IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社やまびこの特許一覧

<>
  • 特開-携帯型切断機 図1
  • 特開-携帯型切断機 図2
  • 特開-携帯型切断機 図3
  • 特開-携帯型切断機 図4
  • 特開-携帯型切断機 図5
  • 特開-携帯型切断機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141626
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】携帯型切断機
(51)【国際特許分類】
   B23D 45/16 20060101AFI20230928BHJP
   E01C 23/09 20060101ALI20230928BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20230928BHJP
   B24B 27/08 20060101ALI20230928BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20230928BHJP
   B24B 55/05 20060101ALI20230928BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20230928BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20230928BHJP
   B23D 47/00 20060101ALI20230928BHJP
   B23D 59/02 20060101ALI20230928BHJP
   B28D 7/02 20060101ALI20230928BHJP
   B28D 1/04 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B23D45/16
E01C23/09 Z
B24B23/02
B24B27/08
B24B55/02 D
B24B55/05
B25F5/02
B25F5/00 A
B23D47/00 C
B23D59/02
B23D47/00 D
B28D7/02
B28D1/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048038
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】苗代 錬平
【テーマコード(参考)】
2D053
3C040
3C047
3C064
3C069
3C158
【Fターム(参考)】
2D053AA26
2D053AA27
3C040AA01
3C040GG03
3C040GG28
3C047FF06
3C047FF07
3C047GG03
3C047JJ02
3C047JJ20
3C064BA11
3C064BA31
3C064BA33
3C064BB52
3C064BB71
3C064BB80
3C064BB82
3C064CA01
3C064CA03
3C064CA06
3C064CB09
3C064CB14
3C064CB17
3C064CB63
3C064CB69
3C064CB71
3C064CB82
3C064CB91
3C069AA01
3C069BA04
3C069CA07
3C069DA06
3C069EA01
3C158AA03
3C158AC03
3C158AC04
3C158CB03
3C158CB04
3C158CB06
(57)【要約】
【課題】良好な組立性やメンテナンス性を保持しつつ、ベルトのプーリに対するスリップを防止し得る携帯型切断機を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、携帯型切断機が提供される。この携帯型切断機は、回転することにより被切断物を切断する円板状の切断刃と、切断刃の回転中心となる第1の回転軸とを有する切断部と、駆動源と、駆動源の駆動により回転する第2の回転軸とを有する駆動部と、第1の回転軸に固定された第1のプーリと、第2の回転軸に固定された第2のプーリと、第1のプーリと第2のプーリとに掛け回されたベルトとを有し、駆動部による回転力を切断部に伝達する伝達部と、伝達部を収納する収納空間と、収納空間に連通するとともに、外部に開放する少なくとも1つの連通部とを有するケースとを備える。収納空間は、液体の浸入を許容するとともに、収納空間に浸入した液体が連通部を介して外部に排出されるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型切断機であって、
回転することにより被切断物を切断する円板状の切断刃と、前記切断刃の回転中心となる第1の回転軸とを有する切断部と、
駆動源と、前記駆動源の駆動により回転する第2の回転軸とを有する駆動部と、
前記第1の回転軸に固定された第1のプーリと、前記第2の回転軸に固定された第2のプーリと、前記第1のプーリと前記第2のプーリとに掛け回されたベルトとを有し、前記駆動部による回転力を前記切断部に伝達する伝達部と、
前記伝達部を収納する収納空間と、前記収納空間に連通するとともに、外部に開放する少なくとも1つの連通部とを有するケースとを備え、
前記収納空間は、液体の浸入を許容するとともに、前記収納空間に浸入した前記液体が前記連通部を介して外部に排出されるように構成されている、携帯型切断機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯型切断機において、
前記連通部は、前記携帯型切断機の正立状態で、前記収納空間に浸入した前記液体が排出されるように構成されている、携帯型切断機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の携帯型切断機において、
前記連通部は、前記携帯型切断機の正立状態で、前記ベルトより下方に位置している、携帯型切断機。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の携帯型切断機において、
前記ケースは、複数の前記連通部を有する、携帯型切断機。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の携帯型切断機において、
前記携帯型切断機の正立状態で、前記第2のプーリは、前記第1のプーリより下方に位置している、携帯型切断機。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯型切断機において、
前記連通部は、前記携帯型切断機の正立状態で、前記第2のプーリより下方に位置している、携帯型切断機。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の携帯型切断機において、
前記ケースは、前記駆動部を収納するハウジングと、前記ハウジングとの間に前記収納空間を形成する第1のカバーとを有し、
前記連通部は、前記ハウジングの外面から前記収納空間と反対側に凹没して形成された溝を有する、携帯型切断機。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯型切断機において、
前記溝は、前記携帯型切断機の正立状態で、上下方向に沿って延在する第1の底面と、前記第1の底面に連続し、前記携帯型切断機の内側から外側に向かって下方に傾斜する第2の底面とを備える、携帯型切断機。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の携帯型切断機において、
前記第1のカバーは、前記携帯型切断機の正立状態で、下方に位置する下側壁を有し、
前記下側壁は、前記携帯型切断機の外側から内側に向かって下方に傾斜する内面を備える、携帯型切断機。
【請求項10】
請求項7~請求項9のいずれか1項に記載の携帯型切断機において、
前記ハウジングと前記第1のカバーとが直接接触している、携帯型切断機。
【請求項11】
請求項7~請求項10のいずれか1項に記載の携帯型切断機において、
前記ケースは、さらに、前記第1のカバーを前記ハウジングに固定する複数の固定部を有し、
前記固定部の設置数が5つ以下である、携帯型切断機。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の携帯型切断機において、
前記第2のプーリは、前記第2の回転軸を中心として周方向に沿って形成された円環状の凹部を有し、
前記ハウジングは、前記凹部に離間した状態で挿入される円環状の凸部を有する、携帯型切断機。
【請求項13】
請求項12に記載の携帯型切断機において、
前記凹部と前記凸部との離間距離は、その径方向の外側より内側において大きい、携帯型切断機。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の携帯型切断機において、
前記駆動部は、モータである、携帯型切断機。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の携帯型切断機において、
さらに、前記液体を前記切断刃に供給する液体供給機構を備える、携帯型切断機。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の携帯型切断機において、
さらに、前記切断刃の一部を覆うように設けられた第2のカバーと、
前記携帯型切断機の正立状態で、前記ケースの下部から前記第2のカバーの下部に向かって突出する部分を有し、前記液体の前記ケースへの到達を阻止する邪魔板とを備える、携帯型切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯型切断機を使用して、例えば、コンクリートやアスファルトを切断する際には、発生する粉塵の飛散を防止する目的等から、切断刃に水を噴射しつつ行う場合がある。この場合、シール性が低いとベルト室に水が溜まり、ベルトがプーリに対してスリップして、切断ができなくなるケースがあった。そこで、特許文献1では、ベルト室のシール性を高め、水の浸入を防止する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9221111号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベルト室のシール性を高めると、携帯型切断機の組立性やメンテナンス性が低下し、その結果、コストアップするという問題がある。そこで、本発明では上記事情に鑑み、良好な組立性やメンテナンス性を保持しつつ、ベルトのプーリに対するスリップを防止し得る携帯型切断機を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、携帯型切断機が提供される。この携帯型切断機は、回転することにより被切断物を切断する円板状の切断刃と、切断刃の回転中心となる第1の回転軸とを有する切断部と、駆動源と、駆動源の駆動により回転する第2の回転軸とを有する駆動部と、第1の回転軸に固定された第1のプーリと、第2の回転軸に固定された第2のプーリと、第1のプーリと第2のプーリとに掛け回されたベルトとを有し、駆動部による回転力を切断部に伝達する伝達部と、伝達部を収納する収納空間と、収納空間に連通するとともに、外部に開放する少なくとも1つの連通部とを有するケースとを備える。収納空間は、液体の浸入を許容するとともに、収納空間に浸入した液体が連通部を介して外部に排出されるように構成されている。
【0006】
かかる態様によれば、組立性やメンテナンス性を低下させることなく、ベルト室(伝達部の収納空間)への液体の貯留を防止または抑制し得る携帯型切断機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】携帯型切断機を右側から見た斜視図である。
図2】携帯型切断機を左側から見た斜視図である。
図3】ベルトカバーを外した状態を示す側面図である。
図4】ケースの断面図((a)部分断面図、(b)拡大断面図)である。
図5】第2のプーリ付近を拡大して示す断面図である。
図6】連通部の他の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0009】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュ-タが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサ-バからダウンロ-ド可能に提供されてもよいし、外部のコンピュ-タで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピュ-ティング)するように提供されてもよい。
【0010】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハ-ドウェア資源と、これらのハ-ドウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0011】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィ-ルドプログラマブルゲ-トアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0012】
図1は、携帯型切断機を右側から見た斜視図である。図2は、携帯型切断機を左側から見た斜視図である。図3は、ベルトカバーを外した状態を示す側面図(若干傾斜して示す。)である。図4は、ケースの断面図((a)部分断面図、(b)拡大断面図)である。図5は、第2のプーリ付近を拡大して示す断面図である。図6は、連通部の他の構成を示す側面図である。
なお、以下では、各図に示すように、前後方向および左右方向を規定して説明する。
本発明の携帯型切断機は、切断刃を有し、この切断刃により、例えば、コンクリート、アスファルトのような被切断物を切断する装置である。
【0013】
図1等に示す携帯型切断機1は、切断機本体10と、フロントハンドル20と、リアハンドル30とを備えている。
フロントハンドル20は、左右方向に延び、かつ切断機本体10の前側上方に位置する把持棒20aと、この把持棒20aの右端から斜め後側の下方に向かって延びて切断機本体10の下部に固定された第1の支持棒20bと、把持棒20aの左端から斜め前側の下方に向かって延びて切断機本体10の下部に固定された第2の支持棒20cとを有する。作業者は、把持棒20aを把持することにより、切断機本体10を持ち上げることができる。
【0014】
リアハンドル30は、U字状をなし、その両端部において、切断機本体10の後側に固定されている。このリアハンドル30には、切断刃の回転数を調整するスロットルレバー30aが配設されている。
切断機本体10は、切断部2と、モータ(駆動部)3と、伝達部4と、ケース5とを備えている。
切断部2は、図1および図2に示すように、回転することにより被切断物を切断する円板状の切断刃21と、この切断刃21の回転中心となる第1の回転軸22とを有している。
切断刃21は、第1の回転軸22を中心に回転することにより、これに接触する被切断物を切断することができる。
【0015】
モータ3は、図4および図5に示すように、磁石およびコイルを含む駆動源31と、この駆動源31の駆動により回転する第2の回転軸32とを有している。スロットルレバー30aの握りの程度を調整することにより、モータ3(第2の回転軸32)の回転数を制御することができる。
伝達部4は、図3に示すように、第1の回転軸22に固定された第1のプーリ41と、第2の回転軸32に固定された第2のプーリ42と、第1のプーリ41と第2のプーリ42とに掛け回されたベルト43とを有している。この伝達部4は、モータ3(第2の回転軸32)の回転により第2のプーリ42を介してベルト43を回転させる。このベルト43の回転により、第1のプーリ41を回転させ、第1の回転軸22を介して切断刃21を回転させる。すなわち、伝達部4は、モータ3による回転力を切断刃21(切断部2)に伝達する。
【0016】
モータ3および伝達部4は、ケース5に収納されている。
このケース5は、ハウジング51と、ハウジング51に着脱自在に装着されたベルトカバー(第1のカバー)52とを有している。
ハウジング51は、モータ(駆動部)3を収納している。
ベルトカバー52は、伝達部4を覆うようにハウジング51に装着され、ハウジング51との間にベルト室(収納空間)520が形成されている。このベルト室520内に、伝達部4が収納されている。
【0017】
ここで、携帯型切断機1によりコンクリート、アスファルトのような被切断物を切断する際には、粉塵の発生を低減すべく、その切断操作を切断刃21に水(液体)を供給しつつ行う。
本実施形態では、ハウジング51とベルトカバー52とが直接接触している。換言すれば、ハウジング51とベルトカバー52との間には、封止部材(液体シール等)が配置されていない。
また、ベルトカバー52は、ハウジング51に対して、複数(本実施形態では、3つ)の固定ボルト(固定部)53で固定されている。なお、固定ボルト53の設置数は、3つ以外であってよく、5つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、ベルト室520には水の浸入が許容される。すなわち、ベルト室520のシール性(液密性)が低い。この場合、ベルト室520に水が溜まり、ベルト43が第2のプーリ42に対してスリップすることが危惧されるが、一方で、携帯型切断機1の組立性やメンテナンス性を高めることができるというメリットが有る。
そこで、本発明では、上記危惧される点を解消すべく、ベルト室520に連通するとともに、携帯型切断機1(ベルト室520)の外部に開放する連通部54を設けた。この連通部54を介してベルト室520に浸入した水を携帯型切断機1の外部に排出することができる。これにより、携帯型切断機1の良好な組立性やメンテナンス性を保持しつつ、ベルト43が空回り(スリップ)することにより、被切断物の切断が困難になるのを防止することができる。
【0019】
特に、連通部54は、携帯型切断機1の正立状態で、ベルト室520に浸入した水が排出されるように構成されている。
ここで、「携帯型切断機1の正立状態」とは、フロントハンドル20を上方として、切断機本体10を地面や載置台に載置した状態を言う。
したがって、連通部54は、好ましくはケース5の下方に設けることが好ましい。本実施形態では、連通部54は、携帯型切断機1の正立状態で、ベルト43より下方に位置している。これにより、図3中の矢印で示すように、ベルト室520に浸入した水を携帯型切断機1の外部に円滑に排出することができる。
【0020】
また、本実施形態では、携帯型切断機1の正立状態で、第2のプーリ42は、第1のプーリ41より下方に位置するように構成されている。すなわち、ベルトカバー52(ベルト室520)は、携帯型切断機1の正立状態で、前側より後側において下方に位置するように傾斜している。したがって、ベルト室520に浸入した水は、第2のプーリ42側に集まって溜まり易くなる。
そこで、特に、連通部54を、携帯型切断機1の正立状態で、第2のプーリ42より下方に位置するように設けられている。かかる構成により、ベルト室520に浸入した水を連通部54に向かって集めて、携帯型切断機1の外部により円滑に排出することができる。
【0021】
具体的には、連通部54は、ハウジング51の外面からベルト室520と反対側に凹没して形成された溝で構成されている。かかる構成によれば、ケース5の機械的強度を低下させることなく、比較的簡便に連通部54を形成することができる。
この溝は、図4(b)に示すように、携帯型切断機1の正立状態で、上下方向に沿って延在する第1の底面541と、第1の底面541に連続し、携帯型切断機1の内側から外側に向かって下方に傾斜する第2の底面542とを備えている。これにより、ベルト室520に浸入した水は、図4(b)において二点鎖線矢印で示すように、第2の底面542(傾斜面)に沿ってより円滑に移動し易くなる。
【0022】
また、ベルトカバー52は、図4(b)に示すように、携帯型切断機1の正立状態で、下方に位置する下側壁521を有している。そして、この下側壁521は、携帯型切断機1の外側から内側に向かって下方に傾斜する内面521aを備えている。これにより、ベルト室520に浸入した水を、連通部54に向けて移動させて集めることができる。
なお、下側壁521は、内面521aおよび外面521bの双方が携帯型切断機1の外側から内側に向かって下方に傾斜しているが、内面521aのみが傾斜していてもよい。
連通部54の開口面積(連通部54を規定する第1の底面541および側面と下側壁521の左側端面とで区画される領域543の面積)は、ベルト室520に浸入した水の通過を許容するが、被切断物から発生する粉塵を含む水の通過を阻止する程度の大きさに設定することが好ましい。
【0023】
第2のプーリ42は、図5に示すように、第2の回転軸32を中心として周方向に沿って形成された円環状の凹部421を有している。そして、ハウジング51は、凹部421に離間した状態で挿入される円環状の凸部511を有している。かかる構成により、第2のプーリ42とハウジング51との間に形成される隙間の長さを大きくすることができる。よって、ベルト室520に浸入した水(または、粉塵を含む水)がモータ3側に浸入して、モータ3が故障するのを好適に防止することができる。
また、本実施形態では、凹部421と凸部511との離間距離は、その径方向の外側(図中W1)より内側(図中W2)において大きい。この場合、仮に、凹部421と凸部511との間に水が浸入した場合でも、径方向の外側より内側において空間が大きくなるため、毛管現象が阻害されて、それ以上の内側への移動が規制(制限)されるようになる。
【0024】
凹部421と凸部511との間への水の浸入を防止する観点からは、例えば、凹部421の内面および/または凸部511の外面に撥液処理を施すようにしてもよい。
このような携帯型切断機1は、さらに、切断刃21の一部を覆うように設けられた保護カバー(第2のカバー)6を備えている。
保護カバー6は、図1および図2に示すように、切断刃21の両側に位置する半円形状の第1の側壁部6aおよび第2の側壁部6bと、第1の側壁部6aと第2の側壁部6bとを後側で繋ぐ湾曲状の第3の側壁部6cとを有している。
【0025】
第1の側壁部6a、第2の側壁部6bおよび第3の側壁部6cで囲まれる部分が携帯型切断機1の前側に開口する収容凹部となっており、この収容凹部は、切断刃21の後側のほぼ半分を収容するようになっている。すなわち、保護カバー6は、切断刃21における後側のほぼ半分を覆うようになっている。
かかる保護カバー6を設けることにより、作業者が切断刃21に直接接触する機会をより確実に低減することができる。また、切断刃21に供給される水が、不要な箇所に飛散するのも低減することもできる。
【0026】
また、被切断物を切断する際に供給する水は、携帯型切断機1と別個に設けられた水供給機構(液体供給機構)から供給するようにしてもよいが、本実施形態の携帯型切断機1は、水(液体)を切断刃21に供給する水供給機構(液体供給機構)7を備えている。かかる水供給機構7を携帯型切断機1が備えることにより、作業者1人で、粉塵の飛散を防止しつつ、被切断物の切断を行うことが可能となる。
具体的には、水供給機構7は、外部の水供給源に接続可能な接続部71と、保護カバー6の第1の側壁部6aに設けられた水供給口72と、接続部71と水供給口72とを接続する接続チューブ73とを有している。なお、接続部71の途中には、水の供給量を調整可能なバルブ711が設けられている。
【0027】
また、携帯型切断機1は、ケース5の前側下部に設けられた邪魔板8を備えている。この邪魔板8は、携帯型切断機1の正立状態で、ケース5の下部から保護カバー6の下部に向かって突出する部分81を有している。邪魔板8は、被切断物を切断する際に、水がケース5へ到達するのを阻止する機能を備えている。これにより、ベルト室520に水が浸入することをより好適に防止することができる。
ケース5の上部には、携帯型切断機1への電力供給をオンオフするための電源スイッチ部(図示せず。)、携帯型切断機1の作動条件を設定する条件設定部(図示せず。)等が設けられている。
また、ケース5の内部には、モータ3の作動を制御する制御基板(図示せず。)を内蔵している。この制御基板には、演算素子と、記憶素子とが実装されている。
【0028】
演算素子は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等で構成される。演算素子は、記憶素子に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、携帯型切断機1に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶素子に記憶されているソフトウェアによる情報処理が演算素子によって具体的に実現される。
なお、演算素子は、単一であることに限定されず、機能ごとに複数の演算素子を設けるようにしてもよい。また、それらの組合せであってもよい。
【0029】
記憶素子は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、演算素子によって実行される携帯型切断機1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステ-トドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレ-ジデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施することができる。
また、記憶素子は、演算素子によって実行される携帯型切断機1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0030】
このような携帯型切断機1では、作業者は、一方の手で把持棒20aを把持することにより、切断機本体10を持ち上げ、切断刃21を下方に位置させ、他方の手でリアハンドル30を把持するとともに、スロットルレバー30aを操作する。そして、切断刃21の回転数を制御しつつ被切断物に押し付けることにより、被切断物を切断することができる。
【0031】
そして、上記携帯型切断機1によれば、ベルト室520への水の浸入を許容しつつも、ベルト室520に浸入した水を携帯型切断機1の外部に連通部54を介して排出することができる。このため、携帯型切断機1の組立性やメンテナンス性が低下するのを防止しつつ、ベルト43が空回り(スリップ)することにより、被切断物の切断が困難になるのを防止することができる。
【0032】
なお、上記携帯型切断機1では、ケース5に1つの連通部54を設ける構成を示したが、ケース5には、図6に示すように、2つ(複数)の連通部54を設けるようにしてもよい。また、連通部54は、ベルトカバー52を貫通して設けるようにしてもよく、配置位置も図示の箇所に限定されない。
【0033】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記携帯型切断機において、前記連通部は、前記携帯型切断機の正立状態で、前記収納空間に浸入した前記液体が排出されるように構成されている、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記連通部は、前記携帯型切断機の正立状態で、前記ベルトより下方に位置している、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記ケースは、複数の前記連通部を有する、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記携帯型切断機の正立状態で、前記第2のプーリは、前記第1のプーリより下方に位置している、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記連通部は、前記携帯型切断機の正立状態で、前記第2のプーリより下方に位置している、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記ケースは、前記駆動部を収納するハウジングと、前記ハウジングとの間に前記収納空間を形成する第1のカバーとを有し、前記連通部は、前記ハウジングの外面から前記収納空間と反対側に凹没して形成された溝を有する、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記溝は、前記携帯型切断機の正立状態で、上下方向に沿って延在する第1の底面と、前記第1の底面に連続し、前記携帯型切断機の内側から外側に向かって下方に傾斜する第2の底面とを備える、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記第1のカバーは、前記携帯型切断機の正立状態で、下方に位置する下側壁を有し、前記下側壁は、前記携帯型切断機の外側から内側に向かって下方に傾斜する内面を備える、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記ハウジングと前記第1のカバーとが直接接触している、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記ケースは、さらに、前記第1のカバーを前記ハウジングに固定する複数の固定部を有し、前記固定部の設置数が5つ以下である、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記第2のプーリは、前記第2の回転軸を中心として周方向に沿って形成された円環状の凹部を有し、前記ハウジングは、前記凹部に離間した状態で挿入される円環状の凸部を有する、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記凹部と前記凸部との離間距離は、その径方向の外側より内側において大きい、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、前記駆動部は、モータである、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、さらに、前記液体を前記切断刃に供給する液体供給機構を備える、携帯型切断機。
前記携帯型切断機において、さらに、前記切断刃の一部を覆うように設けられた第2のカバーと、前記携帯型切断機の正立状態で、前記ケースの下部から前記第2のカバーの下部に向かって突出する部分を有し、前記液体の前記ケースへの到達を阻止する邪魔板とを備える、携帯型切断機。
もちろん、この限りではない。
【0034】
既述のとおり、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を何ら限定するものではない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0035】
例えば、携帯型切断機1による切断対象物(被処理物)が金属ペイブのような金属製品である場合、切断刃21に供給する液体は、オイル等であってもよい。この場合、金属製品の切断時に生じる摩擦を低減して、発熱を抑制することができる。
また、駆動部は、エンジンで構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 :携帯型切断機
10 :切断機本体
20 :フロントハンドル
20a :把持棒
20b :第1の支持棒
20c :第2の支持棒
30 :リアハンドル
30a :スロットルレバー
2 :切断部
21 :切断刃
22 :第1の回転軸
3 :モータ
31 :駆動源
32 :第2の回転軸
4 :伝達部
41 :第1のプーリ
42 :第2のプーリ
421 :凹部
43 :ベルト
5 :ケース
51 :ハウジング
511 :凸部
52 :ベルトカバー
520 :ベルト室
521 :下側壁
521a :内面
521b :外面
53 :固定ボルト
54 :連通部
541 :第1の底面
542 :第2の底面
543 :領域
6 :保護カバー
6a :第1の側壁部
6b :第2の側壁部
6c :第3の側壁部
7 :水供給機構
71 :接続部
711 :バルブ
72 :水供給口
73 :接続チューブ
8 :邪魔板
81 :部分
W1 :幅
W2 :幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6