(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141615
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】低反発弾性ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/10 20060101AFI20230928BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20230928BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20230928BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20230928BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20230928BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/48
C08G18/76 057
C08G18/32 003
C08G18/66 074
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048020
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本田 航
(72)【発明者】
【氏名】高田 佳尚
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DG04
4J034DG06
4J034DG23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB07
4J034HC12
4J034HC52
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC23
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA22
4J034NA03
4J034NA08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB15
4J034QC01
4J034RA03
(57)【要約】
【課題】低反発弾性ポリウレタンフォームにおいて、密度を高めに設定しても硬度が小さく、底付きしにくい低反発弾性ポリウレタンフォームを提供すること。
【解決手段】ポリオールと、イソシアネート基末端プレポリマーとを反応させて得られる低反発弾性ポリウレタンフォームであって、ポリオールは、分子量400~1500、官能基数が2~4のポリプロピレングリコールであり、イソシアネート基末端プレポリマーは、メチレンジイソシアネートを構成成分するものであり、密度が0.15~0.25g/cm3、ショア00硬度が15~35であることを特徴とする低反発弾性ポリウレタンフォーム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、イソシアネート基末端プレポリマーとを反応させて得られる低反発弾性ポリウレタンフォームであって、
ポリオールは、分子量400~1500、官能基数が2~4のポリプロピレングリコールであり、
イソシアネート基末端プレポリマーは、メチレンジイソシアネートを構成成分とするものであり、
密度が0.15~0.25g/cm3、ショア00硬度が15~35であることを特徴とする低反発弾性ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
短鎖長ジオールを含有してなることを特徴とする請求項1に記載の低反発弾性ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
イソシアネートインデックスが0.65~0.75であることを特徴とする請求項1または2に記載の低反発弾性ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
連通化剤を含有してなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の低反発弾性ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
連通化剤がブタジエン系化合物であることを特徴とする請求項4に記載の低反発弾性ポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反発弾性ポリウレタンフォームに関するものである。
【0002】
従来、反発弾性率の低い、すなわち低反発弾性のポリウレタンフォームは、衝撃吸収体、吸音体、振動吸収体などとして用いられている。また、マットレスやクッションなどに用いた際には、体圧分布が均一になり、疲労感、床ずれ等が軽減されることが知られている(特許文献1)。
【0003】
ポリウレタンフォームは一般に、製品厚みが小さくなると荷重がかかった際に底付きしてしまうため、ポリウレタンフォームの有する反発弾性やクッション性等の特性が発揮されなくなる。ここで、密度を大きくすることで、製品厚みが小さくても底付きをしないように設計する方法があるが、そうすると硬度が高くなってエネルギー吸収性が損なわれる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低反発弾性ポリウレタンフォームにおいて、密度を高めに設定しても硬度が小さく、底付きしにくい低反発弾性ポリウレタンフォームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、本低反発弾性ポリウレタンフォームを発明した。
【0007】
本発明は以下を要旨とする。
(1)ポリオールと、イソシアネート基末端プレポリマーとを反応させて得られる低反発弾性ポリウレタンフォームであって、ポリオールは、分子量400~1500、官能基数が2~4のポリプロピレングリコールであり、イソシアネート基末端プレポリマーは、メチレンジイソシアネートを構成成分するものであり、密度が0.15~0.25g/cm3、ショア00硬度が15~35であることを特徴とする低反発弾性ポリウレタンフォーム。
(2)短鎖長ジオールを含有してなることを特徴とする(1)に記載の低反発弾性ポリウレタンフォーム。
(3)イソシアネートインデックスが0.65~0.75であることを特徴とする(1)または(2)に記載の低反発弾性ポリウレタンフォーム。
(4)連通化剤を含有してなることを特徴とする(1)~(3)のいずれか一つに記載の低反発弾性ポリウレタンフォーム。
(5)連通化剤がブタジエン系化合物であることを特徴とする(4)に記載の低反発弾性ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、低反発弾性ポリウレタンフォームにおいて、密度を高めに設定しても硬度が小さく、底付きしにくい低反発弾性ポリウレタンフォームを提供することできる。
そのため、製品厚みを小さくしても底付き感がなくエネルギー吸収性に優れる利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の低反発弾性ポリウレタンフォームは、ポリオールとイソシアネート基末端プレポリマーとを反応させて得られる。
なお、本明細書中において「低反発弾性ポリウレタンフォーム」とは、JIS K 6255:2013に準拠して求められる反発弾性率が25%以下のポリウレタンフォームを指すものである。
【0010】
<ポリオール>
ポリオールとしては、数分子量400~1500、官能基数が2~4ポリプロピレングリコールを必須成分として含むものであり、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン等の開始剤にプロピレンオキシドを付加重合させて得られるものである。
当該ポリオールを用いることで、反発弾性の低いポリウレタンフォームを得ることができる。
【0011】
<短鎖長ジオール>
本発明の低反発弾性ポリウレタンフォームは、活性水素基含有化合物としてポリオールの他に短鎖長ジオールを含有してもよい。短鎖長ジオールを含有することで、反発弾性を低下させる効果が期待できる。
本発明における短鎖長ジオールは分子量が120未満のジオールである、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。
短鎖長ジオールの含有量は、ポリオール100質量部に対して、1~5質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、短鎖長ジオールを添加した効果が得られにくい傾向にあり、5質量部を超えると得られるフォームが硬く脆くなり、成形不良が生じやすくなる傾向にある。
【0012】
<イソシアネート基末端プレポリマー>
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリオールと、イソシアネートとをイソシアネート基(NCO基)が過剰となるように反応させて得られるものである。イソシアネート基末端プレポリマーを用いると、ポリウレタンフォームの成形時において、ポリオール成分とイソシアネート成分の配合比率が質量比で同等にすることができるため、反応が均一になり、成形性を向上させることが可能となる。
本発明においては、イソシアネート基末端プレポリマーを構成するイソシアネートはメチレンジイソシアネート(以下、「MDI」と記載する)である。MDIは分子構造の対称性が良好であるため、機械強度に優れた低反発弾性ポリウレタンフォームを得られるため好ましいものである。また、初期反応が緩やかであるため、注型成形において原材料が型内に回りやすく、成形性に優れる。
イソシアネート基末端プレポリマーを構成するポリオールは、数平均分子量が500~3000であると、得られるポリウレタンフォームの反発弾性が低くなるため、好ましい。
ポリオールの種類としては、ポリエーテルポリオールが好ましく、なかでも樹脂強度が強く収縮しにくいことから、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。
イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有率は3~22質量%であることが好ましい。イソシアネート基含有率が3質量%未満であると、反応性が低下するため発泡不良が発生する可能性がある。一方で、22質量%を超えると、得られるフォームが硬くなる傾向にある。
【0013】
<イソシアネートインデックス>
本発明の低反発弾性ポリウレタンフォームのイソシアネートインデックス(NCO基/OH基のモル比)は、0.65~0.75であることが好ましい。当該イソシアネートインデックスの範囲であることで、比較的密度が大きくても硬度が小さく、製品の厚みが小さくても底付きしない低反発弾性ポリウレタンフォームを得ることができる。
イソシアネートインデックスは、0.65未満であると架橋点が少なくなるため発泡不良が発生する可能性があり、0.75を超えると架橋点が多くなるため、フォームが硬くなる傾向にある。
【0014】
本発明の低反発弾性ポリウレタンフォームは、上記ポリオール、イソシアネート基末端プレポリマーに加えて、発泡剤、整泡剤、連通化剤など、ポリウレタンフォームの製造に際して使用される添加剤を添加してもよい。
【0015】
〔発泡剤〕
発泡剤としては、水(イオン交換水)を用いることができる。添加量は、ポリオール100質量部に対し、0.5~3質量部が好ましい。
添加量が0.5質量部未満であると、発泡が不十分となり衝撃吸収性に劣ってしまう傾向にある。添加量が3質量部を超えると、発泡しすぎて得られるポリウレタンフォームのセルが荒れる傾向にある。
【0016】
〔触媒〕
触媒としては、従来から使用されているものであればよく、例えば、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミンなどのアミン系触媒、ビスマス触媒などの金属触媒が挙げられるが、特に限定されるものではない。
触媒の添加量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましい。
【0017】
〔整泡剤〕
整泡剤は、シリコーン系化合物が用いられる。シリコーン系化合物としては、例えばポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどが使用できる。
整泡剤の添加量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましい。
【0018】
〔連通化剤〕
本発明の低反発弾性ポリウレタンフォームは、フォーム原料中に連通化剤を含有することが好ましい。連通化剤を含有させると、フォームが収縮しにくくなるとともにフォームの樹脂骨格を軟化させることができるため、得られる低反発ポリウレタンフォームのヒステリシスロス率が高くなる傾向にある。
ヒステリシスロス率が高くなると、衝撃が加わった際にエネルギーをより吸収できるため好ましいものである。連通化剤としては、例えばブタジエン系化合物、パラフィンオイル、変性シリコーン、フィラーなどが挙げられるが、ブタジエン系化合物が好適である。ブタジエン系化合物は、触媒等の他の添加剤量に影響されず、幅広いプロセスレンジを与えることができる。
また、低反発弾性ポリウレタンフォーム成形時の反応初期段階で連通化剤が作用すると、セルの荒れや崩壊を引き起こしやすく、一方で、反応後期段階で連通化剤が作用すると、低反発弾性ポリウレタンフォームの安定性が高まっているため、連通化が不十分になる傾向になるが、本発明の低反発弾性ポリウレタンフォームの組成においては、連通化剤としてブタジエン系化合物を用いると、低反発弾性ポリウレタンフォームの反応段階においてブタジエン系化合物の作用するタイミングがよく、安定して性状が均一な低反発弾性ポリウレタンフォームを得ることができる。
連通化剤の添加量は、ポリオール成分100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、連通化剤を添加した効果が得られにくい。10質量部を超えると、発泡過程においてセルが崩壊しやすく、均一なセル形状のフォームが得られにくくなる傾向にある。
【0019】
本発明の低反発弾性ポリウレタンフォームは、密度が0.15~0.25g/cm3、ショア00硬度が15~35である。
上記密度とショア00硬度を備えることで、低反発弾性ポリウレタンフォームの厚みを小さくしても底付き感がなくエネルギー吸収性が優れたフォームとなる。
【実施例0020】
以下に本発明を実施例に基づいて、詳細に説明する。本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0021】
実施例1~6、比較例1~3表1に示す配合で、ポリオール、短鎖ジオール、触媒、発泡剤、整泡剤および連通化剤を混合してA液を調製し、上記A液とイソシアネート基含有化合物(B液)とを表1に示す配合比で混合させながら、モールド内に注入し、モールド温度40℃の条件下で反応させた後、脱型してポリウレタンフォームを得た。
なお、表1中のA液、B液の数値の単位は、質量部である。
【0022】
表1に示す原料の詳細は以下のとおりである。
・ポリオール1:ポリプロピレングリコール、分子量:700
・ポリオール2:ポリプロプレングリコール、分子量:3000
・短鎖ジオール:ジプロピレングリコール
・触媒1:ビスマス触媒 プキャット25、日産化学産業社製
・触媒2:オクチル酸スズ ネオスタンU28、日東化成社製
・触媒3:テトラエチレンジアミン
・発泡剤:水
・整泡剤:シリコーン系化合物
・連通化剤:ブタジエン系化合物 エボニックジャパン社製、オルテゴール501
・イソシアネート基末端プレポリマー1:ポリテトラメチレングリコールとMDIとからなるイソシアネート基末端プレポリマー、イソシアネート基含有率:15%
・イソシアネート基末端プレポリマー2:ポリプロピレングリコールとMDIとからなるイソシアネート基末端プレポリマー、イソシアネート基含有率:15%
・トリレンジイソシアネート(TDI)
【0023】
<物性測定>
得られたポリウレタンフォームの密度、反発弾性率、ショア00硬度は以下の方法で測定した。
・密度 各実施例、比較例で得られたポリウレタンフォームを縦15mm、横15mm、高さ10mmの直方体にカットした試験片を用い、JIS K 7222に準拠して密度を測定した。
・反発弾性率 JIS K 6255:2013に準拠して測定した。
・ショア00硬度
ASTM D 2240に準拠して測定した。
なお、比較例3については、軟らかすぎてショア00硬度の測定ができなかった。
【0024】
<評価>
各実施例、比較例で得られたポリウレタンフォームについて、以下の評価を行った。
・エネルギー吸収性
JIS K 6400-2:2012参考にして試験した。
得られたポリウレタンフォームを厚さ12.5mmに裁断し、速度100mm/分で、荷重430Nとなるまで試験片を加圧し、荷重430Nとなったら同じ速度で加圧板を戻す一連の操作から、ヒステリシスロス率(%)を確認し、以下の基準でエネルギー吸収性を評価した。
○・・・ヒステリシスロス率が50%以上
×・・・ヒステリシスロス率が50%未満
ここで荷重430Nは、日本女性の平均体重である体重52.7kgの人が歩行した際に、着地時に足裏にかかる力の大きさに相当する。
なお、ヒステリシスロス率は、加圧エネルギーに対しての消費エネルギーの比率であるため、値が大きければ、エネルギー吸収性に優れると評価されるものである。
・底付き感 得られたポリウレタンフォームを厚さ12.5mm裁断し、最大衝撃荷重を測定した。
最大衝撃荷重は、落下衝撃試験(Instron社製、商品名「dynatup GRC8200」を使用)において、鉄製の砲弾状の5.1kgの錘を50mmの高さから衝突させた際の最大衝撃荷重の値を測定し、以下の基準で評価した。
〇・・・1KN未満
×・・・1KN以上
【0025】
エネルギー吸収性、底付き感の評価結果は表1に示すとおりである。なお、括弧内の数値は、ヒステリシスロス率(%)および最大衝撃荷重(kN)の値を示すものである。
【0026】
【0027】
各実施例、比較例の結果から、実施例1~6のポリウレタンフォームについては、反発弾性率が低く、エネルギー吸収性に優れ、底付き感がないものであることがわかる。
本発明の低反発弾性ポリウレタンフォームは、密度を高めに設定しても硬度が小さく、底付きしにくいため、製品厚みを大きくしにくい用途、例えばインソールやマットなどに好適である。