記固形燃料(13)を形成することを特徴とする固形燃料(13)の製造方法。
【請求項2】
前記使用済み紙おむつ(1)から回収した前記高分子吸収体を、前記石灰を含む分解処理液(3)で不活化してプラスチック(8)として回収し、該プラスチック(8)を用いて前記固形燃料を形成したことを特徴とする請求項1に記載の固形燃料(13)の製造方法。
【請求項3】
前記使用済み紙おむつ(1)と前記分解処理液(3)とが投入され、使用済み紙おむつ(1)を紙おむつを構成する複数種の素材に分離機(2)で分解し、前記分離機(2)内で使用済み紙おむつ(1)を分解した後の固形成分であるプラスチック(8)と、このプラスチック(8)に付着しているパルプ(6)を選別機(10)で乾燥させて選別し、前記選別機(10)で前記パルプ(6)と選別されたプラスチック(8)を用いて前記固形燃料(13)を形成したことを特徴とする請求項2に記載の固形燃料(13)の製造方法。
【請求項4】
燃料として石炭を用いた火力発電所において石炭に代わる補助燃料として前記固形燃料(13)が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固形燃料(13)の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様は、廃棄物から固形燃料(13)を製造する固形燃料の製造方法であって、
パルプ(6)、プラスチック(8)、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつ(1)を分離機(2)内で石灰を含む分解処理液(3)で分解処理し、前記分離機(2)内で使用済み紙おむつ(1)を分解した後の固形成分であるプラスチック(8)と、このプラスチック(8)に付着しているパルプ(6)を選別機(10)で乾燥させて選別し、前記選別機(10)で選別されたプラスチック(8)を50~60%、パルプ(6)を40~50%含み、水分量が1.91~3.01%の前記固形燃料(13)を形成することを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物から固形燃料(13)を製造する固形燃料の製造方法であって、
パルプ(6)、プラスチック(8)、高分子吸収体を含み、廃棄物としての使用した後の使用済み紙おむつ(1)を分離機(2)内で石灰を含む分解処理液(3)で分解処理し、前記分離機(2)内で使用済み紙おむつ(1)を分解した後の固形成分であるプラスチック(8)と、このプラスチック(8)に付着しているパルプ(6)を選別機(10)で乾燥させて選別し、前記選別機(10)で選別されたプラスチック(8)を50~60%、パルプ(6)を40~50%含み、水分量が1.91~3.01%の前記固形燃料(13)を形成することを特徴とする固形燃料(13)の製造方法。
【請求項2】
前記使用済み紙おむつ(1)から回収した前記高分子吸収体を、前記石灰を含む分解処理液(3)で不活化してプラスチック(8)として回収し、該プラスチック(8)を用いて前記固形燃料を形成したことを特徴とする請求項1に記載の固形燃料(13)の製造方法。
【請求項3】
前記使用済み紙おむつ(1)と前記分解処理液(3)とが投入され、使用済み紙おむつ(1)を紙おむつを構成する複数種の素材に分離機(2)で分解し、前記分離機(2)内で使用済み紙おむつ(1)を分解した後の固形成分であるプラスチック(8)と、このプラスチック(8)に付着しているパルプ(6)を選別機(10)で乾燥させて選別し、前記選別機(10)で前記パルプ(6)と選別されたプラスチック(8)を用いて前記固形燃料(13)を形成したことを特徴とする請求項2に記載の固形燃料(13)の製造方法。
【請求項4】
燃料として石炭を用いた火力発電所において石炭に代わる補助燃料として前記固形燃料(13)が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固形燃料(13)の製造方法。