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特開2023-141649搬送治具、成膜システム及び被覆物品製造方法
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  • 特開-搬送治具、成膜システム及び被覆物品製造方法 図1
  • 特開-搬送治具、成膜システム及び被覆物品製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141649
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】搬送治具、成膜システム及び被覆物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H01L21/68 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048072
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳平
(72)【発明者】
【氏名】川村 祐介
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA04
5F131BA51
5F131CA12
5F131DA03
5F131DA22
5F131GA05
5F131GA23
5F131GA66
5F131GA82
5F131GA87
(57)【要約】
【課題】比較的安価にワークへの塵埃の付着を抑制できる搬送治具を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る搬送治具1は、ワークWを保持するトレイ10と、前記トレイ10の上に前記ワークWを覆うよう配置されるカバー20と、を備え、前記カバー20は、上面に粘着剤層21を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するトレイと、
前記トレイの上に前記ワークを覆うよう配置されるカバーと、
を備え、
前記カバーは、上面に粘着剤層を有する、搬送治具。
【請求項2】
前記カバーは、複数の前記粘着剤層を提供する多層粘着シートを有する、請求項1に記載の搬送治具。
【請求項3】
前記カバーは、前記トレイに当接する面に緩衝材を有する、請求項1又は2に記載の搬送治具。
【請求項4】
前記トレイは、それぞれ前記ワークを保持する複数の保持部を有し、
前記トレイには、それぞれ一部の前記保持部を覆うよう複数のカバーが配置される、請求項1又は2に記載の搬送治具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の搬送治具に保持された状態で搬送されるワークに成膜を行う成膜システムであって、
前記ワークに成膜を行う成膜室と、
前記成膜室の直前に設けられ、前記トレイからの前記カバーの取り外しを行う前室と、
前記前室及び前記成膜室と隔離して設けられ、前記トレイへの前記ワークの配置及び前記カバーの配置を行う供給室と、
前記前室及び前記供給室の間で前記トレイを循環搬送する搬送機構と、
を備える、成膜システム。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の搬送治具を用い、前記ワークに成膜を行うことによって被覆物品を製造する被覆物品製造方法であって、
供給室の中で前記トレイへの前記ワークの配置及び前記ワークが配置された前記トレイへの前記カバーの配置を行う工程と、
前記供給室から隔離して設けられる前室の中で前記トレイから前記カバーを取り外す工程と、
前記前室に隣接して設けられる成膜室の中で前記ワークに成膜を行う工程と、
を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送治具、成膜システム及び被覆物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板、半導体チップ等のワークに成膜を行う成膜システムでは、ワークをトレイ上に載置した状態で成膜室に搬入することが多い。ワークに塵埃が付着していると、製品(被覆物品)に欠陥を生じる場合がある。このため、ワークを搬送するトレイに蓋を設けることで、ワークへの塵埃の付着を抑制することも行われている。
【0003】
さらに、ワークへの塵埃の付着を抑制するために、トレイ及び蓋の内面に粘着材を配設し、ワークと共にトレイの内部に持ち込まれた塵埃を捕集することも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-298080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より厳しくワークへの塵埃の付着による製造欠陥を抑制する方法として、ワークを保持するトレイを成膜室に供給するためのコンベア等を含めたシステム全体を準クリーンルーム内に配設することが一般的である。付加価値の高い半導体装置等を製造する場合には、大きなクリーンルームを設けることもできる。しかしながら、比較的安価な被覆物品及び製造量が小さい被覆物品の製造では設備コストの増大につながるクリーンルームはできるだけ小さくすることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、比較的安価にワークへの塵埃の付着を抑制できる搬送治具、成膜システム及び被覆物品製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る搬送治具は、ワークを保持するトレイと、前記トレイの上に前記ワークを覆うよう配置されるカバーと、を備え、前記カバーは、上面に粘着剤層を有する。
【0008】
上述の一態様に係る搬送治具において、前記カバーは、複数の前記粘着剤層を提供する多層粘着シートを有してもよい。
【0009】
上述の一態様に係る搬送治具において、前記カバーは、前記トレイに当接する面に緩衝材を有してもよい。
【0010】
上述の搬送治具において、前記トレイは、それぞれ前記ワークを保持する複数の保持部を有し、前記トレイには、それぞれ一部の前記保持部を覆うよう複数のカバーが配置されてもよい。
【0011】
本発明の別の態様に係る搬送治具は、上述の搬送治具に保持された状態で搬送されるワークに成膜を行う成膜システムであって、前記ワークに成膜を行う成膜室と、前記成膜室の直前に設けられ、前記トレイからの前記カバーの取り外しを行う前室と、前記前室及び前記成膜室と隔離して設けられ、前記トレイへの前記ワークの配置及び前記カバーの配置を行う供給室と、前記前室及び前記供給室の間で前記トレイを循環搬送する搬送機構と、を備える。
【0012】
本発明のさらに別の態様に係る搬送治具は、上述の搬送治具を用い、前記ワークに成膜を行うことによって被覆物品を製造する被覆物品製造方法であって、供給室の中で前記トレイへの前記ワークの配置及び前記ワークが配置された前記トレイへの前記カバーの配置を行う工程と、前記供給室から隔離して設けられる前室の中で前記トレイから前記カバーを取り外す工程と、前記前室に隣接して設けられる成膜室の中で前記ワークに成膜を行う工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的安価にワークへの塵埃の付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送治具の構成を示す模式断面図である。
図2図1の搬送治具を用いる成膜システムの構成を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送治具1の構成を示す模式断面図である。搬送治具1は、ワークWを搬送するために使用される。
【0017】
搬送治具1は、ワークWを保持するトレイ10と、トレイ10の上にワークWを覆うよう配置されるカバー20と、を備える。搬送治具1によって搬送するワークWとしては、特に限定されないが、表面に成膜されることにより被覆物品を構成する部材、典型的にはガラス基板が挙げられる。
【0018】
トレイ10は、1つのワークWを保持するよう構成されてもよいが、複数のワークWを保持するよう構成されることが好ましい。本実施形態のトレイ10は、それぞれ単一のワークWを保持する複数の保持部11を有する。保持部11は、平面視で縦横に配列して配設されている。トレイ10は、例えばステンレス鋼等の強度を有する材料から形成され得る。
【0019】
保持部11は、それぞれトレイ10上でワークWを位置決めして保持できるよう形成され、例えば図示するようにワークWが嵌合する凹部とされ得る。また、保持部11は、ワークWの形態によっては、例えば吸着パッド等を用いたくない場合にワークWの取り出しのためのハンド等をワークWの側部に差し込むことができるよう形成されてもよい。また、保持部11は、ワークWの下側に隙間を形成するよう構成されてもよい。保持部11の形状は、ワークWに対して行う成膜等の処理に要求される品質、例えばワークWの外縁部の裏面への被膜の回り込み等を考慮して必要な密着性(隙間)を実現できるよう設計されればよい。また、保持部11の形状によらず、ワークWを配置したトレイ10の上にさらにマスク(不図示)を配置してもよい。
【0020】
カバー20は、トレイ10に一対一に対応し、トレイ10に保持される全ての保持部11ひいてはそれらに保持される全てのワークWを覆うよう形成されてもよいが、1つのトレイ10に対して複数のカバー20が使用されてもよい。したがって、それぞれのカバー20は、トレイ10の一部の保持部11、つまり個々の保持部11又は少数の保持部11をそれぞれ覆うよう形成され得る。1つのトレイ10に複数のカバー20を使用することによって、トレイ10に保持されるワークWを1つずつ取り出す際に、先のワークWの取り出し作業で塵埃が舞い上がったとしても、後から取り出すワークWに塵埃が付着することを防止できる。カバー20は、例えばアルミニウム等の強度を有しつつ、比較的軽量な材料から形成され得る。
【0021】
カバー20は、上面(トレイ10と反対側の面)に、好ましくは平面視でカバー20の略全面に、粘着剤層21を有する。カバー20の最上面に粘着剤層21が存在することによって、カバー20の上面に落下した塵埃を粘着剤層21が捕捉するので、カバー20を取り外してワークWを処理する際に、カバー20の上面の塵埃が落下してワークWに付着することを防止できる。これにより、搬送治具1は、ワークWを保持する保持部11をカバー20で覆った状態で、空気の清浄度が厳しく管理されていない空間を移動してワークWを搬送したとしても、ワークWに塵埃が付着するリスクを大きく低減できる。したがって、ワークWを加工する設備では、搬送治具1にワークWを保持させる場所と、カバー20を取り外してワークに加工を行う場所のみの空気の清浄度を管理すればよい。
【0022】
カバー20の最上面の粘着剤層21は、複数の粘着剤層21と、粘着剤層21と交互に配置されて上側の粘着剤層21を担持する複数の剥離シート22と、を含む多層粘着シート23によって提供されることが好ましい。つまり、カバー20が複数の粘着剤層21を備えた多層粘着シート23を有することによって、最上面の粘着剤層21に塵埃が付着して粘着力が低下した場合に、最上面の粘着剤層21を剥離シート22と共に除去することによって次の新しい粘着剤層21を最上面に配置できるので、搬送治具1を繰り返し使用することができる。粘着剤層21は、例えば水性アクリル乳酸等から形成され得る。剥離シート22は、例えば低密度ポリエチレン等から形成され得る。このような多層粘着シート23としては、例えばクリーンルームの入口等の床面に配置される除塵マットに使用されるものを使用することができる。
【0023】
また、カバー20は、トレイ10に当接する面に緩衝材24を有することが好ましい。これにより、トレイ10及びカバー20が当接する際に削れて生じる異物のワークWへの付着を防止できる。緩衝材24は、例えば塩化ビニル等の樹脂フィルムを基材とする粘着テープによって形成することができる。
【0024】
続いて、搬送治具1に保持された状態で搬送されるワークWに成膜を行う成膜システム100について説明する。図2は、成膜システム100の構成を示す模式平面図である。成膜システム100は、本発明に係る成膜システムの一実施形態である。成膜システム100は、ワークWの表面に成膜を行うことによって被覆物品を製造するシステムである。成膜システム100は、具体例として、ガラス基板であるワークWに反射防止膜等を形成することにより被覆物品の一例であるカバーガラスを製造するために使用されることが企図される。図2では、分かりやすいよう、成膜前のワークWには疎なハッチングを付し、成膜後のワークWには密なハッチングを付する。
【0025】
成膜システム100は、ワークWに成膜を行う成膜室101と、成膜室101の直前に設けられ、トレイ10からのカバー20の取り外し等の準備作業を行う前室102と、前室102及び成膜室101と隔離して設けられ、トレイ10へのワークWの配置及びカバー20の配置を行う供給室103と、前室102及び供給室103の間で少なくともトレイ10を循環搬送する搬送機構104と、を備える。
【0026】
成膜室101は、内部空間を減圧できる真空チャンバであり、内部に例えばスパッタリング、CVD等の周知の成膜を行うための装置が設けられる。成膜室101は、内部の圧力をできるだけ変えずにトレイ10の搬入及び搬出を行うために、圧力を調整できるロードロックを有することが好ましい。
【0027】
前室102は、内部にトレイ10からカバー20を取り外す機構が設けられる。前室102には、例えばロボット等から構成され、カバー20の取り外しを行うカバー取り外し機構が設けられ得る。前室102は、ワークWへの塵埃の付着を抑制するために、内部の雰囲気が清浄に保たれるクリーンルームであることが好ましい。前室102において取り外されたカバー20は、トレイ10と共に移送されてもよく、前室102から別途供給室103に返送されてもよい。
【0028】
図示する成膜システム100において、ワークWを保持するトレイ10が成膜室101に導入されることが企図されるが、前室102にトレイ10からワークWを取り出して成膜室101に供給するハンドリング装置が設けられてもよい。また、前室102は、カバー取り外し機構が設けられる場合には成膜室101のロードロックと一体に構成されてもよい。つまり、前室102は内部の圧力を調整可能なチャンバであってもよい。
【0029】
供給室103は、搬送治具1からの成膜されたワークWの取り出し及び搬送治具1への新しいワークWの供給を行うための空間である。搬送治具1への新しいワークWの供給、つまりトレイ10の保持部11へのワークWの配置及びトレイ10へのカバー20の配置は、人手で行われてもよく、ロボット等によって行われてもよい。供給室103は、内部の雰囲気が清浄に保たれるクリーンルームであることが好ましい。
【0030】
搬送機構104は、供給室103から前室102に搬送治具1を供給し、成膜室101から少なくともトレイ10を搬出して供給室103に送り返す。搬送機構104は、例えばベルトコンベア、ローラコンベア等の搬送治具1を搬送する複数のコンベアによって構成され得る。また、搬送機構104は、搬送治具1の搬送を補助するロボットハンドリング装置等を含んでもよい。
【0031】
図示する例では、搬送機構104は、供給室103、前室102及び成膜室101を環状接続するよう形成されているが、供給室103から前室102に搬送治具1を供給する経路に沿って、前室102から供給室103に搬送治具1(トレイ10)を送り返すよう構成されてもよい。
【0032】
搬送機構104は、前室102の上流側に搬送治具1を待機させ、成膜室101及び前室102が要求するタイミングで搬送治具1を供給するバッファ装置としても機能するよう構成され得る。また、搬送機構104は、供給室103とは異なる場所に、トレイ10から成膜済みのワークWを取り出すための作業空間を提供してもよい。ワークWの取り出し作業のための空間は、雰囲気の清浄度を厳密に管理しない空間であってもよい。
【0033】
本実施形態の成膜システム100では、供給室103と前室102だけをクリーンルームとすれば、成膜前のワークWに塵埃が付着することを効果的に防止できる。このため、成膜システム100全体をクリーンルーム内に配設しなくてもよいため、設備コストを大きく抑制しながら、ワークWへの塵埃の付着を抑制して被覆物品の品質及び歩留まりを向上できる。
【0034】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態に係る被覆物品製造方法は、成膜システム100において、搬送治具1を用いてワークWを搬送し、ワークWに成膜を行うことによって被覆物品を製造する。つまり、本発明の一実施形態に係る被覆物品製造方法は、供給室103の中でトレイ10へのワークWの配置及びワークWが配置されたトレイ10へのカバー20の配置を行う工程と、供給室103から隔離して設けられる前室102の中でトレイ10からカバー20を取り外す工程と、前室102に隣接して設けられる成膜室101の中でワークWに成膜を行う工程と、を備える。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 搬送治具
10 トレイ
20 カバー
11 保持部
21 粘着剤層
22 剥離シート
23 多層粘着シート
24 緩衝材
100 成膜システム
101 成膜室
102 前室
103 供給室
104 搬送機構
W ワーク
図1
図2