(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141624
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20230928BHJP
B24B 37/26 20120101ALI20230928BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20230928BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20230928BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/26
B24B37/013
B24B49/12
H01L21/304 622S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048032
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】糸山 光紀
(72)【発明者】
【氏名】関谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】小池 堅一
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】山口 さつき
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA22
3C034CB03
3C034DD10
3C034DD20
3C158AA07
3C158AC02
3C158BA01
3C158BA02
3C158BA09
3C158BB02
3C158BC01
3C158BC02
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB12
3C158EB15
3C158EB29
5F057AA02
5F057AA23
5F057BA11
5F057BC01
5F057CA12
5F057DA03
5F057EB01
5F057GA12
5F057GB02
(57)【要約】
【課題】平坦性に優れる研磨パッド及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 研磨層と、該研磨層の開口に設けられた終点検出窓と、を有し、パルスNMRを用いてSolid Echo法により測定することによって得られる1Hのスピン-スピン緩和の自由誘導減衰曲線を緩和時間の短い順に、結晶相、中間相、及び非晶相の3成分に由来する3つの曲線に波形分離したとき、20℃における、前記終点検出窓の非晶相の存在比Lw20と、前記研磨層の非晶相の存在比Lp20の比(Lp20/Lw20)が、0.5~2.0であり、80℃における、前記終点検出窓の結晶相の存在比Sw80と、前記研磨層の結晶相の存在比Sp80の比(Sp80/Sw80)が、0.5~2.0である、研磨パッド。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層と、該研磨層の開口に設けられた終点検出窓と、を有し、
パルスNMRを用いてSolid Echo法により測定することによって得られる1Hのスピン-スピン緩和の自由誘導減衰曲線を緩和時間の短い順に、結晶相、中間相、及び非晶相の3成分に由来する3つの曲線に波形分離したとき、
20℃における、前記終点検出窓の非晶相の存在比Lw20と、前記研磨層の非晶相の存在比Lp20の比(Lp20/Lw20)が、0.5~2.0であり、
80℃における、前記終点検出窓の結晶相の存在比Sw80と、前記研磨層の結晶相の存在比Sp80の比(Sp80/Sw80)が、0.5~2.0である、
研磨パッド。
【請求項2】
20℃における、前記終点検出窓の中間相の存在比Mw20と、前記研磨層の中間相の存在比Mp20の比(Mp20/Mw20)が、0.7~1.5である、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
80℃における、前記終点検出窓の中間相の存在比Mw80と、前記研磨層の中間相の存在比Mp80の比(Mp80/Mw80)が、0.5~1.5である、
請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記存在比Lw20と前記存在比Lp20の差(|Lp20-Lw20|)が、10以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記存在比Sw80と前記存在比Sw80の差(|Sp80-Sw80|)が、15以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記終点検出窓が、ポリウレタン樹脂WIを含み、
前記ポリウレタン樹脂WIが、脂肪族イソシアネートに由来する構成単位を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨層が、ポリウレタン樹脂Pを含み、
前記ポリウレタン樹脂Pが、芳香族イソシアネートに由来する構成単位を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記研磨層は、前記研磨層中に分散した中空微粒子を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項9】
研磨スラリーの存在下、請求項1~8のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、
該研磨中に光学式終点検出方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する、
研磨加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド及びそれを用いた研磨加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、絶縁膜成膜後の平坦化や金属配線の形成過程で化学機械研磨(CMP)が使用される。化学機械研磨に要求される重要な技術の一つとして、研磨プロセスが完了したかどうかを検出する研磨終点検出がある。例えば、目標とする研磨終点に対する過研磨や研磨不足は製品不良に直結する。そのため、化学機械研磨では、研磨終点検出により研磨量を厳しく管理する必要がある。
【0003】
化学機械研磨は複雑なプロセスであり、研磨装置の運転状態や消耗品(スラリー、研磨パッド、ドレッサー等)の品質や研磨過程における経時的な状態のばらつきの影響によって、研磨速度(研磨レート)が変化する。さらに、近年半導体製造工程で求められる残膜厚の精度、面内均一性はますます厳しくなっている。このような事情から、十分な精度の研磨終点検出はより困難となってきている。
【0004】
研磨終点検出の主な方法としては、光学式終点検出方式、トルク終点検出方式、渦電流終点検出方式などが知られており、光学式終点検出方式では、研磨パッド上に設けた透明な窓用部材を通してウエハに光を照射し、反射光をモニタすることで終点検出を行う。
【0005】
このような光学式終点検出方式を用いる研磨パッドとしては、例えば、特許文献1には、窓用部材の溝内にスラリーが溜まるのを抑えて、研磨レートの検出精度を上げることができる研磨パッドを提供することを目的として、パッド本体と該パッド本体の一部に一体に形成された透明な窓用部材とを有する研磨パッドにおいて、窓用部材の表面をパッド本体の表面から凹んだ状態とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような窓を有する研磨パッドの製造方法の一つとして、金型に窓用部材を固定した状態で、樹脂組成物を充填し硬化させたあと、得られた硬化物をスライスしたり、その後ドレス処理をしたりする方法が挙げられる。ここで、窓用部材と樹脂組成物の硬化物は異なる材料からなるものであるためその物性は少なからず相違するが、例えば、スライスをした際に、窓部が凹んだり割れたりする恐れがある。また、ドレス処理を行う際にも、窓部と研磨層の摩耗量の相違によって、窓部が凹んだ状態となる恐れがある。
【0008】
このような凹みなどが生じると、そこにスラリーや研磨屑がたまりやすくなり、スクラッチなどを生じさせて、被研磨物の面品位を低下させる可能性がある。また、窓部の方が摩耗量が少ない場合には、研磨が進むにつれて窓部が研磨層よりも残りやすくなる結果、窓部部分が凸状となることが考えられる。このような凸状の窓部も、スクラッチなどを生じさせて、被研磨物の面品位を低下させる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スライス処理及びドレス処理時における平坦性に優れる研磨パッド及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討した。その結果、パルスNMRによる分析において、終点検出窓と研磨層が所定の関係を有することにより、上記問題点を解決しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
研磨層と、該研磨層の開口に設けられた終点検出窓と、を有し、
パルスNMRを用いてSolid Echo法により測定することによって得られる1Hのスピン-スピン緩和の自由誘導減衰曲線を緩和時間の短い順に、結晶相、中間相、及び非晶相の3成分に由来する3つの曲線に波形分離したとき、
20℃における、前記終点検出窓の非晶相の存在比Lw20と、前記研磨層の非晶相の存在比Lp20の比(Lp20/Lw20)が、0.5~2.0であり、
80℃における、前記終点検出窓の結晶相の存在比Sw80と、前記研磨層の結晶相の存在比Sp80の比(Sp80/Sw80)が、0.5~2.0である、
研磨パッド。
〔2〕
20℃における、前記終点検出窓の中間相の存在比Mw20と、前記研磨層の中間相の存在比Mp20の比(Mp20/Mw20)が、0.7~1.5である、
〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕
80℃における、前記終点検出窓の中間相の存在比Mw80と、前記研磨層の中間相の存在比Mp80の比(Mp80/Mw80)が、0.5~1.5である、
〔1〕又は〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕
前記存在比Lw20と前記存在比Lp20の差(|Lp20-Lw20|)が、10以下である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔5〕
前記存在比Sw80と前記存在比Sw80の差(|Sp80-Sw80|)が、15以下である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔6〕
前記終点検出窓が、ポリウレタン樹脂WIを含み、
前記ポリウレタン樹脂WIが、脂肪族イソシアネートに由来する構成単位を含む、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔7〕
前記研磨層が、ポリウレタン樹脂Pを含み、
前記ポリウレタン樹脂Pが、芳香族イソシアネートに由来する構成単位を含む、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔8〕
前記研磨層は、前記研磨層中に分散した中空微粒子を含む、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔9〕
研磨スラリーの存在下、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、
該研磨中に光学式終点検出方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する、
研磨加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スライス処理及びドレス処理時における平坦性に優れる研磨パッド及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の研磨パッドの概略斜視図である。
【
図2】本実施形態の研磨パッドの終点検出窓部分の概略断面図である。
【
図3】本実施形態の研磨パッドの終点検出窓部分の他の態様の概略断面図である。
【
図4】CMPに搭載する膜厚制御システムを示す概略図である。
【
図5A】スライス後ドレス前における実施例1の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
【
図5B】スライス後ドレス前における実施例1の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
【
図5C】スライス後ドレス前における比較例1の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
【
図6A】ドレス後における実施例1の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
【
図6B】ドレス後における実施例2の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
【
図6C】ドレス後における比較例1の研磨パッドの終点検出窓部分の表面状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。又上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
1.研磨パッド
本実施形態の研磨パッドは、研磨層と、該研磨層の開口に設けられた終点検出窓と、を有し、パルスNMRを用いてSolid Echo法により測定することによって得られる1Hのスピン-スピン緩和の自由誘導減衰曲線を緩和時間の短い順に、結晶相、中間相、及び非晶相の3成分に由来する3つの曲線に波形分離したとき、20℃における、前記終点検出窓の非晶相の存在比Lw20と、前記研磨層の非晶相の存在比Lp20の比(Lp20/Lw20)が、0.5~2.0であり、80℃における、前記終点検出窓の結晶相の存在比Sw80と、前記研磨層の結晶相の存在比Sp80の比(Sp80/Sw80)が、0.5~2.0である。
【0016】
これにより、スライス処理においては凸部が生じにくいという観点から平坦性を向上することができ、ドレス処理時においては終点検出窓が研磨層よりも過研磨されにくいという観点から平坦性を向上することができる。なお、本実施形態においては、これら2種の平坦性をまとめて単に「平坦性」という。
【0017】
図1に、本実施形態の研磨パッドの概略斜視図を示す。
図1に示すように、本実施形態の研磨パッド10は、ポリウレタンシートである研磨層11と、終点検出窓12と、を有し、必要に応じて、研磨面11aとは反対側に、クッション層13を有していてもよい。
【0018】
図2~3に、
図1における終点検出窓12の周辺の断面図を示す。
図2~3に示すように、研磨層11とクッション層13の間には、接着層14が設けられていてもよく、また、クッション層13の表面には、
図4のテーブル22と貼り合わせるための接着層15が設けられていてもよい。本実施形態の研磨パッドの研磨面11aは、
図2に示すように平坦の場合の他、
図3に示すように、溝16が形成された凹凸状であってもよい。溝16は複数の同心円状、格子状、放射状等の様々な形状の溝を単独又は併用して形成してもよい。
【0019】
1.1.終点検出窓
終点検出窓はポリウレタンシートの開口に設けられた透明な部材であり、光学式の終点検出において、膜厚検出センサからの光の透過路となるものである。本実施形態において、終点検出窓は円形であるが、必要に応じて、正方形、長方形、多角形、楕円形等の形状としてもよい。
【0020】
本実施形態においては、研磨パッドを製造する過程において、スライスをした場合に、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態になったり、割れたりすることや、ドレス処理を行った際に、終点検出窓が研磨層よりも凹んだ状態や突出した状態になったりすることを抑制し、平坦性を向上する観点から、終点検出窓と研磨層のパルスNMRに関するパラメータを規定する。
【0021】
1.1.1.パルスNMR
パルスNMRとは、固体NMRの一つであり、パルスに対する応答信号を検出し、試料の1H核磁気緩和時間(分子の運動性を表す指標)を求める手法である。パルスへの応答として、自由誘導減衰シグナル(free induction decay:FIDシグナル)が得られる。
【0022】
パルスNMRは、ポリマー分子鎖の系全体としての運動性を評価する分析方法であり、運動性を、樹脂組成物の緩和時間とその時のシグナル強度を測定することで評価することができる。一般に、ポリマー鎖の運動性が低いほど緩和時間は短くなるので、シグナル強度の減衰は早くなり、初期シグナル強度を100%としたときの相対シグナル強度は短い時間で低下する。また、ポリマー鎖の運動性が高いほど緩和時間は長くなるので、シグナル強度の減衰は遅くなり、初期シグナル強度を100%としたときの相対シグナル強度は長時間かけて緩やかに低下する。
【0023】
例えば、樹脂を測定すると、得られるFIDは緩和時間の異なる複数成分のFIDの和となり、これを最小二乗法を用いて分離することにより、各成分の緩和時間を検出することができる。パルスNMRのソリッドエコー法による測定により得られる所定の温度における自由誘導減衰曲線を3成分近似すると、当該測定により得られるシグナルが、そのサンプル中の、最も運動性の低い成分(結晶相)、中間の運動性の成分(中間相)及び最も運動性の高い成分(非晶相)のいずれに由来するかを分類することができ、また、それら成分の存在比を求めることができる。
【0024】
具体的には、パルスNMRのソリッドエコー法で測定される自由誘導減衰曲線を、下記式(1)を用いてフィッティングさせることにより、結晶相、中間相及び非晶相の3成分に近似することができ、当該3成分への近似により各組成分率を得ることができる。
M(t)=αexp(-(1/2)(t/Tα)2)sinbt/bt+βexp(-(1/Wa)(t/Tβ)Wa)+γexp(-t/Tγ)・・・(式1)
α:結晶相の組成分率
Tα:結晶相の緩和時間(単位:msec)
β:中間相の組成分率
Tβ:中間相の緩和時間(単位:msec)
γ:非晶相の組成分率
Tγ:非晶相の緩和時間(単位:msec)
t:観測時間(単位:msec)
Wa:形状係数
b:形状係数
【0025】
このようなパルスNMRの測定結果によれば、研磨層や終点検出窓の運動性を評価することができる。本実施形態においては、ドレス時に相当する温度20℃と、スライス時に相当する温度80℃において、研磨層や終点検出窓の運動性が近いことをパルスNMRを用いて評価する。
【0026】
具体的には、20℃における、終点検出窓の非晶相の存在比Lw20と、研磨層の非晶相の存在比Lp20の比(Lp20/Lw20)は、0.5~2.0であり、好ましくは0.6~1.7であり、より好ましくは0.7~1.5であり、さらに好ましく0.8~1.2である。比(Lp20/Lw20)が上記範囲内であることにより、ドレス時において、研磨層と終点検出窓を構成する材料のそれぞれの運動性が近いものとなる。そのため、ドレス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、ドレス処理後の平坦性がより向上する。
【0027】
また、80℃における、終点検出窓の結晶相の存在比Sw80と、研磨層の結晶相の存在比Sp80の比(Sp80/Sw80)は、0.5~2.0であり、好ましくは0.6~1.7であり、より好ましくは0.9~1.5であり、さらに好ましく1.0~1.3である。比(Sp80/Sw80)が上記範囲内であることにより、スライスにおいて、研磨層と終点検出窓を構成する材料のそれぞれの運動性が近いものとなる。そのため、スライス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、スライス処理後の平坦性がより向上する。
【0028】
20℃における、終点検出窓の中間相の存在比Mw20と、研磨層の中間相の存在比Mp20の比(Mp20/Mw20)は、好ましくは0.7~1.5であり、より好ましくは0.7~1.3であり、さらに好ましくは0.7~1.1である。比(Mp20/Mw20)が上記範囲内であることにより、ドレス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、ドレス処理後の平坦性がより向上する傾向にある。
【0029】
80℃における、終点検出窓の中間相の存在比Mw80と、研磨層の中間相の存在比Mp80の比(Mp80/Mw80)は、好ましくは0.5~1.5であり、より好ましくは0.7~1.4であり、さらに好ましくは0.8~1.3である。比(Mp80/Mw80)が上記範囲内であることにより、スライス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、スライス処理後の平坦性がより向上する傾向にある。
【0030】
存在比Lw20と存在比Lp20の差(|Lp20-Lw20|)は、好ましくは10以下であり、より好ましくは0~8.0であり、さらに好ましくは0~5.0である。差(|Lp20-Lw20|)が上記範囲内であることにより、ドレス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、ドレス処理後の平坦性がより向上する傾向にある。
【0031】
存在比Sw80と存在比Sw80の差(|Sp80-Sw80|)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは0~12であり、さらに好ましくは0~8.0である。差(|Sp80-Sw80|)が上記範囲内であることにより、スライス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、スライス処理後の平坦性がより向上する傾向にある。
【0032】
20℃における終点検出窓の結晶相の存在比Sw20は、好ましくは30~65%であり、より好ましくは35~60%であり、さらに好ましくは40~55%である。
【0033】
20℃における終点検出窓の中間相の存在比Mw20は、好ましくは15~45%であり、より好ましくは20~40%であり、さらに好ましくは25~35%である。
【0034】
20℃における終点検出窓の非晶相の存在比Lw20は、好ましくは10~40%であり、より好ましくは15~35%であり、さらに好ましくは20~30%である。
【0035】
20℃における終点検出窓の存在比Sw20、存在比Mw20、及び存在比Lw20が、それぞれ、上記範囲内であることにより、ドレス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、ドレス処理後の平坦性がより向上する傾向にある。なお、存在比Sw20、存在比Mw20、及び存在比Lw20の和は100%となる。
【0036】
80℃における終点検出窓の結晶相の存在比Sw80は、好ましくは15~50%であり、より好ましくは20~45%であり、さらに好ましくは25~40%である。
【0037】
80℃における終点検出窓の中間相の存在比Mw80は、好ましくは10~35%であり、より好ましくは15~30%であり、さらに好ましくは20~25%である。
【0038】
80℃における終点検出窓の非晶相の存在比Lw80は、好ましくは30~60%であり、より好ましくは35~55%であり、さらに好ましくは40~50%である。
【0039】
80℃における終点検出窓の存在比Sw80、存在比Mw80、及び存在比Lw80が、それぞれ、上記範囲内であることにより、スライス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、スライス処理後の平坦性がより向上する傾向にある。なお、存在比Sw80、存在比Mw80、及び存在比Lw80の和は100%となる。
【0040】
パルスNMR測定の測定条件については、特に制限されるものではないが、実施例において記載した条件により測定することができる。
【0041】
1.1.3.構成材料
終点検出窓を構成する材料は、窓として機能し得る透明な部材であれば特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂WI、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などが挙げられる。このなかでも、ポリウレタン樹脂WIが好ましい。このような樹脂を用いることにより、上記パルスNMR特性、透明性をより調整しやすく、平坦性をより向上することができる。
【0042】
ポリウレタン樹脂WIは、ポリイソシアネートとポリオールにより合成することができ、ポリイソシアネートに由来する構成単位とポリオールに由来する構成単位とを含む。
【0043】
1.1.3.1.ポリイソシアネートに由来する構成単位
ポリイソシアネートに由来する構成単位は、特に限定されないが、例えば、脂環族イソシアネートに由来する構成単位、脂肪族イソシアネートに由来する構成単位、及び芳香族イソシアネートに由来する構成単位が挙げられる。このなかでも、ポリウレタン樹脂WIは、脂環族イソシアネート及び/又は脂肪族イソシアネートに由来する構成単位を含むことが好ましく、脂肪族イソシアネートに由来する構成単位を含むことがより好ましい。これにより、パルスNMRに関する各値を上記範囲内に調整しやすく、透明性がより向上するほか、ドレス時とスライス時における平坦性をより向上することができる。
【0044】
脂環族イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
脂肪族イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0046】
芳香族イソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネー卜(MDI)が挙げられる。
【0047】
1.1.3.2.ポリオールに由来する構成単位
ポリオールに由来する構成単位としては、特に限定されないが、例えば、分子量300未満の低分子ポリオールと、分子量300以上の高分子ポリオールが挙げられる。
【0048】
低分子ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサングリコール、2,5-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の水酸基を2つ有する低分子ポリオール;グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、イソシアヌル酸、エリスリトール等の水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールが挙げられる。低分子ポリオールは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
このなかでも、水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールが好ましく、グリセリンがより好ましい。このような低分子ポリオールを用いることにより、パルスNMR特性を上記範囲内に調整しやすく、摩耗量を調整でき、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0050】
水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールに由来する構成単位の含有量は、ポリイソシアネートに由来する構成単位100質量部に対して、好ましくは8.0~30質量部であり、より好ましくは10~25質量部であり、さらに好ましくは12.5~20質量部である。水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールに由来する構成単位の含有量が上記範囲内であることにより、パルスNMR特性を上記範囲内に調整しやすく、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0051】
また、高分子ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。高分子ポリオールは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0052】
なお、高分子ポリオールの数平均分子量は、好ましくは300~3000であり、より好ましくは500~2500である。このような高分子ポリオールを用いることにより、パルスNMR特性を上記範囲内に調整しやすい傾向にある。
【0053】
このなかでも、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールがより好ましい。このような高分子ポリオールを用いることにより、パルスNMR特性を上記範囲内に調整しやすい。また、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0054】
ポリエーテルポリオールに由来する構成単位の含有量は、ポリイソシアネートに由来する構成単位100質量部に対して、好ましくは60~130質量部であり、好ましくは65~120質量部であり、より好ましくは70~110質量部である。ポリエーテルポリオールに由来する構成単位の含有量が上記範囲内であることにより、パルスNMR特性を上記範囲内に調整しやすく、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0055】
また、ポリオールとしては、低分子ポリオールと高分子ポリオールとを併用することが好ましく、水酸基を3つ以上有する低分子ポリオールとポリエーテルポリオールとを併用することがより好ましい。これにより、パルスNMR特性を上記範囲内に調整しやすい。また、平坦性をより向上することができ、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
【0056】
上記観点から、ポリエーテルポリオールの含有量は、水酸基を3つ以上有する低分子ポリオール1部に対して、好ましくは2.0~15.0部であり、より好ましくは3.0~12.5部であり、さらに好ましくは4.0~9.0部である 。
【0057】
1.2.研磨層
本実施形態の研磨層は、終点検出窓が埋設される開口を有する。開口の位置は特に制限されないが、テーブル22に設置された膜厚検出センサ23に対応する半径方向の位置に設けることが好ましい。また、開口の数は特に制限されないが、テーブル22に貼られた研磨パッド10が一回転する際に、窓が膜厚検出センサ23上を複数回通過するように、同様の半径方向の位置に複数個有することが好ましい。
【0058】
研磨層の態様としては、特に制限されないが、例えば、樹脂の発泡成形体、無発泡成形体、繊維基材に樹脂を含浸した樹脂含侵基材などが挙げられる。
【0059】
ここで、樹脂の発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される発泡体をいう。発泡形状は、特に制限されないが、例えば、球状気泡、略球状気泡、涙型気泡、あるいは、各気泡が部分的に連結した連続気泡などが挙げられる。
【0060】
また、樹脂の無発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される無発泡体をいう。無発泡体とは、上記のような気泡を有しないものをいう。第1実施形態においては、フィルムなどの基材の上に、硬化性組成物を付着させて硬化させたようなものも樹脂の無発泡成形体に含まれる。より具体的には、ラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等により形成された樹脂硬化物も樹脂の無発泡成形体に含まれる。
【0061】
さらに、樹脂含侵基材とは、繊維基材に樹脂を含浸させて得られるものをいう。ここで、繊維基材としては、特に制限されないが、例えば、織布、不織布、編地などが挙げられる。
【0062】
1.2.1.パルスNMR
研磨層の結晶相の存在比Sp20は、好ましくは40~65%であり、好ましくは45~60%であり、好ましくは50~55%である。
【0063】
研磨層の中間相の存在比Mp20は、好ましくは10~40%であり、好ましくは15~35%であり、好ましくは20~30%である。
【0064】
研磨層の非晶相の存在比Lp20は、好ましくは10~35%であり、好ましくは15~30%であり、好ましくは20~25%である。
【0065】
20℃における終点検出窓の存在比Sp20、存在比Mp20、及び存在比Lp20が、それぞれ、上記範囲内であることにより、ドレス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、ドレス処理後の平坦性がより向上する傾向にある。なお、存在比Sp20、存在比Mp20、及び存在比Lp20の和は100%となる。
【0066】
研磨層の結晶相の存在比Sp80は、好ましくは25~50%であり、好ましくは30~45%であり、好ましくは35~40%である。
【0067】
研磨層の中間相の存在比Mp80は、好ましくは10~40%であり、好ましくは15~35%であり、好ましくは20~30%である。
【0068】
研磨層の非晶相の存在比Lp80は、好ましくは25~50%であり、好ましくは30~45%であり、好ましくは35~40%である。
【0069】
80℃における終点検出窓の存在比Sp80、存在比Mp80、及び存在比Lp80が、それぞれ、上記範囲内であることにより、スライス処理において研磨層と終点検出窓を均質に処理することができ、スライス処理後の平坦性がより向上する傾向にある。なお、存在比Sp80、存在比Mp80、及び存在比Lp80の和は100%となる。
【0070】
パルスNMR測定の測定条件については、特に制限されるものではないが、実施例において記載した条件により測定することができる。
【0071】
1.2.2.ポリウレタンシート
以下においては、研磨層の一例としてポリウレタンシートを例示する。ポリウレタンシートを構成するポリウレタン樹脂Pとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
このようなポリウレタン樹脂Pとしては、ポリイソシアネートとポリオールにより合成することができ、特には、ウレタンプレポリマーと硬化剤との反応物が好ましい。ここで、ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールにより合成することができる。以下、ポリウレタン樹脂Pを構成するポリイソシアネート、ポリオール、及び硬化剤について記載する。
【0073】
1.2.2.1.ポリイソシアネートに由来する構成単位
ポリイソシアネートに由来する構成単位は、特に限定されないが、例えば、脂環族イソシアネートに由来する構成単位、脂肪族イソシアネートに由来する構成単位、及び芳香族イソシアネートに由来する構成単位が挙げられる。このなかでも、芳香族イソシアネートが好ましく、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)がより好ましい。
【0074】
脂環族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び芳香族イソシアネートとしては、上記終点検出窓において例示したものと同様ものを例示することができる。
【0075】
1.2.2.2.ポリオールに由来する構成単位
ポリオールに由来する構成単位としては、特に限定されないが、例えば、分子量300未満の低分子ポリオールと、分子量300以上の高分子ポリオールが挙げられる。このなかでも、少なくとも低分子ポリオールを用いることが好ましく、低分子ポリオールと高分子ポリオールとを併用すること好ましい。
【0076】
低分子ポリオール及び高分子ポリオールとしては、上記終点検出窓において例示したものと同様ものを例示することができる。このなかでも、低分子ポリオールとしては、水酸基を2つ有する低分子ポリオールが好ましく、ジエチレングリコールがより好ましい。また、高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールがより好ましい。
【0077】
1.2.2.3.硬化剤
硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミンとポリオールが挙げられる。硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0078】
ポリアミンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの脂環族ポリアミン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4-メチル-2,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0079】
このなかでも、芳香族ポリアミンが好ましく、3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を用いることがより好ましい。
【0080】
ポリオールとしては、上記終点検出窓において例示したポリオールと同様ものを例示することができる。このなかでも、高分子ポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオールがより好ましく、ポリプロピレングリコールがさらに好ましい。
【0081】
1.2.2.4.中空微粒子
上記研磨層は、該研磨層中に分散した中空微粒子を含むことが好ましい。具体的には、上記ポリウレタンシートは、ポリウレタン樹脂Pと、該ポリウレタン樹脂P中に分散した中空微粒子とを含む発泡ポリウレタンシートであることが好ましい。このようなポリウレタンシートは中空微粒子に由来する独立気泡を有するものとなり、上記パルスNMR特性を上記範囲内に調整しやすい傾向にある。
【0082】
中空微粒子は、市販のものを使用してもよく、常法により合成することにより得られたものを使用してもよい。中空微粒子の外殻の材質としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエーテルアクリライト、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体などが挙げられる。
【0083】
中空微粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状及び略球状であってもよい。また、中空微粒子が膨張性バルーンである場合、未膨張の状態で用いても膨張した状態で用いてもよい。
【0084】
ポリウレタンシートに含まれる中空微粒子の平均粒径は、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは5~80μmであり、さらに好ましくは5~50μmであり、特に好ましくは5~35μmである。平均粒径が上記範囲内であることにより、パルスNMR特性を上記範囲内に調整しやすい傾向にある。なお、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザ-2000)等により測定することができる。
【0085】
1.3.その他
本実施形態の研磨パッドは、研磨層の研磨面とは反対側にクッション層を有していてもよく、研磨層とクッション層との間や、クッション層の研磨層側ではない面(研磨機に貼り合わせる面)に、接着層を有していてもよい。この場合、クッション層と接着層には、研磨層の終点検出窓が位置する場所と同様の場所に開口を有するものとする。
【0086】
2.研磨パッドの製造方法
本実施形態の研磨パッドの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、終点検出窓となる窓用部材を固定した金型に、研磨層を構成する樹脂組成物を充填し硬化させることで、窓用部材が埋没した樹脂ブロックを得る工程と、得られた樹脂ブロックをスライスすることで、開口に終点検出窓を有するポリウレタンシートを得る工程と、を有し、必要に応じて、得られたポリウレタンシートの研磨面をドレス処理してもよい。
【0087】
なお、スライスする際の温度は、好ましくは70℃~100℃である。また、ドレス処理における温度は、好ましくは20℃~30℃である。これにより、平坦性がより向上する傾向にある。
【0088】
3.研磨加工物の製造方法
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、研磨スラリーの存在下、上記研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、該研磨中に光学式終点検出方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する。
【0089】
3.1.研磨工程
研磨工程は、一次ラッピング研磨(粗ラッピング)であってもよく、二次ラッピング(仕上げラッピング)であってもよく、一次ポリッシング(粗ポリッシング)であってもよく、二次ポリッシング(仕上げポリッシング)であってもよく、これら研磨を兼ねるものであってもよい。なお、ここで、「ラッピング」とは粗砥粒を用いて比較的に高いレートで研磨することを言い、「ポリッシング」とは微細砥粒を用いて比較的に低いレートで表面品位を高くするために研磨することを言う。
【0090】
このなかでも、本実施形態の研磨パッドは化学機械研磨(CMP)に用いられることが好ましい。以下、化学機械研磨を例に本実施形態の研磨物の製造方法を説明するが、本実施形態の研磨物の製造方法は以下に限定されない。
【0091】
被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、半導体デバイス、電子部品等の材料、特に、Si基板(シリコンウエハ)、SiC(炭化珪素)基板、GaAs(ガリウム砒素)基板、ガラス、ハードディスクやLCD(液晶ディスプレイ)用基板等の薄型基板(被研磨物)が挙げられる。特に、W(タングステン)やCu(銅)などの金属配線を有する半導体デバイスが挙げられる。
【0092】
研磨方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、まず、研磨パッドと対向するように配置された保持定盤に保持させた被研磨物を研磨面側へ押し付けると共に、外部からスラリーを供給しながら、研磨パッド及び/又は保持定盤を回転させる。研磨パッドと保持定盤は、互いに異なる回転速度で同方向に回転しても、異方向に回転してもよい。また、被研磨物は、研磨加工中に、枠部の内側で移動(自転)しながら研磨加工されてもよい。
【0093】
スラリーは、被研磨物や研磨条件等に応じて、水、過酸化水素に代表される酸化剤などの化学成分、添加剤、砥粒(研磨粒子;例えば、SiC、SiO2、Al2O3、CeO2)等を含んでいてもよい。
【0094】
3.2.終点検出工程
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、上記研磨工程において、光学式終点検出方式で終点検出を行う終点検出工程を有する。光学式終点検出方式による終点検出方法としては、具体的には従来公知の方法を用いることができる。
【0095】
図4に、光学式終点検出方式の終点検出方法の模式図を示す。この模式図は、トップリング21で保持したウエハWをテーブル22上に貼られた研磨パッド10上にスラリー24を流しながら押し付けてウエハW表面の凹凸膜を削り平坦化する化学機械研磨プロセスを示す。研磨装置20は平坦化と同時に所定の膜厚を終点検出して精度良くプロセスを終了させるため、膜厚をモニタする膜厚検出センサ23をテーブル22に搭載している。膜厚検出センサ23は、例えば、ウエハWの研磨面に光を照射し、その反射光の分光強度特性を測定・解析することにより、研磨終点を検出することができる。
【0096】
より具体的には、膜厚検出センサ23は終点検出窓12を介して、ウエハW表面に光を入射し、ウエハW上の膜(ウェハ表面)で反射した光と、ウエハW上の膜とウエハの基板との界面において反射した光との位相差により生じる、反射強度の強弱を検出することで、膜厚変化を検出することができる。
【実施例0097】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、「部」は質量部を意味するものとする。
【0098】
〔製造例1:終点検出窓1〕
4,4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)100部と、数平均分子量1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)90.6部と、及びグリセリン16.7部と、を反応させて、終点検出窓4となる透明な部材を得た。
【0099】
〔製造例2:終点検出窓2〕
4,4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)100部と、数平均分子量1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)103.6部と、及びグリセリン15.9部と、を反応させて、終点検出窓2となる透明な部材を得た。
【0100】
〔製造例3:終点検出窓3〕
4,4’メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)100部と、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)78.6部と、及びグリセリン4.5部と、エチレングリコール10.5部と、を反応させて、終点検出窓3となる透明な部材を得た。
【0101】
〔実施例1〕
2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)、数平均分子量1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)及びジエチレングリコール(DEG)を反応させてなるNCO当量420のウレタンプレポリマー100部に、殻部分がアクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体からなり、未膨張の中空微粒子(平均粒径:8.5μm)2.9部を添加混合し、ウレタンプレポリマー混合液を得た。得られたウレタンプレポリマー混合液を第1液タンクに仕込み、60℃で保温した。また、第1液タンクとは別に、硬化剤として3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス-o-クロロアニリン)(MOCA)28.0部を第2液タンクに入れ、120℃で加熱溶融させて混合し、更に減圧脱泡して得た硬化剤溶融液を得た。
【0102】
次に、第1液タンク、第2液タンクのそれぞれの液体を、注入口を2つ備えた混合機のそれぞれの注入口から注入し、攪拌混合して混合液を得た。
【0103】
そして、上記のようにして得られた終点検出窓1を予め設置した型枠に、得られた混合液を注型して、30分間、80℃にて一次硬化させた。形成されたブロック状の成形物を型枠から抜き出し、オーブンにて120℃で4時間二次硬化し、ウレタン樹脂ブロックを得た。得られたウレタン樹脂ブロックを25℃まで放冷した。
【0104】
その後、再度オーブンにて120℃で5時間加熱してから、スライス処理を施し、スライスした面に対して、必要に応じて研削(バフ)処理を施し、発泡ポリウレタンシートを得た。得られたポリウレタンシートの裏面に両面テープを貼り付け、クッション層を貼り合わせて、さらにクッション層表面に両面テープを貼り付けることで研磨パッドを得た。
【0105】
なお、ドレス処理後の状態の終点検出窓周辺の断面を評価する際に、上記のようにして得られた研磨パッドに対して下記の条件でドレス処理を行った。
(ドレス条件)
使用研磨機:Speedfam社製、商品名「FAM-12BS」
定盤回転数(研磨パッドの回転数):50rpm
流量:100ml/min (20℃の純水を研磨パッドの回転中心から滴下した。)
ドレッサー:3M社製ダイヤモンドドレッサー、型番「A188」
ドレッサー回転数:100rpm
ドレス圧力:0.115kg/cm2
ドレッサーの回転方向:研磨パッドと同一方向に回転
試験時間:60分
【0106】
〔実施例2〕
製造例3の終点検出窓2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨パッドを得た。
【0107】
〔比較例1〕
製造例3の終点検出窓3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨パッドを得た。
【0108】
〔パルスNMR〕
装置 :Minispec MQ20(ブルカー・バイオスピン(株)製)
核種 :1H
測定 :T2
測定法 :ソリッドエコー法
積算回数:256回
繰り返し時間:1.0sec
測定温度:20℃、80℃(装置温度が測定温度に達して試料をセットしてから60分後に測定を開始した)
上記の装置、条件にて、試料ペレット8mmφで約50mgを10枚用意して試料管に充填し、パルスNMRの測定を行うことにより、減衰曲線を得た。
得られた減衰曲線に対し、上記式(1)を用いてフィッティングを行い解析し、ポリウレタン樹脂中の結晶相、中間相および非晶相の緩和時間を得た。なお、フィッティング及び解析は、上記測定装置に付属のソフトウェアを用いた。
【0109】
〔断面評価〕
上記のようにして得られた各パッドについて、スライス後であってドレス前の状態の終点検出窓周辺(
図2における破線Sで囲った部分)と(評価1)、ドレス後の状態の終点検出窓周辺(
図2における破線Sで囲った部分)の断面(評価2)を、レーザーマイクロスコープ(VK-X1000、KEYENCE社製)で終点検出窓の直径部分の表面に対して約14mm×1mmの範囲で200倍に拡大し連結モードにより観察し、得られたレーザー画像をもとに高さ情報のプロファイル計測を行った。
【0110】
その結果を
図5A~C,
図6A~Cに示す。なお、
図5A~C,
図6A~Cでは、2点の終点検出窓の断面測定結果であって、それぞれの終点検出窓について、スライス方向とスライス方向と直交する方向で断面測定を行った結果を示している。
【0111】
評価1では、終点検出窓が研磨面から±50μm以内であれば○とし、それ以外を×とした。また、評価2では、断面画像が平坦(端から中央にかけて高さが同等のもの)であれば○とし、凸状(端から中央にかけて高さが高くなっているもの)であれば×とした。
【0112】
10…研磨パッド、11…研磨層、11a…研磨面、12…終点検出窓、13…クッション層、14,15…接着層、16…溝、20…研磨装置、21…トップリング、22…テーブル、23…膜厚検出センサ、24…スラリー、W…ウエハ