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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141656
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20230928BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61F13/532 210
A61F13/533 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048091
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 基成
(72)【発明者】
【氏名】濱野 椋子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA01
3B200BB03
3B200BB17
3B200CA08
3B200DB05
3B200DB15
3B200DB18
(57)【要約】
【課題】高吸収性ポリマーの吸収能力を十分に発揮させ得る吸収性シートを含み、複数回の体液吸収が可能で、漏れが起こり難く、フィット性が良好な薄型の吸収性物品の提供。
【解決手段】液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、これらの間に配置された吸収性シート20とを備え、吸収性シート20は、2枚の親水性シート15、16と、これらの間に挟持される高吸収性ポリマー粒子12と、を含み、2枚の親水性不織布15、16はこれらを接合する融着部を有し、融着部は、吸収性シート20の幅方向中央を長手方向に連続する中央融着部21と、吸収性シート20の幅方向両側を長手方向に連続する2つの両側融着部22と、中央融着部21及び両側融着部22と長手方向に交差する平面視X字状のX字型融着部23と、を離間して有する、吸収性物品50。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収性シートと、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性シートは、2枚の親水性不シートと、これらの間に挟持される高吸収性ポリマーと、を含み、
2枚の前記親水性シートはこれらを接合する融着部を有し、
前記融着部は、
前記吸収性シートの幅方向中央を長手方向に連続する中央融着部と、
前記吸収性シートの幅方向両側を長手方向に連続する2つの両側融着部と、
前記中央融着部及び前記両側融着部と長手方向に交差する平面視X字状のX字型融着部と、を離間して有する、吸収性物品。
【請求項2】
前記中央融着部と前記X字型融着部とは、前記中央融着部の幅方向中央のみにて交差する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記X字型融着部を構成する2本の線分が交差して成す、前記吸収性シートの長手方向端部を臨む角が鈍角である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記X字型融着部は、前記吸収性シートの長手方向に間隔を空けて複数配列されている、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記中央融着部、前記両側融着部、及び前記X字型融着部で包囲された高吸収性ポリマーの存在領域の平面視形状が三角形又は台形であり、前記三角形と前記台形とが長手方向に交互に繰り返されている、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性シートの長手方向の一端部及び他端部において、前記中央融着部の端部と前記両側融着部の各端部とを連結する、連結融着部をさらに有する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記中央融着部、前記両側融着部、及び前記X字型融着部がいずれも超音波融着部である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品は、一般に、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収体と、を含み、トップシートを透過してきた尿等の体液を吸収体で吸収及び保持し、バックシートで体液が着用者の衣服等に接触しないように構成されている。吸収性物品には、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド、生理用ナプキン等のパッド製品や、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等、用途に応じて様々な形態が存在し、乳幼児、成人及び高齢者を問わず広く汎用されている。
【0003】
吸収性物品の最近の課題の一つに、吸収性物品を着けていることが目立たない、また、着用時に違和感がなく、着けている感がない薄型の吸収性物品の提供がある。薄型の吸収性物品を設計する場合、通常、吸収性物品の大部分を占める吸収体の薄型化が検討され、薄型の吸収体を用いた吸収性物品が多く提案されている。
【0004】
特許文献1には、外装体と、外装体に固定された吸収体と、を含み、吸収体は、同一の又は異なる2枚の繊維シートと、該繊維シート間に配された吸収性ポリマーの粒子とを含む吸収性シートを有するパンツ型吸収性物品が記載されている(請求項1)。特許文献1によれば、薄型でフィット性の良好な吸収性シートが提供されると記載されている(段落0008)。
【0005】
特許文献2には、吸収体と、吸収体の表側に配置された液透過性トップシートと、を備え、吸収体は、液透過性を有する上側シート及び下側シートと、上側シート及び下側シートの接合部により周りを囲まれた、上シート及び下シートが非接合の部分であるセルと、このセル内に収容された高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒体と、を有するセル吸収シートを含み、上側シートは、クレム吸水度が100mm以上の高吸水不織布である吸収性物品が記載されている(請求項1)。 更に、明細書中には、平面視六角形状の接合部が長手方向及び幅方向に連接された実施形態が記載されている(図1図6図7)。クレム吸水度とは、JIS P8141:2004に規定される「紙及び板紙-吸水度試験方法-クレム法」により測定される値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-104151号公報
【特許文献2】特開2021-052901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載のように、2枚の親水性シート(親水性不織布等)と、これらの間に挟持された高吸収性ポリマー粒子と、を含む吸収性シートは公知であり、この吸収性シートを用いることで、フィット性が良好な薄型の吸収性物品が得られる。
【0008】
しかしながら、吸収性物品が着用者の下腹部から股間部を経て臀部に至るように着用されるものであることから、特許文献1に記載の吸収性シートでは、吸収性シート内の高吸収性ポリマー粒子に分布に偏りが生じ易いという課題がある。高吸収性ポリマー粒子の偏りは、吸収性物品に複数回の体液吸収が要求される現状では、最初の体液吸収時に表面の高吸収性ポリマー粒子同士が結着し、体液吸収可能な高吸収性ポリマー粒子を内包したまま固まり、体液吸収速度が低下し、体液吸収能力を十分に発揮することができない。その結果、体液漏れが発生し易い。
【0009】
また、特許文献2に記載の、平面視六角形状の接合部が長手方向及び幅方向に連接された実施形態では、比較的小寸の六角形状の接合部で囲まれた空間内に封入された高吸収性ポリマー粒子の偏りは軽減されるものの、一つの空間に封入可能な高吸収性ポリマー粒子の量ひいては体液吸収量は比較的少ない。体液は吸収性シート内部の六角形の空間を満遍なく流過するものではないことから、特許文献1と同様に、体液吸収速度及び体液吸収能力が低下し、体液漏れが発生し易くなる。
【0010】
本発明の目的は、高吸収性ポリマー粒子の体液吸収能力を十分に発揮させ得る吸収性シートを含み、複数回の体液吸収が可能で、漏れが起こり難く、フィット性が良好な薄型の吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、2枚の親水性不織布とこれらの間に挟持された高吸収性ポリマー粒子とを含む吸収性シートに所定の融着部(2枚の親水性不織布の融着部分)を設けることで、吸収性シートを着用して傾斜した状態でも、内部の高吸収性ポリマー粒子の偏りが抑制されることを見出し、更にこの吸収性シートを用いることで所望の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0012】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置された吸収性シートと、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性シートは、2枚の親水性シートと、これらの間に挟持される高吸収性ポリマーと、を含み、
2枚の前記親水性シートはこれらを接合する融着部を有し、
前記融着部は、
前記吸収性シートの幅方向中央を長手方向に連続する中央融着部と、
前記吸収性シートの幅方向両側を長手方向に連続する2つの両側融着部と、
前記中央融着部及び前記両側融着部と長手方向に交差する平面視X字状のX字型融着部と、を離間して有する、吸収性物品。
(2)前記中央融着部と前記X字型融着部とは、前記中央融着部の幅方向中央のみにて交差する、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記X字型融着部を構成する2本の線分が交差して成す、前記吸収性シートの長手方向端部を臨む角が鈍角である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記X字型融着部は、前記吸収性シートの長手方向に間隔を空けて複数配列されている、上記(1)乃至(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記中央融着部、前記両側融着部、及び前記X字型融着部で包囲された高吸収性ポリマーの存在領域の平面視形状が三角形又は台形であり、前記三角形と前記台形とが長手方向に交互に繰り返されている、上記(1)乃至(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記吸収性シートの長手方向の一端部及び他端部において、前記中央融着部の端部と前記両側融着部の各端部とを連結する、連結融着部をさらに有する、上記(1)乃至(5)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記中央融着部、前記両側融着部、及び前記X字型融着部がいずれも超音波融着部である、上記(1)乃至(6)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高吸収性ポリマー粒子の体液吸収能力を十分に発揮させ得る吸収性シートを含み、複数回の体液吸収が可能で、漏れが起こり難く、フィット性が良好な薄型の吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1に示すx-x切断線による模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚さ方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品を着用したときに、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る吸収性物品50について説明する。図1及び図2は、吸収性物品50を示す。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0017】
本実施形態の吸収性物品50は、乳幼児用、成人用及び高齢者用の種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁製品、軽失禁ライナー、尿取りパッド、生理用ナプキン等のパッド製品、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等が挙げられる。これらの中でも、薄型であることと、複数回の吸収でも吸収量や吸収速度が低下しないことを利用して、特に軽失禁製品、尿取りパッド等のパッド製品として好適に使用できる。また、アウターとしての各種紙おむつ製品と、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長手方向の寸法(最大寸法)、及び幅方向の寸法(最大寸法)はいずれも特に限定されないが、それぞれ、例えば、100mm以上600mm以下の範囲、及び50mm以上250mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整すると、種々の形態の吸収性物品が容易に得られる。
【0018】
図1及び図2に示す吸収性物品50は、肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向配置され、非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置された吸収性シート20と、トップシート10の肌側面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。
【0019】
吸収性シート20は、2枚の親水性不織布15、16と、これらの間に挟持される高吸収性ポリマー粒子12と、を含み、2枚の親水性不織布15、16はこれらを接合する融着部を有し、融着部は、吸収性シート20の幅方向中央を長手方向に連続する中央融着部21と、吸収性シート20の幅方向両側を長手方向に連続する2つの両側融着部22と、中央融着部21及び両側融着部22と長手方向に交差する平面視X字状のX字型融着部23と、を離間して有している。本実施形態では、中央融着部21、両側融着部22、及びX字型融着部23で包囲された高吸収性ポリマー粒子12の存在領域としては、平面視形状が台形状である高吸収性ポリマー12の存在領域25(以下単に「台形状存在領域25」ともいう)と、平面視形状が三角形状である高吸収性ポリマー粒子12の存在領域26(以下単に「三角形状存在領域26」ともいう)と、がある。台形状存在領域25と、三角形状存在領域26とは、中央融着部21の両側において、吸収性シート20の長手方向に交互に繰り返し配置されている。
【0020】
本実施形態によれば、吸収性シート20が台形状存在領域25と、三角形状存在領域26とが、中央融着部21の両側において、吸収性シート20の長手方向に交互に繰り返し配置されることで、高吸収性ポリマー粒子12の偏りの発生が抑制される。例えば、長手方向の中央部分に三角形状存在領域26を配置すると、その長手方向両側には台形状存在領域25が存在することになる。このように配置することで、この吸収性物品50を着用したときに、薄型の吸収性シート20が着用者の身体の凹凸に沿ってフィット性良く変形することも相俟って、台形状存在領域25、及び三角形状存在領域26の内部空間が狭くなることから、台形状存在領域25及び三角形状存在領域26の内部に隙間を生じ難くなり、吸収性物品50が傾いた状態で着用されていても、高吸収性ポリマー粒子12の偏りが顕著に抑制される。
【0021】
また、融着部が超音波融着(ウルトラソニックシール)により形成される好ましい実施形態によれば、中央融着部21及びX字型融着部23には次のような作用効果が生成する。まず、中央融着部21は、高吸収性ポリマー粒子12の膨潤後でもソニックシール箇所が溝となって残り、トップシート10側から吸収した体液がそこへ流れ込むため、主に、複数回の体液吸収に際して吸収速度低下を抑制する。次に、X字型融着部23である斜めに走るソニックシール箇所では、台形状存在領域25及び三角形状存在領域26が傾斜した場合、長手方向だけではなく、傾斜方向へも体液が流れやすくなる。また、このとき、斜めのソニックシール箇所の周囲の高吸収性ポリマー粒子12が膨潤し土手のように盛り上がるため、吸収後は、吸収性物品50の端部への流れ込みを遅らせることができ、結果、吸収性物品50の端部へ到達する前に体液を吸収しやすく、漏れを低減させる。
なお、斜めのソニックシール箇所が無ければ、体液はそのまま吸収性物品50の端部まで流れ易く漏れにつながる。
【0022】
本実施形態の吸収性物品50は、トップシート10、吸収性シート20、及びバックシート30を基本構成単位とするものであり、必要に応じて、前述のような立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収性シート20との間への液透過性のトランスファシート(不図示)や液透過性のセカンドシート(不図示)の配設等の、公知の様々な改変を施すことができる。以下、吸収性物品50の構成部材について、トップシート10、吸収性シート20、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0023】
<トップシート>
トップシート10は、吸収性シート20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に当接してもよいように、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合シート、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも不織布が好ましく、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等がより好ましい。
【0024】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、18g/m以上400g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収性シート20へと誘導するために必要とされる、吸収性シート20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0025】
<吸収性シート>
吸収性シート20は、その長手方向の寸法(最大長さ)が、例えば、100mm以上600mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収性シート20の幅方向の寸法(最大幅)は、例えば、50mm以上250mm以下の範囲、60mm以上200mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。吸収性シート20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収性シート20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0026】
本実施形態の吸収性シート20は、図1及び図2に示すように、2枚の親水性シート15、16と、これらの間に挟持される高吸収性ポリマー粒子12と、2枚の親水性シート15、16を部分的に接合する融着部と、を有し、融着部は、吸収性シート20の幅方向中央を長手方向に連続する中央融着部21と、吸収性シート20の幅方向両側を長手方向に連続する2つの両側融着部22と、中央融着部21及び両側融着部22と長手方向に交差する平面視X字状のX字型融着部23と、吸収性シート20の長手方向の一端部及び他端部において、中央融着部21の端部と両側融着部22の各端部とを連結する、連結融着部24a、24bと、を有する。
【0027】
(親水性シート)
親水性シート15、16としては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性シートの中でも、親水性不織布が好ましく、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。親水性シート15、16の厚さは例えば0.10mm以上2.50mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m以上40g/m以下の範囲である。なお、親水性シート15、16には同種のもの又は異種のものを使用できる。
【0028】
(高吸収性ポリマー粒子)
高吸収性ポリマー粒子(以下「SAP」ともいう)12としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマー12は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
高吸収性ポリマー粒子12としては、中位粒子径を有する高吸収性ポリマー粒子12を用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収性シート20が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマー粒子12の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0030】
(融着部)
融着部は、親水性シート15、16を部分的に接合し、吸収性シート20中に親水性シート15、16と融着部とで囲まれた高吸収性ポリマー粒子12の存在領域である、台形状存在領域25及び三角形状存在領域26を形成する。本実施形態の融着部は、前述のように、中央融着部21、両側融着部22、X字型融着部23、及び連結融着部24a、24bを有している。
【0031】
(中央融着部)
中央融着部21は、吸収性シート20の幅方向中央を、長手方向の一端から他端に直線状に延びるように形成されている。中央融着部21の幅は特に限定されないが、例えば、0.5mm以上13mm以下の範囲である。中央融着部21の幅が0.5mm未満では、親水性シート15、16の接合強度が弱くなり、接合外れ等が生じ易くなる傾向がある。中央融着部21の幅が13mmを超えると、台形状存在領域25及び三角形状存在領域26の内部空間ひいてはこれらの内部空間に収容できる高吸収性ポリマー粒子12の量が減少し、吸収性物品50が体液吸収能力に劣る傾向がある。また、吸収性シート20の剛性が不必要に高まり、吸収性シート20の身体へのフィット性が低下する傾向がある。
【0032】
(両側融着部)
両側融着部22は、吸収性シート20の幅方向両側を、長手方向の一端から他端にほぼ直線状に延びるように、幅方向の一端部及び他端部に1つずつ形成されている。2つの両側融着部22は、中央融着部21を対象軸にして幅方向に対称な位置に存在する。また、両側融着部22は、吸収性シート20の幅方向両端から間隔を空けて形成されており、そのことで、吸収性シート20の薄型としての利点である柔軟性が保たれ、フィット性の低下を防止することができる。両側融着部22の幅は特に限定されないが、例えば、0.5mm以上4mm以下の範囲である。両側融着部22の幅が0.5mm未満では、親水性シート15、16の接合強度が弱くなり、着用中等に接合外れが生じ易くなる傾向がある。両側融着部22の幅が4mmを超えると、台形状存在領域25及び三角形状存在領域26の内部空間ひいてはこれらの内部空間に収容できる高吸収性ポリマー粒子12の量が減少し、吸収性物品50が体液吸収能力に劣る傾向がある。
【0033】
(X字型融着部)
X字型融着部23は、線分23aと線分23bとが交差して形成される平面視X字状の形状を有する融着部であり、好ましい実施形態では線分23a、23bの交点は、中央融着部21上に存在し(言い換えると中央融着部21とX字型融着部23とは、中央融着部21の幅方向中央のみにて交差する)、線分23a、23bの各両端部は両側融着部22と接している。また、線分23a、23bが交差して形成される角のうち、吸収性シート20の幅方向端部を臨む角αは鋭角であり、吸収性シート20の長手方向端部を臨む角βは鈍角であるように構成されている。この構成によれば、X字型融着部23が長手方向に所定の間隔を空けて複数配列される。複数のX字型融着部23を長手方向に配列することで、中央融着部21の幅方向両側に、台形状存在領域25と三角形状存在領域26とが長手方向に交互に形成され、前述した本実施形態特有の効果が得られる。
【0034】
X字型融着部23を構成する線分23a、23bの幅は特に限定されないが、例えば、0.5mm以上4mm以下の範囲である。線分23a、23bの幅が0.5mm未満では、親水性シート15、16の接合強度が弱くなり、着用中等に接合外れが生じ易くなる傾向がある。線分23a、23bの幅が4mmを超えると、台形状存在領域25及び三角形状存在領域26の内部空間ひいてはこれらの内部空間に収容できる高吸収性ポリマー粒子12の量が減少し、吸収性物品50が体液吸収能力に劣る傾向がある。
【0035】
(連結融着部)
連結融着部24a、24bは、吸収性シート20の長手方向の一端部及び他端部にほぼ平行に対向配置され、中央融着部21の端部と両側融着部22の各端部とを連結し、更にX字型融着部23の各端部を連結している。連結融着部24a、24bは必要に応じて設けられるが、これらを設けることで、中央融着部21、両側融着部22、及びX字型融着部23の形成により吸収性シート20の剛性が不均一になった点を是正し、吸収性シート20全体の剛性を均一化し、肌触りや身体表面へのフィット性を向上させることができる。さらに、連結融着部24a、24bを、吸収性シート20の長手方向端から所定の間隔を空けた位置に形成することで、中央融着部21、両側融着部22、及びX字型融着部23の各端部と連結させ易くなり、吸収性シート20は一層均一になり、フィット性等の低下を十分に防ぐことができる。
【0036】
<吸収性シートの製造方法>
本実施形態の吸収性シート20は、例えば、非肌側に配置される親水性シート16の肌側面において、融着部の形成予定領域を残して、所定のパターンで高吸収性ポリマー粒子12を散布する工程と、親水性シート16の肌側面に親水性シート15の非肌側面を重ね合わせて積層体を得る工程と、得られた積層体を必要に応じて加圧及び/又は加熱しつつ融着部を形成する工程と、を含む製造方法により作製できる。なお、融着部は、例えば、ホットメルト接着剤を用いて、又はヒートシール、超音波シール(超音波溶着)等の溶着方法で形成できる。溶着方法としては、前述したように、超音波シールが好ましい。
【0037】
<バックシート>
バックシート30は、吸収性シート20が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた通気性又は非通気性の基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0038】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m以上40g/m以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく実施できる。
【0039】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために、吸収性物品50の幅方向両端付近で吸収性物品50の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0040】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収性シート20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0041】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの目付は、例えば、13g/m以上20g/m以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0042】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造でき、例えば、吸収性シート20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0043】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
10 トップシート
15、16 親水性シート
20 吸収性シート
21 中央融着部
22 両側融着部
23 X字型融着部
24a、24b 連結融着部
30 バックシート
40 立体ギャザー
40a 弾性伸縮部材
40b シート部材
50 吸収性物品
図1
図2