(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014162
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】抗CD47及び抗PD-L1による卵巣癌の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230119BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230119BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230119BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230119BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230119BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20230119BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230119BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61P35/04
A61K45/00
G01N33/68
C07K16/28 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022186496
(22)【出願日】2022-11-22
(62)【分割の表示】P 2020521860の分割
【原出願日】2018-10-18
(31)【優先権主張番号】62/574,073
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517054604
【氏名又は名称】フォーティ セブン, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Forty Seven, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タキモト クリス ヒデミ ミズフネ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ マーク ピン
(72)【発明者】
【氏名】フォルクマール イェンス-ペーター
(57)【要約】
【課題】抗CD47及び抗PD-L1による卵巣癌の処置の提供。
【解決手段】本明細書では、抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体を用いて卵巣癌を有する個体を治療するための方法が提供される。本発明の方法は、抗CD47抗体の投与を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG4 Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、CD47への結合についてHu5F9-G4と競合する。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、Hu5F9-G4と同じCD47エピトープに結合する。他の実施形態において、抗CD47抗体はHu5F9-G4である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2017年10月18日に出願された米国仮出願第62/574,073号
の利益を主張し、これは、あらゆる目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる
。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参
照により本明細書に組み込まれる。2018年9月26日に作成された前述のASCII
コピーは、41404WO_CRF_sequencelisting.txtという名
称であり、サイズは12,403バイトである。
【背景技術】
【0003】
卵巣癌は、米国で婦人科癌による死亡の最も頻繁な原因である。新たに診断された進行
疾患の患者に対する標準的な全身療法は、通常、抗血管新生薬の有無にかかわらず、白金
ベースの化学療法の使用を伴う。最近では、PARP阻害剤などの標的薬剤が、進行性疾
患及びBRCA変異のある女性に利用されている。ただし、チェックポイント阻害薬など
の新しい免疫療法は、標準的な治療になるほど臨床転帰に十分には影響を与えていない。
再発性卵巣癌の女性では、最後の白金投与と再発の日付との間の間隔として定義される白
金フリーインターバル(PFI)は、その後の化学療法に対する反応の可能性と強く相関
している。PFIが1か月以上6か月未満の患者は、歴史的に白金耐性と呼ばれ、これら
の患者は治療の選択肢が限られていた。したがって、これらの患者のための効果的な癌治
療法の開発は、満たされていない実質的な医学的必要性に取り組むものであろう。
【0004】
異常な細胞を検出及び破壊する免疫系の本来の能力は、多くのがんの発生を防止し得る
。ただし、がん細胞は、免疫系による検出及び破壊を回避し得る場合がある。がん細胞は
、腫瘍抗原の表面での発現を低下させて、免疫系による腫瘍抗原の検出を困難にするか;
免疫細胞の不活性化を誘発するタンパク質をその表面に発現させるか;ならびに/または
微小環境で細胞を誘導して、免疫応答を抑制し、腫瘍細胞の増殖及び生存を促進する物質
を放出させる。
【0005】
癌免疫療法は、免疫系の特定の構成要素を刺激することによって;または免疫応答を抑
制するがん細胞によって生成されるシグナルを打ち消すことによって、腫瘍に対する免疫
応答を増強するように開発されてきた。
【0006】
1つのアプローチは、免疫チェックポイントタンパク質を遮断し、免疫応答の強度及び
持続時間を制限する。これらのタンパク質は通常、正常細胞及び異常細胞に損傷を与え得
る過度に強い反応を防ぐことにより、免疫反応を抑制しておく。免疫チェックポイントタ
ンパク質の活動を遮断すると、免疫系の「ブレーキ」が解放され、がん細胞を破壊する能
力が高まる。
【0007】
現在の臨床使用における免疫チェックポイント阻害剤としては、活性化された細胞傷害
性Tリンパ球の表面に発現されるCTLA4の活性を遮断するイピリムマブが挙げられる
。CTLA4は、これらのT細胞を不活性化する「スイッチ」として機能し、それによっ
て免疫応答の強度を低下させ;それを阻害すると、細胞傷害性T細胞の応答が増大する。
他の2つのFDA承認のチェックポイント阻害剤、ニボルマブ及びペンブロリズマブは、
同じように機能するが、PD-1を標的としている。3番目のFDA承認のチェックポイ
ント阻害剤であるアベルマブは、PD-L1を標的としている。
【0008】
免疫療法の他の形態は、通常、免疫系活性を調節または調節するのに役立つタンパク質
を使用して、がんに対する身体の免疫応答、例えば、インターロイキン及びインターフェ
ロンを増強する。腫瘍細胞抗原を標的とする抗体も臨床で使用されている。
【0009】
免疫療法のいくつかの形態は、先天性免疫系を利用する。健康な細胞の細胞表面タンパ
ク質CD47及び食細胞受容体SIRPalphaの関与は、アポトーシス細胞クリアラ
ンス及びFcR媒介食作用など、複数の様相によって媒介される呑食をオフにし得る重要
な「自己を食べるな(don’t eat-me)」シグナルを構成する。CD47を介
した食細胞へのSIRPalphaの関与の遮断、またはノックアウトマウスでのCD4
7発現の喪失によって、生細胞と非老化赤血球が除去され得る。あるいは、SIRPal
pha認識を遮断すると、通常は貪食されない標的を飲み込むことも可能になる。抗CD
47抗体処置によってまた、がんのマクロファージ食作用を可能にするだけでなく、抗腫
瘍細胞傷害性T細胞免疫応答を開始し得ることも示されている。
【0010】
免疫調節剤とCD47遮断との組み合わせはまた、腫瘍抗原の提示及び抑制性免疫細胞
の枯渇を促進することにより、免疫調節剤の効力を増強し得る。これは、処置期間の短縮
を可能にし、これによって潜在的な毒性及び副作用の持続時間及び重要性を低減する。
【0011】
関連する出版物としては、「Engineered Sirp alpha Vari
ants Asm Immunotherapeutic Adjuvants To
Anticancer Antibodies」.Science 341(6141)
:88-91(非特許文献1);Willingham,S.B.,J.P.Volkm
er,Et Al.(2012).「The Cd47-Signal Regulat
ory Protein Alpha (Sirpa) Interaction Is
A Therapeutic Target For Human Solid Tu
mors」.Proc Natl Acad Sci U S A 109(17):6
662-6667(非特許文献2).Chao,M.P.,A.A.Alizadeh,
Et Al.(2010).「Anti-Cd47 Antibody Synergi
zes With Rituximab To Promote Phagocytos
is And Eradicate Non-Hodgkin Lymphoma」.C
ell 142(5):699-713(非特許文献3).Boyerinas B、J
ochems C、Fantini M、Heery CR、Gulley JL、Ts
ang,KY、及びSchlom J.Antibody-Dependent Cel
lular Cytotoxicity Activity of a Novel A
nti-PD-L1 Antibody Avelumab(MSB0010718C)
on Human Tumor Cells Cancer Immunol Res
2015;3(10):1148-57(非特許文献4).Davis A,Tinke
r AV,Friedlander M."Platinum resistant"ov
arian cancer:What is it,who to treat and
how to measure benefit? Gynecol Oncol 2
014;133:624-631(非特許文献5).Disis ML,Patel M
R,Pant S,Hamilton EP,Lockart AC,Kelly K,
Beck JT,Gordon MS,Weiss,GJ,Taylor MH,Cha
ves J,Mita AC,Chin KM,von Heydebreck A,,
Cuillerot J-M,Gulley JL.Avelumab(MSB0010
718C;anti-PD-L1) in patients with recurr
ent/refractory ovarian cancer from the J
AVELIN Solid Tumor phase 1b trial:Safety
and clinical activity.J Clin Oncol 34,2
016 (suppl;abstr 5533)(非特許文献6).Rustin GJ
S,Vergote I,Eisenhauer E,et al.Definitio
ns for Response and Progression in Ovari
an Cancer Clinical Trials Incorporating
RECIST 1.1 and CA 125 Agreed by the Gyne
cological Cancer Intergroup (GCIG).Int J
Gynecol Cancer 2011;21:419-423(非特許文献7).
Seymour L,Bogaerts J,Perrone A,et al.REC
IST working group.iRECIST:guidelines for
response criteria for use in trials tes
ting immunotherapeutics.Lancet Oncol.201
7 Mar;18(3):e143-e152(非特許文献8).Tseng D,Vo
lkmer J-P,Willingham SB,et al.,Anti-CD47
antibody-mediated phagocytosis of cance
r by macrophages primes an effective ant
itumor.PNAS 2013;110(27):11103-11108(非特許
文献9).Wilson MK 1,Pujade-Lauraine E,Aoki
D,et al.Fifth Ovarian Cancer Consensus C
onference of the Gynecologic Cancer Inte
rGroup:recurrent disease.Annals of Oncol
2017;28:727-732(非特許文献10).Yanagita T,Mura
ta Y,Tanaka D,et al,Anti-SIRPa antibodie
s as a potential new tool for cancer imm
unotherapy.JCI Insight,2017;2(1):e89140(
非特許文献11)が挙げられる。関連する出願としては以下が挙げられる:Methods
for Achieving Therapeutically Effective
Doses of anti-CD47 Agents for Treating
Cancer,米国特許第9,623,079号(特許文献1)。Treatment
of cancer with combinations of immunoreg
ulatory agents,米国特許出願公開15/411,623(特許文献2)
(その各々が、全ての目的のために、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)
。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第9,623,079号
【特許文献2】米国特許出願公開15/411,623
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「Engineered Sirp alpha Variants Asm Immunotherapeutic Adjuvants To Anticancer Antibodies」.Science 341(6141):88-91
【非特許文献2】Willingham,S.B.,J.P.Volkmer,Et Al.(2012).「The Cd47-Signal Regulatory Protein Alpha (Sirpa) Interaction Is A Therapeutic Target For Human Solid Tumors」.Proc Natl Acad Sci U S A 109(17):6662-6667
【非特許文献3】Chao,M.P.,A.A.Alizadeh,Et Al.(2010).「Anti-Cd47 Antibody Synergizes With Rituximab To Promote Phagocytosis And Eradicate Non-Hodgkin Lymphoma」.Cell 142(5):699-713
【非特許文献4】Boyerinas B、Jochems C、Fantini M、Heery CR、Gulley JL、Tsang,KY、及びSchlom J.Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity Activity of a Novel Anti-PD-L1 Antibody Avelumab(MSB0010718C)on Human Tumor Cells Cancer Immunol Res 2015;3(10):1148-57
【非特許文献5】Davis A,Tinker AV,Friedlander M."Platinum resistant"ovarian cancer:What is it,who to treat and how to measure benefit? Gynecol Oncol 2014;133:624-631
【非特許文献6】Disis ML,Patel MR,Pant S,Hamilton EP,Lockart AC,Kelly K,Beck JT,Gordon MS,Weiss,GJ,Taylor MH,Chaves J,Mita AC,Chin KM,von Heydebreck A,,Cuillerot J-M,Gulley JL.Avelumab(MSB0010718C;anti-PD-L1) in patients with recurrent/refractory ovarian cancer from the JAVELIN Solid Tumor phase 1b trial:Safety and clinical activity.J Clin Oncol 34,2016 (suppl;abstr 5533)
【非特許文献7】Rustin GJS,Vergote I,Eisenhauer E,et al.Definitions for Response and Progression in Ovarian Cancer Clinical Trials Incorporating RECIST 1.1 and CA 125 Agreed by the Gynecological Cancer Intergroup (GCIG).Int J Gynecol Cancer 2011;21:419-423
【非特許文献8】Seymour L,Bogaerts J,Perrone A,et al.RECIST working group.iRECIST:guidelines for response criteria for use in trials testing immunotherapeutics.Lancet Oncol.2017 Mar;18(3):e143-e152
【非特許文献9】Tseng D,Volkmer J-P,Willingham SB,et al.,Anti-CD47 antibody-mediated phagocytosis of cancer by macrophages primes an effective antitumor.PNAS 2013;110(27):11103-11108
【非特許文献10】Wilson MK 1,Pujade-Lauraine E,Aoki D,et al.Fifth Ovarian Cancer Consensus Conference of the Gynecologic Cancer InterGroup:recurrent disease.Annals of Oncol 2017;28:727-732
【非特許文献11】Yanagita T,Murata Y,Tanaka D,et al,Anti-SIRPa antibodies as a potential new tool for cancer immunotherapy.JCI Insight,2017;2(1):e89140
【発明の概要】
【0014】
要旨
抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体の治療的組み合わせで個体、例えば、ヒト対象を
治療するための方法が提供される。本発明の利点は、単一の免疫調節剤、または免疫調節
剤の組み合わせとして、CD47の遮断がない場合、必要とされる用量と比較して、より
低い用量の薬剤、例えば抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体の使用であり得る。本発明
の利点はまた、または代替として、単一の免疫調節剤、または免疫調節剤の組み合わせと
して、CD47遮断の非存在下での処置に必要な時間の長さに比べて、処置に必要な時間
の長さの減少でもあり得る。本発明の利点はまた、または代替として、単一の免疫調節剤
または免疫調節剤の組み合わせでCD47遮断の非存在下での処置後に観察された応答と
比較して増強された応答であり得る。
【0015】
本発明の方法は、抗CD47抗体の投与を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒ
トIgG4 Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、CD47へ
の結合についてHu5F9-G4と競合する。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体
は、Hu5F9-G4と同じCD47エピトープに結合する。他の実施形態において、抗
CD47抗体はHu5F9-G4である。
【0016】
本発明の方法は、抗PD-L1抗体の投与を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-
L1抗体は、アベルマブ(Avelumab)(Bavencio(登録商標))である
。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、Hu5F9-G4であり、抗PD-L1
抗体は、アベルマブ(Avelumab)(Bavencio(登録商標))である。
【0018】
いくつかの実施形態では、卵巣癌は、上皮性卵巣癌、任意で、漿液性腫瘍、粘液性腫瘍
、明細胞腫瘍、類内膜腫瘍(endometriod tumor)、移行上皮腫瘍、ブ
レナー腫瘍、癌肉腫腫瘍、混合上皮腫瘍、境界上皮腫瘍、未分化癌腫瘍、卵管腫瘍、また
は原発性腹膜腫瘍である。いくつかの実施形態では、上皮性卵巣癌は、漿液性腫瘍であり
、例えば、漿液性腫瘍卵巣癌は、組織学的分析の細分類によって決定される低悪性度また
は高悪性度である。いくつかの実施形態では、腫瘍のタイプは組織学的分析によって決定
される。
【0019】
いくつかの実施形態では、対象は、ナイーブな抗PD-L1抗体である。対象は白金感
受性であるか、あるいは白金耐性である可能性がある。
【0020】
本発明の方法は、任意の適切な送達による抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗
体の投与を含む。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗
体は、腹腔内投与される。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/または抗PD
-L1抗体は、腫瘍内投与される。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/また
は抗PD-L1抗体は、静脈内投与される。抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体は、同
時に投与されても、または順次投与されてもよい。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗体の投
与は、ベースラインと比較して;CA125、HE4(ヒト精巣上体タンパク質4)、C
A-72-4、CA-19-9、及びCEAなどのがんマーカーのレベルを低下させる。
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗体の投与は、ベー
スラインと比較して、対象におけるCA125を減少させる。いくつかの実施形態では、
CA125のレベルは、月に約1回測定される。他の実施形態において、投与は、対象に
おけるCA125のレベルを、ベースラインと比較して少なくとも30~90、40~8
0、50~70、30、40、50、60、70、80、または90%低下させる。他の
実施形態では、投与は、任意で画像化によって測定されるがんまたはその転移のサイズを
、ベースラインと比較して減少させ、任意で、この画像化はCT/PET/CTまたはM
RIであり、最初はベースラインからサイズが増大するがその後減少する疾患が任意で含
まれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、がんの処置のための治療レジメンは、5F9-G4を含むが
これに限定されない抗CD47抗体の負荷用量の投与を含み、ここでこの負荷用量は20
mg/kg~67.5mg/kgの用量で週2回投与される;そして20mg/kg~3
0mg/kgの用量で週2回投与されてもよい。次に、患者は、10mg/kg~40m
g/kgの用量で、毎週または半週ごとに維持量を投与される;そして、20mg/kg
~30mg/kgの用量であってもよい。このようないくつかの実施形態では、がんは卵
巣癌である。いくつかのそのような実施形態では、がんは上皮性卵巣癌、例えば、漿液性
腫瘍、粘液性腫瘍、明細胞腫瘍、類内膜腫瘍、移行上皮腫瘍、ブレナー腫瘍、癌肉腫腫瘍
、混合上皮腫瘍、境界上皮腫瘍、未分化癌腫瘍、卵管腫瘍、または原発性腹膜腫瘍である
。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の治療上有効な量は10mg/kgである
。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、14日ごとに投与される。いくつかの
実施形態では、抗PD-L1抗体は、初回刺激用量の7日後及びその後14日ごとに投与
される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、初回刺激用量と同じ日に、及び
その後14日ごとに投与される。
【0024】
本発明はまた、抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体を含む組成物を含む。本発明はま
た、抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、及び使用説明書を含むキットを備える。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
上皮性卵巣癌を有するヒト対象を治療する方法であって、
(a)Hu5F9-G4抗体の初回刺激用量を前記対象に投与する工程であって、前記初回刺激用量は1mg/kgのHu5F9-G4抗体である、工程;及び
(b)Hu5F9-G4抗体の治療上有効な用量を前記対象に投与する工程であって、Hu5F9-G4抗体の前記治療上有効な用量は20~60mg/kgであり、工程(b)は工程(a)の開始後少なくとも約7日後及びその後7日ごとに行われる、工程;ならびに
(c)アベルマブを前記対象に投与する工程であって、アベルマブの用量が10mg/kgであり、工程(c)は工程(a)の少なくとも約7日後及びその後14日ごとに行われる、工程
を含む、前記方法。
(項目2)
上皮性卵巣癌を有するヒト対象を治療する方法であって、
(a)Hu5F9-G4抗体の初回刺激用量を前記対象に投与する工程であって、前記初回刺激用量は1mg/kgのHu5F9-G4抗体である、工程;ならびに
(b)Hu5F9-G4抗体の治療上有効な用量を前記対象に投与する工程であって、Hu5F9-G4抗体の前記治療上有効な用量は30mg/kgであり、工程(b)は工程(a)の開始後少なくとも約7日後及びその後7日ごとに行われる、工程;ならびに
(c)アベルマブを前記対象に投与する工程であって、アベルマブの用量が10mg/kgであり、工程(c)は工程(a)の少なくとも約7日後及びその後14日ごとに行われる、工程
を含む、前記方法。
(項目3)
卵巣癌を有するヒト対象を治療するか、または前記対象における卵巣癌のサイズを減少させる方法であって、前記対象に治療上有効な量の抗CD47抗体を;及び前記対象に治療上有効な量の少なくとも1つの抗PD-L1抗体を投与する工程を含む、前記方法。
(項目4)
前記卵巣癌が上皮性卵巣癌、任意で、漿液性腫瘍、粘液性腫瘍、明細胞腫瘍、類内膜腫瘍(endometriod tumor)、移行上皮腫瘍、ブレナー腫瘍、癌肉腫腫瘍、混合上皮腫瘍、境界上皮腫瘍、未分化癌腫瘍、卵管腫瘍、または原発性腹膜腫瘍である、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記上皮性卵巣癌が漿液性腫瘍である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記漿液性腫瘍卵巣癌が、組織学的分析の細分類によって決定される低悪性度または高悪性度である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記腫瘍のタイプが組織学的分析によって決定される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記対象が抗PD-L1抗体ナイーブである、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記抗CD47抗体及び前記抗PD-L1抗体が、同時にまたは順次投与される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記抗CD47抗体がIgG4 Fcを含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記抗CD47抗体がCD47への結合についてHu5F9-G4と競合する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記抗CD47がHu5F9-G4と同じCD47エピトープに結合する、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記抗CD47抗体がHu5F9-G4である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記抗PD-L1抗体がアベルマブ(Bavencio(登録商標))である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記抗CD47抗体がHu5F9-G4であり、かつ前記抗PD-L1抗体がアベルマブ(Bavencio(登録商標))である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記抗CD47抗体及び前記抗PD-L1抗体が、薬学的に許容される賦形剤とともに薬学的組成物として各々製剤化される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記ヒト対象が白金感受性である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記ヒト対象が白金耐性である、項目15を除く先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記抗CD47抗体及び/または前記抗PD-L1抗体が静脈内投与される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記抗CD47抗体及び/または前記抗PD-L1抗体が腹腔内投与される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記抗CD47抗体及び/または前記抗PD-L1抗体が腫瘍内投与される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
投与がベースラインと比較して前記対象におけるCA125のレベルを低下させ、任意で前記CA125のレベルが月に約1回測定される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
投与が、前記対象におけるCA125のレベルを、ベースラインと比較して少なくとも30~90、40~80、50~70、30、40、50、60、70、80、または90%低下させる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
投与が、任意で画像化によって測定されるがんまたはその転移のサイズを、ベースラインと比較して減少させ、任意で、前記画像化はCT/PET/CTまたはMRIであり、最初はベースラインからサイズが増大するがその後減少する疾患が任意で含まれる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
投与が、ベースラインと比較して、CA125、HE4(ヒト精巣上体タンパク質4)、CA-72-4、CA-19-9、及びCEAのうち少なくとも1つのレベルを低下させる、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
初回刺激用量の抗CD47抗体を投与する工程をさらに含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
初回刺激用量のエリスロポエチン刺激剤を投与する工程をさらに含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記抗CD47抗体が、約0.5~約5mg/kgの抗体の範囲、任意で1mg/kgの抗体の初回刺激用量として前記対象に投与される、項目26のいずれかに記載の方法。
(項目29)
前記抗CD47抗体が、約20~約67.5mg/kgの抗体の範囲、任意で20mg/kgの抗体、30mg/kgの抗体、45mg/kgの抗体、60mg/kgの抗体、または67.5mg/kgの抗体の用量として前記対象に投与される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記抗CD47抗体が、毎週、2週間ごと、または3週間ごとに前記対象に投与される、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
(a)前記抗CD47抗体の初回刺激用量を前記対象に投与する工程であって、前記初回刺激用量が約0.5~約5mg/kgの抗体である、工程;及び
(b)治療上有効な用量の前記抗CD47抗体を前記対象に投与する工程であって、工程(a)の開始後少なくとも約3~14日後に、任意で(a)の7日後に行われる、工程を含む、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
(a)抗CD47抗体の前記初回刺激用量を、1日目に1mg/kgの抗体の用量で対象に投与する工程;及び、(b)抗CD47抗体の前記治療上有効な用量を、8日目に20mg/kgの抗体、30mg/kgの抗体、45mg/kgの抗体、60mg/kgの抗体、または67.5mg/kgの抗体の用量で前記対象に投与する工程を含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記初回刺激用量の有効性が、前記初回刺激用量の投与後の前記対象の貧血状態に基づいて決定される、項目26~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記対象のヘモグロブリンレベルの低下が8.0g/dL以上である;かつ/または
前記対象のヘモグロビンレベルの絶対低下が3.0~3.75g/dL未満であるならば、前記初回刺激用量が有効であると見なされる、項目26~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
工程(a)の後かつ工程(b)の前に、前記初回刺激用量の投与が有効であったか否かを決定する工程をさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目36)
前記決定工程が網状赤血球カウントを行うことを含み、前記網状赤血球カウントが1Lあたり約100×109個の網状赤血球~1Lあたり約1000×109個の網状赤血球である場合、前記初回刺激用量の投与が有効であったと決定される、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記決定工程が網状赤血球カウントを行うことを含み、血液中の網状赤血球のパーセンテージが約1.5%を超える場合、前記初回刺激用量の投与が有効であったと決定される、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記決定工程が網状赤血球カウントを行うことを含み、網状赤血球指数が約2%を超える場合、プライミング剤の投与が有効であったと決定される、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記初回刺激用量が、約0.05mg/ml~約0.5mg/mlの濃度の抗CD47抗体を含む注入剤としてヒト対象に投与される、項目31~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記注入剤が、少なくとも約1~3、8~10、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10時間の期間にわたって送達される、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記注入剤が、少なくとも約3時間の期間にわたって送達される、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記注入剤が、約2.5時間~約6時間の期間にわたって送達される、項目39に記載の方法。
(項目43)
前記初回刺激用量が、約6時間~約3日の期間にわたって連続ポンプによって送達される、項目31~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記初回刺激用量が皮下送達される、項目31~43のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
前記初回刺激用量が、赤血球上のCD47部位の少なくとも約50%~100%、任意で赤血球上のCD47部位の100%を飽和させる、項目31~44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記用量が、
対象へのある用量の非標識抗CD47抗体の投与後に血液試料を得て、検出可能に標識された抗CD47抗体の飽和用量と組み合わせる、受容体占有率アッセイ;及び
結合のレベルを決定すること
によって決定される、項目45に記載の方法。
(項目47)
(b)の前記治療上有効な用量が、ある持続期間にわたって、100、250、500、または1000μg/mlを超える循環レベルの前記抗CD47抗体を達成するのに十分であり、任意で、前記持続期間は少なくとも1~28日、7~28日、7~21日、14~28日、または21~28日である、項目31~46のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
前記持続期間が約1、2、3、または4週間である、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記初回刺激用量が1mg/kgの抗CD47抗体である、項目31~48に記載の方法。
(項目50)
前記抗CD47抗体の治療上有効な用量が20mg/kgである、項目31~48に記載の方法。
(項目51)
前記抗CD47抗体の治療上有効な用量が30mg/kgである、項目31~48に記載の方法。
(項目52)
前記抗CD47抗体の治療上有効な用量が45mg/kgである、項目31~48に記載の方法。
(項目53)
前記抗CD47抗体の治療上有効な用量が60mg/kgである、項目31~48に記載の方法。
(項目54)
前記抗CD47抗体の治療上有効な用量が67.5mg/kgである、項目31~48に記載の方法。
(項目55)
前記抗CD47抗体の治療上有効な用量が、約7、14、21、または28日ごとに投与される、項目31~54のいずれか1項に記載の方法。
(項目56)
前記抗CD47抗体の治療上有効な用量が7日ごとに投与される、項目31~55のいずれか1項に記載の方法。
(項目57)
前記抗PD-L1抗体の治療上有効な量が10mg/kgである、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目58)
前記抗PD-L1抗体が14日ごとに投与される、項目57に記載の方法。
(項目59)
抗CD47抗体および抗PD-L1抗体を含む、組成物。
(項目60)
抗CD47抗体、抗PD-L1抗体、および使用説明書を備える、キット。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
対象における卵巣癌の処置または卵巣癌のサイズの縮小のための方法が提供され、この
処置は、対象に抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体を投与することを含む。
【0026】
本発明の活性剤及び方法が記載される前に、本発明は、記載された特定の方法論、製品
、装置及び因子に限定されず、そのような方法、装置及び製剤は、当然のことながら変化
し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するこ
とのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定す
ることを意図しないことも理解されたい。
【0027】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「ある、1つの(a、a
n)(不定冠詞)」、及び「この、その:(the)(不定冠詞)」は、文脈がそうでな
いことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
したがって、例えば、「薬物候補」という言及は、そのような候補の1つまたは混合物を
指し、「方法」という言及は、当業者に公知の同等の工程及び方法などへの言及を含む。
【0028】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明
が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で
言及される全ての刊行物は、刊行物に記載され、かつ現在記載されている発明に関連して
使用され得るデバイス、製剤及び方法論を説明及び開示する目的で参照により本明細書に
組み込まれる。
【0029】
ある範囲の値が提供される場合、文脈がそうでないことを明確に示さない限り下限の単
位の10分の1までの各介在する値、その範囲の上限と下限との間、及び任意の他の言及
されるか、またはその言及された範囲の介在する値が、本発明の範囲内に含まれることが
理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、より小さな範囲に独立して含ま
れてもよく、述べられた範囲内の任意の具体的に除外された制限に従い、本発明に包含さ
れる。述べられた範囲が制限の一方または両方を含む場合、それらの含まれた制限の両方
のいずれかを除外する範囲も本発明に含まれる。
【0030】
以下の説明では、本発明のより完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が示さ
れている。しかしながら、当業者には、本発明がこれらの特定の詳細のうちの1つまたは
複数がなくても実施できることが明らかであろう。他の例では、当業者に周知の特徴及び
手順は、本発明を不明瞭にすることを回避するために説明していない。
【0031】
一般に、タンパク質合成の従来の方法、組換え細胞培養及びタンパク質単離、ならびに
当該分野の技術の範囲内の組換えDNA技術が、本発明において使用される。そのような
技術は、文献で完全に説明されており、例えば、Maniatis,Fritsch &
Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory
Manual(1982);Sambrook,Russell and Sambr
ook,Molecular Cloning:A Laboratory Manua
l(2001);Harlow,Lane and Harlow,Using Ant
ibodies:A Laboratory Manual:Portable Pro
tocol No.I,Cold Spring Harbor Laboratory
(1998);ならびにHarlow及びLane,Antibodies:A Lab
oratory Manual,Cold Spring Harbor Labora
tory;(1988)。
【0032】
定義
本明細書で使用される場合、「抗CD47抗体」とは、(例えば、標的細胞上の)CD
47のSIRPαへの(例えば、食細胞上の)結合を低減する任意の抗体を指す。非限定
的な例は、以下でより詳細に説明され、Hu5F9-G4が含まれるが、これに限定され
ない。
【0033】
以下により詳細に記載されるように、抗PD-L1抗体は、PD-L1(PD1リガン
ド)のPD1(プログラムド・デス1(プログラム死1)(programmed de
ath 1)への結合を阻害する抗体である。例としては、アベルマブが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「抗体」とは、特定の抗原と免疫学的に反応する免疫グロ
ブリン分子への言及を含み、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含む。
この用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)及びヘテロコンジュゲート抗
体などの遺伝子操作された形態を含む。「抗体」という用語はまた、抗原結合能を有する
フラグメント(例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、及びrIgG)を含
む、抗体の抗原結合形態を含む。この用語はまた、組換え単鎖Fvフラグメント(scF
v)も指す。抗体という用語にはまた、二価または二重特異性分子、ダイアボディ、トリ
アボディ、及びテトラボディも含まれる。抗体という用語の追加の詳細については、以下
で説明する。
【0035】
本発明の目的のための「患者」としては、ヒト及び他の動物の両方、特に哺乳動物、例
としては、ペット及び実験動物、例えば、マウス、ラット、ウサギなどが挙げられる。し
たがって、この方法は、ヒトの治療と獣医学の適用の両方に適用可能である。一実施形態
では、患者は哺乳動物、好ましくは霊長類である。他の実施形態では、患者はヒトである
。
【0036】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用されてお
り、処置について評価されているか及び/または処置されている哺乳動物を指す。一実施
形態では、哺乳動物はヒトである。「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、が
んを有する個体を非限定的に包含する。対象はヒトであってもよいが、他の哺乳動物、特
にヒトの疾患の実験モデルとして有用な哺乳動物、例えば、マウス、ラットなども含む。
【0037】
本明細書で使用される場合、語句「白金感受性」とは、最後の白金ベースの化学療法を
受けた後6ヶ月を超えて再発性疾患を発症するヒト対象を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「白金耐性」という語句は、最後の白金ベースの化学療法
を受けた後6ヶ月未満で再発性疾患を発症するヒト対象を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「ベースライン」という用語は、卵巣癌を有するヒト対象
への最初の処置投与前の30日の期間として定義される。
【0040】
患者に関する「試料」という用語は、生物学的起源の血液及び他の液体試料、生検標本
もしくは組織培養物などの固形組織試料、またはそれらに由来する細胞及びそれらの子孫
を包含する。定義には、試薬による処理など、調達後に何らかの方法で操作されたか;洗
浄されたか;またはがん細胞などの特定の細胞集団の濃縮を受けた試料も含まれる。この
定義にはまた、特定のタイプの分子、例えば核酸、ポリペプチドなどが濃縮された試料も
含まれる。「生物学的試料」という用語には、臨床試料が含まれ、外科的切除によって得
られた組織、生検によって得られた組織、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、組織試
料、臓器、骨髄、血液、血漿、血清なども含まれる。「生物学的試料」としては、患者の
がん細胞から得られた試料、例えば、患者のがん細胞から得られたポリヌクレオチド及び
/またはポリペプチドを含む試料(例えば、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド
を含む細胞溶解物または他の細胞抽出物);ならびに患者由来のがん細胞を含む試料が挙
げられる。患者由来のがん細胞を含む生体試料としてはまた、非癌性細胞も挙げられ得る
。
【0041】
「診断」という用語は、本明細書において、乳癌、前立腺癌、または他のタイプのがん
の分子サブタイプの同定などの、分子または病理学的状態、疾患または状態の同定を指し
て使用される。
【0042】
「予後」という用語は、本明細書では、卵巣癌などの腫瘍性疾患の再発、転移性拡散、
及び薬物耐性を含む、がんに起因する死亡または進行の可能性の予測を指して使用される
。「予測」という用語は、本明細書では、観察、経験、または科学的推論に基づいて、予
言または推定する行為を指すために使用される。一例では、医師は、原発腫瘍の外科的除
去及び/または一定期間の化学療法の後、がんが再発することなく、患者が生存する可能
性を予測し得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「処置する、治療する(treatment)」、「処置
、治療(treating)」などの用語は、効果を得る目的のために、薬剤を投与する
こと、または手順を実施することを指す。この効果は、疾患またはその症状を完全にまた
は部分的に防止することに関して予防的であり得、ならびに/または疾患及び/もしくは
疾患の症状を部分的もしくは完全に治癒することに関して治療的であり得る。本明細書で
使用する「処置、治療(treatment)」とは、哺乳動物、特にヒトの腫瘍の処置
を含んでもよく、これには以下を含む:(a)疾患または疾患の症状が、その疾患に罹り
やすい可能性があるが、その疾患(例えば、原発性疾患に関連するか、またはそれによっ
て引き起こされる可能性のある疾患を含む)を持っているとまだ診断されていない対象で
生じるのを防ぐこと;(b)疾患を阻害する、すなわち、その発生を停止すること;及び
(c)疾患を緩和する、すなわちその疾患の後退を生じること。
【0044】
処置とは、客観的または主観的パラメーター、例えば、軽減;寛解;症状の軽減もしく
は疾患状態を患者にとってより許容できるものにすること;変性もしくは衰退の速度を遅
延すること;または、変性の最終点を衰弱させないようにすること、を含む、がんの処置
または改善または予防における成功の兆候を指し得る。症状の処置または改善は、客観的
または主観的パラメーター(医師による検査の結果を含む)に基づき得る。したがって、
「処置する」という用語は、がんまたは他の疾患に関連する症状または状態の発症を予防
または遅延、緩和、または阻止もしくは阻害するための本発明の化合物または薬剤の投与
を含む。「治療効果」という用語は、対象における疾患、疾患の症状、または疾患の副作
用の低減、排除、または防止を指す。
【0045】
「と組み合わせて」、「併用療法」及び「併用製品」とは、特定の実施形態では、本明
細書に記載の薬剤の患者への同時投与を指す。組み合わせて投与する場合、各成分は同時
に投与されてもよく、または異なる時点で任意の順序で順次投与されてもよい。したがっ
て、各成分は、別々に投与されてもよいが、所望の治療効果を提供するように時間的に十
分接近されてもよい。
【0046】
本発明の方法における活性薬剤の「同時投与」は、その薬剤が同時に治療効果を有する
ような時点での試薬との投与を意味する。そのような併用投与は、薬剤の同時(すなわち
、同時に)の、前の、またはその後の投与を含み得る。当業者は、本発明の特定の薬物及
び組成物についての投与の適切なタイミング、順序及び投薬量を決定するのに困難はない
であろう。
【0047】
本明細書で使用する場合、「相関する」または「と相関する」という用語及び同様の用
語は、事象が数値、データセットなどを含む、2つの事象の事例間の統計的関連付けを指
す。例えば、その事象が数を含む場合、正の相関(本明細書では「直接相関」とも呼ばれ
る)は、一方が増大すると、他方も同様に増大することを意味する。負の相関(ここでは
「逆相関」とも呼ばれる)は、一方が増大すると他方が減少することを意味する。
【0048】
「投与量単位」とは、処置される特定の個体のための単一投与量として適した物理的に
別個の単位を指す。各単位は、必要な医薬担体と組み合わせて所望の治療効果(複数可)
をもたらすように計算された所定量の活性化合物(複数可)を含み得る。投薬単位形態の
仕様は、(a)活性化合物(複数可)の独特の特徴及び達成されるべき特定の治療効果(
複数可)、及び(b)そのような活性化合物(複数可)を配合する技術に固有の制限によ
って決定され得る。
【0049】
「治療上有効な量」とは、疾患を処置するために対象に投与された場合に、その疾患の
処置を達成するのに十分な量を意味する。
【0050】
処置の方法
卵巣癌を有するヒト対象を処置するか、または卵巣癌のサイズを減少するための方法が
提供され、この方法は、対象に対して抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体を投与するこ
とを含む。このような方法は、処置の必要な対象に対して、限定するものではないが、E
SAと組み合わせた、本発明の治療上有効な量または有効用量の併用剤を投与することを
含む。
【0051】
抗PD-L1抗体は、抗CD47抗体の有効性を増強し得る。抗CD47抗体を、抗P
D-L1抗体と組み合わせるか、またはその前に投与して、阻害性の抗PD1/PD-L
1経路が遮断される場合に進展され得る腫瘍特異的T細胞のプライミングを刺激してもよ
い。
【0052】
抗CD47抗体と本明細書に記載される抗PD-L1抗体との組み合わせは、これらの
治療に応答する腫瘍サブタイプを有する患者に与えられる。本明細書に記載されるように
、これらの腫瘍は、より高い頻度の変異によって定義され得、より多くの腫瘍抗原をもた
らし、したがって、より免疫原性である。いくつかの実施形態では、併用療法で治療され
た患者は、免疫活性化因子またはチェックポイント阻害剤による治療に反応性である;し
かし、これは特定の潜在的に反応性の腫瘍サブタイプ内の患者の約25%のサブセットを
表す。いくつかの実施形態では、個体は、白金療法感受性であっても、または抵抗性であ
ってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、プライミング剤を対象に投与するステップ
と、その後に治療上有効な用量の抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体を対象に投与する
ステップとを含む。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量を投与するステップは、
プライミング剤の投与開始後、少なくとも約3日(例えば、少なくとも約4日、少なくと
も約5日、少なくとも約6日、少なくとも約7日、少なくとも約8日、少なくとも約9日
、または少なくとも約10日)後に実行される。この期間は、例えば、個体による網赤血
球産生の増強を提供するのに十分である。
【0054】
抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗体の治療上有効な用量の投与は、多くの異
なる方法で達成され得る。いくつかの場合において、プライミング剤が投与された後、2
回以上の治療上有効な用量が投与される。治療上有効な用量の適切な投与は、単回投与の
投与を伴ってもよいし、または毎日、半週ごと、毎週、2週間に1回、月に1回、毎年な
どの投与を伴い得る。いくつかの場合には、治療上有効な用量は、漸増濃度の2回以上の
用量(すなわち、漸増用量)として投与され、ここで(i)全ての用量が治療用量である
か、または(ii)治療用量未満(または2回以上の治療用量未満)が最初に与えられ、
治療上の投与量は前記の段階的拡大によって達成される。濃度の増大(すなわち、用量の
増大)を説明するための1つの非限定的な例として、治療上有効な用量を、治療量未満の
用量(例えば、5mg/kgの用量)から始めて毎週投与してもよく、その後の各用量は
、特定の増分ずつ(例えば、5mg/kgずつ)または可変増分で、治療用量(例えば、
30mg/kg)に達するまで増大されてもよく、この時点で、投与は中止されても、ま
たは継続されてもよい(例えば、継続的な治療用量、例えば、30mg/kgの用量)。
漸増濃度(すなわち、用量の増大)を説明するための別の非限定的な例として、治療上有
効な用量は、治療用量(例えば、10mg/kgの用量)から始めて毎週投与されてもよ
く、その後の各用量は、特定の増分ずつ(例えば、10mg/kgずつ)または可変増分
で、治療用量(例えば、30mg/kg、100mg/mlなど)に到達するまで増大さ
れてもよく、この時点で、投与は中止されても、または継続されてもよい(例えば、継続
的な治療用量、例えば、30mg/kg、100mg/mlなどの用量)。いくつかの実
施形態では、治療上有効な用量の投与は、持続注入であってもよく、そして用量は、経時
的に変化し得る(例えば、漸増し得る)。
【0055】
投与量及び頻度は、患者における抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗体の半減
期に応じて異なり得る。当業者であれば、そのようなガイドラインは、活性薬剤の分子量
について、例えば、抗体フラグメントの使用において、抗体コンジュゲートの使用におい
て、可溶性CD47ペプチドの使用においてなど、調整されることを理解するであろう。
投薬量はまた、例えば、鼻腔内、吸入など、局所的な投与のために、または例えば、i.
m.(筋肉内)、i.p.(腹腔内)、i.v.(静脈内)、s.c.(皮下)など全身
投与用のために変化されてもよい。
【0056】
本発明の特定の実施形態では、抗CD47抗体は、RBC及び薬剤の局所濃度が高い、
血液学的微小環境の可能性が低減される、期間及び/または濃度にわたって、最初の用量
で、及び任意で後続の用量で患者に注入される。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、抗CD47抗体の初期用量は、少なくとも約2時間
、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、少なくとも
約4時間、少なくとも約4.5時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間以上の期
間にわたって注入される。いくつかの実施形態では、この初期用量は、約2.5時間~約
6時間;例えば、約3時間~約4時間の期間にわたって注入される。いくつかのそのよう
な実施形態では、注入剤中の薬剤の用量は、約0.05mg/ml~約0.5mg/ml
;例えば、約0.1mg/ml~約0.25mg/mlである。
【0058】
本発明の方法はまた、抗PD-L1抗体と抗CD47抗体との同時投与を含む。いくつ
かの実施形態では、抗PD-L1抗体はアベルマブである。いくつかの実施形態では、処
置を受ける個人は、抗PD-L1抗体ナイーブである。抗PD-L1抗体は、抗CD47
抗体と一緒に、または別々に、例えば、適切な送達方法、例えば、i.v.(静脈内)、
i.p.(腹腔内)、皮下、腫瘍内、または腹腔内で投与されてもよい。抗PD-L1抗
体の治療上有効な量は、約10mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、抗PD
-L1抗体は、14日ごとに投与され得る。他の実施形態では、抗PD-L1抗体は、抗
CD47抗体の初回刺激用量の7日後及びその後14日ごとに投与され得る。他の実施形
態では、抗PD-L1抗体は、抗CD47抗体の初回刺激用量と共に、及びその後14日
ごとに投与されてもよい。
【0059】
卵巣癌
本明細書で提供されるのは、卵巣癌を有する個体を治療するか、または対象における卵
巣癌のサイズを減少させるための方法であって、対象に治療上有効な量の抗CD47抗体
を;及び対象に治療上有効な量の少なくとも1つの抗PD-L1抗体を投与する工程を含
む、方法である。
【0060】
卵巣癌の例としては、上皮性卵巣癌、任意で、漿液性腫瘍、粘液性腫瘍、明細胞腫瘍、
類内膜腫瘍、移行上皮腫瘍、ブレナー腫瘍、癌肉腫腫瘍、混合上皮腫瘍、境界上皮腫瘍、
未分化癌腫瘍、卵管腫瘍、または原発性腹膜腫瘍が挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、上皮性卵巣癌は漿液性腫瘍である。漿液性腫瘍の卵巣癌は、
組織学的分析の細分類によって低悪性度または高悪性度であると判断できる。一実施形態
では、個体は白金化学療法感受性である。別の実施形態では、個体は白金化学療法耐性で
ある。いくつかの実施形態では、この個体はPD-L1ナイーブである。
【0062】
いくつかの実施形態では、患者は突然変異の負担が低い。いくつかの実施形態では、患
者は突然変異の負担が高い。当技術分野で知られているように、がんのタイプは、平均ま
たは特定の程度の変異で変化する可能性があり、より高いレベルの変異は、ネオ抗原の発
現の増大と関連している。例えば、上記のVogelstein et al.,(20
13)を参照のこと。低い変異負荷とは、腫瘍あたりの平均、または特定数が個々の腫瘍
に関して、最大約10、最大約20、最大約30、最大約40、最大約50という腫瘍ご
との非同義変異であるがんの種類であり得る。高い突然変異負荷とは、腫瘍あたり約50
を超える、約75を超える、約100を超える、約125を超える、約150を超える非
同義の変異を伴うがんの種類であり得る。
【0063】
そのようないくつかの実施形態では、がんは卵巣癌であるが、これに限定されない。そ
のようないくつかの実施形態では、がんは、高いネオ抗原、または突然変異誘発負荷を有
する種類である(参照により本明細書に具体的に組み込まれる、Vogelstein
et al.(2013)Science 339(6127):1546-1558を
参照のこと)。他の実施形態では、このがんは、ネオ抗原負荷が低いタイプのがんである
。このようないくつかの実施形態では、本発明の併用療法は、チェックポイント阻害剤の
活性を増強する。他の実施形態では、個々のがんがチェックポイント阻害剤のみに反応し
ない場合、併用療法は治療反応を提供する。いくつかの実施形態では、個体は白金感受性
である。他の実施形態では、個体は白金耐性である。
【0064】
がん
「がん」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書では互換的に使用され、
自律的で無秩序な成長を示し、その結果、細胞増殖に対する制御の有意な喪失を特徴とす
る異常な成長表現型を示す細胞を指す。本出願における検出、分析、または処置の対象と
なる細胞としては、前癌性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、及び非転移性細
胞が挙げられる。ほぼ全ての組織のがんが知られている。「がん負荷」という語句は、対
象におけるがん細胞の量またはがんの容積を指す。したがって、がんの負担を軽減すると
は、対象のがん細胞の数またはがんの体積を減少させることを指す。本明細書で使用され
る「がん細胞」という用語は、がん細胞であるか、またはがん細胞に由来する任意の細胞
、例えば、がん細胞のクローンを指す。癌腫、肉腫、神経膠芽腫、黒色腫、リンパ腫、骨
髄腫などの固形腫瘍、及び白血病などの循環癌を含む、多くの種類のがんが当業者に公知
である。がんの例としては、限定するものではないが、卵巣癌、乳癌、結腸癌、肺癌、前
立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状
腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫、頭頸部癌、及び脳癌が挙げられる。
【0065】
がんの「病理」としては、患者の健康を損なう全ての現象が挙げられる。これには、限
定するものではないが、異常または制御不能な細胞増殖、転移、隣接する細胞の正常な機
能への干渉、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、炎症性または免
疫学的応答の抑制または悪化、新生物、前悪性、悪性腫瘍、リンパ節などの周囲または遠
隔組織または臓器への浸潤などが挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「がん再発」及び「腫瘍再発」という用語、ならびにそれ
らの文法的変形は、がんの診断後の腫瘍性または癌性細胞のさらなる増殖を指す。特に、
癌性組織でさらなる癌性細胞増殖が起こった場合、再発が起こり得る。「腫瘍の広がり」
は、同様に、腫瘍の細胞が局所または遠隔の組織及び臓器に播種したときに発生する;し
たがって、腫瘍の広がりには腫瘍の転移が含まれる。「腫瘍浸潤」は、腫瘍の増殖が局所
的に広がって、正常な臓器機能の圧迫、破壊、または予防によって、関与する組織の機能
が損なわれた場合に発生する。
【0067】
本明細書で使用される場合、「転移」という用語は、元の癌性腫瘍の器官に直接接続さ
れていない、器官または身体部分における癌性腫瘍の増殖を指す。転移とは、微小転移を
含むと理解され、これは、元の癌性腫瘍の器官に直接接続されていない器官または身体部
分における検出不可能な量の癌性細胞の存在である。転移はまた、元の腫瘍部位からのが
ん細胞の離脱、ならびに身体の他の部分へのがん細胞の移動及び/または浸潤などのプロ
セスのいくつかのステップとして定義してもよい。
【0068】
臨床エンドポイント
本明細書に記載される方法は、ベースラインと比較して少なくとも1つの改善されたエ
ンドポイントをもたらす。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗体の投
与は、CA125、HE4(ヒト精巣上体タンパク質4)、CA-72-4、CA-19
-9、及びCEAなどのがんマーカーのレベルを;ベースラインと比較して低下させる。
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗体の投与は、ベー
スラインと比較して、対象におけるCA125を低下させる。いくつかの実施形態では、
CA125のレベルは、月に約1回測定される。他の実施形態において、投与は、対象に
おけるCA125のレベルを、ベースラインと比較して少なくとも30~90、40~8
0、50~70、30、40、50、60、70、80、または90%まで低下させる。
CA125は、イムノアッセイで測定され得る。CA125は、Mongia et a
l.,Performance characteristics of seven
automated CA 125 assays. Am J Clin Patho
l. 2006 Jun;125(6):921-7(全ての目的に関して参照によって
本明細書に組み込まれる)に開示される1つ以上のアッセイを用いて測定され得る。他の
実施形態では、投与は、任意で画像化によって測定されるがんまたはその転移のサイズを
、ベースラインと比較して減少させ、任意で、この画像化はCT/PET/CTまたはM
RIであり、最初はベースラインからサイズが増大するがその後減少する疾患が任意で含
まれる。
【0070】
本明細書で使用する場合、処置のエンドポイントには、当技術分野で公知であり、食品
医薬品局(Food and Drug Administration)によって使用
されるような意味が与えられる。
【0071】
全生存は、無作為化から何らかの原因による死亡までの時間として定義され、治療意図
集団で測定される。生存率は最も信頼性の高いがんエンドポイントと見なされており、生
存率を適切に評価するための研究を実施できる場合は、通常、それが好ましいエンドポイ
ントである。このエンドポイントは正確かつ測定が簡単で、死亡日ごとに記録される。バ
イアスは、エンドポイント測定の要素ではない。生存期間の改善は、リスクベネフィット
分析として分析して、臨床的ベネフィットを評価する必要がある。全生存は、無作為化制
御研究で評価され得る。全生存の統計的に有意な改善の実証は、毒性プロファイルが許容
可能である場合、臨床的に有意であると見なされ得、新薬承認が支持される場合が多い。
本発明の方法の利点は、患者の全生存の増大を含み得る。
【0072】
腫瘍評価に基づくエンドポイントとしては、DFS、ORR、TTP、PFS、及び治
療失敗までの時間(TTF)が挙げられる。これらの時間依存性のエンドポイントに関す
るデータの収集及び分析は、間接的な評価、計算、及び推定(例えば、腫瘍測定)に基づ
いている。無病生存期間(DFS)は、無作為化から腫瘍の再発または何らかの原因によ
る死亡までの時間として定義される。このエンドポイントの最も頻繁な用途は、根治手術
または放射線療法後の補助療法である。DFSは、大多数の患者が化学療法で完全な奏効
を達成した場合の重要なエンドポイントにもなり得る。
【0073】
客観的奏功率。ORRは、腫瘍サイズが事前に定義された量だけ減少した患者の割合と
して、最小期間について定義される。応答期間は通常、最初の応答時から、腫瘍進行の実
証まで測定される。一般に、FDAはORRを部分的応答と完全な応答の合計として定義
している。このように定義すると、ORRは、薬物抗腫瘍活性の直接的な測定値であり、
単群研究で評価され得る。
【0074】
進行までの時間(Time to Progression)及び無進行生存(Pro
gression-Free Survival)。TTP及びPFSは、薬物承認の主
要エンドポイントとして機能している。TTPは、無作為化から客観的な腫瘍進行までの
時間として定義される;TTPには死亡は含まれない。PFSは、無作為化から客観的な
腫瘍の進行または死亡までの時間として定義される。腫瘍の進行の正確な定義は重要であ
り、このプロトコールで注意深く詳述する必要がある。
【0075】
抗体
本明細書に記載の方法は、抗体(複数可)の投与、すなわち、抗CD47抗体の投与、
及びいくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の投与を含む。上記のように、「抗体」
という用語は、特定の抗原と免疫学的に反応する免疫グロブリン分子への言及を含み、ポ
リクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を含む。この用語はまた、キメラ抗体(例
えば、ヒト化マウス抗体)及びヘテロコンジュゲート抗体などの遺伝子操作された形態を
含む。「抗体」という用語はまた、抗原結合能を有するフラグメント(例えば、Fab’
、F(ab’)2、Fab、Fv、及びrIgG)を含む、抗体の抗原結合形態を含む。
この用語はまた、組換え単鎖Fvフラグメント(scFv)も指す。抗体という用語には
、二価または二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディも含まれ
る。
【0076】
抗体の選択は、選択性、親和性、細胞毒性などを含む様々な基準に基づく場合がある。
抗体と「特異的に(または選択的に)結合する」または「特異的に(または選択的に)免
疫反性である」という句は、タンパク質またはペプチドを指す場合、タンパク質及びその
他の生物製剤の不均一な集団における、タンパク質の存在を決定する結合反応を指す。し
たがって、指定されたイムノアッセイ条件下で、指定された抗体は、バックグラウンドの
少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10~100倍を超えて特定のタン
パク質配列に結合する。一般に、本発明の抗体は、エフェクター細胞(ナチュラルキラー
細胞またはマクロファージなど)の存在下で標的細胞の表面上の抗原に結合する。エフェ
クター細胞のFc受容体は、結合した抗体を認識する。
【0077】
特定の抗原と免疫学的に反応する抗体は、ファージもしくは類似のベクターにおける組
換え抗体のライブラリーの選択などの組換え法によって、または抗原もしくは抗原をコー
ドするDNAで動物を免疫することによって、生成されてもよい。ポリクローナル抗体を
調製する方法は、当業者に公知である。あるいは、抗体はモノクローナル抗体であっても
よい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製されてもよい。ハイブリ
ドーマ法では、適切な宿主動物を典型的には免疫剤で免疫して、免疫剤に特異的に結合す
る抗体を産生するかまたは産生し得るリンパ球を誘発する。あるいは、このリンパ球はイ
ンビトロで免疫されてもよい。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールなどの適切な
融合剤を使用して不死化細胞株と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する。
【0078】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で公知の様々な技
術を使用して生成されてもよい。同様に、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部
分的または完全に不活性化されているトランスジェニック動物、例えばマウスにヒト免疫
グロブリン遺伝子座を導入することによって作製されてもよい。チャレンジすると、ヒト
抗体産生が観察され、これは、遺伝子再構成、アセンブリ、及び抗体レパートリーなど、
あらゆる点でヒトで見られるものと非常によく似ている。
【0079】
抗体はまた、様々なペプチダーゼでの消化により生成される、十分に特徴付けられた多
数のフラグメントとして存在する。したがって、ペプシンはヒンジ領域のジスルフィド結
合の下の抗体を消化して、それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に結合した
軽鎖であるFabの二量体であるF(ab)’2を生成する。F(ab)’2は穏やかな
条件下で還元されて、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊し得、それによりF(ab)
’2二量体をFab’単量体に変換する。Fab’モノマーは本質的にヒンジ領域の一部
を備えたFabである。様々な抗体フラグメントがインタクトな抗体の消化に関して定義
されるが、当業者は、そのようなフラグメントが化学的にまたは組換えDNA方法論を使
用することにより新規に合成され得ることを理解するであろう。したがって、本明細書で
使用される抗体という用語は、抗体全体の修飾によって生成された抗体フラグメント、ま
たは組換えDNA方法論(例えば、一本鎖Fv)を使用して新規合成された抗体、または
ファージディスプレイライブラリーを使用して識別された抗体も含む。
【0080】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む免疫グロブ
リン分子である。ヒト化抗体には、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれ、
レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、及び容
量を有する、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRから
の残基で置換されている。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残
基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗
体にも、輸入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。一
般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを
含み、CDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応し
、フレームワーク領域(FR)の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセ
ンサス配列のFRである。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc
)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの抗体も含む。
【0081】
目的の抗体は、ADCC(抗体依存性細胞傷害)またはADCP(抗体依存性細胞貪食
)を誘導するそれらの能力について試験され得る。抗体関連のADCC活性は、溶解した
細胞からの標識もしくは乳酸脱水素酵素の放出の検出、または標的細胞の生存率の低下の
検出(例えば、アネキシンアッセイ)によってモニター及び定量化できる。アポトーシス
のアッセイは、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介ジゴキシゲニ
ン-11-dUTPニックエンドラベリング(TUNEL)アッセイ(Lazebnik
et al.,Nature:371,346(1994)によって行ってもよい。細
胞毒性はまた、Roche Applied Science(Indianapoli
s,Ind.)の細胞毒性検出キット(Cytotoxicity Detection
Kit)など、当該技術分野で公知の検出キットによって直接検出され得る。
【0082】
CD47抗体
本明細書に記載の方法は、抗CD47抗体の投与を含む。
【0083】
CD47は、単一のIg様ドメイン及び5つの膜貫通領域を有する広範に発現される膜
貫通糖タンパク質であり、SIRPアルファのNH2末端V様ドメインを介して媒介され
る結合を有するSIRPアルファの細胞リガンドとして機能する。SIRPアルファは、
骨髄細胞、例としては、マクロファージ、顆粒球、骨髄樹状細胞(DC)、肥満細胞、及
びそれらの前駆体、例としては、造血幹細胞で主に発現している。CD47結合を媒介す
るSIRPアルファの構造決定因子は、Lee et al.(2007)J.Immu
nol.179:7741-7750;Hatherley et al.(2008)
Mol Cell.31(2):266-77;Hatherley et al.(2
007)J.B.C.282:14567-75によって考察されており;そして、CD
47結合におけるSIRPアルファcis二量化の役割は、Lee et al.(20
10)J.B.C.285:37953-63によって考察されている。正常細胞の食作
用を阻害するCD47の役割と一致して、SIRPアルファは、遊走段階の直前及びその
間に造血幹細胞(HSC)及び前駆細胞で一過性にアップレギュレートされること、なら
びにこれらの細胞のCD47のレベルによって、それらが生体内に飲み込まれる確率を決
定するという証拠がある。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD47抗体は、CD47に特異的に結合し
、1つの細胞(例えば、感染細胞)上のCD47と別の細胞(例えば、食細胞)上のSI
RPαとの間の相互作用を低減する。いくつかの実施形態では、適切な抗CD47抗体は
、結合時にCD47を活性化しない。いくつかの抗CD47抗体は、CD47のSIRP
αへの結合を低下させず、そのような抗体は「非ブロッキング抗CD47抗体」と呼んで
もよい。「抗CD47剤」である適切な抗CD47抗体は、「CD47ブロッキング抗体
」と呼ぶこともある。適切な抗体の非限定的な例としては、クローンB6H12、5F9
、8B6、及びC3が含まれる(例えば、参照により本明細書に具体的に組み込まれる国
際特許公開WO 2011/143624に記載されている)。適切な抗CD47抗体と
しては、そのような抗体の完全ヒト型、ヒト化型またはキメラ型が挙げられる。ヒト化抗
体(例えば、hu5F9-G4)は、抗原性が低いことに起因して、ヒトのインビボ適用
に特に有用である。同様にイヌ化、ネコ化などの抗体は、それぞれイヌ、ネコ、及び他の
種での適用に特に有用である。目的の抗体としては、ヒト化抗体、またはイヌ化、ネコ化
、ウマ化、ウシ化、ブタ化などの抗体及びそのバリアントが挙げられる。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、ヒトIgG Fc領域、例えば、IgG
1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4定常領域を含む。一実施形態では、I
gG Fc領域は、IgG4定常領域である。IgG4ヒンジは、アミノ酸置換S241
Pによって安定化され得る(参照により本明細書に具体的に組み込まれる、Angal
et al.(1993)Mol.Immunol.30(1):105-108を参照
のこと)。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、CD47への結合についてHu5F9-
G4と競合する。いくつかの実施形態では、抗CD47は、Hu5F9-G4と同じCD
47エピトープに結合する。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、抗CD47抗体Hu5F9-G4
の投与を含む。この抗体は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる、米国特許第9
,623,079号に記載されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法
は、Hu5F9-G4の配列と少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%
または100%同一の配列(軽鎖、重鎖及び/またはCDR)を有する抗CD47抗体の
投与を含む。表1に、Hu5F9-G4抗体の重鎖及び軽鎖の配列を含む。CDR領域は
太字で示されている。
【0088】
【0089】
PD-L1抗体
本明細書に記載の方法は、抗PD-L1抗体の投与を含む。
【0090】
PD-L1(プログラム死リガンド1)は、PD1のリガンドである。PD-L1とP
D1の両方が、免疫チェックポイントタンパク質の例である。免疫チェックポイントタン
パク質とは、特に本発明の方法における腫瘍細胞に対する標的細胞に対する免疫応答性を
低下させるように作用する免疫抑制分子である。T細胞による腫瘍への内因性応答は、免
疫チェックポイント(免疫抑制タンパク質)を活性化し、共刺激受容体(免疫活性化タン
パク質)を阻害する腫瘍細胞によって、調節不全になる場合がある。当該技術分野で「免
疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる治療剤のクラスは、阻害シグナルのアンタゴニス
トを投与することにより、免疫応答の阻害を逆転させる。他の免疫療法は、免疫共刺激分
子のアゴニストを投与して応答性を高める。
【0091】
2つの免疫チェックポイントタンパク質は、PD1及びPD-L1である。PD1の主
な役割は、感染に対する炎症反応時に末梢組織のT細胞の活動を制限すること、及び自己
免疫を制限することである。T細胞が活性化されると、PD1の発現が誘導される。その
リガンドの1つが関与すると、PD1は、T細胞の活性化に関与するキナーゼを阻害する
。PD1は、TReg細胞で高度に発現しており、リガンドの存在下で増殖を促進する可
能性がある。多くの腫瘍はTReg細胞に高度に浸潤しているため、PD1経路の遮断は
、腫瘍内TReg細胞の数及び/または抑制活性を減少させることにより、抗腫瘍免疫応
答を増強し得る。
【0092】
PD1の2つのリガンドは、PD1リガンド1(PD-L1;B7-H1及びCD27
4としても知られている)及びPD-L2(B7-DC及びCD273としても知られて
いる)である。PD1リガンドは一般に、多くの異なるヒト腫瘍の腫瘍細胞表面で上方制
御されている。固形腫瘍由来の細胞では、発現する主要なPD1リガンドは、PD-L1
である。PD-L1は、癌細胞に発現し、T細胞上のその受容体PD1への結合を通して
T細胞の活性化/機能を阻害する。したがって、PD1及びPD-L1遮断剤は、この抑
制的シグナル伝達を克服し、抗腫瘍T細胞機能を維持または回復し得る。抗CD47剤は
、特定の抗腫瘍T細胞応答を刺激し得る(Anti-CD47 antibody-me
diated phagocytosis of cancer by macroph
ages primes an effective antitumor T-cel
l response;Tseng et al.,Proc Natl Acad S
ci U S A.2013 Jul 2;110(27):11103-8)。
【0093】
PD-L1は、癌細胞上で発現され、T細胞上のその受容体PD1への結合を通じて、
T細胞の活性化/機能を阻害する。したがって、PD1及びPD-L1遮断剤は、この抑
制的シグナル伝達を克服し、抗腫瘍T細胞機能を維持または回復し得る。しかし、PD-
L1は、腫瘍細胞で発現するため、PD-L1を結合及び遮断する抗体は、腫瘍細胞のA
DCP、ADCC、及びCDCも可能にし得る。抗CD47剤は、標的化モノクローナル
抗体と相乗作用し、ADCP及びADCCを刺激する効力を増強し得る(抗CD47抗体
は、リツキシマブと相乗作用して、食作用を促進し、非ホジキンリンパ腫を根絶する、C
hao et al.,Cell.2010 Sep 3;142(5):699-71
3。)したがって、抗PD-L1剤と抗CD47剤の組み合わせは、抗腫瘍効力を増強し
得る。これらの薬剤は、一緒に投与されてもよい(同じ処置経過にわたって、必ずしも同
じ日及び頻度である必要はない)。
【0094】
PD-L1に対する現在の臨床使用における抗体としては、アテゾリズマブ、デュルバ
ルマブ、及びアベルマブが挙げられる。アベルマブは、白金含有化学療法の間もしくは白
金含有化学療法の後、またはネオアジュバントもしくはアジュバントの白金含有化学療法
を受けてから12か月以内に疾患が進行する局所進行性または転移性尿路上皮癌患者の治
療のために米国で承認された活性Fc構成要素(Boyerinas、2015)を含む
ヒトプログラム死リガンド1(PD-L1)遮断抗体である。成人及び小児の転移性メル
ケル細胞がんの12歳以上の患者への使用も承認されている。アベルマブは、T細胞が誘
導する抗腫瘍応答につながる適応免疫応答のPD-L1/PD-1媒介阻害をブロックす
る。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、抗PD-L1抗体、例えば、
アベルマブの投与を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、アベルマ
ブの配列と少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一
である配列(軽鎖、重鎖及び/またはCDR)を有する抗PD-L1抗体の投与を含む。
表2は、アベルマブ抗体の重鎖及び軽鎖の配列を含む。
【0096】
【0097】
投薬量
本明細書に記載の方法は、治療上有効な用量の組成物、すなわち、治療上有効な用量の
抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体のいずれかの投与を含む。
【0098】
上記のように、組成物は、標的細胞を実質的に除去するのに十分な量で患者に投与され
る。これを達成するのに十分な量は、「治療上有効な用量」と定義され、これにより、全
生存率の改善がもたらされ得る。組成物の単回投与または複数回投与は、必要に応じ、か
つ患者が許容する用量及び頻度に応じて投与されてもよい。処置に必要な特定の用量は、
哺乳動物の病状及び病歴、ならびに年齢、体重、性別、投与経路、効率などの他の要因に
依存する。
【0099】
がんの治療のための本発明の併用薬剤の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理
学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬物療法、及び治療が予防
的であるかまたは治療的であるかを含む多くの異なる要因に応じて異なる。通常、患者は
ヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどのようなコンパニオンア
ニマル、ウサギ、マウス、ラットなどのような実験用哺乳動物なども治療されてもよい。
安全性と有効性を最適化するために、治療用量を漸増してもよい。
【0100】
抗CD47抗体の治療上有効な用量は、使用される特定の薬剤に依存し得るが、通常、
約20mg/kg体重以上(例えば、約20mg/kg以上、約25mg/kg以上、約
30mg/kg以上、約35mg/kg以上、約40mg/kg以上、約45mg/kg
以上、約50mg/kg以上、または約55mg/kg以上、または約60mg/kg以
上、または約65mg/kg以上、または約70mg/kg以上)、または約20mg/
kg~約70mg/kg(例えば、約20mg/kg~約67.5mg/kg、または約
20mg/kg~約60mg/kg)である。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体の治療上有効な用量は、20、30、45、
60、または67.5mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体の治
療上有効な用量は、20~60mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗CD47
抗体の治療上有効な用量は、20~67.5mg/kgである。
【0102】
抗PD-L1抗体の治療上有効な用量は、使用される特定の抗体に依存し得るが、通常
、約10mg/kg体重以上(例えば、約10mg/kg以上、約15mg/kg以上、
約20mg/kg以上、約25mg/kg以上、約30mg/kg以上、約35mg/k
g以上、約40mg/kg以上、約45mg/kg以上、約50mg/kg以上、または
約55mg/kg以上、または約60mg/kg以上、または約65mg/kg以上、ま
たは約70mg/kg以上)、または約10mg/kg~約70mg/kg(例えば、約
10mg/kg~約67.5mg/kg、または約10mg/kg~約60mg/kg)
である。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の治療上有効な量は10mg/kgである
。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、14日ごとに投与される。いくつかの
実施形態では、抗PD-L1抗体は、初回刺激用量の7日後及びその後14日ごとに投与
される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、初回刺激用量と同じ日に、及び
その後14日ごとに投与される。
【0104】
投与される組成物の特定の血清レベルを達成及び/または維持するために必要とされる
用量は、用量間の時間の量に比例し、投与される用量の回数に反比例する。したがって、
投薬の頻度が増大するにつれて、必要な用量は減少する。投薬戦略の最適化は、当業者に
よって容易に理解され、実施されるであろう。例示的な処置計画は、2週間に1回または
月に1回または3~6ヶ月ごとに1回の投与を必要とする。本発明の治療実体は、通常、
複数の機会に投与される。単回投与の間隔は、毎週であっても、毎月であっても、または
毎年であってもよい。患者の治療実体の血中濃度を測定することによって示されるように
、間隔はまた不規則であってもよい。あるいは、本発明の治療実体は、徐放性製剤として
投与されてもよく、その場合、より少ない頻度の投与が必要とされる。投与量及び頻度は
、患者のポリペプチドの半減期によって変化する。
【0105】
「維持用量」は、治療上有効な用量であることを意図した用量である。例えば、治療上
有効な用量を決定するための実験では、複数の異なる維持用量が異なる対象に投与されて
もよい。このように、維持用量のいくつかは治療上有効な用量であってもよく、他の維持
用量は治療量未満の用量であってもよい。
【0106】
予防的適用では、比較的低用量が長期間にわたって比較的まれな間隔で投与されてもよ
い。一部の患者は、一生涯処置を受け続ける。他の治療用途では、疾患の進行が軽減また
は終了するまで、及び好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで
、比較的短い間隔で比較的高い投与量が必要になることもある。その後、患者は予防レジ
メンを施されてもよい。
【0107】
さらに他の実施形態では、本発明の方法は、癌腫、血液癌、黒色腫、肉腫、神経膠腫な
どのがんの腫瘍成長、腫瘍転移、または腫瘍浸潤を処置、低減または防止することを含む
。予防的適用のために、薬学的組成物または医薬品は、疾患にかかりやすいか、そうでな
ければ疾患のリスクがある患者に対して、その疾患、例としてはその疾患の生化学的、組
織学的、及び/または行動的症状、その合併症及びその疾患の発症中に現れる中間的な病
理学的表現型のリスクを排除または軽減するか、重症度を軽減するか、または疾患の発症
を遅らせるのに十分な量で投与される。
【0108】
本明細書に記載の組み合わせた薬剤の毒性は、細胞培養または実験動物における標準的
な製薬手順により、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)またはLD
100(集団の100%に対して致死的な用量)を決定することにより決定され得る。毒
性と治療効果の間の用量比が治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物の研究
から得られたデータは、ヒトでの使用に毒性のない投与量範囲の策定に使用され得る。本
明細書に記載されているタンパク質の投与量は、毒性がほとんどないか全くない有効用量
を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投薬量は、使用される剤形及び利用され
る投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。正確な処方、投与経路及び投薬量は、患
者の状態を考慮して個々の医師が選択し得る。
【0109】
プライミング剤及び初回刺激用量
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、治療上有効な用量の抗CD47抗体
及び抗PD-L1抗体を個体に投与する前に、プライミング剤を投与する。適切なプライ
ミング剤は、赤血球新生刺激剤(ESA)、及び/または抗CD47抗体の初回刺激用量
を含む。プライミング剤の投与後、網状赤血球産生の増大に有効な期間を与えた後、治療
用量の抗CD47抗体が投与される。投与は、参照により本明細書に具体的に組み込まれ
る米国特許第9,623,079号に記載されている方法に従って行ってもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明の薬剤の組み合わせの投与は、患者のヘマトクリット
を増大させる薬剤、例えばエリスロポエチン刺激剤(ESA)の有効用量と組み合わされ
る。そのような薬剤は、例えば、アラネスプ(Aranesp)(登録商標)(ダルベポ
エチンアルファ)、エポジェン(Epogen)(登録商標)NF/プロクリット(Pr
ocrit)(登録商標)NF(エポエチンアルファ)、オモンチス(Omontys)
(登録商標)(ペジネサチド)、プロクリット(Procrit)(登録商標)などを含
めて、当技術分野で公知であり、使用されている。
【0111】
「初回刺激用量」という用語は、本明細書で使用される場合、治療上有効な用量がRB
Cの深刻な喪失(ヘマトクリットの低下またはヘモグロビンの低下)をもたらさないよう
に、治療上有効な用量の抗CD47抗体の投与のために対象を初回刺激する抗CD47抗
体の用量を指す。抗CD47抗体の特定の適切な初回刺激用量は、使用される抗体の性質
及び多数の対象特異的因子(例えば、年齢、体重など)に応じて変化し得る。抗CD47
抗体の適切な初回刺激用量の例としては、約0.5mg/kg~約5mg/kg、約0.
5mg/kg~約4mg/kg、約0.5mg/kg~約3mg/kg、約1mg/kg
~約5mg/kg、約1mg/kg~約4mg/kg、約1mg/kg~約3mg/kg
、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg
が挙げられる。いくつかの実施形態では、初回刺激用量は、好ましくは1mg/kgであ
る。
【0112】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、約0.5~約5
mg/kgの抗体の範囲、任意で1mg/kgの抗体の初回刺激用量として対象に投与さ
れる。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、約20~約67.5mg/kgの抗
体の範囲、任意で20mg/kgの抗体、30mg/kgの抗体、45mg/kgの抗体
、60mg/kgの抗体、または67.5mg/kgの抗体の用量として対象に投与され
る。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態において、プライミング剤は、治療上有効な用量の抗CD
47抗体を個体に投与する前に投与される。適切なプライミング剤としては、赤血球新生
刺激剤(ESA)、及び/または初回刺激用量の抗CD47抗体が挙げられる。プライミ
ング剤の投与、及び網状赤血球産生の増大に有効な期間を与えた後、治療用量の抗CD4
7抗体が投与される。治療用量は、いくつかの異なる方法で投与されてもよい。いくつか
の実施形態では、プライミング抗体が投与された後、2つ以上の治療上有効な用量が投与
される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量の抗CD47抗体は、漸増濃度の2
回以上の用量として投与され、用量は同等である場合もある。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態では、Hu-5F9G4の有効初回刺激用量が提供され、
ここで、ヒトの有効初回刺激用量は、約1mg/kg、例えば、少なくとも約0.5mg
/kg~最大で約5mg/kgまで;少なくとも約0.75mg/kg~最大で約1.2
5mg/kgまで;少なくとも約0.95mg/kg~最大で約1.05mg/kgまで
であり;及び約1mg/kgであり得る。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態では、抗CD47抗体の初期用量は、少なくとも約2時間
、少なくとも約2.5時間、少なくとも約3時間、少なくとも約3.5時間、少なくとも
約4時間、少なくとも約4.5時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間以上とい
う期間にわたって注入される。いくつかの実施形態では、初期用量は、約2.5時間~約
6時間の期間にわたって;例えば、約3時間~約4時間注入される。いくつかのそのよう
な実施形態では、注入剤中の抗体の用量は、約0.05mg/ml~約0.5mg/ml
;例えば、約0.1mg/ml~約0.25mg/mlである。
【0116】
いくつかの実施形態では、初回刺激用量は、当技術分野で公知であるように、注射、パ
ッチ、浸透圧ポンプなどによって、皮下経路を介して送達されてもよい。
【0117】
プライミング抗体の投与、及び網状赤血球産生の増大に有効な期間を可能にした後、治
療用量の抗CD47抗体が投与される。治療用量は、いくつかの異なる方法で投与されて
もよい。いくつかの実施形態では、プライミング剤が投与された後に、2回以上の治療上
有効な用量が投与される(例えば、毎週の投薬スケジュールで)。いくつかの実施形態で
は、治療上有効な用量の抗CD47抗体は、漸増濃度の2回以上の用量として投与され、
用量は同等である場合もある。
【0118】
他の実施形態では、CD47結合抗体の初期用量、例えば、初回刺激用量は、連続注入
、例えば浸透圧ポンプ、送達パッチなどとして、投与され、この用量は少なくとも約6時
間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも約2日、少なくとも約3
日の期間にわたって投与される。多くのそのようなシステムが当技術分野で公知である。
例えば、DUROS技術は、ピストンで分離された2コンパートメントシステムを提供す
る。コンパートメントの1つは、過剰な固体NaClで特別に調合された浸透圧エンジン
で構成されており、その結果、配送期間全体を通して存在し続け、浸透圧勾配が一定にな
る。それはまた、水が浸透エンジンに引き込まれ、組織の水と浸透エンジンとの間に大き
くかつ一定の浸透勾配を確立する、一方の端の半透膜でも構成される。他の区画は、浸透
圧勾配に起因して薬物が放出される開口部を備えた薬物溶液からなる。これは、ヒトに埋
め込まれたときに、部位特異的及び全身的な薬物送達を提供するのに役立つ。好ましい移
植部位は、上腕の内側の皮下留置である。
【0119】
プライミング剤の投与、及び網状赤血球産生の増大に有効な期間を与えた後、治療用量
の抗CD47抗体が投与される。治療用量は、多数の異なる方法で投与されてもよい。い
くつかの実施形態では、プライミング剤が投与された後に、2回以上の治療上有効な用量
が投与される(例えば、毎週の投薬スケジュールで)。いくつかの実施形態では、抗CD
47抗体の治療上有効な用量は、漸増濃度の2回以上の用量として投与され、用量は同等
である場合もある。プライミング投与後の赤血球凝集は減少するので、注入時間を延長す
る必要はない。
【0120】
投与
本明細書に記載の方法では、組成物、例えば、抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体が
対象に投与される。組成物は、非経口、局所、静脈内、腹腔内、腫瘍内、経口、皮下、動
脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内または筋肉内の手段によって投与されてもよい。典型的な
投与経路は、静脈内または腫瘍内であるが、他の経路も同様に効果的であり得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗体は、腹腔内投
与される。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗体は、
静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び/または抗PD-L1
抗体は、腫瘍内投与される。一実施形態では、抗CD47抗体の初回刺激用量が投与され
、初回刺激用量が皮下送達される。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び抗PD
-L1抗体は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体及び抗PD
-L1抗体は順次投与される。
【0122】
活性剤は、宿主内のがん細胞の枯渇に対して相加効果または相乗効果を生み出すために
、ある期間内に投与される。投与方法としては、限定するものではないが、全身投与、腫
瘍内投与などが挙げられる。通常、抗CD47抗体は、約45日、約30日、約21日、
約14日、約10日、約8日、約7日、約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、約1
日、または抗PD-L1抗体と実質的に同じ日という期間内に投与される。いくつかの実
施形態では、抗CD47抗体は、抗PD-L1抗体の前に投与される。いくつかの実施形
態では、抗CD47抗体は、抗PD-L1抗体の後に投与される。両方の薬剤の血清レベ
ルが同時に治療レベルになるような投与スケジュールである場合、薬剤は組み合わされて
いると考えてもよい。がん細胞集団の枯渇のために、必要に応じて投与を繰り返してもよ
い。
【0123】
薬学的組成物
本明細書に記載の方法は、抗CD47抗体及び/または抗PD-L1抗体を含む薬学的
組成物の投与を含む。
【0124】
典型的には、組成物は、注射剤として、液体溶液または懸濁液として調製される;注射
前に液体ビヒクルの中の溶液として、または懸濁液に適した固体形態も調製されてもよい
。調製物はまた、上記で考察したように、増強されたアジュバント効果のために、ポリラ
クチド、ポリグリコリド、またはコポリマーなどのリポソームまたは微粒子に乳化しても
よいし、またはカプセル化してもよい。Langer,Science 249:152
7,1990及びHanes,Advanced Drug Delivery Rev
iews 28:97-119,1997。本発明の薬剤は、有効成分の持続的またはパ
ルス的な放出を可能にするための様式で処方され得るデポ注射またはインプラント調製物
の形態で投与されてもよい。薬学的組成物は、一般に、無菌で、実質的に等張であり、米
国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration
)の全ての適正製造基準(GMP)規制に完全に準拠して製剤化されている。
【0125】
薬学的組成物は、投与方法に応じて、様々な単位剤形で投与されてもよい。例えば、経
口投与に適した単位剤形としては、限定するものではないが、粉末、錠剤、丸薬、カプセ
ル及びロゼンジが挙げられる。本発明の組成物は、経口投与される場合、消化から保護さ
れるはずであることが認識されている。これは通常、分子を組成物と複合体化して、酸性
及び酵素的加水分解に対して耐性にするか、または分子をリポソームもしくは保護バリア
などの適切な耐性担体にパッケージすることによって達成される。消化から薬剤を保護す
る手段は、当技術分野で周知である。
【0126】
投与用の組成物は、通常、薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体に溶解された
抗体または他の切断剤を含む。様々な水性担体、例えば、緩衝生理食塩水などを使用して
もよい。これらの溶液は無菌であり、一般に望ましくない物質は含まない。これらの組成
物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。組成物は、pH調整及び緩衝剤、毒
性調整剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム
、乳酸ナトリウムなどの近似の生理学的条件に必要な薬学的に許容される補助物質を含ん
でもよい。これらの製剤中の活性剤の濃度は、幅広く変動する可能性があり、主に、選択
された特定の投与方法及び患者のニーズに従って、流体容量、粘度、体重などに基づいて
選択される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sci
ence(15th ed.,1980)及びGoodman & Gillman,T
he Pharmacological Basis of Therapeutics
(Hardman et al.,eds.,1996))。
【0127】
「薬学的に許容される賦形剤」とは、一般的に安全で非毒性であり、望ましい薬学的組
成物の調製に有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用ならびにヒトの医薬的使用に許容され
る賦形剤を含む。このような賦形剤は、固体、液体、半固体であっても、またはエアロゾ
ル組成物の場合は気体であってもよい。
【0128】
「薬学的に許容される塩及びエステル」とは、薬学的に許容され、所望の薬理学的特性
を有する塩及びエステルを意味する。そのような塩としては、化合物中に存在する酸性プ
ロトンが無機または有機塩基と反応され得る場合に形成され得る塩が挙げられる。適切な
無機塩としては、アルカリ金属、例えば、ナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カル
シウム、アルミニウムで形成された塩が挙げられる。適切な有機塩としては、アミン塩基
、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン
、Nメチルグルカミンなどの有機塩基で形成された塩が挙げられる。そのような塩として
はまた、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、
マレイン酸、ならびにアルカンスルホン酸及びアレーンスルホン酸、例えば、メタンスル
ホン酸及びベンゼンスルホン酸)で形成される酸付加塩も含まれる。薬学的に許容される
エステルとしては、化合物中に存在するカルボキシ、スルホニルオキシ、及びホスホノキ
シ基から形成されるエステル、例えば、C1-6アルキルエステルが挙げられる。2つの
酸性基が存在する場合、薬学的に許容される塩またはエステルは、一酸一塩もしくはエス
テルであっても、または二塩もしくはエステルであってもよく;同様に、2つを超える酸
性基が存在する場合、そのような基の一部または全てを塩化しても、またはエステル化し
てもよい。本発明で命名された化合物は、非塩化もしくは非エステル化形態で存在しても
よいし、または塩化及び/もしくはエステル化形態で存在してもよく、そのような化合物
の命名は、元の(非塩化及び非エステル化)化合物及びその薬学的に許容される塩及びエ
ステルの両方を含むことが意図される。また、本発明で命名された特定の化合物は、2つ
以上の立体異性体で存在する場合があり、そのような化合物の命名は、そのような立体異
性体の全ての単一の立体異性体及び全ての混合物(ラセミであっても、それ以外であって
も)を含むことを意図する。
【0129】
用語「薬学的に許容される」、「生理学的に許容される」及びそれらの文法的変化形は
、組成物、担体、希釈剤及び試薬を指す場合、互換的に使用され、組成物の投与を妨げる
程度の望ましくない生理学的効果を生じることなく、その物質がヒトにまたはヒト上に投
与され得ることを表す。
【0130】
キット
また、本明細書には、活性薬剤、例えば、抗CD47抗体及び抗PD-L1抗体、及び
その製剤、ならびに使用説明書を含むキットが記載されている。このキットは、少なくと
も1つの追加の試薬、例えば、化学療法薬物、ESAなどをさらに含んでもよい。キット
には、通常、キットの内容の使用目的を示すラベルが含まれている。ラベルという用語に
は、キット上またはキットとともに提供される、またはキットに別の方法で付随する、任
意の書面または記録された資料が含まれる。
【0131】
配列
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、本明細書に記載される配列;
例えば、本明細書に記載の重鎖、軽鎖、及び/またはCDR配列を有する抗体の投与を含
む。投与される抗体の配列は、本明細書に記載される配列と例えば、少なくとも95、9
6、97、98、99、または100%同一であり得る。
【0132】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一性」パーセントという用
語は、以下に記載されている配列比較アルゴリズムの1つを使用して(例えば、BLAS
TP及びBLASTNまたは当業者が利用できるその他のアルゴリズム)、または目視検
査によって測定された、比較され、かつ最大対応に合わせてアラインメントされた場合、
ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定の割合が同じである2つ以上の配列または部分配
列を指す。用途に応じて、「同一性」パーセントは、比較される配列の領域にわたって、
例えば、機能ドメインにわたって存在してもよく、または、比較されるべき2つの配列の
全長にわたって存在してもよい。
【0133】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として
機能する。シーケンス比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピ
ューターに入力し、任意でサブ配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメ
ーターを指定する。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメーター
に基づいて、参照配列に対する試験配列(複数可)の配列同一性のパーセントを計算する
。
【0134】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterm
an,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム
によって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:44
3(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & L
ipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(19
88)の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行
によって(Wisconsin Genetics Software Package
,Genetics Computer Group,575 Science Dr.
、Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA
)、または目視検査によって(一般には下記のAusubel et al.,を参照の
こと)行われ得る。
【0135】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの一例は、B
LASTアルゴリズムであり、これは、Altschul et al.,J.Mol.
Biol.215:403-410(1990)に記載されている。BLAST分析を実
行するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National
Center for Biotechnology Information)(w
ww.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公開されている。
【実施例0136】
実施例1
インビトロ相乗作用実験
ADCCアッセイは、マウスまたはヒトNK細胞(エフェクター)及びマウスまたはヒ
トがん細胞(標的細胞)を使用して行われる。マウスNK細胞は、末梢血、骨髄、または
脾臓から分離される;ヒトNK細胞は末梢血から分離される。ヒトがん細胞株または一次
サンプルを、標的細胞として使用するために標識する(例えば、クロムまたは蛍光色素で
)。
【0137】
NK細胞及びがん細胞を、インビトロで組み合わせ、以下の処理によって共培養する:
●ビヒクル対照(例えば、PBS)
●抗PD-L1抗体のみ(アベルマブを含む)
●抗CD47抗体のみ
●抗CD47抗体に加えて抗PD-L1抗体
ADCCは、クロム放出アッセイまたはフローサイトメトリー細胞死アッセイ(例えば
、Annexin V/DAPI染色)を介して測定される。NK細胞サイトカイン(例
えば、IFN-ガンマ)の放出はELISAで測定される。抗CD47と組み合わせたチ
ェックポイント阻害剤の存在下での細胞死及びサイトカイン放出の変化は、上記の単剤療
法と比較して決定される。
【0138】
実施例2
インビボ(生体内)実験プロトコール
がん細胞を、皮下、後腹膜、または末梢血注射を介してマウスに注射し、生着すること
を可能にする。動物は4つの処置群に無作為に分ける。
●ビヒクル対照(例えば、PBS)
●抗PD-L1抗体のみ(アベルマブを含む)
●抗CD47抗体のみ
●抗CD47抗体に加えて抗PD-L1抗体
【0139】
マウスは、毎日、週に3回、週に2回、または週に1回、それぞれの処置で処置する。
腫瘍負荷量は、腫瘍体積の測定、標識された癌細胞(例えばルシフェラーゼ陽性細胞)を
使用した生物発光、及び/または末梢血の分析によって測定する。マウスの全生存率も測
定する。
【0140】
実施例3
卵巣癌における抗CD47抗体と組み合わせたアベルマブの研究
これは、以前の白金化学療法から6か月以内に進行した、固形腫瘍患者及びチェックポ
イントナイーブの卵巣癌、卵管癌、及び原発性腹膜癌患者におけるCD47遮断と組み合
わせたアベルマブ(MSB0010718C)の安全性、薬物動態、薬力学、及び抗腫瘍
活性を評価するための用量最適化研究である。主な目的は、限られた一連の適応症におい
て、CD47遮断とのさまざまな組み合わせの安全性と有効性を評価し、必要に応じて投
与計画を最適化することである。最初に、この研究では、抗PD-L1モノクローナル抗
体(mAb)であるアベルマブの安全性と抗腫瘍活性を、CD47とSIRPalpha
との間の相互作用をブロックするヒト化抗体である5F9-G4と組み合わせて評価する
。二次的な目的としては、固形腫瘍患者におけるHu5F9-G4+アベルマブの推奨用
量の決定、アベルマブと組み合わせたHu5F9-G4の薬物動態(PK)及び薬力学的
(PD)プロファイルの調査、アベルマブと組み合わせたHu5F9-G4の免疫原性の
評価、ならびに白金耐性卵巣癌患者の逐次的腫瘍生検で評価される腫瘍微小環境の骨髄細
胞集団に対するこの組み合わせの影響を評価することが含まれる。
【0141】
主要な客観的測定:用量制限毒性(DLT)を有する参加者の数は、Hu5F9-G4
の初回の初回刺激用量から始めて、処置の最初の5週間監視される。最初のサイクルの期
間は5週間で、その後のサイクルは4週間ごとである。最初の腫瘍反応評価は、処置の第
10週の直前(サイクル3の前)に行い、その後、処置の8週間ごと(2サイクルごと)
に行う。全ての毒性は、NCI CTCAE Version 4.03に従って等級付
けされる。DLTは、4週間のDLT観察期間中に発生する研究の処置に関連すると評価
されるグレード3以上のAEとして定義される。
【0142】
二次的客観的測定:卵巣癌コホートでは、スクリーニング中のベースライン時及びサイ
クル2(±2週間)の終了後の全ての患者において医学的に実行可能な腫瘍生検が得られ
る。腫瘍生検は、安全慣らし患者にとっての選択肢である。スクリーニングは、治験薬の
最初の投与の30日前まで続き、その間に患者の適格性及びベースラインの特性が決定さ
れる。有効性はiRECIST基準を使用して評価される。治験薬による処置は、薬物に
関連した許容できない毒性が発生するまで、またはiRECISTによる疾患の進行が見
られるまで継続され得る。最初の疾患の進行を経験した患者は、以下の条件が全て満たさ
れている場合、iRECISTによって進行性疾患であると見なされるまで研究を続け得
る:それらの腫瘍からの症状悪化がない、研究処置に関連する許容不能な毒性も不可逆的
な毒性もない、臨床的悪化またはパフォーマンス状態の低下の証拠がない、及び腫瘍の成
長から生じる差し迫った生命を脅かす合併症がない。処置後、患者は死亡、同意の撤回、
または研究の終了のいずれか早い方まで生存を観察する。
【0143】
【0144】
実施例4
T細胞アッセイ
抗原提示アッセイ。インビトロの抗原提示アッセイでは、104個のマクロファージを
、同数のDLD1-cOVA-GFPがん細胞と無血清RPMI培地中で一晩共培養する
。翌日、等容積のRPMI+20%FCSを培養液に添加する。末梢リンパ節をOT-I
またはOT-II TCRトランスジェニックマウスから採取し、0.5mMのCFSE
(Molecular Probes)で標識する。T細胞は、ビオチン化抗CD8また
は抗CD4抗体を使用して分離し、続いて抗ビオチン磁気ビーズ(Miltenyi B
iotec)で濃縮する。5×104個のT細胞を培養液に加え、3日目(OT-I T
細胞の場合)または4日目(OT-II T細胞の場合)に分析する。インビボの抗原提
示アッセイでは、2×106個のCFSE標識OT-I T細胞(CD45.2)をレシ
ピエントマウス(CD45.1)に養子移入する。マクロファージは、がん細胞との共培
養から分離し、マウスの足蹠に注入する。膝窩リンパ節は、CD45.2+細胞内のCF
SE希釈について4日目に分析される。
【0145】
インビボの細胞殺傷アッセイ。手短に言えば、C57BL/Ka(CD45.1)マウ
スの脾細胞は、10uM CFSE(CFSE-高)及び1uM CFSE(CFSE-
低)で標識されている。CFSE高脾細胞を、1μMのSIINFEKLペプチド(配列
番号5)を含む6ウェルプレート内で1時間パルスする。ivトランスファーの前に、細
胞を、1:1の比率で非ペプチドパルスCFSE-低細胞と混合する。ペプチド特異的溶
解がない場合のCFSE高/低比の変動を説明するために、対照マウスには、SIINF
EKLペプチド(配列番号5)でパルスされていないCFSE高脾細胞を与えた後に、C
FSE-低脾細胞と1:1の比率で混合して、マウスへ移入した。流出リンパ節は、16
時間後に分析する。細胞毒性パーセントは、SIINFEKLペプチドでパルスされてい
ない脾細胞を投与された対照マウスの比率に正規化した(1-%CFSE高/%CFSE
低)として計算した(配列番号5)。
【0146】
腫瘍チャレンジ。1×106個のCD8に富むOT-I T細胞を、レシピエントのC
57BL/Kaマウスに養子移入する。同系のC57BL/Kaマウス由来のマクロファ
ージを、DLD1-cOVA-GFPがんと共培養し、次いで、磁気濃縮により分離し、
マウスの足蹠に注入する。腫瘍細胞株E.G7(ニワトリOVA cDNAを発現するE
L.4細胞)を、マウスの腫瘍チャレンジ(ATCC)に使用する。1×105個のE.
G7細胞を、通常のマトリゲルと1:1の比率で、マウスの右後肢に皮下(s.c.)注
射する。腫瘍のサイズは、微細キャリパー及び長さ*幅*高さ*π/6に基づいて計算さ
れた容積を使用して毎日測定する。
【0147】
T細胞増殖。成熟したT細胞は、抗原特異的受容体(TCR)を通じて抗原/MHC複
合体を認識して応答する。TCR活性化の最も直接的な結果は、特定のタンパク質チロシ
ンキナーゼ(PTK)の誘導、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP2
)の分解、タンパク質キナーゼC(PKC)の活性化、及び細胞内カルシウムイオン濃度
の上昇などのシグナル伝達経路の開始である。これらの初期事象は、核に伝達され、T細
胞のクローン性増殖を引き起こす;細胞表面の活性化マーカーの上方制御;エフェクター
細胞への分化;細胞毒性またはサイトカイン分泌の誘導;アポトーシスの誘導。
【0148】
T細胞活性化は、抗原またはTCRに対するアゴニスト抗体を介したT細胞のインビト
ロ刺激の際のT細胞増殖を測定することによって評価される。このプロトコールは、CD
3を介して刺激されたマウス脾臓T細胞及びヒト末梢T細胞のインビトロ増殖を調べるた
めの出発点として書かれていた。重要なパラメーターとしては、細胞密度、抗体力価、活
性化動態が挙げられる。
【0149】
無菌PBS中の抗CD3e(145-2C11)の5-10μg/mL溶液を調製する
。各実験条件に必要なウェルの数を計算し、各条件の3つのサンプルを検討する。例えば
、1/2プレート(48ウェル)をコーティングするには、2.6mLの抗体溶液が必要
である。96ウェルアッセイプレートの各ウェルに50μLの抗体溶液を分注する。刺激
されていない対照のウェルには、50μLの滅菌PBSを添加する。サンプルが蒸発しな
いように、ParafilmTMでプレートをしっかりと覆い、37℃で2時間インキュ
ベートするか、前日プレートを準備して、4℃で一晩保管する。細胞を添加する直前に、
マルチチャネルピペッターで50μLの抗体溶液を除去する。200μLの滅菌PBSで
各ウェルをリンスし、PBSを廃棄する。
【0150】
脾臓を収穫し、無菌条件下で単一細胞懸濁液を調製し、所望の薬剤、例えば抗CD47
、チェックポイント阻害剤などの存在下で完全なRPMI-1640に106/mLで再
懸濁する。200μLの細胞懸濁液を各ウェルに加え、加湿37℃、5%CO2インキュ
ベーターに入れる。2ug/mLで細胞に可溶性抗CD28を追加する。2~4日間イン
キュベートする。細胞を採取し、定量のために処理してもよい。
【0151】
本明細書で引用される各刊行物は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細
書に組み込まれる。
【0152】
本発明は、特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物種または属、及び記載された試
薬に限定されず、それ自体は変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用さ
れる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によ
ってのみ限定される本発明の範囲を限定するものではないことも理解されたい。
【0153】
本明細書で使用される場合、単数形「ある、1つの(a、an)(不定冠詞)」、及び
「この、その:the(不定冠詞)」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複
数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のそのような細胞
を含み、「培養物」への言及は、1つまたは複数の培養物及び当業者に公知のその同等物
などへの言及を含む。本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、他に明確に
示されていない限り、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているのと同じ
意味を有する。