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特開2023-141663鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋コンクリート構造物の補強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023141663
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋コンクリート構造物の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 1/00 20060101AFI20230928BHJP
   E04C 5/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E01F1/00
E04C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048100
(22)【出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504158881
【氏名又は名称】東京地下鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593064881
【氏名又は名称】メトロ開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 泰邦
(72)【発明者】
【氏名】松永 聡
(72)【発明者】
【氏名】塩田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】水上 博之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 龍裕
【テーマコード(参考)】
2D101
2E164
【Fターム(参考)】
2D101CA17
2D101EA01
2D101FA35
2E164BA02
2E164BA25
(57)【要約】
【課題】上部構造体に荷重が加わった際の破損を抑制する鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋コンクリート構造物の補強方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る鉄筋コンクリート構造物は、下方から上部の構造を支持する支持構造体と、支持構造体から側方に張り出して形成された床版と、を備える鉄筋コンクリート構造物であって、床版は、互いに平行に配置された複数の主筋及び隣合う複数の主筋の側面同士を連結する複数の定着横筋を有する鉄筋部材と、鉄筋部材の周囲に充填された充填部材と、を備え、複数の主筋は、床版の端縁に交差する方向に延設され、複数の定着横筋は、床版の端縁に沿って配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から上部の構造を支持する支持構造体と、
前記支持構造体から側方に張り出して形成された床版と、を備える鉄筋コンクリート構造物であって、
前記床版は、
互いに平行に配置された複数の主筋及び隣合う前記複数の主筋の側面同士を連結する複数の定着横筋を有する鉄筋部材と、
前記鉄筋部材の周囲に充填された充填部材と、を備え、
前記複数の主筋は、
前記床版の端縁に交差する方向に延設され、
前記複数の定着横筋は、
前記端縁に沿って配置されている、鉄筋コンクリート構造物。
【請求項2】
前記床版は、
前記支持構造体から離れた端部の上面に上部構造体が設置される固定部を有し、
前記複数の定着横筋は、
前記固定部と前記端縁との間に配置されている、請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項3】
前記複数の主筋の一方の端部は、
前記支持構造体の上方に位置する、請求項1又は2に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項4】
前記複数の主筋は、
側面に突起を備える、請求項1~3の何れか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項5】
前記複数の主筋は、
上面及び下面の少なくとも一方に突起が形成されている、請求項1~4の何れか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項6】
前記床版は、
表面に舗装が形成され、
前記充填部材は、
前記鉄筋部材の上方を覆い、
前記舗装は、
前記充填部材の上面に形成される、請求項1~5の何れか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項7】
前記上部構造体は、
前記床版の前記固定部から上方に向かって立設される、請求項1~6の何れか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項8】
前記鉄筋部材は、
前記定着横筋に並列して設けられた前記複数の主筋の側面同士を連結する複数の配力筋を備える、請求項1~7の何れか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項9】
前記床版は、
鉄道の駅のプラットフォームの床を形成し、
前記上部構造体は、
前記プラットフォームに設置されるホームドアである、請求項1~8の何れか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物。
【請求項10】
下方から上部の構造を支持する支持構造体と、
前記支持構造体から側方に張り出して形成された床版と、を備える鉄筋コンクリート構造物の補強方法であって、
互いに平行に配置された複数の主筋及び隣合う前記複数の主筋の側面同士を連結する複数の定着横筋を有する鉄筋部材が、前記床版の前記支持構造体の上方から前記床版の端部にわたって配置され、前記複数の定着横筋が前記支持構造体から離れた前記床版の端縁に沿って配置される鉄筋配置工程と、
前記鉄筋部材の周囲に充填部材が充填される充填工程と、
上部構造体が設置される固定部と前記床版の前記端縁との間に前記鉄筋部材の前記複数の定着横筋が配置されるように、前記固定部が設置される固定部設置工程と、を備える、鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
【請求項11】
前記鉄筋配置工程の前に、少なくとも前記鉄筋部材の厚さと前記鉄筋部材を前記充填部材で覆うために必要なかぶり厚さとを合わせた厚さ寸法よりも深く前記床版の表面を除去する除去工程を更に備える、請求項10に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
【請求項12】
前記上部構造体は、
鉄道の駅のプラットフォームに立設されたホームドアである、請求項10又は11に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物に関し、特に床版の端部に構造物が立設される鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋コンクリート構造物の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物を構築、補修、補強するときには、工場において加工された格子形状を有する平板状の鉄筋部材を現場に搬入し、現場で構造物の所定の位置に設置する技術が利用されている。
【0003】
このような従来の鉄筋部材の施工は、格子状の鉄筋部材を構造物の梁、床、又は柱等の構造物の表面に沿って所定の距離を持って配置し、その上からモルタル等の充填部材を充填する。充填部材は、鉄筋部材と構造物との間の空間に充填され、さらに鉄筋部材からの充填部材の厚さが所定の寸法になる様に鉄筋部材を覆う。このような構造により、棒鋼などの鉄筋を現場で技能者により組み立てる工程や、工場で鉄筋の溶接作業を行う工程が不要となり、鉄筋組み立て時の手間やコストを抑えるとともに技能者の確保が不要となる。また、格子状の鉄筋部材により鉄筋コンクリート構造の耐荷重性能を向上させている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている鉄筋コンクリート構造によれば、互いに平行に配置された複数の主筋と隣接する複数の主筋の間を連結する複数の配力筋とにより格子を有する板状に形成された鉄筋部材により補強されている。特許文献1の鉄筋コンクリート構造は、格子を有する板状の鉄筋部材が用いられていることにより、従来の異形棒鋼により構成された鉄筋構造と比較して、厚さ方向の寸法が抑えられ、かつ耐荷重性能が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-91126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、駅のプラットフォームに設置されるホームドアの設置数が増加している。ホームドアは、駅のプラットフォームの線路に沿った端部に立設され、線路側の領域とプラットフォーム上の空間とを仕切るものである。プラットフォームの下側は、作業通路及び退避スペースとなる空間が設けられており、プラットフォームの床版の断面構造は、線路側が自由端となっている片持ち梁構造となっている。ホームドアは、プラットフォームの床版の自由端の上面に設置され、線路を通過する電車により生ずる負圧により線路側に倒れるように変位する。
【0007】
特許文献1に開示される鉄筋コンクリート構造物は、床版を補強する鉄筋部材が配置されているが、両端部が下方から柱で支持された床版を補強する鉄筋部材を有するものである。従って、ホームドアのような上部構造体が端部に設置される床版においては、端部を下方から柱で支持された床版と同様に鉄筋部材を配置しても、自由端の上面に立設された上部構造体に掛かる荷重により、上部構造体が設置されている端部において床版に亀裂などの破損が発生してしまうという課題があった。
【0008】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、端部の上面に構造物が立設される床版を備える鉄筋コンクリート構造物において、上部構造体に荷重が加わった際の破損を抑制する鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋コンクリート構造物の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鉄筋コンクリート構造物は、下方から上部の構造を支持する支持構造体と、前記支持構造体から側方に張り出して形成された床版と、を備える鉄筋コンクリート構造物であって、前記床版は、互いに平行に配置された複数の主筋及び隣合う前記複数の主筋の側面同士を連結する複数の定着横筋を有する鉄筋部材と、前記鉄筋部材の周囲に充填された充填部材と、を備え、前記複数の主筋は、前記床版の端縁に交差する方向に延設され、前記複数の定着横筋は、前記端縁に沿って配置されている。
【0010】
本発明に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法は、下方から上部の構造を支持する支持構造体と、前記支持構造体から側方に張り出して形成された床版と、を備える鉄筋コンクリート構造物の補強方法であって、互いに平行に配置された複数の主筋及び隣合う前記複数の主筋の側面同士を連結する複数の定着横筋を有する鉄筋部材が、前記床版の前記支持構造体の上方から前記床版の端部にわたって配置され、前記複数の定着横筋が前記支持構造体から離れた前記床版の端縁に沿って配置される鉄筋配置工程と、前記鉄筋部材の周囲に充填部材が充填される充填工程と、上部構造体が設置される固定部と前記床版の前記端縁との間に前記鉄筋部材の前記複数の定着横筋が配置されるように、前記固定部が設置される固定部設置工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋コンクリート構造物の補強方法によれば、床版の端縁と上部構造体が固定される固定部との間に鉄筋部材の定着横筋が端縁に沿って配置されるため、上部構造体が端縁側に倒れるように変位した場合であっても、鉄筋部材の主筋が床版に生じる曲げモーメントに対抗できる。これにより、鉄筋コンクリート構造物は、上部構造物が床版の端縁側に倒れるように荷重が加わった際の強度が確保され、床版の破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の一例である鉄道の駅のプラットフォームの側面図である。
図2】実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の断面構造の一例を示す説明図である。
図3】実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の断面構造の一例を示す説明図である。
図4】実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の床版10に配置された鉄筋部材20の説明図である。
図5】実施の形態1に係る鉄筋部材20の変形例を示す平面図である。
図6】実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の床版10の模式図である。
図7図6(b)のB部の拡大図である。
図8図6に示される鉄筋部材20の変形例を示す平面図である。
図9】実施の形態1に係る鉄筋部材20の拡大図である。
図10】実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の比較例である鉄筋コンクリート構造物100の断面構造の説明図である。
図11】実施の形態1に係る鉄筋部材20と比較例に係る鉄筋構造1020との構造の比較図である。
図12】実施の形態1に係る鉄筋部材20と図10に示した比較例の鉄筋構造1020の主筋1021の屈曲部1021aとの定着性能を比較した試験体の構造を示す平面図である。
図13図12に示された各試験体ごとの主筋21及び1021の充填部材60に対する定着力の測定結果である。
図14】実施の形態1の鉄筋部材20の主筋21と充填部材60との付着性能を評価した試験体の概要である。
図15図14に示された各試験体ごとの主筋21及び1021の充填部材60との付着強度の測定結果である。
図16】既設の鉄筋コンクリート構造物100Aを鉄筋部材20により補強し、上部構造体50を設置する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。各図において、同一の符号を付した部位については、同一の又はこれに相当する部位を表すものであって、これは明細書の全文において共通している。また、明細書全文に表れている構成要素の形態は、あくまで例示であって、本発明は明細書内の記載のみに限定されるものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。さらに、添字で区別等している複数の同種の部位について、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、添字を省略して記載する場合がある。また、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の一例である鉄道の駅のプラットフォームの側面図である。実施の形態1において鉄筋コンクリート構造物100は、プラットフォームを形成する床版10の線路側の端部にホームドアが立設されている。ホームドアは、線路に沿って位置する床版10の端縁13に沿って配置され、線路側の領域とプラットフォームを形成する床版10の上方の領域とを仕切るものである。ホームドアは、例えば電車の扉の位置に合わせて配置されているドア部51と、ドア部51が開いたときに退避する戸袋52と、床版10に固定されている構造部53とを備える。ホームドアは、上部構造体50と呼ばれる場合がある。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の断面構造の一例を示す説明図である。図2に示される断面は、床版10の端縁13及び表面14に垂直な断面を示している。鉄筋コンクリート構造物100は、床版10と、床版10を下方から支持する支持構造体11と、床版10の上に立設される上部構造体50と、を備える。上部構造体50は、床版10の端部12の表面14に形成された固定部16に固定される。固定部16は、例えば板状の部材であり、上部構造体50を固定するためのボルト孔などが形成されている。
【0016】
固定部16は、ボルトなどの固定部材17を床版10に貫通させて固定されている。これにより、ホームドアなどの上部構造体50は、床版10に一体に固定される。また、固定部材17は、下部構造90を吊り下げるように支持する。下部構造90は、例えばホームドアに必要な電源を供給する配線などが配置されている。
【0017】
床版10の内部には、表面14に沿って鉄筋部材20が配置されている。鉄筋部材20は、少なくとも支持構造体11の上方から上部構造体50が設置される固定部16よりも端縁13側に至る領域にわたって配置される。鉄筋部材20の周囲には、例えばコンクリートなどの充填部材60が充填されている。鉄筋部材20と充填部材60とは、一体となって床版10を形成する。また、床版10の表面は、タイルなどの舗装部材62により舗装されている。
【0018】
図3は、実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の断面構造の一例を示す説明図である。図3に示される鉄筋コンクリート構造物100は、図2の鉄筋コンクリート構造物100とは異なる一例であり、鉄骨で構成された支持構造体11及び床版10の内部構造70を備えていても良い。内部構造70は、鉄筋コンクリート構造物100に要求される性能に応じて適宜変更可能である。この場合であっても、鉄筋部材20は、床版10の内部に、表面14に沿って配置され、表面14と内部構造70との間に配置される。
【0019】
図4は、実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の床版10に配置された鉄筋部材20の説明図である。図4(a)は、床版10の断面構造の模式図であり、図4(b)は、床版10の表面14に垂直な視点における説明図である。なお、図4(a)は、図4(b)のA-A部を示している。鉄筋部材20は、図4の左右方向に延びる複数の主筋21と、図4の上下方向に延びる配力筋22が交差して格子状に構成されている。主筋21は、鉄筋コンクリート構造物100の支持構造体11の上方から端縁13の近傍に至る領域にわたって配置される。実施の形態1の主筋21は、直線状に延びる床版10の端縁13に垂直に交差して配置されているが、この形態のみに限定されるものではない。主筋21は、支持構造体11により床版10が固定されている支持領域10Aから端縁13に向かって延びるように配置されていればよい。
【0020】
図2図3及び図4(a)の断面構造に示されるように、床版10は、支持構造体11を固定端とし端縁13を自由端とする片持ち梁構造となっている。床版10は、上部構造体50が固定される固定部16の中心位置を示す仮想線16Aに曲げモーメントが入力される。主筋21は、片持ち梁に荷重が掛かった際に生じる曲げモーメントによる引張荷重を分担するように配置されていれば良い。つまり、主筋21は、支持構造体11の上方から端縁13に向かって延びて配置されていれば良い。また、複数の主筋21は、必ずしも平行に配置されていなくとも良く、2つの主筋21の一方の端部における間隔が他方の端部における間隔よりも大きく構成されていても良い。
【0021】
主筋21は、少なくとも端縁13に対し交差する方向に延びており、主筋21が延びる方向に対し交差する方向に複数の配力筋22が配置されている。平面視における主筋21の太さは、配力筋22よりも太く形成されている。複数の配力筋22は、複数の主筋21の側面同士を連結するように形成されている。配力筋22は、隣り合う2つの主筋21の側面に接合されており、主筋21に掛かる引張荷重を隣り合う主筋21に分散させる。図4(b)において、配力筋22は、主筋21に対し直交する方向から傾斜しているが、主筋21と直交する方向に延びていても良い。
【0022】
複数の配力筋22のうち床版10の端縁13側に配置されている配力筋22を、定着横筋22bと称する。定着横筋22bは、図4(b)に示す様に、平面視において上部構造体50が固定される固定部16と床版10の端縁13との間に配置される。定着横筋22bは、複数の主筋21の端縁13側の端部において、隣り合う2つの主筋21の側面同士を連結している。
【0023】
図5は、実施の形態1に係る鉄筋部材20の変形例を示す平面図である。図5に示される鉄筋部材20は、主筋21と配力筋22とが直交して配置され、格子目が略正方形となるように形成されている。また、図5に示される鉄筋部材20は、主筋21と配力筋22とが同じ太さに形成されている。図4(b)に示されている鉄筋部材20は、図5に示される鉄筋部材20に置換しても良い。図5に示される鉄筋部材20は、主筋21と配力筋22とが同じ構造になっているため、縦横方向を入れ替えても同様な強度となるように構成されている。
【0024】
図6は、実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の床版10の模式図である。図6(a)は、鉄筋コンクリート構造物100の断面構造の模式図であり、図6(b)は、鉄筋コンクリート構造物100の構造を平面視した模式図である。図6に示されている鉄筋部材20は、定着横筋22b以外の配力筋22が省略されて表示されている。以下、鉄筋コンクリート構造物100に設置されている鉄筋部材20の作用について説明する。
【0025】
図6(a)に示されるように、例えば鉄道の駅のプラットフォームは、人や荷物などの荷重fが床版10の表面14に分布して掛かる。床版10の端部12は、下方から支持されておらず、床版10は支持構造体11を固定端とした片持ち梁構造となっている。よって、端部12にホームドアなどの上部構造体50が設置されておらず、乗降客や荷物などの分布荷重fを想定した等分布荷重が床版10の表面14に掛かった場合、床版10に発生する曲げモーメントの分布は、図6(a)の曲線M1のように表すことができる。このとき、床版10に必要な耐力は、図6(a)の直線P1で表される。
【0026】
近年設置が進められているホームドアを想定した上部構造体50が床版10の端部12の上面に設置された場合、ホームドアは電車の通過による負圧などにより線路側に倒れるように変位する。つまり、床版10の端部12に床版10を下側に曲げるように曲げモーメントmが掛かる。従って、床版10に発生する曲げモーメントの分布は、図6(a)の曲線M2のように表すことができる。
【0027】
床版10に発生する応力は曲げモーメントに比例するため、ホームドアなどの上部構造体50を有する鉄筋コンクリート構造物100は、曲線M2に表される曲げモーメントの分布に対抗するため、従来よりも高い強度を確保する必要がある。つまり、鉄筋コンクリート構造物100にホームドアなどの上部構造体50を設置した場合に必要な床版10の耐力は、図6(a)の直線P2で示される。実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100は、鉄筋部材20を床版10に設置することにより、床版10の耐力を直線P1から直線P2まで引き上げることができる。
【0028】
実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の床版10は、図6(b)に示すように、パネル状の鉄筋部材20が表面14に沿って配置されているため、床版10に発生する曲げモーメントにより生じる引張応力を鉄筋部材20により分担することができる。特に、床版10の端縁13に沿って定着横筋22bが配置されているため、床版10を構成する充填部材60に掛かった分布荷重f及び曲げモーメントmを定着横筋22bから複数の主筋21に伝達することができる。定着横筋22bが上部構造体50の固定部16よりも端縁13側に配置されているため、上部構造体50に掛かった荷重による曲げモーメントmによる荷重を充填部材60を介して鉄筋部材20に負担させることができる。
【0029】
一般に鉄筋部材20は、コンクリートなどで構成される充填部材60よりも引張応力に強く、図6に示すように鉄筋部材20を設置することにより、片持ち梁構造となっている床版10を強化することができる。つまり、床版10に掛かった分布荷重f及び曲げモーメントmは、床版10を構成する充填部材60に伝達される。
【0030】
主筋21が片持ち梁構造の固定端から自由端に向かって延びているため、充填部材60に掛かった荷重は、通常は充填部材60と主筋21の表面との付着力に依存して、主筋21に伝達される。この場合、充填部材60と主筋21との間の付着力が十分に高くなければ、主筋21は充填部材60から引き抜かれ、充填部材60に掛かった荷重を十分に負担することができない。しかし、実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100は、鉄筋部材20が定着横筋22bを備えるため、充填部材60に掛かった荷重f及び曲げモーメントmによる荷重が定着横筋22bを介して、複数の主筋21に伝達する。これにより、引張力に強い主筋21が分布荷重f及び曲げモーメントmを負担することができる。なお、実施の形態1において、充填部材60は、コンクリート、流動化コンクリート、高強度コンクリート、繊維補強コンクリート、モルタル、無収縮モルタル、繊維補強モルタル又はポリマーセメントモルタルなどにより構成される。また、鉄筋部材20は、鋼材に限定されず、例えば炭素繊維FRP、アラミド繊維FRP又はガラス繊維FRPなどの金属以外の高強度材を用いても良い。
【0031】
図6においては、鉄筋部材20の配力筋22は省略しているが、定着横筋22b以外の配力筋22aは、主筋21に交差する方向に延び、複数の主筋21同士を接続している。そのため、床版10を構成する充填部材60に掛かった荷重は、配力筋22aを介して主筋21に伝達される。従って、ホームドアなどの上部構造体50よりも支持構造体11側において床版10の表面14に掛かった分布荷重fが主筋21に伝達されるため、鉄筋部材20が床版10の強度を向上させる効果が高まる。
【0032】
図7は、図6(b)のB部の拡大図である。実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100は、床版10を貫通する固定部材17を用いて固定部16を固定する。固定部16及び固定部材17は、鉄筋部材20を配置し、充填部材60を充填した後で床版10に設置されるものである。従って、図7に示されるように、鉄筋部材20は部分的に除去される場合がありうる。この場合であっても、鉄筋部材20が複数の主筋21が定着横筋22bにより連結されており、切断された主筋21に隣り合う主筋21が荷重を負担することができるため、床版10の強度を確保することができる。
【0033】
図8は、図6に示される鉄筋部材20の変形例を示す平面図である。図8の鉄筋部材20は、定着横筋22bが床版10の端縁13に対し傾斜しているが、図6と同様に床版10の強度を確保することができる。なお、図8に示される鉄筋部材20は、例えば図6(b)に示されている鉄筋部材20を模式的に表示したものである。図8に示される鉄筋部材20は、例えば1枚の鋼板に複数のスリットを形成し、スリットを拡開することにより格子状に形成したものである。鉄筋部材20は、少なくとも主筋21と主筋21同士を連結する定着横筋22bとを備えていれば、図6を用いて説明したように床版10の強度を確保することが可能である。
【0034】
実施の形態1に係る鉄筋部材20は、幅2m程度のパネル状であり、例えば駅のプラットフォームの床版10に複数並べて設置される。隣り合う鉄筋部材20は、端面同士を当接させても良いし、互いに係合するように係合部が設けられていても良い。
【0035】
図9は、実施の形態1に係る鉄筋部材20の拡大図である。図9(a)は、鉄筋部材20の主筋21の拡大平面図であり、突起が側面24から2mm突出した場合の図である。図9(b)は、鉄筋部材20の主筋21の拡大平面図であり、突起が側面24から5mm突出した場合の図である。鉄筋部材20の主筋21は、図9に示す様に、側面に突起23を備えていても良い。主筋21は、側面24に突起23が形成されていることにより、充填部材60と強固に結合される。これにより、主筋21は、充填部材60から引き抜かれにくくなる。換言すると、充填部材60に掛かった荷重が主筋21に伝達しやすくなるため、主筋21は、突起が形成されていないものより引張荷重を負担しやすくなり、床版10の強度が向上する。なお、図4及び図5に示す様に、配力筋22及び定着横筋22bも、側面25に突起23を備えていても良い。これにより、鉄筋部材20と充填部材60との結合がより強固になる。
【0036】
また、鉄筋部材20は、例えば縞鋼板などの上面及び下面に突起を備える材料を加工して製造されても良い。この場合は、鉄筋部材20は、上面または下面の少なくとも一方に突起が形成される。鉄筋部材20の上面又は下面に形成された突起も、鉄筋部材20と充填部材60との付着力を向上させる。
【0037】
図10は、実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の比較例である鉄筋コンクリート構造物1000の断面構造の説明図である。比較例である鉄筋コンクリート構造物1000は、異形棒鋼を交差して組み合わせ、鉄線で結束された鉄筋構造1020が床版1010の表面に沿って設置されている。鉄筋構造1020は、主筋1021となる異形棒鋼と配力筋1022となる異形棒鋼が上下方向に重なって配置される。そのため、実施の形態1に係る鉄筋部材20のように一枚の板状に構成されたものと同じ強度を確保しようとした場合、比較例の鉄筋構造1020は、実施の形態1に係る鉄筋部材20よりも厚さ寸法が大きくなる。
【0038】
また、比較例の鉄筋構造1020においては、配力筋1022と主筋1021との結合力が低いため、配力筋1022から主筋1021に荷重が伝達しにくい。そのため、主筋1021を床版1010の表面14に沿って設置すると、主筋1021が周囲に充填されている充填部材60から引き抜かれやすい。そのため、図10に示されるように、鉄筋構造1020の主筋1021の先端部は、床版1010の端部1012において内部構造70の端縁を巻き込むように設置される。鉄筋構造1020の主筋1021の屈曲部1021aは、実施の形態1に係る定着横筋22bと同様な働きをするが、鉄筋コンクリート構造物1100内において鉄筋構造1020が設置される範囲が広い。そのため、既設の駅のプラットフォームに設置する場合には、車両が通過する車両限界Lや図3に示される床版10の下方に設置されている下部構造物91に抵触してしまうことがあり、比較例の鉄筋構造1020は、ホームドア設置のための駅のプラットフォームの床版10の補強として適用するにあたり制限がある。
【0039】
図11は、実施の形態1に係る鉄筋部材20と比較例に係る鉄筋構造1020との構造の比較図である。図11(a)は実施の形態1に係る鉄筋部材20の主筋21に垂直な断面を示しており、図11(b)は比較例に係る鉄筋構造1020の主筋1021に垂直な断面を示している。実施の形態1に係る鉄筋部材20は、格子目が形成されたパネル状であり、主筋21及び配力筋22及び定着横筋22bが同一面上に配置されている。従って、鉄筋部材20は、床版10の全体にわたって厚さH1となっている。一方、鉄筋構造1020は、主筋1021と配力筋1022とが上下に重なって配置されているため、厚さH2は主筋1021の直径D1と配力筋1022の直径D2とを合わせた寸法となる。従って、主筋21及び1021並びに配力筋22及び1022が同等の強度を確保すべく断面積を合わせた場合、実施の形態1に係る鉄筋部材20の厚さH1は、比較例の鉄筋構造1020の厚さH2よりも薄くなる。
【0040】
実施の形態1に係る鉄筋部材20は、比較例に係る鉄筋構造1020よりも薄く構成されるため、強度を確保しつつ床版10の内部において占める領域を小さくできる。このように鉄筋部材20が構成されることにより、例えば実施の形態1に係る鉄筋部材20を既設の鉄筋コンクリート構造物100に適用する場合に既設の鉄筋コンクリート構造物100の床版10の充填部材60を除去する量を少なくすることができる。また、新設の鉄筋コンクリート構造物100の場合においても、鉄筋部材20の厚さH1を抑えることにより、鉄筋コンクリート構造物100は、大きさを抑えることができ、充填部材60の使用量も抑えることができる。
【0041】
(主筋21の定着力)
図12は、実施の形態1に係る鉄筋部材20と図10に示した比較例の鉄筋構造1020の主筋1021の屈曲部1021aとの定着性能を比較した試験体の構造を示す平面図である。図12において、試験体Nは、実施の形態1に係る鉄筋部材20に相当する試験体である。つまり、試験体Nは、図12に示すように、2つの主筋21と、それらの先端部において2つの主筋21の側面を連結する定着横筋22bと、を備える。
【0042】
また、図12において、試験体Jは、比較例に係る鉄筋構造1020の主筋1021に相当する試験体である。つまり、試験体Jは、図12(b)に示すように、主筋1021の先端部に屈曲部1021aが形成されている。これは、図10に示されている鉄筋構造1020の主筋1021に相当する構造である。
【0043】
図13は、図12に示された各試験体ごとの主筋21及び1021の充填部材60に対する定着力の測定結果である。図13に示される点線は、各試験体に鉄筋の規格降伏荷重の95%に相当する35.5kNの荷重Fを表している。図13に示されている曲線p、q及びrは、図12(a)に示された試験体Nの変位量と荷重Fとの関係を示している。図12に示されている曲線s、t及びuは、図12(b)に示された試験体Jの変位量と荷重Fとの関係を示している。
【0044】
図13に示されるように、実施の形態1に係る鉄筋部材20に相当する試験体Nは、比較例の鉄筋構造1020に相当する試験体Jと比較したときに、同じ荷重Fを掛けたときに変位量が同等又は少ないという結果が得られた。つまり、実施の形態1に係る鉄筋部材20を床版10に設置することにより、床版10は、従来の鉄筋構造1020を適用した場合と同等又はそれ以上の定着強度を発揮することが可能となる。
【0045】
(主筋21の付着強度)
図14は、実施の形態1の鉄筋部材20の主筋21と充填部材60との付着性能を評価した試験体の概要である。試験体A、B1、B2、C及びDは、図9に示すように幅15mm、板厚9mmに形成されたものである。また試験体A、B1及びB2は、表面が平滑な一般鋼板を加工したものであり、試験体C及びDは、表面に凹凸が形成されている縞鋼板を加工したものである。さらに、試験体A、B1、C及びDは、図9(a)に示されるように、側面に2mmの突起23が形成されており、試験体B2は、図9(b)に示されるように、側面に5mmの突起23が形成されている。
【0046】
試験体B1、B2及びDは、表面にめっき又はエポキシ塗装が施されている。主筋21の表面にめっき又はエポキシ塗装などの塗装は、一般的に金属材料の防蝕を目的とするものである。エポキシ塗装が施されている場合、主筋21と充填部材60との付着力は一般的に低下する。
【0047】
試験体Eは、比較例の鉄筋構造1020に相当するものであり、異形鉄筋D13(直径約13mm)により構成されている。試験体Eは、特に塗装又はめっきは施されていない。
【0048】
図15は、図14に示された試験体ごとの主筋21及び1021の充填部材60との付着強度の測定結果である。図15に示す付着強度は、図9に示される突起23を備えた試験体A、B1、B2、C及びDの端部に引き抜き荷重Fを負荷し、0.04mm変位したときの荷重Fの値を示したものである。棒グラフは、各試験体で得られた測定結果の平均値を示している。図15の結果によれば、実施の形態1に係る鉄筋部材20が備える構造を有する試験体A、B1、B2、C及びDは、比較例の鉄筋構造1020に相当する試験体Eと同等またはそれ以上の付着強度を有する結果が得られた。
【0049】
また、付着強度について不利に働くエポキシ塗装を施した試験体Dにおいても、鉄筋部材20の主筋21の側面に2mmの高さの突起23を追加することにより、比較例の試験体Eと同等の付着強度が得られた。鉄筋部材20の表面にめっきを施した場合、さらに、試験体B2のように、主筋21の側面に5mmの突起23を追加すれば、試験体Eよりもさらに高い付着強度が得られることが分かった。
【0050】
以上より、実施の形態1に係る鉄筋部材20は、防蝕などを目的としためっき又は塗装を施しても、十分な付着強度が得られるため、さまざまな環境下における鉄筋コンクリート構造物100に適用できるものである。
【0051】
次に、実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物100の施工方法について説明する。なお、以下の鉄筋コンクリート構造物100の施工方法は、一例として既存の駅のプラットフォームにホームドアを設置する際に床版10の補強が必要な場合について説明する。
【0052】
(鉄筋コンクリート構造物100の補強方法)
図16は、既設の鉄筋コンクリート構造物100Aを鉄筋部材20により補強し、上部構造体50を設置する工程の説明図である。まず、図16(a)に示すように、既設の床版10から表面14を構成する舗装を除去する。さらに鉄筋部材20を設置するのに必要な深さだけ床版10の充填部材60を除去する。つまり、図16(a)に示す支持構造体11の上方から床版10の端縁13に至るまでの領域Kを斫り、コンクリート等を除去する。この工程を除去工程と称する。
【0053】
次に、図16(b)に示すように領域Kに鉄筋部材20を配置する。鉄筋部材20は、例えば領域Kの底面61から所定の間隔をもって配置されるように、底面61に配置されたブロック80の上に載置される。このとき、鉄筋部材20は、格子目を備えるパネル状の部材であるため、現場での組み立て作業が必要なく、配置して固定するだけでよい。この工程を鉄筋配置工程と称する。鉄筋配置工程によれば、鉄筋部材20の配置に係る時間を従来の鉄筋構造1020を組み立てる時間と比較して大幅に短縮できる。
【0054】
鉄筋部材20が配置されたら、領域Kにコンクリート等の充填部材60を充填する。充填されたコンクリート等は、表面を平坦に仕上げられる。これを充填工程と称する。
【0055】
充填部材60が固化した後、図16(c)に示すように、床版10は、削孔され固定部材17が挿通される孔19が形成される。孔19が形成される際に、鉄筋部材20は、一部の主筋21又は配力筋22aが切断される場合がある。その後、床版10の表面に固定部16が固定部材17により固定される。これを固定部設置工程と称する。固定部16は、床版10の端部12の上面に形成される。図16(c)の水平方向において、固定部16は、鉄筋部材20の定着横筋22bが端縁13と当該固定部16との間に配置されるように設置される。また、固定部設置工程と同時又はその前後に床版10の表面14を形成する舗装を行っても良い。この工程を舗装工程と称する。
【0056】
固定部16が設置された後、固定部16にはホームドアなどの上部構造体50が設置される。
【0057】
実施の形態1に係る鉄筋コンクリート構造物の施工方法によれば、鉄筋部材20の設置に掛かる時間が短縮されるため、例えば鉄道の運行が停止されている短い時間内に施工が可能となる。また、鉄筋コンクリート構造物100の施工期間も短縮するという利点がある。なお、図16においては、既設の鉄筋コンクリート構造物100について説明したが、鉄筋部材20は、新設の鉄筋コンクリート構造物100にも適用することができる。新設の鉄筋コンクリート構造物100においては、図16(a)において説明した除去工程が省略される。
【0058】
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。特に構成要素の組み合わせは、実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、適宜変更することができる。また、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【符号の説明】
【0059】
10 床版、10A 支持領域、11 支持構造体、12 端部、13 端縁、14 表面、16 固定部、16A 仮想線、17 固定部材、19 孔、20 鉄筋部材、21 主筋、22 配力筋、22a 配力筋、22b 定着横筋、23 突起、24 側面、25 側面、50 上部構造体、51 ドア部、52 戸袋、53 構造部、60 充填部材、61 底面、62 舗装部材、70 内部構造、80 ブロック、90 下部構造、91 下部構造物、100 鉄筋コンクリート構造物、100A 鉄筋コンクリート構造物、1000 鉄筋コンクリート構造物、1010 床版、1012 端部、1020 鉄筋構造、1021 主筋、1021a 屈曲部、1022 配力筋、1100 鉄筋コンクリート構造物、A 試験体、B1 試験体、B2 試験体、C 試験体、D 試験体、D13 異形鉄筋、E 試験体、F 引き抜き荷重、H1 厚さ、H2 厚さ、K 領域、L 車両限界、f 分布荷重、m 曲げモーメント。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16