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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141650
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20230928BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20230928BHJP
   B60W 20/50 20160101ALI20230928BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/46 ZHV
B60W20/50
F02D29/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048078
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】若山 敬平
(72)【発明者】
【氏名】秋谷 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 義幸
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB08
3D202CC01
3D202CC48
3D202CC58
3D202DD05
3D202DD07
3D202DD18
3D202DD20
3D202DD45
3D202DD46
3G093AA07
3G093AA16
3G093BA10
3G093DA06
3G093DB11
3G093DB28
3G093EA02
3G093EA03
(57)【要約】
【課題】バッテリの過充電を防止し且つエンジンの状態を調査する機会を確保できるハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】走行用の駆動源としてのモータと、モータに給電するバッテリと、エンジンとを備えるハイブリッド車両において、車両の運転モードを通常走行を行うための通常モードからエンジンの状態を調査するための特殊モードに切り替える所定の切替操作が行われたか否かを判定する判定部と、エンジンを制御するエンジン制御部とを設ける。切替操作が行われたことが判定部により判定されると、エンジン制御部によって、エンジンに混合気の燃焼を開始させるとともに、当該燃焼により生じるエンジントルクを前記通常モード時のエンジントルクの最小値以下にさせる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動源としてのモータと、
前記モータに給電するバッテリと、
混合気が燃焼する燃焼室を有するエンジンと、
前記エンジンにより駆動されて発電する発電機と、
車両の運転モードを通常走行を行うための通常モードから前記エンジンの状態を調査するための特殊モードに切り替える所定の切替操作が行われたか否かを判定する判定部と、
前記エンジンを制御するエンジン制御部とを備え、
前記切替操作が行われたことが前記判定部により判定されると、前記エンジン制御部は、前記エンジンに混合気の燃焼を開始させるとともに、当該燃焼により生じるエンジントルクを前記通常モード時のエンジントルクの最小値以下にする、ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記エンジン制御部は、前記切替操作が行われたことが前記判定部により判定された場合であっても、前記バッテリのSOCが所定の判定SOC以上の場合は、前記特殊モードでの車両の運転を禁止する、ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記エンジン制御部は、前記切替操作が行われたことが前記判定部により判定された場合であっても、前記バッテリの温度が所定の範囲から外れている場合は、前記特殊モードでの車両の運転を禁止する、ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
運転者により操作されるアクセルペダルを備え、
前記特殊モードで車両が運転されている場合、前記エンジン制御部は、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいてエンジン回転数およびエンジントルクを変更する可変回転数制御を実施する、ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッド車両において、
前記可変回転数制御の実施時において、前記エンジン制御部は、前記アクセルペダルの踏み込み量が大きいときの方が小さいときよりもエンジン回転数を高くするとともに、エンジン回転数が高いときの方が低いときよりもエンジントルクを低くする、ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項6】
請求項4に記載のハイブリッド車両において、
前記判定部は、車両に搭載された変速機のシフト位置が非走行レンジであるか否かを判定し、
前記切替操作が行われ且つ前記シフト位置が非走行レンジであることが前記判定部により判定された場合に、前記エンジン制御部は、前記可変回転数制御を実施する、ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、
前記判定部は、車両に搭載された変速機のシフト位置が走行レンジであるか否かを判定し、
前記切替操作が行われ且つ前記シフト位置が走行レンジであることが前記判定部により判定された場合、前記エンジン制御部は、エンジン回転数およびエンジントルクをそれぞれ一定の回転数およびトルクに制御する、ことを特徴とするハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンに加えてモータを駆動源として有するいわゆるハイブリッド車両が知られている。例えば、特許文献1には、エンジンおよびモータが車輪に連結されて双方が走行用の駆動源として動作するハイブリッド車両が開示されている。
【0003】
ハイブリッド車両においても、エンジンのみを駆動源として有する車両と同様に、適宜、エンジンの状態を調査する必要がある。例えば、エンジンの部品交換後にはエンジンが適切に動作するかを調べる必要がある。また、エンジンの性能を検査する必要もある。これに対して、特許文献1の車両では、エンジンを制御するコントローラに所定の信号を入力することで、エンジンに関する車両固有の運転停止条件の成否に関わらずエンジンが駆動されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2982746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド車両には、エンジンにより回転駆動される発電機と、発電機から供給される電気を蓄電するバッテリとを備えたものがある。このような車両では、エンジンが回転すると発電機が発電してバッテリに供給される電力が増大する。そのため、当該車両において、エンジンの状態を調査する際に単にエンジンを駆動させてしまうと、バッテリに電力が供給され続けることでバッテリが過充電されるおそれがある。これに対して、バッテリが満充電されるとエンジンを停止するように構成すればバッテリの過充電は防止できる。しかしながら、バッテリの満充電に伴って単にエンジンを停止する構成では、エンジンの駆動機会つまりエンジンの状態を調査する機会が十分に得られなくなる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、バッテリの過充電を防止し且つエンジンの状態を調査する機会を確保できるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、走行用の駆動源としてのモータと、前記モータに給電するバッテリと、混合気が燃焼する燃焼室を有するエンジンと、前記エンジンにより駆動されて発電する発電機と、車両の運転モードを通常走行を行うための通常モードから前記エンジンの状態を調査するための特殊モードに切り替える所定の切替操作が行われたか否かを判定する判定部と、前記エンジンを制御するエンジン制御部とを備え、前記切替操作が行われたことが前記判定部により判定されると、前記エンジン制御部は、前記エンジンに混合気の燃焼を開始させるとともに、当該燃焼により生じるエンジントルクを前記通常モード時のエンジントルクの最小値以下にする、ことを特徴とするハイブリッド車両を提供する。
【0008】
この構成では、切替操作が行われて特殊モードで運転が行われる場合に、エンジンから発電機に付与されるトルクひいては発電機での発電量が少なく抑えられた状態でエンジンが駆動されることになる。そのため、バッテリに供給される電力を少なく抑えつつエンジンを駆動させることができ、バッテリの過充電を防止しながら特殊モードでの運転の機会つまりエンジンの状態を調査する機会を確保できる。
【0009】
前記構成において、好ましくは、前記エンジン制御部は、前記切替操作が行われたことが前記判定部により判定された場合であっても、前記バッテリのSOCが所定の判定SOC以上の場合は、前記特殊モードでの車両の運転を禁止する(請求項2)。
【0010】
この構成によれば、バッテリのSOCが高い状態でエンジンおよび発電機が駆動されてバッテリに給電されるのを回避でき、バッテリが過充電されるのをより確実に防止できる。
【0011】
前記構成において、好ましくは、前記エンジン制御部は、前記切替操作が行われたことが前記判定部により判定された場合であっても、前記バッテリの温度が所定の範囲から外れている場合は、前記特殊モードでの車両の運転を禁止する(請求項3)。
【0012】
この構成によれば、バッテリ温度が不適切な温度で特殊モードで車両が運転されることつまりエンジンが駆動して発電機からバッテリへの給電が開始されるのが回避される。従って、バッテリ温度が不適切な温度でバッテリが充電されてバッテリの劣化が促進されるのを防止できる。
【0013】
前記構成において、好ましくは、運転者により操作されるアクセルペダルを備え、前記特殊モードで車両が運転されている場合、前記エンジン制御部は、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいてエンジン回転数およびエンジントルクを変更する可変回転数制御を実施する(請求項4)。
【0014】
この構成によれば、特殊モードでの運転においてもエンジン回転数を変更することが可能になるので、エンジンの状態を調査する上で必要なエンジン回転数を実現できる。
【0015】
前記構成において、好ましくは、前記可変回転数制御の実施時において、前記エンジン制御部は、前記アクセルペダルの踏み込み量が大きいときの方が小さいときよりもエンジン回転数を高くするとともに、エンジン回転数が高いときの方が低いときよりもエンジントルクを低くする(請求項5)。
【0016】
この構成によれば、特殊モードでの運転において、エンジン回転数を変更しつつエンジンから発電機に付与されるエネルギーを小さく抑えて発電機での発電量およびバッテリに供給される電力を確実に少なく抑えることができる。
【0017】
前記構成において、前記可変回転数制御を実施する条件としては、車両に搭載された変速機のシフト位置が非走行レンジであるという条件が挙げられる(請求項6)。
【0018】
前記構成において、前記判定部は、車両に搭載された変速機のシフト位置が走行レンジであるか否かを判定し、前記切替操作が行われ且つ前記シフト位置が走行レンジであることが前記判定部により判定された場合、前記エンジン制御部は、エンジン回転数およびエンジントルクをそれぞれ一定の回転数およびトルクに制御する(請求項7)。
【0019】
この構成によれば、変速機のシフト位置が走行レンジであることからエンジンの状態を調査する上でエンジン回転数ではなく車速が規定されると考えられる場合、つまり、エンジン回転数を変更する必要がないと考えられる場合に、エンジン回転数およびエンジントルクをそれぞれ一定の回転数およびトルクに制御されることになる。従って、エンジンの状態を適切に調査しつつ、バッテリに供給される電力を低い値に維持することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、バッテリの過充電を防止し且つエンジンの状態を調査する機会を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
図2】車両の制御構成を示すブロック図である。
図3】エンジン制御の手順を示すフローチャートである。
図4】通常制御におけるエンジン回転数とエンジントルクとの関係を示すグラフである。
図5】第2特殊モードにおけるアクセル開度とエンジン回転数およびエンジントルクとの関係を示すグラフである。
図6】第1特殊モードにおけるアクセル開度とエンジン回転数およびエンジントルクとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(車両の全体構成)
以下、図面に基づいて、本発明に係るハイブリッド車両の実施形態を詳細に説明する。図1は、ハイブリッド車両1(以下、車両1という)の構成を概略的に示した図である。車両1は、例えば4輪自動車である。
【0023】
車両1には、モータ10と、インバータ12と、高電圧バッテリ14と、エンジン16と、ジェネレータ18と、コンバータ20と、低電圧バッテリ22と、DC/DCコンバータ24とが搭載されている。また、車両1には、変速機26を含む駆動力伝達装置27が搭載されている。高電圧バッテリ14は請求項の「バッテリ」に相当し、ジェネレータ18は請求項の「発電機」に相当する。
【0024】
高電圧バッテリ14は、モータ10等の車両1の各部に電力を供給するバッテリである。本実施形態では、高電圧バッテリ14としてLiバッテリ(リチウムバッテリ)が車両1に搭載されている。
【0025】
高電圧バッテリ14には、高電圧バッテリ14を流れる電流を検出するバッテリ電流センサSN1および高電圧バッテリ14の温度を検出するバッテリ温度センサSN2等の検出装置が設けられている。
【0026】
低電圧バッテリ22は、高電圧バッテリ14よりも出力電圧の低いバッテリである。本実施形態では、低電圧バッテリ22として鉛バッテリが車両1に搭載されている。例えば、高電圧バッテリ14の公称電圧は24Vであり、低電圧バッテリ22の公称電圧は12Vである。
【0027】
DC/DCコンバータ24は、電気的に高電圧バッテリ14と低電圧バッテリ22との間に設けられている。DC/DCコンバータ24は、高電圧バッテリ14の出力電圧を降圧して低電圧バッテリ3に供給する。
【0028】
モータ10は、走行用の駆動源として車両1に搭載されている。モータ10は、高電圧バッテリ14からの電力供給を受けて回転する。モータ10の出力は、変速機26にて変速されつつ駆動力伝達装置27を介して車輪2に伝達される。本実施形態では、モータ10は、発電機としても作動可能に構成されており、車両1の減速時等に車輪2の回転力を受けて発電して減速エネルギーを回生する。
【0029】
インバータ12は、電気的にモータ10と高電圧バッテリ14の間に設けられている。インバータ12は、高電圧バッテリ14からの直流電流を交流電流に変換してモータ10に供給するとともに、モータ10に供給される電流の周波数を制御する。
【0030】
ジェネレータ18は、エンジン16により回転駆動されて発電する発電機である。ジェネレータ18により生成された電力は高電圧バッテリ14に供給され、これにより高電圧バッテリ14は充電される。本実施形態では、ジェネレータ18として、IPMモータが用いられている。
【0031】
コンバータ20は、電気的にジェネレータ18と高電圧バッテリ14の間に設けられている。コンバータ20は、ジェネレータ18が生成した交流電流を直流電流に変換して高電圧バッテリ14に供給する。
【0032】
エンジン16は、上記のように、ジェネレータ18を回転駆動して発電させるための装置として車両1に搭載されている。エンジン16は、燃料と空気が導入される燃焼室が形成されたエンジン本体(不図示)と、燃焼室で燃料と空気の混合気が燃焼することで回転する出力軸(不図示)とを有する。エンジン16の出力軸はジェネレータ18と連結されており、エンジン16の出力軸が回転することでジェネレータ18は回転する。
【0033】
ジェネレータ18の発電量は、エンジン16の出力に応じて変化する。具体的に、ジェネレータ18の発電量は、エンジントルクとエンジン回転数とのそれぞれに比例して変化する。つまり、エンジントルクとエンジン回転数との積(=エンジントルク×エンジン回転数)が大きいときほどジェネレータ18の発電量は大きくなる。
【0034】
本実施形態では、エンジン16は、ロータリーピストンエンジンであり、燃焼室として機能するロータ収容室と、出力軸としてのエキセントリックシャフトを備える。また、エンジン16は、ロータ収容室と連通する吸気通路に設けられてロータ収容室に導入される吸気の量を変更可能なスロットルバルブ31(図2)と、ロータ収容室に燃料を噴射するインジェクタ32(図2)と、ロータ収容室に形成された空気と燃料の混合気に点火を行う点火プラグ33(図2)とを有する。
【0035】
(制御構成)
車両1の制御構成を、図2のブロック図に基づいて説明する。車両1には、CPU、ROM、RAM等により構成されて車両1の各部を制御する複数のコントローラが搭載されている。図2では、複数のコントローラをまとめて1つのコントローラ100として示している。
【0036】
コントローラ100には、上記のバッテリ電流センサSN1、バッテリ温度センサSN2に加えて各種のセンサが設けられている。具体的に、車両1には、変速機26のシフト位置を検出するシフトセンサSN3が設けられている。車両1には、運転者により踏み込み操作されるアクセルペダル41およびブレーキペダル42と、アクセルペダル41の踏み込み量であるアクセル開度を検出するアクセル開度センサSN4と、ブレーキペダル42のON/OFF(踏み込まれているか否か)を検出するブレーキペダルセンサSN5とが設けられている。コントローラ100には、これらセンサSN1~SN5よって検出された各情報(バッテリ電流、バッテリ温度、シフト位置、アクセル開度、ブレーキペダル42のON/OFF)が逐次入力される。また、車両1には、運転者により操作されるスタートスイッチSW1が設けられており、スタートスイッチSW1の操作信号もコントローラ100に入力される。
【0037】
本実施形態では、スタートスイッチSW1が1回押圧操作されると、ACC_ONとなり、車両1に搭載されているオーディオ等の電気機器に電力が供給されて当該電気機器の利用が可能になる。また、スタートスイッチSW1が2回押圧操作されると、IG_ONとなり、エンジン16の各部に電力が供給されてエンジン16が始動が可能になる。また、スタートスイッチSW1が3回押圧操作されると、いわゆるReady_ONとなり、モータ10の回転が可能につまり車両1の走行が可能になる。
【0038】
コントローラ100は、入力された各情報に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつ車両1の各部を制御する。具体的に、コントローラ100は、エンジン16のスロットルバルブ31、インジェクタ32および点火プラグ33、インバータ12およびジェネレータ18等と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。
【0039】
コントローラ100は、所定のプログラムが実行されることで、機能的に、判定部101と、エンジン制御部102とを具備するように動作する。
【0040】
エンジン制御部102は、エンジン16を制御する。具体的に、エンジン制御部102は、スロットルバルブ31の開度であるスロットル開度、インジェクタ32から噴射される燃料の量である燃料噴射量、および点火プラグ33が点火を行う時期である点火時期を変更してエンジン16で生成される燃焼エネルギーを変更する。
【0041】
判定部101は、車両1の運転モードを通常モードから特殊モードに切り替える所定の切替操作が行われたか否かを判定する。通常モードは通常走行を行うための運転モードである。特殊モードは、エンジン16の状態を調査するための運転モードである。特殊モードは、例えば、車両1の整備時や、認証、出荷前検査等において選択される。本実施形態では、アクセルペダル41およびブレーキペダル45に対する操作であって通常走行時には実施される可能性がほとんどない操作が、切替操作として予め設定されて判定部101に記憶されている。例えば、ブレーキペダル42が踏み込まれている状態でアクセルペダル41が複数回踏み込まれ、その後、ブレーキペダル42が踏み込まれていない状態でアクセルペダル41が複数回踏み込まれ、さらに、その後、ブレーキペダル42が踏み込まれている状態でアクセルペダル41が複数回踏み込まれる、という操作が切替操作として設定されている。
【0042】
特殊モードには、さらに、車両1を停車させた状態で(車輪2の回転を停止した状態で)エンジン16を駆動させるときに採用される第1特殊モードと、車輪2をローラ上で回転させて車両1を模擬走行させた状態でエンジン16を駆動させるときに採用される第2特殊モードとが設定されている。判定部101は、切替操作が行われたと判定した場合、つまり、車両1の運転モードとして特殊モードが選択された場合、さらに、車両1の運転モードとして第1特殊モードを選択する操作と第2特殊モードを選択する操作のいずれが行われているかを判定する。
【0043】
変速機26のシフト位置がPレンジ(パーキングレンジ)あるいはNレンジ(ニュートラルレンジ)の場合、車輪2への動力の伝達は規制されて車両1は停車状態に維持される。これより、変速機26のシフト位置をPレンジあるいはNレンジにする操作が第1特殊モードを選択する操作として設定され、変速機26のシフト位置をP・N以外のレンジつまりDレンジ(ドライブレンジ)等の前進用のレンジあるいはRレンジ(リバースレンジ)にする操作が第2特殊モードを選択する操作として設定されており、判定部101は、変速機26のシフト位置がPレンジあるいはNレンジであるか否かを判定する。PレンジとNレンジとは請求項の「非走行レンジ」に相当し、Dレンジ等の前進用のレンジとRレンジとは請求項の「走行レンジ」に相当する。
【0044】
第1特殊モードは、車両1の認証・検査時においてエンジン16の排気騒音を計測するために実施される。そのほか、第1特殊モードは、車両1の整備時においてエンジン16の故障を確認するため、修理後にエンジン16が適切に始動することを確認するためにも実施される。ここで、上記のエンジン16の排気騒音の計測では、エンジン回転数を所定の回転数にすることが求められる。また、エンジン16の故障の種類によっては、これを再現するために、また、修理が適切に行われたことを確認するために、エンジン16の回転数を変更する必要がある。これより、第1特殊モードでは、後述するようにエンジン回転数の変更が可能とされる。
【0045】
第2特殊モードは、車両1の検査時においてクランクケース内の負圧を計測するために実施される。そのほか、第2特殊モードは、車両1の認証時におけるEMC試験で実施される。ここで、上記の負圧の計測やEMC試験では、車速を所定の速度にすることが求められる。これより、第2特殊モードは、上記のように、車両1を模擬走行させた状態でエンジン16を駆動させるときに実施される。
【0046】
(エンジン制御)
次に、コントローラ100により実施されるエンジン制御について説明する。図3は、コントローラ100によって実施されるエンジン制御の手順を示すフローチャートである。
【0047】
まず、コントローラ100は、IG_ONになったか否かを判定する(ステップS1)。上記のように、本実施形態では、スタートスイッチSW1が2回押圧操作されるとIG_ONになる。これより、コントローラ100は、スタートスイッチSW1が2回押圧操作されるとIG_ONになったと判定する。この判定はスタートスイッチSW1からの信号に基づいて行われる。
【0048】
ステップS1の判定がNOであってIG_ONではない場合は、コントローラ100はステップS1を繰り返す。一方、ステップS1の判定がYESであってIG_ONになった場合は、コントローラ100は、ステップS2に進む。つまり、コントローラ100は、IG_ONになるのを待ってステップS2に進む。
【0049】
ステップS2では、コントローラ100は、上記の切替操作が行われたか否かを判定する。この判定は、アクセル開度センサSN4、ブレーキペダルセンサSN5の検出値に基づいて行われる。
【0050】
ステップS2の判定がNOであって切替操作が行われなかったと判定した場合、つまり、車両1の運転モードとして通常モードが選択された場合、コントローラ100は、車両1の運転モードを通常モードにして、通常走行のためのエンジン制御である通常制御を実施する。
【0051】
通常制御では、コントローラ100は、アクセル開度と高電圧バッテリ14のSOC(State Of Charge)であるバッテリSOCとに基づいてエンジン16を始動するか否かを決定する。例えば、アクセル開度が所定値以上でありモータ10での消費電力が大きい場合や、バッテリSOCが所定値以下の場合であって、高電圧バッテリ14への給電が必要な場合に、エンジン16を始動すると決定する。
【0052】
ここで、コントローラ100は、バッテリ電流センサSN1により検出されたバッテリ電流に基づいてバッテリSOCの単位時間あたりの増減量を算出し、これを積算することでバッテリSOCを算出(推定)している。
【0053】
また、通常制御では、コントローラ100は、アクセル開度およびバッテリSOCに応じて、ジェネレータ18の発電量の目標値である目標発電量を設定し、この目標発電量を実現するために必要なエンジン16の出力である目標出力を設定する。さらに、コントローラ100は、設定した目標出力に基づいて、通常制御におけるエンジン回転数の目標値である通常目標エンジン回転数とエンジントルクの目標値である通常目標エンジントルクとを設定し、これら通常目標エンジン回転数および通常目標エンジントルクが実現されるように、スロットルバルブ31、インジェクタ32および点火プラグ等を制御する。具体的に、各目標出力に対応する通常目標エンジン回転数および通常目標エンジントルクは予め定められてマップ等でコントローラ100に記憶されており、コントローラ100は、設定した目標出力に対応する各値をこのマップ等から抽出して通常目標エンジン回転数および通常目標エンジントルクに設定する。
【0054】
ここで、通常目標エンジン回転数と通常目標エンジントルクとは、それぞれ、目標出力を実現できる値で、且つ、エンジン16が安定して回転できるとともにエンジン16の熱効率が高くなる値に、それぞれ設定されている。図4は、通常目標エンジン回転数と通常目標エンジントルクとを示したグラフである。図4において、矢印Y1の先に向かうほど目標出力(エンジン出力)は高くなる。図4に示すように、目標出力が所定の第1出力以下の場合は(A1の範囲では)、目標出力に関わらず通常目標エンジン回転数は所定の基準回転数Nminであって目標出力が最小の時の通常目標エンジン回転数付近に維持され、通常目標エンジントルクのみが目標出力の増大に合わせて増大される。また、目標出力が上記の第1出力よりも高く且つ第2出力以下(第2出力>第1出力)の場合は(A2の範囲では)、通常目標エンジン回転数が基準回転数Nminから目標出力の増大に合わせて増大され、通常目標エンジントルクも目標出力の増大に合わせて増大される。また、目標出力が第2出力よりも高い場合は(A3の範囲では)、目標出力に関わらずエンジントルクは最大トルクTmax付近に維持され、通常目標エンジン回転数が目標出力の増大に合わせて増大される。
【0055】
上記の通常制御は、Ready_OFFあるいはIG_OFFになるまで継続して実施される。
【0056】
ステップS2に戻り、ステップS2の判定がYESであって切替操作が行われたと判定した場合、つまり、車両1の運転モードとして特殊モードが選択された場合、コントローラ100は、Ready_ONになったか否かを判定する(ステップS3)。上記のように、本実施形態では、スタートスイッチSW1が2回押圧操作されてIG_ONになった後、さらにスタートスイッチSW1が1回押圧操作されるとReady_ONになる。これより、コントローラ100は、スタートスイッチSW1からの信号に基づいてReady_ONになったか否かを判定する。
【0057】
ステップS3の判定がNOであってReady_ONになっていない場合は、コントローラ100はステップS3を繰り返す。一方、ステップS3の判定がYESであってReady_ONになった場合、コントローラ100は、ステップS4に進む。つまり、コントローラ100は、Ready_ONになるのを待ってステップS4に進む。
【0058】
ステップS4では、コントローラ100は、バッテリSOCが所定の判定SOC未満であるか否かを判定する。判定SOCは予め設定されてコントローラ100に記憶されている。判定SOCは、例えば80%程度に設定される。
【0059】
ステップS4の判定がNOであってバッテリSOCが判定SOC以上の場合、ステップS20に進み、コントローラ100は上記の通常制御を実施する。
【0060】
一方、ステップS4の判定がYESであってバッテリSOCが判定SOC未満の場合、コントローラ100は、高電圧バッテリ14の温度であるバッテリ温度が所定の第1温度以上且つ所定の第2温度以下であるか否かを判定する(ステップS5)。コントローラ100は、バッテリ温度センサSN2の検出値に基づいてこの判定を行う。第1温度および第2温度は、予め設定されてコントローラ100に記憶されている。第1温度は高電圧バッテリ14を適切に充電できる温度の下限値、第2温度は高電圧バッテリ14を適切に充電できる温度の上限値に設定されている。例えば、第1温度は0℃程度、第2温度は50℃程度に設定されている。ここで、バッテリ温度に関する第1温度以上且つ第2温度以下という範囲は請求項の「所定の範囲」に相当する。
【0061】
ステップS5の判定がNOであってバッテリ温度が第1温度未満あるいは第2温度よりも高い場合、ステップS20に進み、コントローラ100は上記の通常制御を実施する。
【0062】
一方、ステップS5の判定がYESであってバッテリ温度が第1温度以上且つ第2温度以下の場合、コントローラ100は、変速機26のシフト位置がPレンジ(パーキングレンジ)とNレンジ(ニュートラルレンジ)の一方であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0063】
ステップS6の判定がNOであって変速機26のシフト位置がPレンジとNレンジのいずれでもないと判定された場合、つまり、シフト位置がDレンジ等の前進用のレンジあるいはRレンジの場合、コントローラ100は、車両1を第2特殊モードで運転する(ステップS40)。
【0064】
第2特殊モードでは、まず、コントローラ100は、アクセルペダル41が踏み込み操作されてアクセル開度が0%よりもわずかに大きい運転開始開度ACC1以上になるのに伴って、エンジン16を始動する(ステップS31)。つまり、インジェクタ32からの燃料噴射を開始させるとともに点火プラグ33からの点火を開始させて、エンジン16での燃料と空気の混合気の燃焼を開始させる。また、第2特殊モードでは、コントローラ100は、エンジン回転数とエンジントルクとがそれぞれ一定に維持されるように、ジェネレータ18、スロットルバルブ31、インジェクタ32および点火プラグ33を制御する(ステップS42)。
【0065】
図5は、第2特殊モードにおけるアクセル開度とエンジン回転数およびエンジントルクの関係を示したグラフである。図5に示すように、第2特殊モードでは、運転開始開度ACC1以上のアクセル開度においてエンジン16での混合気の燃焼によりエンジン回転数およびエンジントルクは0よりも高い値とされる。また、第2特殊モードでは、運転開始開度ACC1以上のアクセル開度において、アクセル開度に関わらずエンジン回転数およびエンジントルクはそれぞれ一定の値に維持される。
【0066】
第2特殊モードでは(運転開始開度ACC1以上のアクセル開度において)、コントローラ100は、エンジン回転数とエンジントルクを、図4のポイントP1のエンジン回転数とエンジントルク、つまり、通常制御(通常モード)のエンジン回転数とエンジントルクの各最小値に制御する。すなわち、第2特殊モードでは、コントローラ100は、アクセル開度に関わらず、エンジン回転数を上記の基準回転数Nminに制御するとともに、エンジントルクを通常制御で実現され得るエンジントルクの最小値である基準トルクPminに制御する。
【0067】
この第2特殊モードでの運転は、Ready_OFFになるまで(スタートスイッチSW1が押圧操作されるまで)継続して実施される。
【0068】
なお、上記のように第2特殊モードでの運転時には車速を所定の速度にすることが求められる場合がある。これに対して、コントローラ100は、アクセル開度に応じてモータ10の回転数を変更することで車速を変更する。
【0069】
ステップS6に戻り、ステップS6の判定がYESであって変速機26のシフト位置がPレンジあるいはNレンジであると判定した場合、コントローラ100は、車両1を第1特殊モードで運転する(ステップS30)。
【0070】
第1特殊モードでも、第2特殊モードと同様に、コントローラ100は、アクセルペダル41が踏み込み操作されてアクセル開度が上記の運転開始開度ACC1以上になると、エンジン16での混合気の燃焼を開始させてエンジン16を始動する(ステップS31)。一方、第1特殊モードでは、コントローラ100は、アクセル開度に応じてエンジン回転数およびエンジントルクを変更する(ステップS32)。具体的に、コントローラ100は、アクセル開度に応じてジェネレータ18の発電トルクを変更し、これによりエンジン回転数を変更する。また、コントローラ100は、アクセル開度に応じて、スロットル開度、燃料噴射量および点火時期を変更し、これによりエンジントルクを変更する。
【0071】
図6は、第1特殊モードにおけるアクセル開度とエンジン回転数およびエンジントルクの関係を示したグラフである。図6に示すように、第2特殊モードと同様に、第1特殊モードでも、運転開始開度ACC1以上のアクセル開度においてエンジン16での混合気の燃焼によりエンジン回転数およびエンジントルクは0よりも高い値とされる。
【0072】
一方、第1特殊モードでは、アクセル開度が大きいときの方が小さいときよりもエンジン回転数は高くされる。また、アクセル開度が大きいときの方が小さいときよりもエンジントルクは小さくされて、エンジン回転数が高いときの方が低いときよりもエンジントルクは小さくされる。
【0073】
具体的に、第1特殊モードでも、アクセル開度が運転開始開度ACC1以上且つ所定の切替開度ACC2未満の場合は、第2特殊モードと同様に、アクセル開度に関わらずエンジン回転数は上記の基準回転数Nminに維持され、エンジントルクは上記の基準トルクTminに維持される。
【0074】
一方、第1特殊モードでは、アクセル開度が切替開度ACC2以上の場合、アクセル開度が大きくなるほどエンジン回転数は高くされ、アクセル開度が切替開度ACC2を超えると、アクセル開度の増大に伴ってエンジンン回転数は基準回転数Nminから増大される。図6の例では、アクセル開度に比例してエンジン回転数が増大される。また、第1特殊モードでは、アクセル開度が切替開度ACC2以上の場合、アクセル開度が高くなるほどエンジントルクは低くされ、アクセル開度が切替開度ACC2を超えるとアクセル開度の増大に伴ってエンジントルクは基準トルクTminから低減される。図6の例では、アクセル開度に比例してエンジントルクは低減される。ここで、このように第1特殊モードでは、エンジントルクは基準トルクTminあるいは基準トルクTminよりも小さい値に制御されるようになっており、第1特殊モードでは、エンジントルクは基準トルクTmin以下に抑えられることになる。
【0075】
本実施形態では、図6のグラフに対応するマップであって、アクセル開度とエンジン回転数のマップおよびエンジン回転数とエンジントルクのマップが予め定められてコントローラ100に記憶されている。コントローラ100は、このマップからアクセル開度に対応するエンジン回転数とエンジントルクとをそれぞれ目標エンジン回転数と目標エンジントルクして抽出する。そして、コントローラ100は、目標エンジン回転数が実現されるようにジェネレータ18を制御し、目標エンジントルクが実現されるように、スロットルバルブ31、インジェクタ32および点火プラグ33を制御する。
【0076】
上記のステップS32の制御、つまり、アクセル開度に基づいてエンジン回転数およびエンジントルクを変更する制御は、請求項の「可変回転数制御」に相当する。
【0077】
上記の第2特殊モードの制御は、Ready_OFFになるまで(スタートスイッチSW1が押圧操作されるまで)継続して実施される。
【0078】
ここで、上記のように第1特殊モードではエンジン回転数を所定の回転数にすることが求められる。これに対して、コントローラ100は、上記のようにアクセル開度に応じてエンジン回転数を変更するようになっており、第1特殊モードで車両1が運転される場合は、運転者によるアクセルペダル41の踏み込み量の変更によってエンジン回転数が変更されることになる。
【0079】
(作用等)
以上のように、上記実施形態では、特殊モード(第1特殊モードおよび第2特殊モード)での車両1の運転が開始されると、エンジン16が始動されてエンジン16での混合気の燃焼が開始される。そして、第1特殊モードで車両1が運転される場合は、エンジントルクが基準トルクTminに維持される。また、第2特殊モードで車両1が運転される場合は、エンジントルクが基準トルクTmin以下にされる。上記のように基準トルクTminは通常制御(通常モード)で実現されるエンジントルクの最小値である。これより、上記実施形態では、特殊モードで車両1が運転される場合に、エンジントルクが通常モードで実現されるエンジントルクの最小値あるいは最小値よりも低いトルクにされることになる。エンジントルクが低く抑えられれば、ジェネレータ18での発電量も低く抑えることができる。従って、上記実施形態によれば、特殊モードで車両1が運転される場合において、エンジン16を駆動しつつジェネレータ18の発電量つまり高電圧バッテリ14の充電量の増加量を少なく抑えることができ、エンジン16の状態を検査する機会を確保しつつ高電圧バッテリ14の過充電を防止することができる。
【0080】
特に、上記実施形態では、第2特殊モードで車両1が運転される場合には、エンジントルクが基準トルクTminに維持され、エンジン回転数が通常モードで実現されるエンジン回転数の最小値である基準回転数Nminに維持される。そのため、エンジン16の出力を低く抑えて、ジェネレータ18の発電量および高電圧バッテリ14の充電量の増加量を少なく抑えることができ、より確実にエンジン16の状態を検査する機会を確保しつつ高電圧バッテリ14の過充電を防止できる。
【0081】
また、上記実施形態では、第1特殊モードで車両1が運転される場合に、アクセル開度に応じてエンジン回転数が変更される。そのため、エンジン回転数を検査に必要な回転数に変更でき、適切な検査を行うことができる。また、アクセル開度つまりアクセルペダル41の踏み込み量が大きいときの方が小さいときよりもエンジン回転数が高くされるので、運転者の操作感覚に合致したエンジン回転数変更を実現できる。
【0082】
さらに、第1特殊モードで車両1が運転される場合において、エンジン回転数が高いときの方が低いときよりもエンジントルクが低くされる。そのため、エンジン回転数を高くしつつエンジンの出力が高くなるのを抑制できる。従って、ジェネレータ18の発電量を抑えて高電圧バッテリ14に給電される電力を少なく抑えることができる。
【0083】
また、上記実施形態では、切替操作が行われたと判定された場合であっても(ステップS2の判定がYESであっても)、バッテリSOCが判定SOC以上の場合は(ステップS4の判定がNOの場合は)、通常制御が実施される(ステップS20)。つまり、特殊モードでの運転が禁止されて、アクセルペダル41の踏み込みに伴ってエンジン16が始動されるという制御(ステップS31、S41)が禁止される。そのため、バッテリのSOCが高い状態でエンジン16およびジェネレータ18が駆動されて高電圧バッテリ14に給電されるのを回避でき、高電圧バッテリ14が過充電されるのをより確実に防止できる。
【0084】
また、上記実施形態では、切替操作が行われたと判定された場合であっても(ステップS2の判定がYESであっても)、バッテリ温度が第1温度未満あるいは第2温度よりも高い場合は(ステップS5の判定がNOの場合は)、通常制御が実施される(ステップS20)。つまり、バッテリ温度が第1温度未満あるいは第2温度よりも高い場合は、特殊モードでの運転が禁止されて、アクセルペダル41の踏み込みに伴ってエンジン16が始動されるという制御(ステップS31、S41)が禁止される。そのため、バッテリ温度が不適切な温度で特殊モードで車両1が運転されることつまりエンジン16が駆動してジェネレータ18から高電圧バッテリ14への給電が開始されるのを回避できる。従って、バッテリ温度が不適切な温度で高電圧バッテリ14が充電されて高電圧バッテリ14の劣化が促進されるのを防止できる。
【0085】
(変形例)
上記実施形態では、エンジンがロータリーピストンエンジンの場合を説明したが、エンジンはレシプロエンジンであってもよい。また、高電圧バッテリはLiバッテリに限られない。
【0086】
また、上記実施形態では、特殊モードとして第1特殊モードと第2特殊モードとが設定される場合を説明したが、これら2つの特殊モードのうち一方のモードのみが特殊モードとして設定されていてもよい。
【0087】
また、運転モードを通常モードから特殊モードに切り替えるための切替操作の具体的な手順、および、第1特殊モードあるいは第2特殊モードを選択する操作の具体的な内容は上記に限られない。
【0088】
また、上記実施形態では、ステップS5においてバッテリ温度が第1温度以上且つ第2温度以下であるか否かを判定したが、第1温度以上であるか否か、あるいは、第2温度以下であるか否かの判定に代えてもよい。また、これら第1温度、第2温度の具体的な値、および、判定SOCの具体的な値は上記に限られない。
【0089】
また、上記実施形態では、第2特殊モードで運転される場合において、アクセル開度が切替開度ACC2未満のときはアクセル開度に関わらずエンジン回転数とエンジントルクとが一定に維持される場合を説明したが、アクセル開度が切替開度ACC2未満のときにもアクセル開度に応じてエンジン回転数およびエンジントルクが変更されるように構成してもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、第2特殊モードで運転される場合において、アクセル開度に比例してエンジン回転数が増大され、エンジン回転数に比例してエンジントルクが低減される場合を説明したが、これらの関係は比例関係でなくてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、第2特殊モードで運転される場合において、アクセル開度が切替開度ACC2以上において、エンジン回転数が高いときの方が低いときよりもエンジントルクが低くされる場合を説明したが、アクセル開度が切替開度ACC2以上においても切替開度ACC2未満のときと同様にエンジントルクをエンジン回転数に関わらず基準トルクTmin一定に制御してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、第2特殊モードで運転される場合において、アクセル開度が高いときの方が低いときよりもエンジン回転数が高くされる場合を説明したが、アクセル開度に応じてエンジン回転数が変更される構成であればよく、アクセル開度とエンジン回転数との関係は上記に限られない。ただし、アクセル開度が高いときの方が低いときよりもエンジン回転数が高くなるようにこれを制御すれば、運転者の操作感覚に合致させることができ、操作性を良好にできる。
【0093】
また、上記実施形態では、第1特殊モードにおいてエンジントルクを基準トルクTminつまり通常制御(通常モード)において実現されるエンジントルクの最小値にした場合を説明したが、第1特殊モードでのエンジントルクを基準トルクTminよりも低くしてもよい。同様に、第2特殊モードのアクセル開度が切替開度ACC2未満においてもエンジントルクを基準トルクTminよりも低いトルクにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 車両
10 モータ
14 高電圧バッテリ(バッテリ)
16 エンジン
18 ジェネレータ
26 変速機
41 アクセルペダル
101 判定部
102 エンジン制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6