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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141637
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】保持機構及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/32 20060101AFI20230928BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20230928BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B41J2/32 C
B41J15/04
B41J2/32 Z
B41J3/36 T
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048054
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】望月 義晃
【テーマコード(参考)】
2C055
2C060
2C065
【Fターム(参考)】
2C055CC00
2C055CC01
2C055CC03
2C060BA09
2C065AA01
2C065AD02
2C065CC09
2C065CC10
2C065CC33
2C065CZ12
2C065CZ13
(57)【要約】
【課題】印刷品位を好適に保つことができる保持機構及び印刷装置を提供する。
【解決手段】開閉部材(12)が閉じると保持方向へ回転して開閉部材を保持して開く動作を規制し、保持方向とは反対の保持解除方向への回転により保持を解除する第1回動部材(33)と、開閉部材が閉じると嵌合方向へ回転して第1回動部材に嵌合して保持解除方向への回転を規制し、嵌合方向とは反対の嵌合解除方向への回転により嵌合を解除する第2回動部材(34)と、開閉部材が閉じて第1回動部材により保持が行われている保持状態で、開閉部材から第1回動部材を保持解除方向へ回転させる力が加わった場合に、第2回動部材を嵌合解除方向へ回転させない嵌合維持手段(33f、34f)と、を備える保持機構(30、40)。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉部材が閉じると保持方向へ回転して前記開閉部材を保持して開く動作を規制し、前記保持方向とは反対の保持解除方向への回転により前記保持を解除する第1回動部材と、
前記開閉部材が閉じると嵌合方向へ回転して前記第1回動部材に嵌合して前記保持解除方向への回転を規制し、前記嵌合方向とは反対の嵌合解除方向への回転により前記嵌合を解除する第2回動部材と、
前記開閉部材が閉じて前記第1回動部材により前記保持が行われている保持状態で、前記開閉部材から前記第1回動部材を前記保持解除方向へ回転させる力が加わった場合に、前記第2回動部材を前記嵌合解除方向へ回転させない嵌合維持手段と、
を備えることを特徴とする保持機構。
【請求項2】
前記嵌合維持手段は、前記第1回動部材が前記第2回動部材を押圧する力の作用点と前記第2回動部材の回動軸とを結ぶ第1の直線と、前記押圧する力の作用方向に対して垂直な第2の直線との間の角度が、鋭角又は直角になるように前記第1回動部材及び前記第2回動部材にそれぞれ設けた嵌合部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の保持機構。
【請求項3】
前記第1回動部材の前記嵌合部と前記第2回動部材の前記嵌合部はそれぞれ直線状の嵌合面を有し、前記第2の直線は互いの前記嵌合面に沿う方向の線であることを特徴とする、請求項2に記載の保持機構。
【請求項4】
前記第1回動部材の前記嵌合部と前記第2回動部材の前記嵌合部はそれぞれ凸の円弧状の嵌合面を有し、前記第2の直線は互いの前記嵌合面の接触点における接線であることを特徴とする、請求項2に記載の保持機構。
【請求項5】
前記第1回動部材と前記第2回動部材の間に、前記保持状態で、前記第1回動部材を保持解除方向へ付勢し、前記第2回動部材を嵌合方向へ付勢する付勢部材を備えることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の保持機構。
【請求項6】
前記保持方向への前記第1回動部材の回転によって印刷ヘッドとプラテンローラを接近させ、前記保持解除方向への前記第1回動部材の回転によって前記印刷ヘッドと前記プラテンローラを離間させる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の保持機構を備える印刷装置。
【請求項7】
閉じた状態の前記開閉部材は、被印刷媒体を収容したカートリッジを着脱可能なカートリッジ装着部を覆う、請求項6に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持機構及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テープなどの被印刷媒体に対して印刷を行い、ラベルを作成する印刷装置が知られている。このような印刷装置では、例えば特許文献1のように、開閉蓋の開閉動作に伴って印刷ヘッドが移動されるように構成されている。開閉蓋を開いた状態では、印刷ヘッドがプラテンローラから離れている。開閉蓋を閉じると、印刷が可能な印刷位置に印刷ヘッドが保持され、印刷ヘッドとプラテンローラの間に被印刷媒体が挟まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-122601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような印刷ヘッドを印刷位置に保持する保持機構において、閉じた状態の開閉蓋などに衝撃が加わった場合に、印刷ヘッドの保持を解除するような動作が生じて、適切な印刷が行われないおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、印刷品位を好適に保つことができる保持機構及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の保持機構は、開閉部材が閉じると保持方向へ回転して前記開閉部材を保持して開く動作を規制し、前記保持方向とは反対の保持解除方向への回転により前記保持を解除する第1回動部材と、前記開閉部材が閉じると嵌合方向へ回転して前記第1回動部材に嵌合して前記保持解除方向への回転を規制し、前記嵌合方向とは反対の嵌合解除方向への回転により前記嵌合を解除する第2回動部材と、前記開閉部材が閉じて前記第1回動部材により前記保持が行われている保持状態で、前記開閉部材から前記第1回動部材を前記保持解除方向へ回転させる力が加わった場合に、前記第2回動部材を前記嵌合解除方向へ回転させない嵌合維持手段と、を備える。
【0007】
本発明の一態様の印刷装置は、前記保持方向への前記第1回動部材の回転によって印刷ヘッドとプラテンローラを接近させ、前記保持解除方向への前記第1回動部材の回転によって前記印刷ヘッドとプラテンローラを離間させる。
【発明の効果】
【0008】
以上の態様によれば、印刷品位を好適に保つことができる保持機構及び印刷装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】印刷装置の蓋を閉じた状態の斜視図である。
図2】印刷装置の蓋を閉いた状態の斜視図である。
図3】蓋を開いた状態の印刷装置の内部構造を示す正面図である。
図4】第1の実施形態の保持機構における保持解除状態を示す図である。
図5】第1の実施形態の保持機構における保持解除状態と保持状態の間の状態を示す図である。
図6】第1の実施形態の保持機構における保持状態を示す図である。
図7】第1の実施形態の保持機構における嵌合維持手段を説明する図である。
図8】第1の実施形態の保持機構の変形例における嵌合維持手段を説明する図である。
図9】比較例の保持機構の保持状態を示す図である。
図10】比較例の保持機構の動作を説明する図である。
図11】第1の実施形態の保持機構におけるオーバーストローク量を説明する図である。
図12】第2の実施形態の保持機構における保持状態を示す図である。
図13】第2の実施形態の保持機構における嵌合維持手段を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1から図3は、本実施形態の印刷装置10を示している。印刷装置10は、帯状の被印刷媒体であるテープ(図示略)に印刷を行ってラベルを作成するラベルプリンタである。
【0011】
互いに垂直な関係にあるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向を基準として、印刷装置10の構成を説明する。印刷装置10は概ね箱型の外観形状を有しており、X軸方向が横幅方向、Y軸方向が高さ方向、Z軸方向が前後方向(厚み方向)となる。また、軸回りで動作する部材について、方向が特定される一方向の動作を回転とし、方向を特定しない両方向の動作を回動とする。
【0012】
印刷装置10は、ラベル作成処理を行う機能を有する本体11と、本体11に対して開閉可能な開閉部材である蓋12を有している。印刷装置10で行うラベル作成処理は、印刷ヘッド13を用いて行うテープへの印刷、プラテンローラ14を用いて行うテープの搬送、テープカッター15を用いて行うテープの切断、を含む。
【0013】
図1は蓋12が閉じた状態を示し、図2は蓋12が開いた状態を示している。本体11の上端付近にはヒンジ部16が設けられており、蓋12はヒンジ部16に接続している。ヒンジ部16への接続部分を中心として、Z軸方向に引き上げるようにして蓋12を開くことができる。蓋12を開閉する動作は、ユーザーの手動によって行われる。
【0014】
印刷装置10は、蓋12を閉じた状態で保持する保持機構30、40(図3)を備える。本体11の底部に設けた解除ノブ17を操作することにより、保持機構30、40による保持を解除して蓋12を開くことができる。保持機構30は第1の実施形態であり、保持機構40は第2の実施形態であり、これらの詳細は後述する。
【0015】
図1のように蓋12を閉じた状態では、印刷装置10の前面部分を蓋12が覆う。印刷装置10の側面にはZ軸方向に延びる細長いテープ排出口18が形成されている。印刷装置10によって印刷されたテープ(作成後のラベル)は、テープ排出口18から外部に排出される。
【0016】
図3は、本体11から蓋12を取り外した状態の印刷装置10の前面側を示したものである。本体11にはテープカートリッジ装着部19(カートリッジ装着部)が形成されている。テープカートリッジ装着部19は、印刷装置10の前面側に向けて開放される凹部であり、その内部にテープカートリッジ20(カートリッジ)を収容可能である。テープカートリッジ20には、ロール形状に巻かれたテープが収められる。閉じた状態の蓋12によってテープカートリッジ装着部19が覆われる。蓋12を開くことでテープカートリッジ装着部19が露出して、テープカートリッジ装着部19へのテープカートリッジ20の着脱が可能になる。
【0017】
本体11の内部には、印刷ヘッド13、プラテンローラ14、テープカッター15が備えられている。
【0018】
印刷ヘッド13によってテープに印刷を行う。印刷ヘッド13は、テープの長手方向(搬送方向)に対して垂直な主走査方向に配列された複数の発熱素子を有しており、発熱素子でテープを加熱することにより1ラインずつ印刷(印字)を行う。印刷ヘッド13による印刷は、熱転写式、感熱式などによって行われる。熱転写式の場合、テープカートリッジ20に収容されたインクリボンがテープに重ねられて、印刷ヘッド13の加熱によってインクリボンのインクがテープに付着する。感熱式の場合、テープの発色層のうち、印刷ヘッド13によって加熱された部分が発色して印刷が行われる。
【0019】
プラテンローラ14は、テープカートリッジ20から繰り出されたテープを搬送するローラである。プラテンローラ14は、Z軸方向に延びる軸を中心として回転可能に支持されている。搬送用モータ21の駆動力がギヤ列22によって伝達されてプラテンローラ14が回転する。テープカートリッジ20から繰り出されたテープをプラテンローラ14と印刷ヘッド13の間に狭持した状態でプラテンローラ14を回転させることにより、テープを長手方向に搬送する。
【0020】
印刷ヘッド13によって印刷されたテープは、プラテンローラ14の回転によって排出方向(図3の右手方向)に搬送される。テープ排出口18の手前にテープカッター15が設けられている。テープカッター15はハーフカッターとフルカッターを備えており、ハーフカッターは剥離紙を残してテープの厚みの途中まで切断し、フルカッターはテープの厚み全体を切断する。
【0021】
印刷ヘッド13は、プラテンローラ14から離間する離間位置と、プラテンローラ14に接近する印刷位置とに移動可能である。離間位置と印刷位置への印刷ヘッド13の移動は、後述する保持機構30、40を介して、蓋12の開閉に連動して行われる。蓋12が開いた状態(図2)では、印刷ヘッド13がプラテンローラ14から離間し、蓋12が閉じた状態(図1)では、印刷ヘッド13がプラテンローラ14に接触する。
【0022】
テープカートリッジ20をテープカートリッジ装着部19に取り付ける際には、図2のように蓋12を開く。蓋12が開くのに連動して、印刷ヘッド13がプラテンローラ14から離間した状態になるため、テープカートリッジ20の取り付けによって、テープが印刷ヘッド13とプラテンローラ14の間に入り込むことができる。
【0023】
蓋12を閉じて印刷ヘッド13をプラテンローラ14への接触位置に移動させることにより、印刷ヘッド13とプラテンローラ14の間にテープが挟持される。印刷の際には、このテープ挟持状態で印刷ヘッド13を加熱する。従って、印刷品位を好適に保つには、印刷ヘッド13が確実に接触位置に保持されることが必要である。
【0024】
また、テープ挟持状態でプラテンローラ14を回転させると、テープが長手方向に搬送される。印刷後のテープは、プラテンローラ14の回転によって搬送されて、テープ排出口18を通って印刷装置10の外部に排出される。
【0025】
主に図4から図8を参照して、第1の実施形態の保持機構30の詳細を説明する。保持機構30を構成する要素として、蓋12には押し込み突起31が設けられており、本体11内には、ヘッドアーム32と、第1回動部材であるスイッチレバー33と、第2回動部材であるプッシュレバー34が設けられている。ヘッドアーム32とスイッチレバー33には、ヘッド押圧バネ35が接続している。スイッチレバー33とプッシュレバー34には、付勢部材であるプッシュレバー戻しバネ36が接続している。
【0026】
図2に示すように、押し込み突起31は蓋12の内面側に突出している。蓋12を閉じると、押し込み突起31が、テープカートリッジ装着部19の下端付近に形成された挿入空間19a内へ挿入される。蓋12の開閉に伴う押し込み突起31の移動方向は、ヒンジ部16を中心とする回動であるが、挿入空間19aへ進入する際には、押し込み突起31は概ねZ軸方向へ移動する(図4から図6参照)。
【0027】
図4から図6に示すように、押し込み突起31の先端近くには保持溝31aが形成されている。保持溝31aは、概ねX軸方向へ延びており、X軸方向の片方の側部に開口している。保持溝31aの開口付近には、保持溝31aの開口幅を広げる形状の導入面31bが形成されている。保持溝31aの開口に隣接する押し込み突起31の先端部の側面には、傾斜面31cが形成されている。
【0028】
図3に示すように、ヘッドアーム32はL字形状の部品であり、Z軸方向に向く支持軸32aにより支持されている。ヘッドアーム32は支持軸32aを中心として回動(揺動)可能である。ヘッドアーム32は、支持軸32aによる支持箇所から異なる方向に延びる第1腕部32bと第2腕部32cを有している。第1腕部32bには印刷ヘッド13が取り付けられている。第2腕部32cの先端付近のバネ掛け部32dにヘッド押圧バネ35が接続している。
【0029】
図3に示すヘッドアーム32の位置は、印刷ヘッド13の印刷位置に対応している。ヘッドアーム32が図3の時計方向に回転すると、印刷ヘッド13が印刷位置から離間位置へ移動する。
【0030】
図4から図6に示すように、スイッチレバー33は、Y軸方向に向く支持軸33aにより支持されており、スイッチレバー33は支持軸33aを中心として回動(揺動)可能である。スイッチレバー33は、支持軸33aによる支持箇所から異なる方向に延びる第1腕部33bと第2腕部33cを有している。
【0031】
第1腕部33bの先端付近のバネ掛け部33dに、ヘッド押圧バネ35が接続している。ヘッド押圧バネ35は引張バネであり、一端がヘッドアーム32のバネ掛け部32dに接続し、他端がスイッチレバー33のバネ掛け部33dに接続している。スイッチレバー33が回動すると、ヘッド押圧バネ35が伸縮しながらヘッドアーム32の動作を制御する。
【0032】
第2腕部33cの先端付近には、保持突起33eが設けられている。保持突起33eはY軸方向に突出する円柱形状の突起であり、押し込み突起31の保持溝31aの幅に対応する径を有している。つまり、保持溝31aの内部に保持突起33eが進入可能であり、進入する状態では保持溝31aの内面によって保持突起33eが保持される。
【0033】
第2腕部33cの先端付近にはさらに、嵌合部33fが設けられている。嵌合部33fは第2腕部33cの先端から突出するフック形状である。嵌合部33fは、片側の側面に嵌合面33gを有し、嵌合面33gとは反対側の側面に嵌合ガイド面33hを有している。
【0034】
第1腕部33bの途中に、バネ掛け部33iを有している。バネ掛け部33iにプッシュレバー戻しバネ36が接続している。
【0035】
スイッチレバー33は、第1腕部33bの側面にヘッドアーム制御面33jを有している。ヘッドアーム制御面33jに対してヘッドアーム32の第2腕部32cの先端付近が当接可能である。
【0036】
図4から図6に示すように、プッシュレバー34は、Y軸方向に向く支持軸34aにより支持されており、プッシュレバー34は支持軸34aを中心として回動(揺動)可能である。プッシュレバー34は、支持軸34aによる支持箇所から異なる方向に延びる第1腕部34bと第2腕部34cを有している。
【0037】
第1腕部34bの先端付近のバネ掛け部34dに、プッシュレバー戻しバネ36が接続している。プッシュレバー戻しバネ36は引張バネであり、一端がスイッチレバー33のバネ掛け部33iに接続し、他端がプッシュレバー34のバネ掛け部34dに接続している。プッシュレバー戻しバネ36が伸縮しながら、スイッチレバー33とプッシュレバー34の相対的な動作を制御する。
【0038】
第2腕部34cの先端付近には、被操作突起34eが設けられている。被操作突起34eはY軸方向に突出する円柱形状の突起である。本体11の内部には、解除ノブ17の操作によって移動する中継部材(図示略)が設けられており、中継部材のロック解除部(図示略)が被操作突起34eに当接可能になっている。
【0039】
第2腕部34cの先端付近にはさらに、嵌合部34fが設けられている。嵌合部34fは、第1腕部34bの突出方向と同じ方向に向けて屈曲するフック形状である。嵌合部34fは、片側の側面に嵌合面34gを有し、嵌合面34gとは反対側の側面に嵌合ガイド面34hを有している。
【0040】
以上の構造の保持機構30の動作を説明する。図4は、保持機構30による蓋12の保持が行われておらず、蓋12を開くことが可能な保持解除状態を示している。図5は、保持機構30による蓋12の保持が行われる直前、あるいは保持機構30による蓋12の保持解除が行われた直後の状態を示している。図6は、蓋12が完全に閉じて保持機構30により保持された保持状態を示している。図4から図6に示すスイッチレバー33の回転方向について、時計方向を保持解除方向とし、反時計方向を保持方向とする。図4から図6に示すプッシュレバー34の回転方向について、時計方向を嵌合方向とし、反時計方向を嵌合解除方向とする。
【0041】
まず、蓋12を開いた状態から閉じる場合を説明する。蓋12が開いているときには、スイッチレバー33とプッシュレバー34は図4に示す保持解除状態にある。保持解除状態では、スイッチレバー33の嵌合部33fとプッシュレバー34の嵌合部34fが嵌合しておらず、スイッチレバー33はプッシュレバー34による保持を受けていない。押し込み突起31については、蓋12が開いているときには、図4に示す位置ではなく、スイッチレバー33から離れている。
【0042】
保持解除状態では、ヘッド押圧バネ35とプッシュレバー戻しバネ36がそれぞれ圧縮した状態にある。プッシュレバー戻しバネ36の圧縮により、スイッチレバー33とプッシュレバー34がそれぞれ図4の時計方向へ牽引され、バネ掛け部33iとバネ掛け部34dが接近している。ヘッド押圧バネ35の圧縮により、スイッチレバー33の第1腕部33bがヘッドアーム32の第2腕部32cに当接し、ヘッドアーム制御面33jからの押圧によって、ヘッドアーム32が図3の時計方向に回転され、印刷ヘッド13がプラテンローラ14から離間する離間位置に保持される。
【0043】
蓋12を閉じる動作によって押し込み突起31がテープカートリッジ装着部19の挿入空間19aに挿入される。Z軸方向で押し込み突起31の挿入方向の延長上にはスイッチレバー33の保持突起33eが位置しており、押し込み突起31に設けた傾斜面31cが保持突起33eに当接する。傾斜面31cはZ軸方向に対して傾斜した面であり、押し込み突起31がZ軸方向に挿入されると、傾斜面31cが保持突起33eを押圧してX軸方向への力が生じ、スイッチレバー33が保持解除方向(時計方向)へ僅かに回転する。
【0044】
押し込み突起31がさらに挿入空間19aに挿入されると、図4に示すように、保持突起33eが傾斜面31cを乗り越えて保持溝31aの開口に達する。保持突起33eが導入面31bに当接し、押し込み突起31を挿入する力が導入面31bから保持突起33eに伝わると、スイッチレバー33が保持方向(反時計方向)に回転する。押し込み突起31の挿入を継続すると、保持突起33eが保持溝31aの開口側から奥側へ位置を変化させると共に、保持溝31aの内面によって保持突起33eがZ軸方向に押圧されて、スイッチレバー33が保持方向に回転する。
【0045】
スイッチレバー33が保持方向へ回転すると、ヘッド押圧バネ35を介してスイッチレバー33と弾性的に接続したヘッドアーム32は図3の反時計方向に回転し、印刷ヘッド13が離間位置から印刷位置へ向けて、プラテンローラ14に接近する。印刷ヘッド13が図3に示す印刷位置に達すると、印刷ヘッド13とプラテンローラ14の当接によって、ヘッドアーム32はそれ以上の反時計方向の回転が制限される。
【0046】
この段階で蓋12は完全には閉じられておらず、押し込み突起31の挿入に伴ってスイッチレバー33はさらに保持方向へ回転を行う。すると、ヘッド押圧バネ35が引っ張られて伸び、ヘッド押圧バネ35が縮まろうとする力によって、ヘッドアーム32が図3の反時計方向へ付勢されて、印刷ヘッド13がプラテンローラ14に押し付けられる。これにより、印刷ヘッド13が印刷位置に向けて付勢された状態で保持される。
【0047】
図4に示す保持解除状態では、スイッチレバー33の嵌合部33fとプッシュレバー34の嵌合部34fがZ軸方向で離間した位置関係にある。押し込み突起31の挿入に伴ってスイッチレバー33が保持解除位置から保持位置へ回転すると、嵌合部33fが嵌合部34fに接近し、嵌合ガイド面33hが嵌合ガイド面34hに当接する。嵌合ガイド面33hと嵌合ガイド面34hは、この状態でZ軸方向に対して傾斜した面であり、スイッチレバー33が保持位置へ向けて回転すると、嵌合ガイド面33hが嵌合ガイド面34hを押圧してX軸方向への力が伝わり、プッシュレバー34が嵌合解除方向(反時計方向)に回転する。このプッシュレバー34の回転は、嵌合部33fが嵌合部34fを乗り越えるために行われる退避動作である。
【0048】
図5は、スイッチレバー33の嵌合部33fの先端がプッシュレバー34の嵌合部34fの先端を乗り越える状態を示している。プッシュレバー34が嵌合解除方向に回転することにより、プッシュレバー戻しバネ36が引っ張られて伸び、プッシュレバー戻しバネ36が縮まろうとする力によって、プッシュレバー34が嵌合方向(時計方向)へ付勢される。嵌合部33fの先端が嵌合部34fの先端を乗り越えると、嵌合部33fからの嵌合部34fに対する押圧が解除されたプッシュレバー34が、プッシュレバー戻しバネ36の付勢力によって嵌合方向に回転する。
【0049】
蓋12が完全に閉じて押し込み突起31がテープカートリッジ装着部19の挿入空間19aへ最も挿入されると、スイッチレバー33とプッシュレバー34は図6に示す保持状態になる。
【0050】
保持状態では、ヘッド押圧バネ35とプッシュレバー戻しバネ36がそれぞれ伸ばされており、スイッチレバー33に対して保持解除方向への付勢力が作用している。ここで、スイッチレバー33の嵌合面33gに対してプッシュレバー34の嵌合面34gが当接し、嵌合部33fと嵌合部34fの嵌合によって、保持解除方向へのスイッチレバー33の回転が規制される。プッシュレバー戻しバネ36の付勢力は、プッシュレバー34を嵌合方向に牽引しており、嵌合部33fと嵌合部34fの嵌合が維持される。
【0051】
保持状態では、保持溝31aの内面が保持突起33eに当接して、挿入空間19aから引く抜く方向(図6の上方)への押し込み突起31の移動が規制されることにより、蓋12を開く動作が規制される。保持状態になる際には、スイッチレバー33が保持方向に回転するにつれて、蓋12を保持する力が徐々に強まる。また、保持状態では、ヘッドアーム32とスイッチレバー33とヘッド押圧バネ35の作用によって、印刷ヘッド13が印刷位置(図3)に保持される。保持状態になる際には、スイッチレバー33が保持方向に回転するにつれて、印刷ヘッド13を印刷位置に保持する力が徐々に強まる。
【0052】
以上のように、蓋12を閉じると、保持機構30は、印刷ヘッド13を印刷位置に保持すると共に、蓋12の開放を規制する(蓋12をロックした)状態になる。
【0053】
続いて、蓋12を閉じた状態から開く場合を説明する。前述の通り、蓋12を閉じた状態では、スイッチレバー33とプッシュレバー34は図6に示す保持状態にある。蓋12が閉じた状態で解除ノブ17を操作すると、中継部材(図示略)が移動してロック解除部(図示略)が被操作突起34eに当接する。ロック解除部は被操作突起34eを嵌合解除方向(反時計方向)に押圧し、プッシュレバー34が、プッシュレバー戻しバネ36を引っ張って伸ばしながら、嵌合解除方向に回転する。
【0054】
嵌合部33fと嵌合部34fの嵌合は、プッシュレバー34が嵌合解除方向への回転を開始すると直ちに解除されるのではなく、嵌合面33gと嵌合面34gが当接する長さ分だけプッシュレバー34が回転してから嵌合が解除される。図5に示すように、プッシュレバー34の嵌合部34fの先端がスイッチレバー33の嵌合部33fの先端を越えるまでプッシュレバー34が嵌合解除方向に回転すると、嵌合面33gと嵌合面34gの当接(嵌合部33fと嵌合部34fの嵌合)が解除される。この状態で、伸ばされた状態のヘッド押圧バネ35とプッシュレバー戻しバネ36によって、スイッチレバー33が保持解除方向(時計方向)に付勢されており、嵌合部33fと嵌合部34fの嵌合解除に伴って、スイッチレバー33が付勢力によって保持解除方向に回転する。
【0055】
スイッチレバー33が付勢力によって保持解除方向に回転すると、スイッチレバー33とプッシュレバー34は図4に示す保持解除状態になる。より詳しくは、スイッチレバー33が保持解除方向に回転するにつれて、蓋12と印刷ヘッド13を保持する力が徐々に弱まり、その後に保持解除状態になる。つまり、蓋12と印刷ヘッド13に対する保持は、スイッチレバー33が保持解除方向への回転を開始したら直ちに解除されるものではない。保持解除状態では、図5の状態から、プッシュレバー戻しバネ36の付勢力によってプッシュレバー34が嵌合方向(時計方向)に回転しているが、嵌合部33fに対する嵌合部34fのZ軸方向の位置関係が変化しており、嵌合部33fと嵌合部34fが嵌合しなくなる。また、Z軸方向での保持突起33eと保持溝31aの位置変化によって、押し込み突起31が蓋12の開放方向に押し込まれていて、蓋12が所定量開いている。さらに、スイッチレバー33が保持解除方向に回転して、ヘッドアーム制御面33jが第2腕部32cを押し込むことによって、ヘッドアーム32が図3の時計方向に回転して、印刷ヘッド13が印刷位置から離間位置に移動してプラテンローラ14から離れる。
【0056】
以上のように、蓋12が閉じた状態で解除ノブ17を操作すると、保持機構30の動作により、印刷ヘッド13を離間位置に移動させると共に、蓋12の開放を規制しない(蓋12のロックを解除した)状態になる。
【0057】
図4の状態で、本体11に対して蓋12が少し開いており、ユーザーが蓋12を把持して手動で図2の位置まで開くことができる。蓋12を開く際に、保持突起33eが押し込み突起31によって押圧されて、スイッチレバー33が図4の位置から僅かに保持解除方向(時計方向)に回転し、押し込み突起31の先端が保持突起33eの位置を通過すると、スイッチレバー33が図4の位置に戻る。
【0058】
ところで、蓋12が閉じた保持状態(図6)で外部から衝撃が加わって、蓋12を開かせる方向の力が作用する場合がある。このような外部からの力は、保持溝31aと保持突起33eを介して押し込み突起31からスイッチレバー33に伝わり、さらに嵌合部33fと嵌合部34fを介してスイッチレバー33からプッシュレバー34に伝わる。保持機構30は、スイッチレバー33からプッシュレバー34に対して伝わる力によっては保持状態の解除が生じない構成を有している。すなわち、保持機構30は、蓋12が閉じてスイッチレバー33により保持が行われている保持状態で、蓋12からスイッチレバー33を保持解除方向へ回転させる力が加わった場合に、プッシュレバー34を嵌合解除方向へ回転させない嵌合維持手段を備えている。
【0059】
図7は、嵌合維持手段の説明として、保持機構30の構造の一部を模式的に示したものである。プッシュレバー34を回動可能に支持する支持軸34aの中心を回動軸Oとする。保持機構30の保持状態では、スイッチレバー33の嵌合面33gとプッシュレバー34の嵌合面34gが当接する。嵌合面33gと嵌合面34gはそれぞれ直線状(平面状)の面であり、保持状態では嵌合面33gと嵌合面34gが平行になる。嵌合面33gと嵌合面34gの接触領域を接触面S1とする。
【0060】
蓋12を開かせる外部からの力は、スイッチレバー33を保持解除方向(図6の時計方向)に回転させようとする。すると、スイッチレバー33の嵌合面33gからプッシュレバー34の嵌合面34gに対して、接触面S1に対して略垂直な方向に押圧する力F1が加わる。嵌合面34gに対して力F1が作用する点を作用点P1とする。
【0061】
ここで、作用点P1と回動軸Oを結ぶ第1の直線La1と、力F1の作用方向に対して垂直な第2の直線Lb1との間の角度Q1が、鋭角に設定されている。換言すれば、作用点P1から力F1の作用方向と反対方向に延長した仮想線M1と、第2の直線Lb1とにより挟まれる領域内に、第1の直線La1と回動軸Oが位置する設定にしている。なお、第2の直線Lb1は接触面S1と平行であり、回動軸Oに対して垂直で接触面S1に沿う直線を第2の直線Lb1と定義することもできる。
【0062】
以上の設定により、嵌合部33fから嵌合部34fに対して力F1が作用したときに、プッシュレバー34には嵌合方向(図6の時計方向)へ回転させる力が加わる。その結果、プッシュレバー34が嵌合解除方向(図6の反時計方向)に回転せず、嵌合部33fと嵌合部34fの嵌合が維持される。
【0063】
なお、図6の保持状態で、嵌合部33fの先端が第2腕部34cの側部に近接しており、第2腕部34cの側部が嵌合部33fの先端に当接することで、嵌合方向へのプッシュレバー34の回転が制限される。従って、プッシュレバー34は、嵌合方向への力を受けても、図6の位置から嵌合方向へ大きく回転することはない。
【0064】
以上のように構成された嵌合部33fと嵌合部34fが、嵌合維持手段を構成する。より詳しくは、回動軸O(支持軸34a)に対する、スイッチレバー33の嵌合部33fとプッシュレバー34の嵌合部34fにおける互いの嵌合面33g、34gの形状の設定によって、嵌合維持手段としての機能を備えるようになる。そのため、スイッチレバー33とプッシュレバー34以外の部材を別途備える必要が無く、部品点数が少ないシンプルな構造で効果を得ることができる。
【0065】
保持状態において、嵌合面33gと嵌合面34gは互いに略平行な直線状(平面状)の面であるため、第2の直線Lb1(接触面S1)は嵌合面33gと嵌合面34gに沿う方向の線となる。力F1の作用点P1は、接触面S1の範囲内の任意の位置に設定される。例えば、接触面S1の中央に作用点P1を設定する。なお、接触面S1上で力F1が加わるポイントが設計において定まっている場合には、接触面S1の中央ではなく、当該ポイントに作用点P1を設定してもよい。
【0066】
第1の直線La1と第2の直線Lb1との間の角度Q1については、後述するオーバーストロークなどを考慮すると、小さすぎることは好ましくない。一例として、第1の実施形態の保持機構30では、接触面S1の中央に作用点P1を設定した場合に、角度Q1が85°である。
【0067】
図8は、第1の実施形態の保持機構30の変形例における嵌合維持手段を示したものである。保持状態でのスイッチレバー33の嵌合面33gとプッシュレバー34の嵌合面34gの接触領域を接触面S2とする。蓋12を開かせる外部からの力によって、スイッチレバー33の嵌合面33gからプッシュレバー34の嵌合面34gに対して、接触面S2と略垂直な方向に押圧する方向の力F2が加わる。嵌合面34gに対して力F2が作用する点を作用点P2とする。図8の場合は、接触面S2の中央に作用点P2を設定している。
【0068】
この変形例では、作用点P2と回動軸Oを結ぶ第1の直線La2と、力F2の作用方向に対して垂直な第2の直線Lb2との間の角度Q2が、直角(90°)に設定されている。換言すれば、作用点P2から力F2の作用方向と反対方向に延長した仮想線が、第1の直線La2と一致していて、回動軸O上を通る。なお、第2の直線Lb2は接触面S2と平行である。
【0069】
以上の設定により、嵌合部33fから嵌合部34fに対して力F2が作用したときに、プッシュレバー34に対して回動軸Oを中心とする半径方向(第1の直線La2に沿う方向)の力だけが作用し、半径方向に対して傾く分力が発生しない。つまり、プッシュレバー34には、嵌合解除方向(図6の反時計方向)と嵌合方向(図6の時計方向)のどちらにも回転させる力が加わらない。その結果、プッシュレバー34が嵌合解除方向に回転せず、嵌合部33fと嵌合部34fの嵌合が維持される。
【0070】
図9は、保持機構30とは異なる比較例の保持機構130を示している。比較例の保持機構130では、スイッチレバー133の嵌合部133fとプッシュレバー134の嵌合部134fの形状が異なっている。より詳しくは、保持状態で当接するスイッチレバー133の嵌合面133gとプッシュレバー134の嵌合面134gの方向(角度)が、先に説明した嵌合面33g及び嵌合面34gとは異なっている。それ以外の構成要素については、図9において第1の実施形態の保持機構30の構成要素と同じ符号で示し、説明を省略する。
【0071】
保持状態では、スイッチレバー133の嵌合面133gとプッシュレバー134の嵌合面134gが互いに平行になって当接する。図10に示すように、比較例の保持機構130において、保持状態での嵌合面133gと嵌合面134gの接触領域を接触面S3とする。蓋12を開かせる外部からの力によって、スイッチレバー133の嵌合面133gからプッシュレバー134の嵌合面134gに対して、接触面S3と略垂直な方向に押圧する方向の力F3が加わる。嵌合面134gに対して力F3が作用する点を作用点P3とする。図10の場合は、接触面S3の中央に作用点P3を設定している。
【0072】
この比較例では、作用点P3と回動軸Oを結ぶ第1の直線La3と、力F3の作用方向に対して垂直な第2の直線Lb3(接触面S3と平行な線)との間の角度Q3が、鈍角に設定されている。一例として、角度Q3が105°である。そして、力F3の作用方向と反対方向に延長した仮想線M3と、第2の直線Lb3とにより挟まれる領域の外側(図10における左側)に、第1の直線La3と回動軸Oが位置している。
【0073】
蓋12を開かせる外部からの力は、スイッチレバー133を保持解除方向(図9の時計方向)に回転させようとする。比較例の構成では、嵌合部133fから嵌合部134fに対して力F3が作用したときに、プッシュレバー134には嵌合解除方向(図9の反時計方向)へ回転させる力が加わる。その結果、プッシュレバー戻しバネ36のバネ力よりも大きい力F3が加わった場合に、プッシュレバー134が嵌合解除方向に回転し、嵌合部133fと嵌合部134fの嵌合が解除されるおそれがある。つまり、解除ノブ17を操作していないにも関わらず、スイッチレバー133とプッシュレバー134が嵌合する保持状態が解除されるおそれがある。
【0074】
嵌合部133fと嵌合部134fの嵌合が解除されてスイッチレバー133が保持解除方向(図9の時計方向)へ回転すると、印刷ヘッド13が印刷位置に保持されなくなり、印刷品位に影響が及んでしまう。また、スイッチレバー133による押し込み突起31の保持が解除されて、蓋12に対するロックが解除されてしまう。
【0075】
なお、嵌合解除方向へのプッシュレバー134の回転量が小さい場合には、嵌合部133fと嵌合部134fの嵌合が完全には解除されずに、プッシュレバー戻しバネ36の付勢力によって、プッシュレバー134が再び嵌合方向に回転する。しかし、この場合も、プッシュレバー134の嵌合解除方向への回転に伴って、スイッチレバー133が保持解除方向へ多少の回転を行って、印刷ヘッド13の位置精度に影響が及ぶ可能性がある。
【0076】
このような問題を有する比較例に対し、図7及び図8に示す第1の実施形態及び変形例の構成では、スイッチレバー33の嵌合部33fからプッシュレバー34の嵌合部34fに対して力F1や力F2が作用した場合に、プッシュレバー34を嵌合解除方向へ回転させる力が発生しない。これにより、印刷位置にある印刷ヘッド13の保持を解除するような動作が生じず、印刷品位を好適に保つことができる。
【0077】
続いて、保持機構30におけるオーバーストロークについて説明する。図11は、先に説明した図7に、プッシュレバー34の嵌合面34gのうち嵌合部34fの先端側の点Aminと、スイッチレバー33の嵌合面33gのうち嵌合部33fの先端側の点Amaxとを追記したものである。角度Q1を鋭角にすると、接触面S1上で、点Aminが回動軸Oから最も近くに位置し、点Amaxが回動軸Oから最も遠くに位置する。つまり、プッシュレバー34の回動中心である回動軸Oから点Aminまでの距離B1と、回動軸Oから点Amaxまでの距離B2は、B1<B2の関係になる。
【0078】
前述したように、蓋12を閉じる際にスイッチレバー33が保持方向に回転すると、嵌合部33fが嵌合部34fを乗り越えるための退避動作として、プッシュレバー34が嵌合解除方向に回転する(図5)。角度Q1を鋭角にして距離B1よりも距離B2が大きい関係にあると、図6の保持状態でのスイッチレバー33の位置よりも、図5のプッシュレバー34の退避動作段階でのスイッチレバー33の位置の方が、保持方向(反時計方向)に進んでいる必要がある。つまり、保持状態になる直前で、距離B1と距離B2の差分だけスイッチレバー33を保持方向へオーバーストロークさせる必要がある。スイッチレバー33をオーバーストロークさせるには、スイッチレバー33を動作させる押し込み突起31を挿入方向にオーバーストロークさせる必要がある。
【0079】
オーバーストロークを設定するには、保持状態において、スイッチレバー33の嵌合部33fとプッシュレバー34の嵌合部34fとの間に、オーバーストローク分のクリアランスを確保する必要がある。このクリアランスが大きすぎると、閉じた状態の蓋12にガタツキが生じたり、印刷時にプラテンローラ14に対する印刷ヘッド13の接触圧が低下したりするおそれがある。
【0080】
角度Q1が小さくなるほど距離B1と距離B2の差が大きくなり、距離B1と距離B2の差が大きくなるほどオーバーストロークの量が大きくなる。従って、角度Q1を鋭角に設定する場合に、あまり角度を小さくしすぎないことが好ましい。第1の実施形態の保持機構30では、角度Q1を鈍角にする場合に約85°に設定しており、実用上の支障が無い範囲のオーバーストローク量に抑えている。
【0081】
図12を参照して、オーバーストロークの量を小さくした第2の実施形態の保持機構40を説明する。保持機構40において、第1の実施形態の保持機構30と共通する部分については、同じ符号で示して説明を省略する。
【0082】
保持機構40では、スイッチレバー33の嵌合部33fとプッシュレバー34の嵌合部34fがそれぞれ、直線状(平面状)ではなく、凸の円弧状(円筒状)の嵌合面41と嵌合面42を有している。図12に示す保持状態では、嵌合面41と嵌合面42が互いに点の領域(あるいは、スイッチレバー33とプッシュレバー34の厚みに応じて、Y軸方向に延びる線状の領域)で接触する。
【0083】
図13は、嵌合維持手段の説明として、保持機構40の構造の一部を模式的に示したものである。スイッチレバー33における円弧状の嵌合面41の中心を中心41aとし、プッシュレバー34における円弧状の嵌合面42の中心を中心42aとする。嵌合面41の曲率と嵌合面42の曲率は等しい。嵌合面41と嵌合面42が接触する接触点を作用点P4とする。作用点P4は、中心41aと中心42aを結ぶ直線上に位置する。嵌合面41及び嵌合面42の作用点P4における接線を接線Lb4とする。
【0084】
保持機構40の保持状態で、蓋12を開かせるような外部からの力が加わると、嵌合面41から嵌合面42に対して、作用点P4から中心42aに向かう方向(接線Lb4と略垂直な方向)の力F4が加わる。
【0085】
回動軸Oと作用点P4を結ぶ第1の直線La4と、力F4の作用方向に対して垂直な第2の直線である接線Lb4との間の角度Q4が、鋭角に設定されている。これにより、嵌合部33fから嵌合部34fに対して力F4が作用したときに、プッシュレバー34には嵌合方向(図12の時計方向)へ回転させる力が加わる。その結果、プッシュレバー34が嵌合解除方向(図12の反時計方向)に回転せず、嵌合部33fと嵌合部34fの嵌合が維持される。
【0086】
嵌合面42のうち、プッシュレバー34の回動中心である回動軸Oから最も遠い位置を点Cmin、嵌合面41のうち、回動軸Oから最も近い位置を点Cmaxとする。角度Q4が鋭角である場合、プッシュレバー34の回動中心である回動軸Oから点Cminまでの距離D1と、回動軸Oから点Cmaxまでの距離D2は、D1<D2の関係になる。蓋12を閉じる際に、保持状態になる直前で嵌合部33fが嵌合部34fを乗り越える段階において、距離D1と距離D2の差分だけスイッチレバー33を保持方向へオーバーストロークさせる必要がある。
【0087】
互いに凸の円弧形状である嵌合面41と嵌合面42の場合、回動軸Oから見て、点Cmaxは作用点P4を頂点とした凸曲面上に位置し、点Cminは作用点P4を頂点とした凹曲面上に位置する。そのため、嵌合面33gと嵌合面34gが直線状(平面状)である場合(第1の実施形態)に比べて、点Cmaxは回動軸Oに近づき、点Cminは回動軸Oから遠ざかることになる。その結果、距離D1と距離D2の差が小さくなり、保持機構40が保持状態に動作する際の、スイッチレバー33及び押し込み突起31のオーバーストローク量を小さくできる。
【0088】
嵌合面41と嵌合面42の曲率を大きく(曲率半径を小さく)するほど、点Cmaxが回動軸Oに近づき、点Cminが回動軸Oから遠ざかる傾向となるため、距離D1と距離D2の差が小さくなる。但し、嵌合面41と嵌合面42の曲率が大きすぎると、当接による摩耗が生じやすくなったり、面形状の精度確保が難しくなったりするので、オーバーストローク量の低減効果とのバランスを考慮して適度な曲率に設定することが望ましい。
【0089】
以上のように、保持機構40では、スイッチレバー33の嵌合部33fとプッシュレバー34の嵌合部34fにおいて、凸の円弧状の嵌合面41と嵌合面42を適用することによって、オーバーストローク量を小さくさせることが可能である。これにより、閉じた状態の蓋12のガタツキを抑制したり、印刷時にプラテンローラ14に対する印刷ヘッド13の接触圧の低下を防いだりすることができる。
【0090】
なお、保持機構40では嵌合面41と嵌合面42の曲率が同じであるが、2つの嵌合面の曲率が異なっていてもよい。
【0091】
以上の実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0092】
例えば、上記実施形態の印刷装置10は、印刷ヘッド13がプラテンローラ14への接近方向と離間方向に移動するタイプであるが、プラテンローラ14が印刷ヘッド13への接近方向と離間方向に移動するタイプの印刷装置に適用することも可能である。この場合、プラテンローラ14を支持する可動のローラ支持部材を備え、ヘッドアーム32に相当する部材を介してローラ支持部材を動作させて、プラテンローラ14を印刷位置(印刷ヘッド13に当接する位置)と離間位置(印刷ヘッド13から離れる位置)に移動させてもよい。
【0093】
第1の実施形態の保持機構30は、それぞれが直線状(平面状)の嵌合面33gと嵌合面34gを備え、第2の実施形態の保持機構40は、それぞれが凸の円弧状(円筒状)の嵌合面41と嵌合面42を備えている。変形例として、スイッチレバー33側の嵌合面とプッシュレバー34側の嵌合面の一方を直線状(平面状)の面とし、他方を円弧状(円筒状)の面としてもよい。少なくとも一方の嵌合面を円弧状にすることで、前述したオーバーストローク量の低減効果が得られる。
【0094】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
開閉部材が閉じると保持方向へ回転して前記開閉部材を保持して開く動作を規制し、前記保持方向とは反対の保持解除方向への回転により前記保持を解除する第1回動部材と、
前記開閉部材が閉じると嵌合方向へ回転して前記第1回動部材に嵌合して前記保持解除方向への回転を規制し、前記嵌合方向とは反対の嵌合解除方向への回転により前記嵌合を解除する第2回動部材と、
前記開閉部材が閉じて前記第1回動部材により前記保持が行われている保持状態で、前記開閉部材から前記第1回動部材を前記保持解除方向へ回転させる力が加わった場合に、前記第2回動部材を前記嵌合解除方向へ回転させない嵌合維持手段と、
を備えることを特徴とする保持機構。
[付記2]
前記嵌合維持手段は、前記第1回動部材が前記第2回動部材を押圧する力の作用点と前記第2回動部材の回動軸とを結ぶ第1の直線と、前記押圧する力の作用方向に対して垂直な第2の直線との間の角度が、鋭角又は直角になるように前記第1回動部材及び前記第2回動部材にそれぞれ設けた嵌合部を備えていることを特徴とする、付記1に記載の保持機構。
[付記3]
前記第1回動部材の前記嵌合部と前記第2回動部材の前記嵌合部はそれぞれ直線状の嵌合面を有し、前記第2の直線は互いの前記嵌合面に沿う方向の線であることを特徴とする、付記2に記載の保持機構。
[付記4]
前記第1回動部材の前記嵌合部と前記第2回動部材の前記嵌合部はそれぞれ凸の円弧状の嵌合面を有し、前記第2の直線は互いの前記嵌合面の接触点における接線であることを特徴とする、付記2に記載の保持機構。
[付記5]
前記第1回動部材と前記第2回動部材の間に、前記保持状態で、前記第1回動部材を保持解除方向へ付勢し、前記第2回動部材を嵌合方向へ付勢する付勢部材を備えることを特徴とする、付記1から付記4のいずれかに記載の保持機構。
[付記6]
前記保持方向への前記第1回動部材の回転によって印刷ヘッドとプラテンローラを接近させ、前記保持解除方向への前記第1回動部材の回転によって前記印刷ヘッドと前記プラテンローラを離間させる、付記1から付記5のいずれかに記載の保持機構を備える印刷装置。
[付記7]
閉じた状態の前記開閉部材は、被印刷媒体を収容したカートリッジを着脱可能なカートリッジ装着部を覆う、付記6に記載の印刷装置。
【符号の説明】
【0095】
10 :印刷装置
11 :本体
12 :蓋(開閉部材)
13 :印刷ヘッド
14 :プラテンローラ
15 :テープカッター
19 :テープカートリッジ装着部(カートリッジ装着部)
20 :テープカートリッジ(カートリッジ)
30 :保持機構
31 :押し込み突起
31a :保持溝
32 :ヘッドアーム
33 :スイッチレバー(第1回動部材)
33a :支持軸
33e :保持突起
33f :嵌合部(嵌合維持手段)
33g :嵌合面
34 :プッシュレバー(第2回動部材)
34a :支持軸
34e :被操作突起
34f :嵌合部(嵌合維持手段)
34g :嵌合面
35 :ヘッド押圧バネ
36 :プッシュレバー戻しバネ(付勢部材)
40 :保持機構
41 :嵌合面
42 :嵌合面
F1~F4 :力
La1~La4 :第1の直線
Lb1~Lb3 :第2の直線
Lb4 :接線(第2の直線)
O :回動軸
P1~P4 :作用点
Q1 :角度(鋭角)
Q2 :角度(直角)
Q3 :角度(鈍角)
Q4 :角度(鋭角)
S1~S3 :接触面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13